特許第6046616号(P6046616)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046616廃棄物ならびに加硫ゴムおよびタイヤコードの内の少なくとも1つの成分に由来する複合材料
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046616
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】廃棄物ならびに加硫ゴムおよびタイヤコードの内の少なくとも1つの成分に由来する複合材料
(51)【国際特許分類】
   C08L 21/00 20060101AFI20161212BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 97/00 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 7/02 20060101ALI20161212BHJP
   C08K 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20161212BHJP
   B09B 3/00 20060101ALI20161212BHJP
   B29B 17/04 20060101ALI20161212BHJP
   C08J 11/18 20060101ALI20161212BHJP
   C08J 7/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C08L21/00
   C08L1/02
   C08L97/00
   C08L101/00ZAB
   C08K7/02
   C08K3/00
   C08L95/00
   B09B3/00 Z
   B09B3/00 303C
   B09B3/00 303Z
   B29B17/04
   C08J11/18CEQ
   C08J7/00 301
【請求項の数】13
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-519214(P2013-519214)
(86)(22)【出願日】2011年7月14日
(65)【公表番号】特表2013-536272(P2013-536272A)
(43)【公表日】2013年9月19日
(86)【国際出願番号】IL2011000562
(87)【国際公開番号】WO2012007949
(87)【国際公開日】20120119
【審査請求日】2014年6月27日
(31)【優先権主張番号】61/364,182
(32)【優先日】2010年7月14日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】513010756
【氏名又は名称】ユー.ビー.キュー.マテリアルズ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】タミール、ユヴァル
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−165900(JP,A)
【文献】 特開2009−196868(JP,A)
【文献】 特開平04−227095(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0283861(US,A1)
【文献】 特開平07−314445(JP,A)
【文献】 特開平10−146827(JP,A)
【文献】 特開昭52−014924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/16
B29B 17/04
C08J 11/18
B09B 1/00− 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのうち、すくなくとも1つを含む有機繊維を含む有機成分、及び
熱可塑性成分
を含んでいる第1の成分;及び
加硫ゴム及び任意選択でタイヤコードを含んでいる第2の成分
の混合物を含む複合材料であって、
少なくとも50%w/wの加硫ゴムを含み;
少なくとも10%w/wの有機成分を含み;
押出成形物の形であり;そして
熱可塑特性と
少なくとも1.3MPaから最大4.5MPaの最大引張強度を有する、
上記複合材料。
【請求項2】
第1の成分の量が、複合材料の全体重量の10%重量対重量(w/w)〜50%w/wであり、第2の成分の量が、複合材料の50%w/w〜90%w/wである請求項1に記載の複合材料。
【請求項3】
複合材料中の熱可塑性成分の量が、複合材料の1%w/w〜30%w/wであり、有機成分の量が、複合材料の10%w/w〜49%w/wである請求項1に記載の複合材料。
【請求項4】
加硫ゴムの量が、複合材料の50%w/w〜89%w/wであり、タイヤコードの量が、1%w/w〜30%w/wである請求項1に記載の複合材料。
【請求項5】
少なくとも1つの以下の特性を有する請求項1に記載の複合材料:
少なくとも7KJ/mのシャルピー衝撃
少なくとも80MPaの弾性率、
少なくとも2%の破断伸び、
少なくとも2MPaの曲げ強度、および
少なくとも300MPaの曲げ弾性率。
【請求項6】
下記を含む、複合材料を製造するためのプロセス:
−セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのうち、すくなくとも1つを含む有機繊維を含む有機廃棄物、および
熱可塑性廃棄物
を含む第1の成分と
加硫ゴム及び任意選択でタイヤコードを含んでいる第2の成分とを、
剪断力下の加熱の間に混合して溶融物を得ること、
−その溶融物に対し、少なくともその溶融物を押し出し成形して複合材料を得ることを含む処理をすること;
ここで、加硫ゴムの量が少なくとも50%w/wであり;そして
剪断力下の加熱混合が100℃〜200℃の範囲の機械設定温度でなされる
【請求項7】
下記を含む、複合材料を製造するためのプロセス:
−少なくとも
セルロース、ヘミセルロースおよびリグニンのうち、すくなくとも1つを含む有機繊維を含む有機廃棄物および
熱可塑性廃棄物
を、乾燥、微粒化、混合および剪断力下加熱からなる群より選択される少なくとも1つの処理ステップに供し、第1の成分を得ること;
−第1の成分と
加硫ゴムを含んでいる第2の成分とを、
剪断力下の加熱の間に混合して溶融物を得ること、
−その溶融物に対し、少なくともその溶融物を押し出し成形して複合材料を得ることを含む処理をすること;
ここで、加硫ゴムの量が少なくとも50%w/wであり;そして
剪断力下の加熱混合が100℃〜200℃の範囲の機械設定温度でなされる。
【請求項8】
第1の成分が、全体重量の内の第1の成分と第2の成分を合わせた量の10%(w/w)〜50%w/wの量であり、第2の成分が、第1の成分と第2の成分を合わせた量の50%w/w〜90%w/wの量である請求項6又は7に記載のプロセス。
【請求項9】
熱可塑性廃棄物の量が、第1の成分と第2の成分を合わせた量の1%w/w〜30%w/wであり、有機廃棄物の量が、第1の成分と第2の成分を合わせた量の10%w/w〜49%である請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
第1の成分が粒子形態であり、粒子が直径0.01mm〜2.5mmの大きさである請求項6〜9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
第1の成分が、実質的に未分別家庭廃棄物である請求項6〜10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
請求項1〜のいずれか一項に記載の複合材料を用意し、その複合材料を処理することを含み、処理が、複合材料を100℃〜200℃の温度に加熱し、押し出し、圧縮成形、射出成形からなる群より選択される少なくとも1つのプロセスステップを含み、それにより、製品が得られる、製品を製造するためのプロセス。
【請求項13】
加熱の前またはその間に、ビチューメン、粗骨材および砂からなる群より選択される少なくとも1つの強化成分を添加することを含む請求項12に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加硫ゴムおよび/または廃タイヤを含む廃棄物の処理方法およびその処理から得られる製品に関する。
【背景技術】
【0002】
毎年、米国内で約2億8千万本のタイヤが廃棄され、その内の3千万本のみが再生タイヤとなるか、または再利用され、年間、凡そ2億5千万本のスクラップタイヤが処理されるべきまま放置されている。これらのスクラップタイヤの処理の必要性に加えて、何年にもわたって蓄積されて多数の山積みとなっている20〜30億本にもなるであろうタイヤが存在すると推定されている。天然ゴムの上昇し続けている価格により、スクラップタイヤのリサイクルに向かう環境的な意識に対し経済的な推進力が与えられている。
【0003】
通常の廃棄された自動車用タイヤは、9.1kgの重さである。凡そ5.4〜5.9kg(13 lb)が、35パーセントの天然ゴムおよび65パーセントの合成ゴムからなる回収可能なゴムである。代表的トラックタイヤは、18.2kgの重量であり、また、60〜70パーセントの回収可能なゴムを含む。トラックタイヤは、通常、65パーセントの天然ゴムおよび35パーセントの合成ゴムを含む。ほとんどの最近のタイヤはスチールベルトラジアルタイヤ(steel−belted radials)で、10〜15%の金属および10%のコード(例えば、ポリエステル、ナイロンまたはレーヨン)を含む。
【0004】
毎年産出される2億5千万本のタイヤの約45パーセントが、埋め立て、山積み、または不法投棄として処分される。約7パーセントが外国に輸出され、8パーセントが新しい製品としてリサイクルされ、凡そ40パーセントがタイヤ由来燃料として、丸ごとまたはチップ状に切断して使用される。近年、スクラップタイヤの最大の単一用途は、種々の産業の燃料用である。毎年、少なくとも9百万本のスクラップタイヤが、粉砕ゴムとして処理されている。粉砕タイヤゴムは、ゴム製品(例えば、フロアマット、絨毯の下に敷く詰め物、および自動車用泥よけ)、およびアスファルトすべり止層中の細骨材添加物として(乾式プロセス)、プラスチック製品に使われる。クラムラバーは、アスファルトバインダー調節剤として(湿式プロセス)、加熱混合アスファルト舗装道路で使われている。
【0005】
タイヤゴム廃棄物は、そのサイズおよび作成方法により定義されるカテゴリー、すなわち、スリットタイヤ(slit tire)、破砕タイヤまたはチップタイヤ、粉砕ゴムおよびクラムラバーに分けられる。
【0006】
ゴムのリサイクルプロセスは、細断に始まる。ほとんどのスチールと強化コードを除去した後、第二の細断が行われ、得られたゴム粉末は製品再生の準備が整った状態になる。この不活性材料を利用できる製品用途は、脱硫を必要としないものに制限される。ゴムのリサイクルプロセスでは、脱硫は、加硫ゴム分子を架橋している硫黄−硫黄結合の切断から始まり、それにより新しい架橋の形成を促進する。2つの主要ゴムリサイクルプロセスが開発されている。それは、改良オイルプロセスと水−オイルプロセスである。これらのプロセスのそれぞれで、再生されるゴム粉末にオイルと再生剤が添加され、特殊設備中で長時間(5〜12時間)、高温度と高圧力にかけられ、さらに広範な機械的な後処理も必要となる。これらのプロセスから再生されたゴムは、変性された特性を有し、タイヤを含む多くの製品としての使用に適する。通常、これらの種々の脱硫プロセスは、有効な脱硫ができていないか、一貫した品質を得ることができていないか、または法外に高価である。
【0007】
近年、タイヤ強化繊維(またはタイヤコード)は、リサイクルにはほとんど用いられておらず、タイヤリサイクル産業では、別の大きな問題が生じている。タイヤコードのリサイクル方法の珍しい例が、米国特許第3,468,974号で提供されており、これは、64〜91%のタイヤコード(ポリアミド)および3〜36%の加硫ゴムを含み、ペレット化タイヤコード材料の押し出しにより生産される成形組成物を教示している。他方、タイヤ由来のゴムから作られる製品の生産には、ゴムの脱硫ステップが必要である。例えば、国際公開第2009/019684号には、使用済ミネラルオイル、植物油の加水分解廃棄物、および/または動物脂肪ならびに廃棄自動車タイヤ、および/または他のタイヤ、および/または他のゴム廃棄物由来の高分子プラスチック製品の製造方法が開示されている。
【0008】
プラスチックと加硫ゴムとの混合は、加硫ゴムのリサイクルにとっては既知である。例えば、米国特許公開第2001/0056155号は、超低密度ポリエチレンおよびフィラーの混合物由来の圧縮成形品を提供する。これにはリサイクルゴムを含んでもよい。
【0009】
米国特許公開第2005/0279965号には、リサイクルタイヤ由来のクラムラバー、プラスチックおよびアスファルトを、高剪断力ミキサー中で混合することを含む複合材料の製造方法が記載されている。
【0010】
米国特許第6,558,773号および同6,703,440号では、ゴムとバインダー(例えば、超低密度ポリエチレン)を加熱混合し、混合物を押し出した後、所望の製品に圧縮成形することによる作られる圧縮成形品が開示されている。
【0011】
米国特許第6,169,128号では、廃棄されたプラスチックおよびゴムをバインダーと共に処理して加工可能な材料、およびそれから有用な製品を得る方法が教示されている。
【0012】
国際公開第2004/074594号では、好ましくは、ゴムタイヤおよびドラムの混合物で作られた屋根用パネルまたは羽目板用途が教示されている。
【発明の概要】
【0013】
主題は、第1の成分および第2の成分を含む複合材料を開示し、第1の成分は、有機成分と熱可塑成分を含み、第2の成分は、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0014】
主題は、
−有機廃棄物と熱可塑性廃棄物を含む第1の成分と加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む第2の成分を、剪断力下、加熱しながら混合して溶融物を得ること;および
−溶融物の処理;
を含むプロセスをさらに開示し、
前記溶融物の処理は、少なくとも溶融物を冷却して、有機成分;熱可塑性成分;ならびに加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む複合材料を得ることを含む。
【0015】
主題は、
−少なくとも有機廃棄物と熱可塑性廃棄物を、乾燥、微粒化、混合および剪断力下加熱からなる群より選択される少なくとも1つの処理ステップにかけ、第1の成分を得ること;
−第1の成分と、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される成分を含む第2の成分とを、剪断力下、加熱しながら混合し溶融物を得ること;およびその溶融物の処理;
を含むプロセスをさらに開示し、
前記溶融物の処理は、少なくとも冷却して、有機成分、熱可塑性成分ならびに加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む複合材料を得ることを含む。
【発明を実施するための形態】
【0016】
発明の詳細な説明
以下の説明は、どの当業者にも本発明の利用が可能となるように提供され、提供される実施例は、本発明の態様の実行に際し発明者により採用された代表的な技術である。これらの技術は、本発明を実施するための好ましい実施形態の代表的なものであるが、本開示を考慮すると、当業者なら、本発明の趣旨と意図された範囲を逸脱することなく、多くの修正がなされうることに気付くであろうことは理解されよう。
【0017】
下記において、全てのパーセンテージ(%)表示は、成分のw/w単位での相対的量、すなわち、複合材料重量の100単位中の成分の重量に関係付けられる。相対的量は、最終製品で決定しても、または記載処理の前に複合材料の製造に使われる出発材料で決定しても、または最終生成複合材料を得る前の処理の間に採取した試料で決定してもよい。気付かれるように、水分または他の揮発成分等の物質の損失、処理中のいくつかの揮発性化合物の形成、材料の分解、および複合材料と採取材料の成分含量の比較を行う際に考慮しなければならない他の因子が原因となり、処理される前と得られた複合材料の採取材料の成分(例えば、第1のおよび/または第2の成分)の相対量の間で、幾分かの(通常小さい)バラツキが存在することがありうる。
【0018】
用語の「約(about)」と、それに続く数値と共に、下記に示された全ての量または手段は、示した数値の約10%大きい数値と示した数値の10%小さい数値の間の可能な許容誤差を有する数値を意味していると理解されたい。例えば、用語の「約10%」は、9%〜11%の範囲を包含すると理解されるべきであり;用語の約100℃は、90℃〜110℃の範囲を意味する。これに関連して、重量%に関して、水を除いた、全乾燥ベースでのそれぞれの相対的%含量(w/w)が意図されていることに留意されたい。さらに、内容が明確に別義を示すことがなければ、単数形「a」、「an」および「the」は、複数の参照対象を含むことに留意されたい。
【0019】
以降の本明細書および請求項の全体を通して、文脈上他の意味に解すべき場合を除き、用語の「comprise」、およびその変化形、例えば、「comprises」と「comprising」は、述べられた成分もしくはステップまたは成分群もしくはステップ群を包含するが、いずれのステップまたは成分群もしくはステップ群も排除しないことを意味すると理解されたい。この関連で、用語の「基本的に〜から構成される(consisting essentially of)」は、処理または得られる製品に基本的な重要性を有する可能性のある列挙成分を含むが、他の成分を除外する複合材料を定義するために使用される。「から構成される(Consisting of)」は、従って、他の微量を越える成分を排除することを意味する。
【0020】
これらのそれぞれの移行用語(transition term)により定められる実施形態は、本発明の範囲内にある。
【0021】
特に、本発明は、一方では、タイヤコードを含む加硫ゴムおよび廃タイヤ材料に対する解決策、他方では、未分別廃棄物、例えば、家庭廃棄物、に対する解決策を提供することを目標としている。解決策は、上記の組み合わせ物を処理し、圧縮複合材料を得ることにより提供される。本開示は、従って、前述の廃棄物材料から作られる複合材料、廃棄物材料を有用な複合材料へと処理する方法、および廃棄物由来複合材料からの製造品を提供する。
【0022】
下記の説明および請求項で、その時々に、種々の用語が使用されるが、このような用語の本発明において解釈されるべき意味は以下の通りである:「有機廃棄物」は、本明細書では、限定されないが、例えば、庭園廃棄物(葉、刈り取った草、枝、干し草、花、おがくず、木くず、および樹皮)、食物廃棄物(果実、野菜、穀物、肉、卵殻、骨、オイル、脂肪、または乳製品)ならびにその他のもの(紙、糞便、粉塵、髪、木杯)、等の生きていたか、生きている任意の炭素含有廃棄物を意味する。複合材料が有機材料を含むため、それは、生物学的起源材料に固有のはっきりした特徴、例えば、DNA、タンパク質、葉緑素、カリウム、窒素および亜リン酸、等を含む。これらは、合成由来の材料には存在しない。有機廃棄物は、通常、有機繊維を含む。
【0023】
本明細書で使われる「有機成分」は、有機廃棄物由来の任意の炭素ベース材料を意味する。有機成分は、有機廃棄物を初めて形成する種々の有機成分の組み合わせであってもよく、本発明による処理後、一部が修飾を受けて(化学的および/または物理的に)異なる形態の化学材料(すなわち、有機廃棄物中に元々存在しない材料)に変化した有機廃棄物でもよい。
【0024】
「有機繊維」は、本明細書では、有機または人工由来の繊維の意味で使われる。一部の実施形態では、有機繊維には、セルロース、ヘミセルロースおよび/またはリグニンおよびこれらの組み合わせのいずれかが含まれ、後者は、また、用語の「リグノセルロースバイオマス」でも知られる。他のタイプのこの用語に包含される有機繊維には、他のタイプのセルロースおよびセルロース誘導体、ならびに繊維状タンパク質、例えば、ウールおよび絹が含まれる。
【0025】
本明細書で使われる「熱可塑性廃棄物」または「熱可塑性」は、融解温度を超える加熱で変化して熱流動性材料(柔軟な、展延性のある、成形可能な、再生可能な、および押し出し可能な、融合可能な材料)に変わり、融解温度未満に冷却すると、可逆的に弾性状態に変わる固体または基本的に固体材料を意味する。ガラス温度未満にさらに冷却すると、熱可塑性樹脂は、通常は無定形の固体状態をとる。熱可塑性樹脂には、限定されないが、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリビニルクロリド、ポリエチレン、テレフタラート、ポリアクリロニトリル、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリカルボナート、ナイロン、ポリウレタン、それらのコポリマーおよび上記で定義の熱可塑特性を有する他の材料が含まれる。
【0026】
「熱可塑性成分」は、本明細書では、熱可塑特性を示すプラスチック材料の意味で使われる。
【0027】
本明細書で使われる「実質的に未分別廃棄物」または「SUW」は、固体、半固体、および/または流体材料を含む廃棄物材料を意味し、ヒトおよび動物の活動から生ずる植物材料を含んでもよく、都市固形廃棄物、産業廃棄物(例えば、化学薬品、塗料、プラスチック、砂)、農業廃棄物(例えば、家畜肥料、穀物残滓)、スラッジ由来でもよく、さらに、有害材料、等を含む廃棄物であってもよい。廃棄物は、分解可能で可燃性廃棄物、例えば、紙、木材、織物または非可燃性廃棄物、例えば、金属、ガラス、砂、およびセラミックであってもよい。廃棄物は、古いゴミ処分場を含むゴミ処分場由来であってもよい。廃棄物は、未分別、例えば、得られたまま、すなわち、廃棄物管理施設または廃棄物集積場で受け取った形態であるか、またはゴミ処分場由来である;または廃棄物は、部分的に分別されている、すなわち、1つまたは複数の成分が処理前に選択的に除去されているが、大部分の廃棄物は、受領時のまま留保されている。このような選択的に除去された成分は、リサイクル可能な材料または製品として経済的価値を有する可能性があり、限定されないが、金属部品、例えば、バッテリー、アルミニウムおよび鉄、ガラス、セラミックス、紙、段ボールおよびボトル等のプラスチック容器、保存ボウル、市販プラスチック製すぐに料理できる容器、等が含まれる。大部分の留保されている廃棄物の場合は、少なくとも約80重量%の元々の廃棄物材料(すなわち、未分別のそのままの廃棄物)および時には90重量%超、さらには95重量%もの元々の廃棄物材料が留保されていることを意味する。換言すれば、廃棄物から除去されている成分は、元々の廃棄物の重量%で約20%、約10%または約5%でさえも越えない。
【0028】
「都市固形廃棄物」または「MSW」は、本明細書では、ヒトおよび産業から廃棄される住居および/または商業的廃棄物の意味で使用される。MSWは、木材、紙、段ボール、ティッシュ、等の木材由来生成物、生ごみ、およびプラスチックから構成される。2007年に、米国環境保護局は、MSWが以下の成分(重量%)で構成されていることを報告している:紙(32.7%)、ガラス(5.3%)、金属(8.2%)、プラスチックス(12.1%)、ゴム、革と織物(7.6%)、木材(5.6%)、庭ごみ(12.8%)、生ごみ(12.5%)、その他(3.2%)。イスラエルでも、2005年の同様の分析を報告している:有機物質(40%)、プラスチック(13%、主に熱可塑性樹脂)、段ボール(8%)、紙(17%)、織物(4%)使い捨ておむつ(5%)、その他(7%)、ガラス(3%)および金属(3%)。これらの割合は平均値であり、実際の割合は場所毎に変動するであろうが、これらの廃棄物中の主要成分は、プラスチックとセルロースタイプ物質、例えば、木材および紙、ティッシュ、ボール紙、等の木材由来成分である事は明白である。MSWは、通常、水分を含む。
【0029】
一部の実施形態では、廃棄物のSUWは、本発明においては、湿式材料(すなわち、水および/または湿気を含む)として、または乾燥材料(すなわち、0.1%w/w未満の湿分を含む)として使用できる。
【0030】
「乾燥」は、廃棄物または複合材料のいずれかの成分を処理して、その中の液体を除く意味で使用される。通常、除去は、揮発性液体(すなわち、少なくとも20℃で15mmHgの蒸気圧を有する液体、例えば、水やエタノール)の少なくとも一部の量の除去である。乾燥により、乾燥された廃棄物または成分、すなわち、10%以下の水分、5%以下の水分、および時には、さらに1%以下の水分を含む廃棄物が得られる。一部の実施形態では、乾燥後、廃棄物中の液体(例えば、水)の一定のレベル(例えば、1%超)が保持される。廃棄物から除去される液体の量は、最終的に得られる複合材料の目的の用途に適合するよう制御できる。さらに、乾燥には、あらゆる手段、例えば、廃棄物を屋外に置き乾燥させることによる、乾燥空気流下の、乾燥室中の、または液体を絞り出すことによる乾燥が包含される。本発明との関連で、乾燥には、少なくとも50%、時には、60%、70%、80%、90%、95%および、さらに時には99%までの廃棄物またはその成分中に最初に含まれている水分(これは、乾燥前後の廃棄物またはその成分を秤量することにより測定できる)の除去が含まれる。99〜100%パーセントの水分を廃棄物から除去する必要はなく、一部の用途では、複合材料調製用の、またはゴムおよび/またはタイヤコードを含む廃棄物の処理用のその後のプロセスにとって、幾分かの水が廃棄物中に残されていることがむしろ好ましいことは留意されたい。一部の実施形態では、乾燥後得られ、本明細書で開示の複合材料調製用に使用される廃棄物は、約1%〜約11%の範囲の含量で、水、および、任意選択で、エタノール等の、他の揮発性液体を含む。
【0031】
「加硫ゴム」は、本明細書では、架橋ゴムポリマーの意味で使用される。ゴムポリマーは、通常、炭化水素エラストマー、例えば、ポリイソプレン(天然ゴム、例えば、ゴム状物質、または合成ゴム)およびスチレン・ブタジエンゴム(SBR)である。架橋は、通常、ゴムポリマーと、硫黄、過酸化物、または当業者に既知の他のいずれかの架橋剤との反応が含まれ、架橋の間に、それぞれのポリマー鎖が相互に共有結合で連結されて、3次元マトリックスが得られる。ゴムポリマーの架橋により、エラストマーが熱硬化樹脂に徐々に変換される。架橋度は、加硫ゴムに応じて、ゴム毎に変化する。任意の加硫度の任意の加硫ゴムが使用可能であることを理解されたい。加硫ゴムのソースが、ゴム製造プラント由来のゴム残渣および廃棄加硫ゴムである場合には特に、加硫ゴムが、非加硫または脱硫ゴム成分を含んでもよいことは留意されたい。通常、非加硫または脱硫ゴムは、加硫ゴム全体重量の10%、またはさらに5%、または1%もの低さをも、越えないであろう。加硫ゴムは、また、残渣または混入物を含むゴム添加物、例えば、充填剤や繊維を含んでもよく、加硫反応中、その使用中、または処理(例えば、再生処理、リサイクル処理もしくはクラムラバーへの粉砕)中、ゴムはそれら中で露出される。
【0032】
加硫ゴムは、100%純度未満であってよく、加硫ゴム全体重量の0.1〜20%w/wの量の少量の他の残渣を含んでもよく、時には、加硫ゴムは0.5〜10%w/wの残渣、または1〜5%w/wの残渣を含む。これらの残渣には、タイヤコード、スチール、シリカ、抗粘着付与剤、オイル、砂、鉄、灰、および炭酸カルシウムが含まれる。
【0033】
一部の実施形態では、「加硫ゴム」は、廃棄加硫ゴム製品、例えば、限定されないが、使用済みタイヤ、バンパー、靴底、ラテックスおよびゴム手袋、コンベヤーベルト由来の加硫ゴムであり、また、産業ゴム残渣およびゴム製造プラント由来の廃棄加硫ゴムから受け入れてもよい。後者は、少量成分として一部の部分的加硫または非加硫ゴムを含んでもよい。一部の他の実施形態では、加硫ゴムは、天然または合成の未使用材料由来である。
【0034】
廃棄加硫ゴム製品(例えば、廃タイヤ)は、粉砕されて当技術分野で既知のいずれかの微粒子型のゴム、例えば、スクラップ、シュレッドスリットチップ、粉砕ゴムおよびクラムラバーへと粉砕される。
【0035】
一部の実施形態では、用語の「加硫ゴム」は、廃タイヤのいずれの成分でもよく、これには、限定されないが、全タイヤ(トレッドおよびケース)、またはタイヤスリット、タイヤチップ、粉砕ゴム、クラムラバー、タイヤシュレッズ、タイヤ粉末、タイヤコード、等の処理(サイジングおよび造形)によるタイヤの異なる形態が含まれる。
【0036】
大抵の場合、タイヤシュレッズまたはタイヤチップの生産は、タイヤシュレッダーによる1次および2次細断を含む。また、廃棄タイヤは、サイズ減少プロセスにより、通常、タイヤシュレッズ、タイヤチップ、粉砕ゴムまたはクラムラバーが得られる。同様に、他のソースの加硫ゴムを使う場合、これらはまた、サイズ減少により処理可能な粒子が得られる。
【0037】
「タイヤ」は、その通常の意味を有するものと理解されたい。タイヤは、主に、加硫ゴム、タイヤコードおよびスチールからなる。他の成分には、炭素、鉱物(例えば、亜鉛および硫黄)を含んでもよい。使用済タイヤの特定と管理に関する技術的ガイドライン(Technical Guidelines on Identification and Management of Used Tires)(UNEP、バーゼル条約)によると、1999年の平均で、タイヤは、45〜47%のゴム、21〜22%の炭素、16〜25%のスチール、約5%のタイヤコード、1〜2%の亜鉛、約1%の硫黄および5〜8%の添加物を含む。従って、これらの全ての成分が本明細書で使われるタイヤ廃棄物中に存在してもよい。
【0038】
「タイヤシュレッズ」は、300〜460 mm 長さで100〜230 mm幅のサイズから、 100 〜150mm長さまでの、サイズにバラツキのある、不規則形状のタイヤ微粒子の意味で使用される。サイズと形は、調製プロセス、メーカーインストラクション/設備および条件により制御可能である。通常、タイヤの細断プロセスの間に、タイヤシュレッズのエッジ部に沿って、内部のスチールベルト断片が露出される。スチールベルト断片は、通常、本発明による処理の前に、タイヤシュレッズから除去される。一部の実施形態では、スチールベルト断片は、磁気分離器、重量測定分離技術、渦電流分離システムおよび他のいずれかの通常使用される分離技術により除去される。
【0039】
「タイヤチップ」は、本明細書では、典型的には、76mm〜13mmの大きさの処理されたタイヤシュレッズの意味で使われる。
【0040】
「粉砕ゴム」は、本明細書では、特に、サイズ減少設備タイプおよび目的の用途に応じて、19mm〜0.15mm(No.100ふるい)の大きさのゴムの意味で使われる。粉砕ゴムの作成は、造粒機、ハンマーミル、または微粉砕装置により行うことができる。造粒機は、通常、比較的低表面積の規則的な形状の、立方体の粒子を作る。時には、ガラス繊維ベルトまたはコードが、通常は空気分離により微細ゴム粉末から分離される。粉砕ゴムは、二重サイクルの磁気分離にかけて選別し、種々のサイズ画分として回収できる。
【0041】
「クラムラバー」は、本明細書では、4.75mm(No.4ふるい)から0.075mm(No.200ふるい)未満までのサイズのゴムの意味で使われる。スクラップタイヤをクラムラバーに変換する通常のいずれかの方法、例えば、クラッカーミルプロセス、造粒機プロセスおよびマイクロミルプロセスが適用できる。クラッカーミルプロセスでは、スクラップタイヤが回転する波形スチールドラムの間を通過し、不規則形状の分裂粒子を生成し、大きな表面積を与える。これらの破砕物は、約4.75mm〜0.5mm(No.4〜No.40ふるい)の大きさの範囲にあり、通常、粉砕クラムラバーと呼ばれる。造粒機プロセスは、精密公差で通過させる回転スチールプレートを使ってゴムを分断することにより、造粒クラムラバー粒子を得るのに使用される。0.5mm(No.40ふるい)から0.075mm(No.200ふるい)の範囲の大きさの微粉砕クラムラバーは、マイクロミルプロセスで得ることができる。極低温技術も使用可能であり、この方法では、ゴム粒子を液体窒素と接触させ、粒子を脆性にして、小さい粒子への粉砕を容易にする。この技術は、最終細砕の前に使われることが多い。
【0042】
用語の「タイヤ繊維」と同義に使用される「タイヤコード」は、相対的に低い収縮度を有し、低いヒステリシス度を示す高強度(高弾性率)繊維状フィラメント材料を意味する。タイヤコードは、強化フィラメントとして使われ、タイヤに、ゴム製品の圧縮疲労に対するより優れた耐性を付与する。タイヤに関連する一方で、タイヤコードは、また、ゴムコンベアベルト、農業および配管ホース、等から得ることもできる。タイヤコードは、限定されないが、ポリエステル(例えば、ポリエチレンテレフタラート、PET)、ポリアミド(ナイロン)、芳香族ポリアミド(例えば、アラミドおよびp−アラミド)レーヨン、コットン、炭素繊維またはタイヤ/ベルト産業で使われる他のいずれかの材料を含んでもよい。他のタイヤコードのソースは、未使用材料、すなわち、使用済製品由来ではないレーヨン、ナイロンおよびポリエステル製繊維、等の材料、および織物産業または古切れ、または合成カーペット、等の織物由来の、タイヤコードに等価な繊維である。
【0043】
複合材料
上記に沿って、本開示は、第1の成分および第2の成分を含む複合材料を提供し、第1の成分は、有機成分および熱可塑性成分を含み、また、第2の成分は、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む。
【0044】
第1の成分は、少なくとも有機成分および熱可塑性成分を含む。一実施形態では、有機成分は、全体複合材料の少なくとも約10%(w/w)、時には、約15%w/w、約20%w/w、約25%w/w、約30%w/w、約35%w/w、約40%w/wおよび、さらに複合材料の全体重量の少なくとも約48%w/wから、約49%w/wまでの、典型的には、約45%w/w、約40%w/w、約35%w/w未満、またはさらに約30%w/w未満の上限%w/wまでの有機物質の範囲である。
【0045】
第1の成分は、また、熱可塑性成分を含む。一部の実施形態では、熱可塑性成分の量は、全体複合材料の少なくとも1%w/w、2%w/w、5%w/wまたはさらに10%w/wから、全体複合材料の約49%w/wまでの、典型的には、約45%w/w、約40%w/w、約35%w/w未満までの、またはさらに約30%w/w未満の上限%w/wまでの熱可塑性成分の範囲である。
【0046】
一部の実施形態では、第1の成分の量は、複合材料の約10%w/w〜約50%w/wである。
【0047】
第1の成分は、また、プラスチックを含んでもよい。第1の成分のプラスチックの量は、0から約40%w/wまで、または約35%w/wまで、またはさらに約30%w/wまでであってもよい。一部の実施形態では、複合材料中のプラスチックの量は、少なくとも1%w/w、3%w/w、5%w/w、10%w/wまたはさらに15%w/wであるが、30%w/wまたは25%w/w以下、またはさらに20%w/w以下である。第1の成分の一部を形成可能で、従って、複合材料の一部を形成可能ないくつかのプラスチック材料の非制限的例には、合成ポリオレフィン(例えば、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLPE)、ポリプロピレン(PP));ポリスチレン(PS)(高衝撃ポリスチレン、HIPSを含む)、剛性の可塑化ポリビニルクロリド(PVC)、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)、PU(ポリウレタン)、ポリアミド(PA)、およびエチレンビニルアルコール共重合体(EVOH)が含まれる。
【0048】
一部の実施形態によれば、第1の成分は、また、無機成分、例えば、金属、砂、および粘土を含む。無機成分の量は、複合材料中の少なくとも約1%w/w、約2%w/w、約5%w/w、約10%w/wまたは少なくとも約15%w/wの無機物質から;約50%w/w、約40%w/w、約30%w/w未満の、またはさらに約20%w/w未満の範囲であってもよい。
【0049】
一部の実施形態では、第1の成分は、実質的に未分別廃棄物(SUW)由来である。また一部のさらなる具体的実施形態では、未分別廃棄物は、都市固形廃棄物(MSW)である。第1の成分の異なる成分、すなわち、有機成分、熱可塑性成分等、は同じソース、例えば、同じ塊のSUW/MSW由来であるが、時には、異なるソースから提供されてもよい。例えば、有機成分は、庭園の切り枝および/または有機家庭廃棄物から提供され、熱可塑性成分は、収集プラスチックボトルおよび容器由来であってもよい。
【0050】
第2の成分は、加硫ゴムおよびタイヤコードから選択される少なくとも1つの成分を含む。一部の実施形態では、第1の成分と第2の成分の合計の内の第2の成分の量は、複合材料の全体重量の少なくとも約50%w/w、約55%w/w、約60%w/w、約65%w/w、約70%w/w、約75%w/w、約80%w/wから、または少なくとも約85%w/wから、第1の成分と第2の成分の合計の重量の約90%w/w、約85%w/w、約80%w/w、約75%w/w、約70%w/w約65%w/w未満の、または約60%w/w未満の上限値まで、の範囲である。
【0051】
一部の実施形態では、第1の成分と第2の成分の合計の内の加硫ゴムの重量は、全体重量の少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%または少なくとも約55%から、全体重量の約90%(タイヤコードがない場合)、約85%(タイヤコードも存在する場合)、約80%、約75%、約70%約65未満の、または約60%未満の上限値まで、の範囲である。
【0052】
一部の実施形態では、第1のと第2の成分の合計の内のタイヤコードの量は、重量で、少なくとも約0、約1%、約2%、約5%、約10%、約15%、約20%または少なくとも約25%から、約30%、約25%、約20%、約15%、約10%約5%未満、または約3%未満の上限値までの範囲である。
【0053】
透明性のために、一部のタイヤコードは、また、プラスチック材料(例えば、ポリアミドおよびポリエステル)であると思われるので、タイヤコードとしての使用に適したコードの形のポリマーは、第1の成分中の熱可塑性成分の一部としてではなく、タイヤコードとしてのみ計算されることは理解されたい。同様に、タイヤコードとしての使用に適した、コードの形ではないプラスチック材料は、第1の成分の熱可塑性成分の一部として計算される。通常、第1の成分と第2の成分を合わせた全体重量は、複合材料の全体重量である。
【0054】
一実施形態では、第2の成分は、少なくとも加硫ゴムを含む。限定されないが、タイヤコードの添加は、得られた複合材料の機械的強度を高めるのを支援できる。使われたタイヤコードの長さは、また、得られた複合材料の強度に影響を与え:繊維が長いほど、得られた材料が強くなる。機械的強度の増加は、複合材料の弾性的な材料が通常使われている種々の用途への使用を可能とする。
【0055】
時には、組成物、および結果として、その調製の間または形成後に、特定の他の成分を加えることにより、複合材料の特性を微調整できる。複合材料に組み込んで有用であると思われる他の成分のいくつかの非制限的例は、着色顔料と活性炭である。
【0056】
一部の実施形態によれば、第1の成分は、少なくとも有機廃棄物および熱可塑性廃棄物含む処理廃棄物である。用語の「処理廃棄物」は、乾燥、剪断力と加熱下の混合、押し出し、および任意選択で、さらに微粒化と分級、の内の少なくとも1つの操作を受けた廃棄物を指す。時には、第1の成分を得るための廃棄物の処理で、上述の全ての操作を含むことがある。一部の実施形態では、直径約0.01mm〜約2.5mmの間の範囲の粒子状物質として処理廃棄物が得られるが、時には、約1.5mmより小さい、さらに典型的には直径約0.7mm〜約1.5mmまたは約0.7mmより小さい粒子状物質を使ってもよい。一実施形態によれば、第1の成分は、直径0.01mm〜0.7mmの範囲の粒子状の処理廃棄物である。
【0057】
一部の実施形態によれば、廃棄物は、実質的に同時係属の国際出願PCT/IL2010/000027号に記載のように、処理廃棄物を提供できる未分別廃棄物(SUW)である。この処理廃棄物は、有機物質および任意選択で、プラスチックを含む実質的に未分別廃棄物を、下記に示すように、最小限の微粒化を行い、粒子状廃棄材料を剪断力下混合し、少なくとも約100℃の温度に加熱し、それにより、処理廃棄物を得るステップを使って、調製される。未分別廃棄物は、処理前に乾燥してもよい。
【0058】
時には、第1の成分として使用される処理廃棄物は、その表面エネルギーを特徴としてもよい。本発明の一実施形態によれば、SUW由来処理廃棄物は、約35dyne/cm超、好ましくは約40dyne/cm超、さらに好ましくは45dyne/cm超の表面エネルギーを有する。比較のために、ポリエチレンの表面エネルギーは約35dyne/cm、ポリプロピレンは約31dyne/cm、さらにポリテトラフルオロエチレン(PTFE/テフロン(登録商標))は、18〜20dyne/cmである。処理SUWは、従って、高表面エネルギーを持ち、事実、処理SUWは、ポリオレフィンよりも大きい表面エネルギーを有する。この相対的に高い表面エネルギーは、例えば、本発明の複合材料を形成するための第2の成分との処理時に、その表面で他の極性物質、例えば、ペンキ、接着剤、木材、種々の石等、との強い相互作用を可能とする。
【0059】
処理未分別廃棄物を使った場合の本発明の第1の成分のさらなる特徴には、下記が含まれる。
−密度:約1.2g/cm超、通常、1.2〜1.7g/cmの範囲。
−引張弾性率:約600MPa超(また、弾性率(elastic module)または引張係数(tensile modulus)の用語で呼ばれることもある)。引張弾性率は、一般的に、それに力が加えられた場合に、材料の弾性変形(すなわち、非永久的に)に対する抵抗により定義される。より大きい力が必要であれば、材料はより堅い。
−引張強度:約5MPa、6MPa、7MPa超、およびさらに8MPa超、すなわち、材料が破断する、または永久変形する応力;
−曲げ強度:約7MPa超、約9MPa超、およびさらに約11MPa(また、曲げ強度(bend strength)の用語で呼ばれることもある)。すなわち、破壊モーメントで材料に加えられた応力。
−曲げ弾性率:約2,000MPa超、約3,000MPa超、およびさらに約3,500MPa。材料の曲げ時の堅さ、すなわち、加えた力による変形に対する抵抗を意味する。
−衝撃強度:約12J/m超、約13J/m、15J/m超およびさらに約17J/m超(ノッチ付きアイゾッド衝撃強さ)。衝撃負荷に耐える材料の能力を意味する。
−シャルピー衝撃:約1.5KJ/m、1.6KJ/m、1.7KJ/m、またはさらに1.8KJ/m超(シャルピーノッチなし試験)。曲げ衝撃下の試験試料を破壊するのに必要な単位面積当たりのエネルギーを意味する。
【0060】
一部の実施形態では、複合材料は、10〜50%w/wの第1の成分、20〜90%w/wの加硫ゴム、および0〜30%w/wのタイヤ繊維から構成され、加硫ゴムとタイヤ繊維の合わせた量は、50〜90%w/wである。別の実施形態によれば、複合材料は、また、12%まで、典型的には10%w/wまでの揮発性液体(すなわち、20℃で少なくとも15mmHgの蒸気圧を有する液体、例えば、水やエタノール)を含む。
【0061】
一実施形態によれば、加硫ゴムは、タイヤクラムを含む。
複合材料は、製品製造で慣習的である充填剤および他の添加物、例えば、吸収剤、可塑剤、結合剤、カーボンブラック、UVブロッカー、金属、重量添加物、砂、シリカと顔料、をさらに含んでもよい。これらの添加物を合わせた量は、通常、複合材料の全体重量の10%を越えない、または5%以下、およびさらに2%wt以下である。
【0062】
またいくつかの他の実施形態では、複合材料は、重量で、90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、または50%のクラムラバー、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、15%、または10%の第1の成分;40%、35%、30%、25%、20%、15%、または10%のコードおよび10、9、8、7、6、5、4、3、2、1%までの揮発性液体(例えば、水)を含む。
【0063】
一実施形態によれば、最小限の量のクラムラバーおよび第1の成分は、それぞれ、重量で50%および10%である。
【0064】
一実施形態によれば、複合材料は、有機成分、熱可塑性成分および加硫ゴムからなる第2の成分を含む。さらに別の実施形態によれば、複合材料は、有機成分、熱可塑性成分およびタイヤ繊維からなる第2の成分を含む。
【0065】
複合材料の特性
複合材料は、下記のパラメータ(特性)を特徴とするいくつかの熱可塑性挙動を示す:
−シャルピー衝撃:少なくとも約6.7KJ/m〜最大で約17.5KJ/mの範囲(Ray−Ran試験機を使ってISO179に従い測定)、
−最大引張強度:少なくとも約1.3MPa〜最大で約4.5MPaの範囲(M350−10KN(Testometric)試験機を使ってISO527−1−2に従い測定)、
−弾性率:少なくとも約85MPa〜最大で約740MPaの範囲(M350−10KN(Testometric)試験機を使ってISO527−1−2に従い測定)、
−破断伸び:少なくとも約2.0%〜最大で約9.4%の範囲(M350−10KN(Testometric)試験機を使ってISO527−1−2に従い測定)、
−曲げ強度:少なくとも約2MPa〜最大で約9.4MPaの範囲(M350−10KN(Testometric)試験機を使ってISO178に従い測定)、および
−曲げ弾性率:少なくとも341MPa〜最大で約771MPaの範囲(M350−10KN(Testometric)試験機を使ってISO178に従い測定)。
【0066】
複合材料は、また、射出可能であることが明らかになり、例えば、加熱すると、射出成形することができる。
【0067】
さらに、複合材料は、タイヤ由来汚染物質、例えば、芳香族炭化水素(PAH)および特定の金属、例えば、鉄、ヒ素、カドミウム、クロム、マンガンを保持するが、複合材料中で変化せず、その結果、タイヤ廃棄物の廃棄に伴う環境ハザード関連事項を最小限にするか、または除くことが解っている。汚染物質の保持は、例えば、EPASLO−846方法1310、等の手続きにより記載されている滲出試験により、また、本発明に従って、本明細書記載の第1の成分と一緒にしないで、第2の成分の滲出と比較して、測定できる。
【0068】
複合材料を規定する他の特性には、以下が含まれる:
−密度;
−融点および軟化点;
−低温柔軟性;
−スパイラルフロー;
−硬度(ショアA);
−元素分析;
−水、ブラインおよび海水の滲出;
−破断時引張;
−伸び;
−100%での弾性率;
−熱たわみ温度;
−クリープ抵抗;曲げ弾性率
−シャルピー衝撃;
−熱、電気、音響伝導;および
−老化(UV、土中埋設、ブライン水、オゾン、等)。
【0069】
調製法
本開示は、以下を含むプロセスを提供する:
−有機廃棄物および熱可塑性廃棄物を含む第1の成分と、加硫ゴムおよびタイヤ繊維からなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む第2の成分とを、溶融物を得るために、剪断力下で加熱しながら混合すること;
−次項を含む複合材料を得るための、少なくとも溶融物を冷却することを含む、溶融物の処理:
−有機成分;
−熱可塑性成分;および
−加硫ゴムおよびタイヤ繊維からなる群より選択される少なくとも1つの成分。
【0070】
また、同じ態様で、以下を含むプロセスが提供される:
−第1の成分を得るために、少なくとも有機廃棄物および熱可塑性廃棄物を、乾燥、微粒化、混合および剪断力下加熱、からなる群より選択される少なくとも1つの処理ステップに供すること;
−溶融物を得るために、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される成分を含む第1の成分と第2の成分とを、剪断力下で加熱の間に混合すること;および
−少なくとも冷却して下記を含む複合材料を得ることを含む溶融物の処理:
−有機成分;
−熱可塑性成分;および
−加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの追加の成分。
【0071】
また、本発明のこの態様で、以下を含むプロセスが提供される:
−溶融物を得るために、処理廃棄物を含む第1の成分と、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む第2の成分とを、剪断力下で加熱の間に混合すること;および
−少なくとも冷却して下記を含む複合材料を得ることを含む溶融物の処理:
−有機成分;
−熱可塑性成分;および
−加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分。
【0072】
一実施形態では、第1の成分は、処理未分別廃棄物である。処理未分別廃棄物は、同時係属の国際出願PCT/IL2010/000027号で詳細に説明されているように、乾燥した粒子状SUWを、剪断力下混合および加熱し、最終的に押し出しにより得ることができる。この特許は、参照によって組み込まれる。一実施形態では、SUWの処理には、微粒化、乾燥、混合、通篩および加熱下混合、混合後得られる溶融物の剪断力下加熱の間の押し出し、造粒と通篩、の内の少なくとも1つの処理が含まれる。時には、第1の成分を得るためのSUWの処理は、全ての上述の操作のを含んでもよい。一部の実施形態では、処理SUWは、粒子状物質として得られる。
【0073】
本プロセスの知見は、目的の加硫ゴムのリサイクルのためには高温度と高圧力が必要であるが、本発明の複合材料は、他の加硫ゴムリサイクルプロセスよりもずっと低い温度と圧力で調製できると言うことである。従って、本発明のプロセスは、リサイクル加硫ゴムに使われているものに比べて、よりエネルギー効率の高いプロセスと見なすことができる。
【0074】
【0075】
一部の実施形態では、第1の成分および第2の成分は、剪断力下で加熱の間の混合の前に、予備混合される。
【0076】
第1の成分および第2の成分の量は変わってもよい。一部の実施形態では、第1の成分は、第1の成分と第2の成分(w/w)を合わせた全体重量の約10%〜約50%w/wであり、第2の成分は、第1の成分と第2の成分(w/w)を合わせた全体重量の約50%w/w〜約90%w/wである。
【0077】
第1の成分は、有機廃棄物を含む。有機廃棄物の量は、全体混合物の少なくとも約10%w/w、時には、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%および第1の成分は、第1の成分と第2の成分(w/w)を合わせた全体重量のさらに少なくとも約48重量%の低い側の重量%から、約49%、典型的には約45%、約40%、約35%未満まで、またはさらに約30%未満までの合わせた成分の全体重量中の有機物質の高い側の重量%の範囲であってもよい。
【0078】
第1の成分は、また、熱可塑性廃棄物を含む。一部の実施形態では、熱可塑性廃棄物の量は、第1と第2の成分の合わせた全体重量の少なくとも1%、2%、5%またはさらに10重量%の低い側の重量%から、全体重量の約49%、典型的には約45%、約40%、約35%未満まで、またはさらに約30%未満までの熱可塑性廃棄物の高い側の重量%までの範囲である。
【0079】
第2の成分は、加硫ゴムおよびタイヤコードからなる群より選択される少なくとも1つの成分を含む。一実施形態では、第1と第2の成分を合わせた全体重量の内の第2の成分の量は、重量で、少なくとも約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、または第1と第2の成分を合わせた全体重量の内の少なくとも約85%から、約90%、約85%、約80%、約75%、約70%約65未満まで、または合わせた成分の全体重量の約60%未満までの上限値の範囲であってもよい。
【0080】
第1と第2の成分を合わせた全体重量の内の加硫ゴムの量は、重量で、少なくとも約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%または少なくとも約55%から、約90%(例えば、タイヤコードが全く存在しない場合)、約85%、約80%、約75%、約70%約65%未満まで、または合わせた成分の全体重量の約60%未満までの最大値の範囲であってもよい。
【0081】
第2の成分がタイヤゴムおよびタイヤコードを含む場合は、タイヤゴムは、タイヤスリット、チップタイヤ、粉砕ゴムおよびクラムラバーからなる群より選択され、タイヤコードは、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニルアルコールおよびレーヨンの内の少なくとも1つからなる群より選択される。
【0082】
一実施形態では、剪断力下加熱は、約100℃〜約200℃の温度範囲で行われる。一部の実施形態では、温度は、115℃、120℃、または125℃の下限値〜160℃と180℃の上限値の間の範囲である。
【0083】
加熱しながらの混合は、第1の成分および第2の成分の予備混合(加熱なしの)を先行させてもよい。さらに、時には、混合の前に微粒化を行ってもよい。例えば、第1の成分が処理未分別廃棄物の場合には、加硫ゴムおよびタイヤ繊維の内の少なくとも1つと混合する前に、後者を微粒化し通篩してもよい。一部の実施形態では、第1成分粒子は、約0.01mm〜約2.5mmの直径の範囲であり、一部の実施形態では、0.01mm〜約0.7mmであり、一部の実施形態では、約0.7mm〜約1.5mmでり、一部の実施形態では、約1.5〜約2.5である。微粒化は、限定されないが、シュレッダー、グラインダー、チョッパー、造粒機(これらは、必要に応じ、堅牢な材料、例えば、ステンレス鋼またはチタニウム製のブレード、ハンマー、またはプレートを備えていてもよい)等の従来のサイズ減少プロセスによる細砕、細断、スリッティング、ダイシング、圧砕、小粉砕、チョッピングにより行える。さらに、加熱の間の混合の前に、乾燥を行ってもよい。乾燥は、受入時のままの第1のおよび/または第2の成分微粉化物質で行ってもよい。乾燥は、任意の手段、例えば、廃棄物を室外に置き乾燥させて、乾燥空気流下で、乾燥器中で、または液体を絞り出すことにより行うことができる。一実施形態では、第1の成分は、SUWであり、これは第2の成分との混合の前に、乾燥および微粒化が行われる。
【0084】
一部の実施形態では、加熱のあいだの混合の前に、経済的価値のある成分の分離が行われる。このような成分には、リサイクル材料または製品、例えば、バッテリー、アルミニウムおよび鉄、ガラス、セラミックス、紙、段ボール、等が含まれる。微粒子状物質からのこのような成分の分離は、適切な篩、磁選機、渦電流選別装置、浮選システム、重量分離技術、等の使用により行うことができる。例えば、破砕タイヤをコンベヤーに乗せ、磁石または一連の磁石の下を通過させることにより、遊離したスチールコードを破砕タイヤから分離できる。それでも、遊離したスチールコードの一部が第2成分中に残されている可能性がある。加硫ゴムには、ゴム形成第2成分の全体重量の約0.1、0.2、0.5、1、2、3、4またはさらには5%が残されている可能性があると推定されている。
【0085】
本明細書で開示のプロセスは、タイヤリサイクルプロセスから通常は除去されているタイヤシュレッズおよび/またはタイヤコードの除去の必要性がないことに留意されたい。換言すれば、本明細書で開示のプロセスは、これらの成分をもさらにリサイクル可能とする。理論に拘泥する意図はないが、タイヤシュレッズおよびタイヤコードの存在は、得られた複合材料の機械的性質に影響すると考えられている。
【0086】
また、混合は、少なくとも1つのプラスチック材料の添加を含んでもよい。同様に、プラスチック材料の混合は、剪断力下の加熱の間の混合の前、またはその間であってもよい。換言すれば、プラスチックを、上述の予備混合ステージで添加しても、または加熱と混合の間に添加してもよい。プラスチックは、ポリエチレン、ポリビニルクロリド、ポリスチレン、ポリウレタン、熱可塑性エラストマー、ポリプロピレンおよびこれらの混合物からなる群より選択できる。添加するプラスチックの量は、溶融物中の1%〜49%の範囲の熱可塑性材料の量であってよい。
【0087】
さらに、例えば、得られる複合材料に特定の所望の特性を付与するために、剪断力下の加熱の間の混合の前またはその間に、種々の追加の添加物を加えてもよい。充填剤として使用される添加物の例には、限定されないが、砂、鉱物、リサイクルタイヤ材料、ガラス、木材チップ、熱硬化材料、他の熱可塑性ポリマー、砂利、金属、ガラス繊維および粒子状物質、等が含まれる。これらの充填剤は、リサイクル製品由来であってもよいが、未使用材料も採用できる。他の添加物は、複合材料の外観、特性、質感または香気を改善するために、例えば、顔料、臭気遮断剤(例えば、活性炭)、酸化剤(例えば、過マンガン酸カリウム)または抗酸化剤を添加してもよい。
【0088】
さらに、混合の間の加熱の前、またはその間に、硫黄、過酸化物、等の硬化剤を添加してもよい。第1と第2の成分ならびに任意の他の添加物を、同時にまたは逐次的に、プロセスの前に、その間におよびその後にプロセス中に導入できることに留意されたい。また、種々の成分の添加は、少しずつ分けて行ってもよい。例えば、配合機に第1の成分の第1の部分、例えば、SUWを加え、続いて、第2の成分、例えば、加硫ゴムを導入してもよい。さらに、配合機が、種々の入口を備えていて、種々の成分を異なる位置で導入し、それにより、例えば、他の成分に対しあるレベルの剪断力下混合中の加熱を既に行った後で、ある成分の導入を可能としてもよい。
【0089】
剪断力下加熱中の混合を、エクストルーダー、密閉式混合機(Banbury)、コニーダー、および連続ミキサーからなる群より選択される配合機で行ってもよい。剪断力下加熱中の混合は、通常、均一溶融物/混合物を生ずる。
【0090】
一部の実施形態では、エクストルーダーは、内部に一本または複数の回転スクリューを含む加熱バレルを含む。二本以上のスクリューが使われる場合は、スクリューは同時、逆回転の遊星回転(遊星ローラーエクストルーダーのように)ができる。スクリューは、相互かみ合い型、または非かみ合い型でもよい。押し出し装置は、単軸エクストルーダーまたは組み合わせエクストルーダー(タンデム押し出しの場合のように)でもよく、これらは、限定されないが、単軸スクリューエクストルーダー、ツインテーパスクリューエクストルーダー、ツインテーパスクリュー単軸エクストルーダー、ツインスクリューエクストルーダー、マルチスクリューエクストルーダーを含む、プラスチックス産業で既知のいずれかのエクストルーダーであってもよい。本発明において、エクストルーダーの1つの適切なタイプは、単軸スクリューエクストルーダーである。一部の実施形態では、エクストルーダーは、ベントゾーンを備えている。一部の他の実施形態では、エクストルーダーは、押し出しの間に冷却されるノズルを含む。さらに一部の別の実施形態では、エクストルーダーは区分に分割されて、所望に応じ、各区分で異なる温度および/または圧力を適用できるように作られていてもよい。組み合わされた成分を、熱可塑性挙動を示す複合材料により規定される必要な/所望の温度に到達させるためには、一般的に、充分な剪断、混合および滞留時間が必要である。所望の材料温度は、2つの方法:配合機もしくは他の装置から吸収される熱により、または剪断力により生じた摩擦により、またはこれらの組み合わせにより到達できる。プロセスに熱を加え、剪断と混合による摩擦熱のみに依存しないのが普通である。従って、一実施形態によれば、配合機は、約100℃〜200℃の温度、および時には、約120℃〜190℃の温度、またはさらには、約140℃〜約180℃の温度に設定される。材料の温度(内部的に、または型の出口を、熱電対で測定して)は、通常、剪断力による加熱に起因して、機械の設定温度よりは高い。
【0091】
本明細書で開示のプロセス条件下、すなわち、100℃超の温度の剪断力下の加熱では、得られた複合材料は無菌と見なすことができ、すなわち、プロセス前の、例えば、未分別廃棄物成分中に含まれている病原体が破壊されることは理解されよう。
【0092】
加熱の間の混合から得られたホットメルトは、その後、室温に冷却されて(例えば、室温は通常、約25℃である)複合材料が得られる。
【0093】
一部の実施形態では、複合材料は、形成に使われたものと同じまたは異なる条件下で再処理できる。一実施形態では、複合材料は、その製造に使われたのと同じ条件で1つまたは複数の剪断力下の加熱サイクルを受ける。
【0094】
複合材料からの製品の調製および他の用途
別の態様では、また、本明細書で記載の複合材料を用意し、複合材料を少なくとも100℃〜180℃の機械温度で加熱して、押し出し、型成形、圧縮成形からなる群より選択される少なくとも1つの追加のプロセスステップに供し、それにより、目的形状を有する製品を得るプロセスを提供する。
【0095】
一部の実施形態によれば、複合材料は、軟化し、流動性を有する物質になる温度の、約100℃超、130℃超、およびさらに140℃超〜約160℃、180℃または200℃までの範囲の温度に再加熱してもよい。上記で詳細に説明した添加物と充填剤を、任意選択で、複合材料に添加してもよい。
【0096】
表1は、本明細書で開示の複合材料の処理により調製できる可能な製品(製造品)を、特定の製品を特徴付けるパラメータと一緒に記載した一覧である。
【表1】
【0097】
一部の実施形態では、複合材料は、添加されるべき製造プロセス、例えば、未使用またはリサイクルプラスチックを含む熱可塑性ホットメルトへの、添加物として使用される。
本発明の複合材料は、また、種々の産業プロセスにおいて使用され、種々の半完成または完成品を形成する。非制限的例では、建築材料、パネル、ボード、パレット、ポット、植物育成基材の部品、およびその他多数が含まれる。
【0098】
このような半完成または完成品では、複合材料は、唯一の成分、または他の材料との混合物中の成分である。
【0099】
一部の実施形態では、プロセスは、相互に接着され、少なくとも1つの層が複合材料を含む積層物、等を形成するための2つ以上の材料を含む製品を調製することを含む。このような多層構造は、多層製品を形成するための2つ以上の材料(1つは本発明の複合材料)の積層、共カレンダー成形、共圧縮、共押し出し、共射出またはタンデム押し出しにより得ることができる。
【0100】
さらに、一部の実施形態では、複合材料がフィラーとして添加され、例えば、ビチューメン(アスファルト)と一緒に混合して、ポリマー修飾ビチューメンのような修飾ビチューメン材料が得られる。修飾ビチューメン材料は、道路、舗装道路、プラットホーム、防水層、高分子アスファルト、等の構成物中のビチューメンの代替物として使用できる。一実施形態によれば、ビチューメン様材料は、複合材料をビチューメンとミキサー中で混合して調製される。複合材料は、1%〜95%までの複合材料/ビチューメンのいずれかの量でビチューメンと混合される。一実施形態では、ビチューメン様材料は、約90%の複合材料で形成され、事実上、ビチューメンは、複合材料への添加物として使われる。得られたビチューメン様材料は、射出成形可能で、エクストルーダーを使って処理できることが明らかになった。
【0101】
非制限的実施例の詳細説明
実施例1:
処理装置
下記のプロセスで、種々の装置およびシステムが採用された。一部の装置は発明者により構築されたが、全ては従来の装置をベースにしていることは理解されたい。これらには、シュレッダー、単軸スクリューエクストルーダー、配合機(Banbury)、射出成形機、圧縮成形プレスおよび材料が剪断および/または熱を受けるいずれかの機械、例えば、造粒機、ペレタイジングプレス、ミル、等のその他の機械が含まれる。
【0102】
2つの単軸スクリューエクストルーダーを下記の実施例で採用した。一つ目は、自己設計エクストルーダー(スクリュー直径:70mm、スクリュー長さ:2650mm、スクリューからバレルまでのクリアランス:0.1mm、型とアダプター長さ190mm、型開き直径:10mm)であり、二つ目は、Erema RM 120TE(スクリュー直径:120mm、スクリュー長さ:4000mm、スクリューからバレルまでのクリアランス:0.1〜0.2mm、型とアダプター長さ370mm、型開き直径:50mm)である。両方ともベントゾーンを有する。
【0103】
実施例2:
SUWの処理
SUW由来の押し出し成形品を国際出願PCT/IL2010/000027号に記載の押し出し成形品IIプロセスに従って調製した。個人の家庭から集めた実質的に未分別廃棄物(SUW)を、スチールブレードを備えたシュレッダー(タイプZSS850 ex Zerma、中国)にかけた後、造粒機(造粒機タイプGSH500/600 ex Zerma、中国)で数ミクロン〜数センチの大きさの粒子に粉砕した。次に、粉砕粒子を通篩して、直径100〜200mmの範囲の粒子を集めた。100〜200mmの粒子を磁石を通して、SUWの元の磁性金属の含有物の少なくとも一部を除く。磁性金属の分離後、残っている粒子を粉砕(造粒機タイプGSH500/600 ex Zerma、中国)し、再度通篩して約20mmの大きさの粒子を得る。その後、粉砕粒子を2、3日、空気乾燥し、乾燥した乾燥空気流下で、全部の液体でなく、少なくとも一部の液体が除去されるまで粒子を乾燥した。乾燥した粒子を、180℃の温度と約50rpmの回転速度に設定した単軸スクリューエクストルーダー(Erema)に装填した。粒子化材料をエクストルーダーを使って約3分〜約5分の滞留時間で処理した。押し出し成形品を室温に冷却した(本明細書では、「押し出し成形品II」と呼ぶ)。押し出し成形品の目視検査により、繊維状材料ならびに処理温度より高い融点の物質(例えば、ガラスおよび金属)を含むことが示唆された。押し出し成形品を造粒機(Zerma)により実質的に粉砕し、通篩して凡そ直径0.7mm未満の大きさの粉砕物を得た。実質的に全てのSUWを直径0.7mmの粒子に微粒化できるまで、大きな粒子は再粉砕し、再度通篩を行った。
【0104】
実施例3:
SUW/クラムラバー1:1(wt/wt)材料の調製
廃棄タイヤから作ったクラムラバーをタイヤリサイクルプラント(Tyree)から入手した。このクラムラバーは0.3〜5mmの範囲の大きさで、3種のサイズカテゴリー:0.5mm以下、0.5〜2mm、2〜4mmに分けられている。廃棄タイヤを、カッターシュレッダー(タイプBDR2000 ex MTB、フランス)で細断してタイヤシュレッズを得た。細断の後、タイヤコードをタイヤシュレッズから分離した。必要に応じ、タイヤまたはタイヤシュレッズをさらなる空気ブローワーでの処理の前に、最初に乾燥して、10%wt以下の水分含量にした。次に、タイヤシュレッズを、コンベヤーに乗せて磁石の下を通し、遊離したスチールコードを分離した。
【0105】
1:1(wt/wt)の実施例2により得られたSUW押し出し成形品の微粒子とクラムラバーを23rpmのセルフミキサー(self mixer)で混合し、実質的に均質の混合物を得た。SUWおよびクラムラバーを大略均質に混合している間に、タイヤコードが、主要マトリックスと凝集して塊になる傾向があることは留意されたい。この混合物を180℃の機械温度と50rpmのスクリュー回転速度で、約3分の滞留時間の間に110℃〜180℃の温度勾配がある上述の自家製スクリューエクストルーダー中に導入した。ベントゾーンからの煙霧をベントで除去した。冷却後、溶融物をDemag、Ergotech Viva80−400射出成形機(温度:150℃、射出圧力:40〜90bar、射出スピード30〜50mm/s)または250トンプレスに移して、射出成形または圧縮成形品をそれぞれ得た。明らかに、SUW押し出し成形品のクラムラバーとの混合により、あたかもそれが熱可塑性材料であるかのように、加硫ゴムの射出成形および押し出しを可能とした。
【0106】
実施例4:
SUW/クラムラバー/タイヤコード4:5:1(wt/wt)材料の調製
実施例3に詳細に記したようにして、クラムラバーとSUWを得た。タイヤコードをタイヤリサイクルプラント(Tyree)から入手した。タイヤコードは、ナイロン(ポリアミド6およびポリアミド6、6)、レーヨンおよびポリエステルを含む。
【0107】
SUW、クラムラバーおよびタイヤコードの4:5:1(wt/wt)を23rpmのセルフミキサー中で混合し、実質的に均質な混合物を得た。SUWおよびクラムラバーを大略均質に混合している間に、タイヤコードが、主要マトリックスと凝集して塊になる傾向があることは留意されたい。この混合物を180℃の機械温度と50rpmのスクリュー回転速度で、約3分の滞留時間の間に110℃〜180℃の温度勾配がある上述の自家製スクリューエクストルーダー中に導入した。ベントゾーンからの煙霧をベントで除去した。冷却後、溶融物をDemag、Ergotech Viva80−400射出成形機(温度:150℃、射出圧力:40〜90bar、射出スピード30〜50mm/s)または250トンプレスに移して、射出成形または圧縮成形製品をそれぞれ得た。明らかに、SUW押し出し成形品のクラムラバーとの混合により、あたかもそれが熱可塑性材料であるかのように、加硫ゴムの射出成形および押し出しを可能とした。
【0108】
実施例5:
SUW/クラムラバー/タイヤコード4:5:1(wt/wt)材料の調製
実施例3に詳細に記したようにして、クラムラバーとSUWを得た。タイヤコード等価物を、廃棄カーペットから得た。廃棄カーペットは、ナイロン(ポリアミド6およびポリアミド6、6)およびポリエステル繊維を含む。
【0109】
SUW、クラムラバーおよびタイヤコードの4:5:1(wt/wt)を23rpmのセルフミキサー中で混合し、実質的に均質な混合物を得た。SUWおよびクラムラバーを大略均質に混合している間に、タイヤコードが、主要マトリックスと凝集して塊になる傾向があることは留意されたい。この混合物を180℃の機械温度と50rpmのスクリュー回転速度で、約3分の滞留時間の間に110℃〜180℃の温度勾配がある上述の自家製スクリューエクストルーダー中に導入した。ベントゾーンからの煙霧をベントで除去した。冷却後、溶融物をDemag、Ergotech Viva80−400射出成形機(温度:150℃、射出圧力:40〜90bar、射出スピード30〜50mm/s)または250トンプレスに移して、射出成形または圧縮成形製品をそれぞれ得た。明らかに、SUW押し出し成形品のクラムラバーとの混合により、あたかもそれが熱可塑性材料であるかのように、加硫ゴムの射出成形および押し出しを可能とした。
【0110】
実施例6:
SUW/クラムラバー/タイヤコードwt:wt材料の機械的性質
上記組成物から作成した射出成形品の機械的性質を、下記のISO標準に従って測定した。成分比率の必要な修正を行った以外は、製品を実施例4に従って調製した。結果を表2に示す。比較のために、正味のSUW押出品の機械的性質をゴムと混合された同じバッチから採取した。引張強度、破断伸び、ヤング率をISO527−2−1標準に従って測定し、曲げ強度と曲げ弾性率をISO178標準に従って測定した。全ての測定は、Testometric M350−10KN 万能材料試験機(universal materials testing machine)を使って行った。シャルピー衝撃をISO179標準に従って、Ray−Ran高性能振り子衝撃試験機(Advanced Pendulum Impact Tester)を使って行った。
【表2】
【0111】
表2の機械的性質から、SUWのゴムとの混合により、正味のSUW押し出し成形品に比べて、弾性率および靱性が増加したことは明らかである。
【0112】
実施例7:
ポリプロピレン(PP)を添加したSUW/(クラムラバー)/(タイヤコード)組成物の機械的性質
MSW中の統計的プラスチック分布(約13%)を超える組成物中のプラスチックの含量増加の効果を試験するために、2つの成分(処理SUWおよび廃タイヤソース)の混合物にPPを添加した。成分比率の必要な変更を行ったことを除き、実施例3に記載のように組成物および射出成形試料を調製した。射出成形品の機械的性質をISO標準に従い測定した。結果を表3に示す。
【表3】
【0113】
実施例8:
本発明の添加物含有組成物の機械的性質
また、本発明による組成物の機械的性質に与える添加物の効果を試験した。この目的のため、臭気吸収剤(活性炭)および/またはカップリング剤(CA、Bondyram(登録商標)7100:Polyram、Israelから購入)を含む組成物を実施例3と4に記載の方法に従って調製した。添加物を処理SUWと第2の成分(タイヤ粉末および/またはタイヤコード)の混合物に添加した。結果を表4と5にまとめた。
【表4】

【表5】
【0114】
実施例9:
SUW/クラムラバー1:1wt/wt材料の他の機械的性質
製品は、対応するゴム製品に比べて、耐劣化性の改善を示す。種々の因子、例えば、熱酸化、UV照射、塩水、酸性雨、等が原因の可能性がある耐劣化性を測定するいくつかの方法がある。ゴム劣化に対する標準的分析プロトコルに従って試験を行った。例えば、オゾン分解の動的決定は、JISK6259プロトコルを採用することができ、表面亀裂、および室内での表面オゾン亀裂、屋外または室内での表面オゾン亀裂、室内での動的オゾン亀裂は、それぞれ、ASTM標準D518、D1149、D1171およびD3395、を採用できる。これらの標準は、室内(インドア)または屋外での、ならびに静的および動的試験条件を伴う材料試験およびオゾン露出を扱う。他の試験には、漸増応力加速寿命試験(progressive stress accelerated life test)(PS−ALT)が含まれる。
【0115】
圧縮成形品の機械的性質は、適切な標準に従い、標準的試験機を使って、同様に測定できる。
【0116】
実施例10:
ビチューメンの調製におけるバインダーとしてのSUW/ラバー/タイヤコードの使用
SUW/ラバー/タイヤコード40:50:10(wt%)の組成物を、ミキサーを使って混合物が均質に見えるようになるまで、23rpmの混合速度と25℃の温度で10wt%ビチューメンと混合する。得られるビチューメンは、ビチューメンを含まない製品に比べて、柔らかい製品である。生成物の機械的性質(例えば、シャルピー衝撃、最大引張強度、弾性率、破断伸び、曲げ強度、および曲げ弾性率)を標準的分析プロトコルに従って試験する。