(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
投入口から投入された硬貨を硬貨収納部に搬送する搬送ベルトと、前記搬送ベルトにより前記硬貨収納部に搬送される前記硬貨を検出するセンサと、前記搬送ベルトに設けられ、前記センサの周囲に滞留する異物を除去するブラシとを備えた自動釣銭機のクリーニング方法であって、
前記硬貨を搬送していないときに前記センサの出力を測定する第1の処理と、
前記第1の処理で測定した前記センサの出力と当該センサにおける出力の初期値との比を算出する第2の処理と、
前記第2の処理で算出した出力の比があらかじめ定めた値を下回った場合に、前記搬送ベルトを動作させ、前記ブラシを用いて前記異物を除去する第3の処理と、
を有することを特徴とする自動釣銭機のクリーニング方法。
前記搬送ベルトを1周させる間に複数の前記センサに対して前記クリーニング処理が実施される場合には、当該複数のセンサに対して実施予約された処理のうち最も周回数の多い処理を1度だけ行う
ことを特徴とする請求項10に記載の自動釣銭機のクリーニング方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1にかかる自動釣銭機の内部構成を示す平面図である。
図2は、
図1に示した自動釣銭機における主要部分の拡大図である。
【0015】
本実施形態の自動釣銭機は、投入口から投入された硬貨を金種別に硬貨収納部に収納する硬貨収納処理と、硬貨収納部に収納された硬貨を釣銭として硬貨払出部に払い出す釣銭払出処理とを自動的に行う装置である。この自動釣銭機1は、
図1に示すように、硬貨受入部100、硬貨収納部101〜106、硬貨払出部107、収納側搬送ベルト110〜116、払出側搬送ベルト117〜123、リジェクトベルト124、鑑別センサ130、発光素子131,134、及び受光素子132,133,135,136を備える。
【0016】
また、本実施形態の自動釣銭機1は、
図2に示すように、収納側搬送ベルト110に設けられたブラシ110bを備える。このブラシ110bの役割を明らかにするため、先に自動釣銭機1の硬貨搬送処理及び釣銭払出処理に関する基本構成と、硬貨搬送処理及び釣銭払出処理とを説明する。
【0017】
(硬貨搬送処理及び釣銭払出処理に関する基本構成)
硬貨受入部100は、図示しない投入口から投入された硬貨を受ける容器状の部分である。硬貨収納部101〜106は、硬貨を収納する容器であり、金種毎に別個に設けてある。硬貨払出部107は、硬貨収納部101〜106から釣銭として払い出された硬貨を受ける容器である。以下、硬貨収納部101〜106を区別する場合には、それぞれ、第1の硬貨収納部101、第2の硬貨収納部102、第3の硬貨収納部103、第4の硬貨収納部104、第5の硬貨収納部105、第6の硬貨収納部106と呼ぶ。
【0018】
収納側搬送ベルト110〜116は、硬貨受入部100に投入された硬貨を硬貨収納部101〜106に搬送する輪状のベルトであり、図示しないローラにより動作する。この収納側搬送ベルト110〜116は動作を個別に制御可能であり、これらを連携させることで硬貨を硬貨収納部101〜106のうちの所定の硬貨収納部(たとえば第1の硬貨収納部101)に搬送する。以下、収納側搬送ベルト110〜116を区別する場合には、それぞれ、第1の搬送ベルト110、第2の搬送ベルト111、第3の搬送ベルト112、第4の搬送ベルト113、第5の搬送ベルト114、第6の搬送ベルト115、第7の搬送ベルト116と呼ぶ。
【0019】
第1の搬送ベルト110から第2の搬送ベルト111に分岐する位置には、1個の発光素子131及び2個の受光素子132,133からなる通過センサが設置されている。同様に、第1の搬送ベルト110から第3の搬送ベルト112に分岐する位置、第1の搬送ベルト110から第4の搬送ベルト113に分岐する位置、第1の搬送ベルト110から第5の搬送ベルト114に分岐する位置、第1の搬送ベルト110から第6の搬送ベルト115に分岐する位置、第1の搬送ベルト110から第7の搬送ベルト116に分岐する位置にも、それぞれ1個の発光素子131及び2個の受光素子132,133からなる通過センサが設置されている。この発光素子131及び受光素子132,133の配置について、第1の搬送ベルト110から第3の搬送ベルト112に分岐する位置に設置されたものを例に挙げ、
図2を参照しながら説明する。
【0020】
発光素子131及び受光素子132,133からなる通過センサは、収納側搬送ベルト110〜116に沿って設けたガイド部材に設置されている。ガイド部材は、硬貨2が収納側搬送ベルトから脱落するのを防ぐ部材である。たとえば、
図2に示すように、第1の搬送ベルト110の右方には、第1の搬送ベルト110の硬貨搬送方向に沿って延在するガイド部材140を設けている。また、第2の搬送ベルト111と第3の搬送ベルト112との間にはガイド部材141を、第3の搬送ベルト112と第4の搬送ベルト113との間にはガイド部材142を、それぞれ設けている。なお、第1の搬送ベルト110の硬貨搬送方向は、硬貨2を硬貨受入部100から硬貨収納部101〜106に向けて搬送する方向であり、
図2においては上方向である。
【0021】
ガイド部材141は、第1のガイド面141a、第2のガイド面141b、及び第3のガイド面141cを有する。第1のガイド面141aは、第1の搬送ベルト110側を向いた面である。第2のガイド面141bは、第3の搬送ベルト112側を向いた面である。第3のガイド面141cは、第2の搬送ベルト111側を向いた面である。同様に、ガイド部材142は、第1のガイド面142a、第2のガイド面142b、及び第3のガイド面142cを有する。第1のガイド面142aは、第1の搬送ベルト110側を向いた面である。第2のガイド面142bは、第4の搬送ベルト113側を向いた面である。第3のガイド面142cは、第3の搬送ベルト112側を向いた面である。
【0022】
発光素子131は、発光ダイオードのような光を放射状に発する素子であり、ガイド部材141における第1のガイド面141aと第2のガイド面141bとが接する角部に設置されている。ガイド部材141の第1のガイド面141aには、発光素子131が発した光の一部が第1の搬送ベルト110の右方(対岸側)に設置された受光素子132に向かうよう開口部141dを設けてある。受光素子132は、フォトダイオードであり、ガイド部材140に設置されている。ガイド部材140は、第1の搬送ベルト110側を向いたガイド面140aのうちの発光素子131が発した光の光路P1と対応する位置に開口部140bを設けてある。受光素子132は、開口部140bを通った光を受光する向きでガイド部材140に設置されており、受光量に応じた電圧を出力する。
【0023】
また、ガイド部材141の第2のガイド面141bには、発光素子131が発した光の他の一部が第3の搬送ベルト112の対岸側に設置された受光素子133に向かうよう、開口部141eを設けてある。受光素子133は、フォトダイオードであり、ガイド部材142における第1のガイド面142aと第3のガイド面142cとが接する角部に設置されている。ガイド部材142は、第3のガイド面142cのうちの発光素子131が発した光の光路P2と対応する位置に開口部142fを設けてある。受光素子133は、開口部142fを通った光を受光する向きでガイド部材142に設置されており、受光量に応じた電圧を出力する。
【0024】
払出側搬送ベルト117〜123は、硬貨収納部101〜106に収納された硬貨を硬貨払出部107に搬送する輪状のベルトであり、図示しないローラにより動作する。この払出側搬送ベルト117〜123は動作を個別に制御可能であり、これらを連携させることで硬貨を釣銭払出部107に搬送する。
【0025】
この払出側搬送ベルト117〜123に対しては、硬貨収納部101〜106から払い出された硬貨が払出側搬送ベルト117〜122から払出側搬送ベルト123に合流する位置のそれぞれに、発光素子134及び受光素子135,136からなる通過センサが設置されている。この発光素子134及び受光素子135,136は、
図2に示した発光素子131及び受光素子132,133の配置を左右反転した配置になっている。また、この発光素子134及び受光素子135,136は、払出側搬送ベルト117〜123に沿って設けたガイド部材(図示せず)に設置してある。
【0026】
リジェクトベルト124は、硬貨受入部100に投入された硬貨のうち鑑別センサ130で金種を識別できなかった硬貨を硬貨払出部107(払出側搬送ベルト123)に向けて搬送するベルトである。このリジェクトベルト124から払出側搬送ベルト123に合流する位置にも、発光素子134及び受光素子135,136からなる通過センサが設置されている。
【0027】
(硬貨収納処理及び釣銭払出処理)
本実施形態の自動釣銭機1は、商店に設置されるPOS(Point Of Sales)レジスタに適用される。商店の店員は、POSレジスタに購入商品の合計金額が表示され、利用客から購入代金としての金銭を受け取ると、受け取った金額をPOSレジスタに入力し、受け取った硬貨は自動釣銭機1の投入口から硬貨受入部100に投入する。
【0028】
硬貨受入部100に投入された硬貨は、第1の搬送ベルト110により硬貨収納部101〜106に向けて順次搬送される。この際、先ず鑑別センサ130で硬貨の金種を判別し、それぞれの硬貨の金種と第1の搬送ベルト110上における相対位置を記憶する。また、鑑別センサ130で金種を判別できなかった硬貨は、図示しない振分機構によりリジェクトベルト124に送る。
【0029】
金種が判別され、第1の搬送ベルト110により搬送される硬貨は、該当する金種の硬貨収納部と対応した搬送位置に到達すると、図示しない振分機構により硬貨収納部側に押し出され、第2の搬送ベルト111〜第7の搬送ベルト116のいずれかに移動する。硬貨2の搬送位置は、発光素子131及び受光素子132からなる第1の通過センサを用いて検知する。また、硬貨2が第2の搬送ベルト111〜第7の搬送ベルト116に移動したかは、発光素子131及び受光素子133からなる第2の通過センサを用いて検知する。
【0030】
第1の搬送ベルト110は、
図2に示したように、直径(外径)が異なる複数種類の硬貨2(20〜22)を搬送する。ガイド部材141に設置した発光素子131及びガイド部材140に設置した受光素子132からなる第1の通過センサは、硬貨2が光路P1を通過する際に受光素子132の受光量が一時的に低下する。これにより自動釣銭機1は、硬貨2が光路P1を通過し、第3の搬送ベルト112と対応する搬送位置に到達したことを検知する。そして、所定の金種の硬貨22が光路P1を通過したことを検知すると、図示しない振分機構を作動させ硬貨22を第3の搬送ベルト112側に移動させる。
【0031】
また、硬貨22を第3の搬送ベルト112側に移動させると、ガイド部材141に設置した発光素子131及びガイド部材142に設置した受光素子133からなる第2の通過センサは、硬貨22が光路P2を通過する際に受光素子133の受光量が一時的に低下する。これにより自動釣銭機1は、硬貨22が第3の搬送ベルト112上に移動し、第2の硬貨収納部102に向けて搬送されたことを検知する。
【0032】
第2の搬送ベルト111〜第7の搬送ベルト116に移動した硬貨は、これらの搬送ベルトにより所定の硬貨収納部に搬送され、収納される。たとえば、第1の搬送ベルト110から第3の搬送ベルト112に移動した硬貨22は、第3の搬送ベルト112により第2の硬貨収納部102に搬送され、収納される(
図1及び
図2を参照)。
【0033】
なお、上記の発光素子131及び受光素子132,133からなる通過センサは、
図1に示したように、第1の搬送ベルト110から硬貨収納部101〜106のそれぞれに向けて分岐する6箇所に1組ずつ設けてある。そして、第1の搬送ベルト110により硬貨収納部101〜106側に搬送される硬貨は、その金種に応じた搬送位置に到達すると、図示しない振分機構により第2の搬送ベルト111〜第7の搬送ベルト116側に移動する。これにより、投入口から硬貨受入部100に投入された硬貨2は、金種毎に振り分けられ硬貨収納部101〜106に収納される。
【0034】
一方、POSレジスタに購入商品の合計金額が表示され、利用客から受け取った金額を入力し、釣銭の金額が算出されると、自動釣銭機1は、釣銭の金額を満たす硬貨2の組み合わせを算出し、その組み合わせに基づき硬貨収納部101〜106に収納された硬貨2を釣銭として払い出す。釣銭として払い出す硬貨は、図示しない払出機構により払出側搬送ベルト117〜122に払い出され、払出側搬送ベルト117〜122及び払出側搬送ベルト123により硬貨払出部107に搬送される。この際、硬貨収納部101〜106から払い出された硬貨の枚数は、発光素子134及び受光素子136からなる通過センサを用いて確認する。また、払い出された硬貨がすべて硬貨払出部107まで搬送されたかは、発光素子134及び受光素子135からなる通過センサを用いて確認する。
【0035】
(ブラシの構成及び役割)
さて、本実施形態の自動釣銭機1では、
図2に示したように、ガイド部材に光を通過させる開口部を設けてある。そのため、硬貨受入部100を介して自動釣銭機1の内部に入り込んだ塵埃等の小さな異物が、ガイド部材の開口部等に付着し滞留することがある。たとえば、
図2に示すように、ガイド部材141の第1のガイド面141aに設けた開口部141dに異物3が付着し滞留すると、発光素子131から開口部141dを通り受光素子132に向かう光の光量が低下する。このように、通過センサ(発光素子131及び受光素子132)の周囲に異物3が付着し滞留すると、受光素子132の受光量が継続的に低下し、誤検出による誤動作が起こりやすくなる。そこで、本実施形態の自動釣銭機1では、
図2及び
図3に示すように、異物3を除去するためのブラシ110bを第1の搬送ベルト110に設けている。なお、
図3は、
図2のA−A線断面図である。
【0036】
ブラシ110bは、
図2及び
図3に示すように、第1の搬送ベルト110のベルト本体部110aにおける幅方向の端部に設けてある。このブラシ110bは、ベルト本体部110aの硬貨2と接する面に立設した基部(図示せず)と、基部から延びるブラシ部110cとで構成される。ブラシ部110cは、第1の搬送ベルト110の硬貨搬送方向とは反対側かつ幅方向の外方側に向けて延びている。さらに、ブラシ部110cの先端は、ガイド部材のガイド面に接触させ、第1の搬送ベルト110における幅方向の中心側に屈曲させてある。
【0037】
このブラシ110bは、ベルト本体部110aと一体形成してある。なお、ブラシ110bは、ベルト本体部110aと同じ弾性体材料であってもよいし、ベルト本体部110aとは異なる弾性体材料であってもよい。ブラシ110bにベルト本体部110aとは異なる弾性体材料を用いる場合は、周知の二色成形技術により第1の搬送ベルト110を形成すればよい。
【0038】
図4は、ベルトを逆回転させたときのブラシの状態を示す平面図である。
図5は、ブラシで汚れを除去した状態を示す平面図である。
【0039】
本実施形態の自動釣銭機1では、受光素子132の受光量が継続的に低下していることを検知した場合に、第1の搬送ベルト110を硬貨搬送方向とは逆方向に動作させる。すなわち第1の搬送ベルト110を逆回転させる。このとき、ブラシ110bのブラシ部110cは、第1の搬送ベルト110の動作と連動し、
図4に示すように、ガイド部材104,142からの摩擦力により屈曲の度合いが増して弾性復元力が蓄えられる。その後、
図5に示すように、ガイド部140,141に設けた開口部140b,141dにブラシ部110cが到達すると、蓄えられた弾性復元力によりブラシ部110cが開口部140b,141dに入り込む。そのため、開口部141dに滞留する異物3がブラシ部110cにより掃き出される。これにより、異物3による受光素子132の受光量の低下が解消され、硬貨収納処理時の誤動作を防ぐことができる。
【0040】
また、上記のブラシ110bと同様のブラシを第2の搬送ベルト101〜第7の搬送ベルト106にも設ければ、異物による受光素子133の受光量の低下が解消され、硬貨収納処理時の誤動作をより確実に防ぐことができる。
【0041】
さらに、上記のブラシ110bと同様のブラシを払出側搬送ベルト117〜123やリジェクトベルト124にも設ければ、釣銭払出処理時の異物による誤動作も防ぐことができる。
【0042】
(自動釣銭機の機能構成及び自動釣銭機で行われる処理のおおまかな手順)
図6は、実施形態1の自動釣銭機の機能構成を示すブロック図である。
【0043】
本実施形態の自動釣銭機1を機能構成の観点で表すと、
図6に示すように、硬貨収納処理部10、釣銭払出処理部11、表示部12、操作部13、センサチェック部14、クリーニング処理部15、主制御部16、及び記憶部17を備えた構成となる。
【0044】
硬貨収納処理部10は、収納側搬送ベルト110〜116を動作させ、投入口から硬貨受入部100に投入された硬貨を硬貨収納部101〜106に収納する処理を行う。釣銭払出処理部11は、払出側搬送ベルト117〜123を動作させ、硬貨収納部101〜106に収納された硬貨を釣銭として払い出す処理を行う。表示部12は、投入された硬貨や釣銭の合計金額、エラーメッセージ等を表示する。操作部13は、自動釣銭機1を動作させるための操作情報を、自動釣銭機1に設けた操作ボタンやレジスタ本体等から受け付ける。センサチェック部14は、受光素子132,133等の受光量を測定し、受光量が所定の値を下回っている場合にクリーニング処理の実施予約をする。クリーニング処理部は、クリーニング処理の実施予約がなされている場合に所定の搬送ベルトを逆回転させる。主制御部16は、記憶部17に記憶させたプログラム17a及びセンサ管理テーブル17bを読み込み、自動釣銭機1全体の動作を制御する。
【0045】
センサ管理テーブル17bは、下記表1のように、通過センサの識別番号SNO、対応するベルトの識別番号BNO、受光量の初期値LVIN、クリーニング処理の実施予約をするためのフラグFA〜FCからなる。
【0047】
たとえば、表1における識別番号SNOが1〜6のセンサは、第1の搬送ベルト110により搬送される硬貨2を検出する6組の通過センサである。そのため、第1の搬送ベルト110の識別番号BNOを1とすると、識別番号SNOが1〜6のセンサと対応付けられるベルトの識別番号BNOは1となる。また、表1における識別番号SNOが7のセンサは、第2の搬送ベルト111により搬送される硬貨2を検出する通過センサである。そのため、第2の搬送ベルト111の識別番号BNOを2とすると、識別番号SNOが7のセンサと対応するベルトの識別番号BNOは2となる。
【0048】
表1における受光量の初期値LVINは、出荷時や商店に設置する際に測定した受光量の値である。また、フラグFA〜FCは、初期値をOFFとし、クリーニング処理を行う場合に値をOFFからONに変更する。なお、本実施形態では、クリーニング処理として後述する3通りの処理を用意している。そのため、FA〜FCの3つのフラグを用意し、どのフラグがONになっているかに基づいて実施するクリーニング処理を選択する。
【0049】
図7は、実施形態1の自動釣銭機で行われる処理のおおまかな手順を示すフローチャートである。
【0050】
本実施形態の自動釣銭機1は、電源をオンにすると、主制御部16として機能するCPU(Central Processing Unit)にプログラム17aが読み込まれ、動作を開始する。このとき、自動釣銭機1は、
図7に示すように、先ずイニシャルチェックを実施する(ステップS1)。ステップS1では、たとえば、収納側搬送ベルト110〜116等の動作確認、表示部12や操作部13の動作確認等を行う。このステップS1の処理は、周知の自動釣銭機で行われる処理と同じでよい。
【0051】
次に、センサクリーニング処理を行う(ステップS2)。このセンサクリーニング処理については後述する。
【0052】
その後、自動釣銭機1は待機状態となる。そして、POSレジスタで会計処理が行われた場合には硬貨収納処理及び釣銭払出処理(ステップS3)を行う。また、待機状態の自動釣銭機1は、あらかじめ定めたタイミングでセンサ汚れチェック処理(ステップS4)を行う。この待機状態、ステップS3及びステップS4の処理は、電源をオフにする操作がなされるまで繰り返し行われる(ステップS5;No)。電源をオフにする操作がなされた場合(ステップS5;Yes)は、プログラム17aに記述された所定の終了処理を行った後、電源をオフにする。なお、硬貨収納処理及び釣銭払出処理、並びに電源をオフにする際の終了処理は、それぞれ周知の自動釣銭機で行われる処理と同じでよい。
【0053】
(センサ汚れチェック処理及びセンサクリーニング処理)
図8は、
図7に示したセンサ汚れチェック処理の手順を示すフローチャートである。
【0054】
センサ汚れチェック処理(ステップS4)では、
図8に示すように、先ずセンサの識別番号SNOを1にする(ステップS401)。
【0055】
次に、識別番号SNOのセンサの出力として受光量LVPを測定し(ステップS402)、測定した受光量LVPとセンサ管理テーブルの初期値LVINとの比LVP/LVINを算出する(ステップS403)。
【0056】
次に、算出した受光量の比LVP/LVINが0.5以下であるか判定し(ステップS404)、0.5以下である場合(ステップS404;Yes)は、フラグFAをONにする(ステップS405)。
【0057】
受光量の比LVP/LVINが0.5以下ではない場合(ステップS404;No)は、次に受光量の比LVP/LVINが0.7以下であるか判定する(ステップS406)。受光量の比LVP/LVINが0.7以下である場合(ステップS406;Yes)は、フラグFBをONにする(ステップS407)。
【0058】
受光量の比LVP/LVINが0.7以下でもない場合(ステップS406;No)は、次に受光量の比LVP/LVINが0.9以下であるか判定する(ステップS408)。受光量の比LVP/LVINが0.9以下である場合(ステップS408;Yes)は、フラグFCをONにする(ステップS409)。
【0059】
受光量の比LVP/LVINが0.9以下でもない場合(ステップS408;No)、又はフラグFA〜FCのいずれかをONにした後は、センサの識別番号SNOが最大値SNO
MAXであるか確認する(ステップS410)。センサの識別番号SNOが最大値SNO
MAXではない場合(ステップS410;No)は、識別番号SNOに1を加え(ステップS411)、ステップS402〜S410の処理を繰り返す。センサの識別番号SNOが最大値SNO
MAXである場合(ステップS410;Yes)は、センサ汚れチェック処理を終了し、
図7に示した処理に戻る。
【0060】
図8に示したセンサ汚れチェック処理を行い、各センサのフラグFA〜FCが1つでもONになると、センサクリーニング処理(ステップS2)におけるクリーニング処理の実施予約がなされたことになる。そして実施予約がなされた状態で電源をオフにすると、次回の電源オン時に、予約されたクリーニング処理が行われる。
【0061】
図9は、
図7に示したセンサクリーニング処理の手順を示すフローチャートである。
自動釣銭機1の電源をオンにしたときにイニシャルチェック(ステップS1)とともに行われるセンサクリーニング処理(ステップS2)では、
図9に示すように、先ずベルトの識別番号BNOを1にする(ステップS201)。
【0062】
次に、センサ管理テーブルから識別番号BNOのベルトと対応付けられたセンサのフラグFA〜FCを読み出し(ステップS202)、フラグFAがONのセンサがあるか判定する(ステップS203)。そして、フラグFAがONのセンサがある場合(ステップS203;Yes)、識別番号BNOのベルトを3周逆回転させる(ステップS204)。
【0063】
フラグFAがONのセンサがない場合(ステップS203;No)は、次にフラグFBがONのセンサがあるか判定する(ステップS205)。フラグFBがONのセンサがある場合(ステップS205;Yes)は、識別番号BNOのベルトを2周逆回転させる(ステップS206)。
【0064】
フラグFBがONのセンサもない場合(ステップS205;No)は、次にフラグFCがONのセンサがあるか判定する(ステップS207)。フラグFCがONのセンサがある場合(ステップS207;Yes)は、識別番号BNOのベルトを1周逆回転させる(ステップS208)。
【0065】
こうしてステップS204、ステップS206、又はステップS208の処理を行った場合は、識別番号BNOのベルトと対応付けられたセンサのフラグFA〜FCをすべてOFFにする(ステップS209)。
【0066】
識別番号BNOのベルトと対応付けられたセンサのフラグFA〜FCにONが1つもなかった場合(ステップS207;No)、又はステップS209でセンサのフラグFA〜FCをすべてOFFにした後は、ベルトの識別番号BNOが最大値BNO
MAXであるか確認する(ステップS210)。ベルトの識別番号BNOが最大値BNO
MAXではない場合(ステップS210;No)は、識別番号BNOに1を加え(ステップS211)、ステップS202〜S210の処理を繰り返す。ベルトの識別番号BNOが最大値BNO
MAXである場合(ステップS210;Yes)は、センサクリーニング処理を終了し、
図7に示した処理に戻る。
【0067】
上述のセンサクリーニング処理の具体例について、センサ管理テーブルが下記表2のようになっている状態で電源をオンにした場合を例に挙げて説明する。
【0069】
センサ管理テーブルが表2のような状態である場合、ステップS202で識別番号BNOが1のベルトと対応付けられたセンサのフラグFA〜FCを読み出すと、フラグFAがONのセンサとフラグFB及びフラグFCがONのセンサとが存在する。この場合、
図9のフローチャートに従うと、ステップS204の処理が行われる。ステップS204の処理で3周逆回転させる識別番号BNOが1のベルトは、識別番号SNOが1〜6の6組のセンサと対応付けられている。そのため、ステップS204の処理を1度行うことで、これら6組のセンサすべてに対してクリーニング処理が行われたことになる。すなわち、ステップS204では、表2においてフラグFB及びフラグFCがONになっている識別番号SNOが2のセンサに対するクリーニング処理も行われたことになる。したがって、ステップS209では、識別番号BNOが1のベルトと対応付けられたセンサのフラグFA〜FCをすべてOFFにする。これにより、1つのベルトに複数のセンサが対応付けられている場合のクリーニング処理を効率よく行うことができる。
【0070】
このように、本実施形態の自動釣銭機1及び自動釣銭機1のクリーニング方法によれば、搬送ベルトに設けたブラシ(たとえば第1の搬送ベルト110に設けたブラシ110b)を用いることで、通過センサの周囲に付着し滞留する異物を自動的に除去することができる。そのため、通過センサの汚れを容易かつ確実に除去することができる。また、ブラシ部110cの弾性復元力を利用して異物を除去するため、必要以上に強い力が通過センサに作用して通過センサに傷をつけてしまうことも防げる。
【0071】
さらに、本実施形態の自動釣銭機1のクリーニング方法では、通過センサの受光量(出力)の低下の度合いに応じて搬送ベルトの回転数を変え、低下の度合いが高いほど搬送ベルトの回転数を多くしている。そのため、異物除去の確実性が増し、短期間で再びクリーニング処理を実施しなければならないという事態を防ぐことができる。
【0072】
しかも、搬送ベルトを硬貨搬送方向とは逆方向に回転させた場合に異物が掃き出されるようブラシを構成してあるため、搬送ベルトが硬貨搬送方向に回転している場合にはブラシが格納された状態(機能を十分に発揮しない状態)になる。そのため、センサ表面が早期に磨耗する、ブラシが早期に劣化するといった事態を防ぐことができる。特に、二色成形技術によりブラシを有する搬送ベルトを形成すれば、ブラシに好適な弾性体材料を用いることができ、センサ表面の磨耗やブラシの劣化を極力抑えることができる。
【0073】
以上のようなことから、本実施形態の自動釣銭機1及び自動釣銭機1のクリーニング方法は、保守員による点検の頻度が高くなりPOSシステムの運用コストが増大するといったことも防げる。
【0074】
なお、本実施形態の自動釣銭機1における
図6に示した機能構成及び
図7〜
図9に示した処理は、自動釣銭機1が内蔵するコンピュータにプログラム17aを読み込ませて実現するだけでなく、複数のハードウェアを組み合わせて実現してもよい。
【0075】
また、センサ汚れチェック処理においてフラグFA〜FCをONにする際の閾値は、
図8に示した値に限らず、適宜変更可能である。加えて、センサの受光量低下の度合い(汚れの度合い)を示すフラグは、FA〜FCの3通りに限らず、2通りでもよいし、4通り以上でもよい。さらに、本実施形態の自動釣銭機1では
図7に示したように待機状態であるときにセンサ汚れチェック処理(ステップS4)を行っているが、これに限らず、イニシャルチェック(ステップS1)で行う処理の1つとしてステップS4の処理を行ってもよい。
【0076】
また、センサクリーニング処理(ステップS2)では、センサ管理テーブル17bにおいてONになっているフラグFA〜FCに応じて搬送ベルトの回転数を変える代わりに、搬送ベルトの回転速度を変えてもよい。
【0077】
(実施形態2)
図10は、本発明の実施形態2にかかる自動釣銭機の主要部を示す平面図である。
【0078】
本実施形態では、実施形態1で説明した自動釣銭機1におけるブラシの寸法及び硬貨収納処理についての好ましい例を説明する。
【0079】
本実施形態の自動釣銭機1では、
図10に示すように、第1の搬送ベルト110に設けるブラシ110bの硬貨搬送方向の寸法BLを、搬送する硬貨2のうちの直径が最も小さい硬貨23の直径D
minより短く、かつガイド部材に設けた開口部(たとえばガイド部材140に設けた開口部140b)の硬貨搬送方向の寸法Wよりも長くする。
【0080】
ブラシ110bは、
図3及び
図10に示したように、ベルト本体部110aの硬貨2と接する面に立設してある。そのため、ブラシ110bが発光素子131から受光素子132に向かう光の光路P1を通過する際に、受光素子132の受光量が一時的に低下する。この際、ブラシ110bの硬貨搬送方向の寸法BLが硬貨2の直径と同程度であると、受光量の低下がブラシ110bの通過によるものか硬貨2の通過によるものかを判別できず、誤動作につながるおそれがある。
【0081】
そこで、本実施形態の自動釣銭機1では、上記のように、ブラシ110bの硬貨搬送方向の寸法BLを、搬送する硬貨2のうちの直径が最も小さい硬貨23の直径D
minより短くする。
【0082】
図11は、実施形態2の自動釣銭機におけるセンサ受光量の時間変化の一例を示すグラフである。
図12は、硬貨とブラシとの位置関係の例を示す模式図である。
図13は、
図12に示した硬貨とブラシとがセンサの光路を通過する際のセンサ受光量の時間変化を示すグラフである。
【0083】
ブラシ110bの硬貨搬送方向の寸法BLを、直径が最も小さい硬貨23の直径D
minより短くした場合、受光素子132における受光量の時間変化は、たとえば、
図11に示すようになる。なお、
図11におけるΔTBは、ブラシ110bが光路P1を通過することにより受光量が低下している期間である。また、
図11におけるΔTC
minは、直径が最も小さい硬貨23が光路P1を通過することにより受光量が低下している期間である。
【0084】
図11に示したように、期間ΔTBが期間ΔTC
minよりも短くなるようにしておけば、これらの期間の間となる期間ΔT0を閾値とすることで、受光量の低下がブラシ110bの通過によるものか硬貨2の通過によるものかを容易に判別することができる。すなわち、受光量が低下している期間が期間ΔT0よりも長い場合にのみ、硬貨2が光路P1を通過したと判別し、硬貨収納処理を行うことができる。このため、本実施形態の自動釣銭機1では、
図6に示した硬貨収納処理部10に、受光量が低下している期間に基づいて発光素子131が発した光の光路P1を通過したのが硬貨2であるかブラシ110bであるかを判別する判別部を設ける。これにより、ブラシ110bが光路P1を通過した場合を通過センサの検知対象から除外することができ、硬貨収納処理時の誤動作を防ぐことができる。
【0085】
なお、硬貨2及びブラシ110bがセンサの光路P1を通過する際には、
図12に示すように、両者が連続して通過する場合もある。このような場合、受光量の時間変化は、
図13に示すようになり、受光量が低下している期間ΔTCBは硬貨2のみが通過した場合の期間に比べて長くなる。しかしながら、本実施形態の自動釣銭機1では、受光量が低下している期間が閾値ΔT0よりも長い場合は硬貨2が光路P1を通過したと判別し、硬貨収納処理を行う。そのため、硬貨2及びブラシ110bが光路P1を連続して通過する場合にも硬貨2の通過を確実に検知でき、硬貨収納処理時の誤動作を防ぐことができる。
【0086】
さらに、ブラシ110bの硬貨搬送方向の寸法BLを、ガイド部材140に設けた開口部140bの硬貨搬送方向の寸法Wよりも長くすると、第1の搬送ベルト110が硬貨搬送方向に動作しているときに、ブラシ110bのブラシ部110cが開口部140bに入りにくくなる。そのため、硬貨収納処理時にブラシ部110cが通過センサ(発光素子131及び受光素子132)に触れることによりセンサ表面が早期に磨耗することを防げ、センサの交換頻度が高まる事態を防ぐことができる。
【0087】
このように、本実施形態の自動釣銭機1によれば、搬送ベルトに設けたブラシがセンサの光路を通過することによる誤動作を防止することができる。また、センサ表面が早期に磨耗することを防げ、センサの交換頻度が高まる事態を防ぐことができる。
【0088】
(実施形態3)
図14は、本発明の実施形態3にかかる自動釣銭機の主要部分を示す断面図である。
図15は、実施形態3の自動釣銭機におけるローラの構成例を示す平断面図である。
【0089】
本実施形態では、実施形態1で説明した自動釣銭機1におけるブラシの変形例について説明する。
【0090】
実施形態1では、
図3に示したように、第1の搬送ベルト110のブラシ110bをベルト本体部110aと一体形成してある。しかしながら、ブラシ110bは、これに限らず、ベルト本体部110aとは別個に形成したものであってもよい。
【0091】
ブラシ110bをベルト本体部110aとは別個に形成した場合、
図14に示すように、リベット等の金具110dを用いてブラシ110bをベルト本体部110aに固定する。これにより、たとえば、ブラシ110bのブラシ部110cが劣化した際にブラシ110bのみを交換することが可能となり、ベルト本体部110aを含む第1の搬送ベルト110をすべて交換する場合に比べて廃棄物の量が少なくなるため環境負荷を低減できる。
【0092】
なお、金具110dを用いてブラシ110bをベルト本体部110aに固定する場合、
図14に示したように、ベルト本体部110aの硬貨と接する面とは反対側の面から金具110dが突出する場合がある。このような場合は、
図15に示すように、第1の搬送ベルト110を駆動するローラ150におけるベルト接触面部150aの軸心方向の両端に段差部150bを設ければよい。ベルト接触面部150aは、第1の搬送ベルト110と接し、第1の搬送ベルト110を硬貨搬送方向及び逆方向に動作させる部分である。段差部150bは、ベルト本体部110aから離間するようベルト接触面部150aよりも直径を短くした部分である。ベルト接触面部150aと段差部150bとは、これらの境に生じる段差、すなわちベルト接触面部150aと段差部150bとの半径の差が、ベルト本体部110aからの金具110dの突出量よりも大きくなるようにする。これにより、第1の搬送ベルト110を動作させた際に金具110dがローラ150に当接することによる異音の発生等を防ぐことができる。
【0093】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成又は実施形態を取ることができる。