(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし車両の横転を検出する角速度センサは高価であり、このことにより特許文献1に記載の乗員保護装置はコストが増大するという問題があった。
【0005】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、車両が側面部にて衝突された場合、横転する可能性があるとき、予防的に車両内の乗員を車外への放出から保護する乗員保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る乗員保護装置は、車両の左右の両側面部又は制御部内に設けられ、該車両の状態を示す物理量を出力する出力部と、該出力部から出力された物理量に基づいて前記車両が側面部に衝突されたか否かを判定する衝突判定部と、前記車両の両側面部の夫々に位置する窓の周辺に設けられたエアバッグと、前記衝突判定部が前記車両が側面部に衝突されたと判定した場合、前記エアバッグを展開させる展開制御部と、前記出力部から出力された物理量に基づいて横転する可能性があるか否かを判定する横転判定部とを備え、前記展開制御部は、該横転判定部が横転する可能性があると判定した場合、前記展開制御部で展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグを展開させるようにしてある乗員保護装置であって、前記出力部は、前記車両の車幅方向の加速度値もしくは加速度値から計算された値を出力するようにしてあり、前記衝突判定部は、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値もしくは加速度値から計算された値が、所定の衝突閾値以上であるか否か判定する判定部を有し、前記車両が前記側面部に衝突されたと判定するようにしてあり、前記横転判定部は、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値もしくは加速度値から計算された値が、前記衝突閾値より大きい所定の横転閾値以上である場合、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあ
り、前記出力部は、前記車両の車幅方向以外の方向の前記車両の状態を示す物理量もしくは該物理量から計算された値をさらに出力し、前記横転判定部は、前記出力部で出力された物理量もしくは該物理量から計算された値が所定の閾値以上であり、かつ前記出力部から出力された車幅方向の加速度値が前記横転閾値より小さい所定の横転敏感閾値以上である場合、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0007】
本発明にあっては、出力部は車両の左右の両側面部又は制御部内に設けられ、該車両の状態を示す物理量を出力する。衝突判定部は該出力部から出力された物理量に基づいて車両が側面部に衝突されたか否かを判定する。エアバッグは車両の両側面部の夫々に位置する窓の周辺に設けられる。横転判定部は衝突判定部が車両が側面部に衝突されたと判定した場合、エアバッグを展開させる展開制御部と出力部から出力された物理量に基づいて横転する可能性があるか否かを判定する。展開制御部は、横転判定部が横転する可能性があると判定した場合、展開制御部で展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグを展開させるようにしてある。出力部は、車両の車幅方向の加速度値もしくは加速度値から計算された値を出力するようにしてあり、衝突判定部は、出力部から出力された車幅方向の加速度もしくは加速度値から計算された値が、所定の衝突閾値以上であるか否か判定する判定部を有し、車両が側面部に衝突されたと判定するようにしてあり、横転判定部は、出力部から出力された車幅方向の加速度値もしくは加速度値から計算された値が、衝突閾値より大きい所定の横転閾値以上である場合、車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
このため車両が側面部にて衝突された場合、乗員保護装置は横転する可能性があるとき、予防的に車両内の乗員を車外への放出から保護することができる。また乗員保護装置は安価に製造することができる。
【0008】
本発明に係る乗員保護装置は、前記車両の前後方向の速度値を検出する車速検出機から速度値を取得する速度取得部をさらに備え、
前記出力部は、前記速度取得部から取得した速度値を出力し、前記横転判定部は、
前記出力部で出力された速度値が所定の速度閾値以上である場合、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値が前記横転閾値より小さい所定の横転敏感閾値以上であるとき、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0009】
本発明にあっては、速度取得部が車両の前後方向の速度値を検出する車速検出機から速度値を取得する。横転判定部は、速度取得部で取得された速度値が所定の速度閾値以上である場合、出力部から出力された車幅方向の加速度値が横転閾値より小さい所定の横転敏感閾値以上であるとき、車両が横転する可能性があると判定する。
このことにより、乗員保護装置は車両が走行していた場合でも、横転により乗員が車両の外に放出されることを防止できる。
【0010】
本発明に係る乗員保護装置は、前記出力部は前記車両の鉛直方向の加速度値を出力するようにしてあり、前記横転判定部は、前記出力部から出力された鉛直方向の加速度値が所定の鉛直閾値以上である場合、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値が前記横転敏感閾値以上であるとき、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、出力部は前記車両の鉛直方向の加速度値を出力するようにしてあり、横転判定部は、出力部から出力された鉛直方向の加速度値が所定の鉛直閾値以上である場合、出力部から出力された車幅方向の加速度値が横転敏感閾値以上であるとき、車両が横転する可能性があると判定する。
このことにより、乗員保護装置は車両が浮き上がった場合でも、横転により乗員が車両の外に放出されることを防止できる。
【0012】
本発明に係る乗員保護装置は、前記車両が横滑りをしているか否かを示す横滑り情報を検出する横滑り検出手段から横滑り情報を取得する情報取得部をさらに備え、前記横転判定部は、該情報取得部が取得した横滑り情報に基づいて前記車両が横滑りをしているか否かを判定し、前記車両が横滑りをしていると判定した場合、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値が前記横転敏感閾値以上であるとき、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0013】
本発明にあっては、情報取得部は車両が横滑りをしているか否かを示す横滑り情報を検出する横滑り検出手段から横滑り情報を取得する。横転判定部は、情報取得部が取得した横滑り情報に基づいて車両が横滑りをしているか否かを判定し、車両が横滑りをしていると判定した場合、出力部から出力された車幅方向の加速度値が横転敏感閾値以上であるとき、車両が横転する可能性があると判定する。
このことにより、乗員保護装置は車両が横滑りした場合でも、横転により乗員が車両の外に放出されることを防止できる。
【0014】
本発明に係る乗員保護装置は、前記車両の鉛直軸周りの角速度値を検出する角速度検出機から角速度値を取得する角速度取得部をさらに備え、
前記出力部は、前記角速度取得部から取得した角速度値を出力し、前記横転判定部は、
前記出力部で出力された角速度値が所定の角速度閾値以上である場合、前記出力部から出力された車幅方向の加速度値が前記横転敏感閾値以上であるとき、前記車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
【0015】
本発明にあっては、角速度取得部は車両の鉛直軸周りの角速度値を検出する角速度検出機から角速度値を取得する。横転判定部は、角速度取得部で取得された角速度値が所定の角速度閾値以上である場合、出力部から出力された車幅方向の加速度値が横転敏感閾値以上であるとき、車両が横転する可能性があると判定するようにしてあることを特徴とする。
このことにより、乗員保護装置は車両がスピンした場合でも、横転により乗員が車両の外に放出されることを防止できる。
【0016】
本発明に係る乗員保護装置は、前記横転判定部が横転する可能性があると判定した場合、計時を開始する計時部を備え、前記展開制御部は、前記計時部が計時を開始してから所定の時間を経過した場合、前記展開制御部で展開されたエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグを展開させるようにしてあることを特徴とする。
【0017】
本発明にあっては、計時部が、横転判定部が横転する可能性があると判定した場合、計時を開始する。前記展開制御部は、計時部が計時を開始してから所定の時間を経過した場合、展開制御部で展開されたエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグを展開させる。
このことにより、乗員保護装置はエアバッグが十分な車外放出抑制効果を保った状態で乗員の保護を行うことができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、展開制御部は、横転判定部が横転する可能性があると判定した場合、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグを展開させる。このため車両が側面部にて衝突された場合、乗員保護装置は横転する可能性があるとき、予防的に車両内の乗員を車外への放出から保護することができる。また乗員保護装置は安価に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
実施の形態1
以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図1は実施の形態1に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な平面図である。
図2は実施の形態1に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な左側斜視図である。
図3は実施の形態1に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な側断面図である。
図4は実施の形態1に係る乗員保護装置を備えた車両の一構成例を示すブロック図である。車両1とは例えば、自動車又は軽自動車等である。
【0021】
図1、
図2、
図3及び
図4に示すように車両1は車幅方向に対して左右対称な位置に同様の装置を備える。具体的には車両1は左側にサイドウィンドウ(窓)4a、サイドウィンドウ(窓)5a、天井側面部6a、座席7a、エアバッグ8a及び加速度検出部(加速度センサ、出力部)9aを備える。車両1は右側にサイドウィンドウ4b(窓)、サイドウィンドウ(窓)5b、天井側面部6b、座席7b、エアバッグ8b及び加速度検出部(出力部)9bを備える。また車両1は車室内に制御部2を備える。また車両1は制御部2周辺に記憶部3(図示せず)を備える。
【0022】
加速度検出部9aは車両1に加わる加速度を検出するセンサである。加速度検出部9aは車両1の左側面部に設けられている。左側面部とは具体的には、車両1の前方左側面部に設けられたサイドウィンドウ4aと、車両1の後方左側面部に設けられたサイドウィンドウ5aとの間に設けられたピラーである。あるいは左側面部とはサイドウィンドウ5aの後方に設けられたピラーでもよい。
【0023】
加速度検出部9aは例えば、静電容量型加速度センサ又はピエゾ抵抗型加速度センサ等である。静電容量型加速度センサは加速した際の静電容量の変化を電圧に変換し、変換した電圧を計測することで加速度を検出する加速度センサである。ピエゾ抵抗型加速度センサは結晶が圧力により歪んだ際に生じる電気抵抗の変化を電圧に変換し、変換した電圧を計測することで加速度を検出する加速度センサである。加速度検出部9aは車両1の車幅方向の加速度を加速度値(物理量)の情報として検出する。加速度検出部9aはエアバッグ8a及びエアバッグ8bの作動を制御する制御部2に車載ケーブル12を介して接続されている。加速度検出部9aは通信により検出した加速度値を所定の周期で制御部2へ出力している。所定の周期とは例えば、1マイクロ秒である。なお、加速度検出部9aは加速度を検出することができるECU(Electronic Control Unit)でもよい。
【0024】
エアバッグ8aは車両1の乗員を衝撃から保護し、かつ車外への放出を防止するエアバッグであり、例えばカーテンエアバッグである。エアバッグ8aは車両1の左側面部に位置する窓周辺に設けられている。具体的にはエアバッグ8aは車両1のサイドウィンドウ4a及びサイドウィンドウ5aの上部に位置する天井側面部6aに設けられている。なお、エアバッグ8aはサイドウィンドウ4aと、サイドウィンドウ5aとの間に設けられたピラーに設けられてもよい。あるいはエアバッグ8aはサイドウィンドウ5aの後方に設けられたピラーに設けられてもよい。
【0025】
エアバッグ8aは制御部2に車載ケーブル12を介して接続されており、通信により制御部2から制御信号が入力される。エアバッグ8aは制御信号が入力された場合、エアバッグ8a内部に設けられたインフレータ(図示せず)の電熱部を発熱する。発熱された電熱部は電熱部近傍の火薬を点火させ、火薬と隣接するガス発生剤に引火する。引火したガス発生剤はガスをエアバッグ8aに備えられた緩衝袋の内部に充填する。緩衝袋は例えば塩化ビニル又は布等の素材で形成されており、内部にガスが充填された場合、膨張することができる。
【0026】
緩衝袋はエアバッグ8a内部に折り畳んで収納してある。エアバッグ8aは緩衝袋を膨張させることにより天井側面部6aからサイドウィンドウ4a及びサイドウィンドウ5aと座席7aとの間に展開する。このことにより、エアバッグ8aは乗員に与えられる左方向の衝撃を軽減する。またエアバッグ8aは乗員がサイドウィンドウ4a又はサイドウィンドウ5aから放出されることを防止する。
【0027】
加速度検出部9bは車両1に加わる加速度を検出するセンサである。加速度検出部9bは車両1の右側面部に設けられている。右側面部とは具体的には前方右側面部に設けられたサイドウィンドウ4bと、車両1の後方右側面部に設けられたサイドウィンドウ5bとの間に設けられたピラーである。あるいは右側面部とはサイドウィンドウ5bの後方に設けられたピラーでもよい。加速度検出部9bはエアバッグ8a及びエアバッグ8bの作動を制御する制御部2に車載ケーブル12を介して接続されている。加速度検出部9bは通信により検出した加速度値を所定の周期で制御部2へ出力している。所定の周期とは例えば1マイクロ秒である。
【0028】
エアバッグ8bは車両1の乗員を衝撃から保護し、かつ車外への放出を防止するエアバッグである。エアバッグ8bは制御部2に車載ケーブル12を介して接続されており、通信により制御部2から制御信号が入力される。エアバッグ8bは車両1の右側面部に位置する窓周辺に設けられている。具体的にはエアバッグ8bは車両1のサイドウィンドウ4b及びサイドウィンドウ5bの上部に位置する天井側面部6bに設けられている。なお、エアバッグ8bはサイドウィンドウ4bと、サイドウィンドウ5bとの間に設けられたピラーに設けられてもよい。あるいはエアバッグ8bはサイドウィンドウ5bの後方に設けられたピラーに設けられてもよい。
【0029】
なお、加速度検出部9b並びにエアバッグ8bの作用及び動作は、加速度検出部9a並びにエアバッグ8aと略同様であるため、簡潔のために記載を省略する。
【0030】
緩衝袋はエアバッグ8b内部に折り畳んで収納してある。エアバッグ8bは緩衝袋を膨張させることにより、天井側面部6bからサイドウィンドウ4b及びサイドウィンドウ5bと座席7bとの間に展開する。このことにより、エアバッグ8bは乗員に与えられる右方向の衝撃を軽減する。またエアバッグ8bは乗員がサイドウィンドウ4b又はサイドウィンドウ5bから放出されることを防止する。
【0031】
制御部2は例えば、一又は複数のCPU(Central Processing Unit)またはマルチコアCPU等を備える。制御部2は加速度検出部9a又は加速度検出部9bから加速度値を受け取った場合、エアバッグ8a又はエアバッグ8b等に制御信号を出力することにより、車両1内の各部の動作を制御する。なお、制御部2は電気配線により衝突された側面部を判断する。具体的には制御部2は加速度検出部9aから加速度値を受け取った場合、左側の側面部が衝突されたと判定する。制御部2は加速度検出部9bから加速度値を受け取った場合、右側の側面部が衝突されたと判定する。
【0032】
記憶部3は、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を備えている。ROMは例えばEEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)又はフラッシュメモリ等の不揮発性のメモリ素子である。RAMはSRAM(Static Random Access Memory)又はDRAM(Dynamic Random Access Memory)等の揮発性メモリ素子で構成されている。記憶部3にはプログラム3a等の制御部2が処理を行う際に必要とする種々のデータが予め記憶されている。
【0033】
記憶部3には予め加速度値についての閾値である衝突閾値及び横転閾値が記憶されている。衝突閾値は、自動車又は軽自動車等の衝突体が側面から衝突し、衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを作動させるべき外力が加えられたときの車幅方向の加速度値であり、例えば3G程度である。車両1がカーブを曲がった場合、車幅方向に生じる加速度値は概して1G以内である。停止した車両1が側面から衝突した衝突体により横転する場合、車幅方向に生じる加速度値は概して5G程度である。衝突閾値はこの両者を区別できる値に設定されている。
【0034】
横転閾値は衝突体が側面部にて衝突し、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを作動させるべき外力が加えられたときの車幅方向の加速度値であり、例えば20G程度である。時速50kmの被衝突体が車両1の側面から衝突した場合、車幅方向に生じる加速度値は概して20G程度である。横転閾値は車両1の乗員が外部へ放出される可能性が高い加速度値として設定されている。
【0035】
乗員保護装置の作用及び動作について説明する。
図5は検出された加速度値が衝突閾値未満であった場合、側面から衝突された車両1を示す模式的な説明図である。
図6は検出された加速度値が衝突閾値以上横転閾値未満であった場合、側面から衝突された車両1を示す模式的な説明図である。
図7は検出された加速度値が横転閾値以上であった場合、側面から衝突された車両1を示す模式的な説明図である。
【0036】
図5に示すように、衝突体21は車両1の左側面から衝突する。衝突された車両1は加速度検出部9aにて加速度値を検出する。加速度検出部9aは検出した加速度値を制御部2に出力する。
【0037】
制御部2は衝突された側面部にて検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は衝突された側面部にて検出された加速度値が所定の衝突閾値以上でないと判定する。制御部2は処理を終了し、加速度値が新たに取得されるまで待機する。
【0038】
図6に示すように、衝突体22は車両1の左側面から衝突する。衝突された車両1は加速度検出部9aにて加速度値を検出する。加速度検出部9aは検出した加速度値を制御部2に出力する。
【0039】
制御部2は検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は衝突された側面部にて検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であると判定する。制御部2は検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であると判定した場合、加速度値を出力する出力部の側面部に設けられたエアバッグ8aを展開させる。
【0040】
制御部2はエアバッグ8aに制御信号を出力する。制御信号が入力されたエアバッグ8aは、天井側面部6aからサイドウィンドウ4a及びサイドウィンドウ5aと座席7aとの間に展開する。展開したエアバッグ8aは乗員に加わる左側からの衝撃を軽減し、乗員が車両1の外に放出されることを防止する。制御部2は出力された加速度値が所定の横転閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は加速度値が所定の横転閾値以上でないと判定し、処理を終了する。
【0041】
図7に示すように、衝突体23は車両1の左側面から衝突する。衝突された車両1は加速度検出部9aにて加速度値を検出する。加速度検出部9aは検出した加速度値を制御部2に出力する。制御部2は出力された加速度値が所定の衝突閾値以上であると判定する。制御部2はエアバッグ8aに制御信号を出力する。エアバッグ8aは、天井側面部6aからサイドウィンドウ4a及びサイドウィンドウ5aと座席7aとの間に展開する。展開したエアバッグ8aは乗員に加わる左側からの衝撃を軽減し、乗員が車両1の外に放出されることを防止する。
【0042】
制御部2は出力された加速度値が所定の横転閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は加速度値が所定の横転閾値以上であると判定する。制御部2は展開されたエアバッグ8aの反対側の側面部に設けられたエアバッグ8bに制御信号を出力する。エアバッグ8bは、天井側面部6bからサイドウィンドウ4b及びサイドウィンドウ5bと座席7bとの間に展開する。展開したエアバッグ8bは車両が横転する際の挙動により乗員が右側から車外へ放出されようとする力を受け止め、乗員が車両1の外に放出されることを防止する。
【0043】
次に、フローチャートを用いて実施の形態1に係る制御部2の処理手順を説明する。
図8は実施の形態1に係る制御部2の処理手順を示したフローチャートである。制御部2は車両1の加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出された加速度値を取得する(ステップS11)。
【0044】
制御部2は検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であるか否かを判定する(ステップS12)。具体的には制御部2は衝突された側面部に設けられた加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は検出された加速度値が所定の衝突閾値以上でないと判定した場合(ステップS12:NO)、ステップS11に処理を戻し、新たに加速度値が取得されるまで待機する。制御部2は検出された加速度値が所定の衝突閾値以上であると判定した場合(ステップS12:YES)、出力部の配線に基づいて、出力部の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開する(ステップS13)。
【0045】
制御部2は車両1の加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出された加速度値を取得する(ステップS14)。制御部2は検出された加速度値が所定の横転閾値以上であるか否かを判定する(ステップS15)。具体的には制御部2は衝突された側面部の加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出された加速度値が所定の横転閾値以上であるか否かを判定する。
【0046】
制御部2は検出された加速度値が所定の横転閾値以上でないと判定した場合(ステップS15:NO)、ステップS14に処理を戻す。制御部2は検出された加速度値が所定の横転閾値以上であると判定した場合(ステップS15:YES)、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開し(ステップS16)、処理を終了する。具体的には制御部2は展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する。
【0047】
なお、実施の形態1に係る制御部2は衝突閾値及び横転閾値を用いて加速度値の判定を行ったが、横転閾値のみで加速度値の判定を行ってもよい。その場合、制御部2は両側のエアバッグ8a及びエアバッグ8bを同時に展開するよう指示する制御信号を出力するようにしてもよい。
【0048】
また制御部2は展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bが展開しなかった場合、処理を終了するか又はステップS11に処理を戻してもよい。
【0049】
本実施の形態によれば、制御部2は加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出された加速度値が所定の横転閾値以上であると判定した場合、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開する。このことにより車両1が横転する可能性がある場合、予防的に車両内の乗員を車外への放出から保護することができる。また乗員保護装置は加速度検出部9a又は加速度検出部9bを用いることにより、従来より安価に製造することができる。
【0050】
実施の形態2
以下本発明の実施の形態2をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。
図9は実施の形態2に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な平面図である。
図10は実施の形態2に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な側断面図である。
図11は実施の形態2に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示すブロック図である。以下、特に説明する構成、作用以外の構成及び作用は実施の形態1と同等であり、簡潔のため記載を省略する。
【0051】
図9、
図10及び
図11に示すように、車両1は車速検出部(車速検出機)10を備える。車速検出部10は制御部2に車載ケーブル12を介して接続されている。車速検出部10は通信により検出した前後方向の速度値を所定の周期で制御部2へ出力している。
【0052】
次に、フローチャートを用いて実施の形態2に係る制御部2の処理手順を説明する。
図12は実施の形態2に係る制御部2の処理手順を示したフローチャートである。ステップS11からステップS16の処理は上述の実施の形態1に係る制御部2の処理手順と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0053】
制御部2はステップS13の処理を終了した後、車速情報に基づいて、横転閾値を変更するか否かを判定し(ステップS20)、処理をステップS14に移す。
【0054】
図13は閾値変更処理の処理手順を示すフローチャートである。制御部2は車速検出部10にて検出した車速情報を取得する(ステップS21)。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。速度閾値とは例えば時速20kmである。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上でなかった場合(ステップS22:NO)、閾値変更処理を終了し、処理をステップS14に移す。
【0055】
制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であった場合(ステップS22:YES)、車両1が横転する可能性が高いため、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更し(ステップS23)、閾値変更処理を終了し、ステップS14へ処理を移す。横転敏感閾値とは例えば、10Gである。
【0056】
本実施の形態によれば、制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であった場合、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。このことにより、乗員保護装置は車両1が走行していた場合でも、横転により乗員が車両1の外に放出されることを防止できる。
【0057】
実施の形態3
以下本発明の実施の形態3をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下、特に説明する構成、作用以外の構成及び作用は実施の形態2と同等であり、簡潔のため記載を省略する。加速度検出部9a及び加速度検出部9bは車両1の鉛直方向の加速度値を検出する。
【0058】
次に、フローチャートを用いて実施の形態3に係る制御部2の処理手順を説明する。
図14は実施の形態3に係る閾値変更処理の処理手順を示したフローチャートである。ステップS11からステップS21の処理は上述の実施の形態2に係る制御部2の処理手順と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0059】
制御部2はステップS21の処理を終了した後、加速度検出部9a及び加速度検出部9bにて検出した鉛直方向の加速度値を取得する(ステップS31)。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であった場合(ステップS22:YES)、処理をステップS23に移し、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。
【0060】
制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上でなかった場合(ステップS22:NO)、鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。加速度閾値とは例えば、1Gである。制御部2は鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上でなかった場合(ステップS32:NO)、閾値変更処理を終了し、処理をステップS14に移す。制御部2は鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上であった場合(ステップS32:YES)、処理をステップS23に移し、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。
【0061】
なお、本実施の形態では鉛直方向の加速度値に基づいて、横転閾値を変更したが、鉛直方向の速度値に基づいて横転閾値を変更してもよい。制御部2は例えば、検出された鉛直方向の加速度値を所定の時間間隔で積分することにより、鉛直方向の速度値を算出する。所定の時間間隔とは例えば、25ミリ秒である。制御部2は算出した鉛直方向の速度値が鉛直速度閾値(鉛直速度閾値は例えば時速5km)以上であるか否かを判定する。鉛直方向の速度値が鉛直速度閾値以上であった場合、制御部2は横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。
【0062】
本実施の形態によれば、制御部2は鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上であった場合、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。このことにより、乗員保護装置は車両1が浮き上がった場合でも、横転により乗員が車両1の外に放出されることを防止できる。
【0063】
実施の形態4
以下本発明の実施の形態4をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下、特に説明する構成、作用以外の構成及び作用は実施の形態3と同等であり、簡潔のため記載を省略する。
図15は実施の形態4に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な平面図である。
図16は実施の形態4に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な側断面図である。
図17は実施の形態4に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示すブロック図である。
【0064】
図15、
図16及び
図17に示すように、車両1は車載機器11を備える。車載機器11とは例えば、横滑り防止装置である。横滑り防止装置は車両1に横滑りが発生していた場合、車両1を制御することにより、車両1の横滑りを防止する装置である。車載機器11は鉛直軸周りの角速度を検出する角速度検出部(角速度検出機)11a、ステアリングの回転角度を検出する操舵角センサ及びブレーキの圧力を検出するブレーキ圧センサ等を備える。車載機器11は各種センサが検出した情報に基づいて、車両1に横滑りが発生しているか否かを示す横滑り情報を生成する。車載機器11は制御部2に車載ケーブル12を介して接続されている。車載機器11は通信により制御部2へ横滑り情報及び鉛直軸周りの角速度値の情報を所定の周期で制御部2へ出力している。所定の周期とは例えば1マイクロ秒である。
【0065】
図18は車両1に搭載された乗員保護装置の動作の一例を示すタイミングチャートである。
図18Aは車幅方向の加速度の変化を示す図である。縦軸は車幅方向の加速度値であり、単位はメートル毎秒毎秒である。横軸は時間であり、単位は秒である。
図18Bは衝突された側面部に設けられたエアバッグの展開を示す図である。縦軸はエアバッグが展開されたか否かを示す。Onはエアバッグが展開されたことを示す。Offはエアバッグが展開されていないことを示す。横軸は時間であり、単位は秒である。
【0066】
図18Cは展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグの展開を示す図である。縦軸はエアバッグが展開されたか否かを示す。Onはエアバッグが展開されたことを示す。Offはエアバッグが展開されていないことを示す。横軸は時間であり、単位は秒である。
【0067】
図18Dは鉛直方向の加速度の変化を示す図である。縦軸は鉛直方向の加速度値であり、単位はメートル毎秒毎秒である。横軸は時間であり、単位は秒である。
図18Eは横滑りしているか否かを示す図である。縦軸は車両1が横滑りしているか否かを示す。Onは車両1が横滑りしていることを示す。Offは車両1が横滑りしていないことを示す。横軸は時間であり、単位は秒である。
図18Fは鉛直軸周りの角速度の変化を示す図である。縦軸は鉛直軸周りの角速度値であり、単位はラジアン毎秒である。横軸は時間であり、単位は秒である。
【0068】
車両1は側面衝突する前に角速度検出部11aにて検出される鉛直軸周りの角速度値(
図18F)が増加する。また、車載機器11にて横滑りが発生していることを示す横滑り情報が検出される(
図18E)。車両1は側面衝突をした後、加速度検出部9a又は加速度検出部9bにて検出される車幅方向の加速度値(
図18A)及び鉛直方向の加速度値(
図18D)が増加する。なお、
図18Eでは横滑りが発生したと仮定している。制御部2は車幅方向の加速度値が所定の衝突閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は概して5ミリ秒から20ミリ秒程度の時間が経過してから衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する(
図18B)。
【0069】
制御部2は衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bに制御信号を出力した後、閾値変更処理を行う。制御部2は横滑り情報又は角速度値を取得した場合、閾値変更処理に100ミリ秒から3秒程度の処理時間がかかる。制御部2は処理時間を経過した後、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bの展開を開始する(
図18C)。車両1は1秒から4秒後に横転を開始するが(
図18C)、最終的に横転するまで2秒程度の最終横転時間がかかる(
図18C)。このため、エアバッグ8a又はエアバッグ8bは車両が横転する際の挙動により乗員が右側から車外へ放出されようとする力を受け止め、乗員が車両1の外に放出されることを防止することができる。
【0070】
次に、フローチャートを用いて実施の形態4に係る制御部2の処理手順を説明する。
図19は実施の形態4に係る制御部2の処理手順を示したフローチャートである。ステップS11からステップS31の処理は上述の実施の形態3に係る制御部2の処理手順と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0071】
制御部2はステップS31を終了した後、車載機器11にて生成された横滑り情報を取得する(ステップS41)。制御部2は車載機器11内の角速度検出部11aにて検出された鉛直軸周りの角速度値の情報を取得する(ステップS42)。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS22)。制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上であった場合(ステップS22:YES)、処理をステップS23に移す。
【0072】
制御部2は車両1の前後方向の速度値が所定の速度閾値以上でなかった場合(ステップS22:NO)、制御部2は鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS32)。制御部2は鉛直方向の加速度値が所定の加速度閾値以上であった場合(ステップS32:YES)、処理をステップS23に移し、横転閾値を変更する。制御部2は鉛直方向の加速度が所定の加速度閾値以上でなかった場合(ステップS32:NO)、横滑り情報に基づいて車両1に横滑りが発生しているか否かを判定する(ステップS43)。
【0073】
制御部2は車両1に横滑りが発生していた場合(ステップS43:YES)、処理をステップS23に移し、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。制御部2は車両1に横滑りが発生していなかった場合(ステップS43:NO)、角速度値が所定の角速度閾値以上であるか否かを判定する(ステップS44)。所定の角速度閾値とは例えば、毎秒5度である。制御部2は角速度値が所定の角速度閾値以上であると判定した場合(ステップS44:YES)、処理をステップS23に移し、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。制御部2は角速度値が所定の角速度閾値以上でないと判定した場合(ステップS44:NO)、閾値変更処理を終了し、処理をステップS14に移す。
【0074】
本実施の形態によれば、制御部2は車両1に横滑りが発生していた場合、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。このことにより、乗員保護装置は車両1が横滑りした場合でも、横転により乗員が車両1の外に放出されることを防止できる。
【0075】
本実施の形態によれば、制御部2は角速度値が所定の角速度閾値以上であると判定した場合、横転閾値を所定の横転敏感閾値に変更する。このことにより、乗員保護装置は車両1がスピンした場合でも、横転により乗員が車両1の外に放出されることを防止できる。
【0076】
実施の形態5
以下本発明の実施の形態5をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下、特に説明する構成、作用以外の構成及び作用は実施の形態4と同等であり、簡潔のため記載を省略する。
図20は実施の形態5に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示すブロック図である。車両1は計時部16を備える。計時部16は現在の時点、例えば時刻を計時し、制御部2の要求に従って、計時結果を制御部2に出力する。
【0077】
エアバッグ8a又はエアバッグ8bは展開してから1〜6秒程度が経過した場合、ガスが抜けて、乗員が車外へ放出される力を受け止めることが難しくなる。このため、制御部2は閾値変更処理を行った後、計時部16が計時を開始する。制御部2は展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを計時部16が計時を開始してから所定の時間を経過した後に展開させる。所定の時間とは例えば3秒である。
【0078】
次に、フローチャートを用いて実施の形態5に係る制御部2の処理手順を説明する。
図21及び
図22は実施の形態5に係る制御部2の処理手順を示したフローチャートである。ステップS11からステップS44の処理は上述の実施の形態4に係る制御部2の処理手順と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0079】
制御部2はステップS15を終了した後、計時部16が計時を開始してから所定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS51)。制御部2は所定の時間を経過していないと判定した場合(ステップS51:NO)、所定の時間が経過するまで待機する。制御部2は所定の時間を経過したと判定した場合(ステップS51:YES)、ステップS16に処理を移し、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する。所定の時間とは例えば3秒である。
【0080】
なお、本実施の形態では制御部2は所定の時間を経過したと判定した場合、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bに制御信号を出力したが、これに限られるものではない。制御部2は乗員が車両1から放出される時間を予想した予想時間を算出し、算出された予想時間を経過したと判定した場合、制御信号をエアバッグ8a又はエアバッグ8bに出力してもよい。予想時間とは例えば、車両1の車幅距離を車幅方向の速度値で除算した時間である。車幅距離とは例えば、サイドウィンドウ4aからサイドウィンドウ4bの距離又はサイドウィンドウ5aからサイドウィンドウ5bの距離である。車幅方向の速度値は例えば、車幅方向の加速度値を所定の時間間隔で積分した値である。所定の時間間隔とは例えば、25ミリ秒である。
【0081】
本実施の形態によれば、制御部2は計時部16が計時を開始してから所定の時間を経過したと判定した場合、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する。このことにより、乗員保護装置はエアバッグ8a又はエアバッグ8bが十分な車外放出抑制効果を保った状態で乗員の保護を行うことができる。
【0082】
実施の形態6
以下本発明の実施の形態6をその実施の形態を示す図面に基づいて詳述する。以下、特に説明する構成、作用以外の構成及び作用は実施の形態5と同等であり、簡潔のため記載を省略する。
【0083】
図23は実施の形態6に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な平面図である。
図24は実施の形態6に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示す模式的な側断面図である。
図25は実施の形態6に係る乗員保護装置を備えた車両1の一構成例を示すブロック図である。
【0084】
車両1はさらに車両1の左側ドアに設けられた圧力検出部15a(出力部)及び車両1の右側ドアに設けられた圧力検出部15b(出力部)を備える。圧力検出部15aは左側ドアの圧力値を検出し、検出した圧力値を所定の周期で制御部2に出力する。圧力検出部15bは右側ドアの圧力値を検出し、検出した圧力値を所定の周期で制御部2に出力する。圧力検出部15a及び圧力検出部15bは例えば静電容量型圧力センサである。静電容量型圧力センサは固定電極及び固定電極に対向して配置された可動電極を有している。静電容量型圧力センサは可動電極が圧力で撓むことにより変化する静電容量を検出することにより圧力値を検出することができる。
【0085】
なお、圧力検出部15aは左側ドアのいずれか1つのみに設けられてもよい。この場合、圧力検出部15aは左側ドアの圧力値を検出し、検出した圧力値を所定の周期で制御部2に出力する。また、圧力検出部15bは右側ドアのいずれか1つのみに設けられてもよい。この場合、圧力検出部15bは右側ドアの圧力値を検出し、検出した圧力値を所定の周期で制御部2に出力する。
【0086】
記憶部3には予め圧力値についての閾値である片側圧力閾値及び両側圧力閾値が記憶されている。片側圧力閾値は、自動車又は軽自動車等の衝突体が側面から衝突し、衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを作動させるべき外力が加えられたときの圧力値である。
【0087】
両側圧力閾値は衝突体が側面から衝突し、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを作動させるべき外力が加えられたときの衝突側ドアの圧力値である。両側圧力閾値は時速50kmの被衝突体が車両1の側面から衝突した場合、衝突側ドアに生じる圧力値を車両1の乗員が外部へ放出される可能性が高い圧力値として設定されている。
【0088】
制御部2は検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は衝突された側面部にて検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であると判定する。制御部2は検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であると判定した場合、出力部の側面部に設けられたエアバッグを展開させる。
【0089】
次に、フローチャートを用いて実施の形態6に係る制御部2の処理手順を説明する。
図26及び
図27は実施の形態6に係る制御部2の処理手順を示したフローチャートである。制御部2は圧力検出部15a及び圧力検出部15bにて検出された圧力値を取得する(ステップS71)。
【0090】
制御部2は検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であるか否かを判定する(ステップS72)。具体的には制御部2は衝突された側面部のドアに設けられた圧力検出部15a又は圧力検出部15bにて検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であるか否かを判定する。制御部2は検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上でないと判定した場合(ステップS72:NO)、ステップS71に処理を戻し、新たに圧力値が取得されるまで待機する。制御部2は検出された圧力値が所定の片側圧力閾値以上であると判定した場合(ステップS72:YES)、衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開する(ステップS13)。具体的には制御部2は衝突された側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する。
【0091】
制御部2はステップS13の処理を終了した後、車速情報に基づいて、両側圧力閾値を変更するか否かを判定し(ステップS74)、制御部2は圧力検出部15a及び圧力検出部15bにて検出された圧力値を取得する(ステップS75)。検出された圧力値が所定の両側圧力閾値以上であるか否かを判定する(ステップS76)。具体的には制御部2は衝突された側面部に設けられた圧力検出部15a又は圧力検出部15bにて検出された圧力値は所定の両側圧力閾値以上であるか否かを判定する。
【0092】
制御部2は検出された圧力値が所定の両側圧力閾値以上でないと判定した場合(ステップS76:NO)、ステップS74に処理を移す。制御部2は検出された圧力値が所定の両側圧力閾値以上であると判定した場合(ステップS76:YES)、制御部2は計時部16が計時を開始してから所定の時間を経過したか否かを判定する(ステップS51)。制御部2は所定の時間を経過していないと判定した場合(ステップS51:NO)、所定の時間が経過するまで待機する。制御部2は所定の時間を経過したと判定した場合(ステップS51:YES)、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bに制御信号を出力し(ステップS16)、処理を終了する。
【0093】
図28は実施の形態6に係る閾値変更処理の処理手順を示したフローチャートである。ステップS21からステップS44の処理は上述の実施の形態5に係る制御部2の処理手順と同様であるので、簡潔のため説明を省略する。
【0094】
ステップS22、ステップS32、ステップS43及びステップS44がYESであった場合、両側圧力閾値を所定の圧力閾値に変更し(ステップS77)、閾値変更処理を終了し、ステップS75へ処理を移す。
【0095】
なお、実施の形態6に係る制御部2は片側圧力閾値及び両側圧力閾値を用いて圧力値の判定を行ったが、両側圧力閾値のみで圧力値の判定を行ってもよい。その場合、制御部2は両側のエアバッグ8a及びエアバッグ8bを同時に展開するよう指示する制御信号を出力するようにしてもよい。
【0096】
本実施の形態によれば、制御部2は検出された圧力値が所定の両側圧力閾値以上であると判定した場合、展開したエアバッグを設けた側面部に対する反対側の側面部に設けられたエアバッグ8a又はエアバッグ8bを展開するよう指示する制御信号を出力する。このため、圧力変化により、予防的に車両内の乗員を車外への放出から保護することができる。
【0097】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。