(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
請求項1〜3のいずれか1項に記載の電池において、前記第1電子線透過性膜上、又は前記第2電子線透過性膜上の少なくともいずれか一方に、スペーサ膜が設けられていることを特徴とする分析用電池。
請求項1〜5のいずれか1項に記載の電池において、前記第1基板又は前記第2基板が、シリコン、石英、ホウケイ酸ガラスのいずれかからなることを特徴とする分析用電池。
請求項1〜6のいずれか1項に記載の電池において、前記第1基板の前記第1電子線透過性膜が設けられた一端面の裏面、又は、前記第2基板の前記第2電子線透過性膜が設けられた一端面の裏面の少なくともいずれかが、膜によって被覆されていることを特徴とする分析用電池。
【背景技術】
【0002】
電池を構成する正極活物質及び負極活物質では、周知の通り、充放電時に電極反応が生じる。近時、この電極反応を、充放電を行っている最中に分析機器によって分析することが試みられている。例えば、非特許文献1、2には、透過型電子顕微鏡(TEM)にて観察可能な分析用電池が提案されている。
【0003】
非特許文献1記載の分析用電池は、50μm×100μm程度の長方形形状の観察窓がそれぞれ形成された第1シリコン基板及び第2シリコン基板を有する。この中の第1シリコン基板には、前記観察窓の近傍に、LiCoO
2からなる正極活物質と、高配向性黒鉛からなる負極活物質が設けられる。なお、前記正極活物質及び前記負極活物質は、それぞれ、バルク体に対して収束イオンビームを照射するイオンビーム蒸着法によって形成される。
【0004】
第1シリコン基板と第2シリコン基板は、互いに所定の間隔で離間し、且つ前記観察窓同士の位置が合致するようにして対向配置される。第1シリコン基板と第2シリコン基板の間には、電解液が流通される。この電解液と、第1シリコン基板に設けられた前記正極活物質及び前記負極活物質とで電池が構成される。
【0005】
この電池は、前記電解液を流通させるための流路が形成されたTEMホルダの先端部に収容される。電解液は、ポンプの作用下に、TEMホルダの流路を経由して第1シリコン基板と第2シリコン基板の間に流通される。
【0006】
この状態で、前記観察窓に電子線を透過させてTEM観察を行い、その一方で電池に対して充放電を行うことにより、正極活物質や負極活物質が如何に変化するかを観察することが可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
イオンビーム蒸着法には、装置が高価であり、且つ成膜に長時間を要するという不具合がある。しかも、成膜に際しては、上記したようにバルク体が必要である。このため、コストが高騰してしまう。
【0009】
そこで、正極活物質又は負極活物質のいずれかを、粉体又は繊維を結着させた結着体とすることが想起される。この場合、第1シリコン基板の観察窓近傍に、正極活物質又は負極活物質となる合剤を塗布すればよいと考えられる。
【0010】
しかしながら、この電池における観察窓は上記したように小さく、従って、合剤が所定位置に精度よく塗布されないときには、正極活物質と負極活物質が近接することがある。このような事態が生じると、短絡が起こる一因となる。
【0011】
また、この電池では、第1シリコン基板と第2シリコン基板の離間距離が小さくなると、第1シリコン基板と第2シリコン基板に対して作用する電解液の圧力が大きくなるので、第1シリコン基板と第2シリコン基板の離間距離をある程度大きくしなければならない。このため、電池を小型化することが困難である。
【0012】
本発明は上記した問題を解決するためになされたもので、短絡が起こることを回避し得、しかも、一層の小型化を図ることが可能な分析用電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記の目的を達成するために、本発明は、正極ホルダと負極ホルダを重畳して構成され、電子線を透過させて分析を行うための分析用電池であって、
前記正極ホルダは、一端面に第1電子線透過性膜が設けられた第1基板を有し、
前記負極ホルダは、一端面に第2電子線透過性膜が設けられた第2基板を有し、
前記正極ホルダには、前記第1基板側から陥没して前記第1電子線透過性膜のみが残留することで、電子線を透過させるための第1観察窓が形成され、
前記負極ホルダには、前記第2基板側から陥没して前記第2電子線透過性膜のみが残留することで、電子線を透過させるための第2観察窓が形成され、
前記第1電子線透過性膜中の前記第1観察窓の裏面に対応する部位に正極活物質が配設されるとともに、前記第2電子線透過性膜中の前記第2観察窓の裏面に対応する部位に負極活物質が配設され、
前記正極活物質及び前記負極活物質が個別に接触する電解液を内包し、
前記第1電子線透過性膜に、前記正極活物質に対して電気的に接続された正極側端子部が設けられ、且つ前記第2電子線透過性膜に、前記負極活物質に対して電気的に接続された負極側端子部が設けられていることを特徴とする。
【0014】
本発明においては、正極ホルダに正極活物質を設ける一方で、負極ホルダに負極活物質を設けるようにしている。すなわち、正極活物質と負極活物質は、別個の部材に配置される。このため、正極活物質を設けるスペース、及び負極活物質を設けるスペースが狭小であっても、正極活物質と負極活物質が過度に近接するために短絡が起こることを有効に防止することができる。
【0015】
また、微量の電解液を内包(収容)するようにしているので、電解液を流通させる必要がない。このため、正極ホルダ及び負極ホルダに対して作用する電解液の圧力、換言すれば、分析用電池の内圧を小さくすることができる。このため、第1基板と第2基板の離間距離を大きくする必要がないので、分析用電池の小型化を図ることができる。
【0016】
しかも、この分析用電池は、従来公知の半導体プロセスによって容易に作製することができる。従って、低コストで得ることが可能である。
【0017】
正極活物質又は負極活物質の少なくともいずれか一方は、粉体又は繊維を結着させた結着体であってもよい。本発明では、上記したように正極活物質又は負極活物質を設ける部材が別個であるので、活物質の形成スペースが狭小であるために合剤を所定位置に塗布することが容易ではないような場合であっても、短絡を防止することができる。
【0018】
しかも、合剤の塗布は成膜に比して簡便であり、且つ低コストである。すなわち、この場合、コストの一層の低廉化を図ることができる。
【0019】
正極ホルダと負極ホルダとの重畳部には、シールを設けることが好ましい。この場合、電解液が重畳部から漏洩することを有効に防止することができる。
【0020】
また、第1電子線透過性膜上、又は第2電子線透過性膜上の少なくともいずれか一方に、スペーサ膜を設けることが好ましい。これにより、第1基板と第2基板の離間距離を適切に調整することが可能となるからである。スペーサ膜を設ける場合、短絡を回避するべく、該スペーサ膜を絶縁性膜とすることが好ましい。
【0021】
以上において、第1基板又は第2基板の好適な素材としては、シリコン、石英、ホウケイ酸ガラス等を挙げることができる。このような素材からなる基板には、上記した電子線透過性膜や端子部、スペーサ膜等を容易に形成することが容易であるという利点がある。
【0022】
第1基板において、第1電子線透過性膜が設けられた一端面の裏面に膜を形成するようにしてもよい。第2基板においても同様に、第2電子線透過性膜が設けられた一端面の裏面に膜を形成するようにしてもよい。この膜は、例えば、前記第1窓又は前記第2窓を形成する際に設けたマスク膜である。
【0023】
この場合、マスク膜を除去する作業を行わないので、その分、工程数が低減するという利点がある。
【0024】
なお、この種の膜は、前記第1電子線透過性膜又は前記第2電子線透過性膜と同一の材料から設けることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、正極活物質と負極活物質を別個の部材にそれぞれ設けるようにしているので、正極活物質を設けるスペース、及び負極活物質を設けるスペースが狭小である場合や、正極活物質又は負極活物質の少なくともいずれか一方を、合剤を塗布することで形成する場合であっても、正極活物質と負極活物質が過度に近接することが回避される。このため、短絡が起こることを有効に防止することができる。
【0026】
しかも、電解液を内包(収容)するので、電解液を流通させる場合のように内圧が大きくなることが回避される。このため、第1基板と第2基板の離間距離を小さくすることができるので、分析用電池の小型化を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る分析用電池につき好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、本実施の形態に係る分析用電池10の概略全体斜視図である。この分析用電池10は、略正方形形状の正極ホルダ12及び負極ホルダ14を有し、両ホルダ12、14が重畳されることで構成される。また、両ホルダ12、14の側面、すなわち、重畳部は、エポキシ系樹脂接着剤等からなるシール16によって囲繞されている。
【0030】
図2は、正極ホルダ12の概略斜視図である。正極ホルダ12は第1基板18aを有し、該第1基板18aの上端面には第1電子線透過性膜20が形成され、その裏面である下端面には第1マスク膜22が形成されている。第1基板18aは、例えば、シリコン(Si)、石英、ホウケイ酸ガラス等からなり、一方、第1電子線透過性膜20及び第1マスク膜22は、例えば、窒化ケイ素(Si
3N
4)からなる。
【0031】
図3に示すように、正極ホルダ12には、第1マスク膜22(第1基板18a側)から第1電子線透過性膜20に向かって陥没した有底の第1観察窓24aが形成される。
【0032】
ここで、第1観察窓24aの底壁は第1電子線透過性膜20である。換言すれば、第1観察窓24aは、第1マスク膜22及び第1基板18aを除去し、第1電子線透過性膜20のみを残留させた形状となっている。なお、
図2における参照符号26aは、第1観察窓24aの底壁の裏面に対応する部位(以下、「第1裏面部位」と表記する)を表す。
図2及びその他の図面では、第1裏面部位26aの位置の理解を容易にするべく該第1裏面部位26aを実線で示すこととするが、該第1裏面部位26aは第1電子線透過性膜20の一部位であり、他の部位との間に明確な境界線は存在しない。また、成分組成や組織構造にも特段の相違はない。
【0033】
第1電子線透過性膜20上には、その先端が第1裏面部位26aに近接するとともに、先端に比して拡開した後端が正極ホルダ12の一端の外縁に到達した第1導通部28aが設けられる(
図2参照)。第1導通部28aは、導電性を示す物質、好適には金属からなる。その具体例としては、タングステン、銅、アルミニウム、白金、金等が挙げられる。又は、カーボンであってもよい。
【0034】
さらに、第1裏面部位26aの一部と、第1導通部28aの先端とに跨るようにして、正極活物質30が重畳される。分析用電池10の電池部としてリチウムイオン電池を構成する場合、正極活物質30の好適な例としては、LiCoO
2、LiMn
2O
2、LiNiO
2、LiFePO
4、Li
2FePO
4F、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、Li(Li
aNi
xMn
yCo
z)O
2等が挙げられる。
【0035】
ここで、正極活物質30は、上記したような物質の粉末、又は繊維の結着体からなる。結着は、有機バインダ等の適切なバインダを介して行われる。場合によっては、導電助剤が添加されることもある。
【0036】
第1電子線透過性膜20上には、第1導通部28aが設けられた端部と対向する端部の2箇所の隅角部に、2個の第1スペーサ膜32a、32aが互いに離間するようにして形成されている。これら第1スペーサ膜32a、32aは、絶縁性膜であることが好ましい。これにより、短絡が起こる懸念を払拭し得るからである。この場合、第1スペーサ膜32a、32aの材質の好適な例としては、酸化ケイ素が挙げられる。
【0037】
一方の負極ホルダ14は、負極活物質34(
図3参照)を除いて正極ホルダ12と略同様に構成され、その材質も略同様である。このため、正極ホルダ12の構成要素に対応する構成要素には、上記の名称の「第1」に代えて「第2」を付すとともに、参照符号の添字の「a」を「b」に代え、その詳細な説明を省略する。ただし、負極ホルダ14の第2基板18bの一端面及びその裏面に形成された第2電子線透過性膜及び第2マスク膜については、参照符号を36、38としている。
【0038】
負極活物質34は、第2裏面部位26bの一部と、第2導通部28bの先端とに跨るようにして重畳される。電池部としてリチウムイオン電池を構成する場合、負極活物質34の好適な例としては、LiC
6、Li
4Ti
5O
12、Si、Ge等が挙げられる。負極活物質34も、上記したような物質の粉末、又は繊維を、有機バインダ等の適切なバインダを介して結着させた結着体からなる。
【0039】
以上において、第1導通部28a、第2導通部28bには、それぞれ、第1ワイヤ40a、第2ワイヤ40b(ともに
図1参照)がハンダ等によって接合される。勿論、第1ワイヤ40a及び第2ワイヤ40bは導電体であり、第1導通部28aと第1ワイヤ40a、第2導通部28bと第2ワイヤ40bはハンダ等を介して互いに電気的に接続される。第1導通部28aと第1ワイヤ40aによって正極側端子が構成され、第2導通部28bと第2ワイヤ40bによって負極側端子が構成される。
【0040】
分析用電池10において、正極ホルダ12と負極ホルダ14は、
図1及び
図3に示すように、第2電子線透過性膜36及び負極活物質34が設けられた一端面と、第1電子線透過性膜20及び正極活物質30が設けられた一端面とが対向するように配置される。なお、短絡を回避するべく、第1ワイヤ40aと第2ワイヤ40bは同一の辺から突出させるのではなく、例えば、対向する辺から突出させることが好ましい(
図1参照)。
【0041】
図1及び
図3においては、負極ホルダ14を下方、正極ホルダ12を上方に配置した状態を示している。この場合、電解液(
図3参照)は、負極活物質34を覆うように滴下される。リチウムイオン電
池の場合、電解液42としては、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル等が選定される。なお、電解液42には、LiBF
4、LiClO
4、LiPF
6等が0.5〜1mol/l程度溶解される。
【0042】
そして、負極ホルダ14に正極ホルダ12が重畳されることに伴い、電解液42が分析用電池10に内包(収容)されるとともに、正極活物質30が電解液42に接触する。これにより、負極活物質34及び正極活物質30の双方が電解液42に接触して電池部が構成される。その後、負極ホルダ14と正極ホルダ12の重畳部にシール16が設けられることにより、電解液42の漏洩防止がなされる。また、重畳によって第1裏面部位26aと第2裏面部位26bが対向し、結局、第1観察窓24aに対応する位置に第2観察窓24bが配される。
【0043】
この分析用電池10は、電子線を用いて分析(評価や観察を含む)を行う分析機器、例えば、TEMにセットされる。この際、第1マスク膜22側に設けられた第1観察窓24a(又は第2マスク膜38側に設けられた第2観察窓24b)がTEMの電子線照射部に対向する。
【0044】
そして、第1ワイヤ40a及び第2ワイヤ40bに対し、例えば、充放電試験器が電気的に接続され、その結果、前記電池部が充電又は放電を開始する。すなわち、正極活物質30、負極活物質34の各々で電極反応が起こる。その一方で、分析用電池10に対して電子線が照射される。
【0045】
以下、第1観察窓24aに電子線を入射させた場合を例として説明すると、第1観察窓24aの底壁が第1電子線透過性膜20であることから、電子線は、第1電子線透過性膜20を透過して前記電池部に到達する。
【0046】
電子線が正極活物質30又は負極活物質34に入射すると、第2電子線透過性膜36の底壁(第2観察窓24b)から電子線が透過する。この透過した電子線に基づき、電子線回折像が得られる。電極反応の進行に応じて正極活物質30又は負極活物質34に物理的又は化学的な変化が生じると、電子線回折像が異なったものとなる。これにより、電極反応が起こっている最中に活物質に如何なる変化が生じているのかについての情報を得ることができる。
【0047】
このように、本実施の形態によれば、電池部に対して充放電を行っている最中に、いわゆるその場観察を行うことが可能となる。
【0048】
分析用電池10は、従来公知の半導体プロセス(例えば、国際公開第2008/141147号パンフレット参照)によって作製することができる。以下、分析用電池10の作製方法につき説明する。
【0049】
はじめに、正極ホルダ12を作製する。すなわち、先ず、縦断面図である
図4に示すように、シリコン、石英又はホウケイ酸ガラス等からなる第1基板18aの両端面のそれぞれに、第1電子線透過性膜20、第1マスク膜22を全域にわたって成膜する。第1電子線透過性膜20及び第1マスク膜22を窒化ケイ素で形成する場合、化学的気相成長(CVD)法を採用すればよい。
【0050】
次に、CVD法等により、平面図である
図5A、及びVB−VB線矢視断面図である
図5Bに示すように、第1電子線透過性膜20上の全域にわたってスペーサ前駆膜50を成膜する。該スペーサ前駆膜50は、第1スペーサ膜32a、32a(
図2参照)を得るためのものであり、例えば、酸化ケイ素から形成される。
【0051】
次に、平面図である
図6A、及びVIB−VIB線矢視断面図である
図6Bに示すように、スペーサ前駆膜50上に、該スペーサ前駆膜50の露呈部分が略T字形状となるようにして、略正方形形状の2個のフォトレジスト膜52、52を形成する。
【0052】
次に、フォトレジスト膜52、52をマスクとして反応性イオンエッチングを施すことでパターニングを行い、さらに、フォトレジスト膜52、52を除去する。これにより、平面図である
図7A、及びVIIB−VIIB線矢視断面図である
図7Bに示すように、第1電子線透過性膜20が再び露呈するとともに、スペーサ前駆膜50が略正方形形状をなす2個の第1スペーサ膜32a、32aとして残留する。
【0053】
次に、第1スペーサ膜32a、32a及び第1電子線透過性膜20上にフォトレジスト膜54(
図8参照)を形成する。さらに、フォトレジスト膜54をマスクとして反応性イオンエッチングを施すことでパターニングを行うことにより、平面図である
図8に示すように、第1電子線透過性膜20の一部、すなわち、第1導通部28aを形成する部位をフォトレジスト膜54から露呈させる。
【0054】
次に、第1電子線透過性膜20において、フォトレジスト膜54から露呈した部位に対し、第1導通部28aを成膜する。この際には、例えば、真空蒸着を行えばよい。
【0055】
その後、フォトレジスト膜54を除去することにより、
図9に示すように、第1基板18aの一端面に、第1電子線透過性膜20が露呈し、且つ該第1電子線透過性膜20上の所定箇所に第1スペーサ膜32a、32a及び第1導通部28aが形成された積層物が設けられる。
【0056】
次に、裏面に対して加工を施し、第1観察窓24aを形成する。すなわち、先ず、第1マスク膜22の全域にわたってフォトレジスト膜56を形成し、さらに、裏面の平面図である
図10A、及びXB−XB線矢視断面図である
図10Bに示すように、第1マスク膜22の一部、すなわち、第1観察窓24aを形成する部位を、略正方形形状にフォトレジスト膜56から露呈させる。
【0057】
次に、フォトレジスト膜56をマスクとして反応性イオンエッチングを施すことでパターニングを行うことにより、第1マスク膜22において、フォトレジスト膜56から露呈した略正方形形状の一部位を除去する。さらに、フォトレジスト膜56を除去する。これにより、平面図である
図11A、及びXIB−XIB線矢視断面図である
図11Bに示すように、第1マスク膜22が再び露呈する。第1マスク膜22の一部が既に略正方形形状に除去されているため、第1基板18aの裏面が略正方形形状に露呈する。
【0058】
次に、この裏面からエッチングを行う。第1基板18aがシリコンからなる場合、シリコンエッチング液を用いればよい。その結果、平面図である
図12A、及びXIIB−XIIB線矢視断面図である
図12Bに示すように、第1マスク膜22から陥没し、第1電子線透過性膜20を底壁、第1基板18aを側壁とする第1観察窓24aが形成される。これにより、正極ホルダ12が得られるに至る。
【0059】
正極ホルダ12には、さらに、正極活物質30が設けられる。すなわち、第1電子線透過性膜20が形成された一端面側にフォトレジスト膜58(
図13A参照)を形成し、且つ平面図である
図13A、及びXIIIB−XIIIB線矢視断面図である
図13Bに示すように、第1導通部28aの先端の一部と、第1電子線透過性膜20の一部(第1裏面部位26aの一部)を露呈させる。
【0060】
次に、例えば、LiCoO
2、LiMn
2O
2、LiNiO
2、LiFePO
4、Li
2FePO
4F、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、Li(Li
aNi
xMn
yCo
z)O
2等の粉末又は繊維に対し、カーボン粉末(カーボンブラック等)の導電助剤や有機バインダ等を添加して調製した合剤を、ニードル等によって、フォトレジスト膜58から露呈した部位に塗布する。
【0061】
その後、フォトレジスト膜58を除去することにより、平面図である
図14A、XIVB−XIVB線矢視断面図である
図14B、及びXIVC−XIVC線矢視断面図である
図14Cに示すように、第1裏面部位26aと第1導通部28aに跨る正極活物質30が設けられた正極ホルダ12が得られる。正極活物質30が第1観察窓24aの裏面に位置していることはいうまでもない。
【0062】
以上のように、本実施の形態によれば、第1マスク膜22を第1電子線透過性膜20と同一材料で形成するようにしているので、双方を同一のプロセスで成膜することができる。しかも、第1マスク膜22を除去する作業を特に必要としない。従って、正極ホルダ12を効率よく作製することができる。
【0063】
上記に準拠した作業を行うことにより、第2マスク膜38(第2基板18b側)から第2電子線透過性膜36に向かって陥没し、且つ第2電子線透過性膜36を底壁、第2基板18bを側壁とする第2観察窓24bが形成され、さらに、第2裏面部位26bと第2導通部28bに跨る負極活物質34を保持した負極ホルダ14を得ることができる。なお、負極活物質34が第2観察窓24bの裏面に位置していることは勿論である。また、負極活物質34としては、LiC
6、Li
4Ti
5O
12、Si、Ge等を選定すればよい。
【0064】
さらに、第1導通部28a、第2導通部28bには、ハンダ等によって第1ワイヤ40a、第2ワイヤ40bがそれぞれ接合される。
【0065】
その後、例えば、負極活物質34を覆うように電解液42が滴下され、さらに、負極ホルダ14上に正極ホルダ12が重畳される。この際、正極活物質30が電解液42に接触して電池部が構成されるとともに、電解液42が分析用電池10に内包(収容)される。また、重畳によって第1裏面部位26aと第2裏面部位26bが対向し、結局、第1観察窓24aに対応する位置に第2観察窓24bが配される(
図3参照)。
【0066】
本実施の形態においては、正極活物質30を正極ホルダ12側に設け、負極活物質34を負極ホルダ14側に設けるようにしている。正極活物質30及び負極活物質34の各々を個別に形成するので、正極ホルダ12又は負極ホルダ14の狭小スペースに合剤を塗布するような場合であっても、両活物質が接触することを容易に回避し得る。従って、短絡を回避することも容易である。
【0067】
また、電解液42を分析用電池10に内包するのみであるので、第1基板18aと第2基板18bの離間距離を小さくした場合でも、電解液42から受ける圧力(内圧)が大きくなることが回避される。このため、分析用電池10の小型化を図ることができる。
【0068】
さらに、第1電子線透過性膜20には第1スペーサ膜32a、32aが形成され、且つ第2電子線透過性膜36には第2スペーサ膜32b、32bが形成されている。これら第1スペーサ膜32a、32a及び第2スペーサ膜32b、32bの膜厚を調整すること等により、第1電子線透過性膜20と第2電子線透過性膜36との離間距離を適宜設定することが可能となる。
【0069】
その後、エポキシ系樹脂接着剤等からなるシール16が負極ホルダ14と正極ホルダ12の重畳部に設けられることにより、電解液42の漏洩防止がなされる。以上により、
図1に示す分析用電池10が得られるに至る。
【0070】
本発明は、上記した実施の形態に特に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0071】
例えば、正極活物質30又は負極活物質34は、合剤から結着体として設けたものに限定されるものではなく、膜であってもよい。この場合の成膜手法としては、例えば、スパッタリングを採用すればよい。
【0072】
また、リチウムイオン電池以外の電池部を構成することも可能である。すなわち、例えば、正極活物質30、負極活物質34、電解液42として、水酸化ニッケル、水素吸蔵合金、水酸化カリウム水溶液をそれぞれ選定することによってニッケル水素電池を構成することが可能である。また、二酸化マンガンを正極活物質30、亜鉛を負極活物質34として選定するとともに、水酸化カリウム水溶液を電解液42として選定した場合、アルカリマンガン電池を構成することができる。
【0073】
さらに、分析用電池10は、TEMのみならず、電子線を用いる分析機器全般で分析を行うことができる。
【0074】
そして、第2観察窓24bから第1観察窓24aに向かって電子線を照射するようにしてもよいことは勿論である。
【0075】
さらにまた、第1マスク膜22及び第2マスク膜38を除去するようにしてもよい。