(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記検出電極は、一対の電極で構成され、各電極は櫛型形状を有し、互いに所定の間隔で櫛歯が噛み合わさるようにして形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の光検出素子。
前記検出電極は、一対の電極で構成され、各電極は櫛型形状を有し、互いに所定の間隔で櫛歯が噛み合わさるようにして形成されていることを特徴とする請求項8または9に記載の光検出装置。
太陽光を照射した場合に、受光感度と波長の相関関係を示す受光感度スペクトルが、UV−BのCIE作用スペクトルと近似させたことを特徴とする請求項8〜10のいずれか1項に記載の光検出装置。
前記第1の光学フィルタ及び第2の光学フィルタは、それぞれ前記波長範囲λに吸収がないペースト状材料と吸収端の異なる半導体の粉末との混合物であることを特徴とする請求項11に記載の光検出装置。
前記第1の光学フィルタと同じ特性の第3の光学フィルタと前記第1の光検出素子とは異なる広さの光電変換領域とを有する第3の光検出素子を少なくとも備え、前記第1の光検出素子と第2の光検出素子と第3の光検出素子により、波長範囲λの光量を算出することを特徴とする請求項8〜12のいずれか1項に記載の光検出装置。
前記第1の光検出素子と第3の光検出素子とで波長範囲λを除く光の単位受光面積当たりの光検出信号J0を算出する第1の算出手段、前記第2の光検出素子の受光面積をAとした場合A×J0と該第2の光検出素子の光検出信号との差を求めて波長範囲λの光量を算出する第2の算出手段とを備えたことを特徴とする請求項13に記載の光検出装置。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[第1の実施の形態]
(光検出装置)
第1の実施の形態に係る光検出素子の構成例を示す模式的断面構造は、
図1に示すように表される。光検出部は、透光性基板1、光吸収層2、電極3、電極4、接着層5、絶縁膜6で構成されている。透光性基板1上に光吸収層2が形成され、かつ、電極3と電極4の一部を覆うように光吸収層2が形成されている。電極3が正電極の場合は、電極4が負電極に相当し、電極3が負電極の場合は、電極4が正電極に相当する。絶縁膜からなるパッケージ7上に光検出部がジャンクションダウン(フェースダウン)で接着層5によりダイボンディングされている。
【0031】
光吸収層2は、特定波長の光を選択的に吸収して、電子と正孔を生成する物質で構成されており、例えば、光電効果を有する半導体層等で構成される。ここで、電極3、4は、透光性基板1上に形成されており、電極3、4の一部が光吸収層2内に埋め込まれている。また、電極3、4の全体が光吸収層2に埋め込まれるように構成しても良い。絶縁膜6により、光吸収層2の表面(透光性基板1と反対側)及び側面が完全に覆われて、絶縁膜6の両端は、電極3、4上に形成される。絶縁膜6の両側には、接着層5が形成されており、この接着層5により、透光性基板1とパッケージ7の底面とが接着されるため、光検出部全体がパッケージ7上に固定される。
【0032】
また、パッケージ7は、形状がコの字型に形成されている。パッケージ7の側面は、光検出部の透光性基板1の裏面位置の高さを超えて、光検出部全体が完全に囲まれるように形成される。パッケージ7の側面は、少なくとも、光検出部の透光性基板1の裏面位置の高さまでは形成される。
【0033】
電極3、4は、光が光吸収層2で吸収されて、生成された電子、正孔に基づく電流を外部に取り出すための電極である。このため、電極3と電極4との間に、直流のバイアスを印加する必要があり、図示はしていないが、直流電源が接続される。バイアス電圧は可変できるようになっている。
【0034】
光吸収層2は、高抵抗で、特定の波長域のみを選択的に吸収する材料を使用することが望ましい。高抵抗が望ましいのは、光により発生するキャリアと、素子に印加されるバイアスにより発生する電流との区別をつける必要があるためである。
【0035】
一方、透光性基板1は、少なくとも検出の対象となる波長域の光に対しては吸収を起こさず透明で、余計な電流が発生しない高抵抗の材料が望ましく、例えばガラス、サファイア基板等を用いることができる。絶縁膜6、パッケージ7は、防水、防湿、防傷機能などを有するもので、SiNやSiO
2等が用いられる。一般的に、SiNの方が防水性に優れているので、これを用いることが多い。また、パッケージ7は、支持基台であっても良い。この場合は、筐体等に配置することを想定して、パッケージ7は金属配線パターンが形成された支持基台が用いられる。
【0036】
例えば、特許文献1の構造では、紫外光を検出する場合、紫外光を吸収するSiNは、光検出素子の感度低下に繋がるので好ましくない。しかし、第1の実施の形態に係る光検出素子では、
図1に示すように、光吸収層2に光が到達するまでの間に、絶縁膜6、パッケージ7が配置されている構造ではないので、紫外光の吸収に関して注意することなく、絶縁膜の材料を選択することができる。
【0037】
光は、図の矢印のように、透光性基板1の裏面側から照射されて、透光性基板1を透過した光が光吸収層2により吸収されて、光電効果により正孔、電子が発生し、電極3と電極4の間に流れる電流として検出される。
【0038】
第1の実施の形態に係る光検出素子では、光吸収層2の中に電極3、4を埋め込むのではなく、光吸収層2上に電極3、4を配置するとともに、光検出部をジャンクションダウンでパッケージ7にフリップチップ接合して、電極及び光吸収層を外気に曝さないようにしているので、電極や光吸収層の劣化を防止することができる。そして、光を透光性基板1の裏面から照射する構造とすることで、光吸収層の表面層の電導による影響を排除することができる。このため、光検出素子の電気的特性が安定し、高感度で安定して光検出を行うことができる。
【0039】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、埋め込み型電極を用いた光検出素子に発生する複数の電流経路は、
図2に示すように表される。
図2に示すように、表面抵抗の低下により、2つの電流経路が発生する。ガラス基板21上に光吸収層としてのZnO膜22が形成されている。実線の矢印のように、上方から光が照射されると、ZnO膜22で紫外光が吸収されて、光電効果により、電極23と電極24の間に流れる電流として検出される。この検出電流の経路としては、通常、例えばAの矢印で示したように、電極23と電極24の間の直線距離を電極23から電極24の方へ向かって流れる。しかし、ZnO膜22の表面層の抵抗は不安定であり、例えば、表面の酸素欠損により表面層が他の領域よりも低抵抗になる。
【0040】
すると、電流経路Aだけでなく、電極23から経路B1→B2→B3を通って電極24に流れる表面電導による電流経路Bが発生する。このように、検出電流には、電流経路A及び電流経路B1→B2→B3の両方が寄与することになる。この2つの電流経路を流れる電流は、光吸収層の表面抵抗の値により変動するので、個々の光検出素子の電気的特性や感度にはバラツキが発生する。
【0041】
具体的には、光吸収層の表面層の抵抗値をRs、電極付近の抵抗値をR1、光検出膜の膜厚方向の抵抗値をRtとすると、2Rt+Rs>>R1の場合には、電流経路Aが支配的になる。どちらの電流経路が支配的であるかは、電極間距離と抵抗値とが比例関係にあるかどうかで判断することができる。
【0042】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、表面照射の場合の光吸収層の膜厚と電流−電極間隔特性との関係は、
図3に示すように表される。
【0043】
図3の縦軸の電流値は、電極23と電極24との間にバイアス電圧3Vを印加して紫外光を上方向から照射した場合(表面照射)の検出電流値を示す。横軸は電極23と電極24の間隔(μm)を示す。照射紫外光は365nmの波長を30W/m
2の出力で発光させた。また、電極23と電極24との間の電極間距離を変化させて測定した。電極間距離を変化させた場合、電流経路Aの場合は電極間抵抗が変化する。しかし、電流経路B1→B2→B3の場合は、2Rt+Rs>>R1であるため、電極間抵抗がほとんど変化しない。
【0044】
黒丸によるS1のグラフは、ZnO膜22の膜厚が0.47μm、白丸によるS2のグラフは、ZnO膜22の膜厚が1.03μm、白三角によるS3のグラフは、ZnO膜22の膜厚が2.3μmの場合を示す。
図3からわかるように、光吸収層の膜厚を薄くしても、光吸収層の膜厚を厚くしても、電極間隔と検出電流との相関が見られない。これは、ZnO膜22は、表面層に近い領域で、紫外光をほとんど吸収して検出するので、表面電導の影響が大きいためである。
【0045】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、裏面照射の場合の光吸収層の膜厚と電流−電極間隔特性との関係は、
図4に示すように表される。
【0046】
次に、
図4の縦軸の電流値は、
図3と同様、電極23と電極24との間にバイアス電圧3Vを印加して裏面から光を照射した場合(裏面照射)の検出電流値を示す。横軸は電極23と電極24の間隔(μm)を示す。照射紫外光は365nmの波長を30W/m
2の出力で発光させた。また、電極23と電極24との間の電極間距離を変化させて測定した。電極間距離を変化させた場合、電流経路Aの場合は電極間抵抗が変化する。
【0047】
図3と異なる点は、
図2において点線の矢印のように、ガラス基板21の裏面から光を照射した場合(裏面照射)の検出電流が示されていることである。
【0048】
黒丸によるB1のグラフはZnO膜22の膜厚が0.47μm、白丸によるB2のグラフはZnO膜22の膜厚が1.03μm、白三角によるB3のグラフはZnO膜22の膜厚が2.3μmの場合を示す。
図4からわかるように、裏面照射の場合は、電極間隔の増加とともに、電流値が減少し、膜厚が厚いとその傾向が顕著になる。
【0049】
裏面照射の場合、ZnO膜の紫外光領域の吸収係数が10
5cm
-1と高いため、紫外光はガラス基板21とZnO膜22との界面からZnO膜22側に300nmの位置では3(%)程度に、2μmの位置では3×10
-9(%)まで減衰する。このため、紫外光照射時には、ガラス基板21とZnO膜22との界面付近のZnO膜に低抵抗層が形成され、R1が小さくなるため、表面電導の寄与は小さくなる、また、ZnO膜22の膜厚が厚いと、ZnO膜22の表面と電極23及び24との間は、ZnO膜の中間の高抵抗層で隔てられるので、Rtが大きくなり、ZnO膜表面は電極23と電極24との間の電極間抵抗にほとんど寄与しなくなる。
【0050】
次に、第1の実施の形態に係る光検出素子(
図2)を用いて、裏面照射を行い、受光感度を測定した。第1の実施の形態に係る光検出素子において、裏面照射の場合の受光感度特性は、
図5に示すように表される。受光感度測定には、電極間距離は変えずに、ZnO膜22の膜厚だけを変えたものを使用した。ZnO膜22の膜厚は、測定結果を示すX1、X2、X3の順に厚くなっており、最も膜厚の厚いのがX3であり、最も膜厚の薄い方がX1である。また、縦軸は受光感度(A/W)を、横軸は波長(nm)を示す。
【0051】
図5からわかるように、ZnO膜22の膜厚が薄い方が、分光感度スペクトルが長波長側にシフトしており、可視光領域での感度が高くなっている。特に、最も薄いZnO膜22を用いたX1は、その傾向が顕著に表れている。
【0052】
これは、ZnO膜22の膜厚が薄いと、紫外光よりも長波長である可視光は、ガラス基板21とZnO膜22の界面の近くではなく、ZnO膜の表面近くで検出されるため、表面電導が寄与し、可視光に対する感度が上がり、分光感度スペクトルも長波長側にシフトする。また、表面電導層は、比較的、長波長の光も吸収する可能性がある。
【0053】
第1の実施の形態に係る光検出素子(
図2)において、表面照射と裏面照射の検出電流を比較した結果は、
図6に示すように表される。
【0054】
図6は、第1の実施の形態に係る光検出素子を用いて、表面照射と裏面照射を行って比較したものであり、紫外光の強さは
図3〜
図5において示された条件と同じである。ZnO膜22の膜厚は2μmとして測定を行った。縦軸は検出電流の電流値(A)を、横軸は照射時間(秒)を示す。Y1が裏面照射を、Y2が表面照射を示す。Y1は、照射時間が経過しても電流値は安定している。しかし、Y2は、紫外光の照射時間が長くなるにつれて、次第に電流値が増加している。表面照射では、表面電導が寄与しているため、特に表面抵抗が大きく変化して電流値が変動する。
【0055】
このように、光吸収層の表面層は抵抗率が不安定なだけでなく、吸収スペクトルがバルクによる光吸収層よりも長波長側にシフトしていること、光検出素子の応答速度の低下にも関係していることがわかる。
【0056】
また、以上より、表面電導の影響を防止するためには、裏面照射とし、光吸収層の膜厚を厚くすれば良いことがわかる。これにより、光吸収層表面の抵抗が電極間抵抗に寄与しなくなるので、表面電導の影響を除去することができる。
【0057】
次に、特定の波長域を選択的に検出できるようにするための構成例を示す。
【0058】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、透光性基板の表面に光学フィルタが形成された模式的鳥瞰構造は、
図7に示すように表される。
図7は、
図1で示した透光性基板1の裏面に光学フィルタ8を形成した積層体を示す。例えば、紫外光を検出する場合を想定する。
【0059】
紫外領域は、400nm以下の波長で200nm程度までの波長をいうものとする。紫外領域は、さらに、紫外光A(波長320nmより大きく、400nm以下)、紫外光B(波長280nmより大きく、320nm以下)、紫外光C(波長280nm以下)に分類される。
【0060】
太陽光に含まれる光強度としては、紫外光Aが30W/m
2、紫外光Bが1W/m
2と、紫外光Aが1桁以上強い。このため、紫外光を含む太陽光の危険性を評価するためには、紫外光Aと紫外光Bを個別に検出する必要がある。
【0061】
そこで、特定の波長を吸収してカットする光学フィルタ8を設ける。光学フィルタ8は、ペースト状の物質を硬化させて形成される。
図7の例では、B
2O
3−Bi
2O
3−ZnOという組成からなるガラスペーストを用いた。このガラスペーストからなる光学フィルタ8は、紫外光B以下の波長のみを吸収する。光学フィルタ8は、スクリーン印刷法で作製することができる。スクリーン印刷法は安価に薄膜を形成することができる、量産に優れた成膜法である。
【0062】
透光性基板1にガラス基板を用い、光学フィルタ8として、上記紫外光B以下の波長を吸収するガラスペーストを2.5μmの厚さ塗布して
図7の積層体を作製した。
【0063】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、
図7の光学フィルタの膜厚の形成状態を示すグラフは、
図8に示すように表される。縦軸は、ガラスペーストによる光学フィルタの膜厚(μm)を、横軸は透光性基板1の端から水平方向への距離(μm)を示す。すなわち、
図8のグラフで、距離0を境にして、0よりも大きい領域は光学フィルタ8が形成されている領域であり、0よりも小さい領域は光学フィルタ8が形成されていない領域である。光学フィルタ8が形成されている領域は、膜厚がほぼ一定の値(2.5μm)に揃っている。
【0064】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、
図7の構造に紫外光を照射した場合の波長と透過率との関係は、
図9に示すように表される。
図9は、
図7の積層体を用い、光学フィルタ8の上方向から紫外光と可視光とを照射したときの透過特性を示す。
図9の縦軸は透過率を、横軸は波長(nm)を示す。
図9で、P1は
図7の構造で、ガラスペーストからなる光学フィルタ8がない状態、すなわちガラス基板のみによる透過特性を示す。P2は、上述した
図7の積層体による透過特性を示す。P1では、可視光、紫外光A、紫外光B及び紫外光Cが透過しているが、P2では、紫外光B及び紫外光Cが除去されて、可視光、紫外光Aが透過している。
【0065】
第1の実施の形態に係る光検出素子の一構造例を示す模式的断面構造は、
図10に示すように表され、
図1と
図10の光検出素子に紫外光を照射した場合のそれぞれの受光感度を示すグラフは、
図11に示すように表される。
【0066】
図10は、
図1の光検出素子に
図7の光学フィルタ8を設けた光検出装置を示す図である。
図1と同じ符号は、同じ構成を示す。
図1の透光性基板1の裏面側から紫外光を照射して測定された分光感度スペクトルをZ1として
図11に示す。一方、
図10の透光性基板1の裏面側から紫外光を照射して測定された分光感度スペクトルをZ2として
図11に示す。
【0067】
Z1では、紫外光A、紫外光B及び紫外光Cが検出されている。しかし、Z2では、光学フィルタ8により紫外光B以下の光が吸収されるため、紫外光Aのみが検出されている。このように、ペースト状の物質を硬化させて形成された光学フィルタと
図1の光検出装置とを組み合わせて用いることにより、特定の範囲の波長域の光のみを選択的に検出することができる。
【0068】
さらに、
図1の光検出素子と
図10の光検出素子を両方用いて、紫外光を検出し、(Z1−Z2)と演算することで、紫外光B及び紫外光Cを検出することができる。
【0069】
また、光学フィルタに用いるペースト状の物質として、紫外光から赤外光まで幅広く光を透過させる材料であれば何でも良く、例えば、アクリル樹脂、非晶性フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)、シリコン樹脂、フッ素系樹脂、ガラス等を用いることができる。特に、ペースト状物質の熱膨張係数が、光学フィルタが積層される透光性基板の熱膨張係数と近いと、剥がれにくくなるので好ましい。
【0070】
また、光学フィルタの膜厚は、特に限定されるものではないが、光学フィルタが積層される透光性基板の熱膨張係数との差が大きい場合は、0.1〜5μm程度に形成することが望ましい。さらに、透光性基板上にペースト状物質を塗布して、光学フィルタを形成する場合には、製造コストを低減させるために、低焼成温度の材料を用いることが望ましい。上記のように、熱膨張係数及び焼成温度の観点から、例えば、ガラス系材料をペーストの主成分とすることが望ましい。
【0071】
また、光学フィルタは、ペースト状物質を主成分として半導体の粒子が添加された材料を硬化させて作製することもできる。この場合、半導体の粒子は、ペースト状物質に添加したときに白濁するような粒径の大きさを持つような半導体の粉体は、望ましくない。これは、紫外光だけでなく、可視光等も光学フィルタを透過しにくくなることになり、光吸収層に到達する光が減少し、光を検出することができなくなるためである。
【0072】
ここで、
図10の光検出装置の製造方法を簡単に説明する。具体的材料として、透光性基板1にはガラスを、電極3、4にはTi(チタン)層の上にPt(白金)層が積層されたTi/Ptの多層金属膜を用いた。また、光吸収層2には、Mg
XZn
1−XO(0≦X<0)を用いた。
【0073】
ガラスの透光性基板1の裏面にスクリーン印刷法でガラスペーストを塗布する。このガラスペーストは紫外光B以下の波長を吸収するものを使用した。前記ガラスペーストを120℃で10分間乾燥させ、450℃で30分間焼成を行うことで、紫外光B以下の波長のみを吸収する膜が形成される。膜厚は印刷条件によるが、2μm程度で十分である。あまり薄いと紫外光Bを吸収しきれず、厚すぎると剥がれの原因となる。
【0074】
ガラス基板(透光性基板1)の表面上に櫛型状にTi/Ptによる電極を10nm/50nm程度形成する。この工程は、リフトオフによる方法でも、エッチングによる方法でも良い。櫛型状電極の検出電極部分(電極3、4に相当)の幅が、およそ5μm以下になってくると、エッチングによる方法の方が再現性を確保する点からは望ましい。
【0075】
次に、スパッタリングにより、光吸収層2となるMgZnO膜を形成する。MgZnO膜の膜厚は1000nm以上が望ましい。あまり薄いと表面電導層の影響が大きくなり、比較的長波長領域にも受光感度をもってしまう等の特性の悪化が生じる。
【0076】
櫛型状電極の端部を覆っているMgZnO膜を希釈塩酸でウエットエッチングして取り除く。ドライエッチングを用いても良いが、ZnO系材料は残渣が残りやすいので、ウエットエッチングが簡単で望ましい。
【0077】
次に、CVD法により、SiN膜による絶縁膜6を形成する。信頼性の確保のためには、300nm以上形成するのが好ましい。また、絶縁膜6は単層ではなく、例えば、SiO
2/SiNのような多層構造の絶縁膜で構成しても良い。
【0078】
櫛型状電極の端部を覆っているSiN膜をRIE法により取り除く。次に、ガラス基板(透光性基板1)を研磨して薄くする。薄くしなくても特に問題はないが、薄い形状の光検出装置を作製したい場合には、光検出素子を薄くしておくと、パッケージ7を薄くすることができるので好ましい。
【0079】
上記のように完成した光検出部を、例えば、パッケージ7となる支持基台にAgペースト等の導電性を持つ接着剤(接着層5)により、ジャンクションダウンでダイボンディングしてパッケージ化する。
【0080】
上記パッケージ化された光検出素子を、例えば、プリント基板に実装する。さらに、筐体に前記プリント基板を実装し、蓋を取り付けて光検出装置が完成する。
【0081】
図11の実測受光感度と理論上の受光感度との比較を示すグラフを
図12に示す。
図10の光検出素子の側面からの受光の影響を調べたのが
図12である。
図12の縦軸は、
図11のグラフの縦軸の受光感度を対数目盛に変換したものである。横軸のスケールは
図11と同じである。
図11と同様、実測の受光感度Z1、Z2が示されている。Z3は、ガラスペーストからなる光学フィルタ8の透過スペクトル、すなわち
図9のP2から計算して求めた受光感度曲線である。
【0082】
実測受光感度曲線Z2と理論受光感度曲線Z3とを比較すると、実測受光感度曲線Z2の方が、紫外光B以下の波長域の感度が図に示すhの高さ程度高くなっている。この原因は、透光性基板1の側面から入射した紫外光を検出したためである。したがって、正確に紫外光Aのみを検出するためには、紫外光B以下の波長をカットするフィルタを側面にも形成する必要がある。ただし、紫外光B以下の波長域の強さが弱い太陽光中の紫外光量を計測する限りは、ほとんど問題にはならない。
【0083】
第1の実施の形態に係る光検出素子において、
図1の光検出素子の透光性基板の側面に絶縁膜を設けた模式的断面構造は、
図13に示すように表され、
図10の光検出素子の透光性基板の側面に絶縁膜を設けた模式的断面構造は、
図14に示すように表される。
【0084】
図13および
図14に側面からの紫外光の入射を防止した構造例を示す。
図13は、
図1の光検出素子の側面に絶縁膜19を設けたものである。絶縁膜19は、透光性基板1の側面を完全に覆うように形成される。絶縁膜19は、紫外光を吸収する材料により構成されており、例えば、SiNが用いられる。
【0085】
図14は、
図10の光検出素子の側面に絶縁膜19を設けたものである。
図13と同様、絶縁膜19は、透光性基板1の側面を完全に覆うように形成される。また、絶縁膜19は、紫外光を吸収する材料により構成されており、例えば、SiNが用いられる。
【0086】
上記の光検出素子を用いて、光検出装置を構成した例を
図15に示す。この光検出装置は、共通の支持層71を備えている。支持層71は、例えば、SiO
2又はSiN等で構成された絶縁膜を用いることができる。支持層71には、1つの光検出素子に相当する受光素子100、1つの光検出素子に相当する受光素子200が形成されている。受光素子100、200は、図の上方から照射される光を検出する素子であり、ほぼ同じ大きさに形成される。
【0087】
受光素子100と受光素子200は、層間の絶縁膜19を境界にして形成されている。受光素子100は、透光性基板1、光吸収層2、電極3、電極4、接着層5、絶縁膜6等で構成されている。透光性基板1上に光吸収層2が形成され、かつ、電極3と電極4の一部を覆うように光吸収層2が形成されている。電極3が正電極の場合は、電極4が負電極に相当し、電極3が負電極の場合は、電極4が正電極に相当する。
【0088】
電極3、4は、透光性基板1上に形成されており、電極3、4の一部が光吸収層2内に埋め込まれている。絶縁膜6により、光吸収層2の表面及び側面が完全に覆われて、絶縁膜6の両端は、電極3、4上に形成される。絶縁膜6の両側には、接着層5が形成されており、この接着層5により、透光性基板1と支持層71とが接着される。
【0089】
受光素子100は、ジャンクションダウンで支持層71に、接着層5によりフリップチップ接合されている。絶縁膜19は、
図13、14で説明したものと同様であり、保護膜の性質を有するものであれば特に材料は限定されないが、検出対象となる光を吸収する材料とすることが望ましい。
【0090】
一方、受光素子200は、透光性基板11、光吸収層2、電極31、電極41、接着層51、絶縁膜61等で構成されている。透光性基板11上に光吸収層2が形成され、かつ、電極31と電極41の一部を覆うように光吸収層2が形成されている。すなわち、電極31、41の一部が光吸収層2内に埋め込まれている。また、これらを構成する材料は、光学フィルタを除き、受光素子100とほぼ同様であり、各構成の接合関係も、受光素子100と同様であるので説明を省略する。
【0091】
一方、透光性基板1の裏面全面に光学フィルタ8が形成され、透光性基板11の裏面全面に光学フィルタ81が形成されている。光学フィルタ8は、半導体粒子を含まないペースト状物質又は半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、特定の波長域の光を吸収するフィルタに相当するものである。
【0092】
他方、光学フィルタ81は、半導体粒子を含まないペースト状物質又は半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、特定の波長域の光を吸収する光吸収膜又は特定の波長の光吸収がない膜に相当するものである。
【0093】
光学フィルタ8として、前述したB
2O
3−Bi
2O
3−ZnOという組成からなるガラスペーストを用いた。すなわち、光学フィルタ8は、紫外光B以下の波長を吸収する。また、光学フィルタ81は、ガラスペーストのみからなる膜である。すなわち、光学フィルタ81は、紫外光、可視光、赤外光等を透過させるもので、特定の波長の光吸収がない膜である。
【0094】
これにより、
図1と
図10の光検出素子で説明したように、受光素子100で紫外光Aを検出することができる。また、受光素子200の受光感度曲線T1から受光素子100の受光感度曲線T2を引き算したT3(T3=T1−T2)により、紫外光B及び紫外光Cを検出することができる。
【0095】
第1の実施の形態に係る光検出装置の一構造例を示す模式的断面構造は、
図16に示すように表される。
図16は、
図15の構成に加えて、受光素子100と同構成であるが、受光素子100とは受光面積を異なるように構成した受光素子400が形成されている。光検出素子としての受光素子400について、簡単に説明すると、共通の支持層71上に、層間の絶縁膜19を境界にして受光素子100、200、400が形成される。
【0096】
受光素子400は、透光性基板1、光吸収層2a、電極3、電極4、接着層5、絶縁膜6a、絶縁膜20で構成されている。受光素子100と同じ部分は説明を省略する。受光素子100と異なる部分は、光電変換作用を有する光吸収層2と同じ面積で受光させるのではなく、異なる面積で受光させるために、光吸収層2aの受光面積は、光吸収層2の受光面積よりも小さく形成されていることである。また、光学フィルタ8aの受光面積を光吸収層2aの受光面積に合わせて小さくした。光学フィルタ8aが形成されていない透光性基板1の裏面上及び光吸収層2aが形成されていない透光性基板1の表面上には絶縁膜20を形成している。
【0097】
光学フィルタ8aは、半導体粒子を含まないペースト状物質又は半導体粒子を含むペースト状物質を硬化させて形成されており、特定の波長域の光を吸収する光吸収層に相当するものである。また、光学フィルタ8aは、受光素子100の光学フィルタ8と同じ材料で構成されており、一定の波長範囲λ(下限波長λL〜上限波長λUの範囲)の光を吸収する光吸収膜で構成される。したがって、光学フィルタ8も、同様に、波長範囲λ(下限波長λL〜上限波長λUの範囲)の光を吸収する光吸収膜で構成されている。
【0098】
一方、受光素子200の光学フィルタ81は、紫外光だけでなく可視光から赤外光まで非常に高い透過率を有する非晶性フッ素樹脂等のペーストを硬化させて形成されている。ここで、可視光を含む、紫外光から赤外光までの範囲とは、波長200〜1200nmまでの範囲を想定している。
【0099】
受光素子100の光吸収層2の受光面積をA1、受光素子400の光吸収層2aの受光面積をA4とする。受光素子100と受光素子400との差分信号より、紫外光から赤外光までの波長範囲から波長範囲λを除いた波長範囲λ0の検出信号を計測する。受光素子100と受光素子400は、それぞれ光学フィルタ8、8aにより波長範囲λの光はカットされている。したがって、受光素子100と受光素子400の検出光電流の差(I1−I4)は、紫外光〜赤外光の波長範囲から波長範囲λを除いた波長範囲λ0の光に基づくものである。波長範囲λ0の光が受光面積A1の単位面積あたりに入射した場合の励起される光電流をJ0とすると、受光素子400における受光面積S4についても同様にJ0となり、以下のように表される。
【0100】
(I1−I4)=(A1−A4)×J0
(I1−I4)は測定と計算によってわかり、(A1−A4)も設計により決まるものであるからその値はわかるため、J0は容易に求められる。J0が算出されると、紫外光〜赤外光の範囲で吸収域を持たない受光素子200の受光面積をA2とし、受光面積A2の単位面積あたりで表される光電流をJ2とすると、J2は紫外光、可視光、赤外光に至るまでの光を検出した結果によるものであるため、受光素子200の光電流量(J2×A2)から(J0×A2)を引き算すれば、その差が波長範囲λ0の光量を表わすことになる。すなわち、波長範囲λ0の光量={(J2×A2)−(J0×A2)}である。A2は、A1と同じであっても良い。ただし、差分演算における数値有効数字の桁落ちをできるだけ防ぐため、上記受光素子100、200、400について、波長範囲λの光吸収を行なう光学フィルタを備えた受光素子の受光面積が異なる組み合わせを複数用意し、それぞれの組み合わせに全体の平均値と偏差を計算して最終的な波長範囲λ0の光量を算出するようにしても良い。
【0101】
また、上記のような受光素子を4個用いることで、紫外光A、紫外光B、紫外光Cの各領域の感度を別個に検出することもできる。光学フィルタの構成は、上記の例に限定されるものではなく、他の半導体粒子を含むようにペースト状物質を形成しても良い。
【0102】
半導体の種類と各半導体の吸収端波長を示すグラフは、
図17に示すように表される。ここで、第1の実施の形態に係る光検出装置の一構造例を示す模式的断面構造は、
図15に示すように表される。
図17には、光学フィルタに用いることができる半導体粒子の種類が記載されているが、例えば、
図15の構成において、光学フィルタ8にGaAsの粒子が添加されたフィルタを、光学フィルタ81にCdSeの粒子が添加されたフィルタを用いると、CdSeの吸収端波長710nmからGaAsの吸収端波長870nmの範囲のみに感度を有する光検出装置を構成することができる。
【0103】
また、他の例では、
図15の構成において、光学フィルタ8にSnO
2の粒子が添加されたフィルタを、光学フィルタ81にZnSeの粒子が添加されたフィルタを用いると、SnO
2の吸収端波長380nmからZnSeの吸収端波長500nmの範囲のみに感度を有する青色センサとなる光検出装置を構成することができる。
【0104】
さらには、MgZnO等のような三元混晶系のAlGaAs、InGaAs、InGaN等を用い、組成比率を調整してバンドギャップを調整すれば、任意の波長範囲の光を検出することができる光検出装置を構成することができる。
【0105】
ここで、上記の光学フィルタ8、8a、81は、誘電体多層膜等で構成しても良い。しかし、誘電体多層膜は、形成にコストがかかり、光の入射角によって、カット波長域が変化するという欠点がある。しかし、上記のような光学フィルタでは、半導体のように、バンド端に急峻な吸収係数の変化を持つ材料をフィルタとしても用いることができる。このため、一層形成するだけで、フィルタとしての機能を果たし、膜厚が変化してもカットする波長範囲は変わらない。また、入射光の角度依存性もない。さらに、フリップチップ構造では、あらかじめ基板の裏面にフィルタを塗布しておけば、パターニングは必要ない。
【0106】
[第2の実施の形態]
(光検出装置)
以下、
図18および
図19を参照して第2の実施の形態に係る光検出装置について説明する。
【0107】
なお、第1の実施の形態に係る光検出装置と同様の構成については同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0108】
第2の実施の形態に係る光検出装置は、
図18および
図19に示すように、透光性基板1と、透光性基板1上に配置された光を吸収する光吸収層2と、透光性基板1上に配置された検出電極3,4と、光吸収層2の表面を覆うように形成された絶縁膜6とを備え、検出電極3,4の少なくとも一部は、光吸収層2に埋め込まれており、透光性基板1の裏面から光を入射させ、光吸収層2から発生する電流を検出電極3,4により検出し、光吸収層2は、Ga
2O
3の薄膜で構成されている。
【0109】
また、
図18に示すように、検出電極3,4は、一対の電極で構成され、各電極は櫛型形状を有し、互いに所定の間隔で櫛歯が噛み合わさるようにして形成されている。
【0110】
検出電極3,4の櫛型形状は、特には限定されないが、例えば10μmピッチなどで形成される。
【0111】
なお、検出電極3は+3Vの正極30に接続され、検出電極4は0Vのグラウンド電極40に接続されている。
【0112】
これにより、検出電極3,4には+3Vのバイアス電圧が印加されている。
【0113】
図19において、検出電極3は例えばPtで形成され、絶縁膜6は例えばSiNで形成される。
【0114】
本実施の形態に係る光検出装置によれば、太陽光を照射した場合に、受光感度と波長の相関関係を示す受光感度スペクトルが、UV−BのCIE作用スペクトルと近似させることができる。詳細については後述する。
【0115】
(紫外線の人体に与える影響)
紫外線は、波長によってUV−A(315nm〜400nm)、UV−B(280nm〜315nm)、UV−C(200nm〜280nm)の3種類に分類される。
【0116】
一般的に、紫外線は波長が短いほど人体(生物)に対する有害作用が大きいが、UV−Cは大気圏上部の酸素分子及び成層圏のオゾンによって完全に吸収されてしまうため、オゾン量が多少減少しても地表面には到達しないので、生物に対して問題にはならない。
【0117】
UV−Bは、核酸などの重要な生体物質に損傷をもたらし、光老化(シミやしわ)や皮膚がんの増加、白内障の増加、免疫抑制など人の健康に影響を与えるほか、陸域、水圏生態系に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
【0118】
(紫外線の強度)
地表に到達する紫外線の強度は、波長によって異なっている。
【0119】
図20に、紫外線の大圏気外(A10)及び晴天時の地表(A11)での波長別の強度を示す。
図20を見るとわかるように、UV−Bは大気圏外での強度に比べて、地表では大きく減衰している。
【0120】
UV−Bが短波長ほど大きく減衰しているのは、主に成層圏オゾンの吸収によるものである。
【0121】
UV−Aが僅かに減衰しているのは、主に大気分子、エアロゾル(Aerosol:大気中に浮遊する液体や固体の微粒子)による散乱の影響によるものであり、波長が短いほど散乱の影響は大きい。
【0122】
(紅斑紫外線量)
上述のように、紫外線の人体への影響度は波長によって異なっている。
【0123】
波長毎の人体への相対影響度については、国際照明委員会(CIE)が定義したCIE作用スペクトルが一般的に用いられている。CIE作用スペクトルは、人の皮膚に紅斑(赤い日焼け)を引き起こす作用曲線をいう。
【0124】
図21に、CIE作用スペクトルの相対影響度を示す。なお、紅斑紫外線とは、皮膚に赤い日焼けを生じさせる紫外線のことをいう。
図21に示すように、UV−B領域内の波長280〜300nmでは相対影響度が高く、UV−B領域内の波長300nmからUV−A領域に入った320nmにかけて急激に低くなる。また、320nm以上の波長では相対影響度は殆ど0となる。
【0125】
なお、波長別紫外線強度にCIE作用スペクトルを乗じることにより、紅斑紫外線強度を算出することができる(
図22参照)。そして、この値を波長積分して得られるのが、紅斑紫外線量(
図22の波形内の面積)となる。
【0126】
紅斑紫外線量は、波長別紫外線強度について相対影響度を考慮せずに単純に積分したUV−B量と比較すると、人の健康への影響の強さをより的確に反映した指標といえる。
【0127】
ここで、CIE作用スペクトルの定義式は、S
erをCIE作用スペクトル、λを波長として、次の通りである。すなわち、
S
er(λ)=1.0(250nm<λ<298nm)
S
er(λ)=10
0.094(298-λ)(298nm<λ<328nm)
S
er(λ)=10
0.015(139-λ)(328nm<λ<400nm)
【0128】
(UVインデックス)
UVインデックスは、地上に到達する紫外線量のレベルを分り易く表す指標として、WHO(世界保健機関)がWMO(世界気象機関)やUNEP(国連環境計画)などと共同で開発したもので、一般公衆に紫外線対策の必要性を啓発することを目的としている。
【0129】
UVインデックスは、上述の紅斑紫外線量を日常生活で使い易い簡単な数値とするために紅斑紫外線量を25mW/m
2で割って指標化したものである。
【0130】
例えば、環境省の「紫外線保健指導マニュアル」や世界保健機関(WHO)で示している紫外線対策の解説では、UVインデックスのランクを1から11+とし、11以上はまとめて11+と表記している。
【0131】
気象庁では、290nm〜325nmの波長については、0.5nm毎に紫外線強度を測定し、UVインデックスの算出にあたって、観測を行っていない325nm〜400nmの波長域の寄与分については、モデル計算の結果に基づいて324nmの観測値を使って推定している。
【0132】
本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)は、安価且つ小型に製造することができ、1チップで簡易的にUVインデックスを測定することが可能である。
【0133】
そのため、携帯電話や腕時計等の携帯機器に搭載することが可能であり、常に携帯して環境の紫外線を測定することにより、紫外線の浴びすぎ等を回避するのに資することができる。
【0134】
(第2の実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)の特性等)
図23は、本実施の形態に係る光検出装置のUV−Bについての感度特性を示すグラフである。
【0135】
また、
図24は、受光感度スペクトル(A12)とCIE作用スペクトルの受光感度と波長の関係を示すグラフである。このグラフを見ると分かるように、国際照明委員会(CIE)が定義したCIE作用スペクトルの曲線(CIE)と、本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)による受光感度スペクトルの曲線(A12)とは、比較的一致している。
【0136】
このように、本実施の形態に係る光検出装置(UV−Bセンサ)によれば、UVインデックスを簡易的に測定することが可能である。
【0137】
[第3の実施の形態]
(オートライト装置)
第3の実施の形態に係るオートライト装置は、外部の紫外線を検出する前記第1〜第5の実施の形態に係るいずれかの光検出装置(UVセンサ)と、外部の照度を検出する照度検出装置と、光検出装置および照度検出装置による検出結果に基づいて、照明装置をオン・オフさせる制御装置と備える。
【0138】
また、制御装置は、光検出装置による検出結果または照度検出装置の検出結果の何れかが所定の閾値以下となった場合に照明装置をオンし、光検出装置による検出結果または照度検出装置の検出結果の何れかが所定の閾値以上となった場合にオフするように制御することができる。
【0139】
また、照明装置は、自動車や自転車等の車両に搭載された照明器具、あるいは街灯に搭載された照明器具とすることができる。
【0140】
図25のブロック図に示すように、第3の実施の形態に係るオートライト装置550は、光検出装置(UVセンサ)551と照度センサ552とが、センサ入力インターフェイス553を介して接続されている。
【0141】
UVセンサ551としては、第1、第2の実施の形態に係るいずれかの光検出装置を用いることができる。
【0142】
照度センサ552としては、フォトトランジスタを使うタイプ、フォトダイオードを使うタイプ、フォトダイオードにアンプ回路を追加したタイプ等を適用することができる。
【0143】
センサ入力インターフェイス553には、オートライト制御回路554と、ライト駆動回路555が接続されている。
【0144】
ライト駆動回路555には、自動車のヘッドライト、テールランプや自転車の夜間走行用のライトあるいは街灯の電球等の照明器具560が接続されている。
【0145】
オートライト制御回路554は、UVセンサ551による紫外線の検出結果または照度センサ552による可視光の検出結果の何れかが所定の閾値以下となった場合に照明器具560をオンし、UVセンサ551による紫外線の検出結果または照度センサ552による可視光の検出結果の何れかが所定の閾値以上となった場合にオフするようにライト駆動回路555を制御する。
【0146】
図26は、第3の実施の形態に係るオートライト装置の駆動処理の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0147】
この処理が開始されると、まず、ステップS10で照度センサ552による可視光の検出結果は閾値以下であるか否かが判定され、「Yes」の場合にはステップS11に移行する。
【0148】
ステップS11では、ライト駆動回路555をオンしてステップS12に移行してライト560がオンされてステップS10に戻る。
【0149】
これにより、閾値以下の暗さとなった場合に、自動車等のライトが点灯するという、いわゆる一般的なオートライト装置と同様の動作を行う。
【0150】
一方、ステップS10で「No」と判定された場合にはステップS13に移行する。
【0151】
ステップS13では、UVセンサ551による紫外線(UV−AまたはUV−B)の検出結果は閾値以下であるか否かが判定され、「Yes」の場合にはステップS14に移行する。
【0152】
ステップS14では、ライト駆動回路555をオンしてステップS15に移行してライト560がオンされてステップS10に戻る。
【0153】
これにより、例えば、照度は一定値以上あるが紫外線が所定値以下となったような場合に、自動車等のライトを点灯させるという、一般的なオートライト装置には無い動作を行うことができる。
【0154】
これにより、閾値を適当な値とすることにより、例えば、照度は一定値以上であっても視認性が低下したような環境(曇天や霧等が発生した場合)下で、自動車等のライトを自動的に点灯させることができ、安全性や利便性を向上させることができる。
【0155】
また、ステップS13で「No」と判定された場合には、ステップS16に移行する。
【0156】
ステップS16ではライト駆動回路555をオフして、ステップS17でライト560がオフされてステップS10に戻る。
【0157】
なお、第3の実施の形態に係るオートライト装置の駆動処理は、これに限られず、例えば、照度は一定値以下であっても、紫外線は所定値以上である場合(例えば、所定条件下の曇天など)には、自動車や街灯のライトを点灯させないようにして、不必要なライトの点灯を抑制して、省電力を図れるようにしても良い。
【0158】
また、雪道など紫外線が強い状況において、UVセンサ551による紫外線の検出結果が閾値以上となった場合に、自動車に搭載されるフォグランプ等を自動的にオンさせるようにしても良い。
【0159】
(オートライト装置の自動車への適用例)
図27〜29を参照して、第3の実施の形態に係るオートライト装置550の自動車への適用例について説明する。
【0160】
図27は、第3の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、照度センサのみを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
【0161】
なお、オートライト装置550のUVセンサ551および照度センサ552は、例えば、自動車のダッシュボードの上などに配置される。これにより、フロントウィンドウを介して、車外から太陽光および紫外線がUVセンサ551および照度センサ552に入射して測定される。
【0162】
図27に示すように、太陽800が出て紫外線を含む太陽光が降り注ぐ環境下において走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、
図27(a)に示すように、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
【0163】
そして、例えば、
図27(b)に示すように、高架下600などの比較的短距離の日陰700を走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以下となるため、自動車のヘッドライト560は点灯状態となる。なお、比較的短距離の日陰であるためヘッドライト560は本来不要であるが、ドライバには、一般的に消灯操作をする時間はないといえる。
【0164】
また、高架下600などを通過後には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、
図27(c)に示すように、自動車のヘッドライト560は再び消灯状態となる。
【0165】
図28は、第3の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、照度センサとUVセンサを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
【0166】
図28に示すように、太陽800が出て紫外線を含む太陽光が降り注ぐ環境下において走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果およびUVセンサ551による測定結果は閾値以上となるため、
図28(a)に示すように、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
【0167】
そして、例えば、
図28(b)に示すように、高架下600などの比較的短距離の日陰700を走行する場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以下となるが、路面等から反射した紫外線が入射するためUVセンサ551の測定結果は閾値以上となり、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
【0168】
これにより、比較的短距離の日陰であるためヘッドライト560は本来不要であるので、ドライバの感覚に合わせて消灯状態を維持し、利便性や省電力性を向上させることができる。
【0169】
また、高架下600などを通過後には、照度センサ552による可視光の測定結果およびUVセンサ551による測定結果は閾値以上となるため、
図28(c)に示すように、自動車のヘッドライト560は再び消灯状態となる。
【0170】
図29は、第3の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、曇天下や雨天下において照度センサ552のみを機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
【0171】
曇天下や雨天下においては、雲による光散乱(ミー散乱)が生じる。
【0172】
ミー散乱では、散乱強度が波長に反比例するので、短波長ほど雲900の影響を受け易い。
【0173】
このような状況下において、
図29に示すように、照度センサ552のみを機能させた状態で走行すると、比較的明るい場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるため、自動車のヘッドライト560は消灯状態を維持する。
【0174】
しかし、比較的明るい状況下であってもドライバの視認性を高めるためにヘッドライト560が自動的に点灯して欲しい場合がある。このような状況下においても、ドライバの肉眼は徐々に暗さに慣れてしまうため、手動によるヘッドライト560の点灯を忘れる場合もある。
【0175】
図30は、第3の実施の形態に係るオートライト装置550を自動車に搭載し、曇天下や雨天下において照度センサ552とUVセンサ551を機能させた場合の動作状況を示す説明図である。
【0176】
図30に示すように、照度センサ552とUVセンサ551の両方を機能させた状態で走行すると、曇天や雨天下で比較的明るい場合には、照度センサ552による可視光の測定結果は閾値以上となるが、UVセンサ551による紫外線の測定結果は、雲によるミー散乱の影響で閾値以下となる場合がある。
【0177】
このような状態は、前出の
図26のフローチャートにおけるステップS10→ステップS13→ステップS14→ステップS15の処理に相当し、ヘッドライト560が自動的に点灯される。
【0178】
これにより、曇天や雨天下で視認性が低下した場合に、ドライバが操作することなくヘッドライト560が自動的に点灯され、安全性や利便性を向上させることができる。
【0179】
(紫外線の散乱)
図31に示すように太陽800から地上に達する光には、直射光hν
Dと散乱光がある。
【0180】
直射光hν
Dとは太陽800から直接地上に達する光のことであり、散乱光hν
Rとは太陽800からやってきた光が窒素・酸素などの空気分子やエアロゾル粒子650(固体または液体の微粒子)にあたり、その進行方向が変化し、植物750や人間850等が存在する地上に達する光のことである。
【0181】
図31に示すように散乱光hν
Rは分子や粒子により四方に広がる。光が空気分子により散乱する場合は、光の波長が短いほど散乱しやすくなる性質があり、紫外線は可視光よりも波長が短いために、より散乱され易い。
【0182】
図32は本州付近の夏の晴天時のUVインデックスの日変化を、直射光と散乱光に分けて示したグラフである。
【0183】
図32において、地上に到達する紫外線の総量を太線で、そのうちの直射光によるものを細線で示している。
【0184】
図32を見れば分かるように、地上に達する紫外線の中で、散乱光の寄与が直射光より大きい。したがって、日傘や帽子で日射しを遮ったり、日陰にいても、空が見える所では目で感じる以上に紫外線を浴びることになるので注意が必要である。
【0185】
(地表面の反射と紫外線)
図33に示すように紫外線には、太陽800から直接届く紫外線hν
Dや空気分子やエアロゾル粒子に散乱されて届く紫外線の他に地表面で反射される紫外線hν
Rがある。
【0186】
屋外にいる人850は、上空から地上に向かう紫外線(太陽800からの直射光と大気で散乱された光をあわせたもの)を浴びるだけでなく、地表面で反射された紫外線hν
Rも浴びている。
【0187】
UVインデックスは、このうち上空から地上に向かう紫外線の強度を示したものである。
【0188】
UVインデックスを利用する際に、実際に浴びる紫外線量には紫外線が地表面で反射される効果も含まれていることを考慮に入れる必要がある。
【0189】
なお、地表面での紫外線の反射の割合は、地表面の状態により大きく異なる。例えば、草地やアスファルトの反射率は10%もしくはそれ以下であるが、砂浜では25%、新雪では80%にも達する。
【0190】
さらに、地表面で反射された紫外線hν
Rの一部は上空に向かい、大気等で再び散乱されて地上に向かう。つまり地表面の反射率が大きいところでは、反射率が小さいところより散乱光も強くなっている。
【0191】
例えば、一面雪原の場合には、上空からの紫外線量(UVインデックス)は、反射と散乱の効果により雪がないと仮定した場合と比較して4〜5割ほど増加することが分かっている。
【0192】
上空からの紫外線hν
Dに対して帽子や日傘の利用は有効であるが、地表面から反射してくる紫外線hν
Rについても忘れずに、総合的な紫外線対策をとることが大事である。
【0193】
本発明に係る光検出装置(UVセンサ)によれば、携帯電話や腕時計等の携帯機器に搭載することが可能であり、常に携帯して環境のUVインデックスを簡易的に測定することにより、紫外線の浴びすぎ等を回避することに役立てることができる。
【0194】
[その他の実施の形態]
上記のように、実施の形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、この発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。