(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046586
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するための方法、システム及びコンピュータ装置
(51)【国際特許分類】
G05B 19/042 20060101AFI20161212BHJP
G05B 17/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
G05B19/042
G05B17/02
【請求項の数】14
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-214568(P2013-214568)
(22)【出願日】2013年10月15日
(65)【公開番号】特開2014-81936(P2014-81936A)
(43)【公開日】2014年5月8日
【審査請求日】2015年6月16日
(31)【優先権主張番号】13/651,961
(32)【優先日】2012年10月15日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507342261
【氏名又は名称】トヨタ モーター エンジニアリング アンド マニュファクチャリング ノース アメリカ,インコーポレイティド
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100153084
【弁理士】
【氏名又は名称】大橋 康史
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100157211
【弁理士】
【氏名又は名称】前島 一夫
(72)【発明者】
【氏名】ジョターモイ ブイ.デシュムハ
(72)【発明者】
【氏名】ジン シャオチン
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンドレ ドンジ
(72)【発明者】
【氏名】サンジット エー.セシア
【審査官】
青山 純
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2010/0333061(US,A1)
【文献】
原田 裕基,反例と設計分割に基づく高位設計に対する効率的な設計修正支援手法,情報処理学会研究報告 2011,日本,一般社団法人情報処理学会,2011年 6月15日,第1−6頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/00 − 19/05
G05B 17/00 − 17/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するための方法であって、
シミュレーショントレースを得るために車両の前記閉ループ制御システムをシミュレーションすることと、
未定義値を含むテンプレート要求が満たされたことを提案するパラメータ値を配置するために、前記シミュレーショントレースの値で前記テンプレート要求をインスタンス化することによって候補要求を決定することと、
前記候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定することと、
前記候補要求に対する前記反例が存在するという決定に応じて前記候補要求に対する前記反例を得て、検証のために前記シミュレーショントレースに前記反例を追加することと、を含み、
当該方法は、反例の存在が確認されなくなるまで繰り返され、
前記候補要求に対する反例が存在しないという決定に応じて、前記未定義値を定義する、推定された要求を出力する、方法。
【請求項2】
前記ブロック線図モデルが、前記候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定するために使用され、前記ブロック線図モデルが、前記車両のコンピュータプログラムの連続値及び離散値のプログラム変数の変化する動作を示し、
前記ブロック線図モデルが、微分方程式、代数方程式、及び、論理方程式の少なくとも1つを示す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記テンプレート要求が、パラメトリック信号時相論理で示される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
自然言語表現を提供するために設計者のためのユーザーインターフェースを設けることと、前記自然言語表現からテンプレート要求を生成することと、を更に含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するためのシステムであって、
ランダムシミュレーショントレース及びテンプレート要求を受信するためのパラメータ統合ツールであって、前記時相要求が得られたことを提案するパラメータ値を配置するために、前記ランダムシミュレーショントレースの値で前記テンプレート要求をインスタンス化することによって候補要求を生成するパラメータ統合ツールと、
改ざんツールであって、前記候補要求及び前記ブロック線図モデルを受信して前記候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定し、且つ、前記候補要求の反例が存在するという決定に応じて検証のために前記ランダムシミュレーショントレースに前記反例を追加する改ざんツールと、を具備し、
前記改ざんツールにより反例の存在が確認されなくなるまで、前記パラメータ統合ツールによる候補要求の生成と、前記改ざんツールによる、候補要求に対する反例が存在するかどうかの決定及び反例の追加とが繰り返され、
前記候補要求に対する反例が存在しないという決定に応じて、前記改ざんツールが、推定された要求を出力する、システム。
【請求項6】
前記改ざんツールが、前記パラメータ統合ツールに対するフィードバックとして前記反例を送信する請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ブロック線図モデルが、前記候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定するために使用され、
前記ブロック線図モデルが、前記閉ループ制御システムのコンピュータプログラムの連続値及び離散値のプログラム変数の変化する動作を示し、且つ、
前記ブロック線図モデルが、微分方程式、代数方程式、及び論理方程式の少なくとも1つを示す請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
当該システムが、自然言語表現を提供するために設計者のためのユーザーインターフェースを設けることと、前記自然言語表現から前記テンプレート要求を生成することと、を少なくとも実行する請求項5に記載のシステム。
【請求項9】
前記時相要求が、値が不特定のままであるパラメトリック信号時相論理特性を具備する請求項5に記載のシステム。
【請求項10】
閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するためのコンピュータ装置であって、メモリを具備し、該メモリが、論理であって、当該コンピュータ装置によって実行されるときに当該コンピュータ装置に、
設計者から受信された自然言語表現からの、未定義値を含むテンプレート要求の決定と、
シミュレーショントレースを得るための自動車の前記閉ループ制御システムのシミュレーションと、
前記時相要求が得られたことを提案するパラメータ値を配置するために前記シミュレーショントレースの値で前記テンプレート要求をインスタンス化することによる候補要求の生成と、
前記候補要求に対する反例が存在するかどうかの決定と、前記候補要求に対する前記反例が存在するという決定に応じて前記候補要求に対する反例を得て、検証のために前記シミュレーショントレースに対する反例を追加することと、
反例の存在が確認されなくなるまで繰り返され、前記候補要求に対する反例が存在しないという決定に応じて当該コンピュータ装置が推定された要求を決定することと、を少なくとも実行させる論理を保存する、コンピュータ装置。
【請求項11】
前記ブロック線図モデルが、前記候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定するために使用され、前記ブロック線図モデルが、前記閉ループ制御システムのコンピュータプログラムの連続値及び離散値のプログラム変数の変化する動作を示す請求項10に記載のコンピュータ装置。
【請求項12】
前記ブロック線図モデルが、微分方程式、代数方程式、及び、論理方程式の少なくとも1つを示す請求項10に記載のコンピュータ装置。
【請求項13】
前記論理が、当該コンピュータ装置に、前記自然言語表現を提供するために設計者のためのユーザーインターフェースを設けることと、前記自然言語表現から前記テンプレート要求を生成することと、を少なくとも実行させる請求項10に記載のコンピュータ装置。
【請求項14】
前記テンプレート要求が、値が不特定のままのパラメトリック信号時相論理特性を具備する請求項10に記載のコンピュータ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここで説明される実施形態は、概してブロック線図モデルからの時相要求(temporal requirements)の抽出(mining)に関し、より詳細には、自動車のコンピュータプログラムに基づいたブロック線図をテストするための自然言語要求を使用するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業規模の自動車制御システムは、モデルベース開発(MBD)を用いて開発される。モデルベース開発において、設計者は、まず微分方程式、論理方程式及び代数方程式を用いる、システムの物理的部分のようなプラント(plant)の動特性を収集(captures)する。これは全体としてプラントモデルと呼ばれ、例示として、ターボ回転力学のモデル、エンジン内のサブシステムの熱力学モデル、及び、大気の乱流モデルを含む。特定のハイレベル且つ曖昧に定義されがちな要求に基づき、設計者は、制御器の実行可能な仕様モデルを、ブロック線図を用いて書く。非正式な要求の例示には、「より好適な燃料効率」、「より好適な性能」、「より低減された排気(emissions)」、及び、「乱流に対する耐性」が含まれる。このステップに続き、閉ループシステムの大規模シミュレーション(extensive simulations)として概して行われるシステムテストが行われるが、これは、時間変化する入力の複雑な組み合わせに対する、閉ループシステムの時間領域応答(又は周波数領域応答)を決定する目標を有したプラント及び制御器を含む。次いで検証のプロセスは、理想的には、閉ループシステムの時間領域応答(又は周波数領域応答)が設計目標又は要求と一致するかどうかを決定するための設計者を必要とする。或いは、モデルは、その要求を満たすように補正される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
MBDプロセスにおいて、要求は、形式によらず自然言語で表現されることが多く、時には、不特定のままである(left unspecified)。概して、制御設計者は、シミュレーション結果をただ見るだけで設計の質を決定するための、十分な専門知識を有することが想定される。結果として、多くの形式的な検証法は、制御器のコードのための確立された網羅率メトリック(coverage metrics)に対して単にコード網羅率(code coverage)をチェックすることを減らす。
【課題を解決するための手段】
【0004】
閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するためのシステム及び方法が開示される。この方法の1つの実施形態は、シミュレーショントレースを得るために車両の閉ループ制御システムをシミュレーションすることと、テンプレート要求が満たされたことを提案するパラメータ値を配置(locate)するためにシミュレーショントレースの値でテンプレート要求をインスタンス化(instantiating)することによって候補要求(candidate requirement)を決定することと、を含む。この方法のいくつかの実施形態は、候補要求に対する反例(counterexample)が存在するかどうかを決定することと、候補要求に対する反例が存在するという決定に応じて、候補要求に対する反例を得ることと、検証のためにシミュレーショントレースに反例を追加することと、を含む。
【0005】
別の実施形態において、閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するためのシステムは、ランダムシミュレーショントレース及びテンプレート要求を受信するためのパラメータ統合ツールを有し、パラメータ統合ツールは、時相要求が得られたことを提案するパラメータ値を配置するためにランダムシミュレーショントレースの値でテンプレート要求をインスタンス化することによって候補要求を生成する。更に、候補要求及びブロック線図モデルを受信し、且つ、候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定し、候補要求に対する反例が存在するという決定に応じて検証のためにランダムシミュレーショントレースに対して反例を追加する改ざんツールも有する。
【0006】
更に別の実施形態において、コンピュータ装置はメモリを有し、メモリは、論理(logic)であって、コンピュータ装置によって実行されるときに、コンピュータ装置に、設計者から受信された自然言語表現からテンプレート要求を決定させるための論理を保存する。テンプレート要求は、未定義値を有してもよい。更に、論理は、シミュレーショントレースを得るために、コンピュータ装置に、自動車の閉ループ制御システムをシミュレーションさせてもよく、時相要求が得られたことを提案するパラメータ値を配置するために、シミュレーショントレースの値でテンプレート要求をインスタンス化することによって候補要求を生成してもよい。ある実施形態において、論理は、コンピュータ装置に候補要求に対する反例が存在するかどうかを決定させる。候補要求に対する反例が存在するという決定に応じて、論理は、コンピュータ装置に、候補要求に対する反例を得させ、且つ、検証のためシミュレーショントレースに反例を追加させてもよい。候補要求に対する反例が存在しないという決定に応じて、コンピュータ装置は、推定された要求を決定する。
【0007】
本開示の実施形態によって提供されるこれらの特徴及び付加的特徴は、図面と共に以下の詳細な説明を考慮し、より詳細に理解される。
【0008】
図面において説明される実施形態は、本質的には概略的なものであり、且つ、例示にすぎず、本開示を限定しようとするものではない。例示的実施形態に係る以下の詳細な説明は、同等の構造が同等の参照符号で示された以下の図面と共に参照すると理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】ここで開示された実施形態による、閉ループ制御システムのブロック線図モデルからの時相要求を抽出するためのコンピュータ装置を示す。
【
図2】ここで開示された実施形態による抽出ツールの操作を示す機能ブロック線図を示す。
【
図3】ここで開示された実施形態による閉ループ制御システムのブロック線図モデルから時相要求を抽出するためのフローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ここで開示された実施形態は、閉ループ制御システムモデルのブロック線図に基づいた仕様からアルゴリズム的に時相要求を抽出するためのシステム及び方法を含む。抽出された要求は、メトリック時相論理(metric temporal logic)(MTL)と密接に関連する信号時相論理(signal temporal logic)(STL)で表現されてもよく、それらの履行(satisfaction)は、ロバストセマンティクス(robust semantics)を用いて測定される。特に、ここで開示された仕様は、アプリケーションプログラムインターフェース(API)仕様規則を示すようなリバースエンジニアリング仕様(ここでは、「要求」ともいう)に焦点を合わせている。要求を抽出するための従来の多くの手法が静的仕様抽出(static specification mining)に焦点を合わせている一方で、概してこれらの技術は、ソフトウェアプログラムを実行することなく要求を抽出することを目的としている。逆に、ここで開示された実施形態は、プログラム実行からの仕様の抽出を目的としている。
【0011】
ここで図面を参照すると、
図1は、ここで開示された実施形態による閉ループ制御システムのブロック線図モデルから時相要求を抽出するためのコンピュータ装置を示す。図示された実施形態において、ユーザーコンピュータ装置102は、プロセッサ130と、入/出力ハードウェア132と、ネットワークインターフェースハードウェア134と、データストレージ構成136(テンプレートデータ138a及びプログラムデータ138bを保存する)と、メモリ構成140と、を有する。メモリ構成140は、揮発性メモリ及び/又は不揮発性メモリとして構成されてもよく、すなわち、ランダムアクセスメモリ(SRAM、DRAM及び/又は他のRAMの形式を含む)、フラッシュメモリ、レジスタ、コンパクトディスク(CD)、デジタル多用途ディスク(DVD)及び/又は非一時的コンピュータ可読媒体の他の形式を含んでもよい。特定の実施形態によって、非一時的コンピュータ可読媒体は、ユーザーコンピュータ装置102内に位置してもよく、且つ/又は、ユーザーコンピュータ装置102の外部に位置してもよい。
【0012】
更に、メモリ構成140は、オペレーティング論理142、テンプレート論理144a及び抽出ツール144bを保存するように構成されてもよく、それぞれ例えばコンピュータプログラム、ファームウェア及び/又はハードウェアとして具現化されてもよい。
図1には、ローカルコミュニケーションインターフェース146も含まれており、ユーザーコンピュータ装置102の構成要素間での通信を容易とするバス又は他のインターフェースとして実現されてもよい。
【0013】
プロセッサ130は、(例えばデータストレージ構成136及び/又はメモリ構成140からの)命令を受信し且つ実行するように動作可能な任意の処理構成を有してもよい。入/出力ハードウェア132は、モニター、キーボード、マウス、プリンタ、カメラ、マイク、スピーカー、及び/又は、データを受信、送信及び/又は表示するための他のデバイスを含んでもよく、且つ/又は、これらと接続されるように構成されてもよい。ネットワークインターフェースハードウェア134は、任意の有線又は無線のネットワークハードウェア、衛星、アンテナ、モデム、LANポート、ワイヤレスフィディリティ(Wi-Fi)カード、Wimaxカード、モバイル通信ハードウェア、及び/又は、他のネットワーク及び/又はデバイスと通信するための他のハードウェアを有してもよく、且つ/又は、これらと通信するために構成されてもよい。これらの接続から、ユーザーコンピュータ装置102と車両コンピュータ装置のような他のコンピュータ装置との間の通信が容易とされ得る。
【0014】
同様に当然のことながら、データストレージ構成136は、ユーザーコンピュータ装置102の近くに位置してもよく、且つ/又は、ユーザーコンピュータ装置102から離れて位置してもよく、且つ、ユーザーコンピュータ装置102及び/又は他の構成によるアクセスのため1又は複数のデータ(one or more pieces of data)を保存するように構成されてもよい。ある実施形態において、データストレージ構成136は、ユーザーコンピュータ装置102の近くに配置されてもよく、従って、ネットワーク100を介してアクセス可能となる。しかしながらある実施形態において、データストレージ構成136は、周辺機器にすぎず、ユーザーコンピュータ装置102の外部にあってもよい。
【0015】
メモリ構成140に含まれるのは、オペレーティング論理142、テンプレート論理144a、及び、抽出ツール144bである。オペレーティング論理142は、オペレーティングシステム、及び/又は、ユーザーコンピュータ装置102の抽出構成のための他のソフトウェアを含んでもよい。同様に、テンプレート論理144aは、ユーザーコンピュータ装置102に、自然言語からテンプレート要求を生成するためのテンプレートデータ138aを使用させるように構成されてもよい。抽出ツール144bは、ユーザーコンピュータ装置102に、推定された要求を決定するためのブロック線図モデルを実行させてもよい。
【0016】
当然のことながら、
図1に示された構成は、例示にすぎず、本開示の範囲を制限しようとするものではない。
図1の構成は、ユーザーコンピュータ装置102内にあるものとして示されているが、これは例示にすぎない。ある実施形態において、1又は複数の構成は、ユーザーコンピュータ装置102の外部に位置する。
【0017】
図2は、ここで開示された実施形態に係る抽出ツールの操作を示す機能ブロック線図を示す。パラメータ統合ツール244a及び改ざんツール244bを有する抽出ツール144bが含まれる。特に、ここで開示された実施形態は、抽出ツール144bへの入力が制御ブロック線図モデル210、制御ブロック線図モデル210のシミュレーションから生成されたランダムシミュレーショントレース202、及び、特定の値が不特定のままであるパラメトリックSTL特性(parametric-STL property)であるテンプレート要求204となるように構成される。
【0018】
特に、設計者が制御ブロック線図モデル210を試験するとき、ユーザーコンピュータ装置102は、設計者に、時相特性の自然言語表現を入力するためのユーザーインターフェース(又は複数のユーザーインターフェース)を提供してもよい。ユーザーインターフェースは、特性を入力するため、設計者のためにテンプレート化された形式を含んでもよい。当然のことながら、テンプレート化された要求は、(1又は複数の)未定義値を含んでもよい。例えば、設計者は、最終的に(eventually)時刻0と時刻t1との間で入力してもよく、信号xはv1より小さく、その時点からt2秒の間v2より低いままであってもよい。設計者は、t1、t2、v1及びv2(パラメータとも呼ばれる)の値を知らないかもしれないため、これらの値は、抽出ツール144bによって決定される。
【0019】
設計者が自然言語表現を入力すると、ユーザーコンピュータ装置102は、自然言語表現のためにパラメトリックSTL表現を決定してもよい。上述した特性は、
【数1】
として表現され、テンプレート要求204としてパラメータ統合ツール244aへと送信される。
【0020】
示されたように、抽出ツール144bは、ランダムシミュレーショントレース202及びテンプレート要求204を受信してもよい。ランダムシミュレーショントレース202は、閉ループシステムをシミュレーションすることによって、且つ、値を決定することによってその結果を得てもよい。テンプレート要求204及びランダムシミュレーショントレース202によって、パラメータ統合ツール244aは、テンプレート要求204を全てのランダムシミュレーショントレース202によって履行された値でインスタンス化することによって時相要求が得られたことを提案する1又は複数の最適パラメータ値を見つけるためにパラメータ空間(parameter space)をサーチすることができる。この情報により、パラメータ統合ツール244aは、候補要求206を生成することができ、これは、インスタンス化されたテンプレート要求である。
【0021】
特に、パラメータ統合ツール244aは、ランダムシミュレーショントレース202及びテンプレート要求204を受信してもよく、且つ、テンプレート要求を真にさせる値を決定してもよい。上述した例示を参照すれば、パラメータt1、t2、v1及びv2は、設計者によって特定されない(unspecified)。従って、パラメータ統合ツール244aは、ランダムシミュレーショントレース202(テンプレート要求204を有効にする可能性のあるt1、t2、v1及びv2の値を決定するために制御ブロック線図モデル210のシミュレーションから得られる値を示す)を使用する。これらの値は、候補要求206と呼ばれる。
【0022】
当然のことながら、パラメータ統合ツール244aは、パラメトリックSTL式の履行のために単調性の使用によって効率を向上させるように構成されてもよい。特に、候補要求を決定するためにテンプレート要求204及びランダムシミュレーショントレース202が使用されたとき、パラメータ統合ツール244aは、ランダムシミュレーショントレース202の特定のアスペクトを無視するためにプロセスを使用してもよい。特に、特定の線形(line)又はランダムシミュレーショントレースの特定の結果が不可避(inevitable)である場合、パラメータ統合ツール244aは、結果が不可避なそれらの部分を無視することによって効率を向上させ得る。
【0023】
次いで候補要求206は、改ざんツール244bによって使用され、候補要求206に対する反例が存在するかどうかを決定するための制御ブロック線図モデル210も受信する。特に、改ざんツール244bは、候補要求が有効な結果を実現しないシナリオ(scenarios)(例えばテンプレート要求204が真ではない)があるかどうかを決定するために、制御ブロック線図モデル210において候補要求206を使用する。改ざんツール244bが反例を決定する場合、パラメータ統合ツール244aに対するフィードバックとして対応する反例トレース208が送信される。次いでパラメータ統合ツールは、反例を考慮しながらテンプレート要求204を満たす(fulfills)候補要求を見つけるためにランダムシミュレーショントレース202と共に反例トレース208を使用する。改ざんツール244bがいかなる反例も存在しない(或いはいかなる付加的反例も存在しない)と決定する場合、推定された要求212が生成され、出力へと送信される。推定された要求212は、テンプレート要求204を満たすパラメータの値を示す。
【0024】
示されたように、制御ブロック線図モデル210は、連続値及び離散値のプログラム変数の混合の、変化する(evolving)動作を説明するために使用され得るハイブリッドシステムを示す。概して、制御ブロック線図モデル210は、閉ループシステムを示す微分方程式、代数方程式及び/又は論理方程式を示すために使用され得る。制御ブロック線図モデル210のセマンティクスは、ソフトウェアプログラムのセマンティクスと大きく異なる。例として、こうしたモデルにおけるモジュールは、連続的に入力を処理して、出力を生成してもよい。従って、こうしたモデルで予想される要求の種類は、従来の抽出ツールによって対象とされる多くの従来のソフトウェアに適合する。
【0025】
図3は、ここで開示された実施形態に係る閉ループ制御システムのブロック線図モデルから時相要求を抽出するためのフローチャートを示す。ブロック330に示されたように、閉ループシステムは、1組のシミュレーショントレースを得るためにシミュレーションされる。ブロック332において、候補要求は、時相要求が得られたことを提案するパラメータ値を配置するためにシミュレーショントレースの値でテンプレート要求をインスタンス化することによって生成されてもよい。時相要求は、パラメトリック信号時相論理特性を有してもよい。ブロック334において、候補要求に対する反例が存在するかどうかに関する決定がなされてもよい。そのような場合、ブロック336において、候補要求に対する反例が得られ、且つ、検証のためにシミュレーショントレースに追加されてもよい。プロセスはブロック336から、ブロック330へと戻される。ブロック334に反例がない場合、ブロック336においてプロセスは推定された要求で完了する。
【0026】
上述したように、ここで開示された実施形態は、制御ブロック線図モデルのためのSTL要求を抽出するための反例に誘導されるプロセスを有する。このプロセスは、ディーゼルエンジンのための大規模制御サブシステムの実際の設計のような新規な複雑性のモデルに適用される。従って、ここで開示された実施形態は、対立する概念の拡張として、パラメトリックSTL式の履行の単調性の概念を紹介する。この手順は、単調性仮定(monotonicity assumption)に関するパラメトリックSTL特性のためにパラメータを合成するための二分探索に基づいてもよい。
【0027】
本開示の特定の実施形態及び態様がここに示され、説明されてきたが、本開示の精神及び範囲から逸脱することなく様々な他の変化及び変更がなされ得る。更に、様々な態様がここで説明されてきたが、こうした態様は組み合わせて使用される必要はない。従って、添付の特許請求の範囲は、ここで示され且つ説明された実施形態の範囲内のこうした全ての変化及び変更を包含することを想定する。
【0028】
当然のことながら、ここで開示された実施形態は、時相要求を抽出するためのシステム、方法、及び、非一時的コンピュータ可読媒体を含む。上述したように、こうした実施形態は、テンプレート要求、及び、テンプレート要求に含ませるための値を決定するように構成される。当然のことながら、これらの実施形態は例示にすぎず、本開示の範囲を限定しようとするものではない。
【符号の説明】
【0029】
102 ユーザーコンピュータ装置
130 プロセッサ
132 入/出力ハードウェア
134 ネットワークインターフェースハードウェア
136 データストレージ構成
138A テンプレートデータ
138B プログラムデータ
142 オペレーティング論理
144A テンプレート論理
144B 抽出ツール
146 ローカルコミュニケーションインターフェース
202 ランダムシミュレーショントレース
204 テンプレート要求
206 候補要求
208 反例トレース
210 制御ブロック線図モデル
212 推定された要求
244a パラメータ統合ツール
244b 改ざんツール
330 ブロック
332 ブロック
334 ブロック
336 ブロック