特許第6046444号(P6046444)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社カネカの特許一覧

特許6046444生体内留置用二次コイルおよびその製造方法
<>
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000002
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000003
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000004
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000005
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000006
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000007
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000008
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000009
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000010
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000011
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000012
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000013
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000014
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000015
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000016
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000017
  • 特許6046444-生体内留置用二次コイルおよびその製造方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046444
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】生体内留置用二次コイルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/12 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   A61B17/12
【請求項の数】9
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-234849(P2012-234849)
(22)【出願日】2012年10月24日
(65)【公開番号】特開2014-83239(P2014-83239A)
(43)【公開日】2014年5月12日
【審査請求日】2015年8月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 祥平
(72)【発明者】
【氏名】九十九 多挙
【審査官】 宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−525307(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0184196(US,A1)
【文献】 特表平09−510637(JP,A)
【文献】 特表2010−536491(JP,A)
【文献】 特表2011−530326(JP,A)
【文献】 特表2012−505040(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次形状を付与された生体内留置用二次コイルの製造方法において、
線材に一次形状を付与された一次コイルが、マンドレルの棒状部分に巻き付けられ場合に、上記一次コイルの一部分が、上記一次コイルの全長方向を軸にして捻られた後に上記マンドレルに巻き付けられる、生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項2】
上記の捻りの方向が、正回転方向または逆回転方向とされる請求項1に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項3】
上記の捻れた部分が、単数または複数形成される請求項1または2に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項4】
上記の捻れた部分が、複数形成される場合、
上記の捻り方向を正回転方向にした上記の捻れた部分と、上記の捻り方向を逆回転方向にした上記の捻れた部分とが、混在させられる請求項3に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項5】
二次コイルの一方端から他方端に向かって並ぶ複数の上記の捻れた部分では、上記正回転方向に捻れた部分と上記逆回転方向に捻れた部分とが交互に並ばせられる請求項4に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項6】
上記の捻れた部分が複数形成されることで、隣り合う上記の捻れた部分同士の間隔が複数形成される場合、
上記間隔の長さが、1種類または多種類に設定される請求項3〜5のいずれか1項に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項7】
上記一次コイルの一部分は、上記マンドレルの表面を転がることで、上記一次コイルの全長方向を軸にして捻られる請求項1〜6のいずれか1項に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項8】
上記マンドレルの棒状部分において、
上記一次コイルの巻き付け開始元の一端を、上記マンドレルの開始端、
上記一次コイルの巻き付け進行先の一端を、上記マンドレルの終端、とし、
上記終端が、上記開始端よりも相対的に、重力方向上向き、または、重力方向下向きに傾けられることで、
上記一次コイルの一部分が、上記マンドレルの表面を転がる請求項7に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【請求項9】
上記開始端から上記終端までを結ぶマンドレル軸が、水平配置される状態から、
上記終端が、上記開始端よりも相対的に重力方向上向き、または、重力方向下向きに傾けられる場合、
水平配置状態の上記マンドレル軸と傾斜後の上記マンドレル軸との成す最小角度が、10°以上50°以下である請求項8に記載の生体内留置用二次コイル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体内留置部材である二次コイル、および、その製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血管に生じた動脈瘤等の治療では、金属で形成されたコイルを動脈瘤に埋めることで、その動脈瘤を血栓化させて破裂を防止させる手技が採用される。このような生体内留置部材である金属コイルとしては、白金等のワイヤーをコイル状にして延ばすように形付けした一次コイルを、さらに、コイル状にして延ばすように形付けした二次コイルが用いられる。そして、金属コイルは、一次コイル状態で、搬送用のカテーテルの内腔に挿入されて目的部位に搬送され、カテーテルから排出されると、二次コイル状態に復元する。
【0003】
動脈瘤を血栓化させる場合、動脈瘤の内部にて、金属コイルは1カ所にかたまらず、様々な方向に広がり、隙間無くコイルを留置することが、再発を抑制し、治療に有利とされる。そのため、金属コイルに付与される二次形状(二次コイルの形状)は、複雑に拡がりやすい三次元形状であると望ましい。
【0004】
例えば、特許文献1には、複雑な三次元形状を有する金属コイルとして、螺旋形状をさらに折り畳んだ二次形状(回旋型形状)を付与された金属コイルが開示される。この金属コイルは、円柱状のマンドレルに一次コイルを螺旋状に巻き付けて保持しながら、一部分を変形させることで、形成される。
【0005】
また、特許文献2には、複数の円筒を組み合わせたマンドレル、または、球形本体表面に溝構造若しくは柱構造を有する球形マンドレルに、一次コイルを巻き付けることで、複雑な三次元形状とした金属コイルおよびその製造方法が開示される。
【0006】
また、特許文献3には、平坦なリボンワイヤーを、そのワイヤーの長手方向を軸にして捻った後に、螺旋形状にした金属コイルが開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表平8−500273号公報
【特許文献2】特許第4065665号公報
【特許文献3】特開2006−239428号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1での製造法では、金属コイルがマンドレル上に保持された状態で、その金属コイルの一部分に変形を加えている。そのため、マンドレルが邪魔になり、十分に金属コイルに変形を加えられず、その金属コイルの形状変化は僅かにすぎない。その結果、この金属コイルは、複雑な三次元形状にならない。
【0009】
また、特許文献2での製造方法は、複雑形状のマンドレルを用いなくてはならず、製造が煩わしい。
【0010】
また、特許文献3での金属コイルは、平坦なリボンワイヤーを捻らなくてはならず、この工程では、例えば円柱状のマンドレルは用いられないため、極めて煩わしい工程になる。その上、この金属コイルは、捻られた平坦部分によって、動脈瘤内の血流を乱流にするものであって、金属コイル自体は、複雑に拡がるものではない。
【0011】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、複雑形状のマンドレルを必要とせずに、簡易に、複雑に拡がる三次元形状の二次コイルを製造する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
二次形状を付与された生体内留置用二次コイルの製造方法では、線材に一次形状を付与された一次コイルが、マンドレルの棒状部分に巻き付けられ場合に、一次コイルの一部分が、一次コイルの全長方向を軸にして捻られた後にマンドレルに巻き付けられる。
【0013】
なお、捻りの方向が、正回転方向または逆回転方向とされても構わない。また、捻れた部分が、単数または複数形成されても構わない。
【0014】
また、捻れた部分が、複数形成される場合、捻り方向を正回転方向にした捻れた部分と、捻り方向を逆回転方向にした捻れた部分とが、混在していると望ましい。
【0015】
また、二次コイルの一方端から他方端に向かって並ぶ複数の捻れた部分では、正回転方向に捻れた部分と逆回転方向に捻れた部分とが交互に並ばせられると望ましい。
【0016】
また、捻れた部分が複数形成されることで、隣り合う捻れた部分同士の間隔が複数形成される場合、この間隔の長さが、1種類または多種類に設定されても構わない。
【0017】
また、一次コイルの一部分は、マンドレルの表面を転がることで、一次コイルの全長方向を軸にして捻られると望ましい。
【0018】
また、マンドレルの棒状部分において、一次コイルの巻き付け開始元の一端を、マンドレルの開始端、一次コイルの巻き付け進行先の一端を、マンドレルの終端、とした場合、終端が、開始端よりも相対的に、重力方向上向き、または、重力方向下向きに傾けられることで、一次コイルの一部分が、マンドレルの表面を転がると望ましい。
【0019】
また、開始端から終端までを結ぶマンドレル軸が、水平配置される状態から、終端が、開始端よりも相対的に重力方向上向き、または、重力方向下向きに傾けられる場合、水平配置状態のマンドレル軸と傾斜後のマンドレル軸との成す最小角度が、10°以上50°以下であると望ましい。
【0020】
ところで、線材に一次形状を付与された一次コイルが、マンドレルの棒状部分に巻き付けられることで、二次形状を付与された生体内留置用二次コイルは、以下のようになっている。
【0021】
すなわち、一次コイルの一部分を、一次コイルの全長方向を軸にして捻った後に、マンドレルに巻き付けられることで生じる捻れた部分が、複数形成されており、二次コイルが水平面に置かれた場合、二次コイルにて連続する3個の上記の捻れた部分の両端の捻れた部分によって挾まれる、二次コイルの少なくとも一部分は、S次状を形成し、S次状の少なくとも一部分は、水平面から乖離する生体内留置用二次コイル。
【0022】
なお、この生体内留置用二次コイルにおいて、3個の捻れた部分の両端となる捻れ部分が水平面に接する場合に、3個の捻れた部分を結ぶ仮想面と、水平面との成す最小角度が、45°以上90°以下であると望ましい。
【0023】
また、別の生体内留置用二次コイルでは、一次コイルの一部分を、一次コイルの全長方向を軸にして捻った後に、マンドレルに巻き付けられることで生じる捻れた部分が、2箇所形成されており、二次コイルが水平面に置かれた場合、二次コイルにて2個の上記の捻れた部分によって挾まれる、二次コイルの少なくとも一部分は、S次状を形成し、S次状の少なくとも一部分は、水平面から乖離する。
【0024】
なお、この生体内留置用二次コイルにおいて、2個の捻れた部分が水平面に接する場合に、2個の捻れた部分およびこれら2個の捻れた部分の中間点を結ぶ仮想面と、水平面との成す最小角度が、45°以上90°以下であると望ましい。
【0025】
また、捻れた部分が、複数形成される場合、捻り方向を正回転方向にした捻れた部分と、捻り方向を逆回転方向にした捻れた部分とが、混在させられると望ましい。
【0026】
また、二次コイルの一方端から他方端に向かって並ぶ複数の捻れた部分では、正回転方向に捻れた部分と逆回転方向に捻れた部分とが交互に並ぶと望ましい。
【0027】
本発明によれば、複雑形状のマンドレルを必要とせずに、簡易に、複雑に拡がる三次元形状の二次コイルを製造する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】は、水平面に置かれた生体内留置部材の斜視図である。
図2】は、水平面に置かれた生体内留置部材の斜視図である。
図3】では、(A)はワイヤーを示す斜視図であり、(B)は一次形状付与用のマンドレルを示す斜視図であり、(C)は一次コイルを示す斜視図である。
図4】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図5】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図6】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図7】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図8】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図9】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図10】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図11】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図12】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図13】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図14】は、生体内留置部材の製造工程における一工程を示す斜視図である。
図15】では、(A)は水平面に置かれた生体内留置部材における仮想面を示す斜視図であり、(B)は仮想面と水平面とによって生じる最小角度を示す側面図である。
図16】では、(A)は水平面に置かれた生体内留置部材における仮想面を示す斜視図であり、(B)は仮想面と水平面とによって生じる最小角度を示す側面図である。
図17】は、動脈瘤に留置される生体内留置部材を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0030】
図17は、動脈瘤53の内部に留置される生体内留置部材22と、生体内留置部材22を搬送するカテーテル51とを示した説明図である。図1および図2は、水平面HFに置かれた生体内留置部材22の2つの例を示す斜視図である。
【0031】
なお、以降で挙がる一次形状とは、図3Aに示されるようなワイヤー10が、図3Bに示されるような一次形状付与用のマンドレル41等に巻き付けられることで付与される、例えば螺旋のような形状(図3C参照)を意味する。すなわち、線状のワイヤー10が最初に形付けられた場合の形状を意味する。なお、一次形状を付与されたワイヤー10は、一次コイル11と称される。
【0032】
また、二次形状とは、一次コイル11が、二次形状付与用のマンドレル42等に巻き付けられることで、さらに付与される形状を意味する。すなわち、一次コイル11がさらに形付けられた場合の形状を意味する。なお、二次形状を付与された一次コイル11は、二次コイル22と称される。
【0033】
また、二次コイル22は、図17に示されるように、搬送用のカテーテル51を通じて、生体内の血管52に生じた動脈瘤53等に留置されることで、その動脈瘤53を塞栓する。そのため、二次コイル22は、生体内留置用の二次コイル22であって、生体内留置部材(血管塞栓コイル)22とも称される。
【0034】
なお、生体内留置部材22は、カテーテル51の内腔に収まっている状態では、一次形状(すなわち、ワイヤー10が螺旋状になりながら線状になって延びている状態である一次コイル11の状態)になっており、カテーテル51から排出されると、三次元形状の二次形状となる(すなわち、生体内留置部材22は、一次形状から二次形状に復元する)。
【0035】
まず、図3Aに示されるような、ワイヤー10について説明する。ワイヤー10は線状部材[線材]で、材料は特に限定されるものではなく、例えば、プラチナ、タングステン、金、ステンレス鋼、または、タングステンとプラチナとの合金が挙げられる(なお、これら材料は、放射線不透過性材料である)。また、線状材料の直径も、特に限定されるものではないが、0.010mm以上0.200mm以下であると望ましい。
【0036】
次に、ワイヤー10で形成された一次コイル11について説明する。一次コイル11は、図3Bに示されるマンドレル41に対して、ワイヤー10を巻き付けることで(例えば、螺旋巻きされることで)形成される。そして、図3Cに示されるような、螺旋状になりながら線状になって延びる一次コイル11は、0.100mm以上0.500mm以下の直径(外径OD)を有すると望ましく、また、10mm以上1000mm以下の全長を有すると望ましい。
【0037】
なお、一次コイル11の全長に亘って、一次コイル11における外径および内径の中心を通る軸を、一次コイル軸11Xと称する(別表現すると、一次コイル11の全長方向を軸とする)。また、一次コイル11の両端における一方を一方端11E、他方を他方端11Tとし、他方端11Tを手元側、一方端11Eを乖離側にして、他方端11Tを見た場合に、一次コイル11を捻る(回転させる)方向である捻れ方向は、時計回りだと正回転方向P1、反時計回りだと逆回転方向Q1とする。
【0038】
次に、図4図14を用いて、二次コイル22の製造方法について説明する。この製造方法において使用するマンドレル42は、1mm以上30mm以下の外径(直径)を有する円柱である(すなわち、全長を棒状としたマンドレル42である)。そして、マンドレル42の両端における一方を開始端42S、他方を終端42Dとし、終端42Dを手元側、開始端42Sを乖離側にして、終端42Dを見た場合に、マンドレル42を回転させる方向が、時計回りだと正回転方向MP、反時計回りだと逆回転方向MQとする。
【0039】
また、開始端42Sを乖離側にして、終端42Dを見た場合に、マンドレル42が、例えば正回転方向MPに回転されることで、マンドレル42に対して巻かれる一次コイル11等が、反時計回りだとその巻き方向は逆回転巻きと称し、マンドレル42が、例えば逆回転方向MQに回転されることで、マンドレル42に対して巻かれる一次コイル11等が、時計回りだとその巻き方向は正回転巻きと称する。
【0040】
まず、一次コイル11の内腔11Lに、一次コイル11の全長よりも長い芯線43が通される。そして、この芯線43が、マンドレル42の開始端42S側に固定される。例えば、図4に示されるように、一次コイル11の一方端11Eから延び出る芯線43の一部が、マンドレル42に逆回転巻きに巻き付けられ、さらに、その巻き付けられた芯線43が、テープ44で、マンドレル42に固定される(なお、この固定の仕方は、テープ44に限定されるものではなく、例えば、クリップまたはネジ等の固定具で、芯線43をマンドレル42に固定しても構わない)。
【0041】
一方で、一次コイル11の他方端11Tから延び出る芯線43には、錘45が取り付けられる(なお、錘45に限定されることなく、芯線43を引っ張るような部材、例えば、クリップまたは鉗子であっても構わない)。
【0042】
この後、マンドレル42が、持ち上げられることで、錘45も吊り上げられ、芯線43が重力方向の下側に引っ張られる。そして、マンドレル42が正回転方向MPに回転させられる。これにより、一次コイル11は、芯線43とともに、マンドレル42に逆回転巻きに巻き付けられ、図4に示されるように、一次コイル11の一方端11Eは、マンドレル42に固定される。
【0043】
この後、図5に示されるように、マンドレル42が、水平配置された状態で、さらに、正回転方向MPに回転される{なお、マンドレル42の水平状態とは、マンドレル42の全長方向(すなわち、マンドレル42における開始端42Sから終端42Dまでを結ぶマンドレル軸42X)が、水平に沿っている状態である}。
【0044】
詳説すると、一次コイル11および芯線43が、マンドレル42の表面に巻き付くようにして、マンドレル42の終端42Dに向かうように、マンドレル42が、さらに、正回転方向MPに回転される(すなわち、一次コイル11の巻き付け開始元が開始端42Sで、一次コイル11の巻き付け進行先が終端42Dとなる)。
【0045】
このようなマンドレル42を水平状態で回転させる工程は、水平巻き付け工程と称される。なお、この水平巻き付け工程におけるマンドレル42の回転数(すなわち、一次コイル11および芯線43のマンドレル42の終端42Dへの進行距離)は、特に限定されない。
【0046】
水平巻き付け工程終了後、水平状態のマンドレル42は、図6に示されるように、傾けられる。詳説すると、マンドレル42の終端42Dが、開始端42Sよりも相対的に重力方向下向きに傾けられることで、マンドレル42が、水平状態から傾く{なお、水平状態のマンドレル軸42Xを水平軸42H(二点鎖線のマンドレル軸42Hを参照)とすると、傾斜後のマンドレル42のマンドレル軸42Xと、水平軸42Hとの成す最小角度δは、10°以上50°以下が望ましい}。
【0047】
このようにマンドレル42が傾けられると、図7の拡大図(図5の水平状態のマンドレル42から図6の傾斜状態のマンドレル42に至るまでの、一次コイル11の動きを示す斜視図)に示されるように、一次コイル11は、マンドレル42の終端42Dに向かって、そのマンドレル42の表面を転がる。すると、一次コイル11は、自身の全長方向を軸にして(要は、一次コイル軸11Xを中心にして)、マンドレル42の表面で回転し、捻られる。
【0048】
このようなマンドレル42を傾斜させることで、一次コイル11を捻る工程は、捻り工程と称される。そして、例えば図7に示されるような場合、捻り工程によって、一次コイル11は、正回転方向P1に捻られる(なお、捻れた部分は、捻れ部分TWと称される)。
【0049】
捻り工程終了後、図8に示されるように、マンドレル42は、傾けられた状態で、正回転方向MPに回転される。このようなマンドレル42を傾斜状態で回転させる工程は、傾斜巻き付け工程と称される。そして、この傾斜巻き付け工程によって、一次コイル11の一部(捻れ部分TW)は、正回転方向P1に捻られた状態で、マンドレル42に巻き付けられる。
【0050】
傾斜巻き付け工程終了後、傾斜状態のマンドレル42は、図9に示されるように、水平状態にされ、さらに、水平状態のマンドレル42は、正回転方向MPに回転される(要は、2回目の水平巻き付け工程が行われる)。
【0051】
水平巻き付け工程終了後、水平状態のマンドレル42は、図10に示されるように、傾けられる。詳説すると、マンドレル42の終端42Dが、開始端42Sよりも相対的に重力方向上向きに傾けられることで、マンドレル42が、水平状態から傾く(なお、傾斜後のマンドレル42のマンドレル軸42Xと、水平軸42Hとの成す最小角度δは、10°以上50°以下が望ましい)。
【0052】
このようにマンドレル42が傾けられると、図11の拡大図(図9の水平状態のマンドレル42から図10の傾斜状態のマンドレル42に至るまでの、一次コイル11の動きを示す斜視図)に示されるように、一次コイル11は、マンドレル42の開始端42Sに向かって、そのマンドレル42の表面を転がる(要は、2回目の捻れ工程が行われる)。
【0053】
すると、一次コイル11は、自身の全長方向を軸にして、マンドレル42の表面で回転し、捻られる。そして、例えば図11に示されるような場合、捻り工程によって、一次コイル11は、逆回転方向Q1に捻られる。
【0054】
捻り工程終了後、図12に示されるように、マンドレル42は、傾けられた状態で、正回転方向MPに回転される(要は、2回目の傾斜巻き付け工程が行われる)。そして、この傾斜巻き付け工程によって、一次コイル11の一部(捻れ部分TW)は、逆回転方向Q1に捻られた状態で、マンドレル42に巻き付けられる。
【0055】
そして、傾斜巻き付け工程終了後、傾斜状態のマンドレル42は、図13に示されるように、水平状態にされ、さらに、水平状態のマンドレル42は、正回転方向MPに回転される(要は、3回目の水平巻き付け工程が行われる)。
【0056】
この後、一次コイル11の他方端11Tから延び出る芯線43が、一方端11Eから延び出る芯線43同様に、テープ44等の固定具によって、マンドレル42に固定される。そして、一次コイル11を巻き付けたマンドレル42が、400°以上の温度下にて15分以上加熱されることで、その一次コイル11に二次形状が付与され、二次コイル22が完成する。
【0057】
以上の二次コイル22の製造方法のように、水平巻き付け工程だけではなく、捻り工程および傾斜巻き付け工程(すなわち、ワイヤー10に一次形状を付与された一次コイル11がマンドレル42の棒状部分に巻き付けられ場合に、一次コイル11の一部分が、一次コイル11の全長方向を軸にして捻られた後にマンドレル42に巻き付けられる工程)が、複数回行われると、例えば図14に示されるように、マンドレル42の開始端42Sから終端42Dまでの間に、複数個の捻れ部分TWを含む二次コイル22が形成される。
【0058】
そして、例えば、マンドレル42における終端42Dを開始端42Sに対して、重力方向上側、重力方向下側、と交互に繰り返し、合計6回の捻り工程および傾斜巻き付け工程を行うことで形成された二次コイル22が図1に示され、合計2回の捻り工程および傾斜巻き付け工程を行うことで形成された二次コイル22が図2に示される。
【0059】
すなわち、図1および図2に示される二次コイル22では、捻れ部分TWが、複数形成され、捻り方向を正回転方向P1にした捻れ部分TWと、捻り方向を逆回転方向Q1にした捻れ部分TWとが、混在する。
【0060】
このような捻れ部分TWが二次コイル22に存在すると、捻れ部分TWを挟み込む一方端11E側の二次コイル22の一部と他方端11T側の二次コイル22の一部とが、捻れ部分TWを境に異なる方向に変位しようとする。そのため、このような二次コイル22は、カテーテル51から排出されると、拡がりやすい。
【0061】
また、二次コイル22の一方端(例えば、一次コイル11の一方端11E側)から他方端(例えば、一次コイル11の他方端11T側)に向かって並ぶ複数の捻れた部分TWでは、正回転方向P1に捻れた部分と逆回転方向Q1に捻れた部分とが交互に並ぶと望ましい(例えば、二次コイル22の一方端から他方端に向かう方向において、正回転P1の捻れ方向の捻れ部分TWの後に、逆回転Q1の捻れ方向の捻れ部分TWが形成されたり、正回転P1の捻れ方向の捻れ部分TWの後に、逆回転Q1の捻れ方向の捻れ部分TWが形成され、さらに正回転P1の捻れ方向の捻れ部分TWが形成されたりすると望ましい)。
【0062】
このように捻れ方向を異とする捻れ部分TWが、交互に二次コイル22に存在すると、捻れ部分TWを境に種々方向に変位しようとする、二次コイル22の一部が多く存在することになる。そのため、このような二次コイル22は、カテーテル51から排出されると、一層、拡がりやすい。
【0063】
例えば、図1に示されるような二次コイル22は、水平面HF上に置かれた場合、図15Aに示されるような形となる。すなわち、全ての捻れ部分TW(TW1〜TW6)のうち、例えば、二次コイル22にて連続する3個の捻れ部分TW(TW3〜TW5)の両端の捻れ部分TW3・TW5によって挾まれる二次コイル22の少なくとも一部分は、S次状を形成する。そして、このS次状の少なくとも一部分は、水平面HFから乖離する。
【0064】
このような二次コイル22の形状は、三次元的に複雑で、比較的拡がった形状といえる。したがって、この二次コイル22は、カテーテル51から排出されると、動脈瘤53において、容易に拡がるので、効率よく、その動脈瘤53を塞栓する。
【0065】
なお、図15Aおよび図15B図15Aにおける矢印D方向(後述の最小角度を確認しやすい方向)からみた側面図}に示されるように、3個の捻れた部分の両端となる捻れ部分TW3・TW5が水平面HFに接する場合に、3個の捻れ部分TW3〜TW5を結ぶ仮想面IF3と、水平面HFとの成す最小角度θが、45°以上90°以下であると望ましい(なお、仮想面IF3は、3個の捻れ部分TW3〜TW5を面内に含みつつ、水平面HFに交わるまで拡がるものとする)。この角度の範囲であれば、二次コイル22は、三次元的に複雑で、比較的拡がった形状といえるためである。
【0066】
また、このような二次コイル22は、一次コイル11の一部分が、その一次コイルの全長方向を軸にして捻った後に、マンドレル42の棒状部分に巻き付けられることで形成されることから、このような製造方法は、三次元に拡がりやすい二次コイル22を簡易に製造する。すなわち、この製造方法は、複雑な形状のマンドレルを必要とせずに、簡易に、複雑に拡がる三次元形状の二次コイル22を製造する。
【0067】
また、図2に示されるような二次コイル22は、水平面HF上に置かれた場合、図16Aに示されるような形となる。すなわち、2個の捻れ部分TW(TW1・TW2)によって挾まれる二次コイル22の少なくとも一部分は、S次状を形成する。そして、このS次状の少なくとも一部分は、水平面HFから乖離する。
【0068】
このような二次コイル22の形状も、図1に示される二次コイル22同様、三次元的に複雑で、比較的拡がった形状といえる。したがって、この二次コイル22も、カテーテル51から排出されると、動脈瘤53において、容易に拡がるので、効率よく、その動脈瘤53を塞栓する。
【0069】
なお、図16Aおよび図16B図16Aにおける矢印D方向からみた側面図)に示されるように、2個の捻れた部分である捻れ部分TW1・TW2が水平面HFに接する場合に、2個の捻れ部分TW1・TW2とこれら2個の捻れ部分TW1・TW2の中間点MTとを結ぶ仮想面IF2と、水平面HFとの成す最小角度θが、45°以上90°以下であると望ましい(なお、仮想面IF2は、2個の捻れ部分TW1・TW2および中間点MTを面内に含みつつ、水平面HFに交わるまで拡がるものとする)。この角度の範囲であれば、二次コイル22は、三次元的に複雑で、比較的拡がった形状といえるためである。
【0070】
また、このような二次コイル22も、一次コイル11の一部分が、その一次コイルの全長方向を軸にして捻った後に、マンドレル42の棒状部分に巻き付けられることで形成されることから、このような製造方法も、複雑な形状のマンドレルを必要とせずに、簡易に、複雑に拡がる三次元形状の二次コイル22を製造する。
【0071】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0072】
例えば、以上では、二次コイル22における捻れ部分TWが、複数形成される場合を例に挙げたが、これに限定されることなく、捻れ部分TWが単数であっても構わない。
【0073】
すなわち、水平巻き付け工程後、マンドレル42の終端42Dを開始端42Sよりも相対的に重力方向下向きに傾ける捻り工程を1回行って、続けて傾斜巻き付け工程を行うことで、二次コイル22が形成されても構わないし、水平巻き付け工程後、マンドレル42の終端42Dを開始端42Sよりも相対的に重力方向上向きに傾ける捻り工程を1回行って、続けて傾斜巻き付け工程を行うことで、二次コイル22が形成されても構わない。
【0074】
このように、二次コイル22に1つでも捻れ部分TWが存在すると、捻れ部分TWを挟み込む一方端11E側の二次コイル22の一部と他方端11T側の二次コイル22の一部とが、捻れ部分TWを境に異なる方向に変位しようとするため、二次コイル22は、複雑に拡がる三次元形状となる。
【0075】
また、図15Aおよび図16Aに示されるような二次コイル22では、二次コイル22の一方端から他方端に向かって並ぶ捻れ部分TWの捻れ方向は、異種回転の捻れ方向になっているが、これに限定されるものではない。例えば、連続して並ぶ捻れ部分TWの捻れ方向が同一種類の回転方向(例えば、正回転P1のみ、または逆回転Q1のみ)であっても構わない。
【0076】
また、捻れ部分TWが複数形成されることで、隣り合う捻れ部分TW・TW同士の間隔が複数形成される場合、この間隔の長さが、1種類(すなわち均一長)または多種類に設定されても構わない。
【0077】
また、二次コイル22の製造過程において、複数回行われる捻れ工程でのマンドレル42の傾斜角δは、一定であっても変化しても構わない。また、以上では、捻れ工程、すなわち、一次コイル11の一部分を、マンドレル42の表面を転がらせることで、一次コイル11の全長方向を軸にして捻る仕方として、マンドレル42を傾けることで、一次コイル11を捻る例を挙げたが、これに限定されるものではない。
【0078】
例えば、芯線43をマンドレル軸42Xに沿って移動させることで、芯線43を被う一次コイル11をマンドレル42表面で転がせて、その一次コイル11を捻っても構わない。
【0079】
また、以上ではマンドレル42は、断面円形で全長を直線状にした棒であったが、これに限定されるものではない。例えば、マンドレル42の断面は、多角形であってもよいし、楕円のような円形であってもよい。また、マンドレル42の形状は、曲線状の棒であってもよいし、部分的に棒状を含む形状であってもよい。
【符号の説明】
【0080】
10 ワイヤー[線材]
11 一次コイル
11E 一次コイルの一方端
11T 一次コイルの他方端
11X 一次コイル軸[一次コイルを捻る場合の軸]
11L 一次コイルの内腔
P1 一次コイルの正回転の捻れ方向
Q1 一次コイルの逆回転の捻れ方向
TW 捻れ部分[捻れた部分]
S S字状
IF3 仮想面
IF2 仮想面
θ 仮想面と水平面との成す最小角度
22 二次コイル[生体内留置用二次コイル]
41 一次形状付与用のマンドレル
42 二次形状付与用のマンドレル
42S 開始端[マンドレルの一方端で一次コイルを巻き付け開始元の一端]
42D 終端[マンドレルの他方端で一次コイルの巻き付け進行先の一端]
42X マンドレル軸
42H 水平軸
MP マンドレルの正回転方向
QP マンドレルの逆回転方向
δ 水平配置状態のマンドレル軸と傾斜後のマンドレル軸との成す最小角度
43 芯線
44 テープ
45 錘
51 カテーテル
52 血管
53 動脈瘤
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図1
図2
図15
図16
図17