(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記収穫全果が、リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、サクランボ、柑橘類、ブドウ、キウイフルーツ、モモ、ナシ、スモモ、ラズベリー、およびイチゴからなる群から選
択される、請求項1に記載のパッケージ飲料。
【背景技術】
【0002】
顧客は、新鮮であると認識される作物を購入して消費することを好む。栄養価、風味および質感を含めた多くの望ましい特性は、新鮮な作物と関連している。これらの望ましい特性は、新鮮な作物の貯蔵が最小限の期間に過ぎないものであっても、しばしば失われる。新鮮な作物の栄養価および風味は、代謝によって、または酸素および熱などの非生物因子による分解によって失われる不安定な成分と関連している。同様に、新鮮な作物の質感は、過剰な熟成または脱水が生じると低下することがある。これらの望ましい特性の損失は、貯蔵された作物、例えば果実において特に著しい。果実は、代謝および分解を阻害または少なくとも制限するための工程を取らないと、急激に不味くなることがある。これらの工程は、制御された温度および制御された大気環境における貯蔵を含むことがある。
【0003】
制御された温度および制御された大気環境における貯蔵は、代謝に起因した果実の質の低下をある程度まで低減する一方で、果実のある程度の脱水を除いてはいない。脱水された果実は、その膨らんだまたは生き生きとした質感に欠け、消費者にとって魅力がない。このある程度の脱水は、収穫後の貯蔵中の腐敗などの生物因子による分解を防止するほど十分でない。実際のところ、このある程度の脱水は、貯蔵中の腐敗を促進させることがある。作物、特に果実の貯蔵および保存のために多くの他の方法が研究されてきた。これらの方法は、決まって、果実の望ましい特性の損失をもたらす。これらの方法は、果実を高張溶液に浸漬または適用して、果実を部分的に脱水することを含む。脱水された果実には、次いで湿潤剤を注いで、完全に含水した新鮮な果実の質感を模倣するように果実の質感を改善し、または消費者に受け入れ可能である食感および質感を少なくとも付与することができる。
【0004】
非特許文献1において、トレッサー(Tressler)およびエヴァーズ(Evers)は、モモを貯蔵の前にアスコルビン酸および糖の混合物によって処理し、果汁の一部を取り出してアスコルビン酸および糖をいくらか浸透させる方法を記載している。モモのスライスは、その重量の4分の1の、0.6%のアスコルビン酸を含有する糖と混合して、2〜3時間放置する。こうして調製されたモモは、パイの中身の調製に用いられる。ニコトラ(Nicotra)らは、非特許文献2において、カルシウム塩を含むまたは含まない種々のタイプのシロップに果実片を異なる回数だけ漬ける研究を記載している。3種のカルシウム塩が、シロップに添加して果肉の硬度の損失を防止または低減することによって試験された。トレッサー(Tressler)およびエヴァーズ(Evers)(1957)ならびにニコトラ(Nicotra)ら(1973)の方法は、いずれも、果実を脱水し次いで凍結するという果実の保存に関する。
【0005】
特許文献1には、果実を保存するための方法が記載されている。該方法は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、または湿潤剤として作用することが可能なあらゆる他の多価アルコールから選択される湿潤剤の食物中への吸収を行い、その後、果実からの水の部分的な除去を実行して、部分的に脱水された製品を得ることを含む。脱水のレベルは、食物の水分活性が、バクテリアおよび酵素活性が起こるよりも低くあるようなレベルである。部分的に脱水された作物は、次いで、例えば、凍結乾燥された製品として貯蔵される。また、特許文献2〜5には、果実を含めた作物の貯蔵特性を改善する方法が
記載されている。作物は、その作物を脱水して食用の湿潤剤の注入を可能にするのに十分な濃度で食用多価アルコールおよび/または炭水化物の水溶液を含有する溶液中に浸漬される。これらの特許明細書に記載されている方法のそれぞれにおいて、果実は、高張性である塗布液または溶液に暴露され、これにより作物を脱水および保存する。湿潤剤の注入は、保存されている作物の質感を改善することに関する。同様に、特許文献6に付随する明細書には、植物化学物質、栄養補助食品、および他の組成物を食品に注入する方法が記載されている。組成物を食品に注入するクレームされた方法は、食品を含む脱水溶液のブリックスを長期間にわたって増大させる工程を含む。該方法は、作物を部分的に脱水し、作物に、新鮮な作物の天然の特性の代用をして模倣をする物質を注入することによって、貯蔵されている作物の質を維持しまたは向上させようとするものである。これらの公知の方法は、貯蔵されている食物の水分活性が、生物因子による低下を防止するある一定のレベルまで低減されなければならないというパラダイムに従っている。水分活性は、脱水によって低減される。脱水は、作物を高張溶液に適用または浸漬させることによって達成される。
【0006】
特許文献7には、ダイス状またはスライス状の作物を、さらなる加工の前に長時間にわたって貯蔵するための方法が記載されている。作物は、実質的に等張性の水性貯蔵溶液に浸漬される。作物は、次いで、缶詰および滅菌の前に低温で貯蔵される。特許文献8には、天然の果実の風味抽出物を調製するための方法が記載されている。この抽出物は、浸出溶液を調製し、該溶液に果実をある期間浸漬して果実を該溶液で浸出させることによって生成される。浸出後、該溶液は、果実由来のかなりの量の果実糖、色、風味およびペクチンを含有する。記載されている方法は、果実を保存せずに果実風味を抽出することに関する。さらに、提供されている例には、全果から果実風味を抽出することは記載されていない。これらの公知の方法は、貯蔵作物の天然の特性を維持しまたは向上させようとするものではない。これらの公知の方法は、作物の全体(ある作物の丸ごと)、特に果実の全体(全果)の貯蔵には適用できない。一般に、これらの公知の方法は、加工食品でのその後の使用を目的とした作物の貯蔵および保存に関する。対照的に、特許文献9には、果実または野菜の風味をその自身の製品パッケージ内で向上させて保存寿命を延長し、風味が向上した果実または野菜、およびこの方法によって製造される、パッケージングされた、風味が向上した果実または野菜製品の大量生産および大量流通を可能にする方法が記載されている。該方法は、果実の特性を向上させる手段として二酸化炭素(CO
2)を導入することを含むが、貯蔵の間、風味が向上した果実の保存を達成するために、公知の手段、すなわち、凍結を用いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、飲用可能な貯蔵溶液中に収穫作物を含むパッケージ飲料を提供することである。この発明の目的は、作物の自然の特性を維持するおよび/または向上させる方法を提供することである。これらの目的は、公に有用な選択肢を少なくとも提供する目的で選言的に読み取られるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の態様において、本発明は、水性貯蔵溶液に浸漬された収穫作物を収容する開封可能にシールされた容器からなるパッケージ飲料であって、容器は、第1の開封可能なシールを取りはずしたときには収穫作物を伴うことなく貯蔵溶液の放出を可能にし、第2の開封可能なシールを取りはずしたときには収穫作物の放出を可能にするように構成されている第1の開封可能なシールおよび第2の開封可能なシールを含む、パッケージ飲料を提供する。
【0011】
好ましくは、中立の(ニュートラルな)水ポテンシャルが、収穫作物が水性貯蔵溶液に浸漬されているときに確立される。
好ましくは、貯蔵溶液は、適度に低張性から実質的に等張性の貯蔵溶液である。
【0012】
好ましくは、貯蔵期間の間、パッケージ飲料の貯蔵溶液のブリックス値に有意な変化がない。
好ましくは、貯蔵溶液は、炭酸を含む貯蔵溶液である。
【0013】
好ましくは、貯蔵溶液は、アルコール性貯蔵溶液である。より好ましくは、貯蔵溶液は、アルコール源が、搾りかす(パーミス:pomace)ブランデー、トリプルセックリキュール、ジン、ウォッカおよびウイスキー(またはバーボン)からなる群から選択されるアルコール性貯蔵溶液である。
【0014】
好ましくは、貯蔵溶液は、人工甘味料および多価アルコール(ポリオール)からなる群から選択される溶質の組み合わせを含む。より好ましくは、貯蔵溶液が、人工甘味料および多価アルコール(ポリオール)の組み合わせを含み、人工甘味料は、SUCARYL(
商標)(アボット社(Abbott))(シクラミン酸ナトリウム8%(w/v)(952)、サッカリンナトリウム0.8%(w/v)(954)、安息香酸0.1%(210));EQUAL(商標)(メリサント社(Merisant))(5%の安息香酸(210)、安息香酸カリウム(212))およびSUGORMAX(商標)(ハンセルズ社(Hansells))(16%のシクラミン酸ナトリウム、4%のサッカリン、リンゴ酸、保存料(211、202))からなる群から選択され、多価アルコール(ポリオール)が、グリセロール、イノシトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選択される。
【0015】
本発明の第1の態様の第1の実施形態において、収穫作物は、全果である。より好ましくは、収穫作物は:リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、サクランボ、柑橘類、ブドウ、キウイフルーツ、モモ、ナシ、スモモ、ラズベリーおよびイチゴからなる群から選択される全果である。
【0016】
本発明の第1の態様の第2の実施形態において、収穫作物は、ダイス状の根菜である。より好ましくは、収穫作物は:ビートルート、ニンジンおよびショウガからなる群から選択されるダイス状の根菜である。
【0017】
第2の態様において、本発明は、開封可能にシールされた容器に収容された水性貯蔵溶液に収穫作物を浸漬して、中立の水ポテンシャルを確立させる工程を含む、収穫作物を貯蔵する方法を提供する。
【0018】
好ましくは、貯蔵溶液は、適度に低張性から実質的に等張性の貯蔵溶液である。
好ましくは、貯蔵期間の間、貯蔵溶液のブリックス値に有意な変化がない。
好ましくは、貯蔵溶液は、炭酸を含む貯蔵溶液である。
【0019】
好ましくは、貯蔵溶液は、アルコール性貯蔵溶液である。より好ましくは、貯蔵溶液は、アルコール源が:搾りかすブランデー、トリプルセックリキュール、ジン、ウォッカおよびウイスキー(またはバーボン)からなる群から選択されるアルコール性貯蔵溶液である。
【0020】
好ましくは、貯蔵溶液は、人工甘味料および多価アルコール(ポリオール)からなる群から選択される溶質の組み合わせを含む。より好ましくは、貯蔵溶液が、人工甘味料および多価アルコール(ポリオール)の組み合わせを含み、人工甘味料は:SUCARYL(商標)(アボット社(Abbott))(シクラミン酸ナトリウム8%(w/v)(952)、サッカリンナトリウム0.8%(w/v)(954)、安息香酸0.1%(210));EQUAL(商標)(メリサント社(Merisant))(5%の安息香酸(210)、安息香酸カリウム(212))およびSUGORMAX(商標)(ハンセルズ社(Hansells))(16%のシクラミン酸ナトリウム、4%のサッカリン、リンゴ酸、保存料(211、202))からなる群から選択され、多価アルコール(ポリオール)が:グリセロール、イノシトール、マンニトール、およびソルビトールからなる群から選択される。
【0021】
好ましくは、容器は、開封可能にシールされた容器である。より好ましくは、容器は、第1の開封可能なシールを取りはずしたときには収穫作物を伴うことなく貯蔵溶液の放出を可能にし、第2の開封可能なシールを取りはずしたときには収穫作物の放出を可能にするように構成されている第1の開封可能なシールおよび第2の開封可能なシールを含む開封可能にシールされた容器である。
【0022】
本発明の第2の態様の第1の実施形態において、収穫作物は、全果である。より好まし
くは、収穫作物は:リンゴ、ブラックベリー、ブルーベリー、サクランボ、柑橘類、ブドウ、キウイフルーツ、モモ、ナシ、スモモ、ラズベリー、およびイチゴからなる群から選択される全果である。
【0023】
本発明の第2の態様の第2の実施形態において、収穫作物は、ダイス状の根菜である。より好ましくは、収穫作物は:ビートルート、ニンジン、およびショウガからなる群から選択されるダイス状の根菜である。
【0024】
この明細書の記載および特許請求の範囲において、下記の頭字語、用語、および語句は下記の意味を有する:「アルコール性貯蔵溶液」は、アルコール部分が添加された水性貯蔵溶液を意味し;「水性貯蔵溶液」は、溶質を水に添加することにより調製された貯蔵溶液を意味し;「含む(comprising)」は、「含む(including)」、「含有する(containing)」または「特徴とする(characterized by)」を意味し、いずれのさらなる要素、成分または工程も除外せず;「からなる(consisting of)」は、不純物および他の付随物を除いたいずれのさらなる要素、成分または工程も除外することを意味し;「ダイス状」は、片(pieces)に切断されていることを意味し;「乾燥重量」は、一定重量になるまで乾燥した後の重量を意味し;「収穫(された)」は、作物が収穫可能な形態まで成長した後で容器に集められて置かれていることを意味し;「モル濃度」は、溶質の水溶液中の濃度(M)を意味し;「M」は、モル(mol)/リットル(L)を表し;「モル」は、12gの
12Cに存在する原子と同じだけ多くの実体(原子、分子、イオン、電子、光子など)を含有する物質の量を意味し;「分子種」は、溶質が水性媒体に溶解されて水溶液を付与するときに形成される帯電または非帯電分子を意味し;「中立の(ニュートラルな)水ポテンシャル」は、収穫作物の湿重量に有意な増大がない貯蔵溶液の水ポテンシャルを意味し(この文脈において「有意な増大がない」は、全果については5%以下(好ましくは2.5%以下)もしくはダイス状の野菜については10%以下(好ましくは5%以下)を意味し、または代替において、細胞の断裂が最小限である(貯蔵溶液のブリックス値に有意な変化がないことによって示される)、貯蔵溶液の水ポテンシャルを意味し;「溶質」は、水性媒体に溶解された分子または塩を意味し;「等張性」は、植物細胞膜が不浸透性である分子種の水溶液中の濃度(M)の合計を意味する。
【0025】
上記の定義から、分子である溶質は、水性媒体に溶解しているときに1または複数の分子種を形成してよいことが理解される。水溶液中の分子種の濃度(M)は、水性媒体に溶解しているときの溶質の(起こる場合)解離度によって影響されることが認識される。また、本発明において用いられる溶液において、分子種は、吸着およびキレート化などのメカニズムによって封鎖されていてよいことも認識される。水溶液の吸着、キレート化、解離および体積の程度もまた、温度などの変数によって影響される。これらの理由から、語句「中立の水ポテンシャル」、「適度に低張性」および「実質的に等張性」は、機能的意味において理解されるべきである。「中立の水ポテンシャル」は、収穫作物の湿重量に有意な変化がないことまたは貯蔵溶液のブリックス値に増大がないことに基づいて、ダイス状の作物または収穫作物の全体と貯蔵溶液の溶質の濃度との所与の組み合わせで容易に決定することができる。「低張性」および「等張性」は、貯蔵溶液への浸漬の前の、貯蔵される収穫作物の細胞の等張性に関する意味である。したがって、語句「適度に低張性から実質的に等張性」は、作物の外皮もしくは皮または細胞膜が断裂することなく、作物の含水を維持し、中立の水ポテンシャルを確立するのに十分な、貯蔵されるべき収穫作物の等張性に関する範囲を包含する。所要の溶質濃度は、実施例において示される方法を使用して容易に決定され得る。
【0026】
濃度または比が貯蔵溶液の調製について特定されている場合には、特定された濃度または比は、貯蔵溶液中の最初の濃度または比である。値が1桁または複数桁の小数位まで表
現されている場合には、標準的な四捨五入が適用される。例えば、1.7は、1.650(循環小数)から7.499(循環小数)の範囲を包含する。用語「第1」、「第2」、「第3」などは、発明の代替の実施形態を参照して、または発明の記述および特許請求の範囲において定義されている対象の種々の要素、特徴もしくは数字を参照して用いられているとき、好ましい順序を意味することは意図していない。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明者は、収穫作物の貯蔵を考慮する際に、新規のパラダイムを採用した。本明細書に記載の方法は、貯蔵作物の水分活性を、保存の目的で、酵素およびバクテリア活性を阻害するレベルまで低減しようとするよりはむしろ、作物の水分活性を新鮮な作物の水分活性において維持するまたはこれに戻すことによって、新鮮な作物の活力を維持し、または貯蔵作物を再生させようとするものである。驚くべきことに、本発明者は、作物が、これらの条件下に、開封可能にシールされた容器において有意な期間にわたって保存され得ることを見出した。飲用可能な貯蔵溶液の提供などのさらなる利点が生じる。該方法は、本発明者が収穫作物の「逆熟成」と特徴付けたことを可能にする。貯蔵作物の天然の特性を維持することが1つの目的である一方で、本明細書において実証されているように、当業者には、さらに、貯蔵作物の天然の特性も向上され得、または新規の質も導入され得ることが認識される。該方法に従って再生された貯蔵果実は、果実の種類に応じて、2〜5℃の低温で30〜45日間、または60〜90日間の期間にわたって保存され得る。
【0029】
貯蔵溶液の等張性が、溶液への浸漬の前の貯蔵されるべき果実の等張性に対して適度に低張性または実質的に等張性であることを条件として、全果の内部と溶液との間に中立の水ポテンシャルが確立される。細胞の外側の膜は、半透性である。これらの細胞膜は、水およびある一定の溶質の通過を可能にする。植物細胞は、半剛性の細胞壁によっても包囲される。この細胞壁の特性は、水および溶質の通過にも影響し得る。植物細胞の外側の膜を横切る水の通過は、浸透ポテンシャル(溶質濃度によって制御可能である);膨圧ポテンシャル(細胞の内容物の静水圧によって決定される);およびマトリックポテンシャル(細胞壁の性質に一部依存する);を含めたポテンシャルによって決定される。これらのポテンシャルの総計が、細胞の内側と外側との間の「水ポテンシャル」である。膨圧ポテンシャルは、収穫作物の状態と関係する。新鮮な収穫作物は、比較的高い膨圧ポテンシャルを典型的には有する。貯蔵果実は、少なくとも部分的に脱水された状態になっており、より低い膨圧ポテンシャルを有するか、またはまさにしおれている場合がある。マトリックポテンシャルは、細胞膜および細胞壁の特性に関係し、ひいては、作物の種類に関係する。マトリックポテンシャルの水ポテンシャルへの寄与は、種々の果実間で変動する。マトリックポテンシャルは、例えば、ブドウとリンゴとの間で異なる。全果では、果実の外皮の特性が、水ポテンシャルにも影響を与える。浸透性外皮を有する全果が低張溶液に浸漬されている場合、細胞の内側と浸漬溶液との間の浸透ポテンシャルに起因した水の正味の更新がある。この水の取り込みにより、膨圧ポテンシャルが増大し;細胞の体積の増大が、半剛性の細胞壁によって制限される。全果の体積の増大は、果実の外皮または皮によって制限され;溶液があまりに低張性であると、果実の外皮または皮が断裂する(身割れ)。膨圧ポテンシャルが、浸透ポテンシャルに起因する水の取り込みに対抗するのに不十分であると、「中立の水ポテンシャル」は確立されない。「中立の水ポテンシャル」は、浸透ポテンシャル、膨圧ポテンシャルおよびマトリックポテンシャルの間のバランスが取れているとして定義され、これが確立されることで、収穫作物を貯蔵溶液に浸漬する前後での水の重量に起因した収穫作物の湿重量部分の有意な変化がないことにおいて、または貯蔵溶液のブリックス値が一定のままであることにおいて示されるように、全果の内部と溶液との間の水の正味の通過がゼロとなる。貯蔵溶液のブリックス値の有意な変化は、細胞膜が断裂されていることを示している。
【0030】
理論によって拘束されることを望まないが、静止状態であるにもかかわらず貯蔵作物において活動および活力が保たれているため、収穫作物の望ましい特性が「中立の水ポテン
シャル」の条件下に維持および/または取り戻されると考えられる。すなわち、熟成課程は、ある一定の点を超えて進行することが防止されており、ある一定の状況下にまさに逆行されてよい。浸漬溶液中の溶質の所要の初期濃度は、果実の初期状態および果実の種類の両方に依存することが認識される。外皮がそのままの全果が用いられるべきである。本発明の利点は、新鮮な全果が用いられるとき、最も容易に認識される。既に記載した望ましい成果に加えて、新規の特性が貯蔵作物に付与され得る。例えば、貯蔵溶液に風味が付けられてよく;果実の外皮が柔らかくされてよく;または果実が炭酸を含んで、消費されるときに新規の味覚および好ましい食感を与えてもよい。
【0031】
本発明を、ここでは例によってのみ記載する。(本明細書に定義および記載されている)中立の水ポテンシャルを確立することを目的として貯蔵溶液に全果を浸漬する利点が一旦認識されると、様々な全果を貯蔵するための適度に低張性から実質的に等張性の溶液の調製は、種々の果実の種類に関して容易に決定され得ることが当業者に認識される。さらに、ダイス状の収穫作物の貯蔵に同様の原則を展開することが企図される。この後者の場合には、中立の水ポテンシャルを確立することに対する皮または表皮の寄与が差し引かれる。
【0032】
新鮮な収穫果実は、貯蔵溶液に浸漬される前に、次亜塩素酸ナトリウム溶液または多くの市販の殺菌剤のうちのいずれかを用いて好ましくは表面殺菌される。貯蔵溶液は、パッケージ飲料の貯蔵および保存寿命要件に応じて、濾過滅菌の代替または補足として、相溶性の保存料を場合により含んでいてよい。かかる保存料として、二炭酸ジメチル(VELCORIN(商標))、ソルビン酸カリウム、ソルビン酸(E200)、ソルビン酸カリウム(E202)、安息香酸(E210)、安息香酸ナトリウム(E211)、4−ヒドロキシ安息香酸エチル(E214)、パラヒドロキシ安息香酸エチル、亜硫酸ナトリウム(E221)、ピロ亜硫酸ナトリウム(E223)、リンゴ酸(E296)、二酸化炭素(E290)、乳酸(E270)を挙げることができる。加えて、人工甘味料SUCARYL(商標)は、0.1%の保存料としての安息香酸を含有する。ポリオールおよび人工甘味料を含有する貯蔵溶液が非滅菌水によって調製されていて、全果が表面殺菌されていなかったとき、パッケージ飲料において微生物の増殖は観察されなかった。人工甘味料は、貯蔵溶液において用いられてよく、ポリオールと併せた成分としての使用のために特に風味が付けられる。ソルビトールは、人工甘味料を含む溶液において有用であり、これらの製品に付随することがある苦い後味を除去する(メルクインデックス第12版(Merck Index 12
th Ed))。人工甘味料として、SUCARYL(商標)(アボット社(Abbott))(シクラミン酸ナトリウム8%(w/v)(952)、サッカリンナトリウム0.8%(w/v)(954)、安息香酸0.1%(210))の他に、EQUAL(商標)(メリサント社(Merisant))(5%の安息香酸(210)、安息香酸カリウム(212))およびSUGORMAX(商標)(ハンセルズ社(Hansells))(16%のシクラミン酸ナトリウム、4%のサッカリン、リンゴ酸、保存料(211、202))が挙げられる。
【0033】
パッケージ飲料を調製するとき、全果は、その果実よりもわずかに大きい容器に置かれる。例えば、かかる容器に置かれた160gのリンゴは、果実を完全に覆うのに約170mlの貯蔵溶液を必要とする。既に記述しているように、溶液の組成は、果実の種類と所望の成果との両方によって決定される。これらの決定は、実施例において概説するように行われ得る。容器は次いでシールされる。溶液中に置かれた果実は、20℃付近の常温で貯蔵されてよい。保存寿命は、20℃未満、好ましくは10℃未満で貯蔵することによって増大する。果実は、凍結を防止するために、好ましくは0℃よりも高い温度で貯蔵される。保存寿命の延長は、貯蔵溶液に保存料を含ませることによって実行することができるが、全ての実施形態に必須ではない。炭酸果実では、貯蔵溶液に果実を浸漬する前に、溶液に二酸化炭素が投入される。ガスを溶液中に保つには、開封可能にシールされた気密容
器が必要とされる。貯蔵果実の外皮もしくは皮は、容器がガスの圧力の解放に起因して一旦開かれると、しばしば断裂する。これは、中立の水ポテンシャルが確立されていないと起こり得る皮または表皮の断裂とは区別されるべきである。果実は、パッキング後5日以内で、向上した特性により典型的には食べる準備ができ、貯蔵温度、果実の種類および貯蔵溶液の組成に応じて最大3ヶ月間貯蔵できる。
【0034】
本発明の方法およびパッケージ飲料は、本発明の方法が、開封可能にシール容器に置かれる前に収穫された作物を用いるという点において、オー・ド・ヴィー・ド・ポワールを調製するフランスの伝統的な方法とは区別されることが注意される。フランスの伝統的な方法では、全果(ナシ)が、収穫される前に容器(ボトル)において成長する。また、本発明の方法およびパッケージ飲料は、公知の飲料、例えば、果実ジュースおよび果実フロートとも区別される。こうした公知の飲料は、「果実片(fruit pieces)」を含有すると称しており、該果実片は全果でもダイス状の果実でもない。これらの公知の飲料において、「果実片」は、ダイス状にすることとは対照的に、全果の粉砕または浸漬から生じる果実の果肉の部分(portions)である。作物全体の果肉がダイス状であるときには、該果肉は、作物全体の果肉の元の構造的な状態および質感が保持されており、より正確には「果実パルプ」として記載されるものを含まないことが認識される。本発明の方法に従って、ダイス状で用いられてよい作物全体は、野菜の塊茎、茎、根などを含む。この作物は、ダイス状であるとき、溶液が炭酸を含んでいても、溶液中でその構造を保持する。好適な作物の例として、ショウガ、ウコン、朝鮮人参、ニンジン、およびアメリカボウフウ(パースニップ)が挙げられる。貯蔵溶液の等張性における許容範囲は、ダイス状の野菜が浸漬されているときにより広くなる。
【0035】
アルコール性貯蔵溶液が用いられるとき、発酵したブドウの皮から作られたグラッパ(トリプルセックリキュール)が、該溶液への好まれる添加物である。グラッパは、果実から風味を引き出す特に良好な能力を有することが認められている。グラッパは、リンゴ、ナシ、キウイフルーツと共に用いられている。他の好まれる組み合わせとして、ブドウとジン、コアントロー(搾りかすブランデー)、ブランデーまたはウォッカ;オレンジとウォッカまたはコアントロー(搾りかすブランデー);レモンとジン;ライムとジンまたはウォッカ;キウイフルーツとウイスキー;およびナシとブランデー、ウォッカまたはグラッパが挙げられる。これらのアルコール源は、果実および最終貯蔵溶液の全組成に応じて典型的には5〜7.5%(v/v)の濃度で用いられる。所望により、貯蔵溶液にカフェインが添加されてもよい。貯蔵溶液の正確な組成を選択するとき、得られる飲料の美味しさは、主観的な意見の問題であることが認識される。したがって、使用者を、貯蔵溶液の調製に用いる成分のいずれかの特定の組み合わせに制限することは、本明細書に提供されている記載の目的とは矛盾する。有利な点は、上記で議論した中立の水ポテンシャルの確立と、便利かつ望ましいパッケージ飲料を消費者に提供する開封可能にシールされた容器の使用とから生ずる。パッケージ飲料のいくつかの代替の実施形態を説明目的でここでは記載するが、本発明の適用の範囲を制限するものではない。既存のパッケージング形式と形状および寸法が類似するパッケージング形式を使用することで、パッケージ飲料を既存の製品ラインに組み込むことが容易になる。
【0036】
図1において、パッケージ飲料の第1の実施形態を示す。該図は、従来の飲料缶と寸法および形状が同一ではないにせよ類似する、開封可能にシールされた容器(1)を提示する。容器は、蓋(4)によってシールされた単一の側壁(2)および底部(3)から形成されている。容器(1)は、蓋に含まれた第1の開封可能なシール(5)および第2の開封可能なシール(6)を備えている。該図に示す実施形態において、第1の開封可能なシール(5)は、従来の飲料缶において見られたタイプのものである。該開封可能なシールは、「ポップトップ」タイプの開封可能なシールと称されて、リングプルタイプまたはスクリュートップもしくはストッパの開封可能なシールによって置き換えられ得ることが認
識される。製造の利便性および容易性ならびに容器のタイプは、第1の開封可能なシールのタイプの選択に影響する。第1の開封可能なシールは、貯蔵された溶液が飲用され得るように放出されることを可能にするには十分に大きいが、容器に収容されて貯蔵溶液に最初に浸漬された収穫作物(7)が放出されることを可能にするほどには大きくない、容器の蓋において開口を提供するための手段である。第2の開封可能なシール(6)は、肉または野菜の缶において一般的に見られるタイプのものである。第2の開封可能なシール(6)は、引かれたときに容器の蓋(または少なくとも容器の蓋のかなりの部分)を容器の側壁(2)から分離させて第2の開口を提供するリング(9)を含む。第2の開封可能なシールは、容器(1)から作物(7)を放出させるのに十分に大きい開口を提供するための手段である。図示されている以外のこのシール構成によるタイプの容器が、本発明の方法に従って用いられてよいことが認識される。これらの他のタイプの容器は、プラスチック製のパウチまたはボール紙のタイプのものを含むことがある。容器から作物を放出させるのに十分に大きい開口を提供するための手段を満たすために、記載および図示されたリングおよび引きのメカニズムの代替のものが使用されてよいことも認識される。1つのかかるメカニズムは、容器のスクリュートップである蓋に関するものであり得る。第2の開封可能なシールとしてスクリュートップを含む構成は、容器が再使用可能である状況に特に適している。図では、第1の開封可能なシールが第2の開封可能なシールに含まれる、第1の開封可能なシールおよび第2の開封可能なシールの構成を提示しているが、必ずしもこの場合であることはないということが企図される。しかし、図示した構成は、従来の「ポップトップ」および缶開口手段に親しんだ消費者に対して特に訴求していることが認識される。シールされた容器(1)は、作物(7)を確実に貯蔵溶液(8)にほぼ常に浸漬させるのに十分である体積の貯蔵溶液(8)を収容する。貯蔵された溶液(8)が適度に低張性から実質的に等張性であるときのみ、その密度が浸漬された作物の密度よりも低い値を一般に有する。したがって、作物は、貯蔵された溶液に浸漬されたままである傾向を有する。消費者が貯蔵溶液を飲用することを望むとき、リング(10)を引くことによって第1の開封可能なシール(5)を取り外して、貯蔵溶液(8)を注ぐことができる開口(11)を提供することは、簡単な動作である(
図2−上の左から右)。消費者が作物を消費することを望むとき、リング(12)を引くことによって第2の開封可能なシール(6)を取り外し、容器(4)の蓋またはそのかなりの部分を除去して、作物を除去することができる開口を提供することは、簡単な動作である(
図2−下の左から右、
図3−上から下)。
【0037】
図9〜11において、本発明の第2の実施形態を同様に示す。これらの図は、従来の飲料ボトルと類似の寸法および形状を有する開封可能にシールされた容器(1)を提示する。該容器は、頂部においてより小さな開口と底部においてより大きな開口とを提供するようにテーパ状になっている側壁から形成されている。該容器は、底部キャップ(17)および頂部キャップ(18)によって開封可能にシールされている。底部キャップ(17)は、ネジ山(16)によって底部開口端と係合し、これをシールすることができる。頂部キャップ(18)は、ネジ山(19)によって頂部開口端と係合し、これをシールすることができる。この実施形態において、第1の開封可能なシールは、取り外すことによって容器から離脱され得るキャップ(18)によって提供される。この第1の開封可能なシールの取り外しによって提供される開口は、貯蔵溶液が消費者によって飲用され得るように放出されることを可能にするのに十分に大きいが、容器に収容されて貯蔵溶液に最初に浸漬された作物(7)が放出されることを可能にするほどには大きくない。同様に、第2の開封可能なシールである底部キャップ(17)の取り外しにより、容器(1)から作物(7)を放出させるのに十分に大きい第2の開口が提供される。本発明のこの第2の実施形態において、底部キャップ(17)は、
図11に示されているように、容器から一旦除去されると作物(7)のための入れ物として機能することができる。
【0038】
図12〜14において、本発明の第3実施形態の2つの代替を示す。これらの図は、パ
ウチタイプの開封可能にシールされた容器(1)を提示する。該容器は、2つの対向する側壁(2)から形成されており、これら側壁(2)は、該側壁間の底部壁を含みまたは含まずにそれらの外縁部周りでシールされている。この実施形態において、第1の開封可能なシール(5)は、スクリューキャップまたはストッパであってよい。第1の開封可能なシールは、
図13に示すように、キャップを取り外すことによって、またはストッパを除去することによって開封される。この実施形態において、第2の開封可能なシールは、
図14に示すように容器を破って開けることによって提供される。こうした容器を破って開けることは、容器の対向する側壁が合わさるようにシールされた開封可能な外縁部における切り目または1対の切り目によって容易となるとともに、第2の開封可能なシールとして機能する。
【0039】
パッケージ飲料の調製に用いる収穫作物と貯蔵溶液との組み合わせの例をここで記載する。既に記述しているように、得られる飲料の美味しさは、主観的な意見の問題である。以下の実施例において、美味しさに関する注記はいずれも単一の消費者の意見であり、消費者に対するあらゆる万能な魅力を示唆することは意図していない。溶質の濃度は、重量%(w/v)で称される。該用語において表現された溶質濃度とブリックス読み取り値との関係は、特定の溶質について付与されるが、直接の相関関係を暗示するとして読み取られるべきではない。ブリックス読み取り値は、全果の可溶性固体濃度を表現する便利で一般的に用いられている手段である。果実の等張性の測定に関し、ブリックス読み取り値、可溶性固体濃度、および等張性の間には許容可能な相関関係が存在する。溶液の等張性は、溶液中の溶質のモル濃度の関数であるため、広範な種々の分子量および光学活性を有する様々なあり得る溶質が用いられる場合、ブリックス読み取り値、重量%で表現される溶質濃度、および等張性の間には、例外なく許容可能な相関関係は存在しない。溶液中の溶質の濃度は、以下の実施例において、単に便宜上、重量%およびブリックス読み取り値で提供される。全ての場合において、目的は、中立の水ポテンシャルを確立する溶質濃度を有する溶液、一般には、適度に低張性または実質的に等張性の溶液である溶液を使用することである。実施例において提供される方法は、全果であってもダイス状の根菜であっても、特定の種類の収穫作物に関して溶液中で用いられるべき溶質および溶質濃度の適切な組み合わせを決定するのに容易に採用され得る。欄の見出しが存在しない場合、浸漬溶液の組成は各表の左側欄に提供される(果実の品種もテーブルにおいて識別される場合を除く)。貯蔵の後の浸漬された果実および浸漬溶液の特性についての簡単なコメントは、各表の右側欄に提供される。これらの特性は主観的な決定であり、望ましい特性は個人および地域市場間で変動し得ることが理解される。
【0040】
(実施例1〜3)
以下のテーブル1は、グリセロール濃度とブリックスとの間の関係を示す:
【0042】
テーブル2は、塩化カルシウム濃度とブリックスとの間の関係を示す:
【0044】
テーブル3は、グリセロール+塩化カルシウムとブリックスとの間の関係を示す:
【0046】
実施例1〜3は、ブリックス読み取り値が、グリセロール(および他の多価アルコール)の濃度の増大に伴って増大することを示す。塩化カルシウムおよび他のイオンの添加もまた、ブリックス読み取り値を増大させる。
【0047】
(実施例4)
地元のスーパーマーケットから購入したブレイバーンリンゴを秤量し、種々の溶液中に単独で置き、5℃で1ヶ月間貯蔵した。このとき、リンゴを溶液から取り出し、乾燥し、秤量し、針入度計を用いて硬度を評価した。
【0048】
貯蔵の際(対照果実)および貯蔵の後の果実のブリックス、ならびに溶液のブリックスを、携帯用屈折計を用いて評価した。全ての処理を5回繰り返した。その平均をテーブル4に提示する。
【0049】
テーブル4は、5℃において1ヶ月貯蔵した後の、ブレイバーン(Braeburn)リンゴの重量、硬度およびブリックスに対する溶液配合の影響を示す:
【0051】
テーブル4の結果は、溶液中の果実の動態への見通しを与える。果実のブリックスおよび溶液のブリックスは、貯蔵の間、それぞれ維持された。果実の硬度は、溶液中、特に、より低いブリックス読み取り値を有する溶液中で貯蔵の間に増大した。浸漬前(開始)および浸漬後(終了)で果実の湿重量の有意な変化がないため、溶液は低張性であるに違いない。
【0052】
(実施例5)
地元のスーパーマーケットから購入したレッドグローブブドウを種々の溶液において5℃で20日間貯蔵した。ブドウおよび溶液の重量損失/重量増加ならびにブリックスを、貯蔵の前および後に記録した。
【0053】
テーブル5は、5℃において20日間貯蔵する間の、レッドグローブブドウに対する溶液の効果を示す:
【0055】
水中および低濃度のグリセロールにおいて、ブドウは溶液から水を取り込んで裂けた(身割れ)。溶液のブリックスがブドウのブリックスを超えたとき、果実は重量を損失した。より低いから中程度のブリックス読み取り値を有する溶液が最適であった。
【0056】
(実施例6)
わずかに過熟状態にある、果樹園から採取したブレイバーンリンゴを、種々のイオンを含む3.5%のグリセロール、1%および2%の濃度で添加された糖および多価アルコールの溶液に貯蔵した。リンゴを2℃で1ヶ月間インキュベートし、このとき重量損失/重量増加、硬度、およびブリックスを測定した。1処理につき5つの果実をインキュベートした。その平均をテーブル6に提示する。
【0057】
テーブル6は、2℃において1ヶ月間貯蔵する間の、ブレイバーンリンゴに対する溶液組成の影響を示す:
【0059】
テーブル6のデータは、貯蔵溶液の配合がブレイバーンリンゴのブリックス、硬度、および風味にどのように影響するかを示す。多価アルコールが溶質である場合、低い方の濃度が好まれる。3.5%のグリセロールならびに種々の塩および糖の1および2%溶液の溶液中で1ヶ月間貯蔵したブレイバーンリンゴは低張性であり、果実が硬く生き生きした状態を保った。3.5%のグリセロールならびに2%のKH
2PO
4および2%のMgSO
4の溶液は高張性であるとみられた一方で、2%のグルコン酸カルシウムおよび1%のKH
2PO
4では、等張性であるとみられた。3.5%のグリセロールおよび種々の塩/糖の溶液は、ブレイバーンリンゴの貯蔵では主に低張性であるようである。
【0060】
(実施例7)
ブレイバーンリンゴを、塩化カルシウムを含むおよび含まない、グリセロール、マンニトール、ソルビトール、およびプロピレングリコールの混合物中で貯蔵した。果実を溶液中2℃で1ヶ月間貯蔵した。重量損失/重量増加、硬度、ブリックス、および風味の特質を評価した。全ての処理を5回繰り返した。
【0061】
テーブル7は、2℃において1ヶ月間貯蔵する間の、ブレイバーンリンゴに対する溶液組成の影響を示す:
【0063】
多価アルコール(ポリオール)の混合物を塩化カルシウム(CaCl
2)と混合させることにより、果実の特質を改変することができる。CaCl
2を含まない全ての濃度のポリオールにおいて、溶液が適度に低張性であることと相応して、リンゴの重量は増加した。果実の全体重量は、平均で2.06g、その増大した。より高いポリオール濃度では、塩化カルシウム(CaCl
2)の添加により、溶液が高張性であることと相応して、リンゴの重量が損失した。0.5%超の濃度の多価アルコール(ポリオール)の混合物に1.5%のCaCl
2を添加することにより、溶液が弱高張性にされ、果実は平均0.7g損失した。予測した通り、CaCl
2は、果実硬度を増大させた(8.5v8.1Kg/m
2)。しかし、この効果は、多価アルコール(ポリオール)の混合物の濃度が1%を超えたときに停止した。この結果は、CaCl
2などの可溶性塩を多価アルコール(ポリオール)の混合物に添加することにより、リンゴから水が引き抜かれてわずかな重量損失(全体で約1.5%)が引き起こされること、貯蔵溶液の等張性が低張性から高張性に変化し得ることを示している。また、果実と溶液との間の関係の複雑さも実証する。細胞膜を横切って移動する能力を有する可溶性塩を貯蔵溶液に添加することで、貯蔵溶液の動態が容易に変化し得る。
【0064】
(実施例8)
40個の過熟のガラ(Gala)リンゴを地元のスーパーマーケットから購入した。果実は、5.8g/Nmの硬度および14.2のブリックスを有した(10個の果実の平均
)。
【0065】
20個の果実を大きなプラスチック製容器にて3.5%のグリセロール、0.75%の塩化カルシウム、および1%の乳酸カルシウムの溶液中に置いた。水槽ポンプを用いて容器の底部に空気をバブリングした。溶液中の果実をベンチにおいて20℃で20日間置き、このとき果実を溶液から取り出し、硬度およびブリックスについて試験した。10個の対照果実をプラスチック製バッグ中で同じベンチにおいて貯蔵した。
【0066】
テーブル8は、ガラリンゴの貯蔵パラメータに対する貯蔵溶液および空気の影響を示す:
【0068】
実験データは、常温において特定の溶液中で通気しながらリンゴを貯蔵することにより、熟成課程を逆行させ、果実をより硬く、あまり熟さないようにしたことを示している。溶液中のリンゴは、細胞壁の硬度および溶液の低張特性が増大したことによって示されるように、重量が増加した。空気中に貯蔵されたリンゴは、おそらくは、細胞壁がその完全性を損失し、果実がさらに熟成した結果として、その重量を損失し続けた。貯蔵溶液中での浸漬の結果として酸素が欠失することにより、熟成による代謝およびエチレンの発生が遅延されたと予測される。カルシウムイオンが細胞の修復を誘発した可能性がある。
【0069】
(実施例9)
テーブル9は、3℃で7日間貯蔵した後のブレイバーンリンゴと貯蔵媒体との相互作用を示す:
【0071】
ブレイバーンリンゴは、溶質の種類および溶質濃度にかかわらず、小さな重量変化を示した。溶液のブリックスは、リンゴのブリックスで示されたような、貯蔵の間の変化をほとんど示さなかった。スカリル中での重量変化は、その濃度にかかわらず一貫していた。
【0072】
(実施例10)
テーブル10aは、3℃で7日間貯蔵した後のレッドグローブブドウと貯蔵媒体との相互作用を示す:
【0074】
ブレイバーンリンゴとは対照的に、レッドグローブブドウは、溶質および溶質濃度によって大きな重量増加/損失を示した。水中で貯蔵されたブドウでは、その重量が増加した。グリセロールにおけるブドウでは、10%に近づくに従いその重量の増加が減り、次いで、その重量が損失された。40%において、ブドウは、しわができた状態になった。より高濃度(10%以上)のSUCARYL(商標)において、ブドウは水を得て裂け、データを信頼できないものにした。裂けることで、材料が果実から抜けるに従って溶液のブリックスが増大した。D−グルコースにおいて、溶質濃度が増大するに従って重量増加が減少し、20%をわずかに超える濃度で平衡に達した。40%において、ブドウは重量を損失し、しわができた状態になった。グリセロールおよびD−グルコースにおいて、溶液のブリックスが貯蔵後に増大した。
【0075】
テーブル10bは、5℃で20日間の貯蔵における、レッドグローブブドウと貯蔵溶液との間の相互作用を示す:
【0077】
3つのレッドグローブブドウを、種々の濃度のCaCl
2およびNaClを添加した10%のグリセロールの溶液中に置いた。果実を5℃で7日間貯蔵し、このとき果実を乾燥させて秤量し、貯蔵溶液およびブドウのブリックスを測定した。実験の目的は、種々の溶液の等張性を測定することであった。
【0079】
10%のグリセロール+種々の濃度のCaCl
2およびNaClならびにこれらの混合物の溶液中で7日間貯蔵したレッドグローブブドウは、3つの果実につき平均0.8g増加した。したがって、貯蔵溶液は適度に低張性であり、果実を硬く保った。ブドウと貯蔵溶液との間のブリックスの差違は、10%のグリセロール溶液の等張性によってできる限り維持された。
【0080】
(実施例11)
テーブル11は、溶液の組成が、5℃において30日間貯蔵した後のナシおよびリンゴの風味および質感の特質にどのように影響し得るかを示す:
【0082】
テーブル11における観察は、溶液の組成の変動が、果実の風味および質感の特質をどのように改変し得るかを示す。特定の果実および溶液の組成の組み合わせについて得られた結果は一貫性があり繰り返し可能であった。
【0083】
(実施例12)
ゼスプリゴールドおよびハイウッドグリーン(Haywood Green)のキウイフルーツを、果実の消費と併せて飲用を意図した溶液中に置いた。これらの溶液は、望まれる製品に応じて、炭酸を含んでもよく、アルコールが添加されていてもよい。溶液中に置く前に、果実を、濾過した水道水において濯いだ。溶液用の水も水道水であった。溶液中の果実をサンプリングの前に5〜6℃で30日間保った。
【0086】
(実施例13)
赤色、緑色、および黒色のテーブルブドウは、望まれる製品に応じて、炭酸を含んでいてもよく、アルコールが添加されていてもよい。キウイフルーツについて上述したようにして、果実を洗浄および処理した。
【0088】
10%のグリセロールを付随するCaCl
2およびNaClの影響について
【0090】
(実施例14)
根ショウガを洗浄し、次いで、1〜2cmの長さのセクションに縦方向にスライスし、溶液中に置く。炭酸化は、特に容器を開いたときの風味の抽出を助ける。これにより、清
涼飲料水が作られ、このショウガは消費されない。
【0092】
(実施例15)
柑橘類を含むパッケージ飲料を、表皮からの柑橘油が溶液中に拡散して自然な風味の飲料を作ることが可能であるように設計する。溶液は、炭酸を含んでいても、アルコールが補われていても、両方が補われていてもよい。溶液は果実に入ってこれを甘くし、食用に好適にする。柑橘類果実は、表皮が内側のセグメントとは別々であるという構造のため、詳細な説明に概説した、膜を横断する溶質および水の移動を調節するという原則は適用されない。したがって、果実の懸濁のための溶質の濃度は、果実のブリックス濃度を必ずしも反映していない。したがって、溶液は、表皮から最大の風味を抽出するように合わされる。
【0096】
(実施例16)
リンゴおよびナシは溶液中でよく貯蔵でき、種々の風味を発現するように操作されることができる。それぞれの品種は、溶液に対して異なる応答(飲料および果実の風味)を示す。個々の品種ならびに標的とした特定の風味および質感について、特定の溶液を開発した。小さな果実のサンプルの試験からの指標となる結果を以下に与える。西洋ナシ(European pear)および日本ナシ(Nashi pear)は、全く異なり、異なる処理を必要とする。
【0100】
リンゴの品種の選択に関する結果を提示する。品種に応じて、ならびに、特定の風味の果実および/または飲料が必要であるかどうか、場合により炭酸を含むか、またはアルコールを含むかにより、種々の置換が可能であることが認識される。
【0114】
(実施例21)
ゴールデンデリシャスリンゴ、レモン、ゴールドキウイフルーツ、およびショウガ片を種々の溶液に15日間浸漬し、次いで秤量して、水が取り込まれたかまたは損失されたかを確かめた。
【0116】
等張性であるとみられた2種の貯蔵溶液(2%のSUCARYL(商標)+1%のグリセロール、4%のSUCARYL(商標)+1%のグリセロール+CO
2)とは別に、全ての他の処理が低張性であるとみられ、すなわち、果実の重量が増加した。溶液のブリックスと果実のブリックスとの間の差違は維持された。CO
2の存在は、膜透過性に影響しなかった。SUCARYL(商標)を含む全ての溶液が、果実からの風味を溶液中に引き出した。グリセロール溶液は、風味を引き出さず、溶液の味は風味が乏しかった。
【0118】
全ての貯蔵溶液が低張性であるとみられ、果実の重量増加はリンゴを超えた。溶液および果実のブリックスの差違も維持された。水、4%のSUCARYL(商標)、およびCO
2は果実を軟化させた。SUCARYL(商標)の存在は、柑橘類風味を引き出し、飲料を美味しくした。この効果は、CO
2によって向上した。
【0120】
全ての貯蔵溶液が低張性であるとみられ、果実の重量増加はリンゴと同様であった。溶液および果実のブリックスの差違も維持された。水、4%のSUCARYL(商標)、およびCO
2が果実を軟化させた。SUCARYL(商標)の存在は、風味を引き出し、飲料を美味しくした。この効果は、CO
2によって向上した。
【0122】
全ての貯蔵溶液が低張性であるとみられ、果実の重量増加はリンゴを超えた。溶液および果実のブリックスの差違も維持された。水、4%のSUCARYL(商標)、およびCO
2が果実を軟化させた。SUCARYL(商標)の存在は、柑橘類風味を引き出し、飲料を美味しくした。この効果は、CO
2によって向上した。
【0123】
上記からの平均データを以下のテーブルにまとめる:
【0125】
全ての貯蔵溶液が低張性であるとみられたが、湿重量の増大は作物の種類に特有であった。これは、作物の全体またはダイス状の作物の構造を考慮することによって説明することができる。例えば、リンゴおよびキウイフルーツは、両方とも、薄い表皮によってくるまれており、両方とも、同様の量の重量が増加した。柑橘類は、溶液をできる限り吸収した厚い表皮を有する。スライス状のショウガは、外側の膜を有さず、重量が増加した。全ての種類の作物が、ショウガでさえも、外側の溶液と作物の内側とのブリックス差を維持し、これは、細胞の完全性が維持されていることを示した。炭酸化は、細胞膜を断裂させたとはみられなかった。人工甘味料は、果実風味を溶質内に引き出した。
【0126】
本発明を、パッケージ飲料の第1、第2および第3実施形態ならびに本方法における使用に可能である貯蔵溶液の多数の実施例によって記載したが、記載した本発明の範囲を逸脱することなく、これらの実施形態および実施例に対して改良および/または変更がなされ得ることが認識されるべきである。上記の説明において、公知の等価を有する整数または成分に言及している場合、かかる等価は、あたかも個々が記載されているかのように援用される。