(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
電池の外装表面に接触配置され、前記電池の温度を検出する接触式の温度検出手段と、前記温度検出手段を加熱する加熱手段とを用いて、前記温度検出手段の前記電池に対する取付状態の良否を判定する方法であって、
前記加熱手段による加熱が開始される前の温度検出手段の温度に基づいて加熱条件を決定し、
前記加熱条件に基づいて温度が定められた温風を前記加熱手段から噴出することによって前記温度検出手段を加熱し、
前記加熱手段が前記温度検出手段を加熱しているときの、前記温度検出手段によって検出された温度の変化速度を算出し、かつ、
算出した前記温度の変化速度が所定値よりも大きくなった場合に、前記温度検出手段の前記電池に対する取付状態を不良と判定する、
電池温度検出手段の取付状態判定方法。
電池の外装表面に接触配置され、前記電池の温度を検出する接触式の温度検出手段と、前記温度検出手段を加熱する加熱手段とを用いて、前記温度検出手段の前記電池に対する取付状態の良否を判定する方法であって、
前記電池の外装は、金属で形成されており、
前記温度検出手段は、樹脂で被覆されており、
前記加熱手段は、輻射熱を発する熱源であり、
前記加熱手段による加熱が開始される前の温度検出手段の温度に基づいて加熱条件を決定し、
前記加熱条件に基づいて温度が定められた輻射熱を前記加熱手段が発することによって前記温度検出手段を加熱し、
前記加熱手段が前記温度検出手段を加熱しているときの、前記温度検出手段によって検出された温度の変化速度を算出し、かつ、
算出した前記温度の変化速度が所定値よりも大きくなった場合に、前記温度検出手段の前記電池に対する取付状態を不良と判定する、
電池温度検出手段の取付状態判定方法。
【背景技術】
【0002】
従来、電池に、前記電池の温度を検出する温度検出手段を取り付ける技術は公知である(例えば、特許文献1)。
特許文献1に記載の技術は、バッテリの各電池を直列に接続するためのバスバーモジュールと、前記バスバーモジュールに組み付けられた状態で前記バッテリに位置決め配置される温度検出手段とに相互の位置決め兼係止部を設け、前記位置決め兼係止部により、バッテリに対する前記温度検出手段の位置を、前記バスバーモジュールを基準として正確に規定するものである。
【0003】
しかし、前記温度検出手段の取付け位置の精度が高い場合でも、前記温度検出手段と前記バッテリの電池との間に接触不良が発生しているときや、前記電池の外装表面への前記温度検出手段の押付け圧が低いとき等、前記温度検出手段と前記電池とが良好に接触していないときには、前記温度検出手段が前記電池の温度を精度良く検出することはできない。
【0004】
なお、前記温度検出手段が前記電池に正常に取り付けられているか否かの確認は、例えば、前記電池の充放電操作により前記電池の温度を上昇させて、このときの前記温度検出手段の検出値を確認することよって行われていた。
しかし、前記電池の充放電操作は、電圧調整によるが、一般に前記電池の熱容量は大きく、充放電操作により前記電池の温度を上昇させるためには、過大な電流を長時間流すことが必要となり、そのため前記温度検出手段の取り付け状態を確認するための装置が大型化してしまう点で不利であった。
また、工程上、前記温度検出手段の組付け後に、前記電池の充放電操作がなされない場合、前記電池の温度は環境温度と同一であるため、前記温度検出手段が規定位置に配置されて、温度検出精度が確保できているか否かを確認することができない。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の一実施形態である電池温度検出手段の取付状態判定装置(判定装置)10について説明する。
【0014】
判定装置10は、温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否を判定するための装置である。
【0015】
図1に示すように、電池2は、電池パック3を構成する部材である。電池パック3は、複数の電池2が重ね合わされた状態で、互いに直列ないし並列に電気的に接続された構造を有する。電池パック3は、例えばHV車や電気自動車の電源に用いられる。
【0016】
温度検出手段1は、電池2の表面温度を検出する接触式の温度センサであり、検査対象となる電池2の外装表面に接触配置されている。温度検出手段1は、例えばサーミスタである。
【0017】
判定装置10は、加熱手段11と、記憶手段(不図示)と、加熱制御手段12と、判定手段13と、を備えている。
【0018】
加熱手段11は、温度検出手段1を加熱するものである。加熱手段11は、加熱された空気媒体(温風)を温度検出手段1に供給(噴出)することによって、温度検出手段1を加熱する。
【0019】
前記記憶手段には、電池2に対する取付状態が正常であり、電池2と隙間なく良好に接触していて、取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されているときの、当該温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Aに係る情報が記憶されている。前記変化速度Aは、ラインαに基づいて算出される。
【0020】
図2に示すラインαは、電池2に対する取付状態が正常であり、電池2の外装表面と隙間なく良好に接触している温度検出手段1が、加熱手段11により加熱されているときの、加熱時間と、当該温度検出手段1によって検出された温度と、の関係を示している。
前記取付状態が正常な温度検出手段1は、加熱手段11によりT0+α(=T∞)℃の温風を噴出されることによって、加熱される。
前記変化速度Aは、加熱開始から所定時間(t1−t0)経過時の、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度の変化速度であり、以下の[数1]に示す値になる。
[数1]
A=(T1−T0)/(t1−t0)
なお、加熱開始時刻がt0であり、加熱開始前に、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度(初期温度)がT0であり、加熱開始から所定時間(t1−t0)経過時に、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度がT1になることとする。
【0021】
図2に示すラインβは、電池2の外装表面との間に隙間があるなど接触不良が発生していて、電池2に対する取付状態が不良な温度検出手段1が、加熱手段11により加熱されているときの、加熱時間と、当該温度検出手段1によって検出された温度と、の関係を示している。
前記取付状態が不良な温度検出手段1は、前記取付状態が正常な温度検出手段1と同様に、加熱手段11によりT0+α(=T∞)℃の温風を噴出されることによって、加熱される。また、加熱開始前に、前記取付状態が不良な温度検出手段1によって検出された温度(初期温度)はT0である。
【0022】
ラインα及びラインβに示すように、前記取付状態が不良な温度検出手段1の方が、前記取付状態が正常な温度検出手段1よりも温度の上昇速度が速い。これは、電池2の外装表面には、熱伝導性の良い部材(例えばアルミ)が含まれており、さらに電池2の熱容量が大きいため、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が正常であり、温度検出手段1と電池2の外装表面とが良好に接触している場合には、温度検出手段1の加熱時に、温度検出手段1から電池2へ熱伝導による放熱が発生して、温度検出手段1の温度(検出値)の上昇速度が遅くなるのに対し、温度検出手段1と電池2との間に隙間があるなど、温度検出手段1と電池2の外装表面との間に接触不良が発生していて、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合には、温度検出手段1の加熱時における温度検出手段1から電池2へ熱伝導による放熱が、温度検出手段1の取付状態が正常である場合に比べて少なくなり、温度検出手段1の温度(検出値)の上昇速度が速くなるからである。なお、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合、温度検出手段1の温度の上昇速度は、温度検出手段1の熱時定数に応じた速さになる。
従って、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が正常である場合、温度検出手段1の温度(検出値)の変化速度が、前記変化速度A以下の値になり、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合、温度検出手段1の温度(検出値)の変化速度が、前記変化速度Aより大きい値になると判断することが可能である。
【0023】
加熱制御手段12は、加熱手段11に接続され、加熱手段11の動作を制御することが可能である。加熱制御手段12は、例えばPCである。
【0024】
判定手段13は、検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否を判定するものである。判定手段13は、例えばPCである。判定手段13は、加熱制御手段12に接続され、加熱制御手段12へ温度検出手段1の取付状態の良否の判定結果に係る情報を送信することが可能である。また、判定手段13は、温度検出手段1に接続され、温度検出手段1から温度検出手段1の温度(検出値)に係る情報を受信することが可能である。判定手段13は、前記記憶手段に接続され、前記記憶手段から前記変化速度Aに係る情報を受信することが可能である。
【0025】
以下では、判定装置10が、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定を行うときの手順について、
図3を参照して説明する。
【0026】
まず、前記検査対象となる温度検出手段1が、加熱手段11による温度検出手段1の加熱が開始される前の温度(初期温度)T0を検出して、判定手段13が、温度検出手段1から前記初期温度T0に係る情報を受信する(S10)。
【0027】
加熱制御手段12が、前記検査対象となる温度検出手段1の加熱条件を決定する(S20)。
本実施形態では、加熱制御手段12は、加熱手段11により前記検査対象となる温度検出手段1にT0+α(=T∞)℃の温風を噴出するように、温度検出手段1の加熱条件を決定する。すなわち、加熱制御手段12は、前記取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されて、前記変化速度Aが算出されたときと同じ加熱条件で、加熱手段11により前記検査対象となる温度検出手段1を加熱するように、加熱条件を決定する。
【0028】
加熱制御手段12が上記S20で決定した加熱条件で、加熱手段11により前記検査対象となる温度検出手段1を加熱する(S30)。なお、加熱開始時刻をt0とする。
【0029】
前記検査対象となる温度検出手段1が、加熱開始から前記所定時間(t1−t0)経過時の温度T1’を検出して、判定手段13が、温度検出手段1から温度T1’に係る情報を受信する。そして、判定手段13は、S10にて受信した初期温度T0に係る情報と、温度T1’に係る情報とに基づいて、前記所定時間(t1−t0)経過時の、前記検査対象となる温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Bを算出して、算出した前記変化速度Bが所定値(前記変化速度A)よりも大きくなるか否かを判断する(S40)。なお、前記変化速度Bは、以下の[数2]に示す値になる。
[数2]
B=(T1’−T0)/(t1−t0)
【0030】
前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)よりも大きくなる場合、判定手段13は、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態を不良と判定する。この場合、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する再組付けが実施される(S50)。そして、温度検出手段1の電池2に対する再組付けが行われた後、上記S10へ移行して、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定が再度行われる。
【0031】
前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)以下の値になる場合、判定手段13は、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態を正常と判定する。この場合、加熱制御手段12が加熱手段11による温度検出手段1の加熱を停止する(S60)。そして、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定が終了する。
【0032】
以上のように、判定装置10の判定手段13は、加熱手段11により前記検査対象となる温度検出手段1を加熱しているときの、温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Bを算出して、算出した前記変化速度Bが所定値(前記変化速度A)よりも大きくなる場合には、温度検出手段1の電池2に対する取付状態を不良と判定し、算出した前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)以下の値になる場合には、温度検出手段1の電池2に対する取付状態を正常と判定する。
なお、前記所定値(前記変化速度A)は、電池2に対する取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されているときの、当該温度検出手段1によって検出された温度の変化速度である。また、加熱制御手段12は、前記取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されて、前記所定値(前記変化速度A)が算出されたときと同じ加熱条件で、前記検査対象となる温度検出手段1を加熱する。
これにより、電池2の充放電操作を行うことなく、温度検出手段1と電池2との接触状態、すなわち温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定を行うことが可能である。また、電池2の充放電操作を行わずに、温度検出手段1自体を加熱するように構成することで、温度検出手段1の取り付け状態を確認するための装置構成を簡素化することが可能である。
【0033】
[別実施形態]
以下に、判定装置10の別実施形態について、
図4及び
図5を用いて具体的に説明する。なお、以下の実施形態において説明する判定装置10の構造において、既に説明した実施形態と共通する部分については、同符号を付してその説明を省略する。
【0034】
図4に示すように、電池2は、電池パック3を構成する部材である。電池パック3は、複数の電池2が重ね合わされた状態で、互いに直列ないし並列に電気的に接続された構造を有する。電池パック3は、例えばHV車や電気自動車の電源に用いられる。本実施形態において、電池2の外装(電池ケース)は金属で形成されている。具体的には、電池2はそれぞれ、アルミニウム製の外装(電池ケース)を備えて構成されている。電池2が重ね合わされた状態の上側には、それぞれの電池を電気的に接続するためのバスバーモジュール2aが配設されている。
【0035】
温度検出手段1は、電池2の表面温度を検出する接触式の温度センサであり、検査対象となる電池2の外装表面に接触配置されている。温度検出手段1は、例えばサーミスタである。本実施形態において、温度検出手段1は樹脂で被覆されている。具体的には、温度検出手段1は黒色の樹脂製素材により、その表面が覆われている。
【0036】
判定装置10は、加熱手段11と、記憶手段(不図示)と、加熱制御手段12と、判定手段13と、を備えている。
【0037】
加熱手段11は、温度検出手段1を加熱するものである。本実施形態における加熱手段11は、加熱制御手段12に接続された輻射熱源11a・11aと、この輻射熱源11a・11aによる輻射熱を発する熱源設置パネル11bと、を備える。輻射熱源11a・11aとしては、遠赤外線やハロゲンランプなど、輻射熱を発する熱源が用いられる。
【0038】
そして、加熱手段11は、熱源設置パネル11bを
図4中の矢印Aに示す如く下降されて、電池2におけるバスバーモジュール2aの上面に配置される。そして、加熱制御手段12からの信号によって、輻射熱源11a・11aから熱源設置パネル11bを介して輻射熱を発することにより、温度検出手段1を加熱する。即ち、加熱手段11は温度検出手段1を輻射熱によって加熱するのである。
【0039】
前記記憶手段には前記実施形態と同様に、電池2に対する取付状態が正常であり、電池2と隙間なく良好に接触していて、取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されているときの、当該温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Aに係る情報が記憶されている。そして、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が正常である場合、温度検出手段1の温度(検出値)の変化速度が、前記変化速度A以下の値になり、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合、温度検出手段1の温度(検出値)の変化速度が、前記変化速度Aより大きい値になると判断するのである。
【0040】
加熱制御手段12は、加熱手段11に接続され、加熱手段11の動作を制御することが可能である。加熱制御手段12は、例えばPCである。
【0041】
判定手段13は、検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否を判定するものである。判定手段13は、例えばPCである。判定手段13は、加熱制御手段12に接続され、加熱制御手段12へ温度検出手段1の取付状態の良否の判定結果に係る情報を送信することが可能である。また、判定手段13は、温度検出手段1に接続され、温度検出手段1から温度検出手段1の温度(検出値)に係る情報を受信することが可能である。判定手段13は、前記記憶手段に接続され、前記記憶手段から前記変化速度Aに係る情報を受信することが可能である。
【0042】
本実施形態に係る電池2の外装は輻射熱の吸収率の小さい金属(アルミニウム:輻射熱の吸収率0.02〜0.05)で形成されている一方、温度検出手段1は輻射熱の吸収率の大きい樹脂(輻射熱の吸収率0.9〜0.95)で被覆されている。このため、加熱手段11が温度検出手段1を輻射熱によって加熱した際に、電池2の外装の温度上昇よりも温度検出手段1の温度上昇が大きくなる。換言すれば、本実施形態における加熱手段11は、温度検出手段1を選択的に局所加熱することが可能となるのである。
【0043】
ここで、温度検出手段1と電池2の外装表面との温度差を用いて(温度検出手段1から電池2への熱伝導による放熱を用いて)温度検出手段1の電池2に対する取付状態を判定する場合、加熱手段11によって加熱した場合に温度検出手段1と電池2との温度差が大きくなることが好ましい。
【0044】
例えば、加熱手段を前記実施形態の如く温風によるものとした場合、温度検出手段1と電池2の外装表面とが同様に加熱されてしまい、その温度差が小さくなる。この場合は温度検出手段1から電池2への熱伝導による放熱が起きにくくなる。
【0045】
これに対し、本実施形態によれば、加熱手段11によって輻射熱で加熱した温度検出手段1は電池2との温度差が大きくなるため、温度検出手段1から電池2への熱伝導による放熱が発生しやすくなる。即ち、温度検出手段1の電池2に対する取付状態の判定精度をより向上させることができる。
【0046】
具体的には、
図5に示すラインαは、電池2に対する取付状態が正常であり、電池2の外装表面と隙間なく良好に接触している温度検出手段1が、加熱手段11により輻射熱で加熱されているときの、加熱時間と、当該温度検出手段1によって検出された温度と、の関係を示している。
前記取付状態が正常な温度検出手段1は、加熱手段11によりT0+α(=T∞)℃の輻射熱が発せられることによって、加熱される。
前記変化速度Aは、加熱開始から所定時間(t1−t0)経過時の、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度の変化速度であり、以下の[数3]に示す値になる。
[数3]
A=(T2−T0)/(t1−t0)
なお、加熱開始時刻がt0であり、加熱開始前に、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度(初期温度)がT0であり、加熱開始から所定時間(t1−t0)経過時に、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度がT2になることとする。
【0047】
一方、
図5に示すラインβは、電池2の外装表面との間に隙間があるなど接触不良が発生していて、電池2に対する取付状態が不良な温度検出手段1が、加熱手段11により加熱されているときの、加熱時間と、当該温度検出手段1によって検出された温度と、の関係を示している。
前記取付状態が不良な温度検出手段1は、前記取付状態が正常な温度検出手段1と同様に、加熱手段11によりT0+α(=T∞)℃の輻射熱が発せられることによって、加熱される。また、加熱開始前に、前記取付状態が不良な温度検出手段1によって検出された温度(初期温度)はT0である。
【0048】
本実施形態における電池2の外装表面は、輻射熱の吸収率が小さく熱伝導性の良い金属(例えばアルミ)で形成されており、さらに電池2の熱容量も大きい。一方、温度検知手段1は輻射熱の吸収率の大きい樹脂で被覆されている。このため、温度検出手段1の加熱時に、温度検知手段1の方が電池2の外装表面よりも輻射熱をより多く吸収して、その温度差が大きくなる。即ち、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が正常であり、温度検出手段1と電池2の外装表面とが良好に接触している場合には、高温の温度検出手段1から低温の電池2へ熱伝導による放熱がより多く発生して、
図5中の温度上昇(T2−T0)が前記実施形態と比較して小さくなるため、温度検出手段1の温度(検出値)の上昇速度がより遅くなるのである。
【0049】
これに対し、温度検出手段1と電池2との間に隙間があるなど、温度検出手段1と電池2の外装表面との間に接触不良が発生していて、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合には、温度検出手段1の加熱時における温度検出手段1から電池2へ熱伝導による放熱が、温度検出手段1の取付状態が正常である場合に比べて少なくなる。これにより、温度検出手段1の温度(検出値)の上昇速度が速くなるのである。なお、温度検出手段1の電池2に対する取付状態が不良である場合、温度検出手段1の温度の上昇速度は、温度検出手段1の熱時定数に応じた速さになる。つまり、ラインα及びラインβに示すように、前記取付状態が不良な温度検出手段1の方が、前記取付状態が正常な温度検出手段1よりも温度の上昇速度がより速くなるのである。
即ち、本実施形態においては、取付状態が正常な温度検出手段1の温度の上昇速度を小さくすることが可能となる。即ち、取付状態が正常な温度検出手段1の温度の上昇速度に対する、取付状態が不良な温度検出手段1の温度の上昇速度の差をより顕著にすることが可能となるのである。
【0050】
本実施形態においては、判定装置10が前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定を行うときの手順については、前記実施形態と同様であるため、その詳細な説明は省略する。なお、検査対象となる温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Bは、以下の[数4]に示す値になる。
[数4]
B=(T2’−T0)/(t1−t0)
【0051】
前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)よりも大きくなる場合、判定手段13は、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態を不良と判定する。この場合、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する再組付けが実施される。そして、温度検出手段1の電池2に対する再組付けが行われた後、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定が再度行われる。
【0052】
この際、本実施形態においては前記の如く、取付状態が正常な温度検出手段1を輻射熱で局所的に加熱した場合の温度上昇(T2−T0)は小さくなっている。このため、高温の温度検出手段1から低温の電池2へ熱伝導による放熱がより多く発生して、加熱開始から所定時間(t1−t0)経過時の、前記取付状態が正常な温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Aを小さくすることができる(
図5を参照)。つまり、検査対象となる温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Bとの比較をより容易にすることが可能となるのである。
【0053】
前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)以下の値になる場合、判定手段13は、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態を正常と判定する。この場合、加熱制御手段12が加熱手段11による温度検出手段1の加熱を停止する。そして、前記検査対象となる温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定が終了する。
【0054】
以上のように、判定装置10の判定手段13は、加熱手段11により前記検査対象となる温度検出手段1を加熱しているときの、温度検出手段1によって検出された温度の変化速度Bを算出して、算出した前記変化速度Bが所定値(前記変化速度A)よりも大きくなる場合には、温度検出手段1の電池2に対する取付状態を不良と判定し、算出した前記変化速度Bが前記所定値(前記変化速度A)以下の値になる場合には、温度検出手段1の電池2に対する取付状態を正常と判定する。
【0055】
なお、前記所定値(前記変化速度A)は、電池2に対する取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されているときの、当該温度検出手段1によって検出された温度の変化速度である。また、加熱制御手段12は、前記取付状態が正常な温度検出手段1が加熱されて、前記所定値(前記変化速度A)が算出されたときと同じ加熱条件で、前記検査対象となる温度検出手段1を加熱する。
【0056】
これにより、電池2の充放電操作を行うことなく、温度検出手段1と電池2との接触状態、すなわち温度検出手段1の電池2に対する取付状態の良否判定をより精度良く行うことが可能である。また、電池2の充放電操作を行わずに、温度検出手段1自体を加熱するように構成することで、温度検出手段1の取り付け状態を確認するための装置構成を簡素化することが可能である。