特許第6046566号(P6046566)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046566
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月14日
(54)【発明の名称】通信システム、基地局、及び通信方法
(51)【国際特許分類】
   H04W 16/14 20090101AFI20161206BHJP
【FI】
   H04W16/14
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-156988(P2013-156988)
(22)【出願日】2013年7月29日
(65)【公開番号】特開2015-27053(P2015-27053A)
(43)【公開日】2015年2月5日
【審査請求日】2015年12月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】100153017
【弁理士】
【氏名又は名称】大倉 昭人
(74)【代理人】
【識別番号】100164471
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 大和
(72)【発明者】
【氏名】佐原 徹
【審査官】 倉本 敦史
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−327003(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/114937(WO,A1)
【文献】 国際公開第2012/101481(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04W 4/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
TDDの通信方式を採用する第1基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記第1基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムであって、
前記第1基地局は、前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする通信システム。
【請求項2】
前記第1基地局は、前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の第1基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする、請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記第1基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする、請求項1又は2に記載の通信システム。
【請求項4】
TDDの通信方式を採用する基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムにおける基地局であって、
前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする基地局。
【請求項5】
前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする、請求項4に記載の基地局。
【請求項6】
前記基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする、請求項4又は5に記載の基地局。
【請求項7】
TDDの通信方式を採用する第1基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記第1基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムにおける通信方法であって、
前記第1基地局が前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする通信方法。
【請求項8】
前記第1基地局は、前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の第1基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする、請求項7に記載の通信方法。
【請求項9】
前記第1基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする、請求項7又は8に記載の通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる通信方式を採用する基地局を備える通信システム、基地局、及び通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ある通信方式(例えばPHS(非特許文献1))で無線通信を行っている周波数帯域において、当該通信方式以外の他の通信方式(例えばTD−LTE方式(非特許文献2))による無線通信を行うことが検討されている。PHSには、周波数帯域として1884.5MHzから1893.5MHzの、帯域幅が9MHzの領域(以下、9MHz帯域という。)が割当てられている。例えば当該9MHz帯域において、PHS方式及びTD−LTE方式により無線通信を行うことが考えられる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】社団法人 電波産業会、“第二世代コードレス電話システム 標準規格 RCR STD-28 6.0版”、平成23年3月28日
【非特許文献2】3GPP TS 36.211 Ver. 9.0.0 “LTE; Evolved Universal Terrestrial Radio Access (U-UTRA); Physical channels and modulation”
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、ある通信方式で無線通信を行っている周波数帯域において、当該通信方式以外の他の通信方式による無線通信を行って共存させる場合において、各々の通信方式を採用する通信装置(基地局、移動局)同士が干渉しないようにすることが望まれている。
【0005】
上記のような問題点に鑑みてなされた本発明の目的は、ある通信方式で無線通信を行っている周波数帯域において、当該通信方式以外の他の通信方式による無線通信を行う場合において、各々の通信方式を採用する通信装置同士の干渉を低減することができる通信システム、基地局、及び通信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために本発明に係る通信システムは、
TDDの通信方式を採用する第1基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記第1基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムであって、
前記第1基地局は、前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする。
【0007】
また、本発明に係る通信システムは、
前記第1基地局は、前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の第1基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする。
【0008】
また、本発明に係る通信システムは、
前記第1基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る基地局は、
TDDの通信方式を採用する基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムにおける基地局であって、
前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る基地局は、
前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る基地局は、
前記基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る通信方法は、
TDDの通信方式を採用する第1基地局と、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが前記第1基地局と異なるTDDの通信方式を採用する第2基地局とを備える通信システムにおける通信方法であって、
前記第1基地局が前記第2基地局を対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、当該キャリアセンスのタイミングを調整することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る通信方法は、
前記第1基地局は、前記キャリアセンスにおける判定で、自局と同一の通信方式を採用する他の第1基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値と異なる閾値を用いることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る通信方法は、
前記第1基地局はPHS方式を採用し、前記第2基地局はTD−LTE方式を採用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明における通信システム、基地局、及び通信方法によれば、ある通信方式で無線通信を行っている周波数帯域において、当該通信方式以外の他の通信方式による無線通信を行う場合において、各々の通信方式を採用する通信装置同士の干渉を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の一実施形態に係る通信システムの概略図である。
図2】本発明の一実施形態に係る基地局のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る移動局のブロック図である。
図4】PHS方式におけるキャリアセンスのタイミングの概要を示す図である。
図5】TD−LTE方式におけるリソースブロックとセル固有参照信号を示す図である。
図6】TD−LTE方式のフレーム構成の種類を示す図である。
図7】各基地局の各無線フレームの概要を示す図である。
図8】本発明の一実施形態に係る通信システムの動作を示すシーケンス図である。
図9】TD−LTE方式のスペシャルサブフレーム構成の種類を示す図である。
図10】各基地局の各無線フレームの概要を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について説明する。
【0018】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施形態に係る通信システム1の概略図である。本発明の一実施形態に係る通信システム1は複数の通信装置を備える。例えば図1に示すように通信システム1は、通信装置10a(第1基地局10a)及び通信装置10b(第2基地局10b)を備え、各々に通信装置11a(第1移動局11a)及び通信装置11b(第2移動局11b)が接続される。図1においては、基地局及び移動局を夫々2つずつ備える例を示すがこれに限られず、基地局及び移動局は夫々2以上であってもよい。また本実施形態において通信システム1は、9MHz帯域において無線通信を行うものとして説明する。
【0019】
図2(a)(b)は、各々本発明の一実施形態に係る第1基地局10a及び第2基地局10bのブロック図である。図2(a)に示すように第1基地局10aは、基地局通信部101aと、基地局ベースバンド部102aと、基地局制御部103aとを備える。基地局通信部101a及び基地局ベースバンド部102aは、基地局制御部103aに接続されている。
【0020】
図2(a)に示す第1基地局10aは、TDD(Time Division Duplex)の通信方式を採用し、第1移動局11aと通信する。好適には当該通信方式は、PHS方式である。以下、第1基地局10aは、PHS方式により通信するものとして説明する。PHS方式は時間長が5msの無線フレームを用いる。当該無線フレームは、4つの連続する下り無線リソース(スロット)と、4つの連続する上り無線リソース(スロット)とにより構成される配置構成である。各下り無線リソース及び各上り無線リソースの時間長は、各々625μsである。
【0021】
第1基地局10aの基地局通信部101aは、アンテナを介して第1移動局11aと無線信号(データ)を送受信する。基地局通信部101aは、受信した無線信号(受信信号)に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行い、処理後の信号を基地局ベースバンド部102aに送る。また、基地局通信部101aは、基地局ベースバンド部102aから受けたベースバンド信号に対しアップコンバード及び増幅等を行い、無線信号(送信信号)を生成する。そして基地局通信部101aは、アンテナを介して当該無線信号を第1移動局11aに送信する。
【0022】
基地局ベースバンド部102aは、基地局通信部101aから受けた信号に対してAD変換等を行うことにより受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。そして基地局ベースバンド部102aは、ベースバンド信号を基地局制御部103aに送る。また、基地局ベースバンド部102aは、基地局制御部103aにより生成されたベースバンド信号に対してDA変換等を行うことにより、ベースバンド信号を変調する。そして変調されたベースバンド信号を基地局通信部101aに送る。
【0023】
基地局制御部103aは、第1基地局10aの各機能ブロックをはじめとして第1基地局10aの全体を制御及び管理する。基地局制御部103aは、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理毎に特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0024】
図2(b)に示す第2基地局10bは、無線フレームと当該無線フレーム内の上り無線リソース及び下り無線リソースの配置構成とが第1基地局10aと異なるTDDの通信方式を採用する。好適には当該通信方式は、TD−LTE方式である。以下、第2基地局10bはTD−LTE方式を採用するものとして説明する。TD−LTE方式は、時間長が10msの無線フレームを用いる。当該無線フレームは10個のサブフレームにより構成され、各サブフレームを下り無線リソース又は上り無線リソースとして割当てる。各サブフレームの当該割当てパターンは規格により複数定められている(非特許文献2)。
【0025】
第2基地局10bの基地局通信部101bは、アンテナを介して第2移動局11bと無線信号(データ)を送受信する。基地局通信部101bは、受信した無線信号(受信信号)に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行い、処理後の信号を基地局ベースバンド部102bに送る。また、基地局通信部101bは、基地局ベースバンド部102bから受けたベースバンド信号に対しアップコンバード及び増幅等を行い、無線信号(送信信号)を生成する。そして基地局通信部101bは、アンテナを介して当該無線信号を第2移動局11bに送信する。
【0026】
基地局ベースバンド部102bは、基地局通信部101bから受けた信号に対してAD変換及び高速フーリエ変換等を行うことにより受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。そして基地局ベースバンド部102bは、ベースバンド信号を基地局制御部103bに送る。また、基地局ベースバンド部102bは、基地局制御部103bにより生成されたベースバンド信号に対して逆高速フーリエ変換及びDA変換等を行うことにより、ベースバンド信号を変調する。そして変調されたベースバンド信号を基地局通信部101bに送る。
【0027】
基地局制御部103bは、第2基地局10bの各機能ブロックをはじめとして第2基地局10bの全体を制御及び管理する。基地局制御部103bは、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理毎に特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0028】
図3(a)(b)は、各々本発明の一実施形態に係る第1移動局11a及び第2移動局11bのブロック図を示す。図3(a)に示すように第1移動局11aは、移動局通信部111aと、移動局ベースバンド部112aと、移動局制御部113aとを備える。移動局通信部111a及び移動局ベースバンド部112aは、移動局制御部113aに接続されている。
【0029】
移動局通信部111aは、アンテナを介して第1基地局10aと無線信号(データ)を送受信する。移動局通信部111aは、受信した無線信号(受信信号)に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行い、処理後の信号を移動局ベースバンド部112aに送る。また、移動局通信部111aは、移動局ベースバンド部112aから受けたベースバンド信号に対しアップコンバード及び増幅等を行い、無線信号(送信信号)を生成する。そして移動局通信部111aは、アンテナを介して当該無線信号を第1基地局10aに送信する。
【0030】
移動局ベースバンド部112aは、移動局通信部111aから受けた信号に対してAD変換等を行うことにより受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。そして移動局ベースバンド部112aは、ベースバンド信号を移動局制御部113aに送る。また、移動局ベースバンド部112aは、移動局制御部113aにより生成されたベースバンド信号に対してDA変換等を行うことにより、ベースバンド信号を変調する。そして変調されたベースバンド信号を移動局通信部111aに送る。
【0031】
移動局制御部113aは、第1移動局11aの各機能ブロックをはじめとして第1移動局11aの全体を制御及び管理する。移動局制御部113aは、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理毎に特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0032】
移動局通信部111bは、アンテナを介して第2基地局10bと無線信号(データ)を送受信する。移動局通信部111bは、受信した無線信号(受信信号)に対して低雑音での増幅及びダウンコンバート等を行い、処理後の信号を移動局ベースバンド部112bに送る。また、移動局通信部111bは、移動局ベースバンド部112bから受けたベースバンド信号に対しアップコンバード及び増幅等を行い、無線信号(送信信号)を生成する。そして移動局通信部111bは、アンテナを介して当該無線信号を第2基地局10bに送信する。
【0033】
移動局ベースバンド部112bは、移動局通信部111bから受けた信号に対してAD変換及び高速フーリエ変換等を行うことにより受信信号を復調し、ベースバンド信号を取り出す。そして移動局ベースバンド部112bは、ベースバンド信号を移動局制御部113bに送る。また、移動局ベースバンド部112bは、移動局制御部113bにより生成されたベースバンド信号に対して逆高速フーリエ変換及びDA変換等を行うことにより、ベースバンド信号を変調する。そして変調されたベースバンド信号を移動局通信部111bに送る。
【0034】
移動局制御部113bは、第2移動局11bの各機能ブロックをはじめとして第2移動局11bの全体を制御及び管理する。移動局制御部113bは、CPU(中央処理装置)等の任意の好適なプロセッサ上で実行されるソフトウェアとして構成したり、処理毎に特化した専用のプロセッサ(例えばDSP(デジタルシグナルプロセッサ))によって構成したりすることもできる。
【0035】
ここでPHS方式を採用する第1基地局10aは、基地局制御部103aの制御により、通信を開始する前にキャリアセンスを行う。キャリアセンスとは、第1基地局10aが使用予定の下り無線リソース(使用予定スロット)において他の無線装置との通信の干渉を避けるため、使用予定スロットにおける受信電力を測定して使用可能であるか判定することである。キャリアセンスは、使用予定スロット毎、周波数チャネル毎に行う。
【0036】
図4は、一般的なキャリアセンスのU波検出位置(キャリアセンスのタイミング)の概要を示す図である。キャリアセンスは具体的には、第1基地局10aが、使用予定スロットに関して図4に示す前縁部、中央部、及び後縁部の3つの部分で受信電力を測定することにより行う。そして第1基地局10aの基地局制御部103aは、これら3つの部分で測定した受信電力の最大値とキャリアセンス判定閾値とを比較する。キャリアセンス判定閾値は、例えば26dBμVである。つまり基地局制御部103aは、キャリアセンスにより、前縁部、中央部、及び後縁部の全てにおいて26dBμV未満である場合、当該使用予定スロットが使用可能であると判定する。一方で基地局制御部103aは、キャリアセンスにより、前縁部、中央部、及び後縁部の少なくともいずれか1つにおいて26dBμV以上である場合、当該使用予定スロットは既に利用されており、使用不可能であると判定する。
【0037】
なお好適には全チャネルが26dBμVを超える場合は、キャリアセンス判定閾値は40dBμVとする。なお、前縁部とは使用予定スロットのランプアップを含む期間である。中央部とは、使用予定スロットのランプアップからランプダウンまでの間の期間である。後縁部とは使用予定スロットのランプダウンを含む期間である。
【0038】
一方で第2基地局10bは、TD−LTE方式により通信を行う。図5に、第2基地局10bに係る下り無線リソースの概要図を示す。TD−LTE方式ではリソースブロック単位で下り無線リソースを管理する。図5は時間方向に連続する2つのリソースブロックを示しており、14のOFDMシンボル及び12のサブキャリア、すなわち168リソースエレメント(14OFDMシンボル×12サブキャリア)から構成されている。ここで第2基地局10bは、当該168リソースエレメントのうち、図5に示すセル固有参照信号(R)のみを定期的に送信する。図5に示すようにセル固有参照信号が送信される時間は、1、5、8、12シンボル番目と限られている。そのため、第1基地局10aのキャリアセンス測定位置が、セル固有参照信号が送信されていない期間(1、5、8、12シンボル番目以外の期間)で行われた場合、第1基地局10aは、第2基地局10bが無線リソースを使用していることを判別できない可能性がある。このため第1基地局10aが当該無線リソースを用いて通信を行う虞があり、通信の干渉が生じてしまう。
【0039】
そのため本発明は、概略として第1基地局10aが第2基地局10bを対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、第2基地局10bのセル固有参照信号の送信期間に合わせてキャリアセンスのタイミングを調整することにより、当該通信の干渉を防止する。以下詳細に説明する。
【0040】
本発明では、第1基地局10aのキャリアセンスのタイミングを調整するため、第2基地局10bが採用するTD−LTEの無線フレームの構成(サブフレームの割り当てパターン)を適切に選択する。図6は、TD−LTEの規格(非特許文献2)により定められた無線フレームの構成を列挙したリストである。図6において“D”、“U”、“S”はそれぞれ、下りサブフレーム(下り無線リソース)、上りサブフレーム(上り無線リソース)、及びスペシャルサブフレームを意味する。また切替ポイント周期とは、下りサブフレームから上りサブフレームへの切替の周期を示す。構成番号“1番”は、下り無線リソースと上り無線リソースの比率が1対1であり、かつ切替ポイント周期が5msであるためPHSの無線フレーム長と一致する。したがって当該構成は、第1基地局10aが第2基地局10bを対象としたキャリアセンスを行うのに最適である。そのため本発明においては、構成番号“1番”を選択する。
【0041】
さらに構成番号“1番”におけるサブフレーム番号4番又は9番の先頭と、第1基地局10aの下りフレームの先頭とが一致するように、第1基地局10aと第2基地局10bとを同期させる。具体的には第2基地局10bの基地局制御部103bは、サブフレーム番号4番又は9番の先頭と、第1基地局10aの下りフレームの先頭とが一致するように第1基地局10aと無線フレームを同期させる。
【0042】
図7に、第2基地局10bにおける無線フレーム構成を1番とし、かつサブフレーム番号4番又は9番の先頭と、第1基地局10aの下りフレームの先頭とが一致するようにした場合における各無線フレームの概要図を示す。図7に示すように、第1基地局10a及び第2基地局10bの下り無線リソースの送信期間(先頭の2.5ms)は、一致する。ここで図7に示すように、第1基地局10a及び第2基地局10bの各下り無線リソースの長さ(スロット長)はそれぞれ625μs、1msと相違する。そのため、第1基地局10aはキャリアセンスのタイミングを、各下り無線リソース(スロット)毎に相違させて、第2基地局10bのセル固有参照信号が送信されるタイミングに一致させるように調整する。つまり第1基地局10aは、第2基地局10bを対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、キャリアセンスのタイミングを調整する。
【0043】
具体的には例えば下り無線リソース801aを送信している期間における第2基地局10bを対象とするキャリアセンスは、下り無線リソース801bのうち、セル固有参照信号を送信している期間(例えば1、5シンボル番目)の期間に一致させる。また下り無線リソース802aを送信している期間におけるキャリアセンスは、下り無線リソース801b又は802bのうち、セル固有参照信号を送信している期間(例えば無線リソース801bの12シンボル番目、又は無線リソース802bの1シンボル目)の期間に一致させる。このようにすることで、第1基地局10aは、第2基地局10bが通信を行っているか否かを適切に判定することができる。
【0044】
次に本発明に係る通信システム1について、図8に示すシーケンス図によりそのキャリアセンスに係る動作を説明する。はじめに第2基地局10bの基地局制御部103bは、サブフレーム番号4番又は9番の先頭と、第1基地局10aの下りフレームの先頭とが一致するように第1基地局10aと無線フレームを同期させる(ステップS1)。
【0045】
続いて第1基地局10aの基地局制御部103aは、第2基地局10bを対象とするキャリアセンスを実行するにあたり、無線フレームに含まれる下り無線リソース毎に、キャリアセンスのタイミングを調整し、キャリアセンスを行う(ステップS2)。
【0046】
このように本発明によれば、例えばPHS等の通信方式で無線通信を行っている周波数帯域において、当該通信方式以外のTD−LTE等の他の通信方式による無線通信を行う場合において、キャリアセンスのタイミングを調整することにより、各々の通信方式を採用する通信装置同士の干渉を低減することができる。
【0047】
なおキャリアセンスは周波数方向では300kHz単位で行われる。ここで第2基地局10bのリソース割り当て単位である1リソースブロックは180kHzであるため、当該300kHzには必ず1リソースブロックが包含される。そのため周波数方向のキャリアセンスに関しては調整しなくてよい。
【0048】
なお、第2基地局10bが送信するセル固有参照信号は、図5に示すように各OFDMシンボルの12リソースエレメント(12サブキャリア)のうち、2リソースエレメント(2サブキャリア)のみを占める。すなわち、ある時間における下り無線リソースのうち1/6のみを通信に用いている。したがって好適には、第2基地局10bを対象とするキャリアセンスについては、自局と同一の通信方式を採用する他の第1基地局を対象とするキャリアセンスで用いる閾値(以下、通常閾値という。)と異なる閾値(以下、特別閾値という。)を用いる。好適には第2基地局10bを対象とするキャリアセンスでは、キャリアセンス判定のための閾値(特別閾値)を低く設定する。具体的には例えば特別閾値を、次の式1により定める。
【0049】
(数1)
(特別閾値)=(通常閾値)+log10(1/6)・・・式(1)
【0050】
このように第2基地局10bに関してキャリアセンス判定閾値を通常閾値よりも低く設定することにより、第1基地局10aは、第2基地局10bが無線リソースを使用しているか否かを、より確実に判定することができる。
【0051】
なお下り無線リソースから上り無線リソースへの切替時に他の通信装置により信号の送受信が行われていると、通信に干渉が生じる可能性がある。そのため好適には第2基地局10bは、スペシャルサブフレームの構成を調整することにより当該干渉を防止するようにする。図9は、TD−LTEの規格(非特許文献2)により定められたスペシャルサブフレームの構成を示した図である。スペシャルサブフレームは、下りパート(DwPTS)、上りパート(UpPTS)、及びガードピリオド(GP)から構成される。ここでガードピリオドにおいては信号の送受信が行われない。図9に示すようにスペシャルサブフレームの構成により、それぞれ下りパート及び上りパートの期間が相違する。なお図9中、Tは基本時間単位(Basic Time Unit)を表しており、307200Tは10msに相当する。ここで構成番号“5番”の構成は、ノーマルサイクリックプレフィックスである場合には、下りパート及び上りパートの長さが各々6592T(3OFDMシンボル分)、4384T(2OFDMシンボル分)である。そしてGPが残りの19744T(9OFDMシンボル分)となる。
【0052】
図10に、スペシャルサブフレームの構成を構成番号“5番”にした場合の各無線フレームの概要図を示す。図10に示すように第1基地局10aの下り無線リソースから上り無線リソースへの切替のタイミングが、第2基地局10bのスペシャルサブフレームのガードピリオドの期間に含まれる。このため好適には第2基地局10bはスペシャルサブフレームの構成番号“5番”を選択する。このように第1基地局10aの下り無線リソースから上り無線リソースへの切替のタイミングに、第2基地局10bのガードピリオドを一致させることで、第1基地局10aと第2基地局10bとの通信の干渉を低減することができる。
【0053】
本発明を諸図面や実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形や修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形や修正は本発明の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各手段、各ステップ等に含まれる機能等は論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の手段やステップ等を1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 通信システム
10a 第1基地局
10b 第2基地局
11a 第1移動局
11b 第2移動局
101a、101b 基地局通信部
102a、102b 基地局ベースバンド部
103a、103b 基地局制御部
111a、111b 移動局通信部
112a、112b 移動局ベースバンド部
113a、113b 移動局制御部
801a、802a、801b、802b 無線リソース
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10