特許第6046597号(P6046597)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046597
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】薄膜を含む磁気層
(51)【国際特許分類】
   H01L 43/12 20060101AFI20161212BHJP
   G11B 5/39 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 43/08 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 21/8246 20060101ALI20161212BHJP
   H01L 27/105 20060101ALI20161212BHJP
   H01F 10/14 20060101ALI20161212BHJP
   H01F 41/18 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L43/12
   G11B5/39
   H01L43/08 Z
   H01L27/10 447
   H01F10/14
   H01F41/18
【請求項の数】6
【外国語出願】
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-246158(P2013-246158)
(22)【出願日】2013年11月28日
(65)【公開番号】特開2014-112677(P2014-112677A)
(43)【公開日】2014年6月19日
【審査請求日】2014年8月1日
(31)【優先権主張番号】13/689,409
(32)【優先日】2012年11月29日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500373758
【氏名又は名称】シーゲイト テクノロジー エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】Seagate Technology LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンカテスワラ・ラオ・イントゥリ
(72)【発明者】
【氏名】ティエン・ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ・マンデナー
【審査官】 小山 満
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−293611(JP,A)
【文献】 特表2007−525005(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/154009(WO,A1)
【文献】 特開昭62−238614(JP,A)
【文献】 特開2013−253316(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0299345(US,A1)
【文献】 米国特許第06818961(US,B1)
【文献】 特開2011−149100(JP,A)
【文献】 特開2012−140672(JP,A)
【文献】 特開2002−204002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 43/12
G11B 5/39
H01F 10/14
H01F 41/18
H01L 21/8246
H01L 27/105
H01L 43/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
極低温の基板温度に冷却された基板に接する磁気層を備え、前記磁気層は、前記極低温の基板温度および斜めのスパッタリング堆積角度に対応する、前記磁気層の複数の空孔のに平行に整列された所定の異方性に調整される、薄膜。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に形成された磁気層を、前記磁気層の複数の空孔のに平行に整列された所定の異方性に調整するための手段とを備える、装置。
【請求項3】
基板を極低温の基板温度に冷却することと、
前記基板上に斜めのスパッタリング堆積角度で磁気層を堆積することと、
前記磁気層に複数の空孔を直線的な行に沿って整列させることと、
前記直線的な行に平行に方向づけられた所定の異方性を与えることとを含む、方法。
【請求項4】
所定量の時間、前記磁気層を熱で処理することをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記冷却された基板への前記斜めのスパッタリング堆積角度は、前記基板に対して30度以下である、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記磁気層は、第1の原子半径を有する材料を含み、前記磁気層は、第2の原子半径を有する材料でドープされ、前記第1の原子半径は、前記第2の原子半径より小さい、請求項3に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
概要
本開示の様々な実施例は概して、様々な磁気特性のために調整される薄膜に向けられる。様々な実施例によれば、磁気層は所定の異方性および磁気モーメントに調整され、極低温基板上に形成される。
【図面の簡単な説明】
【0002】
図1】いくつかの実施例に係る例示的なデータ記憶装置のブロック図である。
図2】様々な実施例に係るデータ記憶装置の一部分の等角ブロック図である。
図3】いくつかの実施例に係る例示的な磁気層の等角ブロック図である。
図4】様々な実施例に従って調整された例示的な磁気層の上面ブロック図である。
図5】様々な実施例に従って構成され動作される磁気要素と概して関連付けられた性能データのプロットである。
図6】様々な実施例に従って構成され動作される磁気要素の様々な動作特性のグラフである。
図7】本発明の様々な実施例に従って行われる薄膜製造ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0003】
詳細な説明
より容量が大きくより高速のデータ記憶装置が重視され続けていることにより、特により小さな形状因子装置において、データ記憶要素の磁気安定性に重点が置かれている。高い一軸異方性および磁気モーメントは、多様な回転および固体データ記憶装置で用いられる薄膜磁気層において、性能不安定性を軽減するのを支援し得る。しかし一軸異方性は、製造または動作中に生じ得る熱処理の後で磁気薄膜において維持するのが困難であり得る。したがって業界は、高温にさらされても一軸異方性および磁気モーメントを維持することが可能な熱的に安定した磁気薄膜を提供しようと試みている。
【0004】
したがって、薄膜は、所定の基板温度に、かつ所定の堆積入射角にて冷却された基板上に材料を堆積することにより、所定の異方性および磁気モーメントに調整された磁気層として構成され得る。磁気層がその上に堆積される基板の温度を調整することによって磁気層において所定の一軸異方性および磁気モーメントをもたらすことができることにより、小さい形状因子データ読取りおよび書込みなどの多様な異なる磁気動作環境において動作するように磁気層を調整することが可能となる。
【0005】
様々な実施例に係る磁気薄膜の構造は、薄膜の熱的安定性のロバストネスを高めつつ、少なくとも、コヒーレントな磁気回転によって高周波磁気性能を増大させ得る。50Kなどの極低温に冷却された基板上に1つ以上の薄膜を堆積することで磁気ドメイン構造を制御することができ、斜めにスパッタリングされた薄膜において応力異方性を維持し、熱的なかつ異方性の安定性の増大に対応し得る。極低温で冷却された基板では、斜めの入射角調整は、薄膜の異方性および磁気モーメントを正確に制御することによって熱的なかつ異方性の安定性をさらに増大させ得る。
【0006】
図面に戻り、図1は概して、例示的なデータ記憶装置100のブロック図を例示する。データ記憶装置100は、回転、固体およびハイブリッドシステムなどの多様な異なるデータ記憶技術の形態を取り得、多様な限定的でないモバイル、サーバ、および住宅環境において実施することができる。データ記憶装置100は、少なくとも、入力されたデータ信号104をデータ記憶要素106に向けるコントローラ102で構成され得る。入力されたデータ信号104は、外部データ記憶装置および内部データキャッシュからなどの無制限の多様な場所から生じ、データ記憶要素106に一時的にまたは永久に記憶されることが意図されるデータに対応し得る。
【0007】
なおデータ記憶要素106の寸法、速度、種類、および数は特定の構成に限定されない。すなわち、回転データ媒体、固体セル、およびハイブリッドデータシステムなどの、将来のアクセスのためにデータを保持することが可能ないずれかの記憶要素を用いて、単独でまたは組合せてデータ記憶要素106としていずれかのデータ容量および移送速度構成をもたらすことができる。データ記憶要素106の種類および容量にかかわらず、コントローラ102は、入力されたデータ104を処理するとともに、データ出力信号108をデータ記憶要素106から提供することが可能であり得る。それゆえ、コントローラ102は、連続的にまたは同時に、データ記憶要素106の1つ以上の領域に対して選択的にデータを入力しかつデータを出力することができる。
【0008】
いくつかの実施例では、データ記憶要素106は、磁気的に固定されているか、またはコントローラ102によってデータを自由に保存し、書込み、読出すことが可能である少なくとも1つの薄膜磁気層で構成される。たとえば、薄膜磁気層は、回転データ媒体上にデータビットとしてプログラムされたデータを検知するのに使用される磁気抵抗積層体の一部であり得る。別の例では、薄膜磁気層は、2つの電極間のフィラメントの形成によってデータを格納する抵抗ランダムアクセスメモリ(RRAM(登録商標))などの固体積層体の一部であり得る。
【0009】
図2は、図1のデータ記憶要素106において用いることが可能な例示的な薄膜磁気層120の等角ブロック図を表す。磁気層120は、厚さ122、ストライプ高さ124、および幅126を有する矩形形状で示されるが、層120のそのような形状および特定の寸法は特定の構成に限定されない。磁気層120の形状および寸法にかかわらず、磁気層120およびX軸の横断方向と平行な一軸異方性128は、全異方性に対する磁気ドメイン制御を増大させるように構成され得る。
【0010】
そのような一軸異方性方位により、2.4テスラなどの所定の磁束密度で磁気的に安定した性能が可能となり得る。しかし、ストライプ高さ124を増大させると、層120の磁気性能を維持するために、一軸異方性128をX軸およびY軸の両方に関して角度のある方位130に代替的に調整し得る。換言すると、ストライプ高さ126が増大すると、X軸およびY軸に非垂直に方位付けされた角度のある一軸異方性130に一軸異方性128の方位を傾けることによって軽減される高い磁気不安定性に対応することができる。
【0011】
ストライプ高さ124が幅126の2倍などの所定長さに到達すると、X軸に垂直な角度で方位付けされた一軸異方性132が磁気層120に形成され、磁気安定性を補強し得る。たとえば、異方性132のように異方性がX軸に沿って方位付けされるか、または異方性130のようにX軸に対して角度が付けられる場合よりも速く磁化が緩むことが異方性128によって可能となるため、磁気層120の幅と平行な一軸異方性をX軸に沿って方位付けすることによって書込み現象後の消去が減り得る。
【0012】
磁気層120の一軸異方性の方位を磁気層120の寸法と共に調整して所定の磁気特性を提供することができるが、アニールまたは動作中などに磁気層に熱を印加することで、熱の印加前に異方性および磁気モーメントがどのように構成されていたかにかかわらず、磁気層120の異方性および磁気モーメントを永久に変更することができる。磁気層120において異方性およびモーメント不安定性を引き起こす熱の印加によって、磁気層120が堆積される基板の温度および磁気層120が堆積される角度を調整することは、熱の印加に続いて異方性およびモーメント特性を維持するのを支援することができる。
【0013】
図3は、様々な実施例に係る基板152上への磁気層150の堆積の等角ブロック図を示す。図2の磁気層120のように、いずれかの多様な形状、寸法、および材料で磁気層150を形成することができるが、いくつかの実施例では、Z軸に関して0度〜90度まで変動することができる所定の斜めの入射角θ、θ、θでの基板152上へのFeCoのスパッタリングされた堆積によって形成された矩形の薄膜である。
【0014】
30度以下の角度などの静的または動的な斜角スパッタリングは、材料の固有の磁気モーメントを損失することなく、斜角のシャドーイング効果による晶子の成長に遅れて形成される空孔およびナノ空隙の凝集によって生じている応力異方性のために200Oe以上などの高い異方性をもたらすことができる。すなわち、成長する晶子は、スパッタリングガン154の入射ビームからの見通線をブロックし、膜中の磁気異方性に至る応力異方性を共同でもたらす予測可能な場所において空孔を発生させる。
【0015】
図4の磁気層160は概して、所定の異方性方向166に整列された予測可能な行164に空孔162がどのようにして整列し、一軸異方性をその方向166に沿ってもたらすかを例示する。しかし、応力異方性が低下するにつれて、行164の熱的安定性は高熱下では不安定となる。したがって、磁気層160のアニールまたは熱処理などの条件は、一軸異方性の強度および方向を妨害することがある。なお、磁気層の材料をより大きな原子半径の要素によってドープして熱的不安定性を軽減し得るが、そのような努力は、磁気層160の全体的な磁気モーメントを低下させ、高周波データビットアクセス動作の損失に繋がることが多い。
【0016】
一軸異方性の熱的不安定性を考慮すると、磁気層160が堆積される図3の基板152などの基板の冷却により、原子可動性を低下させ、より容易に空孔162およびナノ空隙を形成することができ、これは所定の異方性方向166に沿った空孔162の整列の熱的安定性の増大に対応する。様々な実施例において、堆積の斜角を制御しつつ、ほぼ50ケルビンなどの所定の温度に基板を極低温に冷却することによって、異方性および磁気モーメントが調整される。
【0017】
そのような調整された堆積は一定のまたは変動する極低温基板温度をもたらすことができ、高い応力異方性をもたらすように最適化された斜めの堆積角度は、その後の熱の印加において高い一軸異方性および磁気モーメントを維持することによって、アニールおよび熱処理の有害な効果を軽減することができる。図5および図6はそれぞれ、様々な実施例に係る、違なるように調整された磁気層を含む磁気抵抗積層体に関連付けられた例示的な動作データのグラフである。図5において、室温基板上の斜めの堆積は、所定の一軸異方性および磁気モーメント特性に調整される磁化容易軸170および磁化困難軸172をもたらすことが示される。
【0018】
堆積の斜めの入射角を調整することによって図5の磁気特性を変更することができるが、1つ以上の磁気層中の空孔が熱の印加によって引き起こされる熱応力のために結晶格子中で移動するため、次の熱処理またはアニールは、調整された異方性および磁気モーメントを減少させ得るかまたは排除し得る。これに対し、図6に示される磁化容易軸180および磁化困難軸182は、斜めの入射角および基板温度の両方をどのように調整して一軸異方性の増大をもたらすことができるかを例示し、これは、極低温に冷却された基板上の堆積された磁気材料の原子可動性の減少により、より熱的に安定してもいる。
【0019】
調整された磁気層を含む磁気要素の形成は特定の手段に限定されないが、図7は様々な実施例に従って行なわれる例示的な薄膜製造ルーチン200を示す。ルーチン200は、ステップ202において用途に最適化された磁気性能に対応する一軸異方性および磁気モーメントを設計することで開始し得る。すなわち、異方性および磁気モーメントは、固体積層体、磁気抵抗積層体および近接センサのように薄膜が使用されるやり方を満たす、異方性方向および磁束容量などの磁気特性をもたらすようにステップ202において設計することができる。
【0020】
ステップ202で設計された一軸異方性および磁気モーメントにより、次いで、磁気パラメータに対応する斜めの入射角および基板温度がステップ204および206における実行のためにそれぞれ設定される。ステップ206がスパッタリング装置などの層堆積手段を所定の斜めの入射角に構成する前に、ステップ204がまず基板を極低温に冷却し、維持する。基板の冷却された温度への構成および所定の角度に設定された斜めの堆積により、ルーチン200がステップ208に進められ、冷却された基板上への薄膜の堆積が開始する。
【0021】
ステップ208における材料堆積の開始後のある時点で、基板温度または斜めの入射角の調整が調整されるべきかどうかついて、判断210において堆積が評価される。すなわち、材料が基板上に堆積されている間、以前は静的であった基板温度および斜めの入射角が動的となるべきかどうか。判断210からの判定が修正が望ましいというものであれば、ステップ212は、冷却された基板上に材料を堆積しつつ、基板温度および/または斜めの入射角を個々にまたはまとめて変更する。
【0022】
ステップ212における堆積パラメータの変更後、または判断210から変更することなく、薄膜を所定の形状、厚さ、幅、およびストライプ高さに形成するとステップ214に至り、堆積が終了される。様々な実施例は堆積後でも基板を極低温に維持するが、他の実施例は新たに形成された薄膜に高温でのアニール熱処理を行う。これら両方とも必要とは限らないか、またはルーチン200に限定されない。
【0023】
ルーチン200には設けられていないが、付加的な層がルーチン200で形成される調整された薄膜上に堆積される積層体と分離して、またはその一部として薄膜を製造し得る。なお、多様な判断および工程を省略し、変更し、追加することができるため、ルーチン200は図7に示された処理に限定されない。たとえば、ステップ208とステップ214との間に斜めの入射角および/または基板温度に対して多くの調整を行うことができる。ルーチン200の表示にかかわらず、製造された薄膜は、特に熱の印加後の磁気特性の保持に関して、安定性のために最適化される一軸異方性方向、異方性強度、および磁気モーメントによって調整される。
【0024】
本開示で説明した磁気薄膜の構成および材料特性により、異方性および熱的安定性のために最適化された磁気層が可能となることを認識することができる。一軸異方性の増大のために磁気層を斜めの入射角堆積で調整することができることと、極低温に冷却された基板上への堆積とが組合わさって、データ記憶装置のデータビット容量およびデータ転送速度を増大させることができるロバストな磁気薄膜がもたらされる。さらに、データ検知、データ書込み、および固体データ記憶用途などのいずれかの数の磁気用途においてクレームに記載の技術を容易に利用することができると認識されるであろう。
【0025】
本開示の様々な実施例の多くの特徴および利点が上記の説明において様々な実施例の構造および機能の詳細と共に記載されたが、この詳細な説明は例示に過ぎず、添付の請求項が表現されている用語の広い一般的な意味で示される最大限の範囲まで、本開示の原理内における細部、特に部品の構造および配置の事柄において変更が行われ得ることが理解されるべきである。たとえば、本技術の精神および範囲から逸脱することなく特定用途に依存して特定の要素を変動させ得る。
【符号の説明】
【0026】
120 磁気層、122 厚さ、124 ストライプ高さ、126 幅、128 一軸異方性、130 異方性、132 異方性。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7