(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような二次電池で充電や放電が行われると、活物質の体積変化によって、電極体の膨張及び収縮が起こることがある。例えば、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質として、ニッケル酸リチウム(LiNiO
2)、マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、コバルト酸リチウム(LiCoO
2)等のリチウム複合酸化物が用いられ、負極活物質として、黒鉛等の炭素系物質が用いられる。
【0005】
そして、充電時には、正極活物質から放出されたリチウムイオンが、電解液を通じて負極側に移動し、負極活物質に吸蔵される。この際、リチウムイオンを吸蔵した負極活物質が膨張して体積が大きく増加する。この結果、充電時には、負極活物質の膨張により、電極体が膨張する。これとは逆に、放電時には、負極活物質に吸蔵されていたリチウムイオンが放出され再び正極活物質に戻るが、この際、負極活物質は収縮して体積が大きく減少する。この結果、放電時には、負極活物質の収縮により、電極体が収縮する。このように、負極活物質として黒鉛のように充放電により膨張又は収縮してその体積が大きく変化する材料を用いる場合は、この負極活物質の膨張及び収縮により、電極体の膨張及び収縮が起こる。
【0006】
そして、負極活物質の膨張や収縮による電極体の膨張や収縮が起こると、セパレータと負極活物質層との間に含浸された電解液が移動して、徐々に電極体の外部に押し出されることがある。すると、電極体内の電解液が減少し、電池特性が低下する。
そこで、このようなセパレータと負極活物質との間の電解液が電極体外へ移動するのを抑制することが望まれる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載の実施例のように、セパレータの表面に多数の凹部を格子状に配置したものは、凹部以外の部分が凸部となり、この凸部のみを通じて幅方向中央部分から端縁に繋がる経路が存在する。このため、電極体が膨張、収縮した場合に、電解液が凸部で繋がる経路を伝わって電極体の外部へ漏れ出てしまい、電解液の電極体外への移動を十分に抑制することができない。
【0008】
本発明は、かかる問題点に鑑みてなされたものであって、充放電の繰り返しによりセパレータと負極活物質層との間の電解液が電極体の外部へ移動するのを防止して、電池特性の低下を抑制した二次電池、及び、このような二次電池を備えた組電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その一態様は、正極活物質層及び負極活物質層並びに上記正極活物質層と上記負極活物質層との間に介在するセパレータを有する電極体と、上記電極体内に含浸された電解液と、上記電極体及び上記電解液を収容する電池ケースと、を備える二次電池であって、上記セパレータは、多孔質樹脂からなる板状のセパレータ本体と、このセパレータ本体の主面のうち上記負極活物質層側の面上の少なくとも一部に形成され、絶縁性無機多孔質材からなる多孔質層とを有し、上記正極活物質層と上記負極活物質層とが当該セパレータを介して厚み方向に互いに重なる作用域内に、上記作用域の周縁の少なくとも一部に沿って延びる帯状で、上記厚み方向のうち上記負極活物質層に向かう負極側に突出し、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は上記多孔質層からなる突出帯部、及び、上記突出帯部よりも上記厚み方向負極側に低位で
上記セパレータ本体が露出し、上記突出帯部に沿って上記作用域の内側に隣在する低位部を有する二次電池である。
【0010】
この二次電池では、セパレータは、作用域内に、この作用域の周縁の少なくとも一部に沿って延びる帯状で、厚み方向負極側に突出する突出帯部、及び、この突出帯部よりも厚み方向負極側に低位(即ち、負極活物質層から離れた側)で、突出帯部に沿って作用域の内側に隣在する低位部を有している。
このため、電極体が膨張、収縮した場合でも、作用域内でかつセパレータと負極活物質層との間の電解液は、作用域の周縁において、厚み方向に高位で負極活物質層に当接あるいは近接する突出帯部を乗り越えて、作用域外へ出にくく、その内側に隣在する厚み方向に低位の低位部に留まる。
これにより、セパレータと負極活物質層との間の電解液が、作用域から電極体の外部へ移動するのが防止される。かくして、充電または放電の繰り返しによる電池特性の低下を抑制した二次電池が得られる。
【0011】
多孔質層を設けた部位を突出帯部とし、多孔質層を設けない部位を低位部とする
。
絶縁性無機多孔質材からなる多孔質層としては、アルミナ、シリカ等の無機セラミック粒子と結着剤とからなるものが挙げられる。例えば、多孔質樹脂からなるセパレータ本体の表面に、アルミナ粒子と結着剤とを溶剤に分散させたペーストをスクリーン印刷して乾燥することにより、突出帯部及び低位部を含む多孔質層をセパレータ本体に一体に形成すると良い。
【0012】
さらに、上述の二次電池であって、前記電極体は、前記正極活物質層を有する正極板と前記負極活物質層を有する負極板とを前記セパレータを介して軸線の周りに捲回してなり、上記正極板と上記負極板とが平板状に重なる平板部を有する扁平捲回電極体であり、上記セパレータは、前記作用域内で、かつ、少なくとも上記平板部内に位置する部位に、前記突出帯部であり、上記作用域の上記軸線に沿う軸線方向一方側の周縁に沿って延びる一方側突出帯部、上記突出帯部であり、上記作用域の上記軸線方向他方側の周縁に沿って延びる他方側突出帯部、前記低位部であり、上記一方側突出帯部に沿って隣在する一方側低位部、及び、上記低位部であり、上記他方側突出帯部に沿って隣在する他方側低位部、を有する二次電池とすると良い。
【0013】
この二次電池では、電極体は平板部を有する扁平捲回電極体であり、セパレータは、作用域内で、かつ、少なくとも平板部内に位置する部位に、前述の突出帯部である一方側突出帯部及び他方側突出帯部、前述の低位部である一方側低位部及び他方側低位部を有する。
これにより、扁平捲回電極体の平板部から、軸線方向一方側あるいは他方側の外部へセパレータと負極活物質層との間の電解液が移動するのを防止し、確実に電池特性の低下を抑制することができる。
【0014】
さらに、上述の二次電池であって、前記セパレータの前記一方側突出帯部及び前記他方側突出帯部は、当該セパレータの長手方向全体に延びてなる二次電池とすると良い。
【0015】
この二次電池では、一方側突出帯部及び他方側突出帯部が、作用域内の平板部内に位置する部位のみならず、セパレータの長手方向全体に延びている。これにより、セパレータ及び扁平捲回電極体を容易に形成できる。また、平板部の両側の部位においても、軸線方向一方側あるいは他方側の外部へセパレータと負極活物質との間の電解液が移動するのを防止できる。
【0016】
さらに、上述の二次電池であって、前記セパレータは、前記一方側低位部と前記他方側低位部との間に、前記厚み方向負極側に突出し、当該セパレータの長手方向に延び、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は前記多孔質層からなる複数の帯状凸部と、上記帯状凸部同士の間に位置し、この帯状凸部よりも上記厚み方向負極側に低位で、上記長手方向に延びる一または複数の帯状凹部とを有する二次電池とすると良い。
【0017】
この二次電池では、扁平捲回電極体を備える二次電池において、一方側低位部と他方側低位部との間に、セパレータの長手方向に延びる複数の帯状凸部と、この帯状凸部同士の間に位置する一または複数の帯状凹部とを有している。
これにより、一方側低位部と他方側低位部との間に、厚み方向に高位の帯状凸部と厚み方向に低位の帯状凹部とが縞状に並んだパターンとなる。このため、セパレータと負極活物質層との間の電解液は、帯状凸部を乗り越えて軸線方向に移動しにくくなる。
これにより、セパレータと負極活物質層との間の電解液が電極体の軸線方向一方側あるいは他方側の外部へ移動するのを、より適切に防止することができる。
ところで、ハイレート放電あるいはハイレート充電を繰り返すなど、充電と放電のパターンが非対称となると、電解液が電極体内を移動することにより、電極体内の電解液の塩濃度分布に偏りが生じることがある。しかるに、この二次電池は、帯状凸部と帯状凹部とが縞状に並んでいるので、セパレータと負極活物質層との間の電解液の塩濃度分布が、軸線方向に偏るのを防止することもできる。
【0018】
また、前述の二次電池であって、前記電極体は、前記正極活物質層を有する正極板と前記負極活物質層を有する負極板とを前記セパレータを介して軸線の周りに円筒状に捲回してなる円筒状捲回電極体であり、上記セパレータは、前記突出帯部であり、前記作用域の上記軸線に沿う軸線方向一方側の周縁に沿って延びる一方側突出帯部、上記突出帯部であり、上記作用域の上記軸線方向他方側の周縁に沿って延びる他方側突出帯部、前記低位部であり、上記一方側突出帯部に沿って隣在する一方側低位部、及び、上記低位部であり、上記他方側突出帯部に沿って隣在する他方側低位部、を有する二次電池とすると良い。
【0019】
この二次電池では、電極体は円筒状捲回電極体であり、セパレータは、前述の突出帯部である一方側突出帯部及び他方側突出帯部、前述の低位部である一方側低位部及び他方側低位部を有する。
これにより、円筒状捲回電極体の軸線方向一方側あるいは他方側の外部へ、セパレータと負極活物質層との間の電解液が移動するのを防止できる。
【0020】
さらに、上述の二次電池であって、前記セパレータは、前記一方側低位部と前記他方側低位部との間に、前記厚み方向負極側に突出し、当該セパレータの長手方向に延び、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は前記多孔質層からなる複数の帯状凸部と、上記帯状凸部同士の間に位置し、この帯状凸部よりも上記厚み方向負極側に低位で、上記長手方向に延びる一または複数の帯状凹部とを有する二次電池とすると良い。
【0021】
この二次電池では、円筒状捲回電極体を備える二次電池において、一方側低位部と他方側低位部との間に、セパレータの長手方向に延びる複数の帯状凸部と、この帯状凸部同士の間に位置する一または複数の帯状凹部とを有している。
これにより、セパレータと負極活物質層との間の電解液が、電極体の軸線方向一方側あるいは他方側の外部へ移動するのを、より適切に防止することができる。加えて、セパレータと負極活物質層との間の電解液の塩濃度分布が、軸線方向に偏るのを防止することもできる。
【0022】
また、前述の二次電池であって、前記電極体は、前記セパレータを介して前記正極活物質層と前記負極活物質層とが互いに平行に前記厚み方向に複数積層された積層型電極体であり、上記セパレータは、前記突出帯部であり、前記作用域の周縁に沿う環状の環状突出帯部と、前記低位部であり、上記環状突出帯部に沿って上記作用域の内側に隣在する環状低位部とを有する二次電池とすると良い。
【0023】
この二次電池では、電極体は積層型電極体であり、セパレータは、前述の突出帯部である環状突出帯部と、前述の低位部である環状低位部とを有する。
これにより、セパレータと負極活物質層との間の電解液が積層型電極体の周縁から外側へ移動するのを防止できる。
【0024】
さらに、上述の二次電池であって、前記セパレータは、前記作用域のうち前記環状突出帯部及び前記環状低位部の内側に位置し、前記厚み方向負極側に突出し、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は前記多孔質層からなり、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凸部と、上記環状凸部同士の間に位置し、この環状凸部よりも上記厚み方向負極側に低位で、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凹部とを有する二次電池とすると良い。
【0025】
この二次電池では、セパレータは、環状突出帯部及び環状低位部の内側に位置し、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凸部と、この環状凸部同士の間に位置し、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凹部とを有している。
これにより、環状突出帯部及び環状低位部の内側に、厚み方向に高位の環状凸部と厚み方向に低位の環状凹部とが交互に環状に並ぶ。このため、セパレータと負極活物質層との間の電解液は、電極体の中心部から外側に向けて環状凸部を乗り越えて移動しにくい。このため、セパレータと負極活物質層との間の電解液が電極体の周縁から外側へ移動するのを、より適切に防止することができる。加えて、セパレータと負極活物質層との間の電解液の塩濃度分布が、電極体の中心部から外側に向けて偏るのをも防止することもできる。
【0026】
また、他の態様は、前述のいずれかに記載の二次電池を複数備え、上記二次電池の前記電池ケースは、それぞれ平板状で互いに平行に配置されて、前記扁平捲回電極体の前記平板部を挟む2つの平行壁部を有し、複数の上記二次電池を、上記電池ケースの上記平行壁部に直交する積層方向に積層し、上記扁平捲回電極体の上記平板部を前記厚み方向に圧縮してなる組電池である。
【0027】
この組電池は、前述の扁平捲回電極体を備える複数の二次電池を積層方向に積層し、扁平捲回電極体の平板部を厚み方向に圧縮しているので、それぞれの二次電池でセパレータと負極活物質層との間の電解液が電極体の外部へと移動することを防止して、電池特性の低下を抑制した組電池となる。
【0028】
また、他の態様は、前述のいずれかに記載の二次電池を複数備え、上記二次電池の前記電池ケースは、それぞれ平板状で互いに平行に配置されて、前記積層型電極体を前記厚み方向に挟む2つの平行壁部を有し、複数の上記二次電池を、上記電池ケースの上記平行壁部に直交する積層方向に積層し、上記積層型電極体を上記厚み方向に圧縮してなる組電池である。
【0029】
この組電池は、前述の積層型電極体を備える複数の二次電池を積層方向に積層し、積層型電極体を厚み方向に圧縮しているので、それぞれの二次電池でセパレータと負極活物質層との間の電解液が電極体の外部へと移動することを防止して、電池特性の低下を抑制した組電池となる。
さらに、他の態様は、正極活物質層及び負極活物質層並びに上記正極活物質層と上記負極活物質層との間に介在するセパレータを有する電極体と、上記電極体内に含浸された電解液と、上記電極体及び上記電解液を収容する電池ケースと、を備える二次電池であって、上記セパレータは、多孔質樹脂からなる板状のセパレータ本体と、このセパレータ本体の主面のうち上記負極活物質層側の面上の少なくとも一部に形成され、絶縁性無機多孔質材からなる多孔質層とを有し、上記正極活物質層と上記負極活物質層とが当該セパレータを介して厚み方向に互いに重なる作用域内に、上記作用域の周縁の少なくとも一部に沿いかつ重なって延びる帯状で、上記厚み方向のうち上記負極活物質層に向かう負極側に突出し、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は上記多孔質層からなる突出帯部、及び、上記突出帯部よりも上記厚み方向負極側に低位で、上記突出帯部に沿って上記作用域の内側に隣在する低位部を有し、前記電極体は、前記セパレータを介して前記正極活物質層と前記負極活物質層とが互いに平行に前記厚み方向に複数積層された積層型電極体であり、上記セパレータは、前記突出帯部であり、前記作用域の周縁に沿いかつ重なる環状の環状突出帯部と、前記低位部であり、上記環状突出帯部に沿って上記作用域の内側に隣在する環状低位部とを有する二次電池である。
この二次電池においては、突出帯部は、少なくともその厚み方向負極側の一部が多孔質層からなる。具体的には、セパレータ本体の表面に多孔質層を形成し、多孔質層の厚い部位を突出帯部とする一方、多孔質層の薄い部位を低位部とするものが挙げられる。また、多孔質層を設けた部位を突出帯部とし、多孔質層を設けない部位を低位部とすることもできる。
また、上述の二次電池であって、前記セパレータは、前記作用域のうち前記環状突出帯部及び前記環状低位部の内側に位置し、前記厚み方向負極側に突出し、少なくとも上記厚み方向負極側の一部は前記多孔質層からなり、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凸部と、上記環状凸部同士の間に位置し、この環状凸部よりも上記厚み方向負極側に低位で、環状をなし入れ子状に配置された複数の環状凹部とを有する二次電池とすると良い。
さらに前二項の二次電池を複数備え、上記二次電池の前記電池ケースは、それぞれ平板状で互いに平行に配置されて、前記積層型電極体を前記厚み方向に挟む2つの平行壁部を有し、複数の上記二次電池を、上記電池ケースの上記平行壁部に直交する積層方向に積層し、上記積層型電極体を上記厚み方向に圧縮してなる組電池とすると良い。
【発明を実施するための形態】
【0031】
(実施形態1)
以下、本発明の第1の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池1(以下、単に電池1とも言う)を示す。電池1は、扁平捲回電極体20及び非水系の電解液30を、矩形板状のケース蓋11及び有底矩形箱状のケース本体12からなる電池ケース10内に収容した角型電池である。電池ケース10のケース蓋11には、後述する正極外部端子部41及び負極外部端子部42が固設されている。
【0032】
扁平捲回電極体20(以下、単に電極体20とも言う)は、いずれも帯状の正極板21と負極板22とを、同じく帯状の2枚のセパレータ23,24を介して互いに重ねて軸線AXの周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである。この電極体20は、絶縁フィルムを袋状に形成した絶縁フィルム包囲体(図示しない)内に収容された上で、横倒しにした状態で電池ケース10内に収容されている。なお、電池ケース10のケース本体12は、それぞれ平板状で互いに平行に配置された2つの平行壁部12A,12Bを有し、この平行壁部12A,12Bは、
図2の断面図に示すように、電極体20のうち、正極板21と負極板22とが平板状に重なる平板部HBを挟んでいる。
【0033】
正極板21は、芯材として、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔21sを有し、この正極集電箔21sの両面には、リチウム複合酸化物からなる正極活物質、導電剤及び結着剤を含む正極活物質層21kが帯状に設けられている。
図3に示すように、正極集電箔21sの幅方向の一方辺は、その表裏面が露出して正極活物質層21kが存在しない正極集電部21mとなっている。
【0034】
負極板22は、芯材として、帯状の銅箔からなる負極集電箔22sを有し、この負極集電箔22sの両面には、負極活物質である黒鉛、結着剤及び増粘剤を含む負極活物質層22kが帯状に設けられている。
さらに、負極集電箔22sの幅方向の一方辺は、その表裏面が露出して負極活物質層22kが存在しない負極集電部22mとなっている(
図3参照)。
なお、負極板22の負極活物質層22kの幅は、正極板21の正極活物質層21kの幅よりも、やや幅広とされている。
【0035】
2枚のセパレータ23,24は、負極板22の負極活物質層22kの幅よりもさらに幅広な帯状をなしており(
図3参照)、その主要部をなすセパレータ本体23M,24Mは、多孔質のポリプロピレン(PP)からなる板状の多孔質膜である。
なお、セパレータ23は、
図4に示すように、セパレータ本体23Mの2つの主面23MA,23MBのうち、負極板22の負極活物質層22k側を向く一方の面23MB上に、アルミナ粒子を含む絶縁性多孔質材からなる多孔質層23BSが形成されている。
また、セパレータ24も同様に、セパレータ本体24Mの2つの主面24MA,24MBのうち、負極板22の負極活物質層22k側を向く一方の面24MA上に、アルミナ粒子を含む絶縁性多孔質材からなる多孔質層24ASが形成されている。
【0036】
そして、互いに重ねられた正極板21、負極板22及びセパレータ23,24を、
図2に示すように、軸線AXの周りに捲回し、扁平状に圧縮して、平板部HBを有する扁平捲回電極体20を得る。
なお、捲回された正極板21の正極集電部21mは、クランク状に屈曲した正極集電部材51に溶接されており、この正極集電部材51の先端部分である正極外部端子部41は、電池ケース10のケース蓋11を貫通して外部に突出している。また、捲回された負極板22の負極集電部22mは、同様に、クランク状に屈曲した負極集電部材52に溶接されており、この負極集電部材52の先端部分である負極外部端子部42は、電池ケース10のケース蓋11を貫通して外部に突出している。
【0037】
図4は、扁平捲回電極体20の平板部HBの断面の拡大図である。
図4中の左右方向が正極板21、負極板22及びセパレータ23,24の幅方向HWを示し、
図4中の上下方向がこれらの厚み方向HTを示す。なお、幅方向HWは、電極体20の軸線AXに沿う軸線方向HJと同一方向となる。
ここで、電極体20が電池ケース10に収容された状態において、正極板21の正極活物質層21kと負極板22の負極活物質層22kとがセパレータ23,24を介して厚み方向HTに互いに重なる領域を作用域EAとする。
【0038】
図5は、展開したセパレータ23を多孔質層23BSの側から見た図である。この
図5中、破線で示す枠内の領域が作用域EAとなる。また、セパレータ24も同じである。
図4及び
図5に示すように、セパレータ23は、その厚み方向HTのうち、負極活物質層22kに向かう負極側GM1(
図4中上向き)に突出し、かつ、作用域EAの軸線方向HJ一方側GH1の周縁EG1及び他方側GH2の周縁EG2に沿って、それぞれセパレータ23の長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の一方側凸部23T1及び他方側凸部23T2を有する。
また、一方側凸部23T1に沿う作用域EAの内側には、一方側凸部23T1よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で(つまり、負極板22から離れており)、長手方向HNの全体にわたって延びる一方側凹部23O1が隣在しており、他方側凸部23T2に沿う作用域EAの内側には、他方側凸部23T2よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる他方側凹部23O2が隣在している。
【0039】
さらに、一方側凹部23O1と他方側凹部23O2との間には、厚み方向HT負極側GM1に突出し、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凸部23T3を有し、この凸部23T3同士の間には、凸部23T3よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凹部23O3を有する。
【0040】
また、セパレータ24も、セパレータ23と同様に、その厚み方向HTのうち、負極活物質層22kに向かう負極側GM2(
図4中下向き)に突出し、かつ、作用域EAの軸線方向HJ一方側GH1の周縁EG1及び他方側GH2の周縁EG2に沿って、それぞれセパレータ24の長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の一方側凸部24T1及び他方側凸部24T2を有する。
また、一方側凸部24T1に沿う作用域EAの内側には、一方側凸部24T1よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる一方側凹部24O1が隣在しており、他方側凸部24T2に沿う作用域EAの内側には、他方側凸部24T2よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる他方側凹部24O2が隣在している。
【0041】
さらに、一方側凹部24O1と他方側凹部24O2との間には、厚み方向HT負極側GM2に突出し、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凸部24T3を有し、この凸部24T3同士の間には、凸部24T3よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凹部24O3を有する。
【0042】
ここで、一方側凸部23T1,24T1、他方側凸部24T1,24T2及び凸部23T3,24T3は、いずれもセパレータ本体23M,24Mの負極活物質層22k側の面23MB,24MA上に設けた多孔質層23BS,24ASからなる。また、一方側凹部23O1,24O1、他方側凹部23O2,24O2及び凹部23O3,24O3は、いずれも多孔質層23BS,24ASを設けない部位である。
【0043】
このように、本実施形態1に係る電池1では、セパレータ23,24は、作用域EA内に、この作用域EAの軸線方向HJの周縁EG1,EG2に沿って長手方向HNに延びる帯状で、厚み方向HT負極側GM1,GM2に突出する一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2を有している。また、厚み方向HT負極側GM1,GM2に低位で、一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2に沿って作用域EAの内側に隣在する一方側凹部23O1,24O1及び他方側凹部23O2,24O2を有している。
【0044】
このため、電極体20が膨張、収縮した場合でも、作用域EA内でかつセパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30は、作用域EAの軸線方向HJの周縁EG1,EG2において、厚み方向HTに高位で負極活物質層22kに当接あるいは近接する一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2を乗り越えて、作用域EA外へ出にくく、その内側に隣在する厚み方向HTに低位の一方側凹部23O1,24O1及び他方側凹部23O2,24O2に留まる。
【0045】
これにより、セパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が、作用域EAから電極体20の外部へ移動するのが防止される。かくして、充電または放電の繰り返しによる電池特性の低下を抑制した電池1が得られる。
【0046】
本実施形態1において、一方側凸部23T1,24T1は本発明の一方側突出帯部に、他方側凸部23T2,24T2は他方側突出帯部に相当する。
さらに、これら一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2が、突出帯部に相当する。
また、一方側凹部23O1,24O1は一方側低位部に、他方側凹部23O2,24O2は他方側低位部に相当する。
さらに、これら一方側凹部23O1,24O1及び他方側凹部23O2,24O2が、低位部に相当する。
【0047】
さらに、この電池1では、電極体20は平板部HBを有する扁平捲回電極体20であり、セパレータ23,24は、作用域EA内で、少なくとも平板部HB内に位置する部位に、突出帯部である一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2、低位部である一方側凹部23O1,24O1及び他方側凹部23O2,24O2を有している。
これにより、扁平捲回電極体20の平板部HBから、軸線方向HJ一方側GH1あるいは他方側GH2の外部へセパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が移動するのを防止し、確実に電池特性の低下を抑制することができる。
【0048】
さらに、この電池1では、一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2が、作用域EA内のうちの平板部HB内に位置する部位のみならず、セパレータ23,24の長手方向HN全体に延びている。これにより、セパレータ23,24及び扁平捲回電極体20を容易に形成できる。また、平板部HBの両側の部位においても、軸線方向HJ一方側GH1あるいは他方側GH2の外部へセパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が移動するのを防止できる。
【0049】
さらに、この電池1では、セパレータ23,24は、一方側凹部23O1,24O1と他方側凹部23O2,24O2との間に、セパレータ23,24の長手方向HNに延びる複数の凸部23T3,24T3と、この凸部23T3,24T3同士の間に位置する複数の凹部23O3,24O3とを有している。
これにより、一方側凹部23O1,24O1と他方側凹部23O2,24O2との間に、厚み方向HTに高位の凸部23T3,24T3と厚み方向HTに低位の凹部23O3,24O3とが縞状に並んだパターンとなる。
【0050】
このため、セパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30は、凸部23T3,24T3を乗り越えて軸線方向HJに移動しにくくなる。
これにより、セパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が電極体20の軸線方向HJ一方側GH1あるいは他方側GH2の外部へ移動するのを、より適切に防止することができる。加えて、セパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30の塩濃度分布が、軸線方向HJに偏るのを防止することもできる。
【0051】
本実施形態1において、凸部23T3,24T3は、本発明の帯状凸部に相当する。また、凹部23O3,24O3は、帯状凹部に相当する。
【0052】
(変形形態1)
また、
図6に、上述の実施形態1の第1の変形形態を示す。この
図6に示すセパレータ323のように、セパレータ323の幅方向HW(軸線方向HJ)の両端縁に沿って長手方向HJに延びる帯状の一方側突出帯部323T1及び他方側突出帯部323T2(突出帯部)を多孔質層により形成し、これらの間は、多孔質層を形成しない厚み方向に低位な部位としても良い。この場合、一方側突出帯部323T1及び他方側突出帯部323T2(突出帯部)に沿って作用域EAの内側に隣在する厚み方向に低位の部位が、一方側低位部323O1及び他方側低位部323O2(低位部)である。
【0053】
(変形形態2)
また、
図7に、実施形態1の第2の変形形態を示す。この
図7に示すセパレータ423のように、一方側突出帯部423T1及び他方側突出帯部423T2(突出帯部)を形成し、また、その内側を一方側低位部423O1及び他方側低位部423O2(低位部)とするほか、さらにその内側に、多孔質層からなる凸部423T3を格子状などのパターンで設けても良い。
【0054】
(実施形態2)
次いで、本発明の第2の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図8に、本実施形態2に係るリチウムイオン二次電池101(以下、単に電池101とも言う)を示す。この電池101は、円筒状捲回電極体120及び非水系の電解液130を、円板状のケース蓋111及び有底円筒状のケース本体112からなる電池ケース110内に収容した円筒型電池である。なお、電池ケース110のケース蓋111は、電気絶縁性樹脂からなる円環状のガスケット113を介在させて、ケース本体112の開口部112Hにかしめられており、ケース蓋111とケース本体112との間は電気的に絶縁されている。そして、ケース蓋111の天井面111bが正極外部端子をなし、ケース本体112の底部112bが負極外部端子をなす。
【0055】
円筒状捲回電極体120(以下、単に電極体120とも言う)は、いずれも帯状の正極板121と負極板122とを、同じく帯状の2枚のセパレータ123,124を介して互いに重ねて軸線AXの周りに円筒状に捲回したものである。なお、これら正極板121、負極板122及びセパレータ123,124の各々の構成は、実施形態1に係る電池1の扁平捲回電極体20とほぼ同じである(
図3参照)。
【0056】
正極板121は、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔121sを有し、この正極集電箔121sの両面には、正極活物質層121kが帯状に設けられている。さらに、正極集電箔121sの幅方向の一方辺は、正極活物質層121kが存在しない正極集電部121mとなっている。
負極板122は、帯状の銅箔からなる負極集電箔122sを有し、この負極集電箔122sの両面には、負極活物質層122kが帯状に設けられている。さらに、負極集電箔122sの幅方向の一方辺は、負極活物質層122kが存在しない負極集電部122mとなっている。
【0057】
2枚のセパレータ123,124は、それぞれ板状の多孔質膜であるセパレータ本体123M,124Mを有する。
このうち、セパレータ123は、
図4に示すように、セパレータ本体123Mの2つの主面123MA,123MBのうち、負極板122の負極活物質層122k側を向く一方の面123MB上に、絶縁性多孔質材からなる多孔質層23BSが形成されている。
また、セパレータ124も同様に、セパレータ本体124Mの2つの主面124MA,124MBのうち、負極板122の負極活物質層122k側を向く一方の面124MA上に、絶縁性多孔質材からなる多孔質層124ASが形成されている。
【0058】
そして、互いに重ねられた正極板121、負極板122及びセパレータ123,124を、
図8に示すように、軸線AXの周りに円筒状に捲回して円筒状捲回電極体120を得る。
なお、捲回された正極板121の正極集電部121mは、その端縁が金属板からなる正極集電部材151に溶接され、さらに、帯状の金属薄板からなる接続部材151bを介して正極外部端子をなすケース蓋111の天井面111bに電気的に接続している。また、捲回された負極板122の負極集電部122mは、その端縁が金属板からなる負極集電部材152に溶接され、この負極集電部材152を介して負極外部端子をなすケース本体112の底部112bに電気的に接続している。
【0059】
本実施形態2の円筒状捲回電極体120の断面は、
図4に示すように、実施形態1と同様である。
図4中の左右方向が正極板121、負極板122及びセパレータ123,124の幅方向HWを示し、
図4中の上下方向がこれらの厚み方向HTを示す。なお、幅方向HWは、電極体120の軸線AXに沿う軸線方向HJと同一方向となる。
ここで、電極体120が電池ケース110に収容された状態において、正極板121の正極活物質層121kと負極板122の負極活物質層122kとがセパレータ123,124を介して厚み方向HTに互いに重なる領域を作用域EAとする。
【0060】
また、実施形態1と同様、展開したセパレータ123は、実施形態1のセパレータ23と同様のパターンを有している(
図5参照)。
図5中、破線で示す枠内の領域が作用域EAとなる。また、セパレータ124も同様である。
図4及び
図5に示すように、実施形態1と同様、セパレータ123は、その厚み方向HTのうち、負極活物質層122kに向かう負極側GM1(
図4中上向き)に突出し、かつ、作用域EAの軸線方向HJ一方側GH1の周縁EG1及び他方側GH2の周縁EG2に沿って、それぞれセパレータ123の長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の一方側凸部123T1及び他方側凸部123T2を有する。
また、一方側凸部123T1に沿う作用域EAの内側には、一方側凸部123T1よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる一方側凹部123O1が隣在しており、他方側凸部123T2に沿う作用域EAの内側には、他方側凸部123T2よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる他方側凹部123O2が隣在している。
【0061】
さらに、一方側凹部123O1と他方側凹部123O2との間には、厚み方向HT負極側GM1に突出し、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凸部123T3を有し、この凸部123T3同士の間には、凸部123T3よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凹部123O3を有する。
【0062】
また、セパレータ124は、その厚み方向HTのうち、負極活物質層122kに向かう負極側GM2(
図4中下向き)に突出し、かつ、作用域EAの軸線方向HJ一方側GH1の周縁EG1及び他方側GH2の周縁EG2に沿って、それぞれセパレータ124の長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の一方側凸部124T1及び他方側凸部124T2を有する。
また、一方側凸部124T1に沿う作用域EAの内側には、一方側凸部24T1よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる一方側凹部124O1が隣在しており、他方側凸部124T2に沿う作用域EAの内側には、他方側凸部124T2よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる他方側凹部124O2が隣在している。
【0063】
さらに、一方側凹部124O1と他方側凹部124O2との間には、厚み方向HT負極側GM2に突出し、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凸部124T3を有し、この凸部124T3同士の間には、凸部124T3よりも厚み方向HT負極側GM2に低位で、長手方向HNの全体にわたって延びる帯状の複数の凹部124O3を有する。
【0064】
ここで、一方側凸部123T1,124T1、他方側凸部123T2,124T2及び凸部123T3,124T3は、いずれもセパレータ本体123M,124Mの負極活物質層122k側の面123MB,124MA上に設けた多孔質層123BS,124ASからなる。また、一方側凹部123O1,124O1、他方側凹部123O2,124O2及び凹部123O3,124O3は、いずれも多孔質層123BS,124ASを設けない部位である。
【0065】
このように、本実施形態2に係る電池101では、実施形態1と同様、セパレータ123,124は、作用域EA内に、この作用域EAの軸線方向HJの周縁EG1,EG2に沿って長手方向HNに延びる帯状で、厚み方向HT負極側GM1,GM2に突出する一方側凸部123T1,124T1及び他方側凸部123T2,124T2を有している。また、厚み方向HT負極側GM1,GM2に低位で、一方側凸部123T1,124T1及び他方側凸部123T2,124T2に沿って作用域EAの内側に隣在する一方側凹部123O1,124O1及び他方側凹部123O2,124O2を有している。
【0066】
このため、電極体120が膨張、収縮した場合でも、作用域EA内でかつセパレータ123,124と負極板122の負極活物質層122kとの間の電解液130は、作用域EAの軸線方向HJの周縁EG1,EG2において、厚み方向HTに高位で負極活物質層122kに当接あるいは近接する一方側凸部123T1,124T1及び他方側凸部123T2,124T2を乗り越えて、作用域EA外へ出にくく、その内側に隣在する厚み方向HTに低位の一方側凹部123O1,124O1及び他方側凹部123O2,124O2に留まる。
【0067】
これにより、セパレータ123,124と負極板122の負極活物質層122kとの間の電解液130が、作用域EAから電極体120の外部へ移動するのが防止される。かくして、充電または放電の繰り返しによる電池特性の低下を抑制した電池101が得られる。
【0068】
本実施形態2において、一方側凸部123T1,124T1は本発明の一方側突出帯部に、他方側凸部123T2,124T2は他方側突出帯部に相当する。
さらに、これら一方側凸部123T1,124T1及び他方側凸部123T2,124T2が、突出帯部に相当する。
また、一方側凹部123O1,124O1は一方側低位部に、他方側凹部123O2,124O2は他方側低位部に相当する。
さらに、これら一方側凹部123O1,124O1及び他方側凹部123O2,124O2が、低位部に相当する。
【0069】
さらに、この電池101では、電極体120は円筒状捲回電極体120であり、セパレータ123,124は、作用域EA内に、突出帯部である一方側凸部123T1,124T1及び他方側凸部123T2,124T2、低位部である一方側凹部123O1,124O1及び他方側凹部123O2,124O2を有している。
これにより、円筒状捲回電極体120の軸線方向HJ一方側GH1あるいは他方側GH2の外側へセパレータ123,124と負極板122の負極活物質層122kとの間の電解液130が移動するのを防止し、電池特性の低下を抑制することができる。
【0070】
さらに、この電池101では、セパレータ123,124は、一方側凹部123O1,124O1と他方側凹部123O2,124O2との間に、セパレータ123,124の長手方向HNに延びる複数の凸部123T3,124T3と、この凸部123T3,124T3同士の間に位置する複数の凹部123O3,124O3とを有している。
これにより、一方側凹部123O1,124O1と他方側凹部123O2,124O2との間に、厚み方向HTに高位の凸部123T3,124T3と厚み方向HTに低位の凹部123O3,124O3とが縞状に並んだパターンとなる。
【0071】
このため、セパレータ123,124と負極板22の負極活物質層122kとの間の電解液130は、凸部123T3,124T3を乗り越えて軸線方向HJに移動しにくくなる。
これにより、セパレータ123,124と負極板122の負極活物質層122kとの間の電解液130が、電極体120の軸線方向HJ一方側GH1あるいは他方側GH2へ移動するのを、より適切に防止することができる。加えて、セパレータ123,124と負極板122の負極活物質層122kとの間の電解液130の塩濃度分布が、軸線方向HJに偏るのを防止することもできる。
【0072】
本実施形態2の電池101において、凸部123T3,124T3が、本発明の帯状凸部に相当する。また、凹部123O3,124O3が、帯状凹部に相当する。
【0073】
なお、本実施形態2の電池101についても、セパレータ123,124に代えて、実施形態1と同様に、
図6に示すセパレータ323、あるいは、
図7に示すセパレータ423を用いることができる。
【0074】
(実施形態3)
次いで、本発明の第3の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
図9に、本実施形態3に係るリチウムイオン二次電池201(以下、単に電池201とも言う)を示す。この電池201は、積層型電極体220及び非水系の電解液230を、矩形板状のケース蓋211及び有底矩形箱状のケース本体212からなる電池ケース210内に収容した角型電池である。電池ケース210のケース蓋211には、後述する正極外部端子部241及び負極外部端子部242が固設されている。
【0075】
積層型電極体220(以下、単に電極体220とも言う)は、
図9,
図10に示すように、いずれも長方形をなす矩形板状の複数の正極板221と負極板222とを、矩形板状のセパレータ223あるいはセパレータ224を介して交互にかつ互いに平行に厚み方向HT(
図9中の左下−右上方向、
図10中の上下方向)に重ねたものである。なお、
図9における上下方向を高さ方向HHとし、左上−右下方向を幅方向HWとすると、
図10では、左右方向が高さ方向HHに対応し、
図10の紙面に直交する方向が幅方向HWに対応する。
また、電極体220は、絶縁フィルムを袋状に形成した絶縁フィルム包囲体(図示しない)内に収容された状態で電池ケース210内に収容されている。さらに、電池ケース210のケース本体212は、それぞれ平板状で互いに平行に配置された2つの平行壁部212A,212Bを有し、この平行壁部212A,212Bは、電極体220を厚み方向HTに挟んでいる。
【0076】
正極板221は、長方形をなす矩形板状のアルミニウム箔からなる正極集電箔221sを有し、この正極集電箔221sの両面には、矩形状に正極活物質層221kが設けられている。また、正極板221の幅方向HWの一方端は、正極集電箔221sが露出した正極集電部221mとなっている。複数の正極板221の正極集電部221mは、互いに並列接続されて、クランク状に屈曲した正極集電部材251に溶接されており、この正極集電部材251の先端部分である正極外部端子部241は、電池ケース210のケース蓋211を貫通して外部に突出している。
負極板222は、長方形をなす矩形板状の銅箔からなる負極集電箔222sを有し、この負極集電箔222sの両面には、矩形状に負極活物質層222kが設けられている。また、負極板222の幅方向HWの一方端は、負極集電箔222sが露出した負極集電部222mとなっている。複数の負極板222の負極集電部222mは、互いに並列接続されて、クランク状に屈曲した負極集電部材252に溶接されており、この負極集電部材252の先端部分である負極外部端子部242は、電池ケース210のケース蓋211を貫通して外部に突出している。
【0077】
セパレータ223,224は、板状の多孔質膜であるセパレータ本体223M,224Mを有する。
このうち、セパレータ223は、
図10に示すように、セパレータ本体223Mの2つの主面223MA,223MBのうち、負極板222の負極活物質層222k側を向く一方の面223MB上に、絶縁性多孔質材からなる多孔質層23BSが形成されている。
また、セパレータ224も同様に、セパレータ本体224Mの2つの主面224MA,224MBのうち、負極板222の負極活物質層222k側を向く一方の面224MA上に、絶縁性多孔質材からなる多孔質層24ASが形成されている。
ここで、電極体220が電池ケース210に収容された状態において、正極板221の正極活物質層221kと負極板222の負極活物質層222kとがセパレータ223,224を介して厚み方向HTに互いに重なる領域を作用域EAとする。
【0078】
図11は、セパレータ223を多孔質層223BSの側から見た図である。この
図11中、破線で示す枠内の領域が作用域EAとなる。また、セパレータ224も同じである。
図10及び
図11に示すように、セパレータ223は、その厚み方向HT(
図11において紙面に垂直な方向)のうち、負極活物質層222kに向かう負極側GM1(
図10中上向き、
図11中、手前側)に突出し、かつ、作用域EAの周縁EG3に沿って角型の環状をなす外周凸部223T1を有する。
また、外周凸部223T1に沿う作用域EAの内側には、外周凸部223T1よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、角型の環状をなす外周凹部223O1が隣在している。
【0079】
さらに、作用域EAのうち、外周凸部223T1及び外周凹部223O1の内側には、厚み方向HT負極側GM1に突出し、角型の環状をなして入れ子状に配置された複数の凸部223T3を有する。また、この凸部223T3同士の間には、凸部223T3よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、角型の環状をなして入れ子状に配置された複数の凹部223O3を有する。
【0080】
なお、本実施形態3では、外周凸部223T1及び凸部223T3は、いずれもセパレータ本体223Mの負極活物質層222k側の面223MB上に設けた多孔質層223BSからなる。また、外周凹部223O1及び凹部223O3は、いずれも多孔質層223BSを設けない部位である。
【0081】
また、セパレータ224も、その厚み方向HTのうち、負極活物質層222kに向かう負極側GM2(
図10中下向き)に突出し、かつ、作用域EAの周縁EG3に沿って角型の環状をなす外周凸部224T1を有する。
また、外周凸部224T1に沿う作用域EAの内側には、外周凸部224T1よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、角型の環状をなす外周凹部224O1が隣在している。
【0082】
さらに、作用域EAのうち、外周凸部224T1及び外周凹部224O1の内側には、厚み方向HT負極側GM1に突出し、角型の環状をなして入れ子状に配置された複数の凸部224T3を有する。また、この凸部224T3同士の間には、凸部224T3よりも厚み方向HT負極側GM1に低位で、角型の環状をなして入れ子状に配置された複数の凹部224O3を有する。
【0083】
ここで、外周凸部224T1及び凸部224T3は、いずれもセパレータ本体224Mの負極活物質層222k側の面224MA上に設けた多孔質層224ASからなる。また、外周凹部224O1及び凹部224O3は、いずれも多孔質層224ASを設けない部位である。
【0084】
このように、本実施形態3に係る電池201では、セパレータ223,224は、作用域EA内に、この作用域EAの周縁EG3に沿って角型の環状をなし、厚み方向HT負極側GM1,GM2に突出する外周凸部223T1,224T1を有している。また、厚み方向HT負極側GM1,GM2に低位で、外周凸部223T1,224T1に沿って作用域EAの内側に隣在する外周凹部223O1,224O1を有している。
【0085】
このため、電極体220が膨張、収縮した場合でも、作用域EA内でかつセパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230は、作用域EAの周縁EG3において、厚み方向HTに高位で負極活物質層222kに当接あるいは近接する外周凸部223T1,224T1を乗り越えて、作用域EA外へ出にくく、その内側に隣在する厚み方向HTに低位の外周凹部223O1,224O1に留まる。
【0086】
これにより、セパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230が、作用域EAから電極体220の外部へ移動するのが防止される。かくして、充電または放電の繰り返しによる電池特性の低下を抑制した電池201が得られる。
【0087】
本実施形態3において、外周凸部223T1,224T1が、本発明の環状突出帯部及び突出帯部に相当する。また、外周凹部223O1,224O1が、環状低位部及び低位部に相当する。
【0088】
さらに、この電池201では、電極体220は積層型電極体220であり、セパレータ223,224は、作用域EA内に、突出帯部である外周凸部223T1、低位部である外周凹部223O1を有している。
これにより、積層型電極体220の周縁から外側へセパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230が移動するのを防止し、電池特性の低下を抑制することができる。
【0089】
さらに、この電池201では、外周凸部223T1,224T1及び外周凹部223O1,224O1の内側に、厚み方向HTに高位の凸部223T3,224T3と厚み方向HTに低位の凹部223O3,224O3とが交互に環状に並ぶ。
【0090】
このため、セパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230は、電極体220の中心部から外側に向けて凹部223T3,224T3を乗り越えて移動しにくい。このため、セパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230が電極体220の周縁から外側へ移動するのを、より適切に防止することができる。加えて、セパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230の塩濃度分布が、電極体220の中心部から外側に向けて偏るのを防止することもできる。
【0091】
本実施形態3において、凸部223T3,224T3が、本発明の環状凸部に相当する。また、凹部223O3,224O3が、環状凹部に相当する。
【0092】
(実施形態4)
次いで、本発明の第4の実施の形態を、
図12を参照しつつ説明する。本実施形態4に係る組電池2は、実施形態1に係る扁平捲回電極体20を備える複数の電池1を、この電池1の電池ケース10の平行壁部12A,12Bに直交する積層方向HAに積層して互いを直列に接続し、2つの押圧部材2A,2Bで挟んで、扁平捲回電極体20の平板部HBを厚み方向HTに圧縮したものである。なお、この組電池2は、各電池1同士を、平行壁部12A,12Bよりも外形が小さい矩形板状のスペーサSPを介在させて積層方向HAに積層し、さらに、これらを2つの押圧部材2A,2Bで挟んで積層方向HAに押圧して、金属板からなる締結部材2C,2D及び締結ボルトBTを用いて締結している。これにより、各電池1の扁平捲回電極体20の平板部HBが厚み方向HTに圧縮されてなる。
【0093】
前述したように、電池1は、セパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が電極体20の外部へと移動することを防止しており、さらに、電池1を積層方向HAに積層することにより、扁平捲回電極体20の平板部HBを厚み方向HBに圧縮している。これにより、それぞれの電池1でセパレータ23,24と負極板22の負極活物質層22kとの間の電解液30が電極体20の外部へと移動することを適切に防止して、電池特性の低下を抑制した組電池2となる。
【0094】
(変形形態3)
次いで、実施形態4の変形形態を、実施形態4と同じく
図12を参照しつつ説明する。本変形形態3に係る組電池202は、実施形態4における電池1に代えて、実施形態3に係る電池201を用いたものである。即ち、この電池201の電池ケース210の平行壁部212A,212Bに直交する積層方向HAに積層して互いを直列に接続し、2つの押圧部材2A,2Bで挟んで、電池201の積層型電極体220を厚み方向HTに圧縮したものである。なお、この組電池202も、各電池201同士を、平行壁部212A,212Bよりも外形が小さい矩形板状のスペーサSPを介在させて積層方向HAに積層し、さらに、これらを2つの押圧部材2A,2Bで挟んで積層方向HAに押圧して、金属板からなる締結部材2C,2D及び締結ボルトBTを用いて締結している。これにより、各電池201の積層型電極体220が厚み方向HTに圧縮されてなる。
【0095】
前述したように、電池201は、セパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230が電極体220の外部へと移動することを防止しており、さらに、電池1を積層方向HAに積層することにより、積層型電極体220を厚み方向HBに圧縮している。これにより、それぞれの電池201でセパレータ223,224と負極板222の負極活物質層222kとの間の電解液230が電極体220の外部へと移動することを適切に防止して、電池特性の低下を抑制した組電池202となる。
【0096】
以上において、本発明を実施形態1〜4及び変形形態1〜3に即して説明したが、本発明は上記実施形態及び変形形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0097】
例えば、実施形態1では、セパレータ23,24は、セパレータ本体23M,24Mの負極活物質層22k側の面23MB,24MB上に多孔質層23BS,24ASを設けて、突出帯部である一方側凸部23T1,24T1及び他方側凸部23T2,24T2、並びに帯状凸部である凸部23T3,24T3を形成した。一方、低位部である一方側凹部23O1,24O1及び他方側凹部23O2,24O2、並びに帯状凹部である凹部23O3,24O3は、多孔質層23BS,24ASを設けない部位とした。また、実施形態3では、帯状凸部及び帯状凹部に代えて、環状凸部である凸部223T3,224T3及び環状凹部である凹部223O3,224O3を有するが、これら他の実施形態も同様とした。
しかし、多孔質層を厚くした部位と薄くした部位を設けることにより、多孔質層を厚くした部位で突出帯部及び帯状凸部若しくは環状凸部を形成し、多孔質層を薄くした部位で低位部及び帯状凹部若しくは環状凹部を形成しても良い。
【0098】
また、実施形態3では、アルミニウム箔からなる正極集電箔221sの両面に正極活物質層221kを設けた複数の正極板221と、銅箔からなる負極集電箔222sの両面に負極活物質層222kを設けた複数の負極板222とを、セパレータ223あるいはセパレータ224を介して交互にかつ互いに厚み方向HTに重ねて、積層型電極体220を得た。
しかし、積層型電極体としては、1枚の金属板の一方面に正極活物質層を設けて正極面とし、他方面に負極活物質層を設けて負極面とした正極及び負極を有する電極板を、直列接続となるように、セパレータを介して厚み方向に複数枚重ねたものでも良い。