特許第6046469号(P6046469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ハウス食品グループ本社株式会社の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046469
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】ゾル状食品
(51)【国際特許分類】
   A23L 21/10 20160101AFI20161206BHJP
   A23L 29/20 20160101ALI20161206BHJP
【FI】
   A23L21/10
   A23L29/20
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2012-263323(P2012-263323)
(22)【出願日】2012年11月30日
(65)【公開番号】特開2014-108069(P2014-108069A)
(43)【公開日】2014年6月12日
【審査請求日】2015年6月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】000111487
【氏名又は名称】ハウス食品グループ本社株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100144794
【弁理士】
【氏名又は名称】大木 信人
(72)【発明者】
【氏名】黒部 史明
(72)【発明者】
【氏名】大澤 美絵
【審査官】 植原 克典
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/125064(WO,A1)
【文献】 特開2005−176742(JP,A)
【文献】 特開平07−203855(JP,A)
【文献】 特開2007−228834(JP,A)
【文献】 特許第3023244(JP,B2)
【文献】 特開平08−280334(JP,A)
【文献】 米国特許第06322814(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉と、寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cmの範囲に調整された低強度寒天と、水とを含む、20℃における粘度が18000mPa・s以下であることを特徴とするゾル状食品。
【請求項2】
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を、0.5質量%〜3.0質量%含む、請求項1に記載のゾル状食品。
【請求項3】
低強度寒天を、0.01質量%〜0.5質量%含む、請求項1又は2に記載のゾル状食品。
【請求項4】
小麦粉及び/又はガム類を含む、請求項1〜のいずれか1項に記載のゾル状食品。
【請求項5】
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉と、寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cmの範囲に調整された低強度寒天とを含む、水と混合して請求項1〜のいずれか1項に記載のゾル状食品を調製するための、ゾル状食品調製用ベース。
【請求項6】
ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉と、寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cmの範囲に調整された低強度寒天と、水とを加熱混合し、得られた混合物を冷却してゾル化することを含む、20℃における粘度が18000mPa・s以下であるゾル状食品を製造するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特有の粘りと、糸引き性を有し、かつ、口溶けが良く、フレーバーリリースの良好なゾル状食品に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、加工澱粉や寒天を利用して、特有の物性、食感を有する様々な食品が開発されている。特許文献1には、特定の加工澱粉を、2〜14質量%の割合で配合することにより、ゼリー状であるにも拘わらずスライム性であって、外的な力を加えても容易に崩壊せず、レオメーターで測定する時に降伏値を持たない物理的特性を有する新規な食感を有するデザート又はたれ食品類が開示されている。
【0003】
特許文献2には、天然ガムに対して特定の加工澱粉を100〜800重量%添加することを特徴とする冷凍耐性を有するゲル状食品が開示されており、具体的には加工澱粉3重量部、及び寒天1重量部を加配することによって、冷凍耐性の良好なゲル化食品が得られることが開示されている。
【0004】
特許文献3には、スプレッド食品など、低ゼリー強度が要求される用途に用いることが可能な低強度寒天が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4490202号公報
【特許文献2】特許第3448622号公報
【特許文献3】特許第3414954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、特有の粘りと、糸引き性を有し、かつ、口溶けが良く、フレーバーリリースの良好な、新規な物性、食感を有するゾル状食品を開発すべく研究を進めた。
【0007】
その結果、特許文献1に記載されたゼリー状の食品類に、特定の割合で配合する加工澱粉の配合量をさらに減らした場合に、得られた食品はゲル化せず、メルティーチーズや、すりおろしたとろろいもに類似した粘りと、糸引き性を有する、特有の物性を持つゾル状となることを見出した。
【0008】
しかしながら、このように低用量の加工澱粉により得られたゾル状の食品は、上記特有の物性を有する一方で、極めて口溶け・食感が悪く、また、フレーバーリリースが悪いために風味が乏しいものであることが明らかとなった。また、当該ゾル状の食品において、加工澱粉の加配量が少ない場合は、液状となりやすく、一方、加配量が多い場合は、口溶け・食感、フレーバーリリースが著しく悪いものになることが判明した。
【0009】
そこで本発明は、特有の粘りと、糸引き性を有し、かつ、口溶けが良く、フレーバーリリースの良好なゾル状食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、加工澱粉と、低強度寒天と、水とを混合することによって、特有の粘りと、糸引き性を有し、かつ、口溶けが良く、フレーバーリリースの良好なゾル状食品が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
すなわち、本発明は以下の発明を包含する。
[1] 加工澱粉と、低強度寒天と、水とを含む、20℃における粘度が18000mPa・s以下であることを特徴とするゾル状食品。
[2] 加工澱粉が、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉である、[1]のゾル状食品。
[3] 低強度寒天が、寒天成分の分子が短く切断され、ゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cm2の範囲に調整されたものである、[1]又は[2]のゾル状食品。
[4] 加工澱粉を、0.5質量%〜3.0質量%含む、[1]〜[3]のいずれかのゾル状食品。
[5] 低強度寒天を、0.01質量%〜0.5質量%含む、[1]〜[4]のいずれかのゾル状食品。
[6] 小麦粉及び/又はガム類を含む、[1]〜[5]のいずれかのゾル状食品。
[7] 加工澱粉と、低強度寒天とを含む、水と混合して[1]〜[6]のいずれかのゾル状食品を調製するための、ゾル状食品調製用ベース。
[8] 加工澱粉と、低強度寒天と、水とを加熱混合し、得られた混合物を冷却してゾル化することを含む、20℃における粘度が18000mPa・s以下であるゾル状食品を製造するための方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特有の粘りと、糸引き性を有し、かつ、口溶けが良く、フレーバーリリースが良く風味の良好なゾル状食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.ゾル状食品
本発明において「ゾル状食品」とは、室温状況下において、保形性を有さず、流動性の物性を有する食品であって、すなわち、粘性液体状又は粘稠性液体状の食品を意味する。例えば、当該ゾル状食品は水平表面に取り出した場合、三次元的な構造を有さず、面状に広がる物性を有する。したがって、室温状況下において、保形性や弾力性を有し、流動性を有さないゲル状食品とは、異なるものである。
【0014】
本発明のゾル状食品は、特許文献1に記載されたゼリー状の食品類において規定されたスライム性のものではなく、外的な力を加えて容易に崩壊する物性を有する。
【0015】
本発明のゾル状食品は、品温20℃において、18000mPa・s以下、好ましくは1000〜15000mPa・s、さらに好ましくは2000〜10000mPa・sの粘度を有する。粘度の値は、品温20℃とした本発明のゾル状食品を、B型粘度計(東機産業社製 VISCOMETER MODEL RB100)により、ローターNo.3又はNo.4を用い、回転数12rpmの条件で30秒間測定することにより得られる値を採用することができる。後記の実施例及び比較例において、ゾル状食品の粘度は、上記の方法によって測定した。
【0016】
また、本発明のゾル状食品は、糸引き性を有する。本発明において「糸引き性」とは、ゾル状食品が伸びる性質を意味する。例えば、スプーンでゾル状食品をすくい、上方に引き上げた際に、スプーンの下にゾル状食品が糸を引いたように伸びる物性を意味する。上記のように伸びて引いた糸が、そのまま維持される物性のものが望ましく、糸がすぐに切れる物性のものは望ましくない。
【0017】
本発明のゾル状食品は、加熱したメルティーチーズや、すりおろしたとろろいもに類似した粘りと、糸引き性を有する一方、これらの食品とは異質な、良好な口溶け及び食感を有する。
【0018】
2.原料
2.1.加工澱粉
本発明のゾル状食品に用いられる加工澱粉は、食品用加工澱粉であればよく、例えば、エーテル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、カチオン澱粉、エステル化澱粉、酢酸澱粉、リン酸澱粉、オクテニルコハク酸澱粉、並びに、これらの架橋澱粉及びグラフト共重合体等が挙げられる。好ましくは、エーテル化澱粉(ヒドロキシプロピル化澱粉など)、エステル化澱粉(アセチル化澱粉など)、架橋処理したエステル化澱粉(アジピン酸架橋アセチル化澱粉、リン酸架橋アセチル化澱粉など)、リン酸架橋澱粉、及び、架橋処理したエーテル化澱粉(リン酸架橋ヒドロキシプロピル化澱粉など)である。さらに好ましくは、ヒドロキシプロピル化澱粉である。加工澱粉の原料となる澱粉としては、種類は問わず、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉、甘藷澱粉、くず澱粉、米澱粉、豆類の澱粉、とうもろこし澱粉(コーンスターチ、ワキシーコーンスターチ、ハイアミロースコーンスターチ)等を使用できるが、好ましくはタピオカ澱粉である。
【0019】
本発明のゾル状食品中の加工澱粉の量は、所望するゾル状食品の物性が得られる範囲内で、用いる加工澱粉の種類や、併用する低強度寒天、並びにその他の材料の量や性質に応じて適宜調整することができ、特に限定はされない。例えば、当該ゾル状食品の全質量を基準として、好ましくは3.0質量%以下、より好ましくは2.3質量%以下、さらに好ましくは1.7質量%以下とすることができる。加工澱粉の量の下限値は特に限定されないが、当該ゲル状食品の全重量を基準として、0.5質量%以上であることが望ましい。加工澱粉含量の割合が高いと、形成された食品はゾル状の性状、及び上記物性を得ることができなくなる場合がある。なお、本明細書において、各材料の量は、特段の説明がない限り、乾燥物基準での質量を示す。
【0020】
2.2.低強度寒天
本発明のゾル状食品に用いられる低強度寒天とは、寒天成分の分子が短く切断され、日寒水式のゼリー強度が1.5%寒天濃度で10〜250g/cm2の範囲にある寒天を意味する。低強度寒天は公知の手法に基づいて製造することが可能であり、すなわち、テングサ属、オゴノリ属、オバクサ属などの海藻原料より抽出される寒天成分を酸処理(特許3023244号公報)又は熱処理(特許3414954号公報)し、寒天成分を低分子化することによって得ることができる。好ましくは、熱処理によって得られた低強度寒天を使用する。本発明においては市販の低強度寒天を使用することができ、例えば伊那食品工業株式会社の「ウルトラ寒天イーナ」「ウルトラ寒天UX−30」等を利用することができる。
【0021】
上記した通り、加工澱粉のみを用いて得られた食品では、口溶けが極めて悪く、また、フレーバーリリースが悪いために乏しい風味となり、求めるゾル状の物性を安定に得ることができない。一方、低強度寒天と加工澱粉を併用することによって、口溶けが良く、良好な食感を有し、また、フレーバーリリースが良く、良好な風味を有するゾル状食品を安定に得ることができる。
【0022】
本発明のゾル状食品中の低強度寒天の量は、所望するゾル状食品の物性が得られる範囲内で、併用する加工澱粉や、その他の材料の量や性質に応じて適宜調整することができ、特に限定はされない。例えば、当該ゾル状食品の全質量を基準として、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下とすることができる。低強度寒天量の下限値は特に限定されないが、当該ゾル状食品の全重量を基準として、0.01質量%以上であることが望ましい。ゾル状食品における寒天含量の割合が高いと、形成された食品はゾル状の性状、及び上記物性を得ることができなくなる。
【0023】
2.3.水
本発明のゾル状食品中の水の量は、所望するゾル状食品の物性が得られる範囲内で、併用する加工澱粉や、低強度寒天、並びに、その他の材料の量や性質に応じて適宜調整することができ、特に限定はされない。例えば、当該ゾル状食品の全質量を基準として、好ましくは65〜95質量%、より好ましくは70〜90質量%の範囲より適宜選択することができる。
【0024】
なお、本発明のゾル状食品に用いられる水としては、飲用水等を用いることができる。また、本発明のゾル状食品に用いられる水としては、水を含む乳等を用いてもよい。このような乳としては、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」で「乳」と定義されたもの、好ましくは「牛乳」と定義されたものを用いることができる。乳等を用いる場合には、前記のゾル状食品を製造するのに必要となる量の水が含まれる量で用いればよい。
【0025】
2.4.小麦粉、ガム類
本発明のゾル状食品には、必要に応じて、小麦粉(小麦澱粉を含む)、及び/または、ガム類を含めることができる。小麦粉は好ましくは、焙焼小麦粉を使用する。ガム類としては、キサンタンガム、グアーガムもしくはローカストビーンガム、ジェランガム等が挙げられるが、好ましくはキサンタンガムを使用する。ゾル状食品に小麦粉を適宜含めることによって、ゾル状食品に適当なとろみを付与することができる。また、ゾル状食品にガム類を適宜含めることによって、ゾル状食品に適当ななめらかさを付与することができる。
【0026】
本発明のゾル状食品中の小麦粉(小麦澱粉を含む)、及び/または、ガム類の量は、所望するゾル状食品の物性が得られる範囲内で、併用する加工澱粉や、低強度寒天、並びに、その他の材料の量や性質に応じて適宜調整することができ、特に限定はされない。例えば、当該ゾル状食品の全質量を基準として、小麦粉は好ましくは0.03〜1.0質量%、より好ましくは0.1〜0.75質量%、ガム類は好ましくは0.002〜0.3質量%、より好ましくは0.005〜0.1質量%の範囲より適宜選択することができる。小麦粉、及び/または、ガム類をこれらの量で用いることで、ゾル状食品に前述した各々による性能を付与することができる。
【0027】
2.5.その他の食品材料
本発明のゾル状食品には必要に応じてさらに、糖類、色素、香料、酸味料、果汁、果実、保存料、酸化防止剤、抗菌成分等、公知の食品材料を適宜配合することができる。ただし、これらの食品材料の各含有量は、ゾル状食品の上記物性が得られる、又は維持されるものに限られる。
【0028】
3.製造方法
本発明のゾル状食品は以下の手順で製造することができる。
まず、前述の原料を撹拌・混合しながら、80℃〜122℃程度に加温して、原料が均一に溶解・混合した原料混合物を調製する。均一な原料混合物を得ることができればよく、原料の混合順序は特に制限されない。
【0029】
次いで、上記原料混合物を容器に入れて、原料混合物を冷却処理してゾル化させる。冷却処理は、容器に入れた原料混合物を室温又は低温の雰囲気中か又は冷水中で保持することにより行うことができる。これによって本発明のゾル状食品を得ることができる。
【0030】
4.ゾル状食品調製用ベース
本発明のゾル状食品調製用ベース(以下、「本発明のベース」と記載)は、本発明のゾル状食品を前記の手順で製造するための基材である。例えば、前記原料のうち、水を除く原料を含んでなる乾燥物等として供することができる。本発明のベースには、これを用いて製造したゾル状食品に、その全質量を基準として特定された前上記各原料の量が達成される量にて、前記各原料が含まれる。
【0031】
本発明のベースは、前記の機能が達成されるものである限り、形態は特に限定はされないが、好ましくは顆粒や粉末の形態を有する。乾燥物等と水とが別体に包装された形態としてもよい。
【実施例】
【0032】
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例によって制限されないものとする。
【0033】
ベースの製造(1)
実施例1
表1に示す原料配合比にて、粉体状である各原料を混合して、「実施例1」のデザートベースを製造した。各原料は、後記のデザートベースに牛乳を加えて最終的に得られるデザート食品を100質量部とする配合比にて示す。低強度寒天として「ウルトラ寒天イーナ」(伊那食品工業株式会社)を使用した。以下、特に言及しない限り、低強度寒天とは「ウルトラ寒天イーナ」(伊那食品工業株式会社)を指す。
【表1】
【0034】
デザート食品の製造(1)
実施例2
表2に示す原料配合比にて、「実施例1」のデザートベースと牛乳を混合し、適宜撹拌しながら、沸騰するまで加熱した。加熱により蒸発した水分を補い、歩留まりを100%とした。得られた混合物を、カップに注いで、常温程度にまで冷却した後、冷蔵庫(4℃程度)でさらに冷やして、ゾル状のデザート食品を得た。
【0035】
前述の方法により、得られたデザート食品の粘度を計測し、糸引き性を評価した。結果、品温20℃におけるデザート食品の粘度は4030mPa・sであり、糸引き性は非常に良好であり、よく伸びた。
【0036】
また、得られたデザート食品は、粘りと糸引き性を有する特有の食感を有し、口溶けが良く、また、フレーバーリリースが良く、嗜好性に富んだ新規な食感と風味を有するものであった。
【0037】
以上のデザート食品の性能を表2に示す。
【表2】
【0038】
デザートベースの製造(2)
実施例3及び比較例1−4
表3に示す原料配合比にて、粉体状である各原料を混合して、「実施例3」及び「比較例1−4」のデザートベースを製造した。各原料は、最終的に得られるデザート食品を100質量部とする配合比にて示す。なお、低強度寒天として「ウルトラ寒天イーナ」(伊那食品工業株式会社)を、寒天として一般的なゲル化剤である寒天を使用した。
【表3】
【0039】
デザート食品の製造(2)
実施例4及び比較例5−8
表4に示す原料配合比にて、「実施例3」、「比較例1−4」のデザートベースと牛乳を混合し、上記実施例2と同様の手順でデザート食品を得た。
【0040】
実施例4のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1.7質量部、及び、低強度寒天を0.15質量部にて配合した。
【0041】
比較例5のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を4質量部、及び、低強度寒天を1.0質量部にて配合した。
【0042】
比較例6のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を3質量部、及び、一般的な寒天を1.0質量部にて配合した。
【0043】
比較例7のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を3質量部、及び、一般的な寒天を0.5質量部にて配合した。
【0044】
比較例8のデザート食品は、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を4質量部にて配合し、寒天は配合しなかった。
【0045】
結果、実施例4のデザート食品は、ゾル状の性状を有し、良好な糸引き性、及び粘度を有するものであった。また、実施例4のデザート食品は口溶けが良く、良好な食感を有し、また、フレーバーリリースが良く、良好な風味を有するものであった。
【0046】
一方、比較例5−8のデザート食品は、ゲル状の性状を有するものであり、粘度が高く、糸引き性を有さないものであった。
【表4】
【0047】
デザートベースの製造(3)
比較例9−13
表5に示す原料配合比にて、粉体状である各原料を混合して、「比較例9−13」のデザートベースを製造した。各原料は、最終的に得られるデザート食品を100質量部とする配合比にて示す。
【表5】
【0048】
デザート食品の製造(3)
比較例14−18
表6に示す原料配合比にて、「比較例9−13」のデザートベースと牛乳を混合し、上記実施例2と同様の手順でデザート食品を得た。
【0049】
比較例14のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1質量部にて配合し、低強度寒天は配合しなかった。
【0050】
比較例15のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1.5質量部にて配合し、低強度寒天は配合しなかった。
【0051】
比較例16のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2質量部にて配合し、低強度寒天は配合しなかった。
【0052】
比較例17のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2.5質量部にて配合し、低強度寒天は配合しなかった。
【0053】
比較例18のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を3質量部にて配合し、低強度寒天は配合しなかった。
【0054】
結果、比較例14のデザート食品は、液体でありゾル状の性状を示さなかった。比較例15及び16のデザート食品は、低粘度のゾル状の性状を有し、糸引き性の乏しいものであった。一方、比較例17及び18のデザート食品は、高粘度のゾル状の性状を有し、口溶けが悪く、また風味の乏しいものであった。
【0055】
これらの結果より、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を配合しただけでは、良好な糸引き性を有し、また、口溶けが良く、良好な風味を有する、ゾル状食品を得ることは困難であることが明らかとなった。
【表6】
【0056】
デザートベースの製造(4)
実施例5−13
表7に示す原料配合比にて、粉体状である各原料を混合して、「実施例5−13」のデザートベースを製造した。なお、各原料は、最終的に得られるデザート食品を100質量部とする配合比にて示す。
【表7】
【0057】
デザート食品の製造(4)
実施例14−22
表8に示す原料配合比にて、「実施例5−13」のデザートベースと牛乳を混合し、上記実施例2と同様の手順でデザート食品を得た。
【0058】
実施例14のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1質量部、及び、低強度寒天を0.13質量部にて配合した。
【0059】
実施例15のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1質量部、及び、低強度寒天を0.33質量部にて配合した。
【0060】
実施例16のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1.5質量部、及び、低強度寒天を0.1質量部にて配合した。
【0061】
実施例17のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を1.5質量部、及び、低強度寒天を0.26質量部にて配合した。
【0062】
実施例18のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2質量部、及び、低強度寒天を0.06質量部にて配合した。
【0063】
実施例19のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2質量部、及び、低強度寒天を0.23質量部にて配合した。
【0064】
実施例20のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2.5質量部、及び、低強度寒天を0.05質量部にて配合した。
【0065】
実施例21のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を2.5質量部、及び、低強度寒天を0.2質量部にて配合した。
【0066】
実施例22のデザート食品には、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉を3質量部、及び、低強度寒天を0.03質量部にて配合した。
【0067】
前記比較例14のデザート食品にて示されるとおり、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のみを1質量部含む場合には、液体でありゾル状の性状を示さなかったが、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉1質量部に加えて、低強度寒天を0.13質量部又は0.33質量部配合することによって(実施例14及び15)、ゾル状の性状を示し、粘度、糸引き性、口溶け、風味の各物性に改善がみられた。
【0068】
実施例15−19のデザート食品は、糸引き性を有すると共に、特に口溶けが良く、良好な食感を有し、また、フレーバーリリースが良く、良好な風味を有するものであった。
【0069】
上記比較例17及び18のデザート食品にて示されるとおり、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉のみを2.5質量部及び3質量部含む場合には、高粘度のゾル状の性状を有し、口溶けが悪く、また風味の乏しいものであった。これらに対して、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉2.5質量部に加えて、低強度寒天を0.05質量部又は0.2質量部配合することによって(実施例20及び21)、あるいは、ヒドロキシプロピル化タピオカ澱粉3質量部に加えて、低強度寒天を0.03質量部配合することによって(実施例22)、粘度、口溶け、風味の各物性に改善がみられた。
【表8】