(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の蒸着重合材料は、ジイソシアネート成分とジアミン成分とを含有し、好ましくは、ジイソシアネート成分とジアミン成分とからなる。
【0019】
ジイソシアネート成分は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートからなる。
【0020】
キシリレンジイソシアネート(XDI)としては、例えば、1,2−キシリレンジイソシアネート(o−XDI)、1,3−キシリレンジイソシアネート(m−XDI)、1,4−キシリレンジイソシアネート(p−XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0021】
これらキシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,3−キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0022】
水添キシリレンジイソシアネート(別名:ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン)(H
6XDI)としては、例えば、1,2−水添キシリレンジイソシアネート(o−H
6XDI)、1,3−水添キシリレンジイソシアネート(m−H
6XDI)、1,4−水添キシリレンジイソシアネート(p−H
6XDI)が、構造異性体として挙げられる。
【0023】
また、水添キシリレンジイソシアネートには、シス体(シス−1,2−水添キシリレンジイソシアネート、シス−1,3−水添キシリレンジイソシアネート、シス−1,4−水添キシリレンジイソシアネート)と、トランス体(トランス−1,2−水添キシリレンジイソシアネート、トランス−1,3−水添キシリレンジイソシアネート、トランス−1,4−水添キシリレンジイソシアネート)との幾何異性体がある。
【0024】
これら水添キシリレンジイソシアネートは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジイソシアネートとして、好ましくは、1,4−水添キシリレンジイソシアネートが挙げられ、より好ましくは、トランス−1,4−水添キシリレンジイソシアネートが挙げられる。
【0025】
また、水添キシリレンジイソシアネートがトランス体を含有する場合には、その含有割合は、トランス体とシス体との総量に対して、トランス体が、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、通常、95モル%以下である。
【0026】
これらジイソシアネート成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0027】
ジアミン成分は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジアミンからなる。
【0028】
キシリレンジアミン(XDA)としては、例えば、1,2−キシリレンジアミン(o−XDA)、1,3−キシリレンジアミン(m−XDA)、1,4−キシリレンジアミン(p−XDA)が、構造異性体として挙げられる。
【0029】
これらキシリレンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。キシリレンジアミンとして、好ましくは、1,3−キシリレンジアミンが挙げられる。
【0030】
また、水添キシリレンジアミン(別名:ビス(アミノメチル)シクロヘキサン)(H
6XDA)としては、例えば、1,2−水添キシリレンジアミン(o−H
6XDA)、1,3−水添キシリレンジアミン(m−H
6XDA)、1,4−水添キシリレンジアミン(p−H
6XDA)が、構造異性体として挙げられる。
【0031】
また、水添キシリレンジアミンには、シス体(シス−1,2−水添キシリレンジアミン、シス−1,3−水添キシリレンジアミン、シス−1,4−水添キシリレンジアミン)と、トランス体(トランス−1,2−水添キシリレンジアミン、トランス−1,3−水添キシリレンジアミン、トランス−1,4−水添キシリレンジアミン)との幾何異性体がある。
【0032】
これら水添キシリレンジアミンは、単独使用または2種類以上併用することができる。水添キシリレンジアミンとして、好ましくは、1,4−水添キシリレンジアミンが挙げられ、より好ましくは、トランス−1,4−水添キシリレンジアミンが挙げられる。
【0033】
また、水添キシリレンジアミンがトランス体を含有する場合には、その含有割合は、トランス体とシス体との総量に対して、トランス体が、例えば、50モル%以上、好ましくは、70モル%以上であり、通常、95モル%以下である。
【0034】
これらジアミン成分は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0035】
そして、蒸着重合材料において、ジイソシアネート成分およびジアミン成分は、好ましくは、ジイソシアネート成分におけるイソシアネート基を除く部分の分子骨格と、ジアミン成分におけるアミノ基を除く部分の分子骨格とが、互いに同一となるように、組み合わせて用いられる。
【0036】
換言すれば、蒸着重合材料として、好ましくは、ジイソシアネート成分がキシリレンジイソシアネートからなり、ジアミン成分がキシリレンジアミンからなるか、または、ジイソシアネート成分が水添キシリレンジイソシアネートからなり、ジアミン成分が水添キシリレンジアミンからなる。
【0037】
蒸着重合材料として、より好ましくは、ジイソシアネート成分が1,3−キシリレンジイソシアネートからなり、ジアミン成分が1,3−キシリレンジアミンからなるか、または、ジイソシアネート成分が1,4−水添キシリレンジイソシアネートからなり、ジアミン成分が1,4−水添キシリレンジアミンからなる。
【0038】
このような組み合わせでジイソシアネート成分およびジアミン成分を用いることにより、より優れた耐熱性およびガスバリア性を備えるポリウレタンウレア樹脂を得ることができる。
【0039】
このような蒸着重合材料は、キシリレンジイソシアネートおよび/または水添キシリレンジイソシアネートからなるジイソシアネート成分と、キシリレンジアミンおよび/または水添キシリレンジアミンとからなるジアミン成分とを含有するため、耐熱性に優れるポリウレタンウレア膜を、簡易に得ることができる。
【0040】
蒸着重合材料において、ジイソシアネート成分とジアミン成分とは、それぞれ別々に用意され、それらが使用時に蒸発され、反応する。これによって、ポリウレタンウレア膜が形成される。
【0041】
以下において、上記した蒸着重合材料を用いてポリウレタンウレア膜を形成する方法について、詳述する。
【0042】
ポリウレタンウレア膜の形成では、例えば、公知の蒸着重合装置が用いられる。
【0043】
図1において、蒸着重合装置1は、蒸着重合室2および圧力調整装置3を備えている。
【0044】
蒸着重合室2は、特に制限されず、公知の耐熱耐圧容器から形成されている。
【0045】
このような蒸着重合室2内には、鉛直方向下方と鉛直方向上方とを仕切るシャッター4(後述)が設けられており、鉛直方向下方の領域において蒸着重合材料が蒸発され、また、鉛直方向上方の領域において蒸着重合材料が反応され、ポリウレタンウレア膜が形成される。
【0046】
具体的には、蒸着重合室2の鉛直方向下方側には、複数(2つ)の蒸発源5、複数(2つ)のヒータ6および蒸発モニタ7が備えられており、また、蒸着重合室2の鉛直方向上方側には、基材ホルダー8が備えられている。
【0047】
複数(2つ)の蒸発源5は、例えば、蒸気を吐出する蒸気口10を備える耐熱耐圧容器であって、ガラスなどからなり、互いに間隔を隔てて配置されている。また、蒸発源5の一方には、上記した蒸着重合材料のジイソシアネート成分が装入され、他方には、上記した蒸着重合材料のジアミン成分が装入されている。
【0048】
また、2つの蒸発源5の間には、仕切壁9が設けられている。これにより、ジイソシアネート成分の蒸気とジアミン成分の蒸気との、蒸発源5の蒸気口10近傍における接触が、抑制されている。
【0049】
複数(2つ)のヒータ6は、公知の加熱装置であって、各蒸発源5を加熱するために、蒸発源5の近傍(
図1では、蒸発源5の鉛直方向下方)に設けられている。これにより、各蒸発源5内のジイソシアネート成分およびジアミン成分を各々個別に加熱および蒸発可能としている。
【0050】
蒸発モニタ7は、ジイソシアネート成分およびジアミン成分の蒸気量をモニタするための装置であって、各蒸発源5の蒸気口10近傍に、それぞれ備えられている。
【0051】
また、ヒータ6および蒸発モニタ7は、図示しない制御装置に電気的に接続されている。これにより、蒸発モニタ7によりモニタされるジイソシアネート成分の蒸気量、および、ジアミン成分の蒸気量を、蒸発モニタ7から電気信号として制御装置(図示せず)に入力可能とし、また、その蒸気量のデータをもとに、制御装置(図示せず)からヒータ6の加熱条件を設定可能としている。このような制御装置(図示せず)によって、ジイソシアネート成分の蒸気量、および、ジアミン成分の蒸気量が、適宜調整される。
【0052】
基材ホルダー8は、ポリウレタンウレア膜が形成される基材(仮想線参照)を固定するための台座であって、蒸発源5から所定間隔を隔てるように、蒸発源5の鉛直方向上方に配置されている。また、基材ホルダー8の近傍には、基材(仮想線参照)を加熱するための基材ヒータ11が設けられている。
【0053】
このような基材ホルダー8には、基材(仮想線参照)が、ポリウレタンウレア膜が形成される面が鉛直方向上方に向かうように、固定される。
【0054】
また、蒸発源5と基材ホルダー8との間には、それらを隔てるシャッター4が設けられている。シャッター4は、図示しない制御装置に電気的に接続されており、開閉可能に制御されている。なお、
図1においては、シャッター4が閉鎖された状態を実線で示し、シャッター4が開放された状態を仮想線で示している。
【0055】
圧力調整装置3は、例えば、蒸着重合室2内の圧力を調整するための公知の減圧装置であって、蒸着重合室2に接続されている。
【0056】
次いで、このような蒸着重合装置1を用いたポリウレタンウレア膜の製造方法について、詳述する。
【0057】
この方法では、例えば、まず、基材ホルダー8に基材(仮想線参照)を、ポリウレタンウレア膜が形成される面が鉛直方向上方に向かうように、固定する。
【0058】
次いで、この方法では、圧力調整装置3を作動させ、蒸着重合室2内を真空状態にした後、圧力調整装置3を停止させるとともに、蒸着重合室2を密閉する。
【0059】
蒸着重合室2内の圧力条件は、例えば、1333Pa以下、好ましくは、133Pa以下、通常、0.001Pa以上である。
【0060】
次いで、この方法では、基材ヒータ11を作動させ、基材(仮想線参照)を加熱する。
【0061】
加熱条件は、基材(仮想線参照)の表面温度が、例えば、10℃以上、好ましくは、25℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下となるように、適宜制御される。
【0062】
なお、基材(仮想線参照)の表面温度は、図示しない温度センサによって、適宜測定される。
【0063】
次いで、この方法では、蒸発源5と基材ホルダー8との間のシャッター4を閉鎖した状態で、ヒータ6により蒸発源5を加熱し、ジイソシアネート成分およびジアミン成分を、それぞれ蒸発させる。
【0064】
ヒータ6によるジイソシアネート成分の加熱温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、25℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0065】
また、ヒータ6によるジアミン成分の加熱温度は、例えば、10℃以上、好ましくは、25℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。
【0066】
また、これとともに、ジイソシアネート成分の蒸気量、および、ジアミン成分の蒸気量を、蒸発モニタ7により観察し、図示しない制御装置によってヒータ6の加熱条件を制御する。これにより、蒸気量を制御する。
【0067】
そして、この方法では、蒸発モニタ7によって所定の蒸気量が得られたことを確認した後、シャッター4を開放し、ジイソシアネート成分の蒸気、および、ジアミン成分の蒸気を、基材表面に堆積させ、それらを重合反応させる。
【0068】
ジイソシアネート成分の堆積量、および、ジアミン成分の堆積量は、ジアミン成分のアミノ基に対するジイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基)が、例えば、0.5以上、好ましくは、0.8以上であり、例えば、1.5以下、好ましくは、1.2以下の範囲となるように、調整される。
【0069】
なお、ジイソシアネート成分の堆積量、および、ジアミン成分の堆積量が所定値に達したときには、シャッター4が閉鎖され、過度な堆積が抑制される。
【0070】
また、重合反応における反応温度は、上記した基材(仮想線参照)の表面温度である。
【0071】
また、重合反応における反応時間は、例えば、0.01時間以上、好ましくは、0.1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0072】
これにより、基材表面においてポリウレタンウレア膜が形成される(例えば、
図5参照)。なお、基材表面に凹凸がある場合、その凹凸に追従するように、ポリウレタンウレア膜が形成される。
【0073】
そして、このような蒸着重合方法は、上記の蒸着重合材料が用いられるため、耐熱性およびガスバリア性に優れるポリウレタンウレア膜を、簡易に得ることができる。
【0074】
さらに、このような蒸着重合方法では、上記の蒸着重合材料が用いられるため、基材(仮想線参照)の温度を比較的低温とすることができ、省エネルギー化を図ることができる。
【0075】
得られるポリウレタンウレア膜の膜厚は、例えば、0.01μm以上、好ましくは、0.1μm以上であり、例えば、100μm以下、好ましくは、10μm以下である。
【0076】
また、基材の単位面積あたりに対する質量(堆積量)として、例えば、0.01g/m
2以上、好ましくは、0.1g/m
2以上であり、例えば、100g/m
2以下、好ましくは、10g/m
2以下である。
【0077】
また、必要に応じて、得られたポリウレタンウレア膜を加熱し、養生することができる。加熱養生する場合における加熱温度は、例えば、30℃以上、好ましくは、60℃以上であり、例えば、200℃以下、好ましくは、100℃以下である。また、養生時間は、例えば、0.01時間以上、好ましくは、0.1時間以上であり、例えば、10時間以下、好ましくは、1時間以下である。
【0078】
そして、このようなポリウレタンウレア膜は、ガスバリア性に優れている。具体的には、酸素透過率(20℃、相対湿度80%)が、例えば、100mL/m
2/day以下、好ましくは、50mL/m
2/day以下、より好ましくは、20mL/m
2/day以下であり、通常、0.1mL/m
2/day以上である。
【0079】
また、このようなポリウレタンウレア膜は、耐熱性に優れている。具体的には、ポリウレタンウレア膜の質量を熱分解により1%減少させるために必要な温度(昇温速度10℃/分)は、例えば、260℃以上、好ましくは、280℃以上であり、例えば、350℃以下、好ましくは、300℃以下である。
【0080】
そのため、このようなポリウレタンウレア膜は、集積回路におけるビアホール絶縁膜として、好適に用いることができる。
【0081】
図2において、集積回路21は、第1シリコンウェハ22と第2シリコンウェハ23とが、接着剤層24を介して積層されることにより、形成されている。また、第1シリコンウェハ22および第2シリコンウェハ23は、それぞれ、半導体素子領域27を備えている。
【0082】
また、第1シリコンウェハ22と接着剤層24との間には、公知の樹脂からなる第1絶縁層25が介在されており、また、第2シリコンウェハ23と接着剤層24との間には、公知の樹脂からなる第2絶縁層26が介在されている。
【0083】
そして、このような集積回路21には、ビアホール28が形成されるとともに、そのビアホール28内にビアホール絶縁膜29が設けられており、また、ビアホール28内にTSV(through−silicon via)電極30が設けられている。そして、図示しないが、このような集積回路21では、第2シリコンウェハ23の半導体素子領域27が、TSV電極30を介して、パッケージ基板(図示せず)に電気的に接続されている。
【0084】
第2シリコンウェハ23の半導体素子領域27と、パッケージ基板(図示せず)との接続では、例えば、まず、
図3Aに示すように、第1シリコンウェハ22、第1絶縁層25、接着剤層24、第2絶縁層26および第2シリコンウェハ23を、公知の方法によって順次積層し、集積回路21を形成する。
【0085】
次いで、
図3Bに示すように、第1シリコンウェハ22の半導体素子領域27、第1絶縁層25、接着剤層24および第2絶縁層26を順次貫通するとともに、第2シリコンウェハ23の半導体素子領域27の表面に到達する穿孔(ビアホール)28を、エッチング法などによって形成する。
【0086】
次いで、
図3Cに示すように、集積回路21の表面(ビアホール28の底面および側面を含む)に、上記した蒸着重合法によって、ビアホール28の底面および側面を保護するビアホール絶縁膜(ポリウレタンウレア膜)29を形成する。
【0087】
次いで、
図4Dに示すように、ビアホール28の底面におけるビアホール絶縁膜29を、エッチングにより除去し、第2シリコンウェハ23の半導体素子領域27を露出させる。
【0088】
その後、
図4Eに示すように、半導体素子領域27の上に、公知の方法によりTSV電極30を形成する。そして、図示しないが、TSV電極30を、パッケージ基板(図示せず)に、例えば、はんだ付けすることにより、それらを電気的に接続する。
【0089】
このような集積回路21においては、ビアホール絶縁膜29の形成後に、TSV電極30をはんだ付けする必要があるため、ビアホール絶縁膜29には、はんだ付け時に加熱(通常、260℃以上)しても熱分解しないことが要求される。
【0090】
この点、従来のポリウレタンウレア膜は、耐熱性が十分ではなく、例えば、250℃以上に加熱すると、ポリウレタンウレア膜が解重合(重合の逆反応)を惹起し、熱分解するという不具合がある。
【0091】
この点、例えば、ポリウレタンウレア膜の耐熱性の向上を図るため、紫外線や電子線などのエネルギーを照射することによってポリウレタンウレア膜を架橋させる方法なども検討されるが、そのような方法は煩雑であり、また、ポリウレタンウレア膜の形成位置によってはエネルギー照射が困難である場合がある。
【0092】
これに対して、上記したポリウレタンウレア膜は、耐熱性に優れ、加熱しても熱分解を生じ難いため、ビアホール絶縁膜29として好適に用いることができる。
【0093】
また、上記のポリウレタンウレア膜は、ビアホール絶縁膜に限定されず、耐熱性やガスバリア性が要求される種々の積層体、例えば、集積回路や有機EL素子などの表面保護膜、例えば、集積回路やコンデンサーにおける絶縁膜、例えば、集積回路におけるビアホール絶縁膜、さらには、液晶や有機ELなどの樹脂基板におけるガスバリア膜などとしても、好適に用いることができる。
【0094】
図5において、積層体31は、基材32と、基材32に積層されるポリウレタンウレア膜33とを備えている。
【0095】
基材32としては、特に制限されず、例えば、ガラス、プラスチック(例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂など)、金属、セラミックスなど、公知の基材が挙げられる。
【0096】
基材32の厚みは、例えば、0.001mm以上、好ましくは、0.01mm以上であり、例えば、10mm以下、好ましくは、1mm以下である。
【0097】
ポリウレタンウレア膜33としては、上記した方法で得られるポリウレタンウレア膜が挙げられる。
【0098】
また、積層体31の用途に応じて、例えば、公知のエッチング法などにより、ポリウレタンウレア膜33を所定のパターンとして形成することもできる。
【0099】
このような積層体31は、本発明の蒸着重合材料を用いて得られるため、耐熱性に優れ、また、ガスバリア性にも優れる。
【実施例】
【0100】
次に、本発明を実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。また、以下の説明において特に言及がない限り、「部」および「%」は質量基準である。なお、以下に示す実施例の数値は、実施形態において記載される対応する数値(すなわち、上限値または下限値)に代替することができる。
【0101】
実施例1
基材として、厚さ38μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(以下、PETフィルム)を用意した。
【0102】
そして、ジイソシアネート成分として1,3−キシリレンジイソシアネートを、ジアミン成分として1,3−キシリレンジアミンを用い、
図1に示す蒸着重合装置によって、表面温度が60℃に調整された基材の表面において、ジイソシアネート成分およびジアミン成分を蒸着重合させ、基材表面にポリウレタンウレア膜を形成した。ポリウレタンウレア膜の厚さは5μmであり、また、基材1m
2あたり5.8gであった。
【0103】
なお、蒸着重合反応における条件は、以下の通りである。
・蒸着重合室2内の圧力条件:0.5Pa
・ジイソシアネート成分の加熱温度:25℃
・ジアミン成分の加熱温度:50℃
・ジアミン成分のアミノ基に対するジイソシアネート成分中のイソシアネート基の当量比(イソシアネート基/アミノ基):1
・反応時間:1時間
また、得られた積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)を、耐熱性およびガスバリア性の評価前に、100℃のオーブン中で1時間養生した。
【0104】
実施例2〜3および比較例1〜4
表1に示すジイソシアネート成分およびジアミン成分に変更した以外は、実施例1と同様にして、ポリウレタンウレア膜を形成し、積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)を得た。
【0105】
評価
各実施例および各比較例において得られた積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)を、下記の方法で評価した。
(耐熱性評価1)
熱天秤に、切断した積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)を10mg設置し、装置内に窒素ガスを流しながら、室温から500℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温した。
【0106】
そして、ポリウレタンウレア膜の質量が1%減少した温度(Tg1%)を求めた。その結果を、表1に併せて示す。
【0107】
なお、事前に基材(PETフィルム)を熱天秤で測定したが、300℃までは重量変化は認められなかった。
(耐熱性評価2)
熱天秤に、切断した積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)を10mg設置し、装置内に窒素ガスを流しながら、室温から260℃まで、10℃/分の昇温速度で昇温した。その後、260℃で30分間保持し、質量の減少の有無を確認した。
(ガスバリア性評価)
積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)の酸素透過率(OTR)を、温度20℃、相対湿度80%の条件で測定した。
【0108】
なお、基材(PETフィルム)の酸素透過率(OTR)を同様に測定したところ、29.4ml/m
2/dayであった。
【0109】
そして、ポリウレタンウレア膜の酸素透過率(OTR)をA、基材(PETフィルム)の酸素透過率(OTR)をB、積層体(ポリウレタンウレア膜/PETフィルム)の酸素透過率(OTR)をCとすると、下記式(1)が成立することから、ポリウレタンウレア膜の酸素透過率(OTR)を算出した。
【0110】
1/A = 1/C − 1/B (1)
その結果を、表1に併せて示す。また、ポリウレタンウレア膜の質量が1g/m
2である場合の酸素透過率(換算値)を、併せて示す。
【0111】
【表1】
【0112】
なお、表中の略号の詳細を下記する。
1,3−XDI:1,3−キシリレンジイソシアネート
1,4−H
6XDI:1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−水添キシリレンジイソシアネート)、トランス体86モル%
4,4’−MDI:4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
1,3−XDA:1,3−キシリレンジアミン
1,4−XDA:1,4−キシリレンジアミン
1,4−H
6XDA:1,4−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(1,4−水添キシリレンジアミン)、トランス体86モル%
4,4’−MDA: 4,4’−ジフェニルメタンジアミン
4,4’−H
12MDA:4,4’−ジシクロヘキシルメタンジアミン