(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
  図1A及び1Bは、観察者102に面する再帰反射性物品100の1つの例示の実施形態を示す。再帰反射性物品100は、主面116に対して反対側にある構造化面114を集合的に形成する多数のキューブコーナー要素112を備える。また、再帰反射性層110は、オーバーレイ層118を備える。感圧性接着剤層130は、再帰反射性層110に隣接する。感圧性接着剤層130は、感圧性接着剤132と、1つ以上のバリア層134と、ライナー136と、を備える。バリア層134は十分な構造的一体性を有しており、構造化面114とバリア層134との間にある低屈折率層138への感圧性接着剤132の流入を防ぐ。バリア層134は、キューブコーナー要素112の先端に直接接触するか、これらから離隔されているか、これらに若干押し付けることができる。
 
【0013】
  バリア層134が存在する場合、感圧性接着剤130とキューブコーナー要素112との間に物理的な「バリア」を形成する。バリア層は、接着剤の粘弾性的性質が原因で再帰反射性物品の当初製造時に、又は徐々に感圧性によって立方体の先端又は表面が濡れないようにできる。感圧性接着剤130とキューブコーナー要素112との間に閉じ込められた層は、低屈折率層138である。したがって、低屈折率層は包囲されている。その上に保護層が付加される場合、低屈折率層は封入される。低屈折率層の封入は、低屈折率層の一体性を維持する、及び/又は保護する。バリア層が存在するために、低屈折率層138及び/又はバリア層134に隣接する構造化面114の部分は、入射光150を再帰反射できる。また、バリア層134は、感圧性接着剤130がキューブシートを湿潤させないようにできる。バリア層134と接触していない感圧性接着剤130はキューブコーナー要素に接着し、これにより再帰反射領域を効果的に封止して、光学活性領域又はセルを形成する。また、感圧性接着剤130は、再帰反射性構造体全体を一体的に保持し、これにより別個のシールフィルムと封止プロセスの必要性を排除する。幾つかの実施形態では、感圧性接着剤は、構造化面又はキューブコーナー要素と密着しているか、これらに直接隣接する。
 
【0014】
  図1Bに示すように、低屈折率層138に隣接するキューブコーナー要素112に入射する光線150は、観察者102の方向に再帰反射で戻される。このため、低屈折率層138を備える再帰反射性物品100の領域は、光学活性領域と呼ばれている。一方、低屈折率層138を備えない再帰反射性物品100の領域は、光学不活性領域と呼ばれている。これは、この領域が入射光を実質的に再帰反射しないからである。
 
【0015】
  低屈折率層138は、約1.30未満、約1.25未満、約1.2未満、約1.15未満、約1.10未満、又は約1.05未満の屈折率を有する材料を含む。例示の低屈折率材料には、空気及び低屈折率材料が挙げられる(例えば、低屈折率材料は、米国特許出願第61/324,249号(参照により本明細書に組み込まれる)に記載される)。
 
【0016】
  広くは、バリア層134では、感圧性接着剤がキューブコーナー要素112に接触しないようにする、又は低屈折率層138に流入したり、紛れ込んだりしないようにする任意の材料を使用できる。バリア層134に使用する例示の材料には、樹脂、高分子材料、染料、インク、ビニル、無機材料、UV硬化性ポリマー、顔料、粒子、及びビードが挙げられる。バリア層の寸法及び間隔は、様々であってよい。幾つかの実施形態では、バリア層は、再帰反射性シート上にパターンを形成してよい。幾つかの実施形態では、ユーザーが、シート上のパターンの視認性を低減することを望むかもしれない。広くは、例えば、文字、単語、英数字、記号、又は更には絵などのしるしなど任意の所望のパターンは、上記の方法の組み合わせで生成可能である。また、パターンは、連続的、非連続的、単調、S字状、任意の滑らかに変化する機能、又は縞であってよいか、縦方向、横方向、又は両方向に変化してもよい。パターンは、画像、ロゴ、又はテキストを形成でき、パターンはパターン付きコーティング及び/又は穿孔を含んでよい。幾つかの実施形態では、印刷領域及び/又は非印刷領域は、セキュリティ機構を形成できる。パターンとしては、例えば、不規則パターン、規則的パターン、格子、単語、図形、画像、線、及びセルを形成する交差区域を挙げることができる。
 
【0017】
  少なくとも幾つかの実施形態では、感圧性接着剤層は、第1の領域と、第2の領域と、を備える。第2の領域は、構造化面と直接接触しているか、密着している。第1及び第2の領域は感圧性接着剤層と再帰反射性層の構造化面との間に低屈折率層を形成し、分離するのに、十分に異なる特性を有している。幾つかの実施形態では、第2の領域は感圧性接着剤を含み、第1の領域は第2の領域とは組成が異なる。幾つかの実施形態では、第1の領域及び第2の領域は異なる高分子形態を有する。幾つかの実施形態では、第1の領域及び第2の領域は異なる流動性特性を有する。幾つかの実施形態では、第1の領域及び第2の領域は異なる粘弾性特性を有する。幾つかの実施形態では、第1の領域及び第2の領域は異なる接着性特性を有する。幾つかの実施形態では、再帰反射性物品は、パターンを形成する、複数の第2の領域を備える。幾つかの実施形態では、パターンは、不規則パターン、規則的パターン、格子、単語、図形、及び線のうちの1つである。
 
【0018】
  本開示の再帰反射性物品に用いる例示の感圧性接着剤には、架橋された粘着付与アクリル感圧性接着剤が挙げられる。天然ゴム又は合成ゴムと、樹脂、シリコーン、又は他の高分子系との配合物(接着剤を伴う、又は伴わない)など他の感圧性接着剤を使用できる。感圧性接着剤のPSTC(Pressure  Sensitive  Tape  Council)定義は、室温で永久的に粘着性であり、軽い圧力(指圧)で相変化(液体から固体)を起こさずに様々な表面に接着する接着剤である。
 
【0019】
  アクリル酸及びメタ(アクリル)酸エステル:アクリル酸エステルは、約65〜約99重量部の範囲、好ましくは約78〜約98重量部の範囲、より好ましくは約90〜約98重量部の範囲で存在する。有用なアクリル酸エステルは、非三級アルキルアルコールの第1の1官能性アクリレート又はメタクリレートエステル、4〜約12の炭素原子で構成されるアルキル基、及びこれらの混合物からなる群から選択される、少なくとも1つのモノマーを含む。かかるアクリレート又はメタクリレートエステルは、一般に、ホモポリマーとして約−25℃未満のガラス転移温度を有する。他のコモノマーに対してこのモノマーの量が多いと、低温でより粘着度の高いPSAが得られる。
 
【0020】
  好ましいアクリレート又はメタクリレートエステルモノマーには、n−ブチルアクリレート(BA)、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、アクリル酸イソオクチル(IOA)、イソオクチルメタクリレート、アクリル酸イソノニル、アクリル酸イソデシル、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
 
【0021】
  特に好ましいアクリレートには、アクリル酸イソオクチル、n−ブチルアクリレート、2−メチルブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
 
【0022】
  極性モノマー:低濃度(典型的には約1〜約10重量部)の極性モノマー(カルボン酸など)を使用して、感圧性接着剤の粘着力を増加できる。より高い濃度では、これらの極性モノマーは、粘着性の低下、ガラス転移温度の上昇、低温度における性能の低下をもたらす傾向にある。
 
【0023】
  有用な共重合性酸性モノマーには、エチレン系不飽和カルボン酸、エチレン系不飽和スルホン酸、及びエチレン系不飽和ホスホン酸からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。かかるモノマーの例には、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、β−カルボキシエチルアクリレート(.beta.-carboxyethyl acrylate)、スルホエチルメタクリレートなど、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。
 
【0024】
  他の有用な共重合性モノマーには、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−ビニルラクタム、及びN,N−ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートが挙げられるが、これらに限定されない。説明に役立つ実例には、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなど、及びこれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられるが、これらに限定されない。
 
【0025】
  非極性エチレン系不飽和モノマー:非極性エチレン系不飽和モノマーは、そのホモポリマーがFedors法(Polymer  Handbook,Bandrup  and  Immergutを参照)で測定した10.50以下の溶解度パラメーターと15℃以下のTgを有するモノマーである。このモノマーの非極性の性質は、接着剤の低エネルギー表面接着を向上させる傾向にある。これらの非極性エチレン系不飽和モノマーは、アルキル(メタ)アクリレート、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される。説明に役立つ実例には、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルアクリレート、3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸イソボルニル、イソボルニルメタクリレート、N−オクチルアクリルアミド、N−オクチルメタクリルアミド、又はこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。所望により、0〜25重量部の非極性エチレン系不飽和モノマーが添加されてもよい。
 
【0026】
  粘着付与剤:好ましい粘着付与剤には、テルペンフェノール樹脂、ロジン、ロジンエステル、水素添加ロジンのエステル、合成炭化水素樹脂、及びこれらの組み合わせが挙げられる。これらは、低エネルギー表面上で良好な接着特性をもたらす。水素化ロジンエステル及び水素添加C9芳香性樹脂は、高水準の「粘着性」、屋外耐久性、耐酸化性、及びアクリル系PSAの後架橋での限定的な干渉など性能上の利点のために、最も好ましい粘着付与剤である。
 
【0027】
  粘着付与剤は、非三級アルキルアルコール、極性モノマー、及び非極性エチレン系不飽和モノマーの1官能性アクリレート又はメタクリレートエステル100部あたり約1〜約65部の濃度で添加して所望の「粘着性」を達成してよい。好ましくは、この粘着付与剤は約65〜約100℃の軟化点を有する。しかし、粘着付与剤を添加すると、剪断力又は粘着力の低下、及びアクリル系PSAのTgの上昇がもたらされる場合がある。これは、低温性能にとって望ましくない。
 
【0028】
  架橋剤:アクリル系感圧性接着剤の剪断力又は粘着力を増加させるために、通常、架橋添加剤をアクリル系PSAに組み込む。主に2種類の架橋添加剤が一般に使用される。第1の架橋添加剤は、多官能性アジリジンなどの熱架橋添加剤である。1つの例としては、本明細書で「ビスアミド」と呼ばれる1,1’−(1,3−フェニレンジカルボニル)−ビス−(2−メチルアジリジン)(CAS番号7652−64−4)が挙げられる。このような化学的架橋剤は、重合後に溶剤系PSAに添加して、コーティングされた接着剤のオーブン乾燥中に、熱によって活性化することができる。
 
【0029】
  他の実施形態では、フリーラジカルによって架橋反応を起こす化学架橋剤が使用され得る。例えば、過酸化物のような試薬は、フリーラジカル供給源として機能する。十分に加熱した場合、これらの前駆体は、ポリマーの架橋反応を生じさせるラジカルを発生する。一般的なフリーラジカル生成試薬は、過酸化ベンゾイルである。フリーラジカル発生剤は少量のみ必要であるが、架橋反応を達成するためには、一般にビスアミド試薬に必要とされる温度よりも高い温度を必要とする。
 
【0030】
  第2の種類の化学架橋剤は、高強度の紫外線(UV)光によって活性化される感光性架橋剤である。ホットメルトアクリル系PSAに使用される2種類の一般的な感光性架橋剤は、ベンゾフェノンと4−アクリルオキシベンゾフェノンであり、これらはPSAポリマー中に共重合できる。溶液ポリマーに後から添加し、紫外線によって活性化することができる別の光架橋剤は、トリアジン、例えば、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(4−メトキシフェニル)−s−トリアジンである。これらの架橋剤は、中圧水銀ランプ又はUVブラックライトなどの人工光源から発生する紫外線によって活性化する。
 
【0031】
  加水分解可能で、フリーラジカル共重合が可能な架橋剤、例えば、メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(Union  Carbide  Chemicals  and  Plastics  Co.から入手可能なSILANE(商標)A−174)、ビニルジメチルエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリフェノキシシランなどを含むが、これに限定されないモノエチレン系不飽和モノ、ジ、及び、トリアルコキシシラン化合物もまた有用な架橋剤である。
 
【0032】
  架橋剤は、典型的に、100重量部のアクリル酸又は(メタ)アクリル酸エステル、極性モノマー、及び非極性エチレン系不飽和モノマーに基づいて0〜約1重量部存在する。
 
【0033】
  熱架橋剤、湿気架橋、又は感光性架橋剤に加えて、架橋は、γ放射線又は電子ビーム放射線などの高エネルギー電磁放射線を使用して達成されてもよい。この場合、架橋剤は必要とされない場合がある。
 
【0034】
  他の添加剤:アクリル系感圧性接着剤は優れた酸化安定性を有するため、一般に、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの添加剤は不要である。加工中の熱安定性を増加させるために、ホットメルトアクリル系PSAに少量の熱安定剤を使用することがある。
 
【0035】
  可塑剤:所望により、接着剤の剥離性と低温性能を最適化するために、低濃度の可塑剤(例えば、約10重量部未満)を粘着付与剤と併用してTgを調整してよい。本発明の接着剤に添加できる可塑剤は、多種多様の市販材料から選択され得る。いずれの場合においても、添加した可塑剤は、処方で用いられる粘着付与アクリル系PSAに対応できる必要がある。代表的な可塑剤には、ポリオキシエチレンアリールエーテル、ジアルキルアジパート、2−エチルへキシルジフェニルホスフェート、t−ブチルフェニルジフェニルホスフェート、ジ(2−エチルへキシル)アジパート、トルエンスルホンアミド、ジプロピレングリコールジベンゾエート、ポリエチレングリコールジベンゾエート、ポリオキシプロピレンアリールエーテル、ジブトキシエトキシエチルホルマール、及びジブトキシエトキシエチルアジパートが挙げられる。
 
【0036】
  各種の熱硬化性ポリマー又は熱可塑性ポリマーで構成される各種の高分子フィルム基材は、オーバーレイ層及び本体層として用いるのに好適である。本体層は、単層フィルム又は多層フィルムであってよい。可撓性の再帰反射性物品の本体層フィルムとして用いることができるポリマーの説明に役立つ実例には、(1)ポリ(クロロトリフルオロエチレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ペルフルオロ(アルキル)ビニルエーテル)、ポリ(フッ化ビニリデン−コ−ヘキサフルオロプロピレン)などのフッ素化ポリマー類;(2)SURLYN−8920ブランド及びSURLYN−9910ブランド(E.I.duPont  Nemours(Wilmington,Del)から入手可能)などアイノマー性エチレンコポリマーのナトリウム又は亜鉛イオンを有したポリ(エチレン−コ−メタクリル酸);(3)低密度ポリエチレン;直鎖低密度ポリエチレン;及び極めて低密度のポリエチレンなどの低密度ポリエチレン類;可塑化ポリ(塩化ビニル)などの可塑化ハロゲン化ビニルポリマー類;(4)ポリ(エチレン−コ−アクリル酸)「EAA」、ポリ(エチレン−コ−メタクリル酸)「EMA」、ポリ(エチレン−コ−マレイン酸)、及びポリ(エチレン−コ−フマル酸)などの酸官能性ポリマーを含有するポリエチレンコポリマー類;アルキル基がメチル、エチル、プロピルなど、又はCH3(CH2)n−であってnは0〜12である、ポリ(エチレン−コ−アクリレート)などのアクリル官能性ポリマー類、及びポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)「EVA」;並びに(5)(例えば)脂肪族ポリウレタン類が挙げられる。本体層は、好ましくはオレフィン性高分子材料であり、典型的には、2〜8の炭素原子を有するアルキレンを少なくとも50重量%含み、最も一般的にはエチレン及びプロピレンが用いられる。他の本体層には、例えば、ポリ(エチレンナフタレート)ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、(例えば、ポリメチルメタクリレート、即ち「PMMA」)、ポリオレフィン類(polyolefms)(例えば、ポリプロピレン、即ち「PP」)、ポリエステル類(例えば、ポリエチレンテレフタレート、即ち「PET」)、ポリアミド類、ポリイミド類、フェノール樹脂類、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、ポリスチレン、スチレン−アクリロニトリルコポリマー類、環状オレフィンコポリマー類、エポキシ類などが挙げられる。
 
【0037】
  本開示の再帰反射性物品に用いられる例示のライナーには、紙、プラスチックなど高分子フィルムなどのシリコーンコート材料が挙げられる。ライナー基材は、単層又は多層であってよい。具体例には、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタレート)、ポリエチレン、ポリプロピレン(キャストポリプロピレン及び二軸延伸ポリプロピレンなど)、及び紙(クレーコート紙、ポリエチレンコートポリ(エチレンテレフタレート)フィルム)が挙げられる。
 
【0038】
  再帰反射性物品100など幾つかの実施形態では、キューブコーナー要素112は、四面体又は角錐の形状である。任意の2つのファセットの間の2面角は、用途において望ましい特性に応じて異なってよい。(
図1A及び1Bに示す実施形態など)幾つかの実施形態では、任意の2つのファセットの間の2面角は90度である。かかる実施形態では、ファセットは(部屋の隅部のように)実質的に互いに垂直であり、光学素子はキューブコーナーと呼ばれることがある。あるいは、例えば、米国特許第4,775,219号(この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されるように隣接するファセットの間の2面角は、90°から逸脱してもよい。あるいは、再帰反射性物品内の光学素子は、切頭キューブコーナーであってよい。光学素子は、完全な立方体、切頭立方体、又は例えば米国特許第7,422,334号(この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の通り好ましい形状(PG)の立方体であってよい。各再帰反射光学素子は、ファセットと等しい角を成す対称軸を備える。幾つかの実施形態では、対称軸は底面又は前面に対して垂直である。幾つかの実施形態では、対称軸は底面又は前面に対して垂直ではなく、頂点又は光学素子は、例えば米国特許第4,588,258号(この開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の通り傾いている。
図1A及び1Bの再帰反射性層110は、オーバーレイ層118を備えるが、ランド層又はランド部を備えないものとして示す。ランド層は、キューブコーナー要素と同一の広がりを持つ材料の連続層として定義され、同一材料で構成されてよい。この構造体は、可撓性実施形態で望ましい場合がある。当業者は、再帰反射性層110がランド層又はランド部を備え得ることを理解するであろう。
 
【0039】
  図2に概略的に示すように、本開示の再帰反射性物品を少なくとも幾つか製造する方法の1つは、感圧性接着剤材料132上にバリア層材料134を配置してから、その結果として生じた感圧性接着剤層130を再帰反射性層110に積層させる工程を含む。感圧性接着剤層130は、以下の例示の方法を含むが、これらに限定されない各種の方法で形成できる。1つの例示の実施形態では、バリア層を形成する材料は、感圧性接着剤上に印刷される。印刷方法は、例えばインクジェットプリンタを使用する印刷など非接触型の方法であってよい。印刷方法は、例えばフレキソ印刷など接触型の印刷方法であってよい。別の例示の実施形態では、バリア層を形成する材料は、例えばインクジェット又はスクリーン印刷方法を使用して平らな剥離面上に印刷されて、続いて平らな剥離面から感圧性接着剤上に移動される。別の例示の実施形態では、バリア層を形成する材料は、ミクロ構造接着面(例えば、3M  Company(St.Paul,MN)製のComplyライナー)上にフラッドコーティングされる。バリア層材料は、続いて、例えば積層によってミクロ構造ライナーから感圧性接着剤へと移動される。次に再帰反射性物品は、所望により、基材(例えば、アルミニウム基材)に接着接合され、例えば、ナンバープレート又は標識を形成してよい。
 
【0040】
  図3及び5は、幾つかの別の例示の本開示の再帰反射性物品を示す。具体的には、
図3及び5は、構造化封止層を備える再帰反射性物品を示す。幾つかの実施形態では、封止層は、例えば、少なくとも1つの熱可塑性ポリマー、架橋性材料、及び放射線硬化性材料を含む。幾つかの実施形態では、封止層は、例えば熱活性接着剤、及び/又は感圧性接着剤など接着剤を含む。これらの構造体は、再帰反射性層の裏面に積層されたエンボス加工された封止層、複製された封止層、又は同様に形成された封止層を有することを特徴とする。封止層は、感圧性接着剤、熱活性接着剤、又は複製、熱エンボス加工、押出成形複製などを使用して形成され得る他の材料であってよい。
 
【0041】
  図3は、観察者302に面する再帰反射性物品300の1つの例示の実施形態の概略図である。再帰反射性物品300は、主面316に対して反対側にある構造化面314を集合的に形成する多数のキューブコーナー要素312を備える。再帰反射性層310は、オーバーレイ層318も備える。再帰反射性層310は、ランド層又はランド部を備えない可撓性基材として示すが、上記のように、再帰反射性層310は、ランド層及び/又は任意の種類の光学素子を備えてもよい。構造化接着剤層330は、再帰反射性層310に隣接する。構造化接着剤層330は、例えば六角形配列などの閉鎖パターンの接着剤の隆起領域(周囲領域に対して隆起した領域)を備える。構造化接着剤層は、構造化接着性ライナー340と、ホットメルト接着剤層350と、を備える。構造化接着剤層330が再帰反射性層310に接合されると、構造化面314の再帰反射性を保持する低屈折率層338が画定される。更に具体的には、低屈折率層338が存在するために、低屈折率層338に隣接する構造化面314の部分は、入射光150を再帰反射できる。したがって、低屈折率層338に隣接するキューブコーナー要素312を備える再帰反射性物品300の部分は、入射光を再帰反射するので、光学的に活性である。その一方、キューブコーナー要素312に隣接する構造化接着剤層330の部分を有する再帰反射性物品300の部分は、入射光を実質的に再帰反射しないので、光学不活性領域である。構造化面314と接触していない構造化接着剤層330の部分は、キューブコーナー要素312に接着し、これにより再帰反射領域を効果的に封止して、光学活性領域又はセルを形成する。また、構造化接着剤層330は、再帰反射性構造体全体を一体的に保持し、これにより別個の封止層と、封止プロセスの必要性を排除する。
図3に示す実施形態では、再帰反射性物品300は、アルミニウム基材360に接着接合されてナンバープレートを形成する。
 
【0042】
  構造化接着剤層は、幾つかの異なる方法で形成できる。構造化接着剤層は、例えば、同時に形成された多層を備えてよいか、繰り返されるコーティング工程を経て構築されてよい。1つの例示の方法は、所望によりキャリアウェブ上で接着剤のフラットフィルムを使用して開始する。フラットロールと所要のレリーフパターンを備えたロールとの間に接着剤を挟む。温度と圧力を加えると、レリーフパターンが接着剤に転写される。第2の例示の方法は、鋳造可能な接着剤又は押出成形可能な接着剤を要する。接着剤のフィルムは、所要のレリーフパターンを備えるロール状に材料を押し出して作製する。ロールから接着剤を取り外すと、接着剤は、ロールに付随するレリーフパターンを保持する。次に、構造化接着剤層を再帰反射性層に積層させる。
 
【0043】
  別の実施形態では、構造化接着剤層は、例えば、接着剤ではないが、構造体の先端に接着剤でコーティングを施した材料を含んでよい。
 
【0044】
  かかる再帰反射性物品400の例示の作製方法は、例えばポリエチレンなど非接着剤のフラットフィルムで開始する。フラットロールと所要のレリーフパターンを備えたロールとの間にポリエチレンフィルムを挟む。温度と圧力を加えると、レリーフパターンがポリエチレンフィルムに転写される。次に、例えば、キスコーティング又は他の好適な方法を使用して、複製フィルムの先端に接着剤を移動させる。次に、接着剤で被覆された構造化ライナーを再帰反射体に積層させる。
 
【0045】
  上記の製造方法のいずれを使用しても、次に2つのフラットロールで構成されるニップ内で2枚のフィルムを同時に挟んで、構造化接着剤層を再帰反射性層に接合する。温度と圧力を加えると、フィルムは接着接合され、キューブコーナー要素の再帰反射性を保持する空気ポケットをもたらす。
 
【0046】
  所望により、第1の領域又は接着剤の非隆起部分は、加工中又は使用中の、キューブコーナー要素の先端に対する谷部の底による接地の悪影響を最小化することに加えて、構造化接着剤層のシールレッグのクリープを低減するように機能する材料を使用してパターン化できる。
図5は、構造化接着剤層の底部までと限定されているが、バリア層580が再帰反射性層310へのシールレッグの接合を実質的に低減しない限りは谷部の任意の位置にあってよい、再帰反射性物品500を示す。
 
【0047】
  図3〜5の構造化接着剤層は、例えば酸/アクリレート又は無水/アクリレート修飾EVA(例えば、米国特許第7,611,251号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載の通り、例えばBynel  3101など)など、例えば、熱可塑性ポリマー、熱活性接着剤を含んでよい。
図3〜5の構造化接着剤層は、例えば、アクリル酸PSA、又はコーナーキューブ素子に接着する接着特性を有する他の任意のエンボス加工可能な材料を含んでよい。シールフィルム層と(例えばキューブコーナーの)ミクロ構造化層との境界面は、通常、表面処理を促進する接着性を備える。各種の接着促進表面処理が既知であるが、例えば、機械的粗化、化学処理(空気又は窒素などの不活性ガス)、コロナ処理(米国特許出願公開第2006/0003178A1号に記載の通りなど)、プラズマ処理、火炎処理、及び化学線が挙げられる。
 
【0048】
  再帰反射係数R
A(本開示の再帰反射性物品の再帰反射性と呼ぶこともある)は、用途で所望の特性に応じて変更できる。幾つかの実施形態では、R
Aは、0度及び90度の向き角においてASTM  D4956−07e1標準を満たす。幾つかの実施形態では、0.2度の観測角及び+5度の入射角でASTM  E−810試験方法又はCIE  54.2;2001試験方法に従って測定した場合、R
Aは、約5cd/(lux・m
2)〜約1500cd/(lux・m
2)の範囲である。再帰反射性物品が交通標識、視線誘導標、又はバリケードとして用いられる実施形態など幾つかの実施形態では、0.2度の観測角及び+5度の入射角でASTM  E−810試験方法又はCIE  54.2;2001試験方法に従って測定した場合、R
Aは、少なくとも約330cd/(lux・m
2)又は少なくとも約500cd/(lux・m
2)、又は少なくとも約700cd/(lux・m
2)である。自動車関連の用途など幾つかの実施形態では、0.2度の観測角及び+5度の入射角でASTM  E−810試験方法又はCIE  54.2;2001試験方法に従って測定した場合、R
Aは、少なくとも約60cd/(lux・m
2)、又は少なくとも約80cd/(lux・m
2)、又は少なくとも約100cd/(lux・m
2)である。
 
【0049】
  本願のシートのこれらの固有の光学特性を測定する別の方法には、分数再帰反射率R
Tの測定が挙げられる。分数再帰反射率(R
T)は、再帰反射を特徴付けるもう1つの有用なパラメーターである。R
T(ASTM  E808−01に詳細が記載されている)は、指定された最大値α
max未満の観測角で受光される、再帰反射体を照射する単向性の光束の分数である。したがって、R
Tは、所定の最大観測角α
max内で反射される光の部分を表す。ASTM  E808−01に矛盾しない方法で、R
Tは以下の通り計算できる。
 
【0051】
  ここで、αは観測角であり(ラジアンで表される)、γは提示角であり(これもラジアンで表される)、βは入射角であり、R
aは、カンデラ/(ルクス/平方メートル)の単位で表される、従来の再帰反射係数である。この用途では、R
Tを10進数で表される分数再帰反射率と呼び、%R
Tをパーセンテージで表される分数再帰反射率と呼ぶ。即ち、%R
T=R
T×100%である。いずれにしても、分数再帰反射率では単位を使用しない。再帰反射性シートの観測傾斜度を理解しやすくするグラフとして、最大観測角α
maxに応じて分数再帰反射率をプロットしてよい。かかるプロットは、本明細書においてR
T−α
max曲線、又は%R
T−α
max曲線と呼ばれている。
 
【0052】
  再帰反射を特徴付ける、もう1つの有用なパラメーターは、R
T勾配である。これは、最大観測角のわずかな変化、即ち増分Δα
maxに対するR
Tの変化として定義できる。関連パラメーターである%R
T勾配は、最大観測角のわずかな変化Δα
maxに対する%R
Tの変化として定義できる。したがって、R
T勾配(又は%R
T勾配)は、R
T−α
max曲線(又は%R
T−α
max曲線)の勾配、即ち変化率を表す。別個のデータ点に関して、これらの数量は、2つの異なる最大観測角α
maxに対してR
T(又は%R
T)の差異を計算し、この差異を最大観測角の増分Δα
max(ラジアンで表される)で除することにより予測できる。Δα
maxがラジアンで表される場合、R
T勾配(又は%R
T勾配)は1ラジアンあたりの変化率である。あるいは、本明細書で使用されるように、Δα
maxが度で表される場合、R
T勾配(又は%R
T勾配)は、観測角1度あたりの変化率である。
 
【0053】
  R
Tの上記の等式は、再帰反射係数R
Aと、すべての提示角(γ=−π〜+π)及び観測角の範囲(α=0〜α
max)における他の係数と、の統合を含む。別個のデータ点を処理する場合、この統合は、増分Δα
maxで区切られた別個の観測角α
max値(0.1度)で測定されたR
Aを使用して実行できる。
 
【0054】
  本開示の少なくとも幾つかの実施形態では、構造化面は、入射角−4度の入射可視光線に対して約5%以上、8%以上、10%以上、12%以上、15%以上の全光反射を示す。本開示の少なくとも幾つかの実施形態では、再帰反射性物品の構造化面は、観測角0.2度及び入射角−4度に対して約40cd/(lux・m2)以上、50cd/(lux・m2)以上、60cd/(lux・m2)以上、70cd/(lux・m2)以上、及び80cd/(lux・m2)以上の再帰反射係数RAを示す。
 
【0055】
  バリア層の材料、寸法、及び/又は間隔を適切に選択すれば、本開示の再帰反射性物品は、封止層を備える従来の再帰反射性物品で実現できるよりも均一の外観を有する。更に、本開示の再帰反射性物品は、封止層を備えたり使用したりする必要がないため、コストを削減する。
 
【0056】
  例えば、
図3及び5に示す種類の封止構造体を含む実施形態は、幾つかの更なる特有の利点を有する。例えば、再帰反射性物品又は構造体の表面に印刷される図柄又はデザインの審美性に悪影響を与えないように、シールレッグを十分に小型化できる。更に、これらの封止方法は露出した再帰反射性層からの再帰反射光の角度分布を実質的に変更しない。また、これらの方法では、任意の形状及び色のシールレッグを作製できる。結果的に、モアレ除去効果及び/又はセキュリティ機構を付与することに加えて、白色の外観を備えた再帰反射性物品を形成できる。最後に、蒸着コーティングプロセスが工程から除かれるため、製造プロセスが簡素化される。
 
【0057】
  更に、本開示の再帰反射性物品は、ビード型シートと比較して向上した性能を有する。プリズムシートは、ガラスビードベースのシートと比較して、広くはより高いパーセンテージの入射光を光源の方向に再帰反射で戻すことが既知である(例えば、「Driver−Focused  Design  of  Retroreflective  Sheeting  For  Traffic  Signs」,Kenneth  Smith,87th  Annual  Meeting  of  Transportation  Research  Board,January  13〜17,2008,Washington,D.C.の
図2及び3を参照)。観測角に対して再帰反射光が適切に配置されると、その結果として優れた輝度と性能を備える製品がもたらされる。
 
【0058】
  マイクロシールされたセルの形状、外形、寸法、及び構造は、シート全体で均一であっても、統制された方法で異なってもよい。寸法、外形、及びセル幅などのセル形状の変化は、近距離(20フィート(6.1m)未満、好ましくは5フィート(1.5m)未満)における外観に意図的に若干の変化をもたらすために用いることができる。かかる変化は、シート内に不規則に分布し得る欠陥(汚れ、コーティングの傷など)、あるいは工具又は製品内の周期的構造から生じ得る欠陥(たとえば、スケールアップ、溶接線)を時々隠す効果を有することができる。
 
【0059】
  マイクロシールされたプリズムシートは、ナンバープレート及び図形などの用途において特に好適である。ガラスビードシートの代わりにプリズムシートを使用すると、著しく低下した製造コスト、サイクル時間の短縮、並びに特に溶媒及びCO
2など無駄の排除などの利益をもたらす。更に、プリズム構造体は、ガラスビード再帰反射体と比較して、著しく増加した光を戻す。また、適切に設計すれば、この光をナンバープレートにとって特に重要な観測角、例えば1.0〜4.0度の範囲で優先的に配置できる。最終的には、マイクロシールされたシートは、鮮やかな白色度とこれらの製品用途で必要な近視距離における均一の外観をもたらす。
 
【0060】
  シールセルは、セルのサイズ寸法及びシールセルのレッグ幅又は線幅で特徴付けることができる。3M  HIP及び3M可撓性プリズム製品のセル寸法は、それぞれ約0.143インチ(0.363cm)及び0.195インチ(0.495cm)である。同一試料のシールレッグ幅は、それぞれ約0.018インチ(0.046cm)及び0.025インチ(0.064cm)である。特徴的なセル寸法を特徴付ける別の方法は、周囲長でセル面積を除することである。この特徴的なセル寸法D
cは、様々なセル形状を比較する際に有用なことがある。これらの比較的大型のシールセルの寸法は、通常使用される用途にとって完全に好適である。しかし、すぐ近く(例えば、数フィートの距離又は手で持った場合又はオフィスでのデモ)で見ると、これらのセル寸法を有する再帰反射性シートの非均一な外観は明らかである。しかしながら、この再帰反射性シートが用いられる実際の距離は、ずっと大きい。例えば、右肩取り付けの標識では、標識の限界距離(初回及び最終確認距離、標識の配置及び障害物及び視認性などの要因に基づく)は約50〜150メートルである。これらの限界距離は、運転者が幹線道路の標識から実際に情報を取得する領域を表す。視力閾値に基づいて考えると、通常、これらの限界距離では個別のシールセルを視認できない。
 
【0061】
  1フィート(0.3m)の距離では、人間の目の通常の視力は、約0.0035インチ(88.9マイクロメートル)である。つまり、すべて約89マイクロメートル幅の黒線と白線とが交互に示される場合、ほとんどの人々には濃淡のない灰色の塊に見える(例えば、http://www.ndted.org/EducationResources/CommunityCollege/PenetrantTest/Introduction/visualacuity.htmを参照)。あるいは、20フィート(6.1m)の距離で1分角(1インチ(0.159cm)の約1/16)離れた2点を見分けるために必要な視力は、20/20視力である(例えば、http://en.wikipedia.org/wiki/Visual_acuity#Visual_acuity_expressionを参照)。したがって、概算の予想最小視認距離である約2フィート(0.61m)では、約180マイクロメートル未満の任意の機構を分解できない。このレベル未満の別個の機構寸法を備えるシートは、人間の目に均一に見えるであろう。
 
【0062】
  ナンバープレートに用いられる英数字は、多くの道路標識用に比べて比較的小さい。例えば、約2.75インチ(6.99cm)の文字高さ及び0.35インチ(0.89cm)の線幅(英数字の厚さ)は米国で一般的である。同様に、約3.0インチ(7.6cm)の文字高さ及び0.45インチ(1.14cm)の線幅は米国で一般的である。上記のように、理想的な条件下における白地上の黒色の視力の限界は、1フィートあたり約0.0035インチ(0.3mあたり0.0089cm)の距離である。したがって、米国のプレート上の線幅が約0.35インチ(0.89cm)であれば、これらを視認できる最大距離は約100フィート(30.5m)である。英数字と背景とのコントラスト比は、吸塵又はグラフィックデザイン(白地の黒色文字から離れる)などの要因が原因で減少し得る。かかる状況では、プレートを読み取る最大距離は、更に減少する。暗い照明、走行中の車両、悪天候、及び視界不良など実世界変動要素によって、最大視認距離は、更に、かつ著しく減少され得る。したがって、ナンバープレート市場では、特に、約50〜125フィート(15.2〜38.1メートル)のナンバープレートの限界距離範囲について調査することが一般的である。ナンバープレートにとって特に重要な観測角は、
図7A及び7Bにプロットする約1.0〜約4.0度の範囲である。SUVや大型トラックなど大型の車両では、標準的なセダンと比較して、運転者の目は、更にヘッドライトから離れる。したがって、同一シナリオの大型車両では、観測角は更に大きくなる。
 
【0063】
  例示の再帰反射性物品には、例えば、再帰反射性シート、再帰反射性標識(例えば、交通標識、街路標識、幹線道路の標識、道路標識などを含む)、ナンバープレート、視線誘導標、バリケード、個人用安全製品、グラフィックシート、安全ベスト、車両用グラフィック、及びディスプレイ看板などが挙げられる。
 
【0064】
  以下の実施例は、再帰反射性物品の各種の実施例の幾つかの例示の構造体及び本開示に記載の再帰反射性物品の製造方法について説明する。以下の実施例は、例示のためのものであり、本開示の範囲の制約を意図するものではない。
 
【実施例】
【0065】
  再帰反射性層の調製:
  約53インチ(134.6cm)幅、0.05mm(0.002インチ)厚のコロナ処理を施したポリエチレンテレフタレートキャリア上に、0.01cm(4ミル)のフィルムとしてエチレンアクリル酸(EAA)(Dow  Company(Midland,MI)から商品名「Primacor  3440」で市販されている)をキャストしてオーバーレイフィルムを作製した。C.W.Brabender  Instruments  Inc.(South  Hackensack,N.J.)から入手可能な1.9cm(3/4インチ)の単軸スクリュー押出成形機にEAAのペレットを送り込んだ。押出成形機の温度特性は、140℃(284°F)〜175℃(347°F)であり、その結果、溶解温度は約175℃(347°F)であった。押出成形機から排出された溶解樹脂として水平ダイ(Extrusion  Dies  Industries  LLC(Chippewa  Falls,WI)から商品名「Ultraflex−40」で市販されている)を通過させ、上記のPETキャリア上にキャストした。PETキャリアは、約36メートル/分(120フィート/分)の速度で移動した。PETキャリア上の結果として生じた溶解オーバーレイフィルムを、ゴム製ロールと冷却した鋼鉄製バックアップロールとの間に走らせ、溶解樹脂を層に凝固させた。EAA表面は、1.5J/cm
2のエネルギーでコロナ処理を施された。
【0066】
  キューブコーナー構造体は、81.3マイクロメートル(0.0032インチ)のピッチ、即ちプライマリ溝間隔を有する3組の交差溝を有した。交差溝は、61度、61度、58度の夾角を有する、キューブコーナーの底面三角形を形成し、37.6マイクロメートル(0.00148インチ)の高さのキューブコーナー要素をもたらす。プライマリ溝間隔は、底面三角形の2つの61度の底角を形成する溝の間の溝間隔として定義する。
【0067】
  キューブコーナーミクロ構造体は、25重量%のビスフェノールAエポキシアクリレート(Cytek(Woodland  Park,NJ)から商品名「Ebecryl  3720」で市販されている)、12重量%のジメチルアミノエチルアクリレート(「DMAEA」)、38重量%のTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)、及び25重量%の1,6  HDDA(ヘキサンジオールジアクリレート)を混合して形成した樹脂組成物を使用して調製した。この処方は、0.5pphのTPO(2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド)光開始剤を有した。
【0068】
  77℃(170°F)に加熱した金属製工具上に、室温で25fpm(7.6m/分)の速度で樹脂組成物をキャストした。樹脂組成物は、工具上のエンボス加工パターンの空洞を充填し、工具のランド領域の樹脂量を最小化するように設定された間隔を有するゴム製ニップローラーを用いて、工具内のキューブコーナーミクロ構造体の空洞を充填した。再帰反射性層は、コロナ処理を施したEAAフィルム/PETキャリアと樹脂のキューブコーナーミクロ構造体を接触させて作製した。キューブコーナーミクロ構造体樹脂は、600W/インチ(236W/cm)に設定した12個のFusion  D  UVランプ(FUSION  Systems(Rockville,MD)から入手可能)を備える工具上でPETキャリア/EAAフィルムを介して硬化した。UVランプの前で干渉フィルターを使用して、赤外線による構造体の加熱を最小化した。硬化プロセス及び工具からの再帰反射性層の取り外しの完了後に、50%で作動するFusion  D  UVランプでキューブコーナーミクロ構造体を照射し、UV照射後硬化をもたらす。127℃(260°F)に設定したオーブンを再帰反射性層に通過させ、フィルム内の応力を緩和させた。
【0069】
  (実施例1〜15):
  構造化層は、基材層上に構造体を作製して調製した。幾つかの実施形態では、構造体は、基材層上にバリア材料(バリア層に用いられる材料)を選択的に塗布して(例えば、パターン印刷、パターンコーティング)作製した。あるいは、バリア材料を剥離層上に塗布し、次にバリア材料を含有する剥離層を基材層に積層させた。幾つかの実施形態では、構造化層は、工具を使用して基材層上にパターンを付与して調製した。幾つかの実施形態では、基材層は接着剤層である。再帰反射性光学構造体は、構造化層を再帰反射性層に積層させて調製した。バリア材料はキューブコーナーミクロ構造体に接触していた。
【0070】
  比較例A1及びA2:
  再帰反射性層は、異なるロットの材料を使用したことを除いて、上記の通り調製した。
【0071】
  (実施例1〜5):
  米国特許第5,804,610号(Hamer)(参照により本明細書に組み込まれる)の記載の通り、放射線重合性の感圧性接着剤(PSA)を調製した。PSA組成物は、95重量部のアクリル酸イソオクチル(IOA)、5重量部のアクリル酸(AA)、0.15重量部のIrgacure  651(Ciba  Corporation、現BASF  Company(NJ)から市販されている)、0.10重量部の4−アクリロイル−オキシ−ベンゾフェノン(ABP)、005重量部のチオグリコール酸イソオクチル(IOTG)、及び0.4重量部のIrganox  1076(Ciba  Corporationから市販されている)を混合して作製した。PSA組成物は、0.0635mm厚のエチレンビニルアセテートコポリマーフィルム(Pliant  Corporation(Dallas,TX)から商品名「VA−24」で市販されている)で作製した、約10センチメートル×5センチメートルの寸法の熱密封した容器に入れた。次に、PSA組成物を重合させた。重合後、PSA組成物は、10%のTiO
2色素と化合し、米国特許第5,804,610号に一般に記載される通り、約27グレイン/4インチ×6インチ(11.3mg/cm
2)試料の厚さでシリコーン剥離ライナー上にフィルムとしてキャストする。次に、PSAフィルムは放射線架橋工程を施される。
【0072】
  バリア材料は、UVインクジェットプリンタ(Mimaki(Suwanee,GA)から商品名「Mimaki  JF−1631」で市販されている)を使用してPSAフィルム上に選択的に印刷する。バリア材料として、黄色のインクジェットインク(Mimakiから市販されている)を使用した。プリンタは、8回のパスで単方向印刷を実行した。ランプは高に設定し、解像度は600×600dpi(236×236ドット/cm)だった。インクレベルは、100%又は300%のインクレイダウンに設定した。
図6に概略的に示すように、各ドットが平行四辺形の頂点に中心を置く、菱形平行四辺形形状に配置されたドットを含む印刷パターンを使用した。ドットの半径は400〜600μmの範囲であり、水平に隣接するドットの中心間距離は「S」(ピッチ)であり、垂直に隣接するドットの中心間距離は「S」/2であった。「S」は、1418〜2127μmの範囲であった。印刷パターンの幅は、ピッチ値から2Rを減じて計算した。被覆面積(%面積)は、印刷面積及び非印刷面積の相対量に基づいて計算した。印刷接着剤層1〜5の作製に用いたパターンの詳細を以下の表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
  再帰反射光学構造体(実施例1〜5)は、圧力を40psi(276kPa)に設定したハンドスクイーズロールラミネーター(hand squeeze roll laminator)を使用して印刷接着剤層1〜5を再帰反射性層に積層させて調製した。バリア材料は、再帰反射性層のキューブコーナーミクロ構造体に接触していた。
【0075】
  実施例1〜5に記載の通り調製した試料の再帰反射性(R
A)は、0.2度、1.0度、及び2.0度の観測角、−4度の入射角、並びに0度の向きで測定した。再帰反射性層(即ち、印刷接着剤層をキューブコーナーミクロ構造体に積層させる前)(「初期」)の再帰反射性及び再帰反射性層光学構造体(即ち、印刷接着剤の積層後)(「積層型」)の再帰反射性を測定した。その結果を以下の表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
  光学活性領域の形成は、PSAフィルムに印刷したバリア材料の数及び/又は寸法によって異なった。被覆面積が大きければ(例えば、PSAフィルムに多数の及び/又は広範囲のバリア材料が印刷されている)、より高い割合の光学活性領域が作製され、その結果、再帰反射性が増す。
【0078】
  (実施例6):
  PSA組成物は、モノマー比が90/10のIOA/AAであり、TiO
2を使用しなかったこと除いて、実施例1〜5に記載の通り調製した。PSA組成物は、フィルムとして0.8グレイン/インチ
2(7.95mg/cm
2)の厚さでキャストした。
【0079】
  印刷接着剤層6は、各正方形が500×500μmであった正方形の格子パターンを使用して、バリア材料をPSAフィルム上に印刷して調製した。ピッチ(隣接する各正方形の中心間距離)は700μmだった。各正方形間の距離(幅)は200μmだった。幅に対するピッチの比率は、3.5だった。インクレベルは300%だった。被覆面積(%面積)は、試料の寸法と印刷パターンに基づいて計算し、51%に相当した。
【0080】
  再帰反射性光学構造体(実施例6)は、実施例1〜5に記載の通り、印刷接着剤層6を再帰反射性層に積層させて調製した。
【0081】
  再帰反射性は、0.2度の観測角、−4度の入射角、並びに0度及び90度の向きで測定した。その結果を以下の表3に示す。
【0082】
【表3】
【0083】
  (実施例7):
  バリア材料は、実施例1〜5のUVインクジェットプリンタ及び黄色のインクジェットインクを使用して、シリコーンコーティングを施した剥離層上に印刷した。使用したインクレベルは、100%だった。実施例1〜5に記載のドットパターンを使用した。
図6に概略的に示す。印刷剥離層7は、以下の表4に詳細を記載した印刷パターンを用いて調製した。
【0084】
【表4】
【0085】
  印刷接着剤層7は、実施例1〜5に記載の通り調製したPSAフィルムに印刷剥離層7を積層させて調製した。再帰反射性光学構造体(実施例7)は、印刷接着剤層7を再帰反射性層に積層させて調製した。
【0086】
  再帰反射性は、0.2度、1度、及び2度の観測角、−4度の入射角、0度の向きで測定した。その結果を以下の表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
  (実施例8):
  バリア材料は、シリコーンコーティングを施した剥離層に白色のUV架橋性スクリーン印刷インク(3M  Company(St.Paul,MN)から商品名「9808Series」で市販されている)を(A.W.T.World  Trade,Inc.(Chicago,IL)から入手可能なAccu−Printプリンタを使用して)スクリーン印刷して作製した。380メッシュ画面を用いて、実施例1〜5のドット印刷パターンを使用してバリア材料を作製した。印刷剥離層8は、実施例1〜5の印刷パターンを用いて調製した。
【0089】
  スクリーン印刷後に、226mJ/cm
2に設定し、50fpm(15.24/分)で稼動させた、American  Ultraviolet  Company(Murray  Hill,NJ)製の紫外線硬化ステーションを使用してバリア材料を硬化した。
【0090】
  印刷接着剤層8は、PSAフィルムに印刷剥離層8を積層させて調製した。再帰反射性光学構造体8は、印刷接着剤層8を再帰反射性層に積層させて調製した。
【0091】
  (実施例9):
  構造化層は、エンボス加工ロールを使用して、米国特許第6,254,675号(Mikami)(参照によって本明細書に組み込む)に一般に記載される通り調製した。エンボス加工ロールは、レーザーで機械加工され、米国特許第6,254,675号の
図4aに示されるように、露出面を有する切頭四角錐と、第1の角錐の露出面に配置された第2の四角錐の形状を有するパターンをもたらした。この構造体は、米国特許第6,254,675号の実施例6に一般に記載される通り、200μmのピッチ、15μmの高さ、及び25μmの幅を有した。Rexam又はInncoatから入手な可能なものなどのポリエチレン上にシリコーンコーティングを有する、ポリエチレンでコーティングを施した紙の剥離ライナーは、加熱したゴム製ロールとエンボス加工ロールとの間でエンボス加工して、隆起部を有するミクロ構造化ライナーを製造した。ゴム製ロールは110℃の温度に加熱した。剥離ライナーは110℃の表面温度に加熱してから、ゴム製ロールとエンボス加工ロールとの間にニップを入れた。剥離ライナーは、エンボス加工ロールの約半分まで移動させてから冷却缶へ移動させて、ライナーを冷却した。
【0092】
  コーティング組成物は10%の個体を含有するビニル溶液を含み、メチルエチルケトン(MEK)中にビニル樹脂(Dow  Company(Midland,MI)から商品名「UCAR  VYHH」で市販されている)を溶解した。コーティング組成物を構造化層上にコーティングし、コーティングを施した剥離層9を形成した。ライン速度は5fpm(1.52m/分)であり、ポンプ流速は5ml/分であった。コーティングは、170°F(77℃)に設定したオーブンで乾燥した。
【0093】
  印刷接着剤層9は、実施例6に記載の通り作製したPSAフィルムにコーティングを施した剥離層9を積層させて調製した。再帰反射性光学構造体(実施例9)は、印刷接着剤層9を再帰反射性層に積層させて調製した。
【0094】
  再帰反射性は、0.2度、1度、及び2度の観測角、−4度の入射角、並びに0度及び90度の向きで測定した。再帰反射性は、0度及び90度の向きにおける再帰反射性の平均として、以下の表6に示す。
【0095】
【表6】
【0096】
  (実施例10〜13):
  以下の説明は、実施例10〜13の調製で使用した:米国特許第6,285,001号(Fleming)(参照により本明細書に組み込む)に一般に記載されるレーザーアブレーション装置を使用して、高分子フィルムに所定のパターンを付与した。レーザーアブレーション装置は、248nmの光波長の光線を出力するKrFエキシマレーザーと、標準的な半導体リソグラフィマスク技術を使用して製造されたパターン付きマスクと、マスクを通過して基材に光のパターンの画像を投影する撮像レンズと、を備えていた。基材は、銅層に接着された5ミル(0.127mm)厚のポリイミド層を含んだ。基材にパターン照射を与えた。ポリイミド層内の結果として生じた構造体は、
図4に示す六角形チャネルのパターンを含んだ。各六角形は、幅0.731mm、長さ0.832mmであった。
図4Aに示すように、チャネルの幅、即ち、隣接する六角形の各隣接壁間の距離は0.212mm(幅d)、1つの六角形の中心と隣接する六角形の中心との間の距離は0.943mm(ピッチD)であった。
【0097】
  パターンを刻んだ後で、最初にプラズマ蒸着によってシリコン含有フィルムを蒸着させ、次にフルオロケミカル組成物をコーティングして基材に剥離処理を施した。プラズマ蒸着は、26インチ(66cm)の低駆動電極と中央ガスポンプで構成された市販の反応性イオンエッチャー(モデル3032、Plasmathermから入手可能)で実行した。基材を駆動電極に配置し、流速500標準cm
3/分、プラズマ出力1000ワットで30秒間酸素ガスを流して、酸素プラズマ処理を施した。酸素プラズマ処理後に、150標準cm
3/分の流速のテトラメチルシランガス及び500標準cm
3/分の流速の酵素ガスを10秒間流して、シリコン含有ダイヤモンド様ガラスフィルムを蒸着させた。ダイヤモンド様ガラスフィルムの蒸着後に、流速500標準cm
3/分の酵素プラズマに基材を60秒間曝露した。手で基材を溶液に浸し、乾燥させることにより、フルオロケミカル組成物(3M  Company(St.Paul,MN)から商品名「EGC−1720」で市販されている)を基材に塗布した。次に、120℃のオーブンで基材を15分間加熱した。
【0098】
  比較例B1及びB2:
  再帰反射性層は、比較例A1及びA2に記載の通り調製した。
【0099】
  (実施例10):
  酸/アクリレート修飾エチレンビニルアセテート(EVA)ポリマー(Dow  Corning(Michigan,USA)から商品名「Bynel  3101」で市販されている)の2層構造体を含む封止層は共押出し成形で調製した。第1の層は透明であり、第2の層は、押出し成形中にTiO
2を添加したため有色であった。20重量%の80/20のTiO
2/EVA配合物と混合したBynel3101のペレットを押出し成形機に送り込み、厚さ0.005cm(2ミル)の白色フィルムとしてPETキャリア上にキャストした。透明層(即ち、TiO
2を含有しない)は、厚さ0.002cm(1ミル)のフィルムとしてキャストし、約1J/cm
2のエネルギーでコロナ処理を施した。
【0100】
  構造体は、ホットプレス装置(IHI  Corporation(Houston,TX)から商品名モデル「PW−220H」として市販されている)内で前記の多層フィルムの透明なBynel側をパターン付きポリイミド層に3分間押し付けて封止層上に作製した。プレス装置の上部及び下部のエンボス加工温度は約230°F(110℃)であり、エンボス加工圧は10psi(69kPa)であった。
【0101】
  続いて、キューブコーナーミクロ構造体に隣接する透明なフィルムを使用して構造化封止層を再帰反射性層に積層させ、再帰反射性光学構造体を形成した。積層温度約200°F(93.3℃)、圧力30psi(207kPa)でヒートプレス装置(HIX  Corporation(Pittsburg,KS)製のモデル「N−800」)を30秒間使用した。
【0102】
  (実施例11):
  封止層は、再帰反射性層への積層前に低屈折率材料で構造化封止層をコーティングしたことを除いて、実施例10に記載の通り調製した。
【0103】
  低屈折率コーティング組成物は、M−5シリカ(Cabot  of  Bellerica(MA)から商品名「Cabo−Sperse  PG002」で市販されている)及びポリビニルアルコール(PVA)(Kuraray  USAから商品名「Poval  235」で市販されている)の非表面修飾アルカリ安定化分散を使用して調製した。このシリカは、典型的に約80〜120m
2/gという低表面積を特徴とする。1000mlのプラスチックビーカーに、150gの7.2%個体PVA水溶液、2.0gの非イオン性界面活性剤(Dow  Chemical  Company(Midland,Michigan)から商品名「Tergitol  Min−Foam  1X」で市販されている)、及び1mlの濃縮NH
4OH溶液を加えた。溶液は、低速で作動する実験室用空気圧オーバーヘッドミキサーを使用して低剪断力で混合した。シリカ分散(216g、水中で20重量%)を溶液に添加し、その後、130gの脱イオン水を添加した。配合物は、約15分間かけて混合した。次に、乾燥重量ベースでシリカ4部に対してPVA1部を含有する配合物を1Lの丸底フラスコに移し、温度約40℃、600mmHg(80.0kPa)真空のロータリーエバポレーターに設置した。低屈折率コーティング組成物の最終固形分は、脱イオン水を使用して5%に調整した。
【0104】
  ナイフコーターを使用して、低屈折率コーティング組成物で封止層の構造化面をコーティングした。ナイフは、コーティングでランド部を設けないように設定した。つまり、過剰なシリカは、封止層から除去した。封止層は、キューブコーナー構造体に積層させる前に、50℃のオーブンに10分間入れた。
【0105】
  再帰反射性は、0.2度の観測角、−4度の入射角、並びに0度及び90度の向きで測定した。再帰反射性は、0度及び90度の向きにおける再帰反射性の平均として、以下の表7に示す。
【0106】
【表7】
【0107】
  (実施例12):
  PSAフィルムは、実施例6に記載の通り調製した。構造化接着フィルムは、実施例10に記載の通り、接着フィルムをポリイミド層に押圧して得た。
【0108】
  再帰反射性光学構造体は、構造化接着フィルムを再帰反射性層に積層させて調製した。構造化接着剤はキューブコーナーミクロ構造体に接触していた。積層は、ハンドローラーを使用して室温で実施した。
【0109】
  (実施例13):
  構造化接着フィルムは、実施例11の低屈折率コーティング組成物で構造化接着剤をコーティングしたことを除いて、実施例12に記載の通り調製した。再帰反射性光学構造体は、室温でハンドローラーを使用して、コーティングを施した構造化接着フィルムを再帰反射性層に積層させて調製した。フィルムの接着面は、キューブコーナーミクロ構造体に接触していた。
【0110】
  再帰反射性は、0.2度の観測角、−4度の入射角、並びに0度及び90度の向きで測定した。再帰反射性は、0度及び90度の向きにおける再帰反射性の平均として、以下の表8に示す。
【0111】
【表8】
【0112】
  比較例C:
  3M  Company(St.Paul,MN)から商品名「Diamond  Grade  3910」で市販されているシールされたプリズム再帰反射性シートを入手した。
【0113】
  比較例D:
  3M  Companyから商品名「License  Plate  Sheeting  Series  4770」で市販されているビード型再帰反射性シートを入手した。
【0114】
  比較例E:
  実施例10に記載の通り調製した封止層を入手した。
【0115】
  比較例F、G、H、及び実施例14〜19:
  以下の説明は、比較例F、G、H、及び実施例14〜19の調製で使用した:再帰反射性層は、キューブ構造体が、101.6マイクロメートル(0.004インチ)のピッチ、即ちプライマリ溝間隔を有する3組の交差溝を有したことを除いて、「再帰反射性層の調製」に記載の通り調製した。交差溝は、58度、58度、64度の夾角を有する、キューブコーナーの底面三角形を形成し、49.6マイクロメートル(0.00195インチ)の高さのキューブコーナー要素をもたらす。プライマリ溝間隔は、底面三角形の2つの58度の底角を形成する溝の間の溝間隔として定義する。
【0116】
  比較例F及びGは、上記のキューブコーナー構造体を使用したことを除いて、「再帰反射性層の調製」に記載の通り調製した。
【0117】
  比較例Hは、比較例F及びGの再帰反射性層を実施例10の封止層に積層させて調製した。
【0118】
  ポリイミド層(工具1〜6)を調製した。ただし、パターン形状は、
図8及び
図9に示すようにダイヤモンド形状であり、角度1(A1)は20度、角度2(A2)は153度だった。工具1〜6の寸法特性を以下の表9に示す。比較例Cの封止された再帰反射性シートを分析し、シールパターンのピッチ及び線幅を測定した。その結果を以下の表9に示す。
【0119】
【表9】
【0120】
  第1世代の雌型工具は、米国特許第4,478,769号(Pricone)及び同第5,156,863号(Pricone)に一般に記載の通り、スルファミン酸ニッケル浴でポリイミド層をニッケル電鋳してポリイミド層(マスター)から作製した。工具がマスターと実質的に同じ形状を有するように、追加の数世代の雄型及び雌型のコピーを形成した。
【0121】
  構造化封止層14〜19は、実施例10に一般に記載の通り、工具1〜6に実施例10の封止層を押圧して調製した。
【0122】
  再帰反射性光学構造体(実施例14〜19)は、構造化封止層14〜19を再帰反射性層に積層させて調製した。
【0123】
  再帰反射性(R
A)は、0.2度、0.5度、1度、2度、3度、及び4度の観測角、−4度の入射角、並びに0度及び90度の向きで測定した。再帰反射性は、0度及び90度の向きにおける再帰反射性の平均として、以下の表10に示す。
【0124】
【表10】
【0125】
  再帰反射性(R
A)は、典型的に別個の観測角で測定し、2つの隣接する測定観測角の間の環状領域全体で平均する。所与の観測角の増分%RTは、この平均R
Aにこの環状領域の面積を乗じ、入射角のコサインで除して測定する。分数再帰反射率%RTは、0度と対象観測角(αmax)との間の観測角の増分%RTの合計である。所定の観測角の分数再帰反射率勾配(%RT勾配)は、増分%RTを隣接する観測角の差で除したものである。%RT勾配を計算した。その結果を以下の表11に示す。
【0126】
【表11】
【0127】
  %RTを計算した。その結果を以下の表12に示す。
【0128】
【表12】
【0129】
  測色分光光度計(Hunterlab(Reston,VA)から商品名「ColorFlex」で入手可能である)でCAP−Yを測定した。すべての試料は、試料の背後に白色背景を使用して測定した。%被覆範囲(即ち、再帰反射性の%面積)が増加すると、CAP−Yが減少するため、CAP−Yと%被覆範囲との間には直線関係が存在する。露出するキューブコーナー構造体の量が減少する(即ち、%被覆範囲が減少する)と、構造体の白色度が増加する。ナンバープレートシートの典型的なCAP−Y値は、50以上である。比較例C、E、F、H、及び実施例14〜19のCAP−Y値を以下の表13に示す。
【0130】
【表13】
【0131】
  表10、12、及び13に示すように、露出するキューブコーナーミクロ構造体(例えば、構造化フィルムを印刷する又は構造化フィルムをキューブコーナーミクロ構造体に積層させて作製する)の量が減少すると、2度、3度、及び4度の観測角における分数再帰反射率%RTに見られるように、反射光量が減少する。
【0132】
  試料の寸法を特徴付ける別の方法は、シールセルの線幅に対するピッチの比率(D/d)を使用することである。ピッチDは、パターン内における最小繰り返し機構間の距離である。これは、シールセル寸法又は特徴的セル寸法とも呼ばれる。幅dは、シールレッグの幅である。2度、3度、及び4度におけるCAP−Y及び%RT勾配に対するピッチ/幅比率(D/d)の効果を表10、11、及び13に示す。
【0133】
  ミクロシールされた再帰反射性光学構造体は、優れた再帰反射性能を示しつつ、鮮やかな白色度と近視距離における均一な外観をもたらすのに特に有用である。小型又はマイクロシールセル法のもう1つの重要な側面は、シールセルの形状(例えば、セル寸法(D)、レッグ幅(d))及び反射光の総量が減少しても、配光には比較的変化がないことである。シールされた再帰反射性光学構造体は、全光反射で減少を示すが、配光特性は変化しない。
【0134】
  当業者に理解されるように、シールセルの形状は、上記の実施例に示すダイヤモンド形状には限定されない。シールセルの形状としては、例えば、円形、楕円形、三角形、正方形、及び平行四辺形が挙げられてよい。上記の特徴的寸法、%被覆範囲、若しくはピッチ/幅に関する要件、又はこれらの任意の組み合わせを満たす、実質的に任意の形状を用いることができる。また、シールセルは、セキュリティ機構として、逆向きの「M」又は「3M」など文字又は画像の形状を有してよい。
【0135】
  ピッチ、線幅、角度、真直度など、シールセルの形状を画定するのに用いられる任意の幾何学的パラメーターは、シールセルと再帰反射性シートとの間のモアレ効果を低減するために無作為に選択されてよい。また、形状は、シート内の欠陥及びレイアップ又は溶接線を隠すように最適化できる。
【0136】
  更に、立方体の寸法又はピッチ(P)は、シール中のエッジ効果の形成が原因で、封止層に積層されたときの輝度に影響を与えることがある。立方体寸法効果を理解しやすくするために、実際のセル線幅(d)及び有効セル線幅(deff)の2つのパラメーターを使用できる。実際の線幅dは、シールセルレッグをもたらす物理幅である。有効線幅deffはシールレッグの光学幅であり、封止層を積層させるプリズムフィルムに用いられるキューブコーナーの寸法及び形状によって異なる。封止層を再帰反射性層に積層させると、キューブコーナーミクロ構造体部分のみに重なるシールレッグ部分が、立方体全体を暗化する。この追加の暗化領域のおかげで、実際の幅よりも有効幅が広くなる。この効果は、立方体の寸法に大きく依存する。大型の立方体ではこの効果は著しく悪化する。
【0137】
  終点による数値範囲すべての記述は、その範囲内に包含されるあらゆる数を含むことが意図されている(すなわち、1〜10の範囲には、例えば、1、1.5、3.33、及び10が含まれる)。
【0138】
  本明細書に記載のすべての参照は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0139】
  本発明の基本的な原理から逸脱することなく、上記の実施形態及び実施例の詳細に多くの変更を加えることができることは、当業者に明らかであろう。更に、本発明の様々な改良及び変更が本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに実施できることは、当業者には明らかであろう。したがって、本出願の範囲は、以下の「特許請求の範囲」によってのみ定められるものである。