特許第6046426号(P6046426)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046426
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】基板検査装置および基板検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/02 20060101AFI20161206BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20161206BHJP
【FI】
   G01R31/02
   G01R31/28 K
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-201416(P2012-201416)
(22)【出願日】2012年9月13日
(65)【公開番号】特開2014-55879(P2014-55879A)
(43)【公開日】2014年3月27日
【審査請求日】2015年7月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227180
【氏名又は名称】日置電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104787
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 伸司
(72)【発明者】
【氏名】小林 昌史
【審査官】 續山 浩二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−166892(JP,A)
【文献】 特開昭60−142526(JP,A)
【文献】 特開平10−012679(JP,A)
【文献】 特開平06−260540(JP,A)
【文献】 特開2010−014508(JP,A)
【文献】 特開平11−054573(JP,A)
【文献】 実開平01−087256(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/02
G01R 31/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のプローブを有して検査対象の基板に設けられている複数の導体パターンに当該各プローブの各先端部がそれぞれ接触するように構成されたプローブユニットと、当該プローブユニットおよび前記基板のいずれか一方を他方に向けて相対的に移動させる移動処理を実行する移動機構と、前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて前記基板を検査する検査処理を実行する検査部とを備えた基板検査装置であって、
前記移動機構および前記検査部を制御すると共に、前記各先端部と前記各導体パターンとの間の離間距離のばらつきを特定する処理部を備え、
前記各プローブは、互いに近接する一対の前記プローブを1つの組とする複数の組にそれぞれ1つずつ対応付けられた前記各導体パターンに対して当該各組毎に前記各先端部が接触するように配置され、
前記処理部は、前記移動機構を制御して前記移動処理実行させている状態において、前記検査部を制御して、前記各組における前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触しているか否かを当該一対のプローブを介して入出力した前記電気信号に基づいて当該一対のプローブ毎に判別させると共に、前記検査部によって前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触していると判別されたときまでの前記移動機構による前記相対的な移動量に基づいて前記離間距離のばらつきを前記各組毎に特定し、当該離間距離のばらつきの特定が終了した後に前記検査部によって全ての前記プローブの前記各先端部と前記各導体パターンとが接触していると判別されたときに、前記検査部を制御して前記検査処理を実行させる基板検査装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記各組のうちの1つの組についての前記離間距離を基準値として、前記1つの組を除く他の組についての前記離間距離と前記基準値との差分値と前記各組の配置位置とを対応付けた情報を前記離間距離のばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部に記憶させる請求項1記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記処理部は、前記離間距離のばらつきの分布を示す情報に基づいて当該ばらつきの分布を示す画像を表示部に表示させる請求項2記載の基板検査装置。
【請求項4】
互いに近接する一対のプローブを1つの組とする複数の組にそれぞれ1つずつ対応付けられて検査対象の基板に設けられている複数の導体パターンに当該各プローブの各先端部が当該各組毎に接触するように配置されたプローブユニットおよび当該基板のいずれか一方を他方に向けて相対的に移動させる移動処理を実行し、前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて前記基板を検査する検査処理を実行する基板検査方法であって、
前記移動処理を実行している状態において、前記各組における前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触しているか否かを当該一対のプローブを介して入出力した前記電気信号に基づいて当該一対のプローブ毎に判別し、当該一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触していると判別したときまでの前記相対的な移動量に基づいて当該各先端部と前記各導体パターンとの間の離間距離のばらつきを前記各組毎に特定し、当該離間距離のばらつきの特定が終了した後に全ての前記プローブの前記各先端部と前記各導体パターンとが接触していると判別したときに、前記検査処理を実行する基板検査方法。
【請求項5】
前記各組のうちの1つの組についての前記離間距離を基準値として、前記1つの組を除く他の組についての前記離間距離と前記基準値との差分値と前記各組の配置位置とを対応付けた情報を前記離間距離のばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部に記憶させる請求項4記載の基板検査方法。
【請求項6】
前記離間距離のばらつきの分布を示す情報に基づいて当該ばらつきの分布を示す画像を表示部に表示させる請求項5記載の基板検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のプローブを有するプローブユニットを用いて基板を検査する基板検査装置および基板検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の基板検査装置として、特開2011−145136号公報に開示された回路基板検査装置が知られている。この回路基板検査装置は、セットベース、ピンボード、駆動部などを備えて回路基板を検査可能に構成されている。ピンボードには、複数のコンタクトプローブが配設されて、検査の際に各コンタクトプローブが回路基板に接触させられる。また、コンタクトプローブは、被検査基板の導通部分と接触するプランジャー、プランジャーが挿入されるバレル、およびバレル内に配設されてプランジャーを押圧する弾性部材を備えている。プランジャーには、バレルからの先端部の突出量(ストローク)が最大突出量(フルストローク)の2/3のときにバレルに隠れるマーキングが蓄光塗料を塗布することによって形成されている。また、セットベースの上面には、プランジャーの蓄光塗料から発せられる光を検出する受光量センサが設けられている。この回路基板検査装置では、この受光量センサによる光の検出に基づいてプランジャーの突出量(ストローク)が判定され、その突出量が適正な突出量となるように駆動部によってピンボードを移動させることで、プランジャーの突出量がコンタクトプローブ毎に異なる(ばらついている)場合においても、各コンタクトプローブを回路基板に接触させることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−145136号公報(第8−10頁、第1−5図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来の回路基板検査装置には、以下の問題点がある。すなわち、この種の回路基板検査装置では、例えば、駆動部にピンボードをねじ止めして取り付ける際のねじの締め付け方によっては、駆動部に対してピンボードが傾斜した状態で取り付けられることがある。このようなときには、コンタクトプローブ毎のプランジャーの突出量にばらつきがない(または、小さい)場合においても、回路基板と各コンタクトプローブの先端部との間の離間距離がコンタクトプローブ毎に異なる(ばらつく)こととなるため、各コンタクトプローブの先端部による回路基板に対する押圧力がコンタクトプローブ毎に異なることとなり、これに起因して検査精度が低下するおそれがある。この場合、回路基板と各コンタクトプローブの先端部との間の離間距離のばらつきを特定することができれば、その結果から駆動部に対するピンボードの傾斜状態を把握することができ、この結果、ピンボードの傾斜状態を是正することができる。しかしながら、上記の回路基板検査装置では、コンタクトプローブ毎のプランジャーの突出量を判定することができるものの、回路基板と各コンタクトプローブの先端部との間の離間距離をコンタクトプローブ毎に特定することができないため、このような場合の対応が困難となっている。
【0005】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであり、基板検査の精度を向上し得る基板検査装置および基板検査方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成すべく請求項1記載の基板検査装置は、複数のプローブを有して検査対象の基板に設けられている複数の導体パターンに当該各プローブの各先端部がそれぞれ接触するように構成されたプローブユニットと、当該プローブユニットおよび前記基板のいずれか一方を他方に向けて相対的に移動させる移動処理を実行する移動機構と、前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて前記基板を検査する検査処理を実行する検査部とを備えた基板検査装置であって、前記移動機構および前記検査部を制御すると共に、前記各先端部と前記各導体パターンとの間の離間距離のばらつきを特定する処理部を備え、前記各プローブは、互いに近接する一対の前記プローブを1つの組とする複数の組にそれぞれ1つずつ対応付けられた前記各導体パターンに対して当該各組毎に前記各先端部が接触するように配置され、前記処理部は、前記移動機構を制御して前記移動処理実行させている状態において、前記検査部を制御して、前記各組における前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触しているか否かを当該一対のプローブを介して入出力した前記電気信号に基づいて当該一対のプローブ毎に判別させると共に、前記検査部によって前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触していると判別されたときまでの前記移動機構による前記相対的な移動量に基づいて前記離間距離のばらつきを前記各組毎に特定し、当該離間距離のばらつきの特定が終了した後に前記検査部によって全ての前記プローブの前記各先端部と前記各導体パターンとが接触していると判別されたときに、前記検査部を制御して前記検査処理を実行させる
【0007】
また、請求項2記載の基板検査装置は、請求項1記載の基板検査装置において、前記処理部は、前記各組のうちの1つの組についての前記離間距離を基準値として、前記1つの組を除く他の組についての前記離間距離と前記基準値との差分値と前記各組の配置位置とを対応付けた情報を前記離間距離のばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部に記憶させる。
【0008】
また、請求項3記載の基板検査装置は、請求項2記載の基板検査装置において、前記処理部は、前記離間距離のばらつきの分布を示す情報に基づいて当該ばらつきの分布を示す画像を表示部に表示させる。
【0009】
また、請求項4記載の基板検査方法は、互いに近接する一対のプローブを1つの組とする複数の組にそれぞれ1つずつ対応付けられて検査対象の基板に設けられている複数の導体パターンに当該各プローブの各先端部が当該各組毎に接触するように配置されたプローブユニットおよび当該基板のいずれか一方を他方に向けて相対的に移動させる移動処理を実行し、前記プローブを介して入出力した電気信号に基づいて前記基板を検査する検査処理を実行する基板検査方法であって、前記移動処理を実行している状態において、前記各組における前記一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触しているか否かを当該一対のプローブを介して入出力した前記電気信号に基づいて当該一対のプローブ毎に判別し、当該一対のプローブの前記各先端部と前記導体パターンとが接触していると判別したときまでの前記相対的な移動量に基づいて当該各先端部と前記各導体パターンとの間の離間距離のばらつきを前記各組毎に特定し、当該離間距離のばらつきの特定が終了した後に全ての前記プローブの前記各先端部と前記各導体パターンとが接触していると判別したときに、前記検査処理を実行する
【0010】
また、請求項5記載の基板検査方法は、請求項4記載の基板検査方法において、前記各組のうちの1つの組についての前記離間距離を基準値として、前記1つの組を除く他の組についての前記離間距離と前記基準値との差分値と前記各組の配置位置とを対応付けた情報を前記離間距離のばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部に記憶させる。
【0011】
また、請求項6記載の基板検査方法は、請求項5記載の基板検査方法において、前記離間距離のばらつきの分布を示す情報に基づいて当該ばらつきの分布を示す画像を表示部に表示させる。
【発明の効果】
【0012】
請求項1記載の基板検査装置、および請求項4記載の基板検査方法では、プローブユニットおよび基板のいずれか一方を他方に向けて相対的に移動させる移動処理を実行している状態において、各組における一対のプローブと導体パターンとが接触していると判別したときまでの基板に対するプローブユニットの相対的な移動量に基づいて各プローブの先端部と各導体パターンとの間の各組毎の離間距離のばらつきを特定する。このため、この基板検査装置および基板検査方法によれば、移動機構の取り付け部に対してプローブユニットが傾斜した状態で取り付けられていたり、プローブの先端部の突出量が不均一であったりすることを、離間距離のばらつきの状況から容易に把握することができる。このため、この基板検査装置および基板検査では、プローブユニットの取り付け状態を修正したり、不均一なプローブの突出量を是正したりするメンテナンスを行うことで、基板検査の精度を十分に向上させることができる。また、この基板検査装置および基板検査方法では、移動処理を実行している状態で離間距離のばらつきを特定した後に検査対象の基板の検査処理を実行する。つまり、離間距離のばらつきの特定と検査処理とを連続して行う。このため、この基板検査装置および基板検査方法によれば、離間距離のばらつきを特定する処理を検査とは別に実行する必要がないため、その分検査効率を十分に向上させることができる。
【0013】
また、請求項2記載の基板検査装置、および請求項5記載の基板検査方法では、1つの組についての離間距離を基準値として、その1つの組を除く他の組についての離間距離と基準値との差分値と各組の配置位置とを対応付けて離間距離のばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部に記憶させる。このため、この基板検査装置および基板検査方法によれば、必要に応じて記憶部からその情報を読み出して、その情報を解析することで、移動機構の取り付け部に対してプローブユニットが傾斜していることや、プローブの先端部の突出量が不均一であることを容易に把握することができる。
【0014】
また、請求項3記載の基板検査装置、および請求項6記載の基板検査方法では、離間距離のばらつきの分布を示す情報に基づいてばらつきの分布を示す画像を表示部に表示させることにより、移動機構の取り付け部に対してプローブユニットが傾斜していることや、プローブの先端部の突出量が不均一であることを、その画像から直感的に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】基板検査装置1の構成を示す構成図である。
図2】プローブユニット2の構成を示す構成図である。
図3】プローブユニット2の構成を示す平面図である。
図4】基板検査装置1を用いた基板検査方法を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
最初に、基板検査装置1の構成について説明する。図1に示す基板検査装置1は、同図に示すように、プローブユニット2、移動機構3、載置台4、測定部5、検査部6、記憶部7および処理部8を備えて、後述する基板検査方法に従って基板100を検査可能に構成されている。
【0018】
プローブユニット2は、一例として、図2に示すように、支持部11、複数のプローブ12、および電極板13を備えて構成されている。
【0019】
支持部11は、図2に示すように、一例として、第1支持板31、第2支持板32および連結部33を備えて、プローブ12を支持可能に構成されている。第1支持板31は、プローブ12の先端部21側を支持する部材であって、非導電性を有する樹脂材料等によって板状に形成されている。また、第1支持板31には、複数の挿通孔が形成されている。この場合、挿通孔は、プローブ12の先端部21の挿通を可能とし、プローブ12の中央部22の挿通を規制可能な大きさ、つまり、その直径が、先端部21の直径よりも大径で、かつ中央部22の直径よりも小径となるように形成されている。
【0020】
第2支持板32は、プローブ12の基端部23側を支持する部材であって、非導電性を有する樹脂材料等によって板状に形成されている。また、第2支持板32には、複数の挿通孔が形成されている。この場合、挿通孔は、プローブ12の中央部22の挿通を可能とする大きさ、つまり、その直径が、中央部22の直径よりも大径となるように形成されている。
【0021】
連結部33は、図2に示すように、第1支持板31と第2支持板32とを平行な状態で連結する。
【0022】
プローブ12は、検査の際に基板100の導体パターン101(導体パターンに相当する:図4参照)に先端部21を接触させて電気信号の入出力を行うために用いられ、一例として、導電性を有する金属材料(例えば、ベリリウム銅合金、SKH(高速度工具鋼)およびタングステン鋼など)によって弾性変形可能な棒状に形成されている。また、図2に示すように、プローブ12の先端部21および基端部23は、それぞれ鋭利に形成されている。また、プローブ12の中央部22の周面には、絶縁層が形成されている。このため、中央部22は、その直径が先端部21の直径および基端部23の直径よりも大径となっている。
【0023】
このプローブユニット2では、プローブ12が、図2に示すように、先端部21が支持板31の挿通孔に挿通され、基端部23が第2支持板32の挿通孔に挿通された状態で支持部11によって支持されている。また、プローブ12は、同図に示すように、初期状態において中央部22がやや湾曲した状態で支持部11によって支持されている。この場合、プローブ12は、基板100に近接する向きにプローブユニット2が全体として移動させられたときに、基板100の導体パターン101に先端部21が接触し、この際に加わる導体パターン101からの押圧力(反力)に応じて中央部22の湾曲量が増減し、これによって支持部11(第1支持板31)からの突出量が変化(増減)する。
【0024】
また、このプローブユニット2では、図3に示すように、各プローブ12が、互いに近接する一対のプローブ12を1つの組とする複数(この例では、110個)の組で構成されている。また、各プローブ12は、各組における一対のプローブ12が各組にそれぞれ対応付けられた導体パターン101に接触するように(つまり、各組毎に同じ導体パターン101に接触するように)各プローブ12が配置されている。
【0025】
電極板13は、非導電性を有する樹脂材料等によって板状に形成されて、図2に示すように、支持部11の第2支持板32の上部に配設されている。また、電極板13における各プローブ12の各基端部23との接触部位には、導電性を有する端子が嵌め込まれており、この各端子には、プローブ12と測定部5とを電気的に接続するための図外のケーブルがそれぞれ接続されている。
【0026】
移動機構3は、プローブユニット2を取り付けるための図外の取り付け部を備えて構成され、処理部8の制御に従い、プローブユニット2を載置台4(載置台4に載置されている基板100)に対して近接する向きおよび離反する向きに移動させる移動処理を実行する。載置台4は、基板100を載置可能に構成されると共に、載置された基板100を固定可能に構成されている。測定部5は、処理部8の制御に従い、プローブ12を介して入出力する電気信号に基づいて抵抗値Rmを測定する。
【0027】
検査部6は、処理部8の制御に従い、プローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて測定部5によって測定された抵抗値Rmから基板100の良否(導体パターン101の断線や短絡の有無)を検査する検査処理を実行する。また、検査部6は、移動機構3によって移動処理が実行されている状態において、プローブユニット2の各組における一対のプローブ12と基板100の導体パターン101とが接触しているか否かを、一対のプローブ12を介して入出力した電気信号に基づいて判別する接触判定処理を実行する。
【0028】
記憶部7は、処理部8の制御に従い、測定部5によって測定された抵抗値Rmを一時的に記憶する。また、検査部6によって実行される検査処理において用いられる基準値Rsを記憶する。さらに、記憶部7は、処理部8によって生成される後述する分布データDdを記憶する。
【0029】
処理部8は、移動機構3による移動処理、および検査部6による検査処理を制御する。また、処理部8は、移動開始時点から各組における一対のプローブ12と導体パターン101とが接触したとき(検査部6によってその旨が判別されたとき)までに移動機構3がプローブユニット2を移動させた相対的な移動量L(初期位置からの移動量)を特定すると共に、その移動量Lに基づいて移動開始時点(初期状態)における各プローブ12の先端部21と各導体パターン101との間の離間距離Aを各組毎に特定する。さらに、処理部8は、各組についての離間距離Aのばらつきの分布を示す分布データDdを生成して記憶部7に記憶させる。また、処理部8は、分布データDdに基づいて離間距離Aのばらつきの分布を示す画像を生成して図外の表示部に表示させる。
【0030】
次に、基板検査装置1を用いて基板100の検査を行う基板検査方法について、図面を参照して説明する。
【0031】
まず、載置台4の載置面に基板100を載置し、次いで、図外の固定具によって基板100を載置台4に固定する。続いて、基板検査装置1を作動させる。この際に、処理部8が、測定部5を制御して測定処理を実行させる。この測定処理では、測定部5は、各プローブ12を介して入出力する電気信号に基づいて抵抗値Rmを測定する処理を予め決められた時間間隔で繰り返して実行する。
【0032】
また、処理部8は、移動機構3を制御して移動処理を実行させる。この移動処理では、移動機構3は、基板100(載置台4の載置面)に対して近接する向きにプローブユニット2を移動(降下)させる。
【0033】
また、処理部8は、検査部6を制御して、接触判定処理を実行させる。この接触判定処理では、検査部6は、測定部5によって繰り返して測定される抵抗値Rmと記憶部7に記憶されている基準値Rsとを比較して各組における一対のプローブ12の間の抵抗値Rmが基準値Rs以下の値となったときに、その一対のプローブ12(例えば、図4に示す組C1における一対のプローブ12)と導体パターン101とが接触したと判定する(以下、「接触判定がされた」ともいう)。この場合、基準値Rsは、各組における一対のプローブ12が導体パターン101に接触しているときに測定部5によって測定される抵抗値Rmよりもやや大きい値に規定されている。
【0034】
また、処理部8は、検査部6によって接触判定がされたときには、移動機構3によるプローブユニット2の移動開始時点から接触判定がされたときまでに移動機構3がプローブユニット2を移動させた移動量Lを特定する。また、処理部8は、各プローブ12の先端部21の初期位置(移動処理の開始前の位置)と各導体パターン101との間の離間距離Aを移動量Lに基づいて特定する。
【0035】
次いで、処理部8は、全ての組における一対のプローブ12の各々について検査部6によって接触判定がされる度に、移動量Lの特定、および移動量Lに基づく離間距離Aの特定を行う。また、処理部8は、全ての組について離間距離Aの特定が完了したときには、各組毎の離間距離Aのばらつきを特定する。具体的には、処理部8は、検査部6によって最初に接触判定がされた特定の1つの組(各組のうちの1つの組の一例であって、この例では、図4に示す組C1)についての離間距離Aを基準値として、その基準値と他の組についての離間距離Aとの差分値を各組毎に算出する。続いて、各組の配置位置と算出した差分値とを対応付けた分布データDdを離間距離Aのばらつきの分布を示す情報として生成して記憶部7に記憶させる。
【0036】
一方、処理部8は、すべてのプローブ12が導体パターン101に接触した(検査部6によって接触判定がされた)ときには、移動機構3を制御して、予め決められた移動量だけプローブユニット2をさらに移動(下降)させる。これにより、すべてのプローブ12の先端部21が導体パターン101に確実に接触させられる。
【0037】
次いで、処理部8は、検査部6を制御して検査処理を実行させる。この検査処理では、検査部6は、測定部5によって測定された抵抗値Rmに基づいて導体パターン101の断線および短絡の有無を検査する。続いて、処理部8は、検査結果を図外の表示部に表示させる。以上により、基板100の検査が終了する。
【0038】
また、処理部8は、分布データDdに基づいて離間距離Aのばらつきの分布を示す画像を生成して表示部に表示させる。ここで、離間距離Aのばらつきが大きいときには、移動機構3の取り付け部に対してプローブユニット2が傾斜した状態で取り付けられていたり、プローブユニット2の支持部11からのプローブ12の先端部21の突出量が不均一であったりする可能性がある。このような状態では、各プローブ12の先端部21が導体パターン101を押圧する押圧に差が生じて、検査精度の低下の原因となるおそれがある。この基板検査装置1では、分布データDdに基づいて生成した離間距離Aのばらつきの分布を示す画像から、移動機構3の取り付け部に対してプローブユニット2が傾斜していることや、プローブ12の先端部21の突出量が不均一であることを容易に把握することが可能となっている。
【0039】
具体的には、例えば、プローブユニット2の1つの端部から、その端部に対向する他の端部に向かうに従って離間距離Aが徐々に大きく(または、小さく)なる様子を示す画像が表示されたときには、その画像からプローブユニット2が傾斜していることを容易に把握することができる。また、プローブユニット2における一部のプローブ12の離間距離Aだけが大きい(または小さい)様子を示す画像が表示されたときには、その画像からプローブ12の先端部21の突出量が不均一であることを容易に把握することができる。このため、この基板検査装置1では、このような分布データDdを活用したメンテナンスを行うことができ、この結果、検査精度の低下の原因を確実に除去することが可能となっている。
【0040】
次いで、他の基板100を検査するときには、新たな基板100を載置台4に載置して固定し、続いて、基板検査装置1を作動させる。この際に、処理部8が、上記した各処理を実行する。この場合、処理部8は、移動機構3によって上記した移動処理が実行されている状態において、各プローブ12の先端部21と各導体パターン101との間の各組毎の離間距離Aのばらつきを特定して、分布データDdを生成する。また、処理部8は、上記したように各部を制御して、検査処理を実行させる。
【0041】
このように、この基板検査装置1および基板検査方法では、プローブユニット2を基板100に向けて移動させる移動処理を実行している状態において、各組における一対のプローブ12と導体パターン101とが接触していると判別したときまでのプローブユニット2の移動量L(初期位置からの移動量)に基づいて各プローブ12の先端部21と各導体パターン101との間の各組毎の離間距離Aのばらつきを特定する。このため、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、移動機構3の取り付け部に対してプローブユニット2が傾斜した状態で取り付けられていたり、プローブ12の先端部21の突出量が不均一であったりすることを、離間距離Aのばらつきの状況から容易に把握することができる。このため、この基板検査装置1および基板検査方法では、プローブユニット2の取り付け状態を修正したり、不均一なプローブ12の突出量を是正したりするメンテナンスを行うことで、基板検査の精度を十分に向上させることができる。また、この基板検査装置1および基板検査方法では、基板100に向けて移動させる移動処理を実行している状態で離間距離Aのばらつきを特定する。つまり、検査対象の基板100の検査の実行時において離間距離Aのばらつきを特定する。このため、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、離間距離Aのばらつきを特定する処理を検査とは別に実行する必要がないため、その分検査効率を十分に向上させることができる。
【0042】
また、この基板検査装置1および基板検査方法では、1つの組についての離間距離Aを基準値として、その1つの組を除く他の組についての離間距離Aと基準値との差分値と各組の配置位置とを対応付けて離間距離Aのばらつきの分布を示す分布データDdを生成して記憶部7に記憶させる。このため、この基板検査装置1および基板検査方法によれば、必要に応じて記憶部7から分布データDdを読み出して、その分布データDdを解析することで、移動機構3の取り付け部に対してプローブユニット2が傾斜していることや、プローブ12の先端部21の突出量が不均一であることを容易に把握することができる。
【0043】
また、この基板検査装置1および基板検査方法では、分布データDdに基づいて離間距離Aのばらつきの分布を示す画像を生成して表示部に表示させることにより、移動機構3の取り付け部に対してプローブユニット2が傾斜していることや、プローブ12の先端部21の突出量が不均一であることを、その画像から直感的に把握することができる。
【0044】
なお、基板検査装置および基板検査方法は、上記の構成および方法に限定されない。例えば、離間距離Aのばらつきを特定する処理を1回の検査毎に実行する例について上記したが、離間距離Aのばらつきを特定する処理を複数回の検査毎に1回実行する構成および方法を採用することもできる。また、検査対象の基板100と同様に構成されたダミー基板を用いて離間距離Aのばらつきを特定する処理を実行する構成および方法を採用することもできる。
【0045】
また、処理部8が、分布データDdに基づいて離間距離Aのばらつきの分布を示す画像を生成して表示部に表示させる例について上記したが、分布データDdをパーソナルコンピューター等の外部機器で取り込んで離間距離Aのばらつきの分布を示す画像を表示させたり、プローブユニット2が傾斜しているか否かや、プローブ12の先端部21の突出量が不均一であるか否かを分布データDdを用いて外部機器によって判定したりする構成および方法を採用することもできる。
【0046】
また、弾性変形可能な棒状のプローブ12を備えたプローブユニット2を用いる例について上記したが、筒状の筐体と、基端部側が筐体内に収容された棒状(針状)のスライド部とを備えて、コイルばねによって付勢されて筐体からの先端部の突出量が変化するように構成されたプローブを備えたプローブユニットを用いる構成および方法を採用することもできる。
【0047】
また、プローブユニット2を基板100に向けて移動させる構成および方法について上記したが、基板100をプローブユニット2に向けて移動させる構成および方法を採用することもできる。この構成および方法では、基板100をプローブユニット2に向けて移動させた移動量が上記した移動量L(相対的な移動量)に相当する。また、プローブユニット2と基板100とが互いに近接するようにプローブユニット2および基板100の双方を移動させる構成および方法を採用することもできる。この構成および方法では、プローブユニット2を基板100に向けて移動させた移動量と、基板100をプローブユニット2に向けて移動させた移動量との合計値が上記した移動量L(基板100に対するプローブユニット2の相対的な移動量)に相当する。
【符号の説明】
【0048】
1 基板検査装置
2 プローブユニット
3 移動機構
6 検査部
7 記憶部
8 処理部
12 プローブ
21 先端部
100 基板
101 導体パターン
A 離間距離
Dd 分布データ
L 移動量
図1
図2
図3
図4