(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
所定の通信経路から入力される第1の表示指示情報に基づいて第2の表示指示情報を生成する主表示制御部と、前記主表示制御部から出力される前記第2の表示指示情報を入力して表示内容に反映する表示出力部とを有する表示装置であって、
前記通信経路から入力される前記第1の表示指示情報に基づいて、前記表示出力部の表示要素毎に、正常な表示状態を表す表示基準情報として、表示状態を表す情報及び非表示状態を表す情報の何れかの情報を生成すると共に、前記表示基準情報を記憶する表示基準情報記憶部と、
前記表示出力部の表示要素毎に、前記表示要素の表示有無を制御する最終段電極に印加される電圧を表示状態電圧として検出する表示状態電圧検出部と、
前記表示出力部の表示要素毎に、前記表示状態電圧が所定の範囲内か否かを表す表示状態情報として、前記表示状態電圧が第1閾値より大きい場合には前記表示状態を表す情報を生成すると共に前記表示状態電圧が前記第1閾値より小さい第2閾値未満の場合には前記非表示状態を表す情報を生成し、前記表示状態情報を記憶する表示状態情報記憶部と、
少なくとも表示状態の異常の有無を識別する表示状態識別部と、
を備え、
前記表示状態識別部は、
前記表示出力部の何れかの表示要素について前記第2閾値以上且つ前記第1閾値以下の前記表示状態電圧を検出した時点で表示状態の異常有を検出し、
前記第2閾値以上且つ前記第1閾値以下の前記表示状態電圧が前記表示出力部の全ての表示要素について検出されなかった場合には、前記記憶されている表示基準情報と前記記憶されている表示状態情報とを前記表示出力部の全ての表示要素についてそれぞれ比較し、前記全ての表示要素について情報が一致したときには表示状態の異常無を検出し、前記表示出力部の何れかの表示要素について情報が一致しないときには表示状態の異常有を検出することを特徴とする表示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1に開示された技術を採用すれば、各ドットの電極に現れる電圧が全く変化しないような欠陥を検出することが可能である。しかしながら、全てのドットについて欠陥の有無を検査するためには、表示状態及び非表示状態のそれぞれについて、全てのドットの電圧が規定値であるか否かを判定しなければならない。従って、任意の情報を表示する通常の表示状態で検査を実施することはできず、特定のテストパターンの信号を入力した状態で検査しなければならない。つまり、通常の表示動作中に故障が発生した場合には、故障したドットの箇所が特定の表示状態に制御されるとは限らないので、故障を検出することができない可能性がある。また、表示器以外の故障については、特許文献1の技術では検出できない。
【0009】
例えば、表示制御部と表示部との接続箇所で断線や短絡等の故障が発生した場合や、表示部内で最終段以外のドライバ回路が故障した場合や、外部から侵入した電気ノイズの影響を受けて表示の誤動作が一時的に発生するような状況においては、異常の発生を検出することができない。
【0010】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、様々な要因によって発生する様々な種類の表示の不具合を検出することが可能な表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前述した目的を達成するために、本発明に係る表示装置は、下記(1)〜(4)を特徴としている。
(1) 所定の通信経路から入力される第1の表示指示情報に基づいて第2の表示指示情報を生成する主表示制御部と、前記主表示制御部から出力される前記第2の表示指示情報を入力して表示内容に反映する表示出力部とを有する表示装置であって、
前記通信経路から入力される前記第1の表示指示情報に基づいて、前記表示出力部の表示要素毎
に、正常な表示状態を表す表示基準情報
として、表示状態を表す情報及び非表示状態を表す情報の何れかの情報を生成すると共に、前記表示基準情報を記憶する表示基準情報記憶部と、
前記表示出力部の表示要素毎に、前記表示要素の表示有無を制御する最終段電極に印加される電圧を表示状態電圧として検出する表示状態電圧検出部と、
前記表示出力部の表示要素毎に、前記表示状態電圧が所定の範囲内か否かを表す表示状態情報
として、前記表示状態電圧が第1閾値より大きい場合には前記表示状態を表す情報を生成すると共に前記表示状態電圧が前記第1閾値より小さい第2閾値未満の場合には前記非表示状態を表す情報を生成し、前記表示状態情報を記憶する表示状態情報記憶部と、
少なくとも表示状態の異常の有無を識別する表示状態識別部と
、
を備え、
前記表示状態識別部は、
前記表示出力部の何れかの表示要素について前記第1閾値以上且つ前記第2閾値以下の前記表示状態電圧を検出した時点で表示状態の異常有を検出し、
前記第1閾値以上且つ前記第2閾値以下の前記表示状態電圧が前記表示出力部の全ての表示要素について検出されなかった場合には、前記記憶されている表示基準情報と前記記憶されている表示状態情報とを前記表示出力部の全ての表示要素についてそれぞれ比較し、前記全ての表示要素について情報が一致したときには表示状態の異常無を検出し、前記表示出力部の何れかの表示要素について情報が一致しないときには表示状態の異常有を検出すること。
(2) 上記(1)に記載の表示装置において、
前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、前記表示出力部に対して表示動作を停止するための制御信号を出力すること。
(3) 上記(1)に記載の表示装置において、
前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、前記表示出力部に対して表示状態が異常であることを明示するための制御信号を出力すること。
(4) 上記(1)に記載の表示装置において、
更に、不揮発性メモリを備え、
前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、発生した異常の種類を表す故障情報を生成し、前記故障情報を前記不揮発性メモリ上に自動的に保存すること。
【0012】
上記(1)の構成の表示装置によれば、表示要素(セグメント、あるいはドット)毎に、前記主表示制御部が表示しようとしている状態と、実際に前記表示出力部の最終段電極に印加される電圧の状態とを比較するので、様々な種類の表示の異常について、異常の発生を確実に検出できる。また、特別な検査モードを実行しなくても、通常の表示動作中に、故障の有無を自動的に検出できる。
上記(2)の構成の表示装置によれば、故障の発生により正常な情報を表示できないような状況において、異常な情報が表示されるのを防止することができる。
上記(3)の構成の表示装置によれば、故障の発生により正常な情報を表示できないような状況において異常であることを自動的に明示するので、運転者は故障が生じたことを知ることができる。
上記(4)の構成の表示装置によれば、前記不揮発性メモリ上に記録される故障情報の内容から、故障の種類や故障が発生した箇所を特定することが可能になる。また、一時的に発生した短時間の故障の場合であっても故障の記録が残るので、故障の発生状況を確実に把握することが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の表示装置によれば、様々な要因によって発生する様々な種類の表示の不具合を検出することが可能である。例えば、ノイズなどの影響によって一時的に生じる表示の異常であっても検出可能である。また、また、特別な検査モードを実行しなくても、通常の表示動作中に、故障の有無を自動的に検出できる。
【0014】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の表示装置に関する具体的な実施の形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0017】
<装置の構成>
<全体の構成>
本実施形態における表示装置100の構成例を
図1に示す。
図1に示した表示装置100は、自動車の計器板に搭載されるメータ装置あるいはその一部分として利用することを想定している。
【0018】
具体的には、表示装置100は、自動車の冷却水温度を表示する温度計、車速を表示する速度計、及び燃料残量を表示する燃料計の機能を搭載している。本実施形態においては、表示装置100が表示する温度、車速、及び燃料残量の情報は、同じ車両上に搭載されている電子制御装置(ECU)10によって収集され管理されている。
【0019】
図1に示すように、表示装置100はこの車両に搭載されている車載通信網CAN(Controller Area Network)を介して電子制御装置(ECU)10と接続されている。従って、表示装置100は表示対象の温度、車速、及び燃料残量の情報を車載通信網CANを利用して逐次取得することができる。
【0020】
<表示装置100の構成>
図1に示すように、表示装置100は主要な構成要素として主表示制御部20、不揮発性メモリ30、VFD表示部40、及び電圧検出部50を備えている。
【0021】
VFD表示部40は、VFD(Vacuum Fluorescent Display:蛍光表示管)表示器41、ドライバ部42、及びVFD電源43により構成されている。VFD表示部40は、表示出力信号SG2として主表示制御部20から出力される信号を入力し、この信号に従って温度、車速、及び燃料残量の情報をVFD表示器41に表示する。なお、VFD表示器41の代わりに、例えば液晶表示器や有機EL表示器を用いることも考えられる。
【0022】
主表示制御部20は、マイクロコンピュータ(CPU2)で構成されており、CANコントローラ21、表示制御用出力ポート22、フィードバック信号用入力ポート23、内部メモリ(RAM)24などを内蔵している。
【0023】
また、不揮発性メモリ30としてEEPROMが主表示制御部20の外部に接続されている。この不揮発性メモリ30は、主表示制御部20のマイクロコンピュータが利用する様々な定数データを保持したり、故障情報を記憶するために利用される。
【0024】
電圧検出部50は、VFD表示器41の各セグメントの表示有無を制御する最終段電極(アノード電極)に印加される電圧を、セグメント電圧信号SG3として入力し、フィードバック信号SG4を生成する。このフィードバック信号SG4が主表示制御部20に入力される。
【0025】
主表示制御部20のマイクロコンピュータは、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、主表示制御部20に必要とされる各種の機能を実現する。具体的には、主表示制御部20は車載通信網CANを介して電子制御装置(ECU)10との間でデータの送信及び受信を行う。また、主表示制御部20は車載通信網CANから受信した情報について、必要な処理を施す。
【0026】
すなわち、主表示制御部20はVFD表示部40の表示形式と合うように数値の単位の換算を行ったり、VFD表示部40のセグメントの構成や入力信号の形式と一致するようにフォーマットの変換を行い、VFD表示情報を生成する。このVFD表示情報は、VFD表示部40のそれぞれのセグメントを表示/非表示のいずれの状態に制御するかを表す2値データの集合である。また、主表示制御部20は、生成した前記VFD表示情報を、「表示基準情報D1」として内部メモリ24上に格納する。また、主表示制御部20は、生成した前記VFD表示情報を、表示出力信号SG2として表示制御用出力ポート22から出力する。
【0027】
更に、主表示制御部20は表示状態の異常の有無を識別する。この識別を可能にするために、主表示制御部20はフィードバック信号SG4をフィードバック信号用入力ポート23から入力し、この信号の内容を「表示状態情報D2」として内部メモリ24上に格納する。そして、主表示制御部20は、内部メモリ24上の前記「表示基準情報D1」と「表示状態情報D2」とをセグメント毎に比較し、その結果に基づき表示状態の異常の有無を識別する。
【0028】
また、主表示制御部20は、前記「表示基準情報D1」と「表示状態情報D2」との比較により異常の発生を検出した場合には、VFD表示器41が異常な情報を表示しないように制御すると共に、異常の発生を運転者に知らせるための特別な表示(例えば点滅表示)を行う。また、主表示制御部20は異常の発生を検出した場合には、その異常の種類や発生した箇所などを表す故障情報を生成し、この情報を不揮発性メモリ30に書き込み記録する。
【0029】
<VFD表示器41の構成>
VFD表示器41の外観の具体例を
図3に示す。
図3に示すように、VFD表示器41は、温度計表示部41a、速度計表示部41b、及び燃料計表示部41cを有している。温度計表示部41aは、自動車の冷却水温度を表示するために利用される。速度計表示部41bは、自動車の現在の車速を表示するために利用される。燃料計表示部41cは、燃料残量を表示するために利用される。
【0030】
温度計表示部41a、速度計表示部41b、及び燃料計表示部41cは、それぞれバーグラフや数値を表示できるように多数の表示セグメントで構成されている。多数の表示セグメントはそれぞれ独立して表示のオンオフを切り替えることができる。実際には、セグメント毎に独立したアノード(陽極)電極を有している。従って、各セグメントのアノード電極に印加する電圧のオンオフを切り替えることで、セグメント毎に表示のオンオフを制御することができる。
【0031】
<電子制御装置(ECU)10の構成>
電子制御装置(ECU)10の構成例を
図4に示す。この電子制御装置10は、
図4に示すようにマイクロコンピュータ(CPU1)11、送信データ格納部12、中間バッファ13、及びプロトコル制御部14を備えている。
【0032】
マイクロコンピュータ11は、予め組み込まれているプログラムを実行することにより、この装置を搭載した車両上で様々な情報、すなわち冷却水の温度、車速、燃料残量などの情報を収集して管理する。マイクロコンピュータ11が収集した情報は、他の装置に送信できるように送信データ格納部12上に順次に格納される。
【0033】
送信データ格納部12を構成するメモリ(RAM)は、多数の送信データスロットで構成されている。送信データスロット毎に独立した情報が順番に格納される。プロトコル制御部14の2つの信号線CTX、CRXは、車載通信網CANと接続されている。一方の信号線CTXは、プロトコル制御部14が他の装置に対してデータを送信するために利用される。もう一方の信号線CRXは、プロトコル制御部14が他の装置からデータを受信するために利用される。
【0034】
この車載通信網CANには、
図1に示したように表示装置100が接続されている。従って、電子制御装置10は、車載通信網CANを介して、表示装置100との間でデータの送信及び受信を必要に応じてあるいは定期的に行うことができる。このデータ送受信の手順をプロトコル制御部14が管理する。例えば定期的に、あるいは表示装置100から要求があった時に、プロトコル制御部14は送信データ格納部12に格納されている情報を順番に取り出して、表示装置100に送信する。送信データ格納部12から取り出された情報は、一時的に中間バッファ13上に保持され、プロトコル制御部14の制御のタイミングに合わせて、中間バッファ13からプロトコル制御部14を経由して車載通信網CANに送出される。
【0035】
<VFD表示器41及びドライバ部42の電気回路の構成>
VFD表示器41及びドライバ部42の電気回路の構成例を
図5に示す。VFD表示器41は、
図5に示すように1つのカソード(陰極)電極と、グリッド電極と、n個のアノード(陽極)電極45(1)〜45(n)とを有している。n個のアノード電極のそれぞれが、表示要素であるセグメントに対応している。n個のアノード電極45(1)〜45(n)の各々に印加する電圧のオンオフを切り替えることにより、該当する位置のセグメントの表示のオンオフを個別に制御することができる。
【0036】
ドライバ部42は、ドライバの機能を有する集積回路42aと、セグメント毎に用意された多数のスイッチング回路42bとで構成されている。集積回路42aの入力に、主表示制御部20から出力される表示出力信号SG2が印加される。
【0037】
集積回路42aは、入力される表示出力信号SG2をデコードして、各々のセグメントを制御するための制御信号を生成し、各々の制御信号を該当するセグメントのスイッチング回路42bに印加する。
【0038】
各々のスイッチング回路42bは、VFD表示器41の該当するアノード電極に印加する電圧のオンオフを切り替える。ドライバ部42の電源ラインには、VFD電源43から電源電圧Vcc及びV
EEが印加される。
【0039】
VFD表示器41のグリッド電極には、VFD電源43から電源電圧Vccが印加される。各スイッチング回路42bのスイッチングトランジスタのオンオフに応じて、VFD表示器41の各アノード電極には、電源電圧Vcc又はV
EEに近い電圧が印加される。また、VFD表示器41のカソード電極に接続された2つの端子には、VFD電源43から電源電圧V
K1及びV
K2がそれぞれ印加される。
【0040】
VFD表示器41のn個のアノード電極45(1)〜45(n)は、電圧検出部50の入力端子とそれぞれ接続されている。すなわち、アノード電極45(1)〜45(n)の各々の電圧がセグメント電圧信号SG3として電圧検出部50に印加される。
【0041】
セグメント電圧信号SG3には非常に高い電圧が現れるので、電圧検出部50は、この電圧を主表示制御部20が処理可能な低い電圧に変換し、フィードバック信号SG4として出力する。すなわち、抵抗器で構成される所定の分圧回路が電圧検出部50の内部に備わっている。セグメント電圧信号SG3の各電圧は、分圧回路で分圧されてフィードバック信号SG4になる。
【0042】
フィードバック信号SG4は、VFD表示器41のセグメント数と同数のn個の独立した信号で構成される。なお、n個の独立した信号をそのままフィードバック信号SG4としてパラレル信号の形態で出力しても良いが、配線数を減らすために電圧検出部50の内部でシリアル信号に変換してから出力しても良い。例えば、アナログマルチプレクサを用いてn個の独立した信号を順番に選択すれば、フィードバック信号SG4を出力するために必要な配線の数を大幅に減らすことが可能である。
【0043】
n個のフィードバック信号SG4の電圧については、スイッチング回路42bが導通状態の時の電圧の最大値が例えば5V、スイッチング回路42bが非導通状態の時の電圧の最小値が例えば0Vになるように電圧検出部50内の分圧回路により調整される。
【0044】
<VFD電源43の構成>
VFD電源43の構成例を
図6に示す。VFD電源43には、
図6に示すようにDC−ACコンバータ43a、昇圧トランス43b、整流回路43c、及び平滑回路43dが備わっている。
【0045】
DC−ACコンバータ43aは、車両側の電源回路から供給される直流(DC)電圧(通常は12V)をスイッチングして交流(AC)の電圧を生成する。DC−ACコンバータ43aが生成した交流の電圧が昇圧トランス43bの一次側巻線に供給される。昇圧トランス43bの各二次側巻線には、一次側巻線との巻数比に応じて昇圧された交流電圧が誘起される。
【0046】
昇圧トランス43bの一方の二次側巻線に誘起される電源電圧の交流電圧は、整流回路43cで整流され、平滑回路43dで平滑され、電源電圧Vcc及びV
EEとして出力される。また、昇圧トランス43bのもう一方の二次側巻線に誘起される低電圧の交流電圧は、電源電圧V
K1及びV
K2として出力される。
【0047】
<装置の動作>
図1に示した主表示制御部20の主要な動作を
図2に示す。すなわち、主表示制御部20のマイクロコンピュータ(CPU2)が所定のプログラムを実行することにより、
図2に示す動作が実現される。
図2に示す動作について以下に説明する。
【0048】
ステップS11では、主表示制御部20は、電子制御装置10が車載通信網CANに送信した表示情報(温度、車速、燃料残量)を、受信信号SG1として入力し、主表示制御部20の内部メモリ(例えばRAM24)に格納する。
【0049】
ステップS12では、主表示制御部20は、ステップS11で内部メモリに格納した表示情報に予め定めた変換処理を施すことにより、VFD表示部40に表示される情報に相当する「VFD表示情報」を生成する。
【0050】
実際には、受信信号SG1は温度、車速、燃料残量等を表す数値であるので、主表示制御部20は受信した情報を温度、車速、燃料残量のそれぞれに分離する。そして、温度、車速、燃料残量の情報を、VFD表示器41の温度計表示部41a、速度計表示部41b、燃料計表示部41cにそれぞれ対応付ける。更に、温度の数値を温度計表示部41aの複数のセグメントに対応付け、車速の数値を速度計表示部41bの複数のセグメントに対応付け燃料残量の数値を燃料計表示部41cの複数のセグメントに対応付ける。従って、S12で生成する「VFD表示情報」は、VFD表示器41におけるn個のセグメントの各々の表示/非表示(表示オンオフ)を表すnビットの情報である。
【0051】
ステップS13では、主表示制御部20はS12で生成した「VFD表示情報」を、「表示基準情報D1」として内部メモリ24上に格納する。つまり、主表示制御部20がこれからVFD表示器41に対して表示させようとしている内容が「表示基準情報D1」であり、「表示基準情報D1」の各ビットは、VFD表示器41のn個のセグメントとそれぞれ対応している。
【0052】
ステップS14では、主表示制御部20は、S12で生成した「VFD表示情報」を表示出力信号SG2として表示制御用出力ポート22から出力する。この表示出力信号SG2は、VFD表示器41の各セグメントのオンオフを表す情報を予め定めた規則に従って順番に並べたシリアルデータ、あるいは複数ビットで構成されるパラレルデータとして符号化したデータである。
【0053】
ステップS15では、主表示制御部20は、電圧検出部50から出力されるフィードバック信号SG4をフィードバック信号用入力ポート23から読み取り、「表示状態情報D2」として内部メモリ24上に格納する。
【0054】
実際には、フィードバック信号SG4はアナログ電圧の信号なので、主表示制御部20は内蔵されたA/D変換器を用いて、セグメント毎の電圧を表すデジタル信号に変換する。更に、主表示制御部20はセグメント毎の電圧を予め定めた閾値と比較することにより、各々のセグメントが表示状態か非表示状態かを表す「表示状態情報D2」を生成する。
【0055】
例えば、フィードバック信号SG4の電圧の最大値が5V、最小値が0Vの場合には、最大値よりも小さい閾値VH(例えば3.5V)、及び最小値よりも大きい閾値VL(例えば1V)とSG4の各電圧とを比較する。(SG4の電圧>VH)の条件を満たす場合は「表示状態」とみなし、(SG4の電圧<VL)の条件を満たす場合は「非表示状態」とみなす。どちらの条件も満たさない場合は故障とみなす。全てのセグメントに関する比較結果を、nビットの「表示状態情報D2」としてS15で内部メモリ(RAM)24に格納する。
【0056】
ステップS16では、主表示制御部20は、S13で格納した前記「表示基準情報D1」と、S15で格納した前記「表示状態情報D2」とを内部メモリ(RAM)24から読み込んでこれらを全ビット(全セグメント)について比較する。
【0057】
S16の比較の結果、「表示基準情報D1」と「表示状態情報D2」の全ビットが一致した場合には、主表示制御部20の処理はS17からS11に戻り、一致しないビットを検出した場合には、主表示制御部20の処理はS17からS18に進む。
【0058】
通常の状態であれば、主表示制御部20が出力した表示出力信号SG2と一致するようにVFD表示部40の内部でVFD表示器41のn個のセグメントの表示/非表示が制御されるが、故障などが生じると一致しない状態が発生する。
【0059】
つまり、通常は表示出力信号SG2により表示状態に制御するセグメントについては、対応するスイッチング回路42bが導通状態になって電源電圧Vccに近い電圧がアノード電極45に現れる。また、表示出力信号SG2により非表示状態に制御するセグメントについては、対応するスイッチング回路42bが非導通状態になって電圧V
EEに近い電圧がアノード電極45に現れる。このような電圧がセグメント電圧信号SG3として電圧検出部50で検出され、フィードバック信号SG4として主表示制御部20に入力される。主表示制御部20は、S16で「表示基準情報D1」と「表示状態情報D2」とを比較することにより、表示出力信号SG2と一致する状態でVFD表示器41の各セグメントが制御されているか否かを識別することができる。
【0060】
例えば、集積回路42aやスイッチング回路42bで故障が発生した場合や、外部から侵入したノイズの影響を受けて一時的に誤動作が生じた場合や、複数のセグメントの間で配線の短絡が生じたような場合には、「表示基準情報D1」と「表示状態情報D2」とが一致しない状態が発生する。
【0061】
この不一致が生じた状態は、本来表示すべき主表示制御部20が受信した表示情報(温度、車速、燃料残量)とは異なる情報がVFD表示器41で表示される状態を意味する。このような異常な状態において、ステップS18以降の処理が実行される。
【0062】
ステップS18では、主表示制御部20は、表示出力信号SG2の出力を停止する。すなわち、VFD表示部40に対してVFD表示器41の表示を停止するように主表示制御部20が指示する。
【0063】
ステップS19では、主表示制御部20は、表示出力信号SG2を通常とは異なる特別な状態に制御し、例えばVFD表示器41が異常の発生を表す点滅表示を行うように制御する。これにより、運転者に対して異常の発生を知らせることができる。
【0064】
ステップS20では、主表示制御部20は、検出した異常の種類や発生した箇所などを表す故障情報を生成し、この情報を不揮発性メモリ30に書き込み記録する。例えば、故障が生じたセグメントの番号や、表示状態と非表示状態のいずれで生じる異常かを表す種類の情報などを故障情報として記録する。
【0065】
<表示装置100の利点>
上述の表示装置100は、次のような異常を検出することができる。すなわち、VFD表示部40の内部回路の故障や、VFD表示部40に外部から侵入したノイズの影響による誤動作によって、主表示制御部20が出力した表示出力信号SG2とは異なる情報がVFD表示器41に表示される場合に、この異常を検出できる。
【0066】
また、比較の際の基準となる「表示基準情報D1」を主表示制御部20自身が自動的に生成し、内部メモリ24上に保持しておくので、特別な検査モードに切り替えたり、検査用の表示情報を外部から与えたりする必要がなく、通常の表示動作状態のままで故障の発生を検出できる。また、配線の断線や短絡のような継続的な故障だけでなく、ノイズなどの影響により短時間だけ生じた誤動作についても検出できる。
【0067】
また、異常が発生すると、
図2のステップS18で異常な表示を停止し、ステップS19で異常の発生を表示し、ステップS20で故障情報を故障情報を自動的に記録することができる。
【0068】
<変形例>
図1及び
図5に示したフィードバック信号SG4については、アナログ電圧の信号の代わりにセグメント毎の表示/非表示を表すデジタル信号に変更しても良い。その場合には、各セグメントのセグメント電圧信号SG3のアナログ電圧を予め定めた閾値電圧と比較して2値信号を生成するアナログ比較器を電圧検出部50に内蔵すればよい。この場合は、主表示制御部20の内部にA/D変換器を設ける必要はない。
【0069】
また、
図2に示したステップS15において、いずれかのセグメントについて、表示/非表示のいずれの状態にも属さない規定の範囲外の電圧を検出した場合には、ステップS18以降の処理を実行するように変更しても良い。
【0070】
また、例えば、主表示制御部20が定期的に車載通信網CANから表示情報(温度、車速、燃料残量)を受信するような場合には、
図2に示したステップS11において、受信信号SG1が所定時間以上入力されない場合は、通信の異常とみなしてS18以降の処理を実行するように動作を変更しても良い。また、
図2に示したステップS11において、受信信号SG1にエラー情報が含まれているような場合にも、通信の異常とみなしてS18以降の処理を実行するように動作を変更することが考えられる。
【0071】
<補足説明>
(1)
図1に示した表示装置100は、所定の通信経路(CAN)から入力される第1の表示指示情報(SG1)に基づいて第2の表示指示情報(SG2)を生成する主表示制御部(20)と、前記主表示制御部から出力される前記第2の表示指示情報を入力して表示内容に反映する表示出力部(40)とを有する表示装置である。
また、
図2に示すように、前記通信経路から入力される前記第1の表示指示情報に基づいて、前記表示出力部の表示要素毎の正常な表示状態を表す表示基準情報(D1)を生成すると共に、前記表示基準情報を記憶する表示基準情報記憶部(S13,24)と、前記表示出力部の表示要素毎に、前記表示要素の表示有無を制御する最終段電極(45(1)〜45(n))に印加される電圧(SG3)を表示状態電圧(SG4)として検出する表示状態電圧検出部(50)と、表示要素毎に、前記表示状態電圧が所定の範囲内か否かを表す表示状態情報(D2)を生成し、前記表示状態情報を記憶する表示状態情報記憶部(S15)と、表示要素毎に、前記表示基準情報と前記表示状態情報とを比較して、少なくとも表示状態の異常の有無を識別する表示状態識別部(S16,S17)とを備えている。
【0072】
(2) また、
図2に示すように、前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、前記表示出力部に対して表示動作を停止するための制御信号(SG2)を出力する(S18)。
【0073】
(3) また、
図2に示すように、前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、前記表示出力部に対して表示状態が異常であることを明示するための制御信号(SG2)を出力する(S19)。
【0074】
(4) また、表示装置100は、更に不揮発性メモリ(30)を備え、前記表示状態識別部は、表示状態の異常有を検出した場合に、発生した異常の種類を表す故障情報を生成し、前記故障情報を前記不揮発性メモリ上に自動的に保存する(S20)。