【文献】
ASHRAF, S. et al.,"Humanised IgG1 antibody variants targeting membrane-bound carcinoembryonic antigen by antibody-dependent cellular cytotoxicity and phagocytosis.",BR. J. CANCER,2009年11月17日,Vol.101, No.10,pp.1758-1768
【文献】
SHIBA, K. et al.,"Polydispersity as a parameter for indicating the thermal stability of proteins by dynamic light scattering.",ANAL. SCI.,2010年,Vol.26, No.6,pp.659-663
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
少なくとも一つの増加したエフェクター機能は、Fcレセプター結合親和性の増加、抗体依存性細胞傷害(ADCC)の増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシス、樹状細胞の成熟の増加、及びT細胞プライミングの増加からなる群から選択される、請求項12に記載の抗体。
【背景技術】
【0003】
背景
癌胎児性抗原(CEA)及び抗CEA抗体
癌胎児性抗原(CEA、CEACAM−5又はCD66eとしても知られている)は約180kDaの分子量を有する糖タンパク質である。CEAは免疫グロブリンスーパーファミリーのメンバーであり、グリコシルホスファチジルイノシトール(GPI)アンカーを介して細胞膜にリンクされている7つのドメインを含む(Thompson J.A., J Clin Lab Anal. 5:344-366, 1991)。7つのドメインは、単一のN末端Ig可変ドメイン及びIg定常領域に相同な6つのドメイン(A1−B1−A2−B2−A3−B3)を含む(Hefta L J,ら、 Cancer Res. 52:5647-5655, 1992)。
【0004】
ヒトCEAファミリーは、29の遺伝子を含んでおり、そのうち18個が発現される:7つはCEAサブグループに、11個は妊娠特異的糖タンパク質のサブグループに属している。いくつかのCEAサブグループのメンバーは、細胞接着特性を有すると考えられている。CEAは、自然免疫の役割を持っていると考えられている(Hammarstrom S., Semin Cancer Biol. 9(2):67-81 (1999))。CEAに密接に関連するタンパク質の存在のため、他の密接に関連したタンパク質に対する最小限の交差反応性を持つCEAに特異的な抗CEA抗体を産生することは挑戦的であり得る。
【0005】
CEAは、腫瘍関連抗原として長らく同定されてきた(Gold 及び Freedman, J Exp Med., 121:439-462, 1965; Berinstein N. L., J Clin Oncol., 20:2197-2207, 2002)。胎児の組織においてのみに発現されるタンパク質としてもともと分類されたが、現在CEAは複数の正常成人組織で同定されている。これらの組織は元々は主に上皮性であり、消化管、呼吸器系の細胞、泌尿生殖器管、及び大腸、子宮頸部、汗腺、前立腺の細胞を含む(Napら、 Tumour Biol., 9(2-3):145-53,1988; Napら、 Cancer Res., 52(8):2329-23339,1992)。
【0006】
上皮由来の腫瘍、ならびにそれらの転移は、腫瘍関連抗原としてのCEAを含む。CEA自体の存在は、癌細胞への転換を示すものではないが、CEAの分布は指標となる。正常組織では、CEAは、一般的に細胞の頂端膜側に発現しており(Hammarstrom S., Semin Cancer Biol. 9(2):67-81 (1999))、血液中で抗体に近づきにくくしている。正常組織とは対照的に、CEAは、癌細胞の表面全体に発現する傾向がある(Hammarstrom S., Semin Cancer Biol. 9(2):67-81 (1999))。発現パターンのこの変化は、癌細胞中で抗体の結合にCEAが到達できるようにしている。加えて、CEAの発現は癌細胞で増加する。更に、増加したCEAの発現は、細胞間接着の増加を促進し、転移につながる可能性がある(Marshall J., Semin Oncol., 30(付録8):30-6, 2003)。
【0007】
CEAは、容易に細胞表面から切断されて、直接又はリンパ管を介して、腫瘍からの血流に流される。この特性のため、血清CEAのレベルは、癌の診断、及び癌、特に結腸直腸癌の再発スクリーニングのための臨床マーカーとして使用されている(Goldenberg D M., The International Journal of Biological Markers, 7:183-188, 1992; Chau I.,ら、 J Clin Oncol., 22:1420-1429, 2004; Flaminiら、 Clin Cancer Res; 12(23):6985-6988, 2006)。血清CEAは現在入手可能な抗CEA抗体の大部分に結合し、細胞表面上のそれらの標的への到達を妨げ、潜在的な臨床効果を制限するため、この特性は標的としてCEAを使用するための課題の一つを提示している。
【0008】
複数のモノクローナル抗体が、診断ツールとして研究目的用に、及び治療目的用に、CEAに対して産生されている(例えば、Napら、 Cancer Res., 52(8):2329-23339, 1992; Sheahanら、 Am. J. Clin. Path. 94:157-164, 1990; Sakuraiら、 J. Surg. Oncol., 42:39-46, 1989; Goldenberg D M., The International Journal of Biological Markers, 7:183-188, 1992; Ledermann J A, Br. J. Cancer, 58:654, 1988; Ledermann J A, Br. J. Cancer, 68:69-73, 1993; Pedley R B,ら、 Br. J. Cancer, 68:69-73, 1993; Boxer GM,ら、 Br. J. Cancer, 65:825-831, 1992)。チェスターらは、放射免疫検出及び放射免疫療法に使用されるファージディスプレイライブラリーから単鎖抗CEA抗体を単離し(米国特許第5876691号)、続いて抗体はヒト化された(米国特許第7232888号)。抗CEA抗体はまた、ヒトファージディスプレイライブラリーからも単離されている(米国特許第5872215号)。
【0009】
マウスモノクローナル抗体PR1A3は、通常の大腸上皮で免疫したマウス由来の脾臓細胞とNS1(P3/NS1/I−Ag−4−1)骨髄腫細胞の融合により産生された(Richman P. I. 及び Bodmer W. F., Int. J. Cancer, 39:317-328, 1987)。PR1A3は高分化型及び低分化型結腸直腸癌の双方に強く反応し、その抗原は、腫瘍に固定されるように現れ、リンパ管若しくは腫瘍を排出する通常のリンパ節には現れないため、他の大腸上皮反応性抗体に勝る利点を有している(Granowska M.ら、 Eur. J. Nucl. Med., 20:690-698, 1989)。例えば、PR1A3は、60分の59の大腸腫瘍と反応したが、一方CEA反応性抗体B72.3は、大腸腫瘍の75%のみと反応した(Mansi L.,ら、 Int J Rad Appl Instrum B., 16(2):127-35, 1989)。
【0010】
PR1A3のエピトープマッピングでは、抗体がB3ドメイン及びCEA分子のGPIアンカーをターゲットにすることを示している(Durbin H.ら、 Proc. Natl. Scad. Sci. USA, 91:4313-4317, 1994)。その結果、PR1A3抗体は膜結合CEAに対してのみ結合し、癌患者の血流で見つけられる可溶性CEA型には結合しない。この結合特性のため、PR1A3抗体は血清CEAによって隔絶されることはほとんどなく、その代わりに、癌細胞に発現しているCEAをターゲットにすることができる。PR1A3に結合されるエピトープは立体構造エピトープではなく、可溶性CEAに対するPR1A3の結合の損失に寄与すると考えられている直線状エピトープである(Stewartら、 Cancer Immunol Immunother, 47:299-06, 1999)。
【0011】
PR1A3抗体は、以前に、マウス親抗体のCDRを、ヒト抗体RF−TS3’CL(PR1A3のマウスフレームワーク4を保持する)の重鎖フレームワーク領域1−3、及びREI抗体の軽鎖のフレームワーク領域へ移植することでヒト化された(Stewartら、 Cancer Immunol Immunother, 47:299-06, 1999)。PR1A3のこのヒト化バージョンは特異性を保持しており、表面に発現したCEAに対してマウス抗体のそれと似た親和性を有する(Stewartら、 Cancer Immunol Immunother, 47:299-06, 1999; U.S. Pat. No. 5,965,710)。ヒトPR1A3(hPR1A3)抗体は結腸直腸癌細胞系の標的化された死滅を誘導することが示された(Conaghhan P. J.,ら、 Br. J. Cancer, 98(7):1217-1225)。しかしながら、CEAに対するhPR1A3の親和性は比較的低い。
【0012】
放射標識された抗CEA抗体は結腸直腸癌患者での臨床試験で使用されている。例えば、
123I標識キメラミニボディT84.66(cT84.66)は、結腸直腸癌患者のパイロット臨床試験で使用されている。放射標識されたミニボディは癌細胞を標的とすることができた(Wong J. Y.ら、 Clin Cancer Res. 10(15):5014-21, (2004))。別の例では、(
131)Iラベツズマブ、放射性標識化ヒト化抗CEA抗体が、結腸直腸癌の肝転移患者におけるアジュバント免疫療法で試験され、有望な生存の優位性を与えることが判明した(Liersch T.,ら、 Ann. Surg. Oncol. 14(9):2577-90, (2007))。
【0013】
抗体グリコシル化
オリゴ糖成分は、物理的安定性、プロテアーゼ攻撃に対する抵抗性、免疫系との相互作用、薬物動態学、及び特異的生物学的活性を含む、治療用糖タンパク質の効力に関連する特性に有意に影響を与える。このような特性は、オリゴ糖の存在又は非存在に依存するのみならず、オリゴ糖の特異的構造にもまた依存する可能性がある。オリゴ糖構造と糖タンパク質機能との間のある程度の一般化がなされ得る。例えば、特定のオリゴ糖構造は、特異的炭水化物結合タンパク質との相互作用を通して血流からの糖タンパク質の急速なクリアランスを媒介するが、他の構造は、抗体によって結合され得、そして望ましくない免疫反応を誘発し得るJenkinsら、 Nature Biotechnol. 14:975-81, 1996)。
【0014】
哺乳動物細胞は、ヒト適用のための大部分の適合性の型においてタンパク質をグリコシル化するそれらの能力に起因して、治療用糖タンパク質の産生のための好ましい宿主である(Cummingら、 Glycobiology 1:115-30, 1991; Jenkinsら、 Nature Biotechnol. 14:975-981, 1996)。細菌は非常にまれに、タンパク質、ならびに酵母、糸状菌、昆虫、及び植物細胞などの一般的な宿主の同様の他の型をグリコシル化し、血流からの迅速なクリアランス、望ましくない免疫相互作用、及びある特定の場合においては、減少した生物学的活性と関連したグリコシレーションパターンを生じる。哺乳動物細胞の間で、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞は、過去20年間の間に最も一般的に使用されてきた。適切なグリコシル化パターンを与えることに加えて、これらの細胞は、遺伝的に安定な、高度に生産的なクローン性細胞系の一貫した生成を可能にする。これらは、無血清培地を使用する単純なバイオリアクター中で高密度で培養され得、安全かつ再生可能なバイオプロセスの開発を可能にする。他の一般的に使用される動物細胞には、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞、NS0−及びSP2/0−マウス骨髄腫細胞が含まれる。より最近では、トランスジェニック動物からの産生もまた試験されてきた(Jenkinsら、 Nature Biotechnol. 14:975-81, 1996)。
【0015】
全ての抗体は、重鎖定常領域の保存性位置に糖質構造を含み、各アイソタイプがN連結糖質構造の独特のアレイを有し、これはタンパク質のアセンブリー、分泌又は機能的な活性に様々に影響を与える(Wright A. 及び Morrison S. L., Trends Biotech. 15:26-32, 1997)。結合したN連結糖質の構造は、プロセシングの程度に依存して顕著に変化し、高マンノース、多分枝ならびに二分岐複合体オリゴ糖を含み得る(Wright, A., 及び Morrison, S. L., Trends Biotech. 15:26-32, 1997)。典型的には、特定のグリコシル化部位に結合されたコアオリゴ糖構造の均質でないプロセシングが存在し、その結果、モノクローナル抗体さえもが複数の糖型で存在する。同様に、抗体のグリコシル化における主要な違いは細胞系間で起こり、そしてマイナーな違いさえもが異なる培養条件下で増殖された所定の細胞系について見られることが示されてきた(Lifely, M. R.ら、 Glycobiology 5(8):813-22, 1995)。
【0016】
単純な製造プロセスを維持しながら、かつ有意な、望ましくない副作用を回避しながら、効力の大きな増加を得るための1つの方法は、Umana,P.等、Nature Biotechnol.17:176-180(1999)及び米国特許第6602684号(これらの内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)において記載されるような、それらのオリゴ糖を操作することによってモノクローナル抗体の天然の、細胞媒介性エフェクター機能を増強することである。癌免疫治療において最も一般的に使用される抗体であるIgG1型抗体は、各CH2ドメイン中のAsn297において保存性N連結型グリコシル化部位を有する糖タンパク質である。Asn297に結合された2つの複合体二分岐状オリゴ糖は、CH2ドメイン間に包埋されて、ポリペプチドバックボーンとの広範な接触を形成しており、それらの存在は、抗体が、抗体依存的細胞傷害性(ADCC)などのエフェクター機能を媒介するために必須である(Lifely, M. R.,ら、 Glycobiology 5:813-822 (1995); Jefferis, R.,ら、 Immunol Rev. 163:59-76 (1998); Wright, A. 及び Morrison, S. L., Trends Biotechnol. 15:26-32 (1997))。
【0017】
Umanaらは以前に、チャイニーズハムスター卵巣細胞における、二分枝オリゴ糖の形成を触媒するグリコシルトランスフェラーゼである、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(「GnTIII」)の過剰発現が、操作されたCHO細胞によって産生される抗神経芽細胞腫キメラモノクローナル抗体(chCE7)のインビトロADCC活性を増加させることを示した(Umana, P.ら、 Nature Biotechnol. 17:176-180 (1999);及び国際公開番号WO99/54342を参照のこと、これらの内容は参照により本明細書に組み込まれる)。抗体chCE7は、結合体化されていないmAbの大きなクラスに属し、これは、高い腫瘍親和性及び特異性を有するが、GnTIII酵素を欠く標準的な工業用細胞系において産生される場合には、効力が小さすぎて臨床的には有用でない(Umana, P.,ら、 Nature Biotechnol. 17:176-180 (1999))。この研究は、ADCC活性の大きな増加が、GnTIIIを発現するために抗体産生細胞を操作することによって得られ得、これはまた、二分枝でフコシル化されていないオリゴ糖を含む、定常領域(Fc)結合した二分枝性オリゴ糖の割合の増加を、天然に存在する抗体において見いだされるレベルよりも上に導くことを最初に示した。
【0018】
CEA、特に膜結合CEAを標的化する、増強された治療アプローチについての必要性が残っている。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、CEA(CEACAM−5、CD66e)抗原の模式図を示す。PR1A3抗体は、細胞膜に結合している場合、抗原のB3ドメインに特異的に結合する。
【
図2】
図2は、エフェクターとしてヒトPBMCを用いる場合、糖鎖を操作されていないキメラPR1A3抗体と比較して、糖鎖を操作されたキメラPR1A3抗体の強化されたADCC活性を示す。
【
図3】キメラPR1A3抗体と比較して、重鎖可変領域コンストラクト、CH7A、及び軽鎖可変領域コンストラクト、CL1Aを含むヒト化PR1A3抗体の抗原結合活性を示す。
【
図4】
図4は、ヒト化PR1A3抗体軽鎖の親和性成熟のために抗体ライブラリーを生成するためのランダム化部位を示す。Xが付いている位置が無作為に割り付けられた。
【
図5】
図5は、ヒト化PR1A3抗体重鎖の親和性成熟のために抗体ライブラリーを生成するためのランダム化部位を示す。Xが付いている位置が無作為に割り付けられた。
【
図6】
図6は、重鎖可変領域コンストラクトCH7ArF9及び軽鎖可変領域コンストラクトCL1ArH11を含む、ヒト化PR1A3抗体由来の親和性成熟抗CEA抗体の結合活性を示す。
【
図7】
図7は、同所腫瘍モデルを持つためにLS174Tヒト結腸直腸癌細胞を脾臓内投与されたSCID/bgマウスにおける有効性試験の結果を示す。抗体療法は、25mg/kg体重の用量で抗体の注射により7日後に開始され、その後2回追加の毎週の注射が続いた。「CH7A」は本明細書に記載されるようにPR1A3のCDRを含むヒト化抗体を表している。「SM3E」は、以前に生成された抗CEA抗体を指す。「GA201」はポジティブコントロールとして使用されたヒト化抗EGF抗体を表している。「PBS」はネガティブコントロールとして使用されたリン酸緩衝生理食塩水を指す。生存はスイスの規制当局によって定義された終了基準に従って測定された。
【
図8】
図8は、A549肺癌細胞を静脈内注射されたSCID/bgマウスにおける有効性試験の結果を示しており、腫瘍は動物の肺に生着する。抗体療法は、25mg/kg体重の用量で抗体の注射により7日後に開始され、その後2回追加の毎週の注射が続いた。「CH7A」、「SM3E」、及び「GA201」は上記のように、
図7に記載されている。「CH7ArF9 CL1A rH11」なる記号は、親和性成熟重鎖及び軽鎖を持つCH7A抗体変異体を表している。「ge」なる記号は、抗体が糖鎖を操作されて、そのFc領域にフコシル化オリゴ糖の還元数を有していることを示している。「ビークル」はネガティブコントロールを指す。A549肺癌細胞ではEGFR発現に対して強陽性であり、CEA発現に対して弱陽性である。
【
図9】
図9は、MKN45胃癌細胞を脾臓内に投与されたSCID/bgマウスにおける有効性試験の結果を示しており、動物の肝臓に腫瘍の転移を生成する。「CH7ArF9 CL1A rH11」、「SM3E」、「ge」、及び「PBS」は、上記のように、
図7及び8に記載されている。
【
図10】
図10は、親和性成熟したクローンの動態解析を示している。(a)は、非成熟軽鎖CL1A(配列番号105)とともに、親和性成熟重鎖のCH7A H4E9(配列番号199);非成熟重鎖CH7Aと組み合わせた、親和性成熟軽鎖のCL1A pAC18(配列番号209);及びその組合わせの、CH7A H4E9及びCL1A pAC18(配列番号:199及び209)による抗CEA Fabのセンサーグラムを示す。(b)親和性成熟クローンの動態解析の概要。
【
図11】
図11は、ヒト化CH7A抗CEA抗体重鎖のCDR1及びCDR2無作為化のためのPCR戦略の図式的概観を示している。
【
図12】
図12は、ヒト化CL1A抗CEA抗体軽鎖のCDR1及びCDR2無作為化のためのPCR戦略の図式的概観を示している。
【
図13】
図13は、ヒト化CH7A抗CEA抗体重鎖のCDR3無作為化のためのPCR戦略の図式的概観を示している。
【
図14】
図14は、ヒト化CL1A抗CEA抗体軽鎖のCDR3無作為化のためのPCR戦略の図式的概観を示している。
【
図15】
図15は、MKN45標的細胞上の膜結合CEAに対する抗CEA抗体の結合親和性を示している。IgGへ変換された親和性成熟軽鎖(パネルA、CH7A,CL1ArH7、又はCH7A、CL1ArH11)又は親和性成熟重鎖及び軽鎖(パネルB、CH7A rB9、CL1A rH11 G2(1))の何れかを持つヒト化抗CEA抗体はコントロール抗体(CH7A、CL1A)と比べて結合の向上を示している。
【
図16】
図16は、コントロール抗体(CH7A、CL1A G2(R2))に比べた、親和性成熟抗体(CH7ArB9、CL1A rH11G2(1)、CH7Arf9、CL1A rH11G2(1)、及びCH7A、CL1A rH11 G2(1))による抗体依存性細胞傷害(ADCC)を試験するアッセイの結果を示す。
【
図17】
図17は、マウス−ヒトキメラ抗体chPR1A3と比較して、重鎖CH1Aを持つ抗CEA抗体の細胞結合アッセイの結果を示す。
【
図18】
図18は、重鎖CH1A、CH1A2、CH1A3,又はCH1A4、及び軽鎖2F1を持つ抗CEA抗体の細胞結合アッセイの結果を示す。
【
図19】
図19は、重鎖CH1A、CH1A2、CH1A3,又はCH1A4を持つ抗CEA抗体の安定性のアッセイの結果を示す。
【
図20】
図20は、CH1A1から生成された抗CEA抗体についての表面プラズモン共鳴(SPR)分析の結果を示す。
【
図21】
図21は、CH1A1から生成された抗CEA抗体についての細胞結合アッセイの結果を示す。
【
図22】
図22は、親の5HFF12重鎖と比較して、安定性を操作された抗CEA抗体の(二価形態で測定される場合の)親和性の表面プラズモン共鳴(SPR)測定の結果を示す。
【
図23-24】
図23と24は、5HFF12において選択され、導入された個々の点変異を持つその親の重鎖CH7Aと比較して、親和性成熟抗体5HFF12についての安定性アッセイの結果を示す。
【
図25】
図25は、フレームワークとCDR−H3変異体の組み合わせの面プラズモン共鳴解析を示す。
【
図26】
図26は、CHA1Aをベースにしたフレームワーク変異体のADCC活性を示す。
【
図27】
図27は、CHA1Aをベースにしたフレームワーク変異体のADCC活性を示す。
【
図28】
図28は、フレームワークとCDR−H3変異体の組み合わせのADCC活性を示す。
【
図29】
図29は、フレームワークとCDR−H3変異体の組み合わせのADCC活性を示す。
【
図30】
図30は、ヒトCD16の遺伝子導入SCIDマウスの結腸直腸癌の異種移植モデルにおける、糖鎖を操作された抗CEA抗体CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1の有効性を示す。
【
図31】
図31は、ヒトCD16の遺伝子導入SCIDマウスのA549肺癌の異種移植モデルにおける、糖鎖を操作された抗CEA抗体CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1の有効性を示す。
【
図32】
図32は、様々な抗CEA ABMについてのCDRのアミノ酸配列を示す。
【
図33】
図33は、様々な抗CEA ABMについての軽鎖コンストラクトのアミノ酸配列を示す。
【
図34A-C】
図34A−Cは、親和性成熟重鎖及び軽鎖CDRのアミノ酸配列、及び関連する結合親和性を示す。
【
図35】
図35は、様々な親和性成熟抗体配列の親和性定数を示す。
【
図36】
図36は、様々な抗CEA ABMについてのCDR−H3のアミノ酸配列を示す。
【
図37A-C】
図37A−Cは、様々な抗CEA ABMについてのVH領域のアミノ酸配列を示す。
【
図38】
図38は、様々な安定性が成熟した抗CEA抗体のVH領域のアミノ酸配列アラインメントを示す。
【0035】
発明の詳細な記述
定義
本明細書において用いられる用語は、下記に別に定義されていなければ、一般的に当該技術分野で用いられている。
【0036】
本明細書で使用される場合、用語、抗原結合分子とは、その最も広い意味において、抗原決定基を特異的に結合する分子をいう。抗原結合分子の非限定的な例では、抗原特異的な結合を保持する抗体又はその断片である。より具体的には、膜結合ヒト癌胎児性抗原 (CEA) を結合する抗原結合分子は、CEAに対して、より具体的には細胞表面から切断された可溶性CEAではなく、細胞表面又は膜結合CEAに対して特異的に結合するABMである。「特異的に結合する」によって、結合が抗原について選択的であり、かつ望ましくない又は非特異的な相互作用から区別され得ることが意味される。
【0037】
本明細書で使用される場合、用語、「抗体」は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体及び多特異性(例えば、二特異性)抗体を含む全体の抗体分子、ならびにFc領域を有しかつ結合特異性を保持している抗体断片、及び免疫グロブリンのFc領域に等価である領域を含みかつ結合特異性を保持している融合タンパク質を含むことが意図される。また包含されるのは、限定されないが、VH断片、VL断片、Fab断片、F(ab')
2断片、scFv断片、Fv断片、ミニボディ(minibodies)、ダイアボディ(diabodies)、トリアボディ(triabodies)、及びテトラボディ(tetrabodies)を特に含む、結合特異性を保持した抗体断片である(例えば、Hudson 及び Souriau, Nature Med. 9: 129-134 (2003)を参照)。
【0038】
本明細書で使用される場合、用語、「抗原結合ドメイン」は、抗原の一部又は全部に特異的に結合し、かつ相補的である領域を含む抗原結合分子の一部を指す。抗原が大きい場合には、抗原結合分子は、エピトープと呼ばれる抗原の特定の部分に結合することができる。抗原結合ドメインは、例えば、1つ又は複数の抗体の可変ドメインにより与えられ得る。好ましくは、抗原結合ドメインは、抗体の軽鎖可変領域(VL)及び抗体の重鎖可変領域(VH)を含む。
【0039】
本明細書で使用される場合、用語、「親和性成熟」は、抗原結合分子(例えば抗体)との関連で、例えば突然変異により参照抗原結合分子から由来し、参照抗体と同じ抗原に結合し、好ましくは同じエピトープに結合し、参照抗原結合分子のそれよりも抗原に対して高い親和性を有する抗原結合分子を指す。親和性成熟は一般的に抗原結合分子の1以上のCDRの1つ又は複数のアミノ酸残基の修飾が含まれる。典型的には、親和性成熟抗原結合分子は、初期の参照抗原結合分子と同じエピトープに結合する。
【0040】
本明細書で使用される場合、用語、「結合親和性」は、一般的に会合平衡又は解離定数を単位として表わされ(それぞれK
a又はK
d)、それらは順に解離速度定数及び会合速度定数(それぞれk
d及びk
a)の逆比である。従って、等価な親和性は速度定数の比が同じままである限り、異なる速度定数を含み得る。
【0041】
本明細書で使用される場合、用語、「Fc領域」は、IgG重鎖のC末端領域を指す。IgG重鎖のFc領域の境界はわずかに異なる可能性があるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は、Cys226位のアミノ酸残基からカルボキシル末端までに広がると通常定義される。
【0042】
本明細書で使用される場合、用語、「免疫グロブリンのFc領域に等価である領域」は、免疫グロブリンのFc領域の天然に存在する対立遺伝子変異体、ならびに置換、付加、又は欠失を生じるが、免疫グロブリンがエフェクター機能を媒介する能力(抗体依存的な細胞傷害性)を実質的に減少しない変化を有する変異体を含むことが意図される。例えば、1つ以上のアミノ酸が、免疫グロブリンのFc領域のN末端又はC末端から、生物学的機能の実質的な損失を伴うことなく、欠失され得る。このような変異体は、活性に対して最小限の効果を有するように、当分野において公知である一般的規則に従って選択され得る(例えば、Bowie, J. U.ら、 Science 247:1306-10 (1990)を参照のこと)。
【0043】
本明細書で使用される場合、用語、「膜結合ヒトCEA」は、細胞の膜の部分に、又は細胞の表面、特に腫瘍細胞の表面に結合するヒト癌胎児性抗原(CEA)を指す。用語、「膜結合ヒトCEA」は、所定の状況において、細胞の膜に結合しないが、PR1A3抗体が結合するエピトープを保持するように構築されたCEAを指す場合がある。「可溶性CEA」は、細胞膜又は細胞表面(例えば、腫瘍細胞表面)に結合していないか又は切断され、及び/又はPR1A3抗体に結合されたコンフォメーションエピトープを保持しないヒト癌胎児性抗原を指す。可溶性CEAは、例えば、癌患者の血流又はリンパ管に見いだされる。
【0044】
本明細書で使用される場合、用語、「可溶性CEAに対する交差反応性が実質的に無い」とは、分子(例えば、抗原結合分子)が、特に膜結合CEAと比較した場合に、可溶性CEAを認識しないか又は特異的に結合しないことを意味する。例えば、抗原結合分子が約10%未満から約5%未満の可溶性CEAに結合する場合があり、又は約10%、9%、8%7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.5%、0.2%、又は0.1%未満、好ましくは約2%、1%又は0,5%未満の可溶性CEAに、及び最も好ましくは約0.2%又は0,1%未満の可溶性CEAから成る群から選択される量において可溶性CEAに結合しうる。
【0045】
本明細書で使用される場合、用語、「融合物」又は「キメラ」は、ABMなどのポリペプチドに関連して使用される場合、異なる種からの抗体の部分などの2つ以上の異種ポリペプチドに由来するアミノ酸配列を含むポリペプチドをいう。キメラABMについては、例えば、非抗原結合成分が、チンパンジー及びヒトなどの霊長類を含む広範な種々の種に由来されてもよい。キメラABMの定常領域は、一般的に、天然のヒト抗体の定常領域と実質的に同一であり;キメラ抗体の可変領域は、一般的に、マウスPR1A3可変領域のアミノ酸配列を有する組換え抗CEA抗体に由来する配列を含む。ヒト化抗体は、特に好ましい融合抗体又はキメラ抗体の型である。
【0046】
本明細書で使用される場合、用語、「ヒト化」は、親の分子の抗原結合特性を保持するか又は実質的に保持するが、ヒトにおいて免疫原性が低い非ヒト抗原結合分子、例えば、マウス抗体に一部が由来する抗原結合分子をいうために使用される。これは、(a)キメラ抗体を生成するためにヒト定常領域に全体の非ヒト可変ドメインを移植すること、(b)決定的なフレームワーク残基(例えば、良好な抗原結合親和性又は抗体機能を保持するために重要であるもの)の保持を伴うかもしくは伴わない、ヒト(例えば、レシピエント抗原結合分子)フレームワーク及び定常領域に非ヒト(例えば、ドナー抗原結合分子)CDRのみを移植すること、又は(c)全体の非ヒト可変ドメインを移植するが、表面残基の置換によってヒト様部分でそれらを「覆う」ことを含む種々の方法によって達成され得る。このような方法は、Jonesら、 Morrisonら、 Proc. Natl. Acad. Sci., 81:6851-6855 (1984); Morrison 及び Oi, Adv. Immunol., 44:65-92 (1988); Verhoeyenら、 Science, 239:1534-1536 (1988); Padlan, Molec. Immun., 28:489-498 (1991); Padlan, Molec. Immun., 31(3):169-217 (1994)において開示されており、これらの全ては、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。一般的に、3つの相補性決定領域、すなわちCDR(CDR1、CDR2及びCDR3)が、抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインの各々に存在し、これらは、抗体の重鎖及び軽鎖の可変ドメインの各々において4つのフレームワークサブ領域(すわわち、FR1、FR2、FR3、及びFR4)によって隣接されている。FR1−CDR1−FR2−CDR2−FR3−CDR3−FR4。ヒト化抗体の議論は、とりわけ、米国特許第6,632,927号及び米国出願公開第2003/0175269号に見いだされ得、これらの両方は、それらの全体が参照により本明細書に組み込まれる。ヒト化は、また選択したフレームワーク上に与えられたCDRに対する特異性決定アミノ酸残基をのみを含む切断されたCDRを移植することによって達成することができる。「特異性を決定する残基」は、抗原との特異的相互作用に直接関与するか、及び/又は抗原特異的結合に必要な残基を意味する。一般的に、所定のCDRにおける残基の約5分の1から3分の1のみが抗原への結合に関与する。特定のCDRにおける特異性決定残基は、例えば、三次元モデリングからの原子間接触の計算及びPadlanら、 FASEB J. 9(1):133-139 (1995)(この内容はそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれる)に従って、所定の残基の位置における配列の変動性の決定によって同定され得る。
【0047】
いくつかの例では、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基は、対応する非ヒト残基によって置換されている。更に、ヒト化抗原結合分子は、レシピエント抗体又はドナー抗体にも見出されない残基を含み得る。これらの改変は、更に抗原結合分子の性能を洗練するために作られている。一般的に、ヒト化抗原結合分子は、可変ドメインの少なくとも一つ、及び典型的には2つの全てを実質的に含むことができ、そのうち可変領域の少なくとも一つ、又は実質的に全て、又は全ては非ヒト免疫グロブリンのそれらに対応し、かつFRの全て又は実質的に全てはヒト免疫グロブリン配列のそれらである。ヒト抗原結合分子はまた、必要に応じて、免疫グロブリン定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンのそれの少なくとも一部を含んでなる。例えば、Jonesら、 Nature 321:522-525 (1986); Reichmannら、 Nature 332:323-329 (1988); 及び Presta, Curr. Op. Struct. Biol. 2:593-596 (1992)を参照。
【0048】
同様に、本明細書で使用される場合、用語、「霊長類化」は、親の分子の抗原結合特性を保持するか又は実質的に保持するが、霊長類において免疫原性が低い非霊長類抗原結合分子、例えば、マウス抗体に由来する抗原結合分子をいうために使用される。
【0049】
本明細書で使用される場合、用語、「変異体」(又はアナログ)とは、例えば、組換えDNA技術を使用して作製された、挿入、欠失、及び置換によって、本発明の特に列挙されるポリヌクレオチド又はポリペプチドとは異なるポリヌクレオチド又はポリペプチドをいう。具体的には、これらの同一又は類似のポリペプチドをコードする組換え変異体は、遺伝子コードの 「冗長性」を利用することにより、合成又は選択することができる。種々の制限部位を生成するサイレント変化などの様々なコドン置換が、特定の原核生物又は真核生物システムのプラスミド又はウイルスベクターへのクローニング又は発現を最適化するために導入することができる。ポリヌクレオチド配列の変異は、リガンド結合親和性、鎖間親和性、又は分解/代謝回転速度などの特性を変更するために、ポリペプチドの任意の部分の特性を改変するためにポリペプチドに追加された他のペプチドのポリペプチド又はドメインに反映され得る。
【0050】
本明細書で使用される場合、用語、「変異体抗CEA抗原結合分子」とは、親抗体配列において、1つ又は複数のアミノ酸残基の付加、欠失及び/又は置換のために「親」抗CEA抗原結合分子のアミノ酸配列とはアミノ酸配列が異なる分子を意味する。特定の実施態様において、変異体は、1つ又は複数の超可変領域又は親の抗原結合分子の重鎖及び/又は軽鎖のCDRの1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。例えば、変異体は、親抗原結合分子の1つ又は複数の超可変領域又はCDR(すなわち、1、2、3、4、5、又は6の超可変領域又はCDR)において、少なくとも一つ、例えば約1から約10(すなわち、約1、2、3、4、5、6、7、8、9、10)、及び好ましくは約2から約5つの置換を含み得る。変異体抗CEA抗原結合分子はまた、重鎖又は軽鎖のいずれかの1つ又は複数のフレームワーク領域内に、1つ又は複数の付加、欠失及び/又は置換を含み得る。通常、変異体は、親の抗原結合分子重鎖又は軽鎖可変ドメイン配列と、少なくとも約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は100%のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を持ち、典型的には少なくとも約80%、90%、95%又は99%である。本明細書では配列に関する同一性は、最大パーセントの配列同一性を達成するために、必要に応じてギャップを導入し、配列をアラインした後、親抗体残基と同一である候補配列中のアミノ酸残基の割合として定義される。抗体配列のN末端、C末端、又は内部伸張、欠失、又は挿入は、配列同一性又は相同性に影響を及ぼすものと解釈してはならない。変異体抗原結合分子は膜結合ヒトCEAに結合する能力を保持する。一実施態様において、抗CEA ABMは、親抗原結合分子のそれと同じエピトープに結合する。一実施態様において、抗CEA ABMは、親抗原結合分子と、膜結合ヒトCEAに対する結合を競合する。一実施態様において、抗CEA ABMは、膜結合CEAヒトCEAに結合するが、可溶性ヒトCEAには結合しない。抗CEA ABMは、親抗原結合分子のそれらに対して優れた特性を有する。例えば、変異体は、より強い結合親和性、増加した安定性、及び/又はインビトロ、及びインビボで抗体依存性細胞傷害を誘導する強化された能力を有する場合がある。一実施態様において、抗CEA ABMは、安定性が増加し、膜結合CEAに対する結合親和性を保持する又は改善させており、インビトロ及びインビボにおいて抗体依存性細胞傷害を誘導する強化された能力を保持する又は有する。そのような特性を分析するために、一般に、変異体抗原結合分子と親の抗原結合分子を同じ形態で;例えば、変異体抗原結合分子のFab形態を親の抗原結合分子に対して、又は変異体抗原結合分子の完全長形態を親の抗原結合分子の完全長形態に対して、比較するべきである。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、親の抗原結合分子に対して比較したとき、少なくとも約2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、又は20倍生物学的活性が増強している。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、親の抗原結合分子に比較して、安定性が増加した、安定性を操作された変異体である。安定性は、当技術分野で公知の任意の方法によって、及び本明細書に記載された方法、具体的には実施例3−6に記載される方法によって、アッセイすることができる特定の実施態様において、変異体抗原結合分子は、親の抗原結合分子に対して比較して、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、40倍、50倍又は100倍、安定性が増加している。
【0051】
幾つかの実施態様において、変異体抗原結合分子は、親の抗原結合分子に対して比較して、安定性のパラメーターの変化として測定される安定性の増加を示す。幾つかの実施態様において、変異体抗原結合分子は、親の抗原結合に比較した場合、少なくとも約1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、11倍、12倍、13倍、14倍、15倍、15倍、16倍、17倍、18倍、19倍、20倍、40倍、50倍又は100倍、安定性のパラメーターの変化を有する。安定性のパラメーターとは、例えば、変異体抗原結合分子が、変異体抗原結合分子を不安定な状態にするように設計された条件下で、アンフォールドする又は変性する温度、変異体抗原結合分子がアンフォールドする又は変性する圧力、又は変異体抗原結合分子が変性する又アンフォールドするのに要求される時間である。、一実施態様において、安定性が増加は、熱変性アッセイによって、例えば、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される。一実施態様において、安定性の増加は、化学変性アッセイを用いて測定される。一実施態様において、安定性の増加は、高圧アッセイを用いて測定される。別の実施態様において、変異体抗原結合分子の安定性は、蛍光偏光アッセイを用いて決定される。一実施態様において、変異体抗原結合分子の安定性は、動的光散乱(DLS)アッセイを用いて決定される。(実施例、及びNobbmann, U. et al., Biotech. Genetic Eng. Rev. 24:117-128 (2007)を参照)。DLSは、抗体などの分子の完全性を監視し、ここで、一般的には、光散乱の増加は、タンパク質のアンフォールディング又は変性を示している。分子のDLSは、相対的安定性を比較するために、温度又は化学変性剤の関数として調べることができる。天然型コンフォーメーションのままであるそれらの分子(DLS特性の増加がほとんど無いか又は全く無い)は、試験条件下で安定であると考えられている。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、動的光散乱測定法を用いて分析すると、親のABMよりも、又は他の適切な参照分子よりも、少なくとも0.25,0.5,1.0,1.5,2.0,2.5,3.0,3.5,4.0,4.5,5.0,6.0,7.0,8.0,9.0,又は10.0セ氏温度高い温度で安定である。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、60,61,62,63,64,65,66,67,68,69,70,71,72,73,74,75,76,77,78,79,80セ氏温度以上で安定である。熱安定性は、例えば、DLS、DSC、又は蛍光偏光を用いて測定することができる。一実施態様において、変異体抗原結合分子の熱安定性は、DLSを用いて測定される。一実施態様において、DLSアッセイは、20mMのヒスチジンと140mMのNaCl、pH6.0の緩衝液中で、1mg/mlのABM又は変異体ABMを用いて実施される。DLSアッセイは、25℃で開始し、0.05℃/分の増分温度上昇を伴い、行われる。
【0052】
用語「親」抗原結合分子は、変異体の調製のための開始点又は基礎として使用されるABMを指す。特定の実施態様では、親の抗原結合分子は、ヒトフレームワーク領域及びび、存在する場合には、ヒト抗体定常領域を持つ。例えば、親抗体は、ヒト化又はヒト抗体であり得る。
【0053】
アミノ酸「置換」は、1つのアミノ酸を、類似の構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置換すること、すなわち、保存性アミノ酸置換の結果である。「保存性」アミノ酸置換は、関与する残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、及び/又は両親媒性の性質に基づいて行われ得る。例えば、非極性(疎水性)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファン、及びメチオニンが含まれ;極性中性アミノ酸には、グリシン、セリン、スレオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、及びグルタミンが含まれ;正電荷を有する(塩基性)アミノ酸には、アルギニン、リジン、及びヒスチジンが含まれ;ならびに負電荷を有するアミノ酸には、アスパラギン酸及びグルタミン酸が含まれる。「挿入」又は「欠失」は、一般的には、約1から約20アミノ酸、より明確には約1から約10アミノ酸、更により明確には約2から約5アミノ酸の範囲である。非保存的置換は、別のクラスのためにこれらのクラスのいずれかのメンバーを交換することを伴う。例えば、アミノ酸置換はまた、一つのアミノ酸を、異なる構造及び/又は化学的特性を有する別のアミノ酸で置き換える結果となる可能性があり、例えば、一つのグループ(例えば極性)由来のアミノ酸を異なるグループ(例えば、塩基性)由来の別のアミノ酸で置換する。許容されるバリエーションは、組換えDNA技術を使用して、及び活性について得られる組換え変異体をアッセイして、ポリペプチド分子中のアミノ酸の挿入、欠失、又は置換を体系的に作製することによって、実験的に決定され得る。
【0054】
本明細書で使用される場合、用語、「単鎖Fv」又は「scFv」とは、単一のポリペプチド鎖としてVHドメイン及びVLドメインを含む抗体断片を指す。典型的には、VH及びVLドメインはリンカー配列によって結合されている。Pluckthun, in: The PHARMACOLOGY OF MONOCLONAL ANTIBODIES, vol. 113, Rosenburg 及び Moore eds. Springer-Verlag, New York, pp. 269-315 (1994)を参照。
【0055】
本明細書で使用される場合、用語、「ミニボディ」とは、二量体化領域として、定常領域、典型的には免疫グロブリン、好ましくはIgG、より好ましくはIgG1のCH3領域を含む二価のホモ二量体scFv誘導体を意味する。一般的には、定常領域はヒンジ領域及び/又はリンカー領域を介してscFvに連結されている。ミニボディタンパク質の例はHu et al. (1996), Cancer Res. 56: 3055-61に見いだすことができる。
【0056】
本明細書で使用される場合、用語、「ダイアボディ」とは、二つの抗原結合部位を持つ小さな抗体断片を指し、その断片は同じポリペプチド鎖(VH−VL)の軽鎖可変ドメイン(VL)に連結された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間の対形成を可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、ドメインは別の鎖の相補ドメインと対を成すよう強制され、2つの抗原結合部位を作成する。ダイアボディは例えば、欧州特許第404097号;国際公開第93/11161号; Hollingerら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:6444-6448 (1993)により詳細が記載されている。トリアボディは3つのscFvの3価のトリマーの形成から生じ、3つの結合部位を与え、テトラボディは4つのscFvの4価のテトラマーであり、4つの結合部位をもたらす。
【0057】
当分野において使用され、及び/又は受容される1つの用語の2つ以上の定義が存在する場合には、本明細書で使用される用語の定義は、明白に反対のことが言及されない限り、全てのこのような意味を含むことが意図される。特定の例は、重鎖と軽鎖の両方のポリペプチドの可変領域中に見いだされる不連続抗原組み合わせ部位(抗原結合部位としても知られる)を説明するための用語「相補性決定領域」(「CDR」)の使用である。CDRはまた、「超可変領域」としても言及され、その用語は本明細書では抗原結合領域を形成する可変領域の部分を参照する用語「CDR」と同義的に使用される。この特定の領域は、Kabatら、 U.S. Dept. of Health 及び Human Services, "Sequences of Proteins of Immunological Interest" (1983) 及び Chothiaら、 J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987)によって記載されており、これらは参照により本明細書に援用され、ここでこの定義は、互いに対して比較した場合に、アミノ酸残基の重複又はサブセットを含む。それにも関わらず、抗体又はその変異体のCDRをいうためのいずれの定義の適用も、本明細書で定義され、及び使用される用語の範囲内にあることが意図される。上記に引用した参考文献の各々によって定義されたCDRを含む適切なアミノ酸残基は、比較として表1において以下に記載される。特定のCDRを含む正確な残基の番号は、CDRの配列及びサイズに依存して変化する。当業者は、抗体の可変領域のアミノ酸配列が与えられると、どの残基が特定のCDRを含むかを慣用的に決定することができる。
【0058】
Kabatらはまた、任意の抗体に適用可能である可変ドメイン配列についての番号付けを定義した。当業者は、配列それ自体を超えたいかなる実験データにも頼ることなく、任意の可変ドメインに「Kabat番号付け」のこのシステムを明白に割り当てることができる。本明細書で使用される場合、「Kabat番号付け」とは、Kabatら、 U.S. Dept. of Health 及び Human Services, "Sequence of Proteins of Immunological Interest" (1983)によって示される番号付けシステムをいう。他に特定されない限り、ABM中の特定のアミノ酸残基の位置の番号付けはKabat番号付けシステムに従う。配列表の配列(すなわち、配列番号1から配列番号216)は、Kabat番号付けシステムに従って番号付けされていない。しかし、当業者は、配列表の配列をKabatの番号付けに変換する方法に精通している。
【0059】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」ヌクレオチド配列を有する核酸又はヌクレオチドによって、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の各100ヌクレオチドあたり5個までの点変異を含んでもよいこと以外は、このポリヌクレオチドのヌクレオチド配列は参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中の5%までのヌクレオチドが欠失されるかもしくは別のヌクレオチドで置換されてもよく、または参照配列中の全ヌクレオチドの5%までの数のヌクレオチドが参照ヌクレオチドに挿入されてもよい。
【0060】
実際問題として、任意の特定の核酸分子又はポリペプチドが、本発明のヌクレオチド配列又はポリペプチド配列に対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、 Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列及び対象配列は両方ともDNA配列である。RNA配列は、UをTに変換することによって比較され得る。前記グローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。同一性パーセントを計算するためにDNA配列のFASTDBアラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=単一、k−タプル=4、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=30、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象ヌクレオチド配列の長さのどちらか短い方。
【0061】
内部の欠失のためではなく、5’欠失又は3’欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、同一性パーセントを計算する場合に、対象配列の5’及び3’短縮を計算に入れないからである。5’末端又は3’末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして一致/アラインしない、対象配列の5’及び3’である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。ヌクレオチドが一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この補正されたスコアは、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、FASTDBアラインメントによって示されるような、対象配列の5’塩基及び3’塩基の外側の塩基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のために計算される。
【0062】
例えば、90塩基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100塩基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列の5’末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、5’末端における最初の10塩基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない塩基は配列の10%を表し(一致しない5’末端及び3’末端の数/問い合わせ配列における塩基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90塩基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90塩基の対象配列が100塩基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象の5’末端又は3’末端上の塩基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、問い合わせ配列と一致/アラインしない対象配列の塩基の5’及び3’のみが、手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0063】
本発明の問い合わせアミノ酸配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一である」アミノ酸配列を有するポリペプチドによって、対象のポリペプチドのアミノ酸配列が、対象のポリペプチド配列が問い合わせアミノ酸配列の各100アミノ酸あたりに5個までのアミノ酸の変化を含んでもよいこと以外は、問い合わせ配列と同一であることが意図される。換言すれば、問い合わせヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドを得るために、対象配列中の5%までのアミノ酸残基が挿入、欠失、又は別のアミノ酸で置換されてもよい。参照配列のこれらの変化は、参照アミノ酸配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で、又は参照配列中の残基間に個々に、もしくは参照配列中の1つ以上の連続する基においてのいずれかで散在して、これらの末端間の任意の位置に存在してもよい。
【0064】
実際問題として、任意の特定のポリペプチドが、参照ポリペプチドに対して、少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、又は99%同一であるか否かは、公知のコンピュータプログラムを使用して慣用的に決定され得る。グローバル配列アラインメントとも呼ばれる、問い合わせ配列(本発明の配列)と対象配列との間の最良の全体の一致を決定するための好ましい方法は、Brutlagら、 Comp. App. Biosci. 6:237-245 (1990)のアルゴリズムに基づくFASTDBコンピュータプログラムを使用して決定され得る。配列アラインメントにおいては、問い合わせ配列及び対象配列は両方ともヌクレオチド配列であるか、又は両方ともアミノ酸配列であるかのいずれかである。このグローバル配列アラインメントの結果は同一性パーセントである。FASTDBアミノ酸アラインメントにおいて使用される好ましいパラメーターは以下である。マトリックス=PAM 0、k−タプル=2、ミスマッチペナルティー=1、結合ペナルティー=20、ランダム化グループ長=0、カットオフスコア=1、ウィンドウサイズ=配列長、ギャップペナルティー=5、ギャップサイズペナルティー0.05、ウィンドウサイズ=500又は対象アミノ酸配列の長さのどちらか短い方。
【0065】
内部の欠失のためではなく、N末端欠失又はC末端欠失のために対象配列が問い合わせ配列よりも短い場合、手動の補正が結果に対して行わなければならない。これは、FASTDBプログラムが、全体同一性パーセントを計算する場合に、対象配列のN末端及びC末端短縮を計算に入れないからである。N末端又はC末端で短縮されている対象配列については、問い合わせ配列と比較して、同一性パーセントは、問い合わせ配列の全体の塩基のパーセントとして、対応する対象の残基と一致/アラインしない、対象配列のN末端及びC末端である問い合わせ配列の塩基の数を計算することによって補正される。残基が一致/アラインされるか否かは、FASTDB配列アラインメントの結果によって決定される。次いで、このパーセンテージが、同一性パーセントから減算され、特定のパラメーターを使用して上記のFASTDBプログラムによって計算されて、最終的な同一性パーセントスコアに到達する。この最終的な同一性パーセントスコアが、本発明の目的のために使用されるものである。問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列のN末端及びC末端への残基のみが、同一性パーセントスコアを手動で調整する目的のためのものと見なされる。すなわち、対象配列の最も遠いN末端及びC末端の残基の外側の位置の問い合わせ残基のみである。
【0066】
例えば、90アミノ酸残基の対象配列が、同一性パーセントを決定するために100残基の問い合わせ配列とアラインされる。欠失は対象配列のN末端で起こり、それゆえに、FASTDBアラインメントは、N末端における最初の10残基の一致/アラインメントを示さない。この10個の対合しない残基は配列の10%を表し(一致しないN末端及びC末端の数/問い合わせ配列における残基の総数)、従って、10%が、FASTDBプログラムによって計算されたパーセント同一性スコアから減算される。残りの90残基が完全に一致するならば、最終的な同一性パーセントは90%である。別の例において、90残基の対象配列が100残基の問い合わせ配列と比較される。今回は欠失が内部欠失であり、その結果、問い合わせと一致/アラインしない、対象配列のN末端又はC末端上の残基は存在しない。この場合、FASTDBによって計算された同一性パーセントは手動で補正されない。再度、FASTDBによって示されるような、問い合わせ配列と一致/アラインしない、対象配列の残基のN末端及びC末端のみが手動で補正される。他の手動の補正は、本発明の目的のためには行われない。
【0067】
ポリヌクレオチド及び/又はポリペプチドの同一性パーセントは、プログラムに示されているデフォルトのパラメータで、全米バイオテクノロジー情報センター(NCBI)を通じて利用BLASTプログラムを用いて決定することができる。
【0068】
本明細書で使用される場合、本発明の核酸配列に「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする」核酸とは、50%ホルムアミド、5×SSC(750mM NaCl、75mM クエン酸ナトリウム)、50mM リン酸ナトリウム(pH 7.6)、5×Denhardt’s溶液、10% 硫酸デキストラン、及び20μg/ml 変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中、42℃での一晩インキュベーション、続いて0.1×SSC中、約65℃でフィルター洗浄が続く、指定された条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドをいう。
【0069】
本明細書で使用される場合、「GnTIII活性」を有するポリペプチドとは、N連結オリゴ糖のトリマンノシルコアのβ連結マンノシドへのβ−1−4結合におけるN−アセチルグルコサミン(GlcNAc)残基の付加を触媒することができるポリペプチドをいう。これは、特定の生物学的アッセイにおいて測定した場合に、用量依存性を伴って又は伴わずに、国際生化学分子生物学連合の命名委員会 (NC-IUBMB)に従うβ−1,4−マンノシル−糖タンパク質4−β−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼ(EC2.4.1.144)としても知られている、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIIIの活性に類似しているが、同一である必要はない酵素活性を示す融合ポリペプチドを含む。用量依存性が存在する場合において、これは、GnTIIIのそれと同一である必要はないが、むしろ、GnTIIIと比較して、所定の活性における用量依存性に実質的に類似する(すなわち、候補ポリペプチドは、GnTIIIと比較して、より高い活性又は約25分の1以下、及び好ましくは、約10分の1以下の活性、及び最も好ましくは、約3分の1以下の活性を示す)。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語、「ゴルジ局在化ドメイン」とは、ゴルジ複合体中の部位へポリペプチドを固定することに関与する、ゴルジ存在性ポリペプチドのアミノ酸配列をいう。一般的に、局在化ドメインは、酵素のアミノ末端「テール」を含む。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語、「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(ネイティブ配列のFc領域又はアミノ酸配列変異体のFc領域)に起因し得る生物学的活性をいう。抗体エフェクター機能の例には、Fcレセプター結合親和性、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)、サイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込み、細胞表面レセプターのダウンレギュレーションなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0072】
本明細書で使用される場合、用語、「操作する」、「操作された」、「操作すること」、とりわけ、接頭辞の「glyco−」が付いた用語、ならびに「グリコシル化操作」は、天然に存在するポリペプチド又は組換えポリペプチド又はその断片のグリコシル化パターンの任意の操作を含むと見なされる。グリコシル化操作には、細胞中で発現される糖タンパク質のグリコシル化の変化を達成するためのオリゴ糖合成経路の遺伝子操作を含む、細胞のグリコシル化機構の代謝的操作を含む。さらに、グリコシル化操作は、グリコシル化に対する変異及び細胞環境の影響を含む。一実施態様において、グリコシル化操作は、糖転移酵素活性の変化である。特定の実施態様では、操作が変更されたグルコサミニル転移酵素活性及び/又はフコース転移酵素活性をもたらす。
【0073】
本明細書で使用される場合、用語、「宿主細胞」は、本発明のポリペプチド及び抗原結合分子を生成するために操作され得る任意の種の細胞系を網羅する。一実施態様において、宿主細胞は、修飾されたグリコフォームを有する抗原結合分子の産生を可能にするように操作される。好ましい実施態様において、抗原結合分子、又は変異体抗原結合分子は、抗体、抗体断片、又は融合タンパク質である。所定の実施態様において、宿主細胞は、GnTIII活性を有する1つ以上のポリペプチドのレベルの増加を発現するようにさらに操作されている。宿主細胞には、培養細胞、例えば、哺乳動物培養細胞、ほんの少し例を挙げれば、例えば、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞、又はハイブリドーマ細胞など、酵母細胞、昆虫細胞、及び植物細胞が含まれるが、トランスジェニック動物、トランスジェニック植物、又は培養した植物もしくは動物の組織中に含まれる細胞もまた含まれる。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語、「Fc媒介性細胞傷害性」は、抗体依存性細胞毒性、及びヒトFc領域を含む可溶性Fc融合タンパク質により媒介される細胞障害を含む。それは 「ヒト免疫エフェクター細胞」による「標的化細胞」の溶解につながる免疫機構である。
【0075】
本明細書で使用される場合、用語、「ヒト免疫エフェクター細胞」は、それらが抗原結合分子又はFc融合タンパク質のFc領域にそれを通して結合する、それらの表面上のFcレセプターを表示し、及びエフェクター機能を実行する白血球の集団である。このような集団には、末梢血単球細胞(PBMC)及び/又はナチュラルキラー(NK)細胞が含まれ得るがこれらに限定されない。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語、「標的化細胞」は、Fc領域を含む抗原結合分子(例えば、Fc領域を含む抗体又はその断片)又はFc融合タンパク質によって特異的に結合される細胞である。抗原結合分子又はFc融合タンパク質は、Fc領域に対してN末端であるタンパク質部分を通して標的細胞に結合する。
【0077】
本明細書で使用される場合、用語、「Fc媒介性細胞傷害性の増加」は、標的細胞を取り囲む培地中で、上に定義されたFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の抗原結合分子もしくFc融合タンパク質の濃度で溶解される「標的化細胞」の数の増加、及び/又はFc媒介性細胞傷害性のメカニズムによって、所定の時間内に、所定の数の「標的化細胞」の溶解を達成するために必要とされる、標的細胞を取り囲む培地中の抗原結合分子もしくはFc融合タンパク質の濃度の減少のいずれかとして定義される。Fc媒介性細胞傷害性の増加は、同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法(当業者に公知である)を使用して、同じ抗原結合分子、又は同じ型の宿主細胞によって生産されるFc融合タンパク質により媒介される細胞障害性に比例するが、これは、本明細書に記載される方法によって、改変されたグリコシル化型を有するように(例えば、グリコシルトランスフェラーゼGnTIII又は他のグリコシルトランスフェラーゼを発現するように)操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0078】
「抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を有する抗体」によって、その用語が本明細書で定義される通り、当業者に公知である任意の適切な方法によって決定される、ADCCの増加を有する抗原結合分子が意味される。1つの受容されるインビトロADCCアッセイは以下の通りである。
1)このアッセイは、抗体の抗原結合領域によって認識される標的抗原を発現することが知られている標的細胞を使用する;
2)このアッセイは、エフェクター細胞として、ランダムに選択された健常ドナーの血液から単離されたヒト末梢血単球細胞(PBMC)を使用する;
3)このアッセイは以下のプロトコールに従って使用される。
i)PBMCを、標準的な密度遠心分離手順を使用して単離し、RPMI細胞培養培地中、5×106細胞/mlで懸濁する;
ii)標的細胞を、標準的な培養方法によって増殖させ、90%よりも高い生存度を有する指数増殖期から収集し、RPMI細胞培養培地中で洗浄し、100マイクロキュリーの51Crで標識し、細胞培養培地で2回洗浄し、そして105細胞/mlの密度で細胞培養培地中に再懸濁する;
iii)100マイクロリットルの上記の最終的な標的細胞懸濁物を、96ウェルマイクロタイタープレートの各ウェルに移す;
iv)抗体を、細胞培養培地中で4000ng/mlから0.04ng/mlまで段階希釈し、得られる抗体溶液の50マイクロリットルを96ウェルマイクロタイタープレート中の標的細胞に加えて、上記の全体の濃度範囲を網羅する種々な抗体濃度を3通りで試験する;
v)最大放出(MR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルは、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルの2%(V/V)非イオン性界面活性剤(Nonidet,Sigma,St.Louis)の水溶液を受容する;
vi)自発性放出(SR)コントロールのために、標識された標的細胞を含む、プレート中の3つのさらなるウェルに、抗体溶液(上記の要点iv)の代わりに、50マイクロリットルのRPMI細胞培養培地を受容する;
vii)次いで、96ウェルマイクロタイタープレートを、50×gで1分間遠心分離し、そして1時間4℃でインキュベートする;
viii)50マイクロリットルのPBMC懸濁液(上記の要点i)を各ウェルに加えて25:1のエフェクター:標的細胞比を生じ、そしてプレートをインキュベーター中、5% CO2大気、37℃下に4時間配置する;
ix)各ウェルからの無細胞上清を収集し、実験的に放出された放射能をガンマカウンターを使用して定量する;
x)特異的溶解のパーセンテージを、計算式(ER−MR)/(MR−SR)×100に従って各抗体について計算し、ここで、ERは抗体濃度について定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、MRはMRコントロール(上記の要点vを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)であり、そしてSRはSRコントロール(上記の要点viを参照のこと)についての定量された平均放射能(上記の要点ixを参照のこと)である;
4)「ADCCの増加」は、上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの増加、及び/又は上記の試験された抗体濃度範囲内で観察される特異的溶解の最大パーセンテージの半分を達成するために必要とされる抗体の濃度の減少のいずれかとして定義される。ADCCの増加は、上記のアッセイを用いて測定される、当業者に公知である同じ標準的な産生、精製、製剤、及び保存の方法を使用して、同じ型の宿主細胞によって産生される、同じ型の抗体によって媒介されるADCCに比例するが、これは、GnTIIIを過剰発現するように操作された宿主細胞によって産生されなかった。
【0079】
抗CEA抗原結合分子、ペプチド及びポリヌクレオチド
CEAは、長い間診断目的のために癌マーカーとして使用されている。それは同一の細胞型の非腫瘍組織に比べて多くの腫瘍組織内において異常に発現される(例えば、細胞内で異なるパターンで過剰発現されるか及び/又は分布している)。しかしながら、CEAは、一般的に腫瘍細胞表面から切断され、使用可能な抗CEA抗体のほとんどはまた、可溶性CEAに結合されているので、CEAに対する非抱合型抗体は一般に、治療目的のために使用されてはいない。たとえば、現在パイロット試験にある抗CEA抗体は放射抱合体として投与される (Wongら、2004; Lierschら、 2007)。いくつかのメカニズムは、抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び補体依存性細胞傷害(CDC)を含む抗CEA抗体の治療効果に関与している。CEAの発現の増大は癌細胞の転移につながる細胞間接着の増加を促進する(Marshall J., Semin Oncol. 30(3) 補足 8:30-36)。したがって、抗CEA抗原結合分子はまた、CEA介在細胞接着及び癌細胞の転移の阻害に重要な役割を果たす可能性がある。
【0080】
一態様において、本発明は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6)のマウスPR1A3抗体のCDRを含む変異体抗原結合分子(例えば、抗体又はその断片)に向けられており、そのCDRの少なくとも一つにはPR1A3の対応するCDRに比べて少なくとも一つのアミノ酸残基の置換があり、かつ変異体抗原結合分子は親PR1A3抗原結合分子に比べて、CEA,好ましくは膜結合CEAに対して向上した親和性を有する。国際特許出願WO2011023787は、親PR1A3抗原結合分子に比較して、CEAに対する親和性が改善した、抗CEA抗原結合分子を記述する。
【0081】
別の態様において、本発明は、1つ又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6)のマウスPR1A3抗体のCDRを含む変異体抗原結合分子に向けられており、そのCDRの少なくとも一つにはPR1A3の対応するCDRに比べて少なくとも一つのアミノ酸残基の置換があり、かつ変異体抗原結合分子は親PR1A3抗原結合分子に比べて、増加した安定性を有する。一実施態様において、親PR1A3抗原結合分子は、ヒト化PR1A3抗原結合分子である。一実施態様において、親PR1A3抗原結合分子は、CH7Aの重鎖可変領域(配列番号101)を含む。一実施態様において、親PR1A3抗原結合分子は、重鎖可変領域CH7A(配列番号101)及び軽鎖可変領域2F1(配列番号209)を含む。そのような一又は複数のCDRは、切断されたCDRであって良く、所与のCDRにおいて、本明細書でその用語が定義される、特異性決定残基(SDR)を、最小で含むであろう。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、特異的結合を保持するであろうCDRの残基を含む、配列番号1〜3、5〜10、12〜56及び217〜224(
図32及び
図36)から選択されるCDRの少なくとも一(例えば、1、2、3、4、5、又は6)を含む。別の実施態様において、変異体抗原結合分子は、前記CDRの少なくとも特異性決定残基を含み、かつ異種性ポリペプチドに由来する配列を含む、配列番号1〜3、5〜10、12〜56、及び217〜224から選択される少なくとも一(例えば、1、2、3、4、5、又は6)のCDR、又は変異体又はその切断型を含む。変異体抗原結合分子がPR1A3の重鎖CDR1変異体を含む特定の実施態様において、HCDR1はKabatの位置31にバリンと置換されたグルタミン酸を有する。変異体抗原結合分子がPR1A3の重鎖CDR3変異体を含む特定の実施態様において、HCDR3は、Kabatの位置98のチロシンと置換されたアラニン、又はKabatの位置99のアスパラギン酸と置換されたチロシンを有する。変異体抗原結合分子がPR1A3の重鎖CDR3変異体を含む特定の実施態様において、HCDR3は、Kabatの位置98のチロシンと置換されたアラニン、及びKabatの位置99のアスパラギン酸と置換されたチロシンを有する。
【0082】
一実施態様において、変異体抗原結合分子は、配列番号217〜224(
図36)から選択される1つの重鎖CDR3、及び配列番号1〜3、5〜10、及び12〜24から選択される2つの重鎖CDR(例えば、HCDR1及びHCDR2)、及び/又は配列番号36〜56から選択される3つの軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又は各々のCDRの少なくとも特異性決定残基を含む、変異体又はその切断型を含む。より具体的な実施態様において、変異体抗原結合分子は、配列番号217〜224から選択される1つの重鎖CDR3、及び配列番号1〜3、5〜10、及び12〜24から選択される2つの重鎖CDR(例えば、HCDR1及びHCDR2)、及び配列番号36〜56から選択される3つの軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含む。別の実施態様では、変異体抗原結合分子は、抗体軽鎖及び/又は重鎖、好ましくは、重鎖及び軽鎖可変領域の両方の可変領域を含む。より特定の実施態様においては、重鎖及び/又は軽鎖可変領域は、配列番号99〜108、配列番号188〜216及び配列番号225〜248(
図33及び
図37A〜C)から選択される重鎖及び/又は軽鎖可変領域又はそれらの組み合わせから選択され、そこでは重鎖及び軽鎖可変領域は配列番号99及び配列番号103、又は配列番号100及び配列番号104の組合わせではない。幾つかの実施態様において、重鎖はCH1A1A(配列番号261)又はCH1A1B(配列番号262)のフレームワーク残基を含む。.一実施態様において、変異体抗原結合分子は、配列番号225、配列番号226、配列番号231,配列番号234、配列番号235、配列番号239、配列番号241、配列番号242、配列番号243、又は配列番号247から選択される重鎖可変領域を含む。
【0083】
一実施態様では、変異体抗原結合分子は、キメラ抗体、より具体的にはヒト化抗体である。別の実施態様では、変異体抗原結合分子は、Fc領域を含む。別の実施態様では、変異体抗原結合分子は親和性成熟型である。別の実施態様では、変異体抗原結合分子は安定性が増加するように操作されている(安定性成熟型)。別の実施態様では、変異体抗原結合分子はPR1A3に比べ増加したADCC活性を有する。一実施態様では、変異体抗原結合分子の増加したADCCは、例えば親和性成熟又は親和性を向上させる他の方法により、膜結合CEAに対する変異体抗原結合分子の親和性の増加による(Tangら、J. Immunol. 2007, 179:2815-2823を参照、その全体の内容は参照により本明細書に援用される)。別の実施態様では、変異体抗原結合分子は糖鎖を操作されたFc領域を含む。別の態様において、本発明はまた、同じ細胞型の正常組織と比べて、CEAが発現され、特にCEAが異常に発現される(例えば、細胞内で過剰発現されるかもしくは別のパターンで発現される)疾患、特に細胞増殖障害の治療における、こうした変異体変異体抗原結合分子の製造方法及びその使用方法に向けられる。そのような障害は、限定されないが、結腸直腸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、膵臓癌及び乳癌を含む。CEAの発現レベルは当該技術分野で公知の方法及び本明細書に記載された方法で決定され得る(例えば、免疫組織化学アッセイ、免疫蛍光アッセイ、免疫酵素法、ELISA、フローサイトメトリー、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット、リガンド結合、キナーゼ活性、など)。
【0084】
別の態様において、本発明はまた、一つ以上(例えば、1、2、3、4、5、又は6)のマウスPR1A3抗体の相補性決定領域を含むポリペプチドをコードする配列又は前記相補性決定領域に対する少なくとも特異性決定残基を含む変異体又はその切断型を含む単離されたポリヌクレオチドに向けられている。典型的にはこのような単離されたポリヌクレオチドは、抗原結合分子を形成する1つ又は複数の融合ポリペプチドをコードする。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、特異的結合を保持するであろうCDRの残基を含む、配列番号1〜3、5〜10、12〜56及び217〜224から選択されるCDRの少一又は複数(例えば、1、2、3、4、5、又は6)をコードする配列を含む。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、前記3つの相補性決定領域の各々に対する少なくとも特異性決定残基(SDR)を含む、配列番号1〜3、5〜10、12〜56及び217〜224から選択される少なくとも3つの重鎖CDR(例えば、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)及び/又は3つの軽鎖CDR(例えばLCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又は変異体又はその切断型をコードする配列を含む。より具体的な実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号217〜224から選択される1つの重鎖CDR3、及び配列番号1〜3、5〜10、及び12〜24から選択される2つの重鎖CDR(例えば、HCDR1及びHCDR2)、及び配列番号36〜56から選択される3つの軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含むポリペプチドをコードする。別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、抗体軽鎖及び/又は重鎖の可変領域を含むポリペプチドをコードする。重鎖可変領域のポリペプチド及び軽鎖可変領域のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、1つ又は複数の発現ベクターで発現させることができる。より特定の実施態様において、配列番号99〜108、配列番号188〜216、及び配列番号225〜248から選択される、重鎖及び/又は軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号159〜187及び配列番号249〜256のポリヌクレオチドの群又はそれらの組み合わせからから選択され、そこでは重鎖及び軽鎖可変領域は配列番号11及び配列番号115、又は配列番号112及び配列番号116の組合わせによりコード化されない。一実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされた重鎖可変領域のポリペプチド及び軽鎖可変領域のポリペプチドは結合し、キメラ抗体、より具体的にはヒト化抗体を形成する。ポリヌクレオチドがPR1A3の重鎖CDR1又はその変異体をコードする配列を含む特定の実施態様において、前記ポリヌクレオチドは、Kabatの位置31においてバリンに対して置換されたグルタミン酸をコード化している。ポリヌクレオチドが、PR1A3の重鎖CDR3又はその変異体をコードする配列を含む特定の実施態様において、該ポリヌクレオチドは、Kabatの位置98のチロシンと置換されたアラニン、又はKabatの位置99のアスパラギン酸と置換されたチロシンをコードする。ポリヌクレオチドが、PR1A3の重鎖CDR3又はその変異体をコードする配列を含む特定の実施態様において、該ポリヌクレオチドは、Kabatの位置98のチロシンと置換されたアラニン、及びKabatの位置99のアスパラギン酸と置換されたチロシンをコードする。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、CH1A1A(配列番号261)又はCH1A1B(配列番号262)のフレームワークにおいて、Kabatの位置98のチロシンと置換されたアラニン、又はKabatの位置99のアスパラギン酸と置換されたチロシンをコードする。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号225、配列番号226、配列番号231,配列番号234、配列番号235、配列番号239、配列番号241、配列番号242、配列番号243、又は配列番号247から選択される重鎖をコードする配列を含む。別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、Fc領域をコードする配列を含む。本発明は更に、そのようなポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに向けられている。
【0085】
一態様において、本発明は、マウスPR1A3抗体と同じ結合特異性(例えば膜結合CEAの同じエピトープに対する結合)を有し、及び匹敵又は改善された生物学的活性(例えば、膜結合CEAに対する改善された親和性、増加した安定性、及び/又は強化されたADCC)を有する、抗原結合分子又は変異体抗原結合分子(例えば抗体又はその断片)及びポリペプチドに関する。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、親抗原結合分子のそれと同じエピトープに結合する。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、親抗原結合分子と、膜結合ヒトCEAに対する結合を競合する。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、膜結合CEAヒトCEAに結合するが、可溶性ヒトCEAには結合しない。一態様において、本発明は、マウスPR1A3抗体、又はそのヒト化変異体に比べて安定性が増加した、抗原結合分子、及び変異体抗原結合分子、及びポリペプチドに関する。一態様において、本発明は、膜結合CEAに結合し、CH7A(配列番号101)の重鎖可変領域を含むヒト化PR1A3抗体と比較して、増加した安定性を有する、抗原結合分子及び変異体抗原結合分子(例えば抗体又はその断片)及びポリペプチドに関する。一態様において、本発明は、膜結合CEAに結合し、重鎖可変領域CH7A(配列番号101)と軽鎖可変領域2F1(配列番号209)を含むヒト化PR1A3抗体と比較して、増加した安定性を有する、抗原結合分子及び変異体抗原結合分子(例えば抗体又はその断片)及びポリペプチドに関する。
【0086】
一実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドは、配列番号1〜3、5〜10、12〜56及び217〜224(
図32及び
図36)から選択されるCDRの少なくとも一(例えば、1、2、3、4、5、又は6)を含む。一実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドは、(a)配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、配列番号10、及び配列番号12からなる群から選択される重鎖CDR1配列、(b)配列番号13、配列番号14、配列番号15、配列番号16、配列番号17、配列番号18、配列番号19、配列番号20、配列番号21、配列番号22、配列番号23、及び配列番号24からなる群から選択される重鎖CDR2配列、及び(c)配列番号217、配列番号218、配列番号219、配列番号220、配列番号221、配列番号222、配列番号223、及び配列番号224からなる群から選択される重鎖CDR3配列を含む。別の実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドは、(a)配列番号36、配列番号37、配列番号38、配列番号39、配列番号40、配列番号41、配列番号42、配列番号43、配列番号44、及び配列番号45からなる群から選択される軽鎖CDR1配列、(b)配列番号46、配列番号47、配列番号48、配列番号49、配列番号50、配列番号51、配列番号52、配列番号53、配列番号54、及び配列番号55からなる群から選択される軽鎖CDR配列、及び配列番号56の軽鎖CDR3を含む。幾つかの実施態様において、CDRを含む変異体抗原結合分子又はポリペプチドはまた、CH1A1A(配列番号261)又はCH1A1B(配列番号262)のフレームワーク残基を含む。
【0087】
一態様において、本発明は、重鎖可変領域及び/又は軽鎖可変領域を含む膜結合CEAに結合する、変異体抗原結合分子又はポリペプチドを対象にする。一実施態様において、重鎖及び/又は軽鎖可変領域は、配列番号99〜108、配列番号188〜216、及び配列番号225〜248(
図33及び
図37A〜C)から選択される重鎖及び/又は軽鎖可変領域から選択される。一実施態様において、重鎖可変領域は、配列番号225〜248の何れか一の配列を有するポリペプチドを含む。別の具体的な実施態様において、重鎖可変領域は、配列番号225〜248の何れか一の配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%同一である配列を有するポリペプチドを含む。
【0088】
一実施態様において、重鎖可変領域は、配列番号233、配列番号234、配列番号235、配列番号239、配列番号241、配列番号242、配列番号243、及び配列番号247の配列を有するポリペプチドを含む。別の実施態様において、重鎖可変領域は、配列番号233、配列番号234、配列番号235、配列番号239、配列番号241、配列番号242、配列番号243、及び配列番号247の配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチドを含む。一実施態様において、軽鎖可変領域は、配列番号209の配列を有するポリペプチドを含む。別の実施態様において、重鎖可変領域は、配列番号209の配列に対して、少なくとも約80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%の同一性を有するポリペプチドを含む。
【0089】
一実施態様において、膜結合CEAに結合する、変異体抗原結合分子、変異体抗原結合分子又はポリペプチドは、重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含む。具体的な実施態様において、重鎖可変領域は、以下の配列番号4の配列を有するポリペプチドを含み、
QVQLVQSGSELKKPGASVKVSCKASGYTFTEX
1X
2MX
3WVRQAPGQGLEWMGX
4INTKX
5GEAX
6YX
7EEFKGRFVFSLDTSVSTAYLQISSLKAEDTAVYYCARWDX
8X
9X
10YX
11X
12X
13X
14DYWGQGTTVTVSS
ここで、X
1はY又はF;X
2はS又はG;X
3はN又はS;X
4はW又はY;X
5はN,T又はS;X
6はT又はN;X
7はV又はI;X
8はF又はA;X
9はY,A,V,F又はS;X
10はD,H,W,E,又はY;X
11はV,L又はF;X
12はE,K又はQ;X
13はA又はT;及びX
14はM又はLである。
【0090】
具体的な実施態様において、軽鎖可変領域は、以下の配列番号11の配列を有するポリペプチドを含み、
DIQMTQSPSSLSASVGDRVTITCKASX15X16X17X18X19X20VAWYQQKPGKAPKX21LIYX22ASX23X24X25X26GVPSRFSGSGSGTDFTLTISSLQPEDFATYYCHQYYTYPLFTFGQGTKLEIK
ここで、X15はQ,A,K,又はH;X16はN,A,Y,I,K,T,又はF;X17はV,A,G,又はM;X18はG,S,T,又はL;X19はT,N,P,又はA;X20はN又はY;X21はP又はL;X22はS,L,又はW;X23はY,N,又はH;X24はR,L,P,又はH;X25はY,S,Q,K,E,F,又はP;及びX26はS,G,I,又はRである。
【0091】
別の態様において、本発明は、膜結合CEAに結合する、抗原結合分子、変異体抗原結合分子、又はポリペプチドをコードする単離されたポリヌクレオチドを更に対象とする。一実施態様において、ポリヌクレオチドは、前記3つの相補性決定領域の各々に対する少なくとも特異性決定残基(SDR)を含む、配列番号1〜3、5〜10、12〜56及び217〜224から選択される少なくとも3つの重鎖CDR(例えば、HCDR1、HCDR2、及びHCDR3)及び/又は3つの軽鎖CDR(例えばLCDR1、LCDR2、及びLCDR3)、又は変異体又はその切断型をコードする配列を含む。より具体的な実施態様において、ポリヌクレオチドは、配列番号217〜224から選択される1つの重鎖CDR3、及び配列番号1〜3、5〜10、及び12〜24から選択される2つの重鎖CDR(例えば、HCDR1及びHCDR2)、及び配列番号36〜56から選択される3つの軽鎖CDR(例えば、LCDR1、LCDR2、及びLCDR3)を含むポリペプチドをコードする。別の実施態様において、ポリヌクレオチドは、抗体の軽鎖及び/又は重鎖の可変領域を含むポリペプチドをコードする。重鎖及び軽鎖可変領域のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、一以上の発現ベクターで発現することができる。より特定の実施態様において、配列番号99〜108、配列番号188〜216、及び配列番号225〜248から選択される、重鎖及び/又は軽鎖可変領域をコードするポリヌクレオチドは、配列番号159〜187及び配列番号249〜259から選択されるポリヌクレオチドの群又はそれらの組み合わせからから選択され、そこでは重鎖及び軽鎖可変領域は配列番号11及び配列番号115、又は配列番号112及び配列番号116の組合わせによりコード化されない。一実施態様において、ポリヌクレオチドによってコードされた重鎖可変領域のポリペプチド及び軽鎖可変領域のポリペプチドは結合し、キメラ抗体、より具体的にはヒト化抗体を形成する。
【0092】
一実施態様において、膜結合CEAに結合する、抗原結合分子、変異体抗原結合分子、又はポリペプチドは、Fc領域を含む。より具体的な実施態様において、抗原結合分子、変異体抗原結合分子、又はポリペプチドは、糖鎖が操作され、Fc領域におけるグリコシル化のパターンが変化している。特定の実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドの膜結合CEAに対する親和性は、親PR1A3抗体に比べて増加している。別実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドの安定性は、親PR1A3抗体に比べて増加している。別の実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドはADCC活性が増加している。一実施態様において、変異体抗原結合分子又はポリペプチドのADCCの増加は、膜結合CEAに対するポリペプチドの親和性の増加に起因し、例えば、親和性成熟による又は親和性を向上する他の方法による。
【0093】
別の態様において、本発明はまた、同じ細胞型の正常組織と比べて、CEAが発現され、特にCEAが異常に発現される(例えば、細胞内で過剰発現されるかもしくは別のパターンで発現される)疾患、特に細胞増殖障害の治療における、抗原結合分子、変異体抗原結合分子又はポリペプチドの使用を対象とする。このような疾患としては、限定されないが、結腸直腸癌、NSCLC(非小細胞肺癌)、胃癌、膵臓癌及び乳癌を含む。CEAの発現レベルは、当該技術分野で公知であって本明細書に記載された方法(例えば、免疫アッセイ、免疫アッセイ、免疫酵素法、ELISA、フローサイトメトリー、ラジオイムノアッセイ、ウェスタンブロット、リガンド結合、キナーゼ活性などを介して)により決定することができる。
【0094】
特定の実施態様において、本発明は、配列番号225−248の何れか一の配列を含む重鎖可変領域を含む膜結合CEAに結合するヒト化抗原結合分子又はその一部分又は断片に向けられている。別の実施態様において、本発明は、配列番号105、108、又は207−216の何れか一の配列を含む軽鎖可変領域を膜結合CEAに結合するヒト化抗原結合分子又はその一部分又は断片に向けられている。特定の実施態様では、膜結合CEAに結合するヒト化抗原結合分子又はその一部分又はその断片は配列番号225−248の何れか一の配列を含む重鎖可変領域、及び配列番号105、108、又は207−216の何れか一の配列を含む軽鎖可変領域を含む。一実施態様では、ヒト化抗原結合分子は更に、ヒト重鎖定常領域及び/又はヒト軽鎖定常領域を含む。このような定常領域は、本明細書に記載されており、当該分野で知られている。より特定の実施態様においては、ヒト化抗原結合分子は、Fc領域、より具体的には、糖鎖を操作されたFc領域を含む。
【0095】
非ヒト抗体をヒト化するための方法は当該分野で知られている。例えば、本発明によるヒト化ABMはWinterに対する米国特許第5225539号、Queenらに対する米国特許第6180370号、又はAdairらに対する米国特許第6632927号に記載の方法に従って調製することができ、それらの各々の全内容は参照によって本明細書に援用される。好ましくは、ヒト化抗体は非ヒトである供給源からそれに導入された一又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、典型的には 「移入」可変ドメインから取り込まれる「移入」残基と呼ばれる。ヒト化は、本質的にWinter及び共同研究者(Jonesら、Nature, 321:522-525 (1986); Riechmannら、Nature, 332:323-327 (1988); Verhoeyen ら、Science, 239:1534-1536 (1988))による方法に従い、超可変領域配列をヒト抗体の対応する配列と置換することによって、実行することができる。従って、このような「ヒト化」抗体は、キメラ抗体(米国特許第4816567号)であり、インタクトなヒト可変ドメインより実質的に小さい配列が非ヒト種由来の対応する配列で置換される。典型的には、ヒト化抗体は、いくつかの超可変領域残基及び恐らくは幾つかのFR残基が、非ヒト(例えば、げっ歯類)抗体の類似部位に由来する残基によって置換されているヒト抗体である。対象ヒト化抗CEA抗体は必要に応じて、ヒト免疫グロブリンの定常領域を含む。
【0096】
ヒト化抗体を作製するにおいて、軽鎖及び重鎖ヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減するために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」法によれば、ドナー(例えば、げっ歯類)抗体の可変ドメインの配列は、既知のヒト可変ドメイン配列のライブラリ全体に対してスクリーニングされる。ドナー(例えば、げっ歯類)のそれに最も近いヒト配列は、その後ヒト化抗体のヒトフレームワーク領域(FR)として受け入れられる(Sims ら、J. Immunol., 151:2296 (1993); Chothiaら、J. Mol. Biol., 196:901 (1987))。ヒトフレームワーク配列を選択する別の方法は、フレームワークサブ領域(例えば、Kabatの番号付けにより決定される)に対応する既知のヒト可変領域配列のライブラリーに対して、完全なドナー(例えば、げっ歯類)フレームワーク(つまり、FR1、FR2、FR3、及びFR4)の個々のサブ領域の配列、又は個々のサブ領域(例えばFR1及びFR2)のいくつかの組み合わせを比較し、げっ歯類のそれに最も近い各サブ領域又は組み合わせに対するヒトの配列を選択することである(Leung 米国特許出願公開第2003/0040606A1号、2003年2月27日公開)。もう一つの方法は、軽鎖又は重鎖の特定のサブグループのすべてのヒト抗体のコンセンサス配列に由来する特定のフレームワーク領域を使用する(Carterら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:4285 (1992); Prestaら、 J. Immunol., 151:2623 (1993))。一実施態様では、ヒトフレームワーク領域は、ヒト生殖細胞系列のコレクションから選択される。ヒト生殖細胞系列のそのようなコレクションは、IMGT又はVbase等のデータベースで見つけることができる。フレームワーク領域は、個別に選択でき(例えば、ヒト化抗CEA ABMの重鎖及び/又は軽鎖可変領域のアクセプター用に選択されたFR1-3は異なる生殖細胞系列遺伝子によってコード化することができる)、又は同一の生殖細胞系列遺伝子の一部として選択できる。より具体的な実施態様では、重鎖FR1−3はIGHV7_4_1*02ヒト免疫グロブリン生殖細胞系列遺伝子配列(受入番号X62110、配列番号114)によってコード化されている。別の特定の実施態様において、軽鎖FR1−3はIMGT_hVK_1_39ヒト免疫グロブリン生殖細胞遺伝子配列(受入番号X59315、配列番号118)によってコード化されている。別の特定の実施態様において、重鎖FR4はJH6生殖細胞系列遺伝子配列によってコード化されている(GenBank受入番号M63030を参照)。別の特定の実施態様では、軽鎖FR4はJK2生殖細胞系列遺伝子配列によってコード化されている(GenBank受入番号X61584を参照)。
【0097】
抗体及びその断片などの抗原結合分子は、抗原及び他の好ましい生物学的性質に対する高親和性を保持してヒト化されることが一般に望ましい。したがって、一実施態様では、ヒト化抗体は、親及びヒト化配列の三次元モデルを使用して、親配列及び様々な概念的ヒト化産物を分析することによって調製される。三次元免疫グロブリンモデルは一般的に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の推測三次元立体配座構造を例示かつ表示するコンピュータプログラムが利用可能である。これらのディスプレイの分析は、例えば、その抗原に結合する候補免疫グロブリンの能力に影響を及ぼす残基の解析など、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性のある役割を解明するのに役立つ。このようにして、標的抗原に対する増加した親和性などの所望の抗体特性が達成されるように、レシピエント及び移入配列からFR残基が選択され、組み合わせることができる。一般的には、超可変領域残基は、直接的に、最も実質的に抗原結合に影響を与えることに関与している。
【0098】
一態様において、本発明は、ヒト化、親和性成熟し、及び/又はバリアント型の、望ましい特性及び特徴を持つ抗CEA抗原結合分子に向けられており、限定されないが、CEAに対する強い結合親和性−特に膜結合CEA−、実質的に可溶性CEAに対して交差反応性を有しない;インビトロ及びエクスビボでのCEA発現細胞の溶解を誘導する能力、好ましくは用量依存的に;インビトロでのCEA媒介細胞接着を阻害する能力;腫瘍組織増殖の阻害及び/又は腫瘍組織退縮を誘導する能力(例えば、腫瘍モデル(例えば、異種移植片マウス)で実証される)を含む。
【0099】
本明細書に記載するように、幾つかの実施態様において、本発明の変異体抗原結合分子は、例えば、PR1A3抗体の1つ又は複数のCDRを含む親抗体の親和性成熟に起因して、結合親和性が増加している。本発明の抗原結合分子及び変異体抗原結合分子の親和性は、当技術分野において公知であり、本明細書に記載の方法によって決定することができる。特定の実施態様では、本発明のヒト化又は変異体抗原結合分子は、ヒトCEA、好ましくは膜結合CEAに、一価親和性定数(K
D)値が約1μMから約0.001nMを超えない、より具体的には約800nMから約1nMを超えない、更により具体的には約550nMから10nMを超えない値で、結合する。特定の実施態様において、変異体抗原結合分子は、膜結合CEAに、一価親和性定数(K
D)値が約100nMから約10nMを越えない値で結合する、親和性成熟型抗体又はその断片である。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、膜結合CEAに、一価親和性定数(K
D)値が約100nMから約0.01nMを越えない値で結合する、親和性成熟型抗体又はその断片である。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、膜結合CEAに、一価親和性定数(K
D)値が約10nMから約0.1nMを越えない値で結合する、親和性成熟型抗体又はその断片である。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、膜結合CEAに、一価親和性定数(K
D)値が100nM,10nM,1nM,0.1nM又はそれ以下の値で結合する、親和性成熟型抗体又はその断片である。幾つかの実施態様において、変異体抗原結合分子は、その親和性成熟型の親の増加した結合親和性を保持する、安定性が成熟した(安定性が増加するように操作された)抗体又はその断片である。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、脱落したCEAに結合するよりも高い親和性で膜結合CEAに結合する。一実施態様において、変異体抗原結合分子は、離脱CEAに結合するよりも、1.5倍、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍又はそれ以上高い親和性で膜結合CEAに結合する。
【0100】
一つの実施態様において、本発明の変異体抗原結合分子は、典型的には、マウス抗体PR1A3によって認識されるのと同じエピトープに結合する、又は膜結合CEAへの結合においてPR1A抗体と競合することが可能である。目的の抗体が結合したヒトCEA上のエピトープに結合する抗体(例えば、ヒトCEAへのPR1A3抗体の結合を阻止するもの)をスクリーニングするために、ANTIBODIES, A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, Harlow 及びLane編集. (1988)に記載されたように、所定の交差ブロッキングアッセイが実施可能である。あるいは、Champeら、J. Biol. Chem. 270:1388-1394 (1995)に記載された通りに、エピトープマッピングが、抗体が目的のエピトープに結合するかどうかを判断するために実行することができる。
【0101】
一実施態様では、ヒトCEAに特異的な変異体抗原分子は、モノクローナル抗体PR1A3の少なくとも一つのCDRを含む親抗CEA抗原結合分子から作られ、親抗CEA抗体はPR1A3抗体と同じエピトープに結合し、抗原結合に対してPR1A3と競合することが可能である。一実施態様では、親抗原結合分子は、少なくとも1つ、2つ、又は典型的には3つのPR1A3抗体の重鎖CDRを含む;別の実施態様では、親抗原結合分子は、少なくとも1つ、2つ、又は典型的には3つのPR1A3抗体の軽鎖CDRを含む;別の実施態様では、親抗原結合分子はPR1A3抗体の3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含む。好ましくは、変異体抗原結合分子はPR1A3のHCDR1を含む場合、前記HCDR1は、Kabatの位置31でバリンに対するグルタミン酸への置換を含む。一実施態様において、変異体ABMは、親に比べて増加した安定性を有する。変異体ABMは、通常、親よりもCEAに対する親和性を有する。一実施態様では、変異体ABMは、Fc領域を含む。一実施態様では、変異体ABMは、糖鎖を操作されている。一実施態様では、変異体ABMは、親ABMに比べてADCC活性を増加させている。特定の実施態様では、増加したADCCは、親和性の増加の結果であり、例えば、親ABMの親和性成熟によって達成され変異体ABMを生成する。より特定の実施形態では、ADCCの増加は、前記親抗原結合分子と比較して少なくとも約40%から約100%程度である。別の特定の実施態様では、変異体ABMは、インビトロ細胞毒性アッセイにおいて少なくとも約10%から約100%ADCCを増加させる。より特定の実施態様において、変異体ABMは、マウスPR1A3抗体に比べて所定の濃度でADCCを誘導することで少なくとも約10倍から約1000倍より強力である。より特定の実施態様では、変異体ABMは、マウスPR1A3抗体に比べて所定の濃度でADCCを誘導することで少なくとも約10倍から約1000倍より強力である。別の特定の実施態様では、増加したADCC活性はFc領域の糖鎖操作の結果である。
【0102】
一実施態様では、本発明の変異抗原結合分子は、少なくとも一つのCDRの1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。アミノ酸置換の数は、好ましくは、1から10の範囲(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10)、好ましくは2から5まで(例えば、2、3、4、又は5)、変動し得る。一実施態様では、少なくとも1つの重鎖CDRは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。一実施態様では、少なくとも1つの軽鎖CDRは、1つ又は複数のアミノ酸置換を含む。別の実施態様では、少なくとも1つの重鎖CDRは、1つ又は複数の置換を含み、かつ少なくとも1つの軽鎖CDRは、1つ又は複数の置換を含む。好ましくは、変異体抗原結合分子はPR1A3のHCDR1を含む場合、HCDR1は、Kabatの位置31におけるバリンに対するグルタミン酸への置換を含む。
【0103】
抗原結合分子の生物学的特性の実質的な修飾は、(a)例えば、シート又はらせん構造として、置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造、(b)標的部位における分子の電荷又は疎水性、又は(c)側鎖のかさ、の維持するうえで、その効果が有意に異なる置換を選択することによって達成される。アミノ酸置換を有する変異体抗原結合分子は、親の抗原結合分子と比較して生物学的活性、例えば、改良された抗原結合親和性及び強化されたADCCを改善し得る。アミノ酸置換は、限定されないが、部位特異的突然変異誘発及び/又はファージディスプレイによる親の抗原結合分子等の親和性成熟を含む、当該分野で公知の様々な技術によって導入することができる。
【0104】
修飾のための候補部位、例えば超可変残基、を同定するために、アラニンスキャン突然変異誘発が、抗原結合に有意に寄与する残基を見つけるために実行され得る。あるいは、又は加えて、抗体及びヒトCEAとの間の接触点を同定するために、抗原−抗体複合体の結晶構造を分析することは有益であり得る。そのような接触残基と隣接する残基は、当該技術分野で既知の方法か、及び/又は本明細書に記載の方法に従って置換の候補である。ひとたび、そのような変異体が生成され、変異体のパネルは、当該分野で既知の方法、及び/又は本明細書に記載の方法によりスクリーニングすることができ、1つ又は複数の関連アッセイにおいて優れた特性を有する抗体が、更なる開発のために選択することができる。
【0105】
ファージディスプレイは、ランダムなアミノ酸変異を含む親の抗原結合分子から超可変領域配列のレパートリーを生成するために使用することができる。例えば、幾つかの超可変領域部位(例えば6−7部位)は各部位で全ての可能なアミノ酸置換を生成させるために変異している。あるいは、ランダム突然変異誘発は、重鎖及び/又は軽鎖可変領域で実行することができる。突然変異は、当該技術分野で公知の技術によって生成することができる。限定されないが、突然変異誘発プライマーを用い、サイクル数を制御し、及びPCR増幅の間に変異原性ヌクレオチド類似体の8−オキソ−dGTP及びdPTPを使用する。こうして生成された抗体変異体は、各粒子内のM13のパッケージの遺伝子III産物への融合体として繊維状ファージ粒子から一価の様式で表示される。本明細書に開示されたように、ファージ表示された変異体は、その後、その生物学的活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされ、1つ又は複数の改良された活性を有する候補が更なる開発のために使用される。ファージディスプレイライブラリーを作製するための方法は、Huseら、Science, 246:1275-1281 (1989); Proc. Nat'l Acad. Sci., USA, 88:4363-4366 (1991)に見いだすことができ、その各々の内容全体が本明細書中で参照により援用される。親和性成熟した抗原結合分子を同定するための代替方法は、例えば、Balintらに対する米国特許第7432063号に見いだすことができ、その内容全体が本明細書中で参照により援用される。
【0106】
幾つかの実施態様において、本発明の抗原結合分子及び変異体抗原結合分子は、Fc領域、好ましくはヒトFc領域を含む。Fc領域の配列及び構造は、当技術分野で知られており特徴づけられている。特定の実施態様では、ヒト定常領域は、配列番号121及び122に記載されたIgG1である。
【0107】
しかしながら、ヒトFc領域の変異体及びアイソフォームもまた、本発明に包含される。例えば、本発明における使用に適した変異体Fc領域は、Prestaに対する米国特許第6737056号で教示された方法に従って産生することができる。(1つ又は複数のアミノ酸修飾のために変更されたエフェクター機能を有するFc領域変異体);又は米国特許出願第60/439498号、同第60/456041号;同第60/514549号;又は国際公開第2004/063351号(アミノ酸修飾により増加した結合親和性を有する変異体Fc領域);又は米国特許出願第10/672280号又は国際公開第2004/099249号(アミノ酸修飾によるFcγRへの改変された結合をするFc変異体)、その各々の内容は本明細書においてその全体が参照により援用される。特定の実施態様では、抗CEA ABM及び変異体ABMは(例えば、フコシル化を減少させ、Fcレセプター結合親和性を向上させ、ADCCを増加させる、など)ABMのエフェクター機能活性を変更するための糖鎖操作されたFc領域を含んでいる。使用することができる糖鎖操作の方法は、本明細書中以下に詳細に記載されており、及び当該技術分野で知られている。
【0108】
一実施態様において、本発明の抗原結合分子及び変異体抗原結合分子は、放射標識又は毒素などの追加部分に結合している。そのような抱合された抗原結合分子は、当技術分野でよく知られている多数の方法によって作成することができる。本発明の抗CEA ABMコンジュゲートは、本明細書中の以下に「抗CEA抗原結合分子コンジュゲート」と題する節で詳細に記載されている。
【0109】
発現ベクター及び宿主細胞
一態様において、本発明は、発現ベクター及び/又は本発明の1つ又は複数の単離されたポリヌクレオチドを含む宿主細胞に向けられている。例えば、宿主細胞又は発現ベクターは、本明細書に記載されたABM及び/又は変異体ABMのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド又はポリヌクレオチドの何れか一つ又は複数を含む。別の態様において、本発明は、膜結合ヒトCEAに結合するABMを産生する方法に向けられており、該方法は、前記一又は複数のポリヌクレオチドの発現を可能にする条件下の培地中で、本発明の一つ又は複数の単離されたポリヌクレオチド、又は本発明の一つ又は複数の単離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターを含む宿主細胞を培養することを含み、前記一つ又は複数のポリヌクレオチドはABMの一部を形成する一又は複数のポリペプチドをコードし、そして前記ABMを回復し、前記ABM又はその一部が膜結合CEAに結合する。
【0110】
一般的に、任意の型の培養細胞系が本発明のABMを発現するために使用され得る。好ましい実施態様において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0111】
特定の実施態様において、宿主細胞又は発現ベクターは、本明細書に与えられる抗CEA ABMをコードする一以上のポリヌクレオチドを含む。一実施態様において、抗体は親和性成熟型である。親和性成熟抗体は、一般的に親和性成熟抗体が由来する参照抗体のそれよりも結合親和性を向上させている。別の実施態様において、抗体は、限定されないが、可溶性CEAに対して実質的に交差反応性を有さずに、CEA抗原、特に膜結合CEAに対する強い結合親和性;好ましくは用量依存的に、インビトロ及びエキソビボでのCEA発現細胞の細胞溶解を誘導する能力;インビトロでのCEA媒介細胞接着を阻害する能力;腫瘍組織の増殖を阻害する能力及び/又はマウス(例えば、異種移植片マウス)の腫瘍モデルにおいて腫瘍組織の退縮を誘導する能力、を含む望ましい治療特性を持っている。別の実施態様において、抗体は、より安定な抗体が派生する親抗体に比べて、増加した安定性を有する。別の実施態様では、変異体抗体又はその断片はヒトFcを含む。
【0112】
一実施態様において、本発明のABMをコードする1個又は数個のポリヌクレオチドが、構成的プロモーター、又は調節された発現系の制御下で発現されてもよい。適切な調節された発現系には、テトラサイクリンで調節される発現系、エクジソン誘導性発現系、lacスイッチ発現系、糖質コルチコイド誘導性発現系、温度誘導性発現系、及びメタロチオネイン金属誘導性発現系が含まれるがこれらに限定されない。本発明のABMをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかが構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節プロモーターの制御下で発現される。最大発現レベルは、細胞増殖速度に顕著な有害な効果をおよぼさない安定なポリペプチド発現の最高の可能なレベルであると見なされ、日常的な実験を使用して決定される。発現レベルは、ABMに特異的である抗体又はABMに融合されたペプチドタグに特異的である抗体を使用するウェスタンブロット分析;及びノーザンブロット分析を含む、当分野において一般的に公知である方法によって決定される。さらなる代替において、このポリヌクレオチドは、レポーター遺伝子に作動可能に連結され得;本明細書に開示されるABMの発現レベルは、レポーター遺伝子の発現レベルと相関するシグナルを測定することによって決定される。このレポーター遺伝子は、単一のmRNA分子として前記ABMをコードする核酸と一緒に転写され得る;それらのそれぞれのコード配列は、内部リボソームエントリー部位(IRES)によって、又はキャップ非依存性翻訳エンハンサー(CITE)によってのいずれかで連結され得る。このレポーター遺伝子は、単一のポリペプチド鎖が形成されるように、本明細書に開示されるABMをコードする少なくとも1つの核酸と一緒に翻訳され得る。本発明のABMをコードする核酸は、単一のプロモーターの制御下でレポーター遺伝子に作動可能に連結され得、その結果、ABMをコードする核酸及びレポーター遺伝子が、2つの別々のメッセンジャーRNA(mRNA)分子に選択的スプライシングされるRNA分子に転写される;得られるmRNAの1つは前記レポータータンパク質に翻訳され、そして他方がABMに翻訳される。
【0113】
当業者に周知である方法が、適切な転写/翻訳制御シグナルとともに、本明細書に与えられる抗CEA ABMの配列をコードする配列含む発現ベクターを構築するために使用され得る。これらの方法には、インビトロ組換えDNA技術、合成技術及びインビボ組換え/遺伝子組換えが含まれる。例えば、Maniatisら、 MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Cold Spring Harbor Laboratory, N.Y. (1989) 及びAusubelら、 CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, Greene Publishing Associates 及び Wiley Interscience, N.Y (1989)に記載される技術を参照のこと。
【0114】
種々の宿主発現ベクター系が本発明のABMのコード配列を発現するために利用されてもよい。好ましくは、哺乳動物細胞が、目的のタンパク質のコード配列及び融合ポリペプチドのコード配列を含む組換えプラスミドDNA又はコスミドDNA発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞系として使用される。最も好ましくは、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞が、宿主細胞系として使用される。発現系及び選択方法のいくつかの例が、以下の参考文献及びその中の引用文献に記載されている。Borthら、 Biotechnol. Bioen. 71(4):266-73 (2000-2001)、Wernerら、 Arzneimittelforschung/Drug Res. 48(8):870-80 (1998)、Andersen 及び Krummen, Curr. Op. Biotechnol. 13:117-123 (2002)、Chadd 及び Chamow, Curr. Op. Biotechnol. 12:188-194 (2001), 及びGiddings, Curr. Op. Biotechnol. 12: 450-454 (2001)。
【0115】
代替的な実施態様において、以下を含む、他の真核生物宿主細胞系が使用され得る。本発明のABMのコード配列を含む組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母細胞、例えば、米国特許出願第60/344169及び国際公開第03/056914号に教示された発現系など(ヒト以外の真核生物宿主細胞におけるヒト型様糖タンパク質の製造方法)(その各々の内容はその全体が参考として援用される);抗CEAのコード配列を含む組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞系;本発明のABMのコード配列を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウィルス、CaMV;タバコモザイクウイルス、TMV)で感染されるか、もしくはこの配列を含む組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞系であって、限定されないが、米国特許出願第6815184号(遺伝子操作されたウキクサからの生物学的に活性なポリペプチドの発現及び分泌のための方法)、国際公開第2004/057002号(糖転移酵素遺伝子の導入によるコケ植物細胞における糖タンパク質の生産)及び国際公開第2004/024927号(コケ原形質体における細胞外異種非植物タンパク質を生成する方法)、及び米国特許出願第60/365,769号、同第60/368047号及び国際公開第2003/078614号(機能的哺乳類GnTIIIを酵素を含むトランスジェニック植物中の糖タンパク質プロセシング)(各々の内容はその全体が本明細書において参考として援用される)に教授された発現系を含む;又は安定に増幅されたか(CHO/dhfr)もしくは二重微小染色体(例えば、マウス細胞系)中で不安定に増幅されたかのいずれかである、キメラ抗CEA ABMをコードするDNAの複数のコピーを含むように操作された細胞株を含む、組換えウイルス発現ベクター(例えば、アデノウイルス、ワクシニアウイルス)で感染された動物細胞系。一実施態様において、本発明のABMをコードするポリヌクレオチドを含むベクターはポリシストロン性である。一実施態様において、ABMは親和性成熟型抗体である。一実施態様において、ABMは安定性成熟型抗体である。
【0116】
本発明の方法のために、安定な発現が一過性の発現よりも好まれる。なぜなら、これは、典型的には、より再現性のある結果を達成し、及びまた、大規模な産生に対してより受け入れ可能であるからであるが、しかし、それは一過性の発現が特定の状況のためのより良いかどうかを判断する当業者の技術の範囲内にある。ウイルス起源の複製を含む発現ベクターを使用するよりはむしろ、宿主細胞は、適切な発現制御エレメント(例えば、プロモーター、エンハンサー、配列、転写ターミネーター、ポリアデニル化部位など)によって制御されるそれぞれのコード核酸、及び選択マーカーで形質転換され得る。外来性DNAの導入後に、操作された細胞は、富化培地中で1−2日間増殖され得、次いで、選択培地に交換される。組換えプラスミド中の選択マーカーは選択に対する耐性を付与し、それらの染色体にプラスミドを安定に組み込んだ細胞の選択を可能にし、増殖して増殖巣を形成し、これは次にはクローニングされ得、そして細胞系に拡大され得る。
【0117】
多数の選択系が使用されてもよく、これには以下が含まれるがこれらに限定されない:単純ヘルペスウイルスチミジンキナーゼ遺伝子(Wiglerら、 Cell 11:223 (1977))、ヒポキサンチン−グアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Szybalska & Szybalski, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 48:2026 (1962))、及びアデニンホスホリボシルトランスフェラーゼ遺伝子(Lowyら、 Cell 22:817 (1980))、これらは、tk
−細胞、hgprt
−細胞、又はaprt
−細胞中でそれぞれ利用され得る。また、代謝拮抗物質耐性は、メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfr遺伝子(Wiglerら、 Natl. Acad. Sci. USA 77:3567 (1989); O'Hareら、 Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:1527 (1981));ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt遺伝子(Mulligan & Berg, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78:2072 (1981));アミノグリコシドG−418に対する耐性を付与するneo遺伝子(Colberre-Garapinら、 J. Mol. Biol. 150:1 (1981));及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro遺伝子(Santerreら、 Gene 30:147 (1984)についての選択の基礎として使用され得る。最近、さらなる選択遺伝子、すなわち、細胞がトリプトファンの代わりにインドールを利用することを可能にするtrpB;細胞がヒスチジンの代わりにヒスチノールを利用することを可能にするhisD(Hartman & Mulligan, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:8047 (1988));グルタミン合成系;及びオルニチンデカルボキシラーゼインヒビターである2−(ジフルオロメチル)−DL−オルニチン、DFMOに対する耐性を付与するODC(オルニチンデカルボキシラーゼ)(McConlogue,: Current Communications in Molecular Biology, Cold Spring Harbor Laboratory ed. (1987))が記載されている。
【0118】
本発明は更に、宿主細胞によって産生される本発明のABMのグリコシル化のプロファイルを修飾するための方法に向けられており、前記宿主細胞中で本発明のABMをコードする核酸、グリコシルトランスフェラーゼ活性を持つポリペプチドをコードする核酸、又はそのような核酸を含むベクターを発現することを含む。グリコシルトランスフェラーゼ活性を持つ遺伝子は、β(1,4)−N−アセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII(GnTII)、α−マンノシダーゼII(ManII)、β(1,4)−ガラクトシルトランスフェラーゼ(GALT)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミン転移酵素I(GnTI)、β(1,2)−N−アセチルグルコサミン転移酵素II(GnTII)を含む。一実施態様では、グリコシルトランスフェラーゼ活性を持つ遺伝子の組み合わせは、宿主細胞(例えば、GnTIII及びManII)で発現される。同様に、この方法はまた、糖転移酵素遺伝子が破壊され、あるいは不活性化されている(例えば、α1−6コアフコース転移酵素をコードする遺伝子の活性がノックアウトされた宿主細胞)宿主細胞内でABMをコーする1つ又は複数のポリヌクレオチドの発現を包含する。別の実施態様において、本発明のABMは、グリコシル化パターンを修飾するGnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを更に発現する宿主細胞内で産生することができる。特定の実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、ゴルジ常在性のポリペプチドのゴルジ体局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。別の好ましい実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを発現する宿主細胞における本発明のABMの発現は、増加したFcレセプター結合親和性及び、増加したエフェクター機能をを持つABMをもたらす。したがって、一実施態様では、本発明は、(a)GnTIII活性を有するポリペプチドをコードする配列を含む単離された核酸;及び(b)例えば、ヒトCEAに結合し、キメラ、霊長類又はヒト化抗体等、本発明のABMをコードする単離されたポリヌクレオチドを含有する宿主細胞に向けられている。好ましい実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、GnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドであり、及びゴルジ体局在化ドメインはマンノシダーゼIIの局在化ドメインである。このような融合ポリペプチドを生成し、増加したエフェクター機能を有する抗体を産生するためにそれらを使用するための方法は、米国仮特許出願第60/495142号及び米国特許出願公開第2004/0241817号に開示されており、その全体の内容が参照により本明細書に明示的に援用される。特定の実施態様では、宿主細胞によって生成された修飾されたABMは、IgG定常領域又はFc領域を含むその断片を有する。別の特定の実施形態ではABMは、ヒト化抗体又はそのFc領域を含む断片である。
【0119】
本発明の宿主細胞によって産生される改変されたグリコシル化を持つABMは、典型的には、宿主細胞の修飾の結果として(例えば、糖転移酵素遺伝子の発現により)、増加したFcレセプター結合親和性及び/又は増加したエフェクター機能を示す。好ましくは、増加したFcレセプター結合親和性は、FcγRIIIaレセプター等のFcγ活性化レセプターへの結合が増加している。増加したエフェクター機能は、好ましくは、以下の1つ以上の増加である:増加した抗体依存性細胞傷害、増加した抗体依存性細胞貪食(ADCP)、増加したサイトカイン分泌、抗原提示細胞による免疫複合体介在性抗原取り込みの増加、FC-依存性細胞傷害の増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、多形核白血球(多形核白血球)への結合の増加、単球への結合の増加、標的に結合した抗体の架橋の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、樹状細胞の成熟の増加、及びT細胞プライミングの増加。
【0120】
抗体依存性細胞傷害を含む増加したエフェクター機能を有するABMSの生成及び使用
一態様において、本発明は、抗体依存性細胞傷害性を含めて、増加したエフェクター機能を有する抗CEA ABMのグリコフォーム(例えば、変異体ABM)を提供する。抗体のグリコシル化の操作は、以前に記載されている。例えば、米国特許第6602684号を参照、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。グリコシル化に関与する遺伝子の活性を改変した宿主細胞由来のABMの産生方法も詳細に本明細書中に記載される。(例えば、「発現ベクター及び宿主細胞」なる題名の次の節を参照)。本発明のABMSのADCCの増加はまた、親和性成熟又は親和性を向上させる他の方法で、膜結合CEAに対する抗原結合分子の親和性を増加させることによって達成される(Tangら、J. Immunol. 2007, 179:2815-2823を参照)。これらのアプローチの組み合わせも本発明に包含される。
【0121】
いくつかの型の癌の治療のための非結合体化モノクローナル抗体(mAb)の臨床試験が、最近、有望な結果を生じてきている。Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223-25(1997);Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。キメラの非結合体化IgG1は、軽度又は濾胞性のB細胞非ホジキンリンパ腫のために認可されており(Dillman、Cancer Biother.& Radiopharm.12:223-25(1997))、一方別の非結合体化mAbである、ヒト化IgG1標的化固形胸部腫瘍はまた、フェーズIII臨床試験において有望な結果を示している。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。これらの2つのmAbの抗原は、それらのぞれぞれの腫瘍細胞中で高度に発現され、そして抗体は、インビトロ及びインビボにおいてエフェクター細胞による潜在的な腫瘍破壊を媒介する。対照的に、微細な腫瘍特異性を有する多くの他の非結合mAbは、臨床的に有用であるために十分な効力のエフェクター機能を誘発することができない。Frostら、Cancer 80:317-33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184-91(1996)。これらのより弱いmAbのいくつかについて、補助サイトカイン治療が現在試験されている。サイトカインの付加は、循環しているリンパ球の活性及び数を増加させることによって、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を刺激し得る。Frostら、Cancer 80:317-33(1997);Surfusら、J.Immunother.19:184-91(1996)。ADCC、抗体標的化細胞に対する溶解性攻撃は、抗体の定常領域(Fc)への白血球レセプターの結合の際に誘発される。Deoら、Immunology Today 18:127(1997)。
【0122】
非結合体化IgG1sのADCC活性を増加させるための、異なるが補完的なアプローチは、抗体のFc領域を操作することである。タンパク質操作研究は、FcγRがIgG CH2ドメインのより下位のヒンジ領域と相互作用することを示してきた。Lundら、J.Immunol.157:4963-69(1996)。しかし、FcγR結合はまた、CH2領域における保存性Asn297に共有結合されたオリゴ糖の存在を必要とする。Lundら、J.Immunol.157:4963-69(1996);Wright及びMorrison、Trends Biotech.15:26-31(1997)、いずれかオリゴ糖及びポリペプチドの両方が相互作用部位に直接的に寄与すること、又はオリゴ糖が、活性なCH2ポリペプチドコンホメーションを維持するために必要とされることを示唆する。それゆえに、オリゴ糖構造の修飾は、相互作用の親和性を増加するための手段として探求され得る。
【0123】
IgG分子は、そのFc領域中に2つのN連結オリゴ糖を有し、これは各重鎖に1つである。いかなる糖タンパク質とも同様に、抗体は、同じポリペプチドバックボーンを共有するが、グリコシル化部位に結合された異なるオリゴ糖を有する糖型の集団として産生される。血清IgGのFc領域中に通常見い出されるオリゴ糖は、複合体二分岐型(Wormaldら、Biochemistry 36:130-38(1997))であり、低レベルの末端シアル酸及び二分枝N−アセチルグルコサミン(GlcNAc)、ならびに変動する程度の末端ガラクトシル化及びコアフコシル化を有する。いくつかの研究は、FcγR結合のために必要とされる最小の炭水化物構造はオリゴ糖コア中に存在することを示唆する。Lundら、J.Immunol.157:4963-69(1996)。
【0124】
非結合体化治療用mAbの産生のために産業界及び学術研究において使用されるマウス又はハムスター由来の細胞系は、通常、必要とされるオリゴ糖決定基をFc部位に結合する。しかし、これらの細胞系において発現されるIgGは、血清IgGにおいて少量見い出される二分枝GlcNAcを欠いている。Lifelyら、Glycobiology 318:813-22(1995)。対照的に、ラット骨髄腫により産生されるヒト化IgG1(CAMPATH−1H)が、いくつかのその糖型で二分枝GlcNAcを有したことが最近観察された。Lifelyら、Glycobiology 318:813-22(1995)。ラット細胞由来の抗体は、CAMPATH-1H抗体が標準的な細胞系において産生されるにつれて、同様の最大インビトロADCC活性に到達したが、有意に低い抗体濃度であった。
【0125】
CAMPATH抗原は、通常、リンパ腫細胞上で高レベルで存在し、このキメラmAbは、二分枝GlcNAcの非存在下で高いADCC活性を有する。Lifelyら、Glycobiology 318:813-22(1995)。N連結グリコシル化経路において、二分枝GlcNAcはGnTIIIによって加えられる。Schachter、Biochem.Cell Biol.64:163-81(1986)。
【0126】
以前の研究は、異なるレベルのクローニングしたGnT III遺伝子酵素を、外部から調節される様式で発現するように以前に操作された単一の抗体産生CHO細胞系を使用した。(Umana,P.ら、Nature Biotechnol.17:176-180(1999))。このアプローチは、グリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)の発現と、修飾抗体のADCC活性との間の厳格な相関を最初に確立した。従って、本発明は、Fc領域又はABM産生宿主細胞においてグリコシルトランスフェラーゼの発現レベルを変化させることに由来する改変されたグリコシル化を有するFc領域に等価な領域を含む、膜結合CEAに結合する変異体ABM(例えば親和性成熟ABM)を熟考する。特定の実施態様にて、遺伝子発現レベルの変化はGnTIII活性の増加である。GnTIII活性の増加は、二分枝オリゴ糖のパーセンテージの増加、ならびにABMのFc領域中のフコース残基のパーセンテージの減少を生じる。この抗体又はその断片は、Fcレセプター結合親和性の増加及びエフェクター機能の増加を有する。
【0127】
本発明はまた、宿主細胞中に修飾オリゴ糖を有する、本発明の抗CEA ABMを産生するための方法に向けられ、この方法は、(a)本発明に従うABMの産生を可能にする条件下でグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作された宿主細胞を培養し、ここで、このグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、この宿主細胞によって産生されるこのABMのFc領域においてオリゴ糖を修飾するために十分な量で発現され;及び(b)このABMを単離することを含む。一実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドは、GnTIIIである。その他の実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する2つのポリペプチドがある。特定の実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有する2つのペプチドは、GnTIII及びManIIである。別の実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドはGnTIIIの触媒ドメインを含む融合ポリペプチドである。より具体的な実施態様において、融合ポリペプチドはさらに、ゴルジ常在ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む。好ましくは、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼII又はGnTIの局在化ドメインである。代替的には、このゴルジ局在化ドメインは、マンノシダーゼIの局在化ドメイン、GnTIIの局在化ドメイン、及びα1−6コアフコシルトランスフェラーゼの局在化ドメインからなる群より選択される。本発明の方法によって産生されるABMは、Fcレセプター結合親和性の増加及び/又はエフェクター機能の増加を有する。一般的に、エフェクター機能の増加は、以下の1つ以上である。Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、又はT細胞プライミングの増加。Fcレセプター結合親和性の増加は、好ましくは、FcγRIIIaなどのFc活性化レセプターへの結合の増加である。特に好ましい実施態様において、ABMはヒト化抗体又はその断片である。
【0128】
一実施態様において、ABMのFc領域における二分枝N結合オリゴ糖のパーセンテージは、全体のオリゴ糖の、少なくとも約10%から約100%、特に少なくとも約50%、より具体的には、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、又は少なくとも約90−95%である。さらに別の実施態様において、本発明の方法により産生された抗原結合分子又は変異体抗原結合分子は、本発明の方法により、その糖鎖の修飾の結果として、Fc領域における非フコシル化オリゴ糖の割合が増加している。一実施態様において、非フコシル化オリゴ糖のパーセンテージは、少なくとも約20%から約100%、具体的には少なくとも約50%、少なくとも約60%から約70%、及びより具体的には、少なくとも約75%である。非フコシル化オリゴ糖は、ハイブリッド型又は複合型であり得る。更に別の実施態様において、本発明の方法により産生された抗原結合分子又は変異体抗原結合分子は、本発明の方法により、その糖鎖の修飾の結果として、Fc領域で二分枝オリゴ糖の割合が増加している。一実施態様において、二分枝糖鎖のパーセンテージは少なくとも約20%から約100%、具体的には少なくとも約50%、少なくとも約60%から約70%、及びより具体的には、少なくとも約75%である。特に好ましい実施態様において、本発明の宿主細胞及び方法により産生されたABMは、Fc領域内の二分枝の非フコシル化オリゴ糖の割合が増加している。二分枝の、非フコシル化オリゴ糖は、ハイブリッド又は複合体であり得る。具体的には、本発明の方法は、抗原結合分子を産生するために使用され得、抗原結合分子又は変異体抗原結合分子のFc領域のオリゴ糖の少なくとも約10%から約100%、具体的は少なくとも約15%、より具体的には少なくとも約20%から約50%、より具体的には少なくとも約20%から約25%、及びより具体的には少なくとも約30%から約35%が二分枝され、非フコシル化されている。本発明のABMSはまた、ABMのFc領域のオリゴ糖の少なくとも約10%から約100%、具体的は少なくとも約15%、より具体的には少なくとも約20%から約25%、及びより具体的には少なくとも約30%から約35%が二分枝され、非フコシル化されているFc領域を含み得る。
【0129】
別の実施態様において、本発明は、本発明の方法によって産生される、エフェクター機能の増加及び/又はFcレセプター結合親和性の増加を有するように操作された抗CEA抗原結合分子(例えば、変異体ABM)に向けられる。エフェクター機能の増加は、限定されないが、以下の一つ又は複数を含み得る:Fc媒介性細胞傷害性の増加(抗体依存性細胞傷害性の増加を含む)、抗体依存性細胞食作用(ADCP)の増加、サイトカイン分泌の増加、抗原提示細胞による免疫複合体媒介性の抗原取り込みの増加、NK細胞への結合の増加、マクロファージへの結合の増加、単球への結合の増加、多形核細胞への結合の増加、直接的シグナル伝達誘導性アポトーシスの増加、標的結合抗体の架橋の増加、樹状細胞成熟の増加、又はT細胞プライミングの増加。好ましい実施態様において、Fcレセプター結合親和性の増加は、Fc活性化レセプター、最も好ましくはFcγRIIIaへの結合の増加である。一実施態様において、抗原結合分子又は変異体抗原結合分子は抗体、Fc領域を含む抗体断片、又は免疫グロブリンのFc領域に対して等価である領域を含む融合タンパク質である。特に好ましい実施態様において、抗原結合分子又は変異体抗原結合分子はヒト化親和性成熟抗体である。
【0130】
本発明はさらに、抗体依存性細胞傷害を含み、Fcレセプター結合親和性を増加させ、好ましくは、Fc活性化レセプターへの結合を増加させ、及び/又はエフェクター機能を増加させた、本発明のABMのグリコフォームの生産のための宿主細胞系の生成及び使用のための方法を提供する。本発明にABMで使用される糖鎖操作の方法論は、米国特許第6602684号、米国特許出願公開第2004/0241817(A1)号、米国特許出願公開第2003/0175884(A1)号、米国仮特許出願第60/441307号、及び国際公開第2004/065540号により詳細が記載されており、その各々の内容全体が参照によりその全体が本明細書に援用される。本発明のABMは、別の方法として米国特許出願公開第2003/0157108号(ジェネンテック)、又は欧州特許第1176195(A1)号、国際公開第03/084570号、同第03/085119号、及び米国特許出願公開第2003/0115614号、同2004/093621号、同2004/110282号、同2004/110704号、同2004/132140号(Kyowa)に開示された技術に従って、Fc領域にフコース残基を減少させるように糖鎖を操作することができる。これらの文書の各々の内容は、参考により本明細書にその全体が援用される。本発明の糖鎖を操作されたABMは、また、米国特許出願公開第60/344169号、及び国際公開第03/056914号(GlycoFi,Inc.)又は国際公開第2004/057002号及び国際公開第2004/024927号(Greenovation)に教示されたように、修飾された糖タンパク質を生産する発現系において生成することができ、その各々の内容はここにその全体が参考により援用される。
【0131】
グリコシル化パターンの変化を有するタンパク質の産生のための細胞系の生成
一態様にて、本発明は、グリコシル化パターンの修飾を有する本発明のABMの生成のための宿主発現系を提供する。特に、本発明は、改善された治療的価値を有する本発明のABMの糖型の生成のための宿主細胞系を提供する。それゆえに、本発明は、グリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現するように選択又は操作された宿主細胞発現系を提供する。一実施態様において、グリコシルトランスフェラーゼ活性はGnTIII活性である。一実施態様において、GnTIII活性を有するポリペプチドは、異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドである。詳細には、このような宿主細胞発現系は、構成的又は調節されるプロモーター系に作動可能に連結された、GnTIIIを有するポリペプチドをコードする組換え核酸分子を含むように操作され得る。
【0132】
1つの特定の実施態様において、本発明は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの核酸を発現するように操作されている宿主細胞を提供する。1つの態様において、宿主細胞は、GnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードする少なくとも1つの遺伝子を含む核酸分子で操作されている。
【0133】
一般的に、上記に議論される細胞系を含む任意の型の培養細胞系が、本発明の宿主細胞株を操作するためにバックグラウンドとして使用され得る。好ましい実施態様において、CHO細胞、BHK細胞、NS0細胞、SP2/0細胞、YO骨髄腫細胞、P3X63マウス骨髄腫細胞、PER細胞、PER.C6細胞又はハイブリドーマ細胞、他の哺乳動物細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は植物細胞が、本発明の操作された宿主細胞を生成するためにバックグラウンド細胞系として使用される。
【0134】
本発明は、本明細書に定義されるような異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドを含む、GnTIII活性などのグリコシルトランスフェラーゼ活性を有するポリペプチドを発現する任意の操作された宿主細胞を含むことを意図する。
【0135】
グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えばGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする1つ又はいくつかの核酸が、構成的プロモーター又は代替的には、調節された発現系の制御下で発現され得る。このような系は当該技術分野において周知であり、これは上記に議論した系を含む。グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えばGnTIII活性を有し、かつ異種ゴルジ存在性ポリペプチドのゴルジ局在化ドメインを含む融合ポリペプチドをコードするいくつかの異なる核酸が宿主細胞系中に含まれる場合、それらのいくつかは構成的プロモーターの制御下で発現され得るのに対して、その他は調節されるプロモーターの制御下で発現される。グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えばGnTIII活性を有する融合ポリペプチドの発現レベルは、ウェスタンブロット分析、ノーザンブロット分析、レポーター遺伝子発現分析、又はグリコシルトランスフェラーゼ活性、例えばGnTIII活性の測定を含む、当該技術分野において一般的に公知である方法によって決定される。代替的には、GnTIIIの生合成産物に結合するレクチン、例えば、E
4−PHAレクチンが利用されてもよい。代替的には、グリコシルトランスフェラーゼ活性、例えばGnTIII活性を有するポリペプチドをコードする核酸で操作された細胞によって産生される抗体によって媒介される、Fcレセプター結合の増加又はエフェクター機能の増加を測定する機能的アッセイが使用されてもよい。
【0136】
グリコシル化パターンの修飾を有するタンパク質を発現するトランスフェクト体又は形質転換体の同定
変異体抗CEA ABM(例えばヒト化、親和性成熟型及び/又は安定性成熟型ABM)のコード配列を含み、かつ生物学的に活性な遺伝子産物を発現する宿主細胞は、少なくとも4つの一般的アプローチ:(a)DNA−DNA又はDNA−RNAのハイブリダイゼーション;(b)「マーカー」遺伝子機能の存在又は非存在;(c)宿主細胞中のそれぞれのmRNA転写物の発現によって測定されるような転写物のレベルを評価すること;及び(d)免疫アッセイによって、又はその生物学的活性によって測定されるような遺伝子産物の検出によって同定されてもよい。
【0137】
第1のアプローチにおいて、変異体抗CEA ABMのコード配列及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)活性を有するポリペプチドのコード配列の存在は、それぞれのコード配列、又はその部分もしくは誘導体それぞれに相同であるヌクレオチド配列を含むプローブを使用するDNA−DNA又はDNA−RNAハイブリダイゼーションによって検出され得る。
【0138】
第2のアプローチにおいて、組換え発現ベクター/宿主系は、特定の「マーカー」遺伝子機能(例えば、チミジンキナーゼ活性、抗生物質に対する耐性、メトトレキサートに対する耐性、形質転換表現型、バキュロウイルスにおける顆粒体形成など)の存在又は欠如に基づいて同定及び選択され得る。例えば、本発明のABMのコード配列又はその断片、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)活性を有するポリペプチドのコード配列がベクターのマーカー遺伝子配列中に挿入される場合、それぞれのコード配列を含む組換え体は、マーカー遺伝子機能の欠如によって同定され得る。代替的には、マーカー遺伝子は、コード配列の発現を制御するために使用される同じか又は異なるプロモーターの制御下でコード配列とともにタンデムに配置され得る。誘導又は選択に応答したマーカーの発現は、本発明のABMのコード配列及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)活性を有するポリペプチドのコード配列の発現を示す。
【0139】
第3のアプローチにおいて、本発明のABMのコード領域、又はその断片、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)活性を有するポリペプチドのコード配列についての転写活性は、ハイブリダイゼーションアッセイによって評価され得る。例えば、RNAは、本発明のABMのコード配列又はその断片、及び/又はグリコシルトランスフェラーゼ(例えばGnTIII)活性を有するポリペプチドのコード配列又はその特定の部分に相同であるプローブを使用するノーザンブロットによって単離及び分析され得る。代替的には、宿主細胞の全体の核酸は、抽出され得、及びこのようなプローブへのハイブリダイゼーションについてアッセイされ得る。
【0140】
第4のアプローチにおいて、タンパク質産物の発現が、例えば、ウェスタンブロット、放射性免疫沈降、酵素結合免疫アッセイなどの免疫アッセイによって、免疫学的に評価され得る。しかし、発現系の成功の究極的な試験は、生物学的に活性な遺伝子産物の検出を含む。
【0141】
抗原結合分子の抗CEAを使用する治療への応用と方法
本発明はまた、CEAを発現する細胞をインビボ又はインビトロで標的とするための方法に向けらている。CEAを発現する細胞を治療目的のために標的とすることができる(例えば、免疫系による破壊のためCEA発現細胞を標的とすることで疾患を治療するために)。一実施態様において、本発明は、被験体に、本発明のABMを含む組成物を投与することを含む、CEAを発現する細胞を標的とするための方法に向けられている。CEAを発現する細胞また、診断目的のために標的とされ得る(例えば、それらがCEAを正常又は異常に発現しているかどうかを決定することなど)。従って、本発明はまた、CEAの存在又はCEAを発現する細胞を検出するための方法に向けられている。本発明によればCEAの発現を検出する一つの方法は、ABM及びCEAとの複合体の形成を可能にする条件下で、テストする試料を必要に応じてコントロール試料と、本発明のABMと、接触させることを含む。複合体形成は、その後(例えば、ELISA又は当技術分野で公知の他の方法により)検出される。試験試料とともにコントロール試料を用い、試験試料及びコントロール試料を比較する場合、ABM−CEA複合体の形成における任意の統計的な有意差は、被験試料中のCEAの存在を示している。
【0142】
一態様において、本発明のABM及び/又は変異体ABMは、CEAを発現する標的細胞をインビボ又はインビトロで使用することができる。CEAを発現する細胞は、診断又は治療目的のために標的することができる。一態様において、本発明のABMは、試料中のCEAの存在を検出するために使用することができる。CEAは同一細胞型の非腫瘍組織に比べて多くのヒト腫瘍で異常に発現される(例えば、過剰発現される)。従って、本発明のABM及び/又は変異体ABMは、腫瘍形成の予防、腫瘍の根絶及び腫瘍増殖又は転移の阻害に特に有用である。本発明のABM及び/又は変異体ABMはまた、細胞周期を停止し、標的細胞(例えば、腫瘍細胞)のアポトーシスを引き起こし、血管新生及び/又は標的細胞の分化を阻害することに作用する。本発明のABM及び/又は変異体ABMは、CEAを発現する任意の腫瘍を治療するために使用することができる。本発明のABM及び/又は変異体ABMで治療することができる特定の悪性腫瘍としては、限定されないが、結腸直腸癌、非小細胞肺癌、胃癌、膵臓癌及び乳癌を含む。
【0143】
本明細書に開示された抗CEA ABM及び/又は変異体ABMは、腫瘍増殖を阻害又は腫瘍細胞を殺すために単独で使用することができる。例えば、抗CEA ABMSは、癌細胞の細胞膜又は細胞表面上にあるCEAに結合することができ、癌細胞の、例えば、ADCC又は他のエフェクターが媒介する死滅を誘発する。抗CEA ABM及び/又は変異体ABMは、ヒト化することができ、具体的には、親和性及び/又は安定性が成熟し、より具体的には、糖鎖が操作され、安定性及び親和性が成熟され得る。
【0144】
ABM及び/又は変異体ABMは、代わりに、特に物理的に別の化合物の結合を妨害することにより、CEA抗原の活性をブロックするために単独で使用することができる。例えば、抗原結合分子及び変異体抗原結合分子は、CEAが介在する細胞接着をブロックするために使用することができる。
【0145】
本発明の抗CEA ABM及び/又は変異体ABMは、例えば以下に説明する薬学的に許容される剤形で、一定期間のボーラス投与として又は連続注入としてヒト静脈内に投与することができるものを含み、筋肉内、腹腔内、脳脊髄内、皮下、関節内、滑液嚢内、髄腔内、経口、局所、又は吸入経路により、哺乳動物、好ましくはヒトに投与される。ABMも局所的並びに、全身の治療効果を発揮するために、腫瘍内、腫瘍周囲、病巣内、又は病変部周囲の経路により適切に投与される。腹腔内経路は、例えば、大腸腫瘍の治療に特に有用であることが期待されている。
【0146】
病気の治療のために、ABM及び/又は変異体ABMの適切な用量は、治療する疾患の種類、疾患の重篤度及び経過、以前の治療、患者の病歴及び抗体に対する応答、及び主治医の裁量に依存する。ABMは、一回、又は一連の治療にわたって患者に適切に投与される。
【0147】
本発明は、CEAを発現する腫瘍細胞を選択的に死滅させるための方法を提供する。この方法は、本発明の抗原結合分子又は複合体(例えば、免疫毒素)を前記腫瘍細胞と反応させることを含む。これらの腫瘍細胞は、結腸直腸癌、非小細胞肺癌(NSCLC)、胃癌、膵臓癌、及び乳癌を含むヒト癌に由来し得る。
【0148】
一実施態様において、本発明は、腫瘍細胞のCEA介在細胞接着を阻害する方法提供する。この方法は、前記腫瘍細胞を本発明の抗原結合分子又は変異体抗原結合分子と、又はそのコンジュゲートと接触させることを含む。これらの腫瘍細胞は、結腸直腸癌細胞、非小細胞肺癌細胞(NSCLC)、胃癌細胞、膵臓癌細胞及び乳癌細胞を含むヒト細胞に由来しうる。
【0149】
さらに、本発明は、インビボで癌(例えば、ヒト癌)を治療する方法を提供する。この方法は、被験体に本発明の抗原結合分子又は免疫複合体(例えば、免疫毒素)の少なくとも1つを含有する組成物の薬学的有効量を投与することを包含する。
【0150】
更なる態様において、本発明は、限定されないが、結腸直腸癌細胞、NSCLC(非小細胞肺癌)、胃癌細胞、膵臓癌細胞及び乳癌細胞を含む、CEAの過剰発現によって特徴付けられた癌を、本明細書に開示された抗CEA抗原結合分子又はその変異体抗原結合分子の治療有効量を投与することにより、治療するための方法に向けられている。
【0151】
更なる実施態様において、本発明は、本明細書に開示された、抗CEA抗原結合分子又は変異体抗原結合分子を使用して、被検体に腫瘍組織の退縮を誘導するための方法に向けられている。非限定的な腫瘍組織の例としては、大腸腫瘍、非小細胞肺癌の腫瘍、胃腫瘍、膵腫瘍及び乳腺腫瘍が含まれる。特定の実施態様では、腫瘍組織は大腸腫瘍である。
【0152】
本発明の実施に応じて、被験体は、ヒト、ウマ、ブタ、ウシ、ネズミ、イヌ、ネコ、鳥の被験体であり得る。他の温血動物もまた本発明に含まれる。
【0153】
本発明はさらに、腫瘍細胞の増殖を阻害し、被験体の腫瘍を治療し、被検体の増殖型の疾患を治療するるための方法を提供する。これらの方法は、被検体に本発明の組成物の有効量を投与することを含む。
【0154】
別の態様において、本発明は、異常なCEAの発現に関連した疾患を治療するための医薬の製造のために、本明細書に開示される抗CEA抗原結合分子又は変異体抗原結合分子の使用に向けられている。特定の実施態様では、疾患は、限定されないが、大腸腫瘍、非小細胞肺腫瘍、胃腫瘍、膵腫瘍及び乳腺腫瘍を含む、CEAを過剰発現する癌である。特定の実施態様では、腫瘍は大腸腫瘍である。
【0155】
抗CEA抗原結合分子複合体
本発明はまた、一つ以上の細胞傷害性薬物、例えば、化学療法剤又は薬物、成長阻害剤、毒素(例えば、タンパク質毒素、細菌、真菌、植物、又は動物由来の酵素的に活性な毒素、又はその断片)又は放射性同位体などに結合した本明細書の抗CEA ABM又は変異体ABMを含む、免疫複合体を提供する。
【0156】
一実施態様において、免疫複合体は、抗体−薬物複合体(ADC)であり、そこでは、抗体が、限定されないが、マイタンシノイド(米国特許第5,208,020号、第5,416,064号、及び欧州特許第0 425 235 B1号を参照);モノメチルオーリスタチン薬物部分DE及びDF(MMAE及びMMAF)などのオーリスタチン(米国特許第5,635,483号及び第5,780,588号及び第7,498,298号を参照);ドラスタチン;カリケアマイシン又はその誘導体(米国特許第5,712,374号、第5,714,586号、第5,739,116号、第5,767,285号、第5,770,701号、第5,770,710号、第5,773,001号、及び第5,877,296号; Hinman et al., Cancer Res. 53:3336-3342 (1993); 及びLode et al., Cancer Res. 58:2925-2928 (1998));ダウノマイシン又はドキソルビシンなどのアントラサイクリン(Kratz et al., Current Med. Chem. 13:477-523 (2006); Jeffrey et al., Bioorganic & Med. Chem. Letters 16:358-362 (2006); Torgov et al., Bioconj. Chem. 16:717-721 (2005); Nagy et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:829-834 (2000); Dubowchik et al., Bioorg. & Med. Chem. Letters 12:1529-1532 (2002); King et al., J. Med. Chem. 45:4336-4343 (2002);及び米国特許第6,630,579号を参照);メトトレキサート;ビンデシン;ドセタキセル、パクリタキセル、ラロタキセル、テセタキセル(tesetaxel)、及びオルタタキセルなどのタキサン;及びCC1065を含む、一又は複数の薬物に結合している。
【0157】
別の実施態様において、免疫複合体は、限定されないが、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌から)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、α−サルシン、シナアブラギリタンパク質、ダイアンシンタンパク質、ヨウシュヤマゴボウタンパク質(PAPI、PAPII、およびPAP−S)、ニガウリ阻害剤、クルシン、クロチン、サボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシン、エノマイシン、及びトリコテセンを含む、酵素的に活性な毒素又はその断片に結合した、本明細書に記載の抗CEA ABM又は変異体ABMを含む。
【0158】
別の実施態様において、免疫複合体は、放射性原子に結合し、放射性複合体を形成する、本明細書に記載の抗CEA ABM又は変異体ABMを含む。様々な放射性同位体が、放射性複合体の生産用に利用可能である。例として、At
211,I
131,I
125,Y
90,Re
186,Re
188,Sm
153,Bi
212,P
32,Pb
212及びLuの放射性同位体が挙げられる。検出のために放射性複合体を使用するとき、それはシンチグラフィー試験のための放射性原子、例えばtc99m又はI123、又は核磁気共鳴(NMR)画像化(磁気共鳴画像化mriとしても知られている)のためのスピン標識、例えば再びヨウ素−123、ヨウ素−131、インジウム−111、フッ素−19、炭素−13、窒素−15、酸素−17、ガドリニウム、マンガン又は鉄を含んでよい。
【0159】
抗体と細胞傷害性薬物の複合体は、様々な二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル3−(2−ピリジルチオ)プロピオネート(SPDP)、スクシンイミジル4−(N−マレイミドメチル)シクロヘキサン−1−カルボキシレート(SMCC)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの2官能性誘導体(例えばジメチルアジピミデートHCl)、活性エステル(例えばジスクシンイミジルズベレート)、アルデヒド(例えばグルタルアルデヒド)、ビス−アジド化合物(例えばビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビスジアゾニウム誘導体(例えばビス(p−ジアゾニウムベンゾイル)エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えばトルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)など、を使って作成され得る。Vitetta et al., Science 238:1098 (1987)に記載されるように、例えば、リシンイムノトキシンを調製することができる。カーボン−14−標識1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、放射性ヌクレオチドの抗体へのコンジュゲーションのためのキレート剤の例である国際公開第94/11026号を参照。リンカーは、細胞中に細胞毒性薬物の放出を容易にする「切断可能なリンカー」であり得る。例えば、酸に不安定なリンカー、ペプチダーゼ過敏性リンカー、光解離性リンカー、ジメチルリンカー又はジスルフィド含有リンカー(Chari et al., Cancer Res. 52:127-131 (1992);米国特許第5,208,020号)が使用され得る。
【0160】
本明細書において、免疫複合体又はADCは、限定されないが、市販の(例えばPierce Biotechnology, Inc., Rockford, IL., U.S.Aからの)、BMPS、EMCS、GMBS、HBVS、LC−SMCC、MBS MPBH、SBAP、SIA、SIAB、SMCC、SMPB、SMPH、スルホ−EMCS、スルホ−GMBS、スルホ−KMUS、スルホ−MBS、スルホ−SIAB、スルホ−SMCC、及びスルホ−SMPB、SVSB(スクシンイミジル(4−ビニルスルホン)ベンゾエート)を含むクロスリンカー試薬を用いて調製される複合体を明確に考慮する。
【0161】
組成物、製剤、投与量、及び投与経路
一態様において、本発明は、本発明の抗CEA ABM又は変異体ABMを含む薬学的組成物及び薬学的に許容される担体に向けられている。本発明は更に、癌などの疾患の治療法、及び癌などの疾患の治療のための医薬の製造における、そうした薬学的組成物の使用に向けられている。具体的には、本発明は、疾患の治療のための方法、より具体的には、癌の治療のための方法に向けられており、該方法は本発明の薬学的組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0162】
一態様において、本発明は、薬学的組成物、組み合わせ、ヒト癌、例えば、結腸直腸癌を治療するための方法を包含する。例えば、本発明は、本発明の抗体の薬学的有効量、及び薬学的に許容される担体を含むヒト癌の治療に使用するための薬学的組成物を含む。
【0163】
本発明のABM組成物は、限定されないが、静脈内、腹腔内、経口、リンパ内を含む従来の投与形式、又は直接腫瘍への投与を用いて投与される。静脈内投与が好ましい。
【0164】
本発明の一態様において、本発明のABMを含む治療用製剤は、凍結乾燥製剤又は水溶液の形態で、任意の薬学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(RemingtonのPharmaceutical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed. (1980))と所望の純度を有する抗体を混合することにより、貯蔵のために調製される。許容される担体、賦形剤、又は安定剤は、用いる投与量及び濃度でレシピエントに非毒性である。
【0165】
インビボ投与に使用されるべき製剤は無菌でなければならない。これは滅菌濾過膜を通して濾過することによって容易に達成される。
【0166】
本発明の薬学的組成物の投与及び投薬レジメンの最も効果的な機序は、疾患の重症度及び経過、患者の健康及び治療への応答、及び治療にあたる医師の判断に依存する。従って、組成物の投与量は、個々の患者に対して滴定する必要がある。にも関わらず、この発明の組成物の有効用量は通常、約0.01mg/kgから約2000mg/kgの範囲になり得る。
【0167】
本明細書に記載の分子は、様々な剤形であり得、限定されないが、液体溶液又は懸濁液、錠剤、丸剤、散剤、坐剤、高分子マイクロカプセル又は微小胞、リポソーム、及び注射可能溶液又は注入可能溶液を含む。好ましい形態は、投与方法及び治療への適用に依存する。
【0168】
本発明のABMを含む組成物は、処方され、服用され、良好な医療行為の一貫した方法で投与される。この文脈において検討するための要因は、治療される特定の疾患又は障害、治療される特定の哺乳動物、個々の患者の病態、疾患又は障害の原因、薬剤の送達部位、投与方法、管理のスケジューリング、及び開業医に知られているその他の要因を含む。投与されるべきアンタゴニストの治療的有効量は、そうした考慮に左右される。
【0169】
製造品
本発明の他の実施態様において、上述した障害の治療、予防、及び/又は診断に有用な物質を含む製造品が提供される。製造品は、容器と容器上ないしは容器に付随するラベルないしはパッケージ挿入物を具備する。好適な容器は、例としてボトル、バイアル、シリンジ、IV輸液バッグ等を含む。容器はガラス又はプラスチックなどの様々な物質から形成されうる。容器は、疾患の治療、予防、及び/又は診断に有効である、それ自体か、又はその他の組成物と併用される化合物を収容し、無菌のアクセスポートを有し得る(例えば、容器は皮下注射針による穴あきストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであってよい)。組成物中の少なくとも一の活性剤は本発明の抗体である。ラベルまたはパッケージ挿入物は、組成物が特定の症状の治療のために使用されることを示している。更に、製造品は、(a)組成物が本発明の抗体を包含する組成物を含む第一の容器;および(b)組成物が更なる細胞障害性又はその他の治療的薬剤を包含する組成物を含む第2の容器を含み得る。本発明の本実施態様における製造品は、組成物が特定の疾患を治療することに用いることができることを示すパッケージ挿入物をさらに含んでいてもよい。別法として、または加えて、製造品は、薬学的に許容されるバッファー、例えば注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝化生理食塩水、リンガー溶液およびデキストロース溶液を含む第二(または第三)の容器をさらに含んでもよい。これは、他のバッファー、希釈剤、フィルター、針、およびシリンジを含む、商業的およびユーザーの立場から望まれる他の物質を更に含んでもよい。
【0170】
上記の製造品のいずれかは、抗CEA ABMの代わりか又はそれに加えて、本発明の免疫複合体を含み得ることが理解される。
【0171】
以下の例は、本発明をより詳細に説明する。以下の調製及び実施例は、当業者が本発明をより明確に理解し、実施することができるように与えられる。本発明は、しかしながら、例示の実施態様による範囲に限定されるものではなく、本発明の単一側面の実例として意図されており、及び機能的に同等な方法は、本発明の範囲内である。実際に、本明細書に記載されたものに加えて、本発明の様々な変更が前述の説明及び添付図面から当業者に明確になるであろう。そのような修飾は、添付の特許請求の範囲内に入ることが意図されている。
【実施例】
【0172】
特に指定されない限り、以下の実施例の特定のアミノ酸残基の位置の番号への参照は、Kabatの番号付けシステムに従っている。
実施例1
親和性成熟ライブラリの生成
H1/H2ライブラリー
HCDR1及びHCDR2領域における無作為化された親和性成熟ライブラリの生成のために、CDR1中の位置F32 G33、CDR2中の位置W50 N52 T52a K52b T54 E56 T58をコード化するトリプレットが無作為に選ばれた。最初の工程で、DNA断片(断片1)は、テンプレートとしてpMS22及び無作為化CDR1の位置を含むプライマーMS−43(配列番号123)とEAB−679(配列番号127)を用いて増幅された(
図11)。同じテンプレートを使用して、プライマーMS−56(配列番号126)及びMS−52(配列番号124)は、断片1の3’末端との重複領域を有する第二断片(断片2)を増幅した。増幅条件は、最初の5分間94℃でのインキュベーション工程が含まれ、その後、断片1及び断片2のそれぞれにおいて、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び20秒間及び50秒間の72℃伸長工程を含む各サイクルが25サイクル続いた。最後に、最終の10分間72℃のインキュベーション工程が実施された。両断片はアガロースゲル上で精製された。プライマーMS−43(配列番号123)とEAB−680(配列番号128)を使用して、断片1と2による重複伸長PCRは、CDR2の無作為化位置を含み、無作為化された両方のCDRを持つ断片を生成した(断片3)。断片1及び2のアセンブリに対して、断片1及び断片2の等モル量が使用された。増幅条件は、最初の5分間94℃のインキュベーション工程を含み、その後プライマー無しで、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び40秒間72℃の伸長工程の各サイクルが5サイクル続いた。外側のプライマーを添加した後、さらに20サイクルが同じパラメータを用いて実施された。断片3の3 '領域と重なった第4断片(断片4)が、テンプレートとして再びpMS22、及びプライマーMS−55(配列番号125)及びMS−52(配列番号124)を用いたPCR増幅された。ゲル精製した後、最終的なオーバーラップ伸長PCRは、テンプレートとして断片3及び4、及びプライマーMS−43及びMS−52を使用して、CL及びVHの一部分を含む断片を生成した。このために、断片3及び断片4の等モル量を用いた。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後プライマー無しで、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び80秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが5サイクル続いた。外側のプライマーを添加した後、更に20サイクルが同じパラメータを用いて実施された。得られた断片は次いでゲル精製及びNcoI/NheI消化後にpMS22と連結された。
【0173】
L1/L2ライブラリー
LCDR1及びLCDR2領域における無作為化された親和性成熟ライブラリの生成のために、CDR1中の位置Q27、N28、V29、G30 T31 N32、CDR2中の位置Y49 S50 Y53 R54 Y55 S56をコード化するトリプレットが無作為に選ばれた。最初の工程で、DNA断片(断片1)は、テンプレートとしてpMS22及び無作為化CDR1の位置を含むプライマーEAB−685(配列番号129)及びEAB−681(配列番号133)を用いて増幅された(
図12)。同じテンプレートを使用して、プライマーEAB−686(配列番号130)及びEAB−687(配列番号131)は、断片1の3’末端との重複領域を有する第二断片(断片2)を増幅した。増幅条件は、最初の5分間94℃でのインキュベーション工程が含まれ、その後、断片1及び断片2のそれぞれにおいて、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び60秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが25サイクル続いた。最後に、最終の10分間72℃のインキュベーション工程が実施された。両断片はアガロースゲル上で精製された。プライマーEAB−685(配列番号129)及びEAB−682(配列番号134)を使用して、断片1と2による重複伸長PCRは、CDR2の無作為化位置を含み、無作為化された両方のCDRを持つ断片を生成した(断片3)。断片1及び2のアセンブリに対して、断片1及び断片2の等モル量が使用された。増幅条件は、最初の5分間94℃のインキュベーション工程を含み、その後プライマー無しで、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び60秒間72℃の伸長工程の各サイクルが5サイクル続いた。外側のプライマーを添加した後、さらに20サイクルが同じパラメータを用いて実施された。断片3の3 '領域と重なった第4断片(断片4)が、テンプレートとして再びpMS22、及びプライマーEAB−688(配列番号132)及びEAB−687(配列番号131)を用いたPCR増幅された。ゲル精製した後、最終的なオーバーラップ伸長PCRは、テンプレートとして断片3及び4、及びプライマーEAB−685(配列番号129)及びEAB−687(配列番号131)を使用して、VL及びCHの一部分を含む断片を生成した。このために、断片3及び断片4の等モル量を用いた。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後プライマー無しで、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び80秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが5サイクル続いた。外側のプライマーを添加した後、更に20サイクルが同じパラメータを用いて実施された。得られた断片は次いでゲル精製及びHindIII/SacI消化後にpMS22と連結された。
【0174】
H3ライブラリー
HCDR3領域内の無作為化された親和性成熟ライブラリーを生成するために、位置W95、D96、F97、Y98、D99、Y100、V100a、E100b、A100c、及びM100dをコードするトリプレットは、2つの異なるアプローチに無作為化された。:(1)セグメント全体(H3完全ライブラリー)の無作為化、又は(2)各位置の個々の無作為化は10個のサブライブラリ−を与えた。個別に無作為化された位置を持つクローンを含むサブライブラリ−は、細菌(H3プールライブラリ−)への形質転換の後にプールされた。HCDR3領域の無作為化のために、断片は、CLの3’末端でアニールされたプライマー及びHCDR3の無作為化配列(
図13)を含むプライマーを用いてPCR増幅された。次いで重複伸長PCRが、断片1の3’末端と重なり、VHの終端及びCH1の5’領域を含む第二の断片を用いて行われた。集合断片はSacI/NheI消化後pMS22へ連結された。H3プールライブラリを生成するために、10個のDNA断片は、プライマーEAB−749(配列番号146)と組み合わせてプライマーAC7−AC16(配列番号135;配列番号144)の各々を用いて別個にPCR増幅された。L3完全ライブラリを生成するために、プライマーAC17(配列番号145)及びEAB−749(配列番号146)が使用された。プラスミドpMS22が、テンプレートとして使用された。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び36秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが25サイクル続き、その後最終の10分間72℃のインキュベーション工程が続いた。これによりアガロースゲル上で精製した約580bp長の断片を得た。重複伸長PCRのために、第二の断片はEAB−752(配列番号149)と組み合わせて、EAB−750(配列番号147)又はEAB−751(配列番号148)の何れかのプライマーを用いて増幅された。プライマーEAB−750(配列番号147)は、無作為化プライマーAC7−11(配列番号139)と重複配列を有し、一方EAB−751(配列番号148)は無作為化プライマーAC12−17(配列番号140−145)と配列相同性を共有していた。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び12秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが25サイクル続き、その後最終の10分間72℃のインキュベーション工程が続いた。得られた断片はおよそ180bp長であった。両方の断片の集合に対して、断片1及びそれに対応する断片2の等モル量が使用された。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び60秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが5サイクル続いた。外側のプライマーEAB−749(配列番号146)及びEAB−752(配列番号149)を添加した後、更に20サイクルが同じパラメータを用いて実施された。最後に、最後の10分間72℃でのインキュベーション工程が実施された。ゲル精製断片は次いでSacI/NheI消化後にpMS22へ連結され、精製されたライゲーションが電気穿孔法によりTG1細菌に形質転換された。
【0175】
L3ライブラリー
軽鎖のCDR3領域内の無作為化された親和性成熟ライブラリーを生成するために、位置Y91、Y92、T93、Y94、及びL95aをコードするトリプレットは、セグメント全体(L3完全ライブラリー)又は各々の何れかで無作為化され、5個のサブライブラリ−を得た。個別に無作為化された位置を持つクローンを含むサブライブラリ−は、細菌(L3プールライブラリ−)への形質転換の後にプールされた。5個のサブライブラリ−の生成のために、5個のDNA断片が、プライマーMS43(配列番号123)との組み合わせでプライマーAC1−AC5(配列番号150−154)のそれぞれを用いてPCR増幅された。L3完全ライブラリ−を生成するために、AC6(配列番号155)及びMS43(配列番号123)のプライマーの組み合わせが使用された(
図14)。プラスミドpMS22が、テンプレートとして使用された。増幅条件は最初の5分間94℃インキュベーション工程を含み、その後、1分間94℃の変性、1分間55℃のアニーリング、及び25秒間72℃の伸長工程を含む各サイクルが25サイクル続き、その後最終の10分間72℃のインキュベーション工程が続いた。VLドメインの位置1から104までを包含する得られた断片はアガロースゲル上で精製され、追加のPCR増幅のテンプレートとして使用された。全ての反応は上記と同じ条件を用いて無作為化プライマー及びMS43(配列番号123)との重複配列を有するプライマーEAB−746(配列番号156)で実施された。精製断片並びにpMS22はNcoI/XhoIで消化された。全5個のサブライブラリについて、0.5μgの挿入は、0.5μgのpAC16と連結された。L3完全ライブラリ−について、ライゲーションは9.8μgの挿入及び9.8μgのpMS22により実施された。精製されたライゲーションは電気穿孔法によってTG1細菌に形質転換された。
【0176】
抗原の産生
マウス及びヒト化PR1A3抗体の両方が膜結合CEAのみを認識するが、離脱した可溶性ヒトCEAを与えないので、PR1A3のエピトープを含む組換えキメラタンパク質はヒト化PR1A3のインビトロ親和性成熟のために生成された(配列番号7及び8)。このハイブリッドタンパク質の生成はSteward ら(1999)に記載の通り行われた。簡潔には、ヒトの胆汁糖タンパク質(BGP)のBドメインのDNA配列が、PR1A3のエピトープを含むヒトCEA−B3ドメインの配列に置き換えられた。その結果、配列は、BGPのN及びA1ドメイン、CEAのB3ドメイン及びBGPのA2ドメインを含むハイブリッドタンパク質をコードしている(N−A1−B3−A2、huNABA)。この融合産物は、次いでヒトIgG1のFc部分にリンクされるか(huNABA−Fc) (Stewardら、Cancer Immunol Immunother, 47:299-306, 1999)、又は正確なプロテアーゼ切断部位、aviタグ及び(His)6タグをコードする配列に融合するか(huNABA−avi−his) (配列番号158)の何れかであった。huNABA−Fcは、プロテインAカラムを用いて安定的にトランスフェクトしたCHO細胞株の培養上清から精製された。huNABA−avi−his(配列番号158)は、安定してEBV由来タンパク質EBNAを発現するHEK293細胞に一時的にトランスフェクトした。同時にビオチンリガーゼをコードする同時形質移入されたプラスミドは、インビトロでaviタグ固有のビオチン化を可能とした。タンパク質は、その後、固定化金属アフィニティークロマトグラフィー(IMAC)、続いてゲル濾過により精製された。
【0177】
ヒト化PR1A3の親和性成熟
親和性成熟ヒト化PR1A3 Fabの生成は、標準プロトコルを使用して、ファージディスプレイによって行われた (Silacci ら、Proteomics, 5(9):2340-2350, 2005)。親和性成熟ライブラリーによる選択は以下の手順に従って溶液中で実施された:[1].各親和性成熟ライブラリーのおよそ1012ファージミド粒子を100nMのビオチン化huNABA−avi−hisに1ミリリットルの総体積で0.5時間結合させ、[2].ビオチン化huNABA−avi−his及び特異的に結合したファージ粒子を、5.4×10
7のストレプトアビジン被覆磁気ビーズの3分間の添加により、捕獲し、[3].ビーズを5−10×1mlPBS/Tween20及び5−10×1mlPBSを用いて洗浄し、[4].1mlの100mMのTEA(トリエチルアミン)を10分間の添加によりファージ粒子を溶出し、及び500ulの1Mトリス/HCl pH7.4を加えることによる中和し、及び、[5].指数関数的に増殖する大腸菌TG1細菌を再感染させ、ヘルパーファージVCSM13により感染させ、続いて、その後の選択のラウンドで使用されるファージミド粒子をPEG/NaCl沈殿させる。選択は一定又は減少する抗原濃度(10
−7Mから2x10
−9M)のいずれかを使用して、3から5回のラウンドで行われた。ラウンド2において、抗原:ファージ複合体の捕捉が、ストレプトアビジンビーズの代わりにニュートラアビジンプレートを用いて行われた。特異的バインダーは、次のようにELISAにより同定した:ウエルあたり10nMのビオチン化huNABA−avi−hisの100μlはニュートラビジンプレート上に被覆された。Fabを含む細菌の上清が添加され、結合したFabは抗フラグ/HRP二次抗体を使用して、フラグ-タグを介して検出された。ELISA陽性クローンを96穴フォーマットに可溶性Fab断片として細菌に発現させ、BIACORE T100を使用して、SPR分析により、上清は動力学的スクリーニング実験にかけられた。最も高い親和性定数を持つFabを発現するクローンを同定し、対応するファージミドが配列決定された。
【0178】
Fabの精製及び動力学的パラメーターの測定
動力学パラメータの正確な分析のために、Fabを細菌培養から精製した。500mlの培養は播種され、OD600が0.9にて1mMのIPTGで誘導した。細菌は25℃で一晩インキュベートし、遠心分離によって回収した。再懸濁したペレットを25mlのPPB緩衝液(30mMトリス−HCl PH8、1mMのEDTA、20%ショ糖)で20分間のインキュベーションした後、細菌は再び遠心分離し、上清を回収した。このインキュベーション工程は、5mMのMgSO
4溶液25mlで一回繰り返した。両方のインキュベーション工程の上清をプールし、ろ過し、IMACカラム(His gravitrap、GE Healthcare)にロードされた。その後、カラムを40体積で洗浄した。溶出した後に(500mMのNaCl、500mMのImidazole、20mMのNaH
2PO
4 、pH7.4) 、溶出液はPD10カラム(GE Healthcare)を使用して再バッファリングされた。精製されたFabの速度論的パラメータは、200nmから6.25nMの範囲にあった希釈列にてSPR分析により調べられた。
【0179】
実施例2
PR1A3抗体は、ヒトIgG1/kappa定常領域を持たせるようにキメラ化され、及びFcにおいて高度にフコシル化された糖を持たせるためにGylcoMab技術を用いて発現された。糖鎖を操作された抗体及び糖鎖は操作されてない抗体は、エフェクターとターゲットの比率が25:1で比較された。抗体依存性標的細胞死滅の最大量は、Fc領域の糖鎖操作により倍増した(
図2)。細胞死滅の更なる増加はエフェクターとターゲットの比を増加させることにより達成された(
図2)。
【0180】
PR1A3は、ヒト生殖細胞配列と同一のフレームワークを使用してヒト化された。IMGT配列IGHV7−4−1*02(受入番号X62110)は、ヒト化VHに対するアクセプターであり、IMGT_hVK_1_39(受入番号X59315)はヒト化VLに対するアクセプターであった。重鎖可変領域コンストラクトCH7Aを含むヒト化PR1A3抗体、及び軽鎖可変領域CL7Aは、フローサイトメトリーによって測定され、ヒト結腸癌細胞への十分な結合を示した(
図3)。
【0181】
ファージディスプレイによるPR1A3の親和性成熟は、本明細書に、実施例1で詳細に説明されるように標準プロトコルを用いて行われた。親和性成熟のために使用された親ヒトPR1A3抗体は、重鎖可変領域コンストラクトCH7A、及び軽鎖可変領域コンストラクトCL1Aを含む。以下の表3−6は、親和性成熟のために使用されるライブラリを示している。L1/L2ライブラリについては、CDR内に位するバリン29、アラニン50、又はセリン51は一定に保たれた。H1/H2ライブラリについては、CDR内に位置するイソロイシン51、グリシン55、又はアラニン57は一定に保たれた(
図4及び
図5)。
【0182】
親和性成熟重鎖可変領域コンストラクトCH7A rF9、及び親和性成熟軽鎖可変領域コンストラクトCL1A rH11は、お互いにそれぞれ親の軽鎖可変領域コンストラクト及び重鎖可変領域の構造とペアをなした。すべての抗体は、ヒトIgG1/kappaに変換され、CEA陽性細胞株MKN45への結合は、フローサイトメトリーで測定された。親和性成熟した重鎖又は軽鎖可変領域の何れか一つ、又は親和性成熟した重鎖又は軽鎖可変領域の両方を含む抗体は、ヒト化親抗体と比べて改善された結合特性を示した(
図6)。
図6、
図10及び
図15は、成熟軽鎖及び重鎖が独立して親和性増加に寄与するいくつかの例を示している。親抗体CH7A CL1Aは、
図6と
図15において最低シグナル強度、並びに最高のEC50値を有する。成熟軽鎖は、EC50値を低い数字にシフトさせ、成熟した重鎖(
図6のrF9、及び
図15のrB9)はフローサイトメトリー測定における総蛍光シグナル強度をシフトさせる。
図10は、ビアコア方法で測定した重鎖及び軽鎖の個々の寄与を示す。これら2つの鎖の組み合わせは、さらに親和性を向上させる。更に、
図16に示すように、親和性の改善はADCCの特徴の改善へと導く。
【0183】
親和性成熟重鎖及び軽鎖のCDRの結合親和性はビアコアによって決定され、
図34AとBにリストされた。
【0184】
図35は、様々な親和性成熟抗体配列の親和性定数をまとめている。親抗体PR1A3は、成熟、及び非成熟配列のいくつかの軽鎖及び重鎖の組合わせとともに、記載されている。全ての値は、ビアコア技術により、抗原として固定化NABA−avi−his試薬(配列番号158)により、ビアコアチップ上のFab形態での様々な可溶性抗体コンストラクトの会合速度定数(k
on)及び解離速度定数(k
off)を測定することにより、得られた。親和性定数はKDのラベルが付される。
【0185】
実施例3
実施例2に記載の親和性成熟型抗CEA抗体の生産に使用されるアクセプターフレームワークは、ヒトVH7クラスのものであった。安定性を増加させるために、より安定なフレームワーク配列が、抗体の安定性操作のための基礎として使用された。マウス抗体PR1A3の配列相同性、及びVH1由来配列は、VH7、又はヒトVH族の偶数よりもより高い内因性安定性を有するはずであるという仮説に基づいて、配列IGHV−1−18; 受託番号M99641が新しいアクセプターフレームワークとして使用された(Ewert, S., Huber, T., Honegger, A. and Pluckthun, A. (2003) J. Mol.Biol., 325, 531-553)。PR1A3抗体の通常のCDRループ移植がCH1A(配列番号279)の構築につながる。残念なことに、この分子はCEA抗原に対する有意な結合活性を示さなかった。この構築物の結合活性は、様々な濃度で、マウス由来の可変ドメインを保有するキメラ抗体PR1A3の結合活性に対して比較した。BxPC3細胞が、CEAに対する抗体の特異的結合のために使用され、結合強度はFACS解析により測定された(
図17)。
【0186】
結合親和性を回復するために、複数の逆変異がCH1A配列中に導入され、新しい重鎖CH1A1(配列番号257)、CH1A2(配列番号258)、CH1A3(配列番号259)、及びCH1A4(配列番号260)を生成した。CH1A1は、M69F/T71Lの二重点変異を含む。後者の3つの変異体は、マウスの対応物により置換された、フレームワーク1、2、又は3の全体をそれぞれ有する。
図18は、2F1軽鎖(配列番号209)と対合したときのそれらの構築物の結合を示す。このアッセイにおいて、CH1Aに基づく抗体変異体の、CEA発現MKN−45細胞に対する細胞結合が、様々な濃度で解析された。親和性成熟型軽鎖F21は、元の軽鎖CL1Aが使用される親抗体を除いて、試験された全抗体において同一であった。平均蛍光は、FACS解析により決定した。
図19は、試料の動的光散乱(DLS)により測定される、2F1軽鎖と都合したときのそれらの構築物の安定性を示す。DLSアッセイは、20mMのヒスチジンと140mMのNaCl、pH6.0の緩衝液中で、1mg/mlの抗体を用いて実施された。DLSアッセイは、25℃で開始し、0.05℃/分の増分温度上昇を伴い、上限70℃まで行われた。このアッセイで試験された全抗体は、軽鎖として2F1を有していた。
【0187】
CH1A1はなお元の安定性を保し、いくらか有意な(しかし、最高親和性であるが最低の安定性である、CH1A4よりも若干弱い)結合を示すので、この構築物が、結合の更なる最適化に選択された。新しい重鎖CH1A1A(配列番号261)、CH1A1B(配列番号262)、CH1A1C(配列番号263)、CH1A1D(配列番号264)、CH1A1E(配列番号265)、CH1A1F(配列番号266)、及びCH1A1G(配列番号267)が生成された。FR1及びFR3領域にほんのわずかな逆変異を持つCH1A1の本質的な変異体がある。
図20及び21は、それらの親和性は、VH7に基づくヒト化構築物CH7Aに依然としてやや劣るとはいえ全て同等であることを示している。
図20は、CEA抗原を保有するキメラタンパク質NABAに対する、CH1A1に基づくフレームワーク変異体の結合に関して得られたProteon(ビアコア)センサーグラムを示す。ビオチン化NABAは、ニュートラビジンコーティングされたチップ上に固定化し、抗体は、100、50、25、12.5、6.25、および0nMにおける濃度で分析物として使用した。前駆体クローンCH1A1と親抗体CH7Aは、直接的な比較のために含まれた。軽鎖2F1は、試験した全ての抗体において同一であった。
図21は、追加のフレームワーク変異を運ぶ7つのCH1A1に基づく変異体の結合強度を示す。抗体は、濃度系列のCEA発現MKN45細胞でインキュベートされ、結合強度は、FACS分析によって測定した。前駆体クローンCH1A1が、直接比較のために含まれた。このアッセイで試験した全ての抗体は、軽鎖として2F1を持っていた。変異体のCH1A1AとCH1A1Bは、その比較的良好な精製収率と単量体での挙動に基づいて、VH1に基づくヒト化の最終変異体として選ばれた。
【0188】
実施例4
親和性成熟の過程で選択されたCDR−H3の残基が、抗体の安定性の増加を試験するためにPR1A3配列に個別に導入された(
図36)。
【0189】
図22は、CEA抗原(Stewart et al. Cancer Immunol Immunother (1999) 47:299-306により記述されるNABA試薬)に対する各抗体の(二価の形態で測定される)親和性の表面プラズモン共鳴(SPR)を示す。
図22に示されるのは、CEA抗原を保有するキメラタンパク質NABAに対する、CDR−H3抗体変異体の結合に関して得られたProteon(ビアコア)センサーグラムを示す。ビオチン化NABAは、ニュートラビジンコーティングされたチップ上に固定化し、抗体は、100、50、25、12.5、6.25、および0nMにおける濃度で分析物として使用した。親和性成熟型前駆体クローン5HFF12と親抗体CH7Aは、直接的な比較のために含まれた。このアッセイで試験された全ての抗体は、軽鎖として2F1を有していた。変異体CH7A(W95Y)は、このアッセイでは測定可能な活性を示さず、他のすべての変異体は、互いの10倍以内を対象とする親和性を示す。二価の形態で測定されたそれぞれの相対的親和性は、次のとおりである:5HFF12>CH7A(Y98A/D99Y)>CH7A(Y98A)>CH7A>CH7A(E102Q)>CH7A(D99Y)>CH7A(D99H)>CH7A(A103T)>CH7A(V101F)>CH7A(W95Y)。
【0190】
DLS解析が、前駆体5HFF12と重鎖CH7Aを保有する親抗体とを比較して、抗体において行われた。軽鎖2F1は、この実験において試験した全ての抗体において同一であった。
図23及び24。この分析の結果は、安定性における次のランク付けを提供した:CH7A(D99Y)>CH7A(Y98A/D99Y)>CH7A(V101F)>CH7A(D99H)>CH7A(A103T)>CH7A(W95Y)>CH7Ax2F1(=PR1A3)>5HFF12.DLSアッセイは、20mMのヒスチジンと140mMのNaCl、pH6.0の緩衝液中で、1mg/mlの抗体を用いて実施された。DLSアッセイは、25℃で開始し、0.05℃/分の増分温度上昇を伴い、上限70℃まで行われた。
【0191】
二重変異(Y98A/D99Y)(配列番号223)が、CEA標的に対する高い親和性を保持しつつ高い安定性を示したので、更なる安定性のために選択された。
【0192】
実施例5
ヒト化PR1A3誘導体CH7Aの二重変異t(Y98A/D99Y)が、VH1の基づくヒト化−構築物のCH1A1A及びCH1A1Bの最終変異体に導入された。
【0193】
Proteon(ビアコア)センサーグラムが、CEA抗原を保有するキメラタンパク質NABAに対する、フレームワークとCDR−H3の変異体の組み合わせの結合に関して得られた。ビオチン化NABAは、ニュートラビジンコーティングされたチップ上に固定化し、抗体は、100、50、25、12.5、6.25、および0nMにおける濃度で分析物として使用した。前駆体クローン5L1A10と親抗体CH7Aは、直接的な比較のために含まれた。このアッセイで試験された全抗体は、軽鎖として2F1を有していた(
図25)。
【0194】
実施例6
CH1A1A構築物及びCH1A1B構築物はADCC活性を示した。CH1A1A及びCH1A1B変異体、それらの前駆体変異体CH1A1、及び親CH7A変異体により媒介されるADCCが、4時間後に、MKN45細胞を標的細胞(T)として、ヒトPBMCをエフェクター細胞(E)として、E:Tの比を25:1で使用して、乳酸脱水素酵素の放出によって測定された。乳酸脱水素酵素の放出は、標的細胞の溶解に比例し、パーセント細胞毒性として示される。
図26これらの変異体のADCCは、MKN45細胞を標的細胞(T)として、ヒトPBMCをエフェクター細胞(E)として、E:Tの比を25:1で使用して、カルセインの放出によって測定されて確かめられた。カルセイン放出は、標的細胞の溶解に比例し、パーセント細胞毒性として、平均値±標準偏差値により示される(
図27)。
【0195】
ADCC活性はまた、二重突然変異Y98A/D99Yを持つ親和性成熟型CDRH3を含有するCH1A1A構築物及びCH1A1B構築物に対して観察された。
【0196】
フレームワークとCDR−H3の変異体の組み合わせ、及びCH7Aを保有する親抗体により媒介されるADCCが、24時間後に、MKN45細胞(
図28)又はLS174T(
図29)を標的細胞として、及びヒトPBMCをエフェクター細胞として、E:Tの比を5:1で使用して、乳酸脱水素酵素の放出によって測定された。MKN45細胞はCEAを高レベルで発現するが、一方、CEAの発現はLS174T細胞では中程度である。乳酸脱水素酵素の放出は、標的細胞の溶解に比例し、パーセント細胞毒性として示される。これらのADCCアッセイで試験された全抗体は、軽鎖として2F1を有していた。
【0197】
図38は、様々な安定性が成熟した抗CEA抗体のVH領域のアミノ酸配列アラインメントを示す。
【0198】
実施例7
CH1A1A(98/99)の重鎖と2F1軽鎖を含む抗CEA抗体の糖鎖を操作した型は、ヒトCD16の遺伝子導入SCIDマウスにおける結腸直腸癌の異種移植モデルで、有効性について試験した。モデルのアッセイ条件を以下に記載する。アッセイの結果は、この抗CEA抗体は、ビヒクルコントロールに比べて、延命効果を提供することを示している(
図30)。
【0199】
動物:CD16SCIDトランスジェニック雌マウス;実験開始時に7〜9週齢(Charles River France)が、関連するガイドラインに従って、12時間明るく/12時間暗い毎日のサイクルを伴い、特定の病原体を含まない条件下で維持された(GV−Solas;Felasa;TierschG)。実験的研究プロトコルは地元政府当局によって審査され、承認された。到着後、動物を、順化及び観察のため、一週間維持した。継続的な健康状態の監視は、定期的に実施した。
【0200】
細胞培養と応用:LS174T細胞(ヒト結腸直腸癌細胞;European Collection of Cell Culture)が、10%FCSを含有するDMEM培地で培養された(PAA Laboratories,Austria)。細胞は、5%CO2で水飽和大気中で37℃で培養した。インビトロでの継代24が、97%の生存率で脾臓内注入用に用いられた。
【0201】
腫瘍細胞注入:注入の日に、LS174T腫瘍細胞が、トリプシンEDTA(Gibco,Switzerland)を用いて、培養フラスコ(Greiner Bio−One)から回収され、50mlの培養培地中へ移され、1回洗浄し、AIM V(Gibco,Switzerland)に再懸濁した。小切開が、麻酔されたSCID/ベージュマウスの左腹腔部位で行われた。皮膚と筋肉が開かれ、細胞懸濁液の30マイクロリットル(AimV培地中に3x10
6 LS174T細胞)を、脾臓の頂部に注入した。最初に筋肉その後腹部皮膚を、吸収性縫合糸(Monosyn(登録商標)3−0,Braun)で縫合した。
【0202】
処置:全抗CEA抗体と対応するビヒクルが、毎週1回静脈内注射した。全部で3回の投薬。625ugの抗体が、マウスあたり1回の注射で投与された。抗体希釈液を、使用前に在庫から新たに調製し、20mMのヒスチジン、140mMのNaCl、pH6.0に、4.38mg/mlの抗体濃度で処方された。
【0203】
実施例8
CH1A1A(Y98A/D99Y)の重鎖と2F1軽鎖を含む抗CEA抗体の糖鎖を操作した型は、ヒトCD16の遺伝子導入SCIDマウスにおけるA549肺癌の異種移植モデルで、有効性について試験した。モデルのアッセイ条件を以下に記載する。アッセイの結果は、この抗CEA抗体は、ビヒクルコントロールに比べて、用量依存性の延命効果を提供することを示している(
図31)。
【0204】
動物:35匹のCD16SCIDトランスジェニック雌マウス;実験開始時に7〜9週齢(Charles River France)が、関連するガイドラインに従って、12時間明るく/12時間暗い毎日のサイクルを伴い、特定の病原体を含まない条件下で維持された(GV−Solas;Felasa;TierschG)。実験的研究プロトコルは地元政府当局によって審査され、承認された。到着後、動物を、順化及び観察のため、一週間維持した。継続的な健康状態の監視は、定期的に実施した。
【0205】
細胞培養と応用:A549細胞(ヒトNSCLC細胞;American Tissue Culture collection)が、10%FCSを含有するDMEM培地で培養された(PAA Laboratories,Austria)。細胞は、5%CO2で水飽和大気中で37℃で培養した。
【0206】
処置:研究の第0日目に、マウスに、1x10
6A549細胞を静脈内注射した。抗体は研究の第7日目に開始され、更なる2回の毎週の注射を続けた。
【0207】
処置群:
マウス 35匹のSCID−CD16Tgマウス,群あたりN=7。
細胞− A549細胞 5 Mio/マウス
化合物と治療スケジュール
ビヒクル 3q7d
CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1(500ug)3q7d(25mg/kg)
CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1(200ug)3q7d(10mg/kg)
CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1(100ug)3q7d(5mg/kg)
CH1A1A(Y98A/D99Y)x2F1(50ug)3q7d(1mg/kg)
【0208】
前述の発明は、理解を明確にするために説明と実施例によって少し詳細に説明してきたが記述及び実施例は、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。本明細書に引用される全ての特許及び科学文献の開示は、参照することによりその全体が援用される。