(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046435
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】駐車場のロック装置
(51)【国際特許分類】
G07B 15/00 20110101AFI20161206BHJP
【FI】
G07B15/00 L
【請求項の数】7
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-216455(P2012-216455)
(22)【出願日】2012年9月28日
(65)【公開番号】特開2014-71608(P2014-71608A)
(43)【公開日】2014年4月21日
【審査請求日】2015年3月31日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】古本 征久
(72)【発明者】
【氏名】六本木 恵一
【審査官】
小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−144432(JP,A)
【文献】
特開2005−105535(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07B 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられており、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けられていることを特徴とする駐車場のロック装置。
【請求項2】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有していることを特徴とする請求項1に記載の駐車場のロック装置。
【請求項3】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駐車場のロック装置。
【請求項4】
前記切欠きは、凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項3に記載の駐車場のロック装置。
【請求項5】
前記切欠きは、前記車両の幅方向に関する両端のうち前記車室の一側から遠い側の端において前記凹んだ弧状の部分を一部に有することを特徴とする請求項4に記載の駐車場のロック装置。
【請求項6】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駐車場のロック装置。
【請求項7】
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の駐車場のロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は駐車場のロック装置に係り、特に、スライドドアが装備された車両において、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの損傷を確実に防止することを可能とした駐車場のロック装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、時間貸し駐車場に設置される駐車場システムとしては、例えば、駐車場の車室ごとに、車両検出器、ロック板などを設置するとともに、車両の駐車料金の算出、表示、精算などを行う精算機を設置し、車両検出器により駐車車両を検出して一定時間経過するとロック板を上昇させて退出を阻止するとともに駐車時間の計測を始め、精算機により駐車料金が精算されるとロック板が下降して退出を許可するようにしたものがある。
【0003】
このような駐車場のロック装置として、従来、例えば、個別の駐車区域に入車した車両を検知したときに生成される車両検知信号に基づいて当該駐車区域内に設置したロック板を上昇させ、駐車車両の出車を阻止する一方、時間当たりの金額で定められる駐車料金の精算の完了に基づいてロック板を下降させ、当該駐車車両の出車を可能にするとともに、駐車料金の精算が完了したときにロック板を下降させ、精算した駐車料金に相当する時間が経過するまで、ロック板を下降状態に維持するように制御する制御手段を備えるようにした技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
また、その他のロック装置として、従来、例えば、車道に形成された駐車エリアにロック装置を設置し、駐車料金が支払われた場合に、ロック装置を下降させるようにした縦列駐車用のロック装置に関する技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−074429号公報
【特許文献2】特開平04−203177号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記特許文献1に記載の技術においては、ロック板を上昇させた際に、ロック板の上端部が車両の車体の下面に当接することになり、前記特許文献2に記載の技術においては、車両の中央側に対応する位置に切欠きが形成されているが、やはり、ロック板を上昇させた際に、ロック板の上端部が車両の車体の下面に当接することになる。
【0007】
そのため、例えば、いわゆるスライドドアを装備した車両においては、ロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させようとした場合に、スライドドアの下端と、ロック板の上端とが接触してしまい、スライドドアを開くことができなかったり、あるいは、とスライドドアを閉じることができない場合があり、さらに、スライドドアの開閉動作時に、スライドドアの下面を損傷してしまうおそれがあるという問題を有している。
【0008】
本発明は前記した点に鑑みてなされたものであり、スライドドアが装備された車両において、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの損傷を確実に防止することのできる駐車場のロック装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は前記目的を達成するために、請求項1の発明に係る駐車場のロック装置は、駐車場の車室に該車室に駐車した車両のロックを行うためのロック板を昇降自在に設置し、
前記ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、前記ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部が設けられて
おり、
前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の幅寸法と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けられていることを特徴とする。
請求項
2に係る発明は、請求項
1において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向に関して、前記車室の一側から延びており、前記車室の幅寸法から前記
軽自動車の幅寸法を引いた差よりも大きな幅寸法を有していることを特徴とする。
【0010】
請求項
3に係る発明は、請求項1
または請求項2において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きであることを特徴とする。
請求項
4に係る発明は、請求項
3において、前記切欠きは、
凹んだ弧状の部分を
一部に有することを特徴とする。
請求項
5に係る発明は、請求項
4において、前記切欠きは、前記車両の幅方向に関する両端のうち前記車室の一側から遠い側の端において前記
凹んだ弧状の部分を
一部に有することを特徴とする。
【0011】
請求項
6に係る発明は、請求項1
または請求項2において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体であることを特徴とする。
【0012】
請求項
7に係る発明は、請求項1
または請求項2において、前記干渉抑制部は、前記車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る発明によれば、ロック板の車両の幅方向一側に対応する位置には、ロック板と駐車した車両の扉動作との干渉を抑制する干渉抑制部を設けるようにしているので、車両の幅方向一側に対応する位置に干渉抑制部が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、干渉抑制部により、スライドドアの下端と、ロック板の上端との干渉を抑制することができ、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
また、干渉抑制部を車両の幅寸法
と軽自動車の幅寸法との差に基づいて計算した位置に設けるようにしているので、車両の幅寸法が異なる場合でも、車両の幅方向一側に干渉抑制部を設けることができ、幅寸法が異なる車両のスライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0015】
請求項
3に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた切欠きとしているので、車両の幅方向一側に切欠きが位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、切欠きにより、スライドドアの下端と、ロック板の上端との接触を防止することができ、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0016】
請求項
6に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた回転体としているので、車両の幅方向一側に回転体が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、回転体がスライドドアの下端に接触しながら回転し、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0017】
請求項
7に係る発明によれば、干渉抑制部を車両の幅方向一側に対応する位置に設けられた弾性体としているので、車両の幅方向一側に弾性体が位置することになり、車両が駐車してロック板が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端が弾性体に接触して、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態を示す概略構成図である。
【
図2】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【
図3】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの形成位置を示す説明図である。
【
図4】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの変形例を示す概略構成図である。
【
図5】本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態における切欠きの他の変形例を示す概略構成図である。
【
図6】本発明に係る駐車場のロック装置の第2実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【
図7】本発明に係る駐車場のロック装置の第3実施形態におけるロック板を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は本発明に係る駐車場のロック装置の第1実施形態を示す概略図である。
図1に示すように、本実施形態のロック装置1は、駐車場に設置された車室2の図において左側に設置されるものであり、このロック装置1は、車室2に駐車した車両3のロックを行うためのロック板4を備えている。
【0022】
ロック板4は、駆動装置5により昇降自在とされている。そして、ロック板4は、車室2に車両3が駐車していない状態では、下降状態に保持されており、車室2に設置された車両センサ(図示せず)により車両3の入庫を検出した場合に上昇されて、車両3を出庫できないようにロックするように構成されている。
【0023】
また、本実施形態においては、
図2に示すように、ロック板4の一側には、ロック板4の角部を斜めに切欠いてなる干渉抑制部としての切欠き6が形成されており、この切欠き6は、車室2に駐車する車両3の幅寸法に基づいて計算した位置に設けられている。すなわち、
図3に示すように、本実施形態においては、ロック装置1が車室2の左側に設置されているので、車室2の右端に車両3が駐車した場合に、車両3がロック装置1から最も離れる位置となる。そのため、車室2の右端に車両3が駐車した場合に、車両3の左側のスライドドアに対応する位置に切欠き6を形成するようにすればよい。
【0024】
このとき、車両3の幅寸法は、車両3の大きさによって異なるが、軽自動車などの小型の車両3の幅寸法をWs、大型車などの大型の車両3の幅寸法をWlとした場合に、小型の車両3の幅寸法Wsの位置に切欠き6の右端が位置するようにすればよく、これにより、切欠き6の右端位置が決定される。また、車両3が車室2の左端に駐車した場合は、車両3の大きさにかかわらず、車両3の左端が車室2の左端に位置することになるので、切欠き6の左端は、ロック板4の左端まで位置する必要がある。したがって、切欠き6の長さ寸法Lは、車室2の幅寸法W−小型の車両3の幅寸法Wsにより決定されるものである。これにより、例えば、大型の車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は切欠き6上に位置することになる。
【0025】
なお、切欠き6の形状としては、前記斜めに切欠いた形状に限定されるものではなく、車両3のスライドドアと干渉しない形状であれば、例えば、
図4に示すように、四角形状に切欠いた形状の切欠き6でもよいし、
図5に示すように、弧状に切欠いた形状の切欠き6でもよい。
【0026】
また、切欠き6の深さは、あまり深く形成すると、ロック板4の切欠き6部分を乗り越えて出庫することが可能となってしまうおそれがあるため、スライドドアと干渉しない程度の深さに形成すれば十分である。
【0027】
次に、本実施形態の動作について説明する。
【0028】
本実施形態においては、車室2に車両3が駐車して車両センサにより車両3の入庫を検出した場合に、ロック板4を上昇させて車両3のロックが行われる。そして、本実施形態においては、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の切欠き6部分に位置することになるので、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端と、ロック板4の上端とが接触してしまうことがない。
【0029】
以上述べたように、本実施形態においては、ロック板4に切欠き6を形成し、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端とロック板4の上端とが接触しないようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0030】
次に、本発明の第2実施形態について説明する。
【0031】
本実施形態においては、
図6に示すように、ロック板4に干渉抑制部の回転体としての回転ローラ7を回転自在に設けるようにしたものである。この回転ローラ7の長さ寸法は、前記第1実施形態における切欠き6の長さ寸法と同様に、ロック板4の左端から小型の車両3の幅寸法Wsの位置までの長さに形成するようにすればよい。このように回転ローラ7を形成することにより、例えば、車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は回転ローラ7上に位置することになる。
【0032】
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の回転ローラ7部分に位置することになるので、スライドドアの下端と回転ローラ7とが接触することになる。そのため、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合に、スライドドアの下端の移動に伴って回転ローラ7が回転し、スライドドアの開閉動作を円滑に行うことが可能となる。
【0033】
以上述べたように、本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、ロック板4に回転ローラ7を設け、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、回転ローラ7がスライドドアの下端に接触しながら回転するようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0034】
次に、本発明の第3実施形態について説明する。
【0035】
本実施形態においては、
図7に示すように、ロック板4に、干渉抑制部としての、例えば、ゴムなどの弾性体8を設けるようにしたものである。この弾性体8の長さ寸法は、前記第1実施形態における切欠き6の長さ寸法と同様に、ロック板4の左端から小型の車両3の幅寸法Wsの位置までの長さに形成するようにすればよい。このように弾性体8を形成することにより、例えば、車両3が車室2の右端に駐車した場合でも、その車両3の左端は弾性体8上に位置することになる。
【0036】
本実施形態においても前記第1実施形態と同様に、車両3が車室2の右端または左端のいずれの位置に駐車した場合でも、車両3のスライドドアは、ロック板4の弾性体8部分に位置することになるので、スライドドアの下端と弾性体8が接触することになる。そのため、ロック板4が上昇した状態で、スライドドアを開閉動作させた場合に、スライドドアの下端は弾性体8に接触しながら移動することになり、スライドドアの下端に損傷を与えてしまうことがない。
【0037】
以上述べたように、本実施形態においても前記各実施形態と同様に、ロック板4に弾性体8を設け、ロック板4が上昇している状態で車両3のスライドドアを開閉動作させた場合でも、スライドドアの下端と弾性体8とが接触した状態でスライドドアの開閉動作を行うことができるようにしているので、スライドドアを円滑に開閉動作させることができるとともに、スライドドアの下面を損傷してしまうことを確実に防止することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々の変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 ロック装置
2 車室
3 車両
4 ロック板
5 駆動装置
6 切欠き
7 回転ローラ
8 弾性体