(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記少なくとも1つのブースト圧縮機に流体結合された第1及び第2の冷却ユニットを更に有し、前記第1の冷却ユニットは、前記少なくとも1つのブースト圧縮機への導入前に前記ガス状排出物流を受け入れてこれを冷却するよう構成され、前記第2の冷却ユニットは、前記少なくとも1つのブースト圧縮機から前記ガス状排出物流を受け取って前記ガス状排出物流を一段と冷却して前記冷却再循環ガスを発生させるよう構成されている、
請求項1記載のシステム。
前記ヒータ手段は、前記パージ流と前記残留流の両方に流体結合された熱交換器を含み、前記熱交換器は、前記パージ流の温度を減少させると同時に前記残留流の温度を増大させるよう構成されている、
請求項3記載のシステム。
前記パージ流と関連して設けられた触媒装置を更に有し、前記触媒装置は、前記パージ流を前記ヒータ手段への流入に先立って前記パージ流の温度を増大させるよう構成されている、
請求項1記載のシステム。
前記ヒータ手段は、前記残留流に流体結合されていて、第2の燃料及び第2の圧縮酸化体を化学量論的に燃焼させて第2の放出物流を発生させるよう構成された第2の燃焼チャンバを有する、
請求項3記載のシステム。
前記ガス状排出物流を少なくとも1つのブースト圧縮機に流体結合された第1の冷却ユニットで冷却するステップを有し、前記第1の冷却ユニットは、前記少なくとも1つのブースト圧縮機への導入前に前記ガス状排出物流を受け取ってこれを冷却するよう構成されている、
請求項12記載の方法。
前記少なくとも1つのブースト圧縮機からの前記ガス状排出物流を前記少なくとも1つのブースト圧縮機に流体結合された第2の冷却ユニットで冷却して前記再循環ガスを発生させるステップを更に有する、
請求項13記載の方法。
前記ヒータ手段は、前記パージ流と前記残留流の両方に流体結合された熱交換器を含み、前記方法は、前記熱交換器により前記パージ流の温度を減少させると共に前記残留流の温度を増大させ、それにより前記加熱窒素蒸気流を発生させるステップを更に有する、
請求項16記載の方法。
前記ヒータ手段は、第2の燃焼チャンバを有し、前記方法は、前記残留流に流体結合された前記第2の燃焼チャンバで第2の燃料及び第2の圧縮された酸化体を化学量論的に燃焼させるステップを更に有し、前記第2の燃焼チャンバは、第2の放出物流を発生させるよう構成されている、
請求項16記載の方法。
前記第2の放出物流を前記ガス膨張機で膨張させて機械的動力を発生させ、それにより入口圧縮機を駆動するステップを更に有し、前記入口圧縮機は、前記第1の圧縮酸化体を発生させるよう構成されている、
請求項18記載の方法。
前記第2のガスタービンシステムは、前記第2の膨張機から前記排出物を受け取って蒸気ガスタービンのための蒸気をもたらすよう構成された排熱回収蒸気発生器を更に有する、
請求項23記載のシステム。
【背景技術】
【0004】
本項は、本発明の例示の実施形態と関連している場合のある当該技術分野の種々の観点を紹介するものである。この説明は、本発明の特定の観点の良好な理解を容易にする技術内容の枠組みの提供を助けるものと考えられる。従って、本項は、このような見方で読まれるべきであり、必ずしも本項の記載内容が先行技術である旨の承認(admissions)として読まれるべきではないことは理解されるべきである。
【0005】
多くの産油国は、電力需要における強い国内成長を経験しており、石油・原油の貯留層からの石油・原油の回収を向上させるために石油・原油の回収増進法(EOR)に関心がある。通常利用される2種類のEOR技術としては、貯留層圧力維持のための窒素(N
2)注入及びEOR用の混和性フラッディングのための二酸化炭素(CO
2)注入が挙げられる。また、温室効果ガス(GHG)エミッションに関する世界的な懸念が存在する。多くの国におけるキャップ・アンド・トレード(cap-and-trade)政策の実施と組み合わさったこの懸念により、CO
2エミッションの減少が、これらの国及び他の国並びに炭化水素を産出システムを稼働させている会社にとって優先事項となっている。
【0006】
CO
2エミッションを減少させる幾つかの対策は、溶剤、例えばアミンを用いた燃料脱炭又は燃焼後捕捉を含む。しかしながら、これら解決策の両方は、費用が高く付く上に発電効率が悪く、その結果、発電量は低く、燃料需要が高く、しかも国内電力需要を満たすのに電気のコストが高い。特に、酸素、SO
X及びNO
X化合物の存在により、アミン溶剤吸収の使用は、極めて問題となっている。別の対策は、コンバインドサイクルにおけるオキシ燃料ガスタービンの使用である(例えば、この場合、ガスタービンブレイトンサイクルからの排(廃)熱は、ランキンサイクルにおいて蒸気を生じさせると共に追加の動力を生じさせるよう捕捉される)。しかしながら、かかるサイクルで動作可能な商業的に入手できるガスタービンは存在せず、高純度酸素を生じさせるのに必要な動力は、プロセスの全体的効率を著しく低下させる。幾つかの研究がこれらプロセスを比較し、各対策の利点のうちの幾つかを示している。これについては、例えば、URL: http://www.energy.sintef.no/publ/xergi/98/3/3art-8-engelsk.htm (1998)に見受けられるボーランド(BOLLAND),オラブ(OLAV)及びアンドラム(UNDRUM),アンリエット(HENRIETTE),「リムーバル・オブ・CO
2・フロム・ガス・タービン・パワー・プランツ:エバリュエーション・オブ・プリ・アンド・ポストコンバッション・メソッズ(Removal of CO
2 from Gas Turbine Power Plants: Evaluation of pre- and post-combustion methods)」,エスアイエヌティーイーエフ・グループ(SINTEF Group)を参照されたい。
【0007】
CO
2エミッションを減少させる他の対策としては、例えば天然ガスコンバインドサイクル(NGCC)における化学量論的排ガス再循環が挙げられる。従来型NGCCシステムでは、燃料の適度な化学量論的燃焼を可能にするのに空気取り入れ量の約40%しか必要とせず、これに対し、空気取り入れ量の残りの60%は、温度を加減すると共に排ガスを冷却して次の膨張機中への導入に適するようにするのに役立つが、不都合なことに、排ガス中に副生物として過剰酸素を発生させもし、これは除去するのが困難である。典型的なNGCCは、低圧煙道ガスを生じさせ、これには、隔離又はEORのためにCO
2を取り出すのに得た電力のうちの何分の一かが必要であり、それによりNGCCの熱効率が低下する。さらに、CO
2取り出しのための機器は、大型であり且つ費用が高く付き、周囲圧力ガスをEOR又は隔離に必要な圧力にするのに幾つかの圧縮段が必要である。かかる問題は、他の化石燃料、例えば石炭の燃焼と関連した低圧排ガスからの燃焼後炭素捕捉に特有である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下の詳細な説明の項において、本発明の特定の実施形態を好ましい実施形態と関連して説明する。しかしながら、以下の説明が本発明の特定の実施形態又は特定の使用に特有である範囲まで、これは、例示目的にのみ行われ、例示の実施形態についての説明を提供するに過ぎない。したがって、本発明は、以下に説明する特定の実施形態には限定されず、それどころか、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲に含まれるあらゆる変形例、改造例及び均等例を含む。
【0015】
本明細書において用いられる種々の用語について以下に定義する。特許請求の範囲の記載に用いられている用語が以下において定義されていない場合、関連分野における当業者が少なくとも1つの印刷された刊行物又は発行された特許に反映されているようにその用語には最も広い定義が与えられるべきである。
【0016】
本明細書で用いられている「天然ガス」という用語は、原油田(随伴ガス)又は地下ガス貯留地層(非随伴ガス)から得られた他成分ガスを意味している。天然ガスの組成及び圧力は、千差万別であると言える。典型的な天然ガス流は、主要成分としてメタン(CH
4)を含み、即ち、天然ガス流の50mol%以上がメタンである。天然ガス流は、エタン(C
2H
6)、これよりも分子の高い炭化水素(例えば、C
3〜C
20炭化水素)、1種類又は2種類以上の酸性ガス(例えば、硫化水素、二酸化炭素)又はこれらの任意の組み合わせを更に含む場合がある。天然ガスは、微量の汚染要因物、例えば水、窒素、硫化鉄、蝋、原油又はこれらの任意の組み合わせを更に含む場合がある。
【0017】
本明細書で用いられる「化学量論的燃焼」という用語は、燃料及び酸化剤を含む所与の量の反応体及び反応体の全体積が生成物を形成するために用いられる場合、反応体を燃焼させることによって生じる所与の量の生成物を有する燃焼反応を意味している。本明細書で用いられる「実質的に化学量論的燃焼」という表現は、燃焼用燃料と化学量論的比に必要な酸素の約±10%又はより好ましくは化学量論的比に必要な酸素の約±5%の範囲の酸素のモル比を有する燃焼反応を意味している。例えば、メタンに関する燃料と酸素の化学量論比は、1:2(CH
4+2O
2>CO
2+2H
2O)である。プロパンの燃料と酸素の化学量論比は、1:5であろう。実質的に化学量論的燃焼を測定する別のやり方は、供給される酸素と化学量論的燃焼に必要な酸素の比としてであり、例えば、約0.9:1から約1.1:1であり、より好ましくは約0.95:1から約1.05:1である。
【0018】
本明細書で用いられる「流」(又は、「流れ」)は、所与の量の流体を意味している。ただし、流という用語の使用は、移動中に所与の量の流体(例えば、速度又は質量流量を有する)を意味している。しかしながら、「流」という用語は速度、質量流量又は流を包囲する特定形式の導管を必要とするわけではない。
【0019】
本明細書において開示されるシステム及びプロセスの実施形態は、超低エミッション発電を行うと共に石油・原油の回収増進(EOR)又は隔離用途のためのCO
2を生じさせるために利用されるのが良い。本明細書に開示される実施形態によれば、空気と燃料の混合物を化学量論的に又は実質的に化学量論的に燃焼させると同時に再循環排ガスの流れと混合させるのが良い。一般に燃焼生成物、例えばCO
2を含む再循環排ガスの流れは、化学量論的燃焼及び次の膨張機に入る排ガスの温度を制御し又は違ったやり方で加減する希釈剤として使用可能である。
【0020】
化学量論的条件又は実質的に化学量論的条件(例えば、「僅かにリッチ」の燃焼)における商用ガスタービンでの燃焼は、過剰酸素除去のコストをなくす上で有利であると言える。さらに、僅かにリーンの燃焼により、排出物流中の酸素含有量を一段と減少させることができる。排出物を冷却し、冷却された排出物流から水を凝縮して除去することによって、比較的高い含有量のCO
2排出物流を生じさせることができる。再循環排ガスの一部分を閉鎖ブレイトンサイクルにおいて温度加減のために利用することができるが、残りのパージ流をEOR用途に用いることができると共に/或いは硫黄酸化物(SO
X)、窒素酸化物(NO
X)及び/又は大気中に放出されるCO
2がほとんどなく又は全くない状態で電力を発生させることができる。例えば、本明細書において開示する実施形態によれば、パージ流をCO
2分離器で処理するのが良く、CO
2分離器は、窒素に富んだガスを放出するようになっており、かかる窒素に富んだガスを、次に、ガス膨張機で膨張させると、追加の機械的動力を発生させることができる。本明細書において開示するシステムの使用の結果、3つの別々なサイクルで動力が生じると共により経済的に効率的なレベルでの追加のCO
2の製造又は捕捉が得られる。幾つかの具体化例では、窒素に富んだ放出物流を種々の手段により加熱すると、膨張機により得られる窒素流に対する動力を増大させることができる。加うるに、幾つかの具体化例では、膨張機に続く窒素ベントを冷却し、そしてこれを用いると、冷凍を行うことができ、冷凍は、ブレイトンサイクル及び/又は排ガスの再循環の際に圧縮機の効率を向上させるよう使用できる。低温窒素流も又、プロセス効率を向上させる他の用途で利用できる。
【0021】
変形例として、放出された窒素に富んだガスをEOR施設に送って追加の圧縮及び/又は石油・原油回収及び/又は圧力維持のために坑井中に注入しても良い。貯留槽圧力維持のために窒素を生じさせると共にEORのために完全に別個独立にCO
2を発生させることができるが、本明細書において開示する実施形態は、窒素とCO
2の両方を極めて安価なコストで作ると共に更に動力を生じさせるよう一体型プロセスでこれらガスを製造する場合に可能な相乗作用を利用する。
【0022】
次に図を参照すると、
図1は、1つ又は2つ以上の実施形態に従ってコンバインドサイクル構成を用いて改良型後燃焼CO
2捕捉プロセスを提供するよう構成された発電システム100の略図である。少なくとも1つの実施形態では、発電システム100は、閉鎖ブレイトンサイクルとして特徴付けられるガスタービンシステム102を有するのが良い。一実施形態では、ガスタービンシステム102は、シャフト108又は任意の機械的、電気的又は他の動力結合手段を介して膨張機106に結合された第1の又は主圧縮機104を有するのが良く、それにより膨張機106により生じた機械的エネルギーの一部分が主圧縮機104を駆動することができる。膨張機106は、他の使用のためにも動力を発生させることができる。ガスタービンシステム102は、標準型ガスタービンであって良く、この場合、主圧縮機104及び膨張機106は、それぞれ、圧縮機側端部及び膨張機側端部を形成する。しかしながら、他の実施形態では、主圧縮機104及び膨張機106は、システム102内における個別化されたコンポーネントであっても良い。
【0023】
ガスタービンシステム102は、圧縮酸化体114と混合された燃料流112を燃焼させるよう構成された燃焼チャンバ110を更に有するのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、燃料流112は、任意適当な炭化水素ガス又は液体、例えば天然ガス、メタン、エタン、ナフサ、ブタン、プロパン、合成ガス、ディーゼル、ケロシン、航空燃料、石炭由来燃料、生物燃料、酸素化炭化水素供給原料又はこれらの組み合わせを含むのが良い。圧縮酸化体114は、燃焼チャンバ110に流体結合されていて、供給酸化体120を圧縮するようになった第2の又は入口圧縮機118から導かれるのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、供給酸化体120は、酸素を含有した任意適当なガス(気体)、例えば空気、酸素に富んだ空気、酸素が乏しい空気、純粋酸素又はこれらの組み合わせを含むことができる。
【0024】
以下に詳細に説明するように、燃焼チャンバ110は、主としてCO
2及び窒素成分を有する排ガスを含む圧縮再循環流144も又受け入れるのが良い。圧縮再循環流144を主圧縮機104から導くのが良く、かかる圧縮再循環流は、圧縮酸化体114及び燃料112の化学量論的燃焼を容易にするのに役立ち、更に作業流体中のCO
2濃度を増大させるようになっている。膨張機106の入口に差し向けられる放出物流116を圧縮再循環流144の存在下において燃料112及び圧縮酸化体114の燃焼生成物として生じさせることができる。少なくとも1つの実施形態では、燃料流112は、主として天然ガスであるのが良く、それにより蒸発した水、CO
2、窒素、窒素酸化物(NO
X)及び硫黄酸化物(SO
X)の体積部分を含む放出物116が生じる。幾つかの実施形態では、未燃焼燃料112又は他の化合物の僅かな部分も又、燃焼平衡上の問題に起因して放出物116中に存在する場合がある。放出物116が膨張機106中で膨張すると、それにより主圧縮機104、発電機又は他の設備を駆動するための機械的動力が生じると共に更に増大したCO
2含有量を有するガス状排出物流122が生じる。
【0025】
発電システム100は、排ガス再循環(EGR)システム124を更に有するのが良い。図示のEGRシステム124は、種々の装置を有するが、図示の構成は、例示であるに過ぎず、排ガス122を循環させて主圧縮機に戻す任意のシステムを使用することができる。1つ又は2つ以上の実施形態では、EGRシステム124は、蒸気ガスタービン128に流体結合された排熱回収蒸気発生器(排熱回収ボイラ又は排熱回収熱交換器とも言う)(HRSG)126又はこれに類似した装置を有するのが良い。少なくとも1つの実施形態では、HRSG126と蒸気ガスタービン128の組み合わせは、閉鎖ランキンサイクルとして特徴付けることができる。HRSG126及び蒸気ガスタービン128は、ガスタービンシステム102と組み合わさった状態で、コンバインドサイクル発電プラント、例えば天然ガスコンバインドサイクル(NGCC)プラントの一部をなすことができる。ガス状排出物122をHRSG126に送るのが良く、その目的は、に蒸気の流れ130を発生させると共に冷却排ガス132を生じさせることにある。一実施形態では、蒸気130を蒸気ガスタービン128に送って追加の電力を発生させるのが良い。
【0026】
図1は、EGRシステム124に設けられていて、オプションとして、幾つかの具体化例において組み込むことができる追加の装置を示している。冷却排ガス132を少なくとも1つの冷却ユニット134に送るのがよく、かかる冷却ユニットは、冷却排ガス132の温度を減少させて冷却再循環ガス流140を発生させるよう構成されている。1つ又は2つ以上の実施形態では、冷却ユニット134は、直接接触型冷却器、トリム冷却器、機械的冷凍ユニット又はこれらの組み合わせであるのが良い。冷却ユニット134は又、水ドロップアウト流138を介して凝縮水の一部分を除去するよう構成されているのが良く、水ドロップアウト流は、少なくとも1つの実施形態では、ライン141を介してHRSG126に送られるのが良く、それにより追加の蒸気130の発生のための水源が得られる。1つ又は2つ以上の実施形態では、冷却再循環ガス流140は、冷却ユニット134に流体結合されたブースト圧縮機142に差し向けられるのが良い。冷却排ガス132を冷却ユニット134で冷却することにより、ブースト圧縮機142内の冷却再循環ガス流140を圧縮するのに必要な動力を減少させ又はその必要性を全くなくすことができる。
【0027】
ブースタ圧縮機142は、冷却再循環ガス流140を主圧縮機104内に導入する前に冷却再循環ガス流140の圧力を増大させるよう構成されているのが良い。従来型ファン又はブロワシステムとは対照的に、ブースト圧縮機142は、冷却再循環ガス流140の全体的密度を増大させ、それにより体積流量が同一の状態で増大した質量流量を主圧縮機104に差し向ける。主圧縮機104は、代表的には体積流量が制限されているので、より多くの質量流量を主圧縮機104中に差し向けると、その結果として、主圧縮機104から高い吐き出し圧力が得られ、それにより、かかる高い吐き出し圧力は、膨張機106前後の高い圧力比に変わる。膨張機106前後に生じた高い圧力比により、入口温度を高くすることができ、従って、膨張機106の出力及び効率を増大させることができる。これは、CO
2に富んだ排ガス116が一般に高い比熱容量を維持するので有利であることが分かる。したがって、冷却ユニット134及びブースト圧縮機142は、組み込まれると、各々、ガスタービンシステム102の作動を最適化し又は向上させるようになっているのが良い。
【0028】
主圧縮機104は、EGRシステム124、例えばブースト圧縮機142から受け取った冷却再循環ガス流140を圧縮して名目上、燃焼チャンバ110の圧力よりも高い圧力に圧縮するよう構成されているのが良く、それにより圧縮された再循環流144が生じる。少なくとも1つの実施形態では、パージ流146を圧縮再循環流144から取り出し、次にCO
2分離器148内で処理し、それによりライン150を介して高い圧力状態にあるCO
2を捕捉するのが良い。ライン150内の分離されたCO
2を販売のために利用することができ、二酸化炭素を必要とする別のプロセスに用いることができ且つ/或いは圧縮して石油・原油の回収増進(EOR)、隔離又は別の目的のための陸上リザーバ中に注入することができる。
【0029】
本質的にCO
2が減少し、主として窒素から成る残留流151をCO
2分離器148から導くのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、残留流151をCO
2分離器148に流体結合されているガス膨張機152、例えば動力発生窒素膨張機で膨張させるのが良い。
図1〜
図3に示されているように、ガス膨張機152は、オプションとして、共通シャフト154又は他の機械的、電気的若しくは他の動力結合手段を介して入口圧縮機118に結合されても良く、それにより、ガス膨張機152により生じた動力の一部分が入口圧縮機118を駆動することができる。ガス膨張機152内での膨張後、主として窒素から成る排ガス156を大気中に逃がし又は当該技術分野において知られている他の下流側の用途に具体化するのが良い。例えば、膨張後の窒素流を蒸発式冷却プロセスに用いることができ、かかる蒸発式冷却プロセスは、一般に同日出願の米国特許出願(発明の名称:Stoichiometric Combustion with Exhaust Gas Recirculation and Direct Contact Cooler)に説明されているように排ガスの温度を一段と減少させるよう構成されており、この米国特許出願を参照により引用し、本発明の開示内容と矛盾しない程度までその記載内容を本明細書の一部とする。少なくとも1つの実施形態では、ガス膨張機152、入口圧縮機118及びCO
2分離器の組み合わせは、開放ブレイトンサイクル又はシステム100の第3の動力発生コンポーネントとして特徴付けることができる。
【0030】
ガス膨張機152及び入口圧縮機118の組み合わせ又は結合は、開放ブレイトンサイクルに似ている場合があるが、ガス膨張機152は、入口圧縮機118に結合されるにせよ又は結合解除されるにせよいずれにせよ、システム100の第3の動力発生コンポーネントとなる。例えば、ガス膨張機152は、動力を他の用途に提供するよう使用でき、化学量論的圧縮機118には直接的には結合されない。例えば、膨張機152により生じる動力と圧縮機118の要件との間には相当な不整合が存在する場合がある。かかる場合、膨張機152は、必要とする動力が少ない(又は、入口圧縮機118及び1つ又は2つ以上の追加の施設を駆動するために)小型圧縮機(図示せず)を駆動するようになっている場合がある。
【0031】
さらに別の実施形態では、
図8を参照して以下に説明するように、ガス膨張機152に代えて下流側圧縮機188を用いても良く、この下流側圧縮機188は、残留流151を圧縮して圧力維持又はEOR用途のためのリザーバ内に注入されるのに適した圧縮排ガス190を発生させるよう構成されている。
【0032】
特にブースト圧縮機142が追加された本明細書において説明するEGRシステム124は、発電システム100の排ガス中にCO
2の高い濃度を達成するよう具体化されるのが良く、それにより次の隔離、圧力維持又はEOR用途のための効果的なCO
2分離が可能である。例えば、本明細書において開示する実施形態は、排ガス流中のCO
2の濃度を約10体積%以上に効果的に増大させることができる。これを達成するため、燃焼チャンバ110は、燃料112と圧縮酸化体114の流入混合物を化学量論的に燃焼させるようになっているのが良い。膨張機106の入口温度及びコンポーネント冷却要件に適合するよう化学量論的燃焼の温度を加減するために圧縮再循環流144から導いた排ガスの一部分を希釈剤として燃焼チャンバ110中に同時に注入するのが良い。かくして、本発明の実施形態は、本質的に、作業流体から過剰酸素をなくすことができ、それと同時にそのCO
2濃度を増大させることができる。したがって、ガス状排出物122は、約3.0体積%以下の酸素、約1.0体積%以下の酸素、約0.1体積%以下の酸素又はそれどころか約0.001体積%以下の酸素を有することができる。幾つかの具体化例では、燃焼チャンバ110又は特に燃焼チャンバへの入口流は、ガス状排出物流122の酸素含有量を一段と減少させるために化学量論的燃焼に優先して制御されるのが良い。
【0033】
次に、システム100の例示の作動の詳細について説明する。理解できるように、本明細書において開示する実施形態においての任意のものの種々のコンポーネントで達成され又は生じる特定の温度及び圧力は、多くの要因のうちでとりわけ、用いられる酸化体の純度及び膨張機、圧縮機、冷却器等の特定の製造メーカ及び/又はモデルに応じて変わる場合がある。したがって、本明細書において説明する特定のデータは、例示に過ぎず、本発明の唯一の解釈として認識されるべきでないことは理解されよう。例えば、本明細書において説明する一実施形態では、入口圧縮機118は、約280psia〜約300psiaの圧力で圧縮酸化体114を提供するよう構成されるのが良い。しかしながら、本明細書においてこれ又想定されるように、最高約750psia以上の圧力を生じさせると共に消費することができる航空機転用形ガスタービン技術も又本発明に含まれる。
【0034】
主圧縮機104は、再循環排ガスを再循環させてこれを圧縮し、名目上、燃焼チャンバ110の圧力よりも高い圧力又は燃焼チャンバ110の圧力の状態の圧縮再循環流144にし、この再循環排ガスの一部分を燃焼チャンバ110内における希釈剤として用いるよう構成されているのが良い。燃焼チャンバ110内で必要な希釈剤の量は、膨張機106の化学量論的燃焼又はモデルに用いられる酸化体の純度に依存する場合があるので、リング状に配置された熱電対及び/又は酸素センサ(図示せず)を燃焼チャンバ及び/又は膨張機に関連させるのが良い。例えば、熱電対及び/又は酸素センサは、燃焼チャンバ110の出口、膨張機106の入口及び/又は膨張機106の出口に設けられるのが良い。作用を説明すると、熱電対及びセンサは、燃焼生成物を所要の膨張機入口温度まで冷却する希釈剤として必要な排ガスの量を求める際に使用される1つ又は2つ以上の流れの組成及び/又は温度を測定するようになっているのが良い。節すると共に測定し、さらに燃焼チャンバ中に注入される酸化体の量を調節するようになっているのが良い。追加的に又は代替的に、熱電対及びセンサは、燃焼チャンバ110中に注入されるべき酸化体の量を測定するようになっているのが良い。かくして、熱電対により検出された熱要件及び酸素センサにより検出された酸素レベルに応答して、需要にマッチするよう圧縮再循環ガス144及び/又はライン114内の圧縮酸化体の体積質量流量を操作し又は制御することができる。体積質量流量を任意適当な流れ制御システムにより制御することができる。
【0035】
少なくとも1つの実施形態では、約12〜13psiaの圧力降下が化学量論的燃焼中、燃焼チャンバ110の前後に生じる場合がある。燃料112及び圧縮酸化体114の燃焼により、約2000°F(1093℃)〜約3000°F(1649℃)の温度及び250psia〜約300psiaの圧力を生じさせることができる。圧縮再循環流144から導き出されたCO
2に富む作業流体の質量流量の増大及び比熱容量の増大に鑑みて、膨張機106前後に高い圧力比を達成することができ、それにより入口温度を高くすると共に膨張機106の出力を増大させることができる。
【0036】
膨張機106から出るガス状排出物流122は、周囲圧力又は周囲圧力に近い圧力を有することができる。少なくとも1つの実施形態では、ガス状排出物流122は、約15.2psiaの圧力を有するのが良い。ガス状排出物流122の温度は、約1180°F(638℃)から約1250°F(677℃)までの範囲にあり、その後このガス状排出物流は、HRSG126を通過し、それによりライン130内に蒸気が生じると共に冷却された排ガス132が生じる。冷却排ガス132は、約190°F(88℃)から約200°F(93℃)までの範囲の温度を有することができる。1つ又は2つ以上の実施形態では、冷却ユニット134は、冷却排ガス132の温度を減少させることができ、それにより主として特定の場所及び特定の季節の間の湿球温度に応じて、約32°F(0℃)〜120°F(49℃)の温度を有する冷却再循環ガス流140が生じる。冷却ユニット134によって提供される冷却度に応じて、冷却ユニットは、冷却再循環ガス流の質量流量を増大させるようになっているのが良い
【0037】
1つ又は2つ以上の実施形態によれば、ブースト圧縮機142は、冷却再循環ガス流140の圧力を約17.1psiaから約21psiaまでの範囲の圧力に高めるよう構成されているのが良い。その結果、主圧縮機104は、密度が増大すると共に質量流量が増大した再循環排ガスを受け取ってこれを圧縮し、それにより圧力比を同一に又はほぼ同じに維持しながら実質的に高い吐き出し圧力を生じさせることができる。少なくとも1つの実施形態では、主圧縮機104から吐き出された圧縮再循環流144の温度は、800°F(427℃)であり、その圧力は、約280psiaであるのが良い。
【0038】
以下の表は、本明細書において説明したブースト圧縮機142の追加の利点を有する又は有していないコンバインドサイクルガスタービンに基づく試験結果及び性能評価を提供している。
表1
【0039】
表1から明らかなはずであるように、ブースト圧縮機142を含む実施形態により、圧縮比の増大に起因して膨張機106の動力(即ち、「ガスタービン膨張機動力」)の増大が得られる。主圧縮機104の動力需要が増大する場合があるが、その増大分は、膨張機106の動力出力の増大によって埋め合わされる以上のものがあり、その結果、約1%lhv(低位発熱量)の全体的熱力学的性能効率の向上が得られる。
【0040】
さらに、ブースト圧縮機142の追加により、パージ流146のライン中における窒素膨張機152の電力出力及びCO
2パージ圧力を増大させることができる。ブースト圧縮機142は、窒素膨張機152の電力出力を増大させることができるが、表1で理解できるように、窒素膨張機152は、ブースト圧縮機の有無にかかわらず、システム100全体の効率に著しく寄与する。
【0041】
パージ流146のパージ圧力の増大により、高いCO
2分圧に起因してCO
2分離器148の溶剤処理性能を向上させることができる。かかる性能向上としては、溶剤抽出プロセスに関して機器サイズの減少の形での資本的支出全体の減少が挙げられるが、これには限定されない。
【0042】
次に
図2を参照すると、システム200として具体化されると共に説明する
図1の発電システム100の変形実施形態が示されている。したがって、
図2は、
図1を参照すると最も良く理解できる。
図1のシステム100と同様、
図2のシステム200は、排ガス再循環(EGR)システム124に結合され又は違ったやり方でこれによって支持されたガスタービンシステム102を有している。しかしながら、
図2のEGRシステム124は、ブースタ圧縮機142がHRSG126の次に配置され又は違ったやり方でこれに流体結合された実施形態から成るのが良い。したがって、冷却された排ガス132をブースタ圧縮機142で圧縮し、その後、冷却ユニット134でその温度を減少させることができる。かくして、冷却ユニット134は、ブースト圧縮機142によって生じた圧縮熱を除去するようになった後置冷却器(アフタークーラ)としての役目を果たすことができる。先に開示した実施形態の場合と同様、水ドロップアウト流138は、ライン130内に追加の蒸気を生じさせるようHRSG126に送られても良く、或いは送られなくても良い。
【0043】
次に、冷却再循環ガス流140を主圧縮機104に差し向けるのが良く、かかる冷却再循環ガス流は、上述したようにここで更に圧縮され、それにより圧縮された再循環流144が生じる。理解できるように、ブースト圧縮機142での圧縮後に冷却排ガス132を冷却ユニット134で冷却することにより、冷却再循環ガス流140を次の主圧縮機104内の所定の圧力まで圧縮するのに必要な動力の大きさを減少させることができる。
【0044】
図3は、システム300として具体化された
図1の低エミッション発電システム100の別の実施形態を示している。したがって、
図3は、
図1及び
図2を参照すると最も良く理解できる。
図1及び
図2にそれぞれ記載されているシステム100,200と同様、システム300は、EGRシステム124により支持され又は違ったやり方でこれに結合されたガスタービンシステム102を有している。しかしながら、
図3のEGRシステム124は、第1の冷却ユニット134及び第2の冷却ユニット136を有するのが良く、これら冷却ユニット相互間には、ブースト圧縮機142が流体結合されている。左記の実施形態の場合と同様、各冷却ユニット134,136は、当該技術分野で知られている直接接触型冷却器、トリム冷却器等であるのが良い。
【0045】
1つ又は2つ以上の実施形態では、HRSG126から放出されたライン132内の冷却排ガスを第1の冷却ユニット134に送って凝縮水ドロップアウト流138及び冷却再循環ガス流140を生じさせるのが良い。冷却再循環ガス流140をブースト圧縮機142に差し向けるのが良く、その目的は、冷却再循環ガス流140の圧力を上昇させることにあり、次に、この冷却再循環ガス流を第2の冷却ユニット136に差し向けることにある。第2の冷却ユニット136は、ブースト圧縮機142により生じた圧縮熱を除去し、更に水ドロップアウト流143を介して追加の凝縮水を除去するようになった後置冷却器としての役目を果たすことができる。1つ又は2つ以上の実施形態では、各水ドロップアウト流138,143は、ライン130内に追加の流れを生じさせるようHRSG126に送られても良く、或いは送られなくても良い。
【0046】
次に、冷却再循環ガス流140を主圧縮機104中に導入して名目上、燃焼チャンバ110の圧力よりも高い圧力状態にあり又はこの燃焼チャンバ圧力の状態にある圧縮再循環流144を生じさせるのが良い。理解できるように、ライン132内の冷却排ガスを第1の冷却ユニット134で冷却することにより、冷却再循環ガス流140をブースト圧縮機142で圧縮するのに必要な動力の大きさを減少させることができる。さらに、排出物を第2の冷却ユニット136で一段と冷却することにより、冷却再循環ガス流140を次の主圧縮機104内の所定の圧力まで圧縮するのに必要な動力の大きさを減少させることができる。
【0047】
次に
図4を参照すると、
図3のシステム300と幾つかの点においてほぼ同じである低エミッション発電システム400の別の実施形態が示されている。したがって、
図4のシステム400は、
図1及び
図3を参照すると最も良く理解できる。しかしながら、
図1〜
図3を参照して開示した個々の実施形態又はこれら実施形態の組み合わせは、本発明の範囲から逸脱することなく、
図4のシステム400と関連して実施できると共に/或いは省略できる。例えば、EGRシステム124に組み込まれる特定の施設及び機器は、本明細書のどこか他の場所で説明するように様々であって良い。
【0048】
上述したように、主圧縮機104から放出された圧縮再循環流144の温度は、約800°F(426.7℃)であるのが良く、そして約280psiaの圧力を示す。その結果、圧縮再循環流144から取り出されたパージ流146は、ほぼ同じ温度及び圧力を示すことができる。もう一度注目されるべきこととして、特定の温度及び圧力は、膨張機、圧縮機、冷却器等の特定の製造メーカ及び/又はモデルに応じて必然的に変わることになる。圧力が燃焼後CO
2回収方式を採用した従来型天然ガスコンバインドサイクル(NGCC)システムで見受けられる圧力よりも非常に高いので、システム400では、CO
2分離器148にエネルギーをあまり用いないガス処理プロセスの使用が容易である。例えば、かかる高い温度及び高い圧力は、燃焼チャンバ110で行われる化学量論的燃焼の結果として起こる実質的な酸素不足と組み合わさって、CO
2をパージ流146から抽出するために高温炭酸カリウム溶剤の使用が可能になる。他の実施形態では、CO
2選択的吸収剤としては、モノエタノールアミン(“MEA”)、ジエタノールアミン(“DEA”)、トリエタノールアミン(“TEA”)、炭酸カリウムメチルジエタノールアミン(“MDEA”)、活性メチルジエタノールアミン(“aMDEA”)、ジグリコールアミン(“DGA”)、ジイソプロパノールアミン(“DIPA”)、ピペラジン(“PZ”)、これらの誘導体、これらの混合物又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。他の適当な吸収剤及び技術としては、プロピレンカーボネート物理的吸着溶剤並びに他のアルキルカーボネート、2〜12個のグリコール単位のポリエチレングリコールのジメチルエーテル(Selexol(商標)プロセス)n‐メチル‐ピロリドン、スルフォラン及びSulfinol(登録商標)ガス処理プロセスの使用が挙げられるが、これらには限定されない。
【0049】
一実施形態では、CO
2分離器148におけるガス処理プロセスでは、パージ流145の温度を約250°F(121℃)〜300°F(149℃)に冷却する必要がある。これを達成するため、パージ流146を熱交換器158、例えば交差交換型熱交換器中に通すのが良い。少なくとも1つの実施形態では、CO
2をCO
2分離器148内でパージ流146から抽出することにより、後には、パージ流146の高い圧力状態又はこれに近い圧力状態であり且つ約150°F(66℃)の温度の窒素に富む残留流151が残る。一実施形態では、パージ流146の冷却と関連した熱エネルギーは、熱交換器158により抽出されて残留流151を再熱するために使用でき、それにより温度が約750°F(399℃)、圧力が約270〜280psiaの加熱された窒素蒸気160が生じる。パージ流146との熱交換は、残留流を加熱する一手法であるが、他の方法も本発明の範囲に含まれる。例えば、1つ又は2つ以上の実施形態では、流151の補足的加熱は、HRSG126によって実施可能であり、それにより熱が供給されると共に/或いは流130が生じる。他の例示の方法が本明細書において説明されているが、これら方法は、残留流151を加熱する利用可能な方法の網羅的な列挙であると解されてはならない。
【0050】
1つ又は2つ以上の実施形態では、次に、加熱窒素蒸気160をガス膨張機152で膨張させるのが良い。したがって、熱交換器158で熱を交差交換することは、主圧縮機104から引き出された圧縮エネルギーのうちの相当な量を捕捉するようになっており、これを用いてガス膨張機152から抽出される動力を最大にし、オプションとして、化学量論的入口圧縮機118に動力供給する。少なくとも1つの実施形態では、主として大気圧状態の窒素から成る排ガス156を無害の状態で大気中に逃がすことができ又は当該技術分野において知られている他の下流側用途に使用することができる。例示の下流側用途、例えば蒸発式冷却プロセスは、上述したように同日出願の米国特許出願(発明の名称:Stoichiometric Combustion with Exhaust Gas ?Recirculation and Direct Contact Cooler)に記載されている。
【0051】
システム400の始動中及び通常の作動中、ガス膨張機152が入口圧縮機118を作動させるのに必要な動力の全てを供給することができない場合、少なくとも1つのモータ162、例えば電気モータをガス膨張機152と相乗的に用いるのが良い。例えば、モータ162は、システム400の通常の作動中、モータ162がガス膨張機152からの動力不足分を供給することができるよう適当なサイズのものであるのが良い。追加的に又は代替的に、作動中、ガス膨張機152が入口圧縮機118により必要とされる動力よりも多くの動力を生じさせているときがある。幾つかの具体化例では、少なくとも1つのモータ162は、例えば送電設備網から圧縮機に電力を提供し又はタービン152によって生じた動力から電気を発生させるよう選択的に構成されているのが良いモータ/発電機システムであるのが良い。
【0052】
次に
図5を参照すると、
図4のシステム400と幾つかの点においてほぼ同じである低エミッション発電システム500の別の実施形態が示されている。したがって、
図5のシステム500は、
図1、
図3及び
図4を参照すると最も良く理解できる。しかしながら、
図1〜
図4を参照して開示した実施形態をどれも個々に又はシステム500と組み合わせて具体化でき、これは、本発明の範囲から逸脱することはない。
【0053】
一実施形態では、パージ流146を圧縮再循環流144からいったん取り出すと、その温度を触媒装置164で行われる触媒プロセスにより高めることができる。作用を説明すると、触媒装置164は、パージ流中の酸素及び/又は一酸化炭素含有量を減少させ、これを残留CO
2及び熱に変換するよう構成されているのが良い。触媒装置164は、単一の装置であっても良く或いは並列、直列又は並列と直列の組み合わせ状態の複数個の装置であっても良い。一実施形態では、触媒装置164は、動作するのに少量の動力しか必要としない小型装置であっても良い。例示の一触媒装置164としては、エミッション要件に適合するようHRSGで通常用いられる酸素減少触媒が挙げられる。かかるシステムは、一般に、多量の酸素を除去するようには設計されていないが、相当な量の酸素が圧縮再循環流144中に残っている場合、パージ流146を2回以上触媒装置164中に再循環させ、その後更に処理し又は使用し、例えば、石油・原油回収増進(EOR)、CO
2隔離等のために圧縮して注入するのが良い。
【0054】
さらに、パージ流146中の残留炭化水素も又、触媒装置164で燃焼させることができる。少なくとも1つの実施形態では、パージ流146の温度をパージ流146中に存在する約1200ppm酸素の完全な触媒変換によって約785°F(419.4℃)から約825°F(440.6℃)まで上げることができる。触媒装置164に用いることができる例示の触媒としては、ニッケル、白金、ロジウム、ルテニウム、パラジウム、これらの誘導体、これらの混合物又はこれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらには限定されない。熱含有量のこの増加分を熱交換器158に導入して窒素に富んだ残留流151と交差熱交換するのが良く、その結果、加熱された窒素蒸気160の温度が高くなると共にガス膨張機152における有効且つ強力な膨張プロセスの実現が容易になる。
【0055】
ガス膨張機152を含むトリプルサイクルシステムの更に別の改良手段として、1つ又は2つ以上の実施形態では、水をライン166経由で加熱された窒素蒸気160中に注入してガス膨張機152の質量スループットを増大させ、その結果生じる動力を増大させるのが良い。水は、処理済みの噴霧水又は蒸気であるのが良い。少なくとも1つの実施形態では、噴霧水又は蒸気の注入により得られる補足的動力は、動力出力を約169MWから約181MWに増大させることができる。理解できるように、動力出力は、一般に、ガス膨張機のメーカ及びモデルで決まる。注目されるべきこととして、ガス膨張機152を通る質量流量を増大させるためにライン166により加熱状態の窒素蒸気160中に噴霧水又は蒸気を注入することは、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書において開示した実施形態のうちのどれにも利用できる。
【0056】
図6を参照すると、
図5のシステム500と幾つかの点においてほぼ同じである低エミッション発電システム600の別の実施形態が示されている。したがって、
図6のシステム600を詳細には説明しないが、かかるシステム600は、
図5を参照すると最も良く理解できる。一実施形態では、システム600は、ガス膨張機152に先立って配置される追加の化学量論的燃焼チャンバ168を有するのが良い。燃焼チャンバ168は、高い温度及び高い圧力状態の放出流174を発生させるために上述の燃焼チャンバ110と非常に良く似た仕方で燃料170と圧縮酸化体172の混合物を化学量論的に燃焼させるよう構成されているのが良い。一実施形態では、燃料170及び圧縮酸化体172は、第1の燃焼チャンバ110中に供給される燃料112及び圧縮酸化体114と同一の源からそれぞれ引き出されるのが良い。追加の燃焼チャンバ168を有する具体化例では、熱交換器158は、他の手段により、例えば、システム600又は別の場所の1つ又は2つ以上の他の流を加熱することによってパージ流を冷却するのが良い。例えば、パージ流に関する熱交換器は、追加の熱をHRSG又は改質プロセスに提供するのが良い。
【0057】
他の実施形態では、特に、ゼロCO
2エミッションが望ましく又は必要な実施形態では、燃料170は、主として水素から成るのが良い。少なくとも1つの実施形態では、水素燃料は、HRSG126又は別個のHRSG(図示せず)でメタンを改質することによって得ることができる。メタンの改質及び水性ガス転化後、水素生成物流中のCO
2を吸収塔(図示せず)、例えばCO
2分離器148で除去することができる。次に、水素を燃焼チャンバ168内で加熱状態の窒素蒸気160流中の窒素のうちの何割かと混合すると、許容可能なガスタービン燃料を作ることができる。
【0058】
熱交換器158から放出され又はCO
2分離器148から放出された加熱状態の窒素蒸気160は、燃焼温度及び放出流174の温度を加減するようになった希釈剤としての役目を果たすことができる。少なくとも1つの実施形態では、燃焼チャンバ168から出た放出流174は、機械的動力を生じさせるためのガス膨張機内での膨張前に約2500°F(1371℃)の温度を有するのが良い。理解されるように、ガス膨張機152と燃焼チャンバ168と入口圧縮機118の組み合わせは、別個の標準型ガスタービンシステムとしての特徴を有することができ、この場合、入口圧縮機118は、ガスタービンの圧縮機側端部となり、ガス膨張機152は、ガスタービンの膨張機側端部となる。
【0059】
1つ又は2つ以上の実施形態では、排ガス156は、約1100°F(593℃)の温度を有するのが良い。少なくとも1つの実施形態では、排ガス156は、蒸気ガスタービン128内における動力として熱を回収するためにHRSG126に差し向けられるのが良い。他の実施形態では、排ガス156は、外部HRSG及び蒸気ガスタービン(図示せず)に差し向けられて他の用途のための動力を発生させるのが良い。いずれの場合においても、窒素に富んだ残留流151は、膨張機152の通過後、本明細書において説明した方法のうちの任意の仕方で、例えば、窒素ベントを介し、隔離、EOR又は圧力保守作業等によって処分されるのが良い。
【0060】
次に、
図7を参照すると、
図6のシステム600と幾つかの点においてほぼ同じである低エミッション発電システム700の別の実施形態が示されている。したがって、
図7のシステム700を詳細には説明しないが、かかるシステム600は、
図6及びその説明を参照すると最も良く理解できる。別個の入口圧縮機118及び窒素膨張機152(
図1〜
図6参照)を利用するのではなく、
図7に示されているようなシステム700は、第2の圧縮機176及び第2の膨張機178を備えた第2のガスタービンシステム702を有するのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、第2の圧縮機176は、第2の供給酸化体180を受け取ってこれを圧縮するのが良い。
図1〜
図6に示されていると共に上述した供給酸化体120と同様、第2の供給酸化体180としては、酸素を含む任意適当なガス、例えば空気、酸素に富んだ空気又はこれらの組み合わせが挙げられる。第2の圧縮機176は、第2の供給酸化体180を圧縮して第2の圧縮された酸化体182を発生させるよう構成されているのが良い。図示のように、燃焼チャンバ110に必要な圧縮された酸化体114を第2の圧縮された酸化体182流から供給し又は抽出するのが良く、かかる圧縮酸化体114は、全体として上述したのと同一の機能を果たす。
【0061】
作用を説明すると、燃焼チャンバ168は、高い温度及び高い圧力状態の放出流174を発生させるために燃料170と第2の圧縮酸化体182の組み合わせを化学量論的に燃焼させるよう構成されているのが良い。1つ又は2つ以上の実施形態では、熱交換器158からの窒素蒸気160又はCO
2分離器148からの残留流は、第2の燃焼チャンバ168内での燃焼温度を加減するようになった希釈剤として利用可能である。一実施形態では、燃料170は、第1の燃焼チャンバ110に供給される燃料112、例えば炭化水素燃料と同一の源に由来するのが良い。ゼロCO
2エミッションが望ましい又は必要な他の実施形態では、燃料170は、主として、全体として
図6を参照して上述したように水素から成るのが良い。炭化水素燃料が用いられる場合、当然のことながら、結果としてCO
2エミッションが生じる。しかしながら、希釈剤としての主として純粋窒素流の使用に鑑みて、結果として生じるCO
2エミッションは、従来型NGCC発電プラントと比較した場合よりも著しく少ないであろう。例えば、一実施形態では、システム700から結果として生じるCO
2エミッションは、従来型NGCC発電プラントの場合の約400ポンド/MWhr(1ポンド=0.454kg)と比較して、約80ポンド/MWhrであるに過ぎないであろう。1つ又は2つ以上の実施形態では、第2の膨張機178からの排ガス156は、約1100°F(593℃)の温度を有するのが良い。少なくとも1つの実施形態では、排ガス156は、別個の蒸気ガスタービン186内での動力として熱を回収するために第2のHRSG184に差し向けられるのが良い。しかしながら、変形実施形態では、排ガス159は、蒸気ガスタービン128内への動力として熱を回収するために第1のHRSG126に差し向けられても良い。この場合も又、排ガス156は、第2のHRSG184の通過後、上述したように逃がされ又は違ったやり方で炭化ガス回収作業(図示せず)で用いられても良いことが理解できる。
【0062】
理解できるように、
図7のシステム700により、特注の空気圧縮機及び特注の膨張機を得るためにコスト高のアップグレードを実施するのではなく、市販のガスタービンを利用することができる。システム700は又、高い効率で多くの正味の動力を生じさせることができる。というのは、第2の膨張機178の入口温度は、約2500°F(1649℃)の温度に達することができるからである。
【0063】
次に
図8を参照すると、
図3のシステム300と幾つかの点においてほぼ同じである低エミッション発電システム800の別の実施形態が示されている。したがって、
図8のシステム800は、
図1及び
図3を参照すると最も良く理解できる。しかしながら、
図1〜
図6を参照して開示した実施形態はどれも、個々に又は
図8のシステム800と組み合わせて具体化でき、これは、本発明の範囲から逸脱することはない。例示の実施形態では、主としてCO
2分離器148から導き出された窒素から成る残留流151を下流側圧縮機188に導くのが良い。下流側圧縮機188は、残留流151を圧縮して例えば約3400psiの圧力又は圧力維持用途のために貯留槽中に注入されるのに適した圧力を有する圧縮排ガス190を発生させるよう構成されているのが良い。
残留流151を下流側圧縮機188で圧縮することは、メタンガスを典型的には炭化水素ウェル中に再注入してウェル内圧力を維持する用途では有利であることが分かる。本明細書において開示する実施形態によれば、これとは異なり、窒素を炭化水素ウェル中に注入するのが良く、そして残留メタンガスを販売するか又は違ったやり方で関連用途における燃料として使用するのが良く、例えば、燃料流112,170(
図6及び
図7参照)のための燃料を提供する。
【0064】
引き続き
図5〜
図7を参照すると、以下の表は、膨張サイクルなしのシステム(例えば、
図8のシステム800)、燃焼チャンバ168内における追加の点火なしのシステム(例えば
図5のシステム500)及び燃焼チャンバ168内における追加の点火ありのシステム(例えば、
図6及び
図7のそれぞれのシステム600,700)に基づく試験結果及び性能評価を提供している。次のデータは、メタン燃料170が燃焼のために点火されていることを反映している。
【0066】
表2から明らかなはずであるように、チャンバ168内の点火方式を備えた実施形態の結果として、著しく高いコンバインドサイクル電力又は動力出力が得られ、即ち、燃焼チャンバ168内での点火方式を具体化しない実施形態と比較して電力又は動力出力がほぼ2倍である。さらに、かかる点火技術を実施しない実施形態とは対照的に、本明細書において開示する点火を採用したシステムの場合、全体的な熱力学的性能効率は、約3.3%lhv(低位発熱量)の実質的な増加又は向上を示す。
【0067】
本発明の技術には種々の改造及び変形形態が可能であるが、上述の例示の実施形態は、例示として示されているに過ぎない。再度確認的に理解されるべきこととして、本発明は、本明細書において開示された特定の実施形態に限定されるわけではない。もっとはっきりと言えば、本発明は、特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲に含まれる全ての改造例、均等例及び変形例を含む。