特許第6046459号(P6046459)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 近松 路子の特許一覧

<>
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000002
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000003
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000004
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000005
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000006
  • 特許6046459-リード楽器及びリード楽器用製作キット 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046459
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】リード楽器及びリード楽器用製作キット
(51)【国際特許分類】
   G10D 11/00 20060101AFI20161206BHJP
【FI】
   G10D11/00
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-250642(P2012-250642)
(22)【出願日】2012年10月29日
(65)【公開番号】特開2014-89429(P2014-89429A)
(43)【公開日】2014年5月15日
【審査請求日】2015年10月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】512294847
【氏名又は名称】近松 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100151208
【弁理士】
【氏名又は名称】植田 吉伸
(72)【発明者】
【氏名】近松 路子
【審査官】 安田 勇太
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第02603120(US,A)
【文献】 特開平09−299624(JP,A)
【文献】 特開昭54−044932(JP,A)
【文献】 実開平01−144094(JP,U)
【文献】 実公昭44−025450(JP,Y1)
【文献】 Wonko,404: Joisel's Bandoneon,Setting the Crease Paper-Based Procrastination by Wonko[オンライン],2012年 9月 2日,[検索日:2016年4月8日],インターネット:<URL:http://www.wonko.info/365origami/?p=2990>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10D 11/00 −11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙部材が蛇腹状に折り曲げられて形成され、折り曲げられた部分が伸縮することによって外部からの空気を内部に流入させ又は前記内部から前記外部に前記空気を流出させる蛇腹部と、
前記蛇腹部の伸縮方向の両端部に設けられた台座板部と、
前記台座板部に形成された開口部に設けられ、前記蛇腹部の前記伸縮により前記空気が通過して振動する金属リード部と、
前記金属リード部を覆うように設けられ、前記空気が流通する通路を有する空気流通部と、
前記蛇腹部を伸縮させるために前記空気流通部上に設けられる取手部と、
を備え、
前記金属リード部は、前記蛇腹部が引かれた際に前記蛇腹部に流入する前記空気が通ることによって単一音を奏でる第1単一金属リードと、前記蛇腹部が押された際に前記蛇腹部から流出する前記空気が通ることによって単一音を奏でる第2単一金属リードとを含み、
前記空気流通部は、前記外部からの前記空気が前記第1単一金属リードを通って前記内部に流入させるために形成された第1流通管路部と、
前記内部からの前記空気が前記第2単一金属リードを通って前記外部に流出させるために形成された第2流通管路部とを含むことを特徴とするリード楽器。
【請求項2】
請求項1に記載のリード楽器において、
前記空気流通部は、上面視が略E型を有する側板部と、前記側板部の上面に載置される天板とを有し、
前記第1流通管路部と前記第2流通管路部は、前記台座板部の平面上に沿って前記側板部の中央境界部を挟んで夫々形成されることを特徴とするリード楽器。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のリード楽器において、
前記第1単一金属リードと前記第2単一金属リードとは異なる単一音を奏でるようにリード長が予め設定されていることを特徴とするリード楽器。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のリード楽器を製作するためのリード楽器用製作キットであって、
前記第1単一金属リードを構成する第1金属リード部材と、
前記第2単一金属リードを構成する第2金属リード部材と、
山折り又は谷折りを行って前記蛇腹部を形成するための展開図が予め描かれた蛇腹用シート部材と、
前記第1金属リード部材と前記第2金属リード部材を嵌めこむための前記開口部が形成された台座板部材と、
前記空気流通部を構成する空気流通部材と、
前記取手部を構成する取手部材と、
を備えることを特徴とするリード楽器用製作キット。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は紙で制作するリード楽器と、それを組み立て成形する製作キットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇腹によって空気を送り金属リードを振動させ音を発生する、いわゆるアコーディオンやバンドネオンといった楽器があり、それを模倣した玩具として紙の蛇腹に小さな風穴をあけた紙玩具があった。
【0003】
また、蛇腹(鞴)の先に笛を取り付け音階を発生する特許文献1で示す指楽器という笛とフイゴ式小型送風機を合体した楽器があった。
【0004】
【特許文献】
【特許文献1】特開2000−81874号公報
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アコーディオンなどの蛇腹があり金属リードを持つ楽器はその容姿の面白さから多くの人の興味をそそる反面、実際に手にすると大きく重量で演奏に力が必要なためせっかく興味を持っても扱いきれず飽きたり諦めてしまう傾向があった。
【0007】
また、アコーティオンを模倣して作られた玩具にはリードは使っておらず、音階はなく、空気の圧力による高音の発声を楽しむだけの玩具であった。
【0008】
また、特許文献1においては軽量であるが音階が少なく演奏できる楽曲が限定されてしまう傾向にあった。
【0009】
そこでアコーディオンような蛇腹を持つリード楽器を生活の身近にある紙という素材を使って軽量で手のひらに収まるようなコンパクトサイズにし、またその楽器を作るという行程を与えることで楽器に対する興味を継続させる目的をもったものを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るリード楽器は、紙部材が蛇腹状に折り曲げられて形成され、折り曲げられた部分が伸縮することによって外部からの空気を内部に流入させ又は前記内部から前記外部に前記空気を流出させる蛇腹部と、前記蛇腹部の伸縮方向の両端部に設けられた台座板部と、前記台座板部に形成された開口部に設けられ、前記蛇腹部の前記伸縮により前記空気が通過して振動する金属リード部と、前記金属リード部を覆うように設けられ、前記空気が流通する通路を有する空気流通部と、前記蛇腹部を伸縮させるために前記空気流通部上に設けられる取手部と、を備え、前記金属リード部は、前記蛇腹部が引かれた際に前記蛇腹部に流入する前記空気が通ることによって単一音を奏でる第1単一金属リードと、前記蛇腹部が押された際に前記蛇腹部から流出する前記空気が通ることによって単一音を奏でる第2単一金属リードとを含み、前記空気流通部は、前記外部からの前記空気が前記第1単一金属リードを通って前記内部に流入させるために形成された第1流通管路部と、前記内部からの前記空気が前記第2単一金属リードを通って前記外部に流出させるために形成された第2流通管路部とを含むことを特徴とする。
また、本発明に係るリード楽器において、前記空気流通部は、上面視が略E型を有する側板部と、前記側板部の上面に載置される天板とを有し、前記第1流通管路部と前記第2流通管路部は、前記台座板部の平面上に沿って前記側板部の中央境界部を挟んで夫々形成されることが好ましい。
また、本発明に係るリード楽器において、前記第1単一金属リードと前記第2単一金属リードとは異なる単一音を奏でるようにリード長が予め設定されていることが好ましい。
また、リード楽器を製作するためのリード楽器用製作キットは、前記第1単一金属リードを構成する第1金属リード部材と、前記第2単一金属リードを構成する第2金属リード部材と、山折り又は谷折りを行って前記蛇腹部を形成するための展開図が予め描かれた蛇腹用シート部材と、前記第1金属リード部材と前記第2金属リード部材を嵌めこむための前記開口部が形成された台座板部材と、前記空気流通部を構成する空気流通部材と、前記取手部を構成する取手部材と、を備えることを特徴とする。
本発明は[図1]で示す通り、紙で作った台座6に金属リード12と13をはめ込み、空圧を高めるため側板3、4、5、14と天板2で狭い空間をリードの上に作り、そこへ紙を伸縮する構造に折った蛇腹7を接着し、その蛇腹7を伸縮させることで音を発する紙のリード楽器とその製作キットである。
【0011】
台座板6は1ミリ厚以上の紙を用いリード12、13を固定する枠を抜き、台座板6とリード12、13を隙間なく接着する。その上部に同じく厚紙で側板3、4、5、14を用いてEの字型に枠をたて、天板2をのせて空圧を高めるための空間を設置する。その空間と反対側に紙で折った蛇腹7を接着するが、この場合、蛇腹7は伸縮させるため厚紙ではなく100キロ以下の薄手の紙を使うことが好ましい。蛇腹7と発音装置を接着した反対側も同じ大きさの厚紙を接着する。これにより気密性が生まれ、金属リードは軽い操作で反応するようになる。さらに演奏しやすい形態にするために厚紙の外側に蛇腹と同じ程度の厚みの紙で引っ張るための取手1、9を接着し、取手の補強としてさらに補強紙10、11を貼り完成させる。
【0012】
固定する金属リード12、13は互いに方向を裏表になるよう固定し12を蛇腹を押したときに発音し13を蛇腹を引いたときに発音するようにする。12と13は左右の位置が変わっても押し引きで発音することに変わりはない。
【0013】
また、[図6]に示す通り、台座板6にさらにもうひとつづつリードを固定する枠を作り同じ音程でピッチの違うリードをのせれば複音の音色を作ることができる。
【0014】
また、リード12、13を音程の違うリードをのせれば押引異音のダイアトニックの音階を作ることができる。
【紙のリード楽器の奏法】
【0015】
本発明は手動で蛇腹を動かすことにより音を鳴らすことができる。
【0016】
基本はひとつの楽器で一音を鳴らし、ハンドベルのように必要に応じた人数でひとつの楽曲を演奏する。ひとり一音、器用な人であれば2〜3音担当しても良い。
【0017】
時には同時に3つ以上の音を鳴らし和音を作ることも可能である。
【0018】
また、金属リードを使用することで正確なピッチの音階が発音できるので、他の楽器に伴奏をつけてもらいオーケストラのように演奏することも可能である。
【0019】
細かく蛇腹を押し引きさせることでトレモロ音の表現やロングトーンなど、表現の幅もつけることができる。
【紙のリード楽器キットの製作法】
【0020】
型に切ったそれぞれのパーツを次の要領で組み立てていく。先ずは展開図をプリントした紙を[図5]aに印した通り山折りと谷折りを繰り返し折ることによって[図5]bの蛇腹状に折り、のりしろを接着し[図5]cのように仕上げる。この時、好みの紙があれば蛇腹折りの展開図を写しオリジナルのものを使用してもよい。
【0021】
次にリードを固定した台座板6に側板3、4、5、14を接着し2の天板を接着し、発音部を組み立てる。
【0022】
[0020]で折った蛇腹と[0021]で組み立てた発音部を接着する。
【0023】
[0022]で組み立てたものに補強板8を接着する。
【0024】
[0023]で組み立てたものに1、9の取手を接着し、補強紙10、11を接着して取手を補強する。この時[0020]の蛇腹同様に取手と補強紙は好みの紙を使用しても良い。
【0025】
この紙のリード楽器製作キットの製作法を接着する方向にパーツを並べ[図3]に記した。
【0026】
構造を単純化させることにより以上の行程は小学校高学年ほどの知識や技量があれば十分に組み立て可能である。
【発明の効果】
【0027】
本発明は紙という素材を選び、空圧を高める空間を作ったことにより軽量にもかかわらず、わずかな力で金属リードを鳴らすことが可能となった。
【0028】
また、金属リードを利用することにより正確な12平均率の音階を4オクターブ以上発音することが可能となった。
【0029】
これにより力のない幼児やお年寄りの方などにも簡単にリード楽器の音色を楽しんでもらうことが可能となった。
【0030】
生産面においても紙を使用することで安価で量産することが可能であり、納品形態は製作キットとして平な状態で納入するため在庫の場所も少なくてすむ。
【0031】
また、紙に色、柄や絵などを施すことによって好みの色とデザイン、テキスタイルパターンなどを楽しむことができ、違う側面からも楽しむことができる。
【0032】
ハンドベルに見られるような一人がひとつの音を担当するという独特の奏法によって新たな感覚を覚えることになり、脳や体の活発化につながることも考えられる。
【0033】
また大勢で一つの楽曲を完成させる行程の中で、楽しい感情や時に意見の衝突があり他人とのコミニュケーション能力も向上し発達すると考えられる。
【図面の簡単な説明】
図1】請求項1における本発明の、斜視図と発音部の内部を示した図面である。
図2】請求項1における本発明の、側面図である。
図3】請求項2における本発明の、製作キットの並び順を示した斜視図である。
図4】請求項2における本発明の、製作キットの本体および取手の展開図である。
図5】請求項2における本発明の、製作キットの蛇腹折り部分の展開図と組み立て予想図である。
図6】請求項1における本発明の、複音の場合の発音部の内部を示した図面である。
【符号の説明】
1取手a
2天板
3側板a
4側板b
5側板c
6台座板
7蛇腹
8補強板
9取手b
10取手補強紙a
11取手補強紙b
12押リード
13引リード
14側板d
15押リード(複音用)
16引リード(複音用)
図1
図2
図3
図4
図5
図6