【文献】
J. Biol. Chem., 1996, Vol.271, No.38, pp.23368-23373
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記選択可能マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼからなる群から選択される、請求項2記載のドナーベクター。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の開示は、植物細胞における1つまたは複数のパラロガス遺伝子(例えば、EPSPS遺伝子)の発現を変調するための、ならびに標的化変更のための組成物および方法を提供する。植物細胞は、単子葉(単子葉類)または双子葉(双子葉類)植物種からであり得るし、培養細胞、発生の任意の段階での植物中の細胞、ならびに全体植物から取り出された植物細胞(これらの細胞は(またはそれらの子孫)は植物に戻される)も包含する。植物細胞は、1つまたは複数の相同またはパラロガス遺伝子配列を含有し得るし、その任意数またはその全部が、本明細書中に開示される方法により修飾のために標的化され得る。
【0007】
一態様において、当該EPSPS標的ゲノム領域と結合するジンクフィンガータンパク質(ZFP)であって、1つまたは複数の改変ジンクフィンガー結合ドメインを含むZFPが本明細書中で開示される。ある実施形態では、ジンクフィンガー結合ドメインは、表Aに示されるような配列を含む。ある実施形態では、ZFPにより標的化されるEPSPS遺伝子は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含む。ある実施形態では、ZFPは、1つまたは複数の調節ドメインを含む融合タンパク質である。一実施形態では、1つまたは複数の調節ドメインは、転写抑制因子、エンドヌクレアーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、転写活性因子およびヒストンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される。一実施形態では、ZFPは、EPSPS遺伝子の標的配列と結合し、この場合、EPSPSの発現は、増大されるかまたは低減される。一実施形態では、ZFPは、EPSPS遺伝子の転写調節配列と結合する。別の実施形態では、ZFPはEPSPS遺伝子の転写開始部位の上流で結合する。別の実施形態では、ZFPは、EPSPS遺伝子の転写開始部位に隣接して結合する。別の実施形態では、ZFPはEPSPS遺伝子の転写開始部位の下流で結合する。一実施形態では、ZFPは、EPSPS遺伝子の転写開始部位の下流のRNAポリメラーゼ休止部位に隣接して結合する。
【0008】
一実施形態では、ZFPは、当該EPSPS標的ゲノム領域を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)であって、この場合、ZFNは1つまたは複数の改変ジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインを含む。ある実施形態では、ZFNは、EPSPS遺伝子配列に関する特異性を有する改変ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ドメインを含む1つの融合ポリペプチド、および/または改変ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む1つまたは複数の融合ポリペプチドを包含する。ある実施形態では、ジンクフィンガー結合ドメインは、表Aに示される認識ドメインを含むジンクフィンガータンパク質からなる群から選択される配列を含む。切断ドメインおよび切断半ドメインは、例えば、種々の制限エンドヌクレアーゼおよび/またはホーミングエンドヌクレアーゼから得られる。一実施形態では、切断半ドメインは、IIS型制限エンドヌクレアーゼ(例えば、Fok I)に由来する。ZFNは、特定の一EPSPS遺伝子配列を特異的に切断し得る。代替的には、ZFNは、EPSPSパラロガスまたはオルソロガス遺伝子配列を包含し得る2つまたはそれ以上の相同EPSPS遺伝子配列を切断し得る。
【0009】
ある実施形態では、ZFNにより標的化されるEPSPS遺伝子は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0010】
ZFNは、当該遺伝子のコード領域内で、あるいは遺伝子内または遺伝子に隣接する非コード配列、例えばリーダー配列、トレーラー配列またはイントロンにおいて、あるいはコード領域の上流または下流の非転写領域内で、EPSPS遺伝子と結合し、および/またはそれを切断し得る。ある実施形態では、ZFNは、EPSPS遺伝子のコード配列または調節配列と結合し、および/またはそれを切断する。ある実施形態では、ZFNは、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる領域内でEPSPS遺伝子と結合し、切断する。
【0011】
別の態様では、1つまたは複数のZFNを含み得る1つまたは複数のZFPを含む組成物が本明細書中で記載される。植物細胞は、1つの独自のEPSPS遺伝子または多数のパラロガスEPSPS遺伝子を含有し得る。したがって、組成物は、植物細胞中の1つまたは複数のEPSPS遺伝子、例えば植物細胞中に存在する1、2、3、4、5または任意数までのEPSPSパラログあるいはすべてのEPSPSパラログを標的にする1つまたは複数のZFPを含み得る。一実施形態では、組成物は、植物細胞中のすべてのEPSPSパラロガス遺伝子を標的にする1つまたは複数のZFPを含む。別の実施形態では、組成物は、植物細胞中の1つの特定EPSPSパラロガス遺伝子を特異的に標的にする1つのZFPを含む。例えば、組成物は、植物細胞中の1つの特定EPSPSパラロガス遺伝子と特異的に結合し、切断する1つのZFN、あるいは植物細胞中の2またはそれ以上のEPSPSパラロガス遺伝子と結合し、切断する多数のZFNを含み得る。さらに、組成物は、1つまたは複数のEPSPSパラロガス遺伝子の転写調節を変更する非ヌクレアーゼZFPを含有し得る。
【0012】
別の態様では、本明細書中に記載される1つまたは複数のZFPをコードするポリヌクレオチドが本明細書中で記載される。一実施形態では、ポリヌクレオチドは、少なくとも1つのZFNをコードする。例示的ポリヌクレオチドは、表Aに示されるようなジンクフィンガータンパク質のいずれかをコードするヌクレオチド配列を含む。
【0013】
別の態様では、プロモーターと操作可能的に連結される本明細書中に記載される1つまたは複数のZFPをコードするポリヌクレオチドを含むZFP発現ベクターが本明細書中で記載される。一実施形態では、ZFPのうちの1つまたは複数がZFNである。
【0014】
別の態様では、1つまたは複数のZFP発現ベクターを含む植物宿主細胞が本明細書中で記載される。植物宿主細胞は、1つまたは複数のZFP発現ベクターで安定的に形質転換され得るかまたは一時的にトランスフェクトされ得るか、あるいはその組合せであり得る。一実施形態では、1つまたは複数のZFP発現ベクターは、植物宿主細胞中で1つまたは複数のZFNを発現する。
【0015】
別の態様では、植物細胞中での1つまたは複数のパラロガス遺伝子の切断方法であって、(a)ZFN(単数または複数)が発現され、1つまたは複数のパラロガス遺伝子が切断されるような条件下で、1つまたは複数のパラロガス遺伝子中の標的部位と結合する1つまたは複数のZFNをコードする1つまたは複数の発現ベクターを、植物細胞中に導入することを包含する方法が本明細書中で記載される。ある実施形態では、標的部位は、EPSPS遺伝子中にある。一実施形態では、植物細胞中の1つの特定EPSPSパラログ遺伝子が切断される。別の実施形態では、1つより多いEPSPSパラログが切断され、例えば植物細胞中に存在する、2、3、4、5または任意数までのEPSPSパラログあるいはすべてのEPSPSパラログが切断される。
【0016】
別の態様では、第一および第二DNA配列を含むドナーベクターであって、(i)第一配列が第三配列と相同であり、第二配列が第四配列と相同であり;そして(ii)第三および第四配列が染色体DNA配列であるドナーベクターが本明細書中で記載される。ある実施形態では、第三および第四配列の近接縁は少なくとも1つのヌクレオチド対により分離される。一実施形態では、第三および第四配列は内因性配列である。別の実施形態では、第三および第四配列は外因性配列である。ドナーベクターのいずれかにおいて、標的化染色体DNA配列はEPSPS配列であり得る。ある実施形態では、染色体EPSPS DNA配列は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含むEPSPS遺伝子に属する。
【0017】
ある実施形態では、ドナーベクター中の第一または第二配列のうちの少なくとも1つは100ヌクレオチドまたはそれ未満の長さを有する。さらに、本明細書中に記載されるベクターのいずれかは、第五配列をさらに含み得るが、この場合、第五配列は、(a)第一および第二配列間に差し挟まれ;そして(b)外因性配列である。ある実施形態では、第五配列は少なくとも1塩基対のサイズを有するが、しかし22キロ塩基対またはそれ以上という大きさであり得る。
【0018】
ドナーベクター(例えば第五配列)は、タンパク質またはタンパク質の部分をコードする配列も含み得る。ある実施形態では、タンパク質コード配列は、選択可能マーカー(例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼ)をコードする。他の実施形態では、タンパク質コード配列(例えば、第五配列)、例えば染色体配列と相同である配列は、タンパク質またはタンパク質の部分をコードする。
【0019】
さらに他の実施形態では、ドナーベクター(例えば、第五配列)は、1つまたは複数の転写調節配列を含む。例えば、ドナーベクターは、パラロガス遺伝子(EPSPS)の発現を増大するかまたは低減する1つまたは複数の転写調節配列を含み得る。ある実施形態では、ドナーベクターは、タンパク質輸送を増強するかまたは縮小する1つまたは複数のタンパク質ターゲッティング配列を含む。
【0020】
さらなる実施形態では、ドナーベクター(例えば、第五配列)は、突然変異体染色体配列の野生型同等物(例えば、EPSPS)、あるいは代替的には、野生型染色体配列の突然変異体同等物(例えば、EPSPS)を含み得る。ある実施形態では、突然変異体染色体配列は、点突然変異、置換、欠失および挿入からなる群から選択される1つまたは複数の突然変異を含む。一実施形態では、ドナーベクターは、除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大する突然変異体EPSPS染色体配列を含む。
【0021】
本明細書中に記載されるドナーベクターのいずれかにおいて、第一配列は、第三配列と少なくとも35%の相同性を有し得る。同様に、本明細書中に記載されるベクターのいずれかにおいて、第二配列は、第四配列と少なくとも35%の相同性を有し得る。いくつかの実施形態では、第一配列は、第三配列と少なくとも35%〜50%、少なくとも50%〜70%、少なくとも70%〜80%、少なくとも80%〜85%、少なくとも85%〜90%、少なくとも90%〜95%、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する。いくつかの実施形態では、第二配列は、第四配列と少なくとも35%〜50%、少なくとも50%〜70%、少なくとも70%〜80%、少なくとも80%〜85%、少なくとも85%〜90%、少なくとも90%〜95%、少なくとも95%、96%、97%、98%、99%または100%の相同性を有する。
【0022】
さらに別の態様では、植物細胞のゲノム中への外因性配列の導入方法であって、(a)本明細書中に記載されるドナーベクターのいずれかと細胞を接触させるステップ;ならびに(b)細胞中で1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼを発現するステップ(この場合、1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼは、第三または第四配列のいずれかの0.4〜3キロ塩基対内の染色体DNAを切断する)を包含し;したがって、ステップ(b)における染色体DNAの切断が相同組換えによるゲノム中へのドナーベクターの組入れを刺激することを包含する方法が、本明細書中で記載される。ある実施形態では、1つまたは複数のヌクレアーゼは、IIS型制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインと改変ジンクフィンガー結合ドメインとの間の融合物である。
【0023】
ある実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含むEPSPS遺伝子を切断する。
【0024】
別の態様では、植物細胞中での外因性核酸配列の生成物の発現方法であって、(a)細胞を外因性核酸配列を含むドナーベクターと接触させるステップ;ならびに(b)細胞中でジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現するステップ(この場合、ZFNは、第三または第四配列のいずれかの3キロ塩基対内の染色体DNA中の1つまたは複数のパラロガス遺伝子(例えば、1つまたは複数のEPSPS遺伝子)を切断する)を包含する方法が、本明細書中で記載される。ステップ(b)における染色体DNAの切断は、外因性核酸配列の生成物の相同組換えおよび発現によるゲノム中へのドナーベクターの組入れを生じる。
【0025】
ある実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含むEPSPS遺伝子を切断する。
【0026】
別の態様では、植物細胞のゲノム中の分子内相同組換えのための方法であって、(a)標的遺伝子の配列を含み、さらに第二配列と相同である第一配列を含むDNAセグメントを提供するステップ;ならびに(b)上記DNAセグメントを本明細書中に記載されるようなZFNと接触させるステップ(この場合、ZFNは標的遺伝子配列でDNAセグメントを切断し、それにより分子内相同組換えを刺激する)を包含する方法が、本明細書中で記載される。ある実施形態では、DNAセグメントは細胞に対して内因性である。他の実施形態では、DNAセグメントは細胞に対して外因性である。ある実施形態では、標的遺伝子は細胞に独自のものである。他の実施形態では、標的遺伝子はパラロガス遺伝子である。これらの方法のいずれかにおいて、標的遺伝子は独自のまたはパラロガスなEPSPSを含み得るし、ZFNは表Aに示される配列のいずれかを含む。ある実施形態では、相同組換えは染色体中で起こり得る。一実施形態では、第一および第二配列間のDNAが染色体から欠失される。一実施形態では、染色体から欠失される配列は、標的遺伝子の全部または一部をコードし得る。別の実施形態では、染色体から欠失される配列は、選択可能マーカー、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼの全部または一部をコードし得る。
【0027】
ある実施形態では、欠失DNAは外因性配列に取って代わられ、当該方法はさらに、細胞中にポリヌクレオチドを導入することを包含するが、この場合、ポリヌクレオチドは(i)第四および第五配列(ここで、第四配列は第一配列に近接する非欠失配列と相同であり、第五配列は第二配列に近接する非欠失配列と相同である);ならびに(ii)外因性配列を含む。
【0028】
ある実施形態では、欠失DNAは、野生型遺伝子配列の突然変異体同等物を含み得る遺伝子配列に取って代わられる。ある実施形態では、突然変異体遺伝子配列は、点突然変異、置換、欠失および挿入からなる群から選択される1つまたは複数の突然変異を含む。一実施形態では、欠失DNAはEPSPS遺伝子配列に取って代わられ、例えばEPSPS遺伝子配列は、除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大する突然変異を含む。
【0029】
別の実施形態では、外因性配列は、選択可能マーカー、例えば緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼであり得る。
【0030】
別の実施形態では、植物細胞のゲノムから遺伝子配列を欠失するための方法であって、(a)遺伝子配列を含む植物細胞を提供するステップ;ならびに(b)細胞中で第一および第二ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現するステップ(ここで、第一ZFNは第一切断部位を切断し、第二ZFNは第二切断部位を切断する)を包含する方法であって、遺伝子配列が第一切断部位および第二切断部位間に配置され、第一および第二切断部位の切断が遺伝子配列の欠失を生じる方法が、本明細書中で記載される。ある実施形態では、遺伝子配列はEPSPS遺伝子である。遺伝子配列中の欠失のサイズは、第一および第二切断部位間の距離により確定される。したがって、任意のサイズの欠失が、当該する任意のゲノム領域において、得られる。25、50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000ヌクレオチド対、またはこの範囲内の任意の整数値のヌクレオチド対の欠失が得られる。さらに、1,000ヌクレオチド対より多い任意の整数値のヌクレオチド対の配列の欠失が、本明細書中に開示される方法および組成物を用いて得られる。一実施形態では、第一および第二切断部位は、少なくとも100ヌクレオチドにより分離される。一実施形態では、全遺伝子(例えば、EPSPS)が欠失される。別の実施形態では、遺伝子(例えば、EPSPS)の一部が欠失される。一実施形態では、遺伝子配列(例えば、EPSPS遺伝子配列)がトランスジェニック植物細胞から欠失される。遺伝子配列(例えば、EPSPS)は、内因性または外因性配列であり得る。
【0031】
別の態様では、植物遺伝子の調節を変調するための方法であって、(a)標的遺伝子配列を含む植物細胞を提供するステップ;ならびに(b)細胞中でZFPを発現するステップ(ここで、ZFPは標的遺伝子の調節配列と結合し、それにより、標的遺伝子の調節を変調する)を包含する方法が、本明細書中で記載される。ある実施形態では、遺伝子配列はEPSPS遺伝子である。ZFPの調節配列との結合は、標的(例えば、EPSPS)遺伝子の転写を増大するかまたは低減し得る。ある実施形態では、ZFPはさらにまた、除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大するかまたは低減する。
【0032】
さらなる態様では、本明細書中に記載される方法のいずれかに従って得られるトランスジェニック植物細胞も提供される。
【0033】
別の態様では、本明細書中に記載されるようにして得られるトランスジェニック細胞を含む植物が本明細書中で提供される。
【0034】
本明細書中に記載される方法のいずれかにおいて、除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大するかまたは低減するために、標的植物遺伝子配列(例えば、転写調節配列またはEPSPSコード配列)の修飾が用いられ得る。
【0035】
したがって、本開示は、以下の番号付けした実施形態を包含するが、これらに限定されない:
1.当該EPSPS標的ゲノム領域と結合するジンクフィンガータンパク質(ZFP)であって、1つまたは複数の改変ジンクフィンガー結合ドメインを含むZFP。
2.標的ゲノム領域が双子葉植物の細胞中にある実施形態1のZFP。
3.標的ゲノム領域がキャノーラ種植物の細胞中にある実施形態2のZFP。
4.標的ゲノム領域がアブラナ属植物の細胞中にある実施形態2のZFP。
5.当該EPSPS標的ゲノム領域が配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%同一である配列を含むEPSPS遺伝子に属する実施形態1のZFP。
6.ZFPが1つまたは複数の機能的ドメインを含む融合タンパク質である実施形態1のZFP。
7.転写抑制因子、エンドヌクレアーゼ、メチルトランスフェラーゼ、ヒストンデアセチラーゼ、転写活性因子およびヒストンアセチルトランスフェラーゼからなる群から選択される1つまたは複数の機能的ドメインを含む実施形態6のZFP。
8.EPSPS遺伝子の転写調節配列と結合する実施形態1〜7のいずれかのZFP。
9.EPSPS遺伝子の転写開始部位の上流に結合する実施形態1〜7のいずれかのZFP。
10.EPSPS遺伝子の転写開始部位に隣接して結合する実施形態1〜7のいずれかのZFP。
【0036】
11.EPSPS遺伝子の転写を増大する実施形態1〜10のいずれかのZFP。
12.EPSPS遺伝子の転写を低減する実施形態1〜10のいずれかのZFP。
13.当該EPSPS標的ゲノム領域を切断するジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である実施形態1のZFPであって、上記ZFNが1つまたは複数の改変ジンクフィンガー結合ドメインおよびヌクレアーゼ切断ドメインを含むZFP。
14.切断ドメインが2つの切断半ドメインを含む実施形態13のZFN。
15.切断半ドメインが同一ヌクレアーゼに由来する実施形態14のZFN。
16.切断半ドメインがIIS型制限エンドヌクレアーゼに由来する実施形態15のZFN。
17.IIS制限エンドヌクレアーゼがFok Iである実施形態16のZFN。
18.当該EPSPS標的ゲノム領域が配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%同一である配列を含むEPSPS遺伝子に属する実施形態13のZFN。
19.EPSPS遺伝子のコード領域中の配列と結合する実施形態13のZFN。
20.EPSPS遺伝子の非コード領域中の配列と結合する実施形態13のZFN。
【0037】
21.EPSPS遺伝子の調節配列と結合する実施形態20のZFN。
22.1つまたは複数のEPSPSパラロガスまたはオルソロガス遺伝子配列を切断する実施形態13のZFN。
23.1つのEPSPSパラロガスまたはオルソロガス遺伝子配列を特異的に切断する実施形態13のZFN。
24.表Aに示されるような配列を含むジンクフィンガー結合ドメインを含む実施形態13のZFN。
25.配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列からなる領域内のEPSPS遺伝子と結合し、切断する実施形態13のZFN。
26.以下の:
(a)第一ジンクフィンガー結合ドメインおよび第一切断半ドメインを含む第一融合タンパク質(この場合、第一ジンクフィンガー結合ドメインは第一ヌクレオチド配列と結合する);ならびに
(b)第二ジンクフィンガー結合ドメインおよび第二切断半ドメインを含む第二融合タンパク質(この場合、第二ジンクフィンガー結合ドメインは第二ヌクレオチド配列と結合する)
を含む実施形態13のZFN。
27.第二ジヌクレオチド配列が第一ヌクレオチド配列から2〜50ヌクレオチドに位置する実施形態26のZFN。
28.切断が第一および第二ヌクレオチド配列間で起こる実施形態26のZFN。
29.実施形態1〜28のいずれかによる1つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)を含む組成物。
30.1つまたは複数のZFPがジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)である実施形態29の組成物。
【0038】
31.植物細胞中の1つまたは複数のEPSPS遺伝子を標的にする1つまたは複数のZFPを含む実施形態29の組成物。
32.組合せて植物細胞中のすべてのEPSPSパラロガス遺伝子を標的にする2またはそれより多くのZFPを含む実施形態29の組成物。
33.植物細胞中の1つのEPSPSパラロガス遺伝子と特異的に結合し、切断する1つのZFNを含む実施形態30の組成物。
34.植物細胞中の2つまたはそれより多くのEPSPSパラロガス遺伝子と結合し、切断する2つまたはそれより多くのZFNを含む実施形態30の組成物。
35.植物細胞中のすべてのEPSPSパラロガス遺伝子と結合し、切断する1つまたは複数のZFNを含む実施形態30の組成物。
36.実施形態1〜28のいずれかによる1つまたは複数のジンクフィンガータンパク質(ZFP)をコードするポリヌクレオチド。
37.表Aに示されるようなジンクフィンガータンパク質をコードするヌクレオチド配列を含む実施形態36のポリヌクレオチド。
38.プロモーターと操作可能的に結合される実施形態36または37のいずれかのポリヌクレオチドを含むZFP発現ベクター。
39.実施形態38による1つまたは複数のZFP発現ベクターを含む植物宿主細胞。
40.細胞が1つまたは複数のZFP発現ベクターで安定的にトランスフェクトされる実施形態39の植物宿主細胞。
【0039】
41.細胞が1つまたは複数のZFP発現ベクターで一時的にトランスフェクトされる実施形態39の植物宿主細胞。
42.植物細胞中の1つまたは複数のEPSPS遺伝子の切断方法であって、以下の:
(a)実施形態10による1つまたは複数のZFNをコードする1つまたは複数のZFP発現ベクターで植物細胞をトランスフェクトすること;そして
(b)細胞中で1つまたは複数のZFNを発現すること(この場合、ZFNは1つまたは複数のEPSPS遺伝子を切断する)
を包含する方法。
43.少なくとも1つのZFP発現ベクターが植物細胞中に安定的にトランスフェクトされる実施形態42の方法。
44.少なくとも1つのZFP発現ベクターが一時的に植物細胞中にトランスフェクトされる実施形態42の方法。
45.少なくとも2つのZFP発現ベクターが細胞中にトランスフェクトされる実施形態42〜44の方法。
46.少なくとも2つのZFP発現ベクターが細胞中に同時トランスフェクトされる実施形態45の方法。
47.少なくとも2つのZFP発現ベクターが細胞中に逐次的にトランスフェクトされる実施形態45の方法。
48.植物細胞中のすべてのEPSPSパラロガス遺伝子が切断される実施形態42〜47のいずれかの方法。
49.植物細胞中の1つのEPSPSパラロガス遺伝子が切断される実施形態42〜47のいずれかの方法。
50.植物細胞中の少なくとも2つのEPSPSパラロガス遺伝子が切断される実施形態42〜47のいずれかの方法。
【0040】
51.第一および第二DNA配列を含むドナーベクターであって;
第一配列が第三発現と相同であり、第二配列が第四配列と相同であり;そして
第三および第四配列が染色体EPSPS DNA配列である
ドナーベクター。
52.第三および第四配列の近接縁が連続している実施形態51のドナーベクター。
53.第三および第四配列の近接縁が少なくとも1つのヌクレオチド対により分離される実施形態51のドナーベクター。
54.実施形態51〜53のいずれかのベクター(この場合、染色体EPSPS DNA配列は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列またはそれと少なくとも95%同一である配列を含むEPSPS遺伝子に属する)。
55.第三および第四配列が外因性配列である実施形態51〜54のいずれかのベクター。
56.第三および第四配列が内因性配列である実施形態51〜54のいずれかのベクター。
57.第一または第二配列のうちの少なくとも1つが100ヌクレオチドまたはそれ未満の長さを有する実施形態51〜56のいずれかのベクター。
58.第五配列をさらに含む実施形態51〜57のいずれかのベクターであって、第五配列が:
(a)第一および第二配列間に差し込まれ;そして
(b)外因性核酸配列である
ベクター。
59.第五配列が少なくとも1塩基対のサイズを有する実施形態58のベクター。
60.第五配列が選択可能マーカーをコードする配列を含む実施形態58または59のベクター。
【0041】
61.選択可能マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼからなる群から選択される実施形態60のベクター。
62.第五配列が、選択可能マーカー以外のタンパク質をコードする配列を含む実施形態58のベクター。
63.第五配列が1つまたは複数の転写調節配列を含む実施形態58〜62のいずれかのベクター。
64.第五配列が、タンパク質ターゲッティングを増強するかまたは縮小する1つまたは複数の配列を含む実施形態58〜63のいずれかのベクター。
65.1つまたは複数の転写調節配列がEPSPSの発現を増大する実施形態63のベクター。
66.1つまたは複数の転写調節配列がEPSPSの発現を低減する実施形態63のベクター。
67.第五配列がタンパク質の一部をコードする1つまたは複数の配列、あるいは小干渉RNAまたはミクロRNAを含む実施形態58〜66のいずれかのベクター。
68.タンパク質の部分をコードする配列がEPSPS染色体配列と相同である配列を含む実施形態67のベクター。
69.第五配列が突然変異体EPSPS染色体配列の野生型同等物を含む実施形態58のベクター。
70.第五配列が野生型EPSPS染色体配列の突然変異体同等物を含む実施形態58のベクター。
【0042】
71.突然変異体EPSPS染色体配列が除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大する実施形態70のベクター。
72.第一配列が第三配列と少なくとも35%の相同性を有する実施形態51〜71のいずれかのベクター。
73.第二配列が第四配列と少なくとも35%の相同性を有する実施形態51〜72のいずれかのベクター。
74.植物細胞のゲノム中への外因性核酸配列の導入方法であって、以下の:
(a)細胞を実施形態51〜73のいずれかによるドナーベクターと接触させるステップ;ならびに
(b)細胞中でジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現するステップ(この場合、ZFNは第三または第四配列のいずれかの3キロ塩基対内の染色体DNA中のEPSPS遺伝子を切断し;
したがって、ステップ(b)における染色体DNAの切断が相同組換えによるゲノム中へのドナーベクターの組入れを刺激する
こと包含する方法。
75.EPSPS遺伝子が配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%同一である配列を含む実施形態74の方法。
【0043】
76.植物細胞中の外因性核酸配列の生成物の発現方法であって、以下の:
(a)細胞を実施形態58〜73のドナーベクターと接触させるステップ;ならびに
(b)細胞中でジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現するステップ(この場合、ZFNは第三または第四配列のいずれかの3キロ塩基対内の染色体DNA中のEPSPS遺伝子を切断し;
したがって、ステップ(b)における染色体DNAの切断が、相同組換えによるゲノム中へのドナーベクターの組入れならびに外因性核酸配列の生成物の発現を生じる
こと包含する方法。
77.EPSPS遺伝子が配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも95%同一である配列を含む実施形態76の方法。
78.実施形態74または75のいずれかの方法により得られるトランスジェニック植物細胞。
79.実施形態78によるトランスジェニック植物細胞を含む植物。
80.植物細胞のゲノム中の分子内相同組換えのための方法であって、以下の:
(a)EPSPS遺伝子を含み、さらに第二配列と相同である第一配列を含むDNAセグメントを提供するステップ;ならびに
(b)上記DNAセグメントを実施形態14〜28のいずれかのZFNと接触させるステップ(この場合、ZFNはEPSPS遺伝子配列でDNAセグメントを切断し、それにより分子内相同組換えを刺激する)
を包含する方法。
【0044】
81.DNAセグメントが細胞に対して内因性である実施形態80の方法。
82.相同組換えが染色体中で起きる実施形態80または81の方法。
83.第一および第二配列間のDNAが染色体から欠失される実施形態82の方法。
84.EPSPS遺伝子がゲノムにおいて独自である実施形態80〜83のいずれかの方法。
85.EPSPS遺伝子の1つまたは複数のパラログがゲノム中に存在する実施形態80〜83のいずれかの方法。
86.ZFNが一対の融合タンパク質を含み、各融合タンパク質がIIS型制限エンドヌクレアーゼの切断ドメインと改変ジンクフィンガー結合ドメインとの間の融合物である実施形態80〜85のいずれかの方法。
87.第二配列が第一配列から少なくとも100塩基対にある実施形態80〜86のいずれかの方法。
88.EPSPS遺伝子配列が第一および第二配列から少なくとも100塩基対にある実施形態80〜86のいずれかの方法。
89.EPSPS遺伝子配列が第一および第二配列間にある実施形態80〜86のいずれかの方法。
90.第一または第二配列の一方が生物体に対して外因性である実施形態80〜89のいずれかの方法。
【0045】
91.第一または第二配列の両方が生物体に対して外因性である実施形態80〜90のいずれかの方法。
92.染色体から欠失される配列がEPSPS遺伝子の全部または一部をコードする実施形態83の方法。
93.染色体から欠失される配列が選択可能マーカーの全部または一部をコードする実施形態83の方法。
94.選択可能マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼからなる群から選択される実施形態93の方法。
95.欠失DNAが外因性配列に取って代わられる実施形態83の方法であって、以下の:
細胞中にポリヌクレオチドを導入するステップであって、ポリヌクレオチドが、以下の:
(a)第四および第五配列(ここで、第四配列は第一配列に近接した非欠失配列と相同であり、第五配列は第二配列に近接した非欠失配列と相同である);ならびに
(b)外因性配列
を含むステップ
をさらに包含する方法。
【0046】
96.外因性配列が選択可能マーカーである実施形態95の方法。
97.選択可能マーカーが、緑色蛍光タンパク質(GFP)、β−グルクロニダーゼ(GUS)、ホスフィノトリシンN−アセチルトランスフェラーゼ(PAT、BAR)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ、β−ラクタマーゼ、カテコールジオキシゲナーゼ、α−アミラーゼ、チロシナーゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、イクオリン、EPSPシンターゼ、ニトリラーゼ、アセトラクターゼシンターゼ(ALS)、ジヒドロフォレートレダクターゼ(DHFR)、ダラポンデハロゲナーゼおよびアントラニレートシンターゼからなる群から選択される実施形態96の方法。
98.外因性配列がEPSPS遺伝子配列である実施形態95の方法。
99.EPSPS遺伝子配列が突然変異を含む実施形態98の方法。
100.突然変異が除草剤グリコサートに対する植物の耐性を増大する実施形態99の方法。
【0047】
101.植物細胞のゲノムからのEPSPS遺伝子配列の欠失方法であって、以下の:
(a)EPSPS遺伝子配列を含む植物細胞を提供するステップ;そして
(b)細胞中で第一および第二ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を発現するステップであって、第一ZFNが第一切断部位で切断し、第二ZFNが第二切断部位で切断し、EPSPS遺伝子配列が第一切断部位および第二切断部位間に位置し、第一および第二切断部位の切断がEPSPS遺伝子配列の欠失を生じるステップ
を包含する方法。
102.EPSPS遺伝子配列が第一および第二切断部位の非相同末端結合により欠失される実施形態101の方法。
103.第一および第二切断部位が少なくとも100ヌクレオチドにより分離される実施形態101または102の方法。
104.植物細胞がトランスジェニック植物細胞である実施形態101または102の方法。
105.EPSPS遺伝子配列が外因性配列である実施形態101または102の方法。
106.EPSPS遺伝子配列が内因性配列である実施形態101または102の方法。
107.EPSPS遺伝子の調節の変調方法であって、以下の:
(a)EPSPS遺伝子配列を含む植物細胞を提供するステップ;ならびに
(b)細胞中のZFPを発現するステップであって、上記ZFPがEPSPS遺伝子中の標的部位と結合し、それによりEPSPS遺伝子の調節を変調するステップ
を包含する方法。
108.標的部位がEPSPS遺伝子の調節配列である実施形態107の方法。
109.標的部位がEPSPS遺伝子の転写開始部位の上流にある実施形態107の方法。
110.標的部位がEPSPS遺伝子の転写開始部位に隣接する実施形態107の方法。
【0048】
111.標的部位がEPSPS遺伝子の転写開始部位の下流にある実施形態107の方法。
112.ZFPがEPSPS遺伝子の転写を増大する実施形態107の方法。
113.ZFPが除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大する実施形態112の方法。
114.ZFPがEPSPS遺伝子の転写を低減する実施形態107の方法。
115.ZFPが除草剤グリホサートに対する植物の耐性を低減する実施形態114の方法。
【0049】
本開示のこれらのおよびその他の実施形態は、本明細書中の開示にかんがみて、当業者は容易に理解する。
【発明を実施するための形態】
【0075】
植物中の遺伝子、特に植物中のパラロガス遺伝子の発現の変調、ならびに標的化切断および変更に有用な組成物および方法が、本明細書中で開示される。パラロガス遺伝子の調節は、例えば、改変ZFP転写因子を用いるかまたは遺伝子調節領域を修飾することにより変調され得る。遺伝子は、例えば標的化切断とその後の染色体内相同組換えにより、あるいは標的化切断とその後の外因性ポリヌクレオチド(遺伝子ヌクレオチド配列との相同性を有する1つまたは複数の領域を含む)とゲノム配列との間の相同組換えにより、変更され得る。植物中のパラロガス遺伝子の非限定例は、EPSPS遺伝子である。
【0076】
ゲノム配列は、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えばミトコンドリア、葉緑体)、人工染色体、および細胞中に存在する任意のその他の型の核酸中に存在するもの、例えば増幅配列、二重微小染色体、ならびに内因性または感染性細菌およびウイルスのゲノムを包含する。ゲノム配列は、正常(すなわち、野生型)または突然変異体であり得る;突然変異体配列は、例えば挿入、欠失、転座、再編成および/または点突然変異を含み得る。ゲノム配列は、多数の異なる対立遺伝子のうちの1つも含み得る。
【0077】
本明細書中に開示される組成物は、改変ジンクフィンガー結合ドメイン、これらのポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびにZFPおよびZFPコードポリヌクレオチドの組合せからなる1つまたは複数のZFPを含む。ジンクフィンガー結合ドメインは、1つまたは複数のジンクフィンガー(例えば2、3、4、5、6、7、8、9またはそれより多くのジンクフィンガー)を含み得るし、任意のEPSPSゲノム配列と結合するよう改変され得る。
【0078】
本明細書中に記載されるようなZFPは、遺伝子転写の活性化または抑制により、EPSPS遺伝子発現を調節するために用いられ得る。調節ドメインに連結されるジンクフィンガードメインの融合物を含むZFPは、転写を活性化するかまたは抑制するキメラ転写因子を作製するよう構築され得る。ZFPは、ジンクフィンガードメインをヌクレアーゼ切断ドメイン(または切断半ドメイン)と連結して、ジンクフィンガーヌクレアーゼを生じることにより、当該EPSPSゲノム領域の標的化切断のためにも用いられ得る。したがって、遺伝子調節、切断または組換えが所望される当該標的EPSPSゲノム領域を同定することにより、本明細書中に開示される方法に従って、そのゲノム領域中のEPSPS遺伝子配列を認識するよう改変されたジンクフィンガードメインと連結される1つまたは複数の調節ドメインおよび/または切断ドメイン(切断半ドメイン)を含む1つまたは複数の融合タンパク質を含むジンクフィンガータンパク質を構築し得る。細胞中の融合タンパク質(単数または複数)を含むこのようなZFPの存在は、融合タンパク質(単数または複数)とその(それらの)結合部位(単数または複数)との結合、ならびにゲノム領域内または付近での調節または切断の変更を生じる。さらに、EPSPSゲノム領域が切断され、そのEPSPSゲノム領域と相同である外因性ポリヌクレオチドも細胞中に存在する場合、相同組換えは、EPSPSゲノム領域と外因性ポリヌクレオチドとの間で高率で起きる。
【0079】
植物細胞は1つまたは複数の相同またはパラロガスEPSPS遺伝子配列を含有し、その任意数またはそのすべてが、本明細書中に開示される方法により修飾のための標的にされ得る。したがって、本明細書中に記載される組成物は、植物細胞中の1つまたは複数のEPSPS遺伝子を、例えば植物細胞中に存在する1、2、3、4、5または任意数までのEPSPSパラログまたはすべてのEPSPSパラログを標的にし得る。いくつかのZFPは、植物細胞中の1つの特定EPSPSパラロガス遺伝子と特異的に結合し得る。他のZFPは、植物細胞中の多数のEPSPSパラロガス遺伝子と結合し得る。したがって、1つまたは複数のZFPまたは異なる特異性を有するZFPをコードする発現ベクターは、植物中の当該する所望のEPSPS遺伝子を標的にするよう組合され得る。
【0080】
概要
本明細書中に開示される方法の実行、ならびに本明細書中に開示される組成物の調製および使用は、別記しない限り、分子生物学、生化学、クロマチン構造および解析、計算化学、細胞培養、組換えDNA、ならびに当該技術分野の技術内であるような関連分野を用いる。これらの技法は、文献中で十分に説明されている。例えば、Sambrook et al. MOLECULAR CLONING: A LABORATORY MANUAL, Second edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989 and Third edition, 2001;Ausubel et al.、CURRENT PROTOCOLS IN MOLECULAR BIOLOGY, John Wiley & Sons, New York, 1987 and periodic updates;the series METHODS IN ENZYMOLOGY, Academic Press, San Diego;Wolffe, CHROMATIN STRUCTURE AND FUNCTION, Third edition, Academic Press, San Diego, 1998;METHODS IN ENZYMOLOGY, Vol. 304, “Chromatin” (P.M. Wassarman and A. P. Wolffe, eds.), Academic Press, San Diego, 1999;およびMETHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, Vol. 119, “Chromatin Protocols” (P. B. Becker, ed.) Humana Press, Totowa, 1999を参照されたい。
【0081】
定義
「核酸」、「ポリヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド」という用語は互換的に用いられ、線状または環状立体配座での、ならびに一本鎖または二本鎖形態での、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドポリマーを指す。本開示の目的のために、これらの用語はポリマーの長さに関して限定するよう意図されるべきでない。本用語は、天然ヌクレオチドの既知の類似体、ならびに塩基、糖および/またはリン酸部分(例えば、ホスホロチオエート主鎖)で修飾されるヌクレオチドを包含し得る。概して、特定のヌクレオチドの類似体は、同一の塩基対合特異性を有する;すなわち、Aの類似体は、Tと塩基対合する。
【0082】
「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために互換的に用いられる。本用語は、1つまたは複数のアミノ酸が対応する天然アミノ酸の化学的類似物または修飾誘導体であるアミノ酸ポリマーにも当てはまる。
【0083】
「結合」は、高分子物質間(例えば、タンパク質および核酸間)の配列特異的非共有的相互作用を指す。全体としての結合相互作用が配列特異的である限り、相互作用の構成成分すべてが配列特異的である(例えばDNA主鎖中のリン酸残基との接触)必要はない。このような相互作用は、一般的に、10
-6M
-1またはそれより低い解離定数(K
d)により特徴づけられる。「親和性」は、結合の強度を指す:結合親和性増大は、低K
dと相関する。
【0084】
「結合タンパク質」は、別の分子と非共有的に結合し得るタンパク質である。結合タンパク質は、例えばDNA分子(DNA結合タンパク質)、RNA分子(RNA結合タンパク質)および/またはタンパク質分子(タンパク質結合タンパク質)と結合し得る。タンパク質結合タンパク質の場合、それはそれ自体と結合し(ホモ二量体、ホモ三量体等を形成し)得るし、および/またはそれは異なる単数または複数のタンパク質のうちの1つまたは複数の分子と結合し得る。結合タンパク質は、1つより多くの型の結合活性を有し得る。例えば、ジンクフィンガータンパク質は、DNA結合、RNA結合およびタンパク質結合活性を有する。
【0085】
「ジンクフィンガーDNA結合タンパク質」(または結合ドメイン)は、その構造が亜鉛イオンの配位により安定化される結合ドメイン内のアミノ酸配列の領域である1つまたは複数のジンクフィンガーにより配列特異的方式でDNAを結合するタンパク質、または大型タンパク質内のドメインである。ジンクフィンガーDNA結合タンパク質という用語は、しばしば、ジンクフィンガータンパク質またはZFPと短縮して表される。
【0086】
ジンクフィンガー結合ドメインは、予定ヌクレオチド配列(例えば、EPSPS遺伝子配列)と結合するよう「改変」され得る。ジンクフィンガータンパク質を改変するための方法の非限定例は、設計および選択である。設計されたジンクフィンガータンパク質は、天然には生じないタンパク質であり、その設計/組成は、主に合理的判定基準に起因する。設計のための合理的判定基準としては、現存するZFP設計および結合データの情報を保存するデータベース中の情報を処理するための置換規則およびコンピュータアルゴリズムの適用が挙げられる。例えば米国特許第6,140,081号;第6,453,242号;第6,534,261号;および第6,785,613号を参照されたい;WO 98/53058;WO 98/53059;WO 98/53060;WO 02/016536;およびWO 03/016496;ならびに米国特許第6,746,838号;第6,866,997号;および第7,030,215号も参照されたい。したがって、「改変」ジンクフィンガータンパク質または「非天然」ジンクフィンガータンパク質は、構成成分ジンクフィンガーDNA結合ドメイン(認識らせん)のうちの1つまたは複数が天然ではなく、予備選択標的部位と結合するよう改変されているものである。
【0087】
「選択された」ジンクフィンガータンパク質は、その産生が主に経験的プロセス、例えばファージ表示、相互作用トラップまたはハイブリッド選択に起因する。例えば米国特許第5,789,538号;米国特許第5,925,523号;米国特許第6,007,988号;米国特許第6,013,453号;米国特許第6,200,759号;米国特許第6,733,970号;米国特許RE39,229号;ならびにWO 95/19431;WO 96/06166;WO 98/53057;WO 98/54311;WO 00/27878;WO 01/60970;WO 01/88197およびWO 02/099084を参照されたい。
【0088】
「配列」という用語は、DNAまたはRNAであり得る;線状、環状または分枝鎖であり得る、そして一本鎖または二本鎖であり得る任意の長さのヌクレオチド配列を指す。「ドナー配列」という用語は、ゲノム中に挿入されるヌクレオチド配列を指す。ドナー配列は、任意の長さ、例えば2〜25,000ヌクレオチド長(またはその間のまたはそれ以上の任意の整数値)、好ましくは約100〜5,000ヌクレオチド長(またはその間の任意の整数)、さらに好ましくは約200〜2,500ヌクレオチド長を有し得る。
【0089】
「相同配列」は、第二配列とある程度の配列同一性を共有する第一配列を指し、その配列は第二配列のものと同一である。「相同、非同一配列」は、第二配列とある程度の配列同一性を共有する第一配列を指すが、その配列は第二配列のものと同一ではない。例えば、突然変異体遺伝子の野生型配列を含むポリヌクレオチドは、突然変異体遺伝子の配列と相同で且つ非同一である。ある実施形態では、2つの配列間の相同性の程度は、正常細胞機序を利用して、その間の相同組換えを可能にするのに十分である。2つの相同、非同一配列は任意の長さであり、それらの非相同度は単一ヌクレオチドと同じくらい小さい(例えば、標的化相同組換えによるゲノム点突然変異の修正に関して)か、あるいは10キロ塩基またはそれ以上の大きさ(例えば、染色体中の予定部位での遺伝子の挿入に関して)であり得る。相同非同一配列を含む2つのポリヌクレオチドは、同一長である必要はない。例えば、20〜10,000ヌクレオチドまたはヌクレオチド対の外因性ポリヌクレオチド(すなわちドナーポリヌクレオチド)が用いられ得る。
【0090】
核酸およびアミノ酸配列同一性を確定するための技法は、当該技術分野で既知である。典型的には、このような技法としては、遺伝子に関するmRNAのヌクレオチド配列を確定すること、および/またはそれによりコードされるアミノ酸配列を確定し、これらの配列を第二のヌクレオチドまたはアミノ酸配列と比較することが挙げられる。ゲノム配列も、このようにして確定され、比較され得る。概して、同一性は、それぞれ2つのポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列の正確なヌクレオチド−ヌクレオチドまたはアミノ酸−アミノ酸対応を指す。2またはそれより多い配列(ポリヌクレオチドまたはアミノ酸)は、それらの同一性%を確定することにより比較され得る。2つの配列の同一性%は、核酸配列であれ、アミノ酸配列であれ、2つの一列に並んだ配列間の正確な整合数を短い方の配列の長さで割って、100を掛けた値である。核酸配列に関するおよそのアラインメントは、Smith and Waterman,
Advances in Applied Mathematics 2: 482-489 (1981)の局所相同性アルゴリズムにより提供される。このアルゴリズムは、Dayhoff,
Atlas of Protein Sequences and Structure, M.O. Dayhoff ed., 5 suppl. 3: 353-358, National Biomedical Research Foundation, Washington, D.C., USAにより開発され、Gribskov,
Nucl. Acids Res. 14(6): 6745-6763 (1986)により、正規化されたスコアマトリックスを用いることにより、アミノ酸配列に適用され得る。配列の同一性%を確定するためのこのアルゴリズムの例示的手段は、「BestFit」ユーティリティアプリケーションにおいてGenetics Computer Group (Madison, WI)により提供される。この方法に関するデフォルトパラメーターは、Wisconsin Sequence Analysis Package Program Manual, Version 8 (1995)(Genetics Computer Group, Madison, WIから入手可能)に記載されている。本開示の状況で同一性%を確立する好ましい方法は、エジンバラ大学により著作権所有され、John F. Collins and Shane S. Sturrokにより開発され、IntelliGenetics, Inc. (Mountain View, CA)により配給されるプログラムのMPSRCHパッケージを用いることである。この一続きのパッケージから、デフォルトパラメーターがスコア表に関して用いられる場合(例えば、ギャップ開始ペナルティ 12、ギャップ伸長ペナルティ 1、およびギャップ 6)、Smith-Watermanアルゴリズムが用いられ得る。生成されたデータから、「整合」値は配列同一性を反映する。配列間の同一性または類似性の%を算定するためのその他の適切なプログラムは当該技術分野で一般的に知られており、例えば、別のアラインメントプログラムはBLASTであり、デフォルトパラメーターとともに用いられる。例えば、BLASTNおよびBLASTPは、以下のデフォルトパラメーターを用いて使用され得る:遺伝暗号=標準;フィルター=なし;鎖=両方;カットオフ=60;期待値=10;マトリックス=BLOSUM62;説明=50配列;並べ替え=高スコア順;データベース=非冗長、GenBank+EMBL+DDBJ+PDB+GenBank CDS翻訳+スイス・タンパク質+Spupdate+PIR。これらのプログラムの詳細は、インターネット上で見出され得る。本明細書中に記載される配列に関して、所望程度の配列同一性の範囲は、約35%〜100%、ならびにその間の任意の整数値である。典型的には、配列間の同一性%は、少なくとも35%〜40%;40%〜45%;45%〜50%;50%〜60%;60%〜70%;70%〜75%、好ましくは80〜82%、さらに好ましくは85〜90%、さらに好ましくは92%、さらに好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性である。
【0091】
代替的には、ポリヌクレオチド間の配列同一性の程度は、相同領域間の安定二重鎖の形成を可能にする条件下でポリヌクレオチドをハイブリダイズ氏、その後、一本鎖特異的ヌクレアーゼ(単数または複数)で消化し、消化断片のサイズを確定することにより、確定され得る。2つの核酸または2つのポリペプチド配列は、上記の方法を用いて確定されるように、限定長の分子全体で配列が少なくとも約70%〜75%、好ましくは80%〜82%、さらに好ましくは85%〜90%、さらに好ましくは92%、さらに好ましくは95%、最も好ましくは98%の配列同一性を示す場合に、互いに実質的に相同である。本明細書中で用いる場合、実質的に相同とは、特定DNAまたはポリペプチド配列との完全同一性を示す配列も指す。実質的に相同であるDNA配列は、その特定の系に関して限定されるように、例えば緊縮条件下で、サザンハイブリダイゼーション実験で同定され得る。適切なハイブリダイゼーション条件を限定することは、当該技術分野の技術の範囲内である(例えば、Sambrook et al.、上記;
Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach, editors B.D. Hames and S.J. Higgins, (1985) Oxford;Washington, DC; IRL Press参照)。
【0092】
2つの核酸断片の選択的ハイブリダイゼーションは、以下のように確定され得る。2つの核酸分子間の配列同一性の程度は、このような分子間のハイブリダイゼーション事象の効率および強度に影響を及ぼす。部分的に同一の核酸配列は、完全同一配列と標的分子とのハイブリダイゼーションを少なくとも部分的に抑制する。完全同一配列のハイブリダイゼーションの抑制は、当該技術分野でよく知られているハイブリダイゼーション検定(例えば、サザン(DNA)ブロット、ノーザン(RNA)ブロット、溶液ハイブリダイゼーション等。Sambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.参照)を用いて査定され得る。このような検定は、種々の程度の選択性を用いて、例えば低緊縮から高緊縮まで変化する条件を用いて、実行され得る。低緊縮条件が用いられる場合、非特異的結合の非存在は、部分的配列同一性さえ欠く第二プローブ(例えば、標的分子と約30%未満の配列同一性を有するプローブ)を用いて査定され得るので、したがって、非特異的結合事象の非存在下では、第二プローブは標的とハイブリダイズしない。
【0093】
ハイブリダイゼーションベースの検出系を利用する場合、参照核酸配列と相補的である核酸プローブが選択され、次に、適切な条件の選択により、プローブおよび参照配列は互いに選択的にハイブリダイズし、または結合して、二重鎖分子を形成する。中等度の緊縮ハイブリダイゼーション条件下で参照配列と選択的にハイブリダイズし得る核酸分子は、典型的には、選択核酸プローブの配列と少なくとも約70%の配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸の検出を可能にする条件下でハイブリダイズする。緊縮ハイブリダイゼーション条件は、典型的には、選択核酸プローブの配列と約90〜95%より高い配列同一性を有する少なくとも約10〜14ヌクレオチド長の標的核酸配列の検出を可能にする。プローブおよび参照配列が特定程度の配列同一性を有するプローブ/参照配列ハイブリダイゼーションに有用なハイブリダイゼーション条件は、当該技術分野で知られているように確定され得る(例えば、
Nucleic Acid Hybridization: A Practical Approach, editors B.D. Hames and S.J. Higgins, (1985) Oxford;Washington, DC; IRL Press参照)。
【0094】
ハイブリダイゼーションのための条件は、当業者によく知られている。ハイブリダイゼーション緊縮度は、ハイブリダイゼーション条件が、不整合ヌクレオチドを含有するハイブリダイズの形成を退ける程度を指す。ハイブリダイゼーションの緊縮度に影響を及ぼす因子は当業者によく知られており、例としては温度、pH、イオン強度および有機溶媒、例えばホルムアミドおよびジメチルスルホキシドの濃度が挙げられるが、これらに限定されない。当業者に知られているように、ハイブリダイゼーション緊縮度は、温度が高いほど、イオン強度が低いほど、そして溶媒濃度が低いほど増大される。
【0095】
ハイブリダイゼーションのための緊縮条件に関して、例えば以下の因子:配列の長さおよび性質、種々の配列の塩基組成、塩およびその他のハイブリダイゼーション溶液構成成分の濃度、ハイブリダイゼーション溶液中の遮断剤(例えば、硫酸デキストリンおよびポリエチレングリコール)の存在または非存在、ハイブリダイゼーション反応温度および時間パラメーター、ならびに種々の洗浄条件を変えることにより、特定緊縮度を確立するための多数の等価の条件が用いられ得る、ということが当該技術分野でよく知られている。特定組のハイブリダイゼーション条件の選択は、当該技術分野における標準方法に従って選択される(例えば、Sambrook et al.,
Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, (1989) Cold Spring Harbor, N.Y.参照)。
【0096】
「組換え」は、2つのポリヌクレオチド間の遺伝情報の交換プロセスを指す。この開示の目的のために、「相同組換え(HR)」は、例えば細胞における二本鎖切断の修復中に起きるこのような交換の特殊形態を指す。このプロセスは、ドナーから標的への遺伝情報の移動をもたらすため、ヌクレオチド配列相同性を必要とし、「標的」分子(すなわち、二本鎖切断を経たもの)の鋳型修復のための「ドナー」分子を用い、そして「非交差遺伝子変換」または「短い領域の遺伝子変換」として様々に知られている。任意の特定の理論に縛られることなく考えると、このような移動は、切断標的とドナーとの間に生じるヘテロ二重鎖DNAの不整合修正、および/または標的および/または関連プロセスの一部になる遺伝情報を再合成するためにドナーが用いられる「合成依存性鎖アニーリング」を包含し得る。このような特殊HRは、しばしば、ドナーポリヌクレオチドの配列の一部または全部が標的ポリヌクレオチド中に組入れられるよう、標的分子の配列の変更を生じる。
【0097】
「切断」は、DNA分子の共有的主鎖の破損を指す。切断は、種々の方法、例えばホスホジエステル結合の酵素的または化学的加水分解(これらに限定されない)により開始され得る。一本鎖切断および二本鎖切断がともに可能であり、二本鎖切断は2つの異なる一本鎖切断事象の結果として生じ得る。DNA切断は、平滑末端または付着末端の生成を生じ得る。ある実施形態では、融合ポリペプチドは標的化二本鎖DNA切断のために用いられる。
【0098】
「切断ドメイン」は、DNA切断のための触媒的活性を保有する1つまたは複数のポリペプチド配列を含む。切断ドメインは、単一ポリペプチド鎖中に含入され得るし、あるいは切断活性は2つ(またはそれより多く)のポリペプチドの会合に起因し得る。
【0099】
「切断半ドメイン」は、第二ポリペプチド(同一のまたは異なる)と協力して、切断活性(好ましくは二本鎖切断活性)を有する複合体を形成するポリペプチド配列である。
【0100】
「クロマチン」は、細胞ゲノムを含む核タンパク質構造である。細胞クロマチンは、核酸、主にDNA、およびタンパク質、例えばヒストンおよび非ヒストン染色体タンパク質を含む。真核生物細胞クロマチンの大部分はヌクレオソームの形態で存在し、この場合、ヌクレオソームコアは、ヒストンH2A、H2B、H3およびH4のうちの各々2つを含む八量体と会合される約150塩基対のDNAを含み;リンカーDNA(生物体によって可変性の長さを有する)はヌクレオソームコア間に伸びる。ヒストンH1の分子は、一般的に、リンカーDNAと会合される。本開示の目的のために、「クロマチン」という用語は、原核生物および真核生物の両方のすべての型の細胞核タンパク質を包含するよう意図される。細胞クロマチンは、染色体およびエピソームクロマチンの両方を包含する。
【0101】
「染色体」は、細胞のゲノムの全部または一部を含むクロマチン複合体である。細胞のゲノムは、しばしば、細胞のゲノムを含む染色体すべての収集物であるその核型により特徴づけられる。細胞のゲノムは、1つまたは複数の染色体を含み得る。
【0102】
「エピソーム」は、複製核酸、核タンパク質複合体、または細胞の染色体核型の一部でない核酸を含む他の構造物である。エピソームの例としては、プラスミドおよびある種のウイルスゲノムが挙げられる。
【0103】
「アクセス可能領域」は、核酸中に存在する標的部位が標的部位を認識する外因性分子により結合され得る細胞クロマチン中の部位である。任意の特定の理論に縛られずに考えると、アクセス可能領域は、ヌクレオソーム構造中に包まれないものである。アクセス可能領域の異なる構造はしばしば、化学的および酵素的プローブ、例えばヌクレアーゼに対するその感受性により検出され得る。
【0104】
「標的部位」または「標的配列」は、結合分子が結合する核酸の一部を限定する核酸配列であるが、但し、結合のために十分な条件が存在する。例えば、配列5’−GAATTC−3’は、Eco RI制限エンドヌクレアーゼのための標的部位である。
【0105】
「外因性」分子は、細胞中に通常は存在しないが、しかし1つまたは複数の遺伝的、生化学的またはその他の方法により細胞中に導入され得る分子である。「細胞中の通常の存在」は、細胞の特定の発生段階および環境条件に関して確定される。したがって、例えば筋肉の胚発生中にのみ存在する分子は、成体筋肉細胞に関しては外因性分子である。同様に、熱ショックにより誘導される分子は、非熱ショック細胞に関しては外因性分子である。外因性分子は、例えば機能性バージョンの機能不全内因性分子または機能不全バージョンの正常機能内因性分子を含み得る。
【0106】
内因性分子は、特に、小分子(例えば、組合せ化学工程により生成される)、あるいは高分子、例えばタンパク質、核酸、炭水化物、脂質、糖タンパク質、リポタンパク質、多糖、上記の分子の任意の修飾誘導体、または上記分子のうちの1つまたは複数を含む任意の複合体であり得る。核酸はDNAおよびRNAを包含し、一本鎖または二本鎖であり得るし;線状、分枝鎖または環状であり得るし;任意の長さを有し得る。核酸は、二重鎖を形成し得るもの、ならびに三重鎖形成核酸を包含する。例えば米国特許第5,176,996号および第5,422,251号を参照されたい。タンパク質としては、DNA結合タンパク質、転写因子、クロマチン再構築因子、メチル化DNA結合タンパク質、ポリメラーゼ、メチラーゼ、デメチラーゼ、アセチラーゼ、デアセチラーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、インテグラーゼ、リコンビナーゼ、リガーゼ、トポイソメラーゼ、ギラーゼおよびヘリカーゼが挙げられるが、これらに限定されない。
【0107】
外因性分子は、内因性分子、例えば外因性タンパク質または核酸と同型の分子であり得る。例えば外因性核酸は、感染性ウイルスゲノム、アグロバクテリウム・ツメファシエンスT鎖、細胞中に導入されるプラスミドまたはエピソーム、細胞中に通常は存在しない染色体を含み得る。細胞中への外因性分子の導入のための方法は当業者に知られており、例としては、脂質媒介性運搬(すなわち、リポソーム、例えば中性および陽イオン性脂質)、電気穿孔、直接注入、細胞融合、粒子衝突、リン酸カルシウム共沈、DEAE−デキストラン媒介性運搬およびウイルスベクター媒介性運搬が挙げられるが、これらに限定されない。外因性分子は、非植物分子、例えば哺乳類(例えば、ヒトまたはヒト化)抗体であり得る。
【0108】
それに比して、「内因性」分子は、特定環境条件下の特定発生段階で特定細胞中に普通に存在するものである。例えば、内因性核酸は、染色体、ミトコンドリア、葉緑体またはその他の細胞小器官のゲノム、あるいは天然エピソーム核酸を含み得る。付加的内因性分子としては、タンパク質、例えば転写因子および酵素が挙げられる。
【0109】
「融合」分子は、2つまたはそれより多くの分子が、好ましくは共有的に連結される分子である。サブユニット分子は、同一化学型の分子であるか、または異なる化学型の分子であり得る。第一の型の融合分子の例としては、融合タンパク質(例えばZFP DNA結合ドメインと切断ドメインとの間の融合を含むZFN)および融合核酸(例えば、上記の融合タンパク質をコードする核酸)が挙げられるが、これらに限定されない。第二の型の融合分子の例としては、三重鎖形成核酸とポリペプチドとの間の融合物、ならびに副溝結合物質および核酸間の融合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0110】
細胞中の融合タンパク質の発現は、細胞への融合タンパク質の送達から、または細胞への融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドの送達により生じ得るが、この場合、ポリヌクレオチドは転写され、転写物は翻訳されて、融合タンパク質を生成する。トランス−スプライシング、ポリペプチド切断およびポリペプチド結紮も、細胞中のタンパク質の発現に関与し得る。細胞へのポリヌクレオチドおよびポリペプチド送達のための方法は、本開示の別の箇所に示されている。
【0111】
本開示の目的のための「遺伝子」としては、遺伝子産物をコードするDNA領域(下記参照)、ならびに遺伝子産物の産生を調節するすべてのDNA領域(このような調節配列がコードおよび/または転写配列に隣接するか否かにかかわらず)が挙げられる。したがって、遺伝子としては、プロモーター配列、ターミネーター、翻訳調節配列、例えばリボソーム結合部位および内部リボソーム進入部位、エンハンサー、サイレンサー、インスレーター、境界素子、複製開始点、マトリックス結合部位および遺伝子座制御領域が挙げられるが、これらに限定されない。
【0112】
「遺伝子発現」は、遺伝子中に含入される情報の遺伝子産物中への変換を指す。遺伝子産物は、遺伝子の直接転写産物(例えば、mRNA、tRNA、rRNA、アンチセンスRNA、リボザイム、shRNA、ミクロRNA、構造RNAまたは任意のその他の型のRNA)、あるいはmRNAの翻訳により産生されるタンパク質であり得る。遺伝子産物としては、キャッピング、ポリアデニル化、メチル化および編集のようなプロセスにより修飾されるRNA、ならびに例えばメチル化、アセチル化、リン酸化、ユビキチン化、ADP−リボシル化、ミリスチル化およびグリコシル化により修飾されるタンパク質も挙げられる。
【0113】
遺伝子発現の「変調」は、遺伝子の活性における変化を指す。発現の変調としては、遺伝子活性化および遺伝子抑制が挙げられるが、これらに限定されない。
【0114】
「植物」細胞としては、単子葉(単子葉類)または双子葉(双子葉類)植物の細胞が挙げられるが、これらに限定されない。単子葉類の非限定例としては、穀類植物、例えばトウモロコシ、コメ、オオムギ、オートムギ、コムギ、モロコシ、ライムギ、サトウキビ、パイナップル、タマネギ、バナナおよびココナツが挙げられる。双子葉類の非限定例としては、タバコ、トマト、ヒマワリ、ワタ、テンサイ、ジャガイモ、レタス、メロン、ダイズ、アブラナ(ナタネ)およびアルファルファが挙げられる。植物細胞は、植物の任意の部分から、および/または植物発生の任意の段階からであり得る。
【0115】
「当該領域」は、細胞クロマチンの任意の領域、例えば外因性分子を結合することが望ましい遺伝子、あるいは遺伝子内のまたは遺伝子に隣接する非コード配列である(例えば、当該EPSPSゲノム領域は、EPSPS遺伝子内のまたはそれに隣接する領域を包含する)。結合は、標的化DNA切断および/または標的化組換えの目的のためであり得る。当該領域は、染色体、エピソーム、細胞小器官ゲノム(例えばミトコンドリア、葉緑体)または感染性ウイルスゲノム中に存在し得る。当該領域は、遺伝子のコード領域、転写非コード領域、例えばリーダー配列、トレーラー配列またはイントロン内、あるいはコード領域の上流または下流の非転写領域内であり得る。当該領域は、単一ヌクレオチド対と同じくらい小さいか、または25,000ヌクレオチド対長まで、あるいは任意の整数値のヌクレオチド対であり得る。
【0116】
「操作性連結」および「操作的に連結される」(または「操作可能的に連結される」)という用語は、2つまたはそれより多くの構成成分(例えば配列素子)の並置に関して互換的に用いられ、この場合、構成成分は、両方の構成成分が正常に機能し、そして構成成分のうちの少なくとも1つが他の構成成分のうちの少なくとも1つで発揮される機能を媒介し得る実現性を可能にするよう、整列される。例証として、転写調節配列、例えばプロモーターは、転写調節配列が1つまたは複数の転写調節因子の存在または非存在に応答して、コード配列の転写のレベルを制御する場合、コード配列と操作的に連結される。転写調節配列は、一般的に、コード配列とシスで操作的に連結されるが、しかしそれと直接隣接する必要はない。例えば、エンハンサーは、それらが連続していなくても、コード配列と操作的に連結される転写調節配列である。
【0117】
融合ポリペプチドに関して、「操作的に連結される」という用語は、構成成分の各々が、他の構成成分との連結に際して、それがそのように連結されていない場合と同一の機能を実施する、という事実を指す。例えば、ZFP DNA結合ドメインが切断ドメインと融合される融合ポリペプチドに関して、ZFP DNA結合ドメインおよび切断ドメインは、融合ポリペプチドにおいて、ZFP DNA結合ドメイン部分がその標的部位および/またはその結合部位を結合し得るが、一方、切断ドメインが標的部位の近くでDNAを切断し得る場合、操作性連結状態である。
【0118】
タンパク質、ポリペプチドまたは核酸の「機能的断片」は、その配列が全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一でないが、依然として全長タンパク質、ポリペプチドまたは核酸と同一の機能を保持するタンパク質、ポリペプチドまたは核酸である。機能的断片は、対応するネイティブ分子より多いか、少ないかまたは同一の数の残基を保有し得るし、および/または1つまたは複数のアミノ酸またはヌクレオチド置換を含有し得る。核酸の機能(例えば、コード機能、別の核酸とハイブリダイズする能力)を確定するための方法は、当該技術分野でよく知られている。同様に、タンパク質機能を確定するための方法はよく知られている。例えば、ポリペプチドのDNA結合機能は、例えばフィルター結合、電気泳動移動度シフトまたは免疫沈降検定により確定され得る。DNA切断は、ゲル電気泳動により検定され得る(上記のAusubel et al.参照)。別のタンパク質と相互作用するタンパク質の能力は、例えば共免疫沈降、2−ハイブリッド検定または相補性(遺伝的および生化学的の両方)により確定され得る。例えば、Fields et al. (1989) Nature 340: 245-246;米国特許第5,585,245号およびPCT WO 98/44350を参照されたい。
【0119】
標的部位
開示される方法および組成物は、調節ドメインまたは切断ドメイン(または切断半ドメイン)およびジンクフィンガードメインを含む融合タンパク質を含むZFPを包含し、この場合、ジンクフィンガードメインは、細胞クロマチン中の配列(例えば、EPSPS遺伝子標的部位または結合部位)と結合することにより、調節ドメインまたは切断ドメイン(または切断半ドメイン)の活性を配列の付近に向けて、それゆえ、標的配列の近くで転写を変調するかまたは切断を誘導する。この開示の他の箇所に記述されているように、ジンクフィンガードメインは、事実上任意の所望の配列と結合するよう改変され得る。したがって、遺伝子調節、切断または組換えが所望される配列を含有する当該領域を同定後、1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメインは、改変されて、当該領域中の1つまたは複数の配列と結合し得る。
【0120】
ジンクフィンガードメインによる結合のための細胞クロマチン中の当該EPSPSゲノム領域(例えば標的部位)の選択は、例えば共有米国特許第6,453,242号(2002年9月17日)(これは、選択配列と結合するようZFPを設計するための方法も開示する)に開示された方法に従って成し遂げられ得る。標的部位の選択のためにヌクレオチド配列の簡易視覚検査も用いられ得るということは、当業者に明らかである。したがって、標的部位選択の任意の手段が、特許請求される方法に用いられ得る。
【0121】
標的部位は、一般的に、複数の隣接標的サブサイトで構成される。標的サブサイトは、個々のジンクフィンガーにより結合される配列(通常は、隣接四つ組と1つのヌクレオチドにより重複し得るヌクレオチド三つ組またはヌクレオチド四つ組)を指す(例えばWO 02/077227参照)。ジンクフィンガータンパク質が最も多く接触する鎖が標的鎖「第一認識鎖」または「第一接触鎖」と呼ばれる場合、いくつかのジンクフィンガータンパク質は標的鎖中の3塩基三つ組ならびに非標的鎖上の第四の塩基と結合する。標的部位は、一般的に、少なくとも9ヌクレオチドの長さを有し、したがって、少なくとも3つのジンクフィンガーを含むジンクフィンガー結合ドメインにより結合される。しかしながら、例えば、4-フィンガー結合ドメインの12−ヌクレオチド標的部位との、5−フィンガー結合ドメインの15−ヌクレオチド標的部位との、または6−フィンガー結合ドメインの18−ヌクレオチド標的部位との結合も可能である。明らかになるように、より大きい結合ドメイン(例えば、7−、8−、9−フィンガーおよびそれ以上)のより長い標的部位との結合も可能である。
【0122】
標的部位が3つのヌクレオチドの倍数である必要はない。例えば、交差鎖相互作用が起きる場合(例えば米国特許第6,453,242号およびWO 02/077227参照)、多フィンガー結合ドメインの個々のジンクフィンガーのうちの1つまたは複数が重複四つ組みサブサイトと結合し得る。その結果、3−フィンガータンパク質は10−ヌクレオチド配列を結合し得るが、この場合、第10ヌクレオチドは末端フィンガーにより結合される四つ組の一部であり、4-フィンガータンパク質は13−ヌクレオチド配列と結合し得るが、この場合、第13ヌクレオチドは末端フィンガーにより結合される四つ組の一部である、ということである。
【0123】
多フィンガー結合ドメイン中の個々のジンクフィンガー間のアミノ酸リンカー配列の長さおよび性質も、標的配列との結合に影響を及ぼす。例えば、多フィンガー結合ドメイン中の隣接ジンクフィンガー間のいわゆる「非正準リンカー」、「ロングリンカー」または「構造化リンカー」の存在は、それらのフィンガーに、直接隣接しないサブサイトを結合させ得る。このようなリンカーの非限定例は、例えば米国特許第6,479,626号およびWO 01/53480に記載されている。したがって、ジンクフィンガー結合ドメインに関する標的部位中の1つまたは複数のサブサイトは、1、2、3、4、5またはそれより多くのヌクレオチドにより互いから分離され得る。一例を挙げると、4-フィンガー結合ドメインは、配列中に、2連続3−ヌクレオチドサブサイト、1つの介在ヌクレオチドおよび2連続三つ組サブサイトを含む13−ヌクレオチド標的部位と結合し得る。異なる数のヌクレオチドにより分離される標的部位と結合するよう人工ヌクレアーゼを連結するための組成物および方法に関しては、米国特許出願61/130,099号も参照されたい。配列(例えば、標的部位)間の距離は、互いに最も近い配列の縁から測定した場合の、2つの配列間に介在するヌクレオチドまたはヌクレオチド対の数を指す。
【0124】
ある実施形態では、転写因子機能を有するZFPが意図される。転写因子機能に関しては、簡単な結合とプロモーターに十分に近いということが、一般的に必要とされることのすべてである。プロモーター、配向、ならびにその範囲内での距離に関しての正確な位置決めは、重大事というわけではない。この特徴は、人工転写因子を構築するための標的部位を選択するに際してかなりの柔軟性を可能にする。したがって、ZFPにより認識される標的部位は、任意に調節ドメインに連結されるZFPによる遺伝子発現の活性化または抑制を可能にする標的遺伝子中の任意の適切な部位であり得る。好ましい標的部位としては、転写開始部位に隣接する領域、転写開始部位の下流の領域または上流の領域が挙げられる。さらに、エンハンサー領域に位置する標的部位、レプレッサー部位、RNAポリメラーゼ休止部位、ならびに特異的調節部位(例えば、SP−1部位、低酸素状態応答素子、核内受容体認識素子、p53結合部位)、cDNAコード領域におけるまたは発現配列タグ(EST)コード領域における部位。
【0125】
他の実施形態では、細胞中での、ヌクレアーゼ活性を有するZFPが意図される。ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ドメインを含む融合タンパク質を含む(またはおのおのがジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質の)ZFNの発現は、標的配列に近接して切断を実行する。ある実施形態では、切断は、2つのジンクフィンガードメイン/切断半ドメイン融合分子の、別個の標的部位との結合に依っている。2つの標的部位は、反対DNA鎖上にあるか、代替的には、両方の標的部位が同一DNA鎖上に存在し得る。
【0126】
ジンクフィンガー結合ドメイン
ジンクフィンガー結合ドメインは、1つまたは複数のジンクフィンガーを含む(Miller et al. (1985) EMBO J. 4: 1609-1614;Rhodes (1993) Scientific American Feb.:56-65;米国特許第6,453,242号)。典型的には、単一ジンクフィンガードメインは、約30アミノ酸長である。各ジンクフィンガードメイン(モチーフ)は、2つのβシート(2つの不変システイン残基を含有するβターン中に保持される)およびαらせん(2つの不変ヒスチジン残基を含有する)を含有し、これらは、2つのシステインおよび2つのヒスチジンにより亜鉛原子の配位により特定立体配座で保持される、ということを、構造試験は実証した。
【0127】
ジンクフィンガーは、正準C
2H
2ジンクフィンガー(すなわち、亜鉛イオンが2つのシステインおよび2つのヒスチジン残基により配位結合されるもの)ならびに非正準ジンクフィンガー、例えばC
3Hジンクフィンガー(亜鉛イオンが3つのシステイン残基および1つのヒスチジン残基により配位結合されるもの)およびC
4ジンクフィンガー(亜鉛イオンが4つのシステイン残基により配位結合されるもの)の両方を包含する。WO 02/057293も参照されたい。
【0128】
ジンクフィンガー結合ドメインは、えり抜きの配列と結合するよう改変され得る。例えば、Beerli et al. (2002) Nature Biotechnol. 20: 135-141;Pabo et al. (2001) Ann. Rev. Biochem. 70: 313-340;Isalan et al. (2001) Nature Biotechnol. 19: 656-660;Segal et al. (2001) Curr. Opin. Biotechnol. 12: 632-637;Choo et al. (2002) Curr. Opin. Struct. Biol. 10: 411-416を参照されたい。改変ジンクフィンガー結合ドメインは、天然ジンクフィンガータンパク質と比較して、新規の結合特異性を有し得る。改変方法としては、合理的設計および種々の型の選択が挙げられるが、これらに限定されない。合理的設計としては、例えば三つ組(または四つ組)ヌクレオチド配列および個々のジンクフィンガーアミノ酸配列を含むデータベースの使用(この場合、各三つ組または四つ組ヌクレオチド配列は、特定の三つ組または四つ組配列を結合するジンクフィンガーの1つまたは複数のアミノ酸配列と会合される)が挙げられる。例えば共有米国特許第6,453,242号および第6,534,261号参照。付加的設計方法は、例えば米国特許第6,746,838号;第6,785,613号;第6,866,997号および第7,030,215号に開示されている。
【0129】
例示的選択方法、例えばファージ表示および2−ハイブリッド系は、米国特許第5,789,538号;第5,925,523号;第6,007,988号;第6,013,453号;第6,410,248号;第6,140,466号;第6,200,759号;および第6,242,568号;ならびにWO 98/37186;WO 98/53057;WO 00/27878;WO 01/88197およびGB 2,338,237に開示されている。
【0130】
ジンクフィンガー結合ドメインに関する結合特異性の増強は、例えば共有米国特許第6,794,136号に記載されている。
【0131】
個々のジンクフィンガーは3−ヌクレオチド(すなわち三つ組)配列(または一ヌクレオチドにより、隣接ジンクフィンガーの4−ヌクレオチド結合部位と重複し得る4−ヌクレオチド配列)と結合するため、ジンクフィンガー結合ドメインが改変されて結合する配列(例えば、標的配列)の長さは、改変ジンクフィンガー結合ドメイン中のジンクフィンガーの数を確定する。例えば、フィンガーモチーフが重複サブサイトと結合しないZFPに関して、6−ヌクレオチド標的配列は、2−フィンガー結合ドメインにより結合される;9−ヌクレオチド標的配列は、3−フィンガー結合ドメインにより結合される等である。本明細書中で特に言及されるように、標的部位における個々のジンクフィンガーに関する結合部位(すなわち、サブサイト)は連続している必要はないが、しかし、多フィンガー結合ドメイン中のジンクフィンガー間のアミノ酸配列(すなわち、フィンガー間リンカー)の長さおよび性質によって、1つまたはいくつかのヌクレオチドにより分離され得る。
【0132】
多フィンガージンクフィンガー結合ドメインでは、隣接ジンクフィンガーは約5アミノ酸のアミノ酸リンカー配列(いわゆる「正準」フィンガー間リンカー)により、代替的には、1つまたは複数の非正準リンカーにより、分離され得る(例えば米国特許第6,453,242号および第6,534,261号参照)。3つより多くのフィンガーを含む改変ジンクフィンガー結合ドメインに関して、ジンクフィンガーのうちのいくつかの間のより長い(「非正準」)フィンガー間リンカーの挿入は、それが結合ドメインによる結合の親和性および/または特異性を増大し得る場合、選択され得る(例えば米国特許第6,479,626号およびWO 01/53480参照)。したがって、多フィンガージンクフィンガー結合ドメインは、非正準フィンガー間リンカーの存在および位置に関しても特徴づけられ得る。例えば、3つのフィンガー(2つの正準フィンガー間リンカーにより連結される)、長いリンカーおよび3つの付加的フィンガー(2つの正準フィンガー間リンカーにより連結される)を含む6−フィンガージンクフィンガー結合ドメインは、2×3立体配置で示される。同様に、2つのフィンガー(その間に正準リンカーを有する)、長いリンカーおよび2つの付加的フィンガー(正準リンカーにより連結される)を含む結合ドメインは、2×2立体配置で示される。3つの2−フィンガー単位(その各々において、2つのフィンガーは正準リンカーにより連結される)を含むタンパク質(この場合、各2−フィンガー単位は長いリンカーにより隣接する2つのフィンガーに連結される)は、3×2タンパク質として言及される。
【0133】
多フィンガー結合ドメイン中の2つの隣接ジンクフィンガー間の長いまたは非正準リンカー−フィンガーリンカーは、しばしば、2つのフィンガーを、標的配列中では密着して連続しないサブサイトと結合させる。したがって、標的部位中のサブサイト間に1つまたは複数のヌクレオチドのギャップが存在し得る;すなわち、標的部位は、ジンクフィンガーにより接触されない1つまたは複数のヌクレオチドを含有し得る。例えば2×2ジンクフィンガー結合ドメインは、1つのヌクレオチドにより分離される2つの6−ヌクレオチド配列と結合し得る;すなわち、それは13−ヌクレオチド標的部位と結合する。Moore et al. (2001a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 1432-1436;Moore et al. (2001b) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 98: 1437-1441およびWO 01/53480も参照されたい。
【0134】
前記のように、標的サブサイトは、単一ジンクフィンガーにより結合される3−または4-ヌクレオチド配列である。ある目的のために、2−フィンガー単位は結合モジュールで示される。結合モジュールは、例えば特定の6−ヌクレオチド標的配列を結合する多フィンガータンパク質(一般的には3つのフィンガー)の状況で2つの隣接フィンガーに関して選択することにより得られる。代替的には、モジュールは、個々のジンクフィンガーの集合により構築され得る(WO 98/53057およびWO 01/53480も参照)。
【0135】
ジンクフィンガー結合ドメインは、1つまたは複数の相同(例えば、オルソロガスまたはパラロガス)EPSPS標的ゲノム配列を結合するよう意図される。例えば、ジンクフィンガー結合ドメインは、1つの独自のEPSPS標的配列と特異的に結合するよう意図され得る。代替的には、ジンクフィンガー結合ドメインは、多数のオルソロガスまたはパラロガスEPSPSゲノム配列を結合するよう意図され得る。
【0136】
一実施形態では、表Aに示されるようなアミノ酸配列を含むジンクフィンガー結合ドメインが本明細書中で記載される。別の実施形態では、本開示は、ジンクフィンガー結合ドメインをコードするポリヌクレオチドを提供し、この場合、ジンクフィンガー結合ドメインは表Aに示されるようなアミノ酸配列を含む。
【0137】
調節ドメイン
本明細書中に記載されるZFPは、任意に、遺伝子発現の変調のために調節ドメインと会合され得る。ZFPは、1つまたは複数の調節ドメイン、代替的には2つまたはそれより多くの調節ドメインと、共有的にまたは非共有的に会合され得るし、2つまたはそれより多くのドメインは、同一ドメインの2つのコピー、または2つの異なるドメインである。調節ドメインは、ZFPと共有的に、例えば、融合タンパク質の一部としてアミノ酸リンカーを介して、連結され得る。ZFPは、非共有的二量体化ドメイン、例えばロイシン/ジッパー、STATタンパク質N末端ドメインまたはFK506結合タンパク質を介しても、調節ドメインと会合され得る(例えば、O’Shea, Science 254: 539 (1991), Barahmand-Pour et al, Curr. Top. Microbiol. Immunol. 211: 121-128 (1996);Klemm et al., Annu. Rev. Immunol. 16: 569-592 (1998);Klemm et al., Annu. Rev. Immunol. 16: 569-592 (1998);Ho et al., Nature 382: 822-826 (1996);およびPomeranz et al., Biochem. 37: 965 (1998)参照)。調節ドメインは、任意の適切な位置で、例えばZFPのC−またはN−末端で、ZFPと会合され得る。
【0138】
ZFPへの付加のための一般的調節ドメインとしては、例えば転写因子(活性化因子、制御因子、活性化補助因子、制御補助因子)、サイレンサー、核ホルモン受容体、癌遺伝子転写因子(例えばmyc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリー成員等);DNA修復酵素ならびにそれらの会合因子および修飾因子;DNA再編成酵素ならびにそれらの会合因子および修飾因子;クロマチン会合タンパク質およびそれらの修飾因子(例えばキナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ);そしてDNA修飾酵素(例えばメチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ、エンドヌクレアーゼ)ならびにそれらの会合因子および修飾因子からのエフェクタードメインが挙げられる。
【0139】
調節ドメインを得ることが出来る転写因子ポリペプチドとしては、調節および基本転写に関与するものが挙げられる。このようなポリペプチドとしては、転写因子、それらのエフェクタードメイン、活性化補助因子、サイレンサー、核ホルモン受容体が挙げられる(例えば、転写に関与するタンパク質および核酸素子の検討に関しては、Goodrich et al., Cell 84: 825-30 (1996)を参照;転写因子は、概して、Barnes & Adcock, Clin. Exp. Allergy 25 Suppl. 2: 46-9 (1995)およびRoeder, Methods Enzymol. 273: 165-71 (1996)で検討されている)。転写因子専用のデータベースが知られている(例えばScience 269: 630 (1995)参照)。核ホルモン受容体転写因子は、例えばRosen et al., J Med. Chem. 38: 4855-74 (1995)に記載されている。転写因子のC/EBPファミリーは、Wedel et al., Immunobiology 193: 171-85 (1995)で検討されている。核ホルモン受容体により転写調節を媒介する活性化補助因子および制御補助因子は、例えばMeier, Eur. J Endocrinol. 134(2): 158-9 (1996);Kaiser et al., Trends Biochem. Sci. 21: 342-5 (1996);およびUtley et al., Nature 394:498-502 (1998)で検討されている。造血の調節に関与するGATA転写因子は、例えばSimon, Nat. Genet. 11: 9-11 (1995);Weiss et al., Exp. Hematol. 23: 99-107に記載されている。TATAボックス結合タンパク質(TBP)およびその会合TAPポリペプチド(TAF30、TAF55、TAF80、TAF10、TAFI50およびTAF250を包含する)は、Goodrich & Tjian, Curr. Opin. Cell Biol. 6: 403-9 (1994)およびHurley, Curr. Opin. Struct. Biol. 6: 69-75 (1996)に記載されている。転写因子のSTATファミリーは、例えばBarahmand-Pour et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 211: 121-8 (1996)で検討されている。疾患に関与する転写因子は、Aso et al., J Clin. Invest. 97: 1561-9 (1996)で検討されている。
【0140】
一実施形態では、ヒトKOX−1タンパク質からのKRAB抑制ドメインは、転写レプレッサーとして用いられる(Thiesen et al., New Biologist 2: 363-374 (1990);Margolin et al., PNAS 91: 4509-4513 (1994);Pengue et al., Nucl. Acids Res.22: 2908-2914 (1994);Witzgall et al., PNAS 91: 4514-4518 (1994))。別の実施形態では、KAP−1(KRAB制御補助因子)は、KRABとともに用いられる(Friedman et al., Genes Dev. 10: 2067-2078 (1996))、代替的には、KAP−1はZFPとだけで、用いられ得る。転写レプレッサーとして作用する他の好ましい転写因子および転写因子ドメインとしては、MAD(例えばSommer et al., J. Biol. Chem. 273: 6632-6642 (1998);Gupta et al., Oncogene 16: 1149-1159 (1998);Queva et al., Oncogene 16: 967-977 (1998);Larsson et al., Oncogene 15: 737-748 (1997);Laherty et al., Cell 89: 349-356 (1997);およびCultraro et al., Mol Cell. Biol.17: 2353-2359 (19977)参照);FKHR(横紋筋肉腫遺伝子におけるフォークヘッド;Ginsberg et al., Cancer Res. 15: 3542-3546 (1998);Epstein et al., Mol. Cell. Biol. 18: 4118-4130 (1998));EGR−1(初期増殖応答遺伝子産物−1;Yan et al., PNAS 95: 8298-8303 (1998);およびLiu et al., Cancer Gene Ther. 5: 3-28 (1998));ets2レプレッサー因子レプレッサードメイン(ERD;Sgouras et al., EMBO J 14: 4781-4793 (19095));ならびにMADsmSIN3相互作用ドメイン(SID;Ayer et al., Mol. Cell. Biol. 16: 5772-5781 (1996))が挙げられる。
【0141】
一実施形態では、HSV VP16活性化ドメインは、転写活性因子として用いられる(例えばHagmann et al., J. Virol. 71: 5952-5962 (1997)参照)。活性化ドメインを供給し得る他の好ましい転写因子としては、VP64活性化ドメイン(Seipel et al., EMBO J. 11: 4961-4968 (1996));核ホルモン受容体(例えばTorchia et al., Curr. Opin. Cell. Biol. 10: 373-383 (1998)参照);核因子κBのp65サブユニット(Bitko & Barik, J. Virol. 72: 5610-5618 (1998)およびDoyle & Hunt, Neuroreport 8: 2937-2942 (1997));ならびにEGR−1(初期増殖応答遺伝子産物−1;Yan et al., PNAS 95: 8298-8303 (1998);およびLiu et al., Cancer Gene Ther. 5: 3-28 (1998))が挙げられる。
【0142】
キナーゼ、ホスファターゼおよび遺伝子調節に関与するポリペプチドを修飾するその他のタンパク質も、ZFPに関する調節ドメインとして有用である。このような修飾因子は、しばしば、例えばホルモンにより媒介される転写のスイッチオンまたはオフに関与する。転写調節に関与するキナーゼは、Davis, Mol. Reprod. Dev. 42: 459-67 (1995)、Jackson et al., Adv. Second Messenger Phosphoprotein Res. 28: 279-86 (1993)およびBoulikas, Crit. Rev. Eukaryot. Gene Expr. 5: 1-77 (1995)で検討されているが、一方、ホスファターゼは、例えばSchonthal & Semin, Cancer Biol. 6: 239-48 (1995)で検討されている。核チロシンキナーゼは、Wang, Trends Biochem. Sci. 19: 373-6 (1994)に記載されている。
【0143】
記載されたように、有用なドメインは、癌遺伝子(例えばmyc、jun、fos、myb、max、mad、rel、ets、bcl、myb、mosファミリー成員)の遺伝子産物ならびにそれらの会合因子および修飾因子からも得られる。癌遺伝子は、例えばCooper, Oncogenes, 2
nd ed., The Jones and Bartlett Series in Biology, Boston, Mass., Jones and Bartlett Publishers, 1995に記載されている。ets転写因子は、Waslylk et al., Eur. J. Biochem. 211: 7-18 (1993)およびCrepieux et al., Crit. Rev. Oncog. 5: 615-38 (1994)で検討されている。myc癌遺伝子は、例えばRyan et al., Biochem. J. 314: 713-21 (1996)で検討されている。junおよびfos転写因子は、例えばThe Fos and Jun Families of Transcription Factors, Angel & Herrlich, eds. (1994)に記載されている。max癌遺伝子は、Hurlin et al., Cold Spring Harb. Symp. Quant. Biol. 59: 109-16で検討されている。myb遺伝子ファミリーは、Kanei-Ishii et al., Curr. Top. Microbiol. Immunol. 211: 89-98 (1996)で検討されている。mosファミリーは、Yew et al., Curr. Opin. Genet. Dev. 3: 19-25 (1993)で検討されている。
【0144】
ZFPは、DNA修復酵素およびそれらの会合因子および修飾因子から得られる調節ドメインを包含し得る。DNA修復系は、例えばVos, Curr. Opin. Cell Biol. 4: 385-95 (1992);Sancar, Ann. Rev. Genet. 29: 69-105 (1995);Lehmann, Genet. Eng. 17: 1-19 (1995);およびWood, Ann. Rev. Biochem. 65: 135-67 (1996)で検討されている。DNA再編成酵素ならびにそれらの会合因子および修飾因子も、調節ドメインとして用いられ得る(例えばGangloff et al., Experientia 50: 261-9 (1994);Sadowski, FASEB J. 7: 760-7 (1993)参照)。
【0145】
同様に、調節ドメインは、DNA修飾酵素(例えばDNAメチルトランスフェラーゼ、トポイソメラーゼ、ヘリカーゼ、リガーゼ、キナーゼ、ホスファターゼ、ポリメラーゼ)ならびにそれらの会合因子および修飾因子に由来し得る。ヘリカーゼは、Matson et al., Bioessays, 16: 13-22 (1994)で検討されており、メチルトランスフェラーゼは、Cheng, Curr. Opin. Struct. Biol. 5: 4-10 (1995)に記載されている。クロマチン会合タンパク質およびそれらの修飾因子(例えばキナーゼ、アセチラーゼおよびデアセチラーゼ)、例えばヒストンデアセチラーゼ(Wolffe, Science 272: 371-2 (1996))も、選ばれたZFPへの付加のためのドメインとして有用である。好ましい一実施形態では、調節ドメインは、転写レプレッサーとして作用するDNAメチルトランスフェラーゼである(例えばVan den Wyngaert et al., FEBS Lett. 426: 283-289 (1998);Flynn et al., J. Mol. Biol. 279: 101-116 (1998);Okano et al., Nucleic Acids Res. 26: 2536-2540 (1998);およびZardo & Caiafa, J. Biol. Chem. 273: 16517-16520 (1998)参照)。別の好ましい実施形態では、エンドヌクレアーゼ、例えばFok1は、遺伝子切断により作用する転写レプレッサーとして用いられ得る(例えばWO95/09233;およびPCT/US94/01201参照)。
【0146】
クロマチンおよびDNAの構造、動きおよび局在化を制御する因子、ならびにそれらの会合因子および修飾因子;微生物(例えば原核生物、真核生物およびウイルス)由来の因子ならびにそれらと会合するかまたはそれらを修飾する因子も、キメラタンパク質を得るために用いられ得る。一実施形態では、リコンビナーゼおよびインテグラーゼが調節ドメインとして用いられる。一実施形態では、ヒストンアセチルトランスフェラーゼは転写活性因子として用いられる(例えばJin & Scotto, Mol. Cell. Biol. 18: 4377-4384 (1998);Wolffe, Science 272: 371-372 (1996);Taunton et al., Science 272: 408-411 (1996);およびHassig et al., PNAS 95: 3519-3524 (1998)参照)。別の実施形態では、ヒストンデアセチラーゼは転写レプレッサーとして用いられる(例えばJin & Scotto, Mol. Cell. Biol. 18: 4377-4384 (1998);Syntichaki & Thireos, J. Biol. Chem. 273: 24414-24419 (1998);Sakaguchi et al., Genes Dev. 12: 2831-2841 (1998);およびMartinez et al, J. Biol. Chem. 273: 23781-23785 (1998)参照)。
【0147】
ポリペプチドドメイン間、例えば2つのZFP間、またはZFPおよび調節ドメイン間のリンカードメインが含まれ得る。このようなリンカーは、典型的には、ポリペプチド配列、例えば約5〜200アミノ酸間のポリgly配列である。好ましいリンカーは、典型的には、組換え融合タンパク質の一部として合成される可変長アミノ酸亜配列である。例えば米国特許第6,534,261号;Liu et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95: 5525-5530 (1997);Pomerantz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92: 9752-9756 (1995);Kim et al., Proc. Nat. Acad. Sci. USA 93: 1156-1160 (1996)(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。代替的には、可変長リンカーは、DNA結合部位およびペプチドそれ自体をともにモデリングし得るコンピュータプログラムを用いて(Desjarlais & Berg, Proc. Nat. Acad. Sci. USA 90: 2256-2260 (1993)、Proc. Nat. Acad. Sci. USA 91: 11099-11103 (1994))、あるいはファージ表示法により、合理的に設計され得る。
【0148】
他の実施形態では、化学リンカーを用いて、合成的または組換え的産生ドメイン配列を連結する。このような可変長リンカーは、当業者に既知である。例えば、ポリ(エチレングリコール)リンカーは、Shearwater Polymers, Inc. Huntsville, Alaから入手可能である。これらのリンカーは、任意に、アミド結合、スルフヒドリル結合またはheteroflnctional結合を有する。調節ドメインとのZFPの共有結合のほかに、非共有的方法を用いて、調節ドメインと会合されるZFPを有する分子を産生し得る。
【0149】
切断ドメイン
本明細書中に開示される融合タンパク質の切断ドメイン部分は、任意のエンドヌクレアーゼまたはエキソヌクレアーゼから得られる。切断ドメインが由来するエンドヌクレアーゼの例としては、制限エンドヌクレアーゼおよびホーミングエンドヌクレアーゼが挙げられるが、これらに限定されない。例えば2002-2003 Catalogue, New England Biolabs, Beverly, MA;およびBelfort et al. (1997) Nucleic Acids Res. 25: 3379-3388を参照されたい。DNAを切断するさらなる酵素が知られている(例えばS1ヌクレアーゼ;緑豆ヌクレアーゼ;膵臓DNアーゼI;小球菌ヌクレアーゼ;酵母HOエンドヌクレアーゼ;Linn et al. (eds.) Nucleases, Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1993も参照)。これらの酵素(またはその機能的断片)のうちの1つまたは複数は、切断ドメインおよび切断半ドメインの供給源として用いられ得る。
【0150】
同様に、切断半ドメイン(例えば、ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む融合タンパク質)は、切断活性のために二量体化を要する、上記のような任意のヌクレアーゼまたはその一部に由来し得る。概して、2つの融合タンパク質は、切断半ドメインを含む場合、切断のために必要とされる。代替的には、2つの切断半ドメインを含む単一タンパク質が用いられ得る。2つの切断半ドメインは、同一エンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得るか、あるいは各切断半ドメインは異なるエンドヌクレアーゼ(またはその機能的断片)に由来し得る。さらに、2つの融合タンパク質とそれらのそれぞれの標的部位との結合が、例えば二量体化することにより切断半ドメインに機能的切断ドメインを形成させる互いに対する空間的配向で切断半ドメインを配置するよう、2つの融合タンパク質に関する標的部位は、好ましくは、互いに関して配置される。したがって、ある実施形態では、標的部位の近接縁は、5〜8ヌクレオチドにより、または15〜18ヌクレオチドにより分離される。しかしながら、任意の整数値のヌクレオチドまたはヌクレオチド対が、2つの標的部位間に入る(例えば2〜50ヌクレオチドまたはそれ以上)。概して、切断点は、標的部位間にある。
【0151】
制限エンドヌクレアーゼ(制限酵素)は多数の種において存在し、DNAと配列特異的に結合し(認識部位で)、結合の部位でまたはその近くでDNAを切断し得る。ある制限酵素(例えばIIS型)は、認識部位から除去された部位でDNAを切断し、分離可能な結合および切断ドメインを有する。例えばIIS型酵素Fok Iは、1つの鎖上のその認識部位から9ヌクレオチド、ならびに他方の上のその認識部位から13ヌクレオチドで、DNAの二本鎖切断を触媒する。例えば米国特許第5,356,802号;第5,436,150号および第5,487,994号;ならびにLi et al. (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89: 4275-4279;Li et al. (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 2764-2768;Kim et al. (1994a) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91: 883-887;Kim et al. (1994b) J. Biol. Chem. 269: 31,978-31,982を参照されたい。したがって、一実施形態では、融合タンパク質は、少なくとも1つのIIS型制限酵素および1つまたは複数のジンクフィンガー結合ドメイン(改変され得ることもされ得ないこともある)からの切断ドメイン(または切断半ドメイン)を含む。
【0152】
その切断ドメインが結合ドメインから分離可能である例示的IIS制限酵素は、Fok Iである。この特定酵素は、二量体として活性である(Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575)。したがって、本開示の目的のために、開示される融合タンパク質に用いられるFok I酵素の一部分は、切断半ドメインと考えられる。したがって、ジンクフィンガー−Fok I融合物を用いた細胞性配列の標的化二本鎖切断および/または標的化置換のために、各々がFok I切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質を用いて、触媒的に活性名切断ドメインを再構成し得る。代替的には、ジンクフィンガー結合ドメインおよび2つのFok I切断半ドメインを含有する単一ポリペプチド分子も用いられ得る。ジンクフィンガー−Fok I融合物を用いた標的化切断および標的化配列変更のためのパラメーターが、この開示中の他の箇所で提供される。
【0153】
切断ドメインまたは切断半ドメインは、切断活性を保持する、または多量体化(例えば二量体化)する能力を保持して機能的切断ドメインを形成するタンパク質の任意の部分であり得る。
【0154】
IIS型制限酵素の例は、表1に列挙されている。付加的制限酵素も分離可能な結合および切断ドメインを含有し、これらは、本開示により意図される。例えばRoberts et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31: 418-420を参照されたい。
【0156】
ジンクフィンガー融合タンパク質
融合タンパク質(およびそれをコードするポリヌクレオチド)の設計および構築のための方法は、当業者に既知である。例えば、ジンクフィンガードメインおよび調節または切断ドメイン(または切断半ドメイン)を含む融合タンパク質ならびにこのような融合タンパク質をことするポリヌクレオチドの設計および構築のための方法は、共有米国特許第6,453,242号および第6,534,261号、ならびに米国特許出願公告2007/0134796および2005/0064474(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に記載されている。ある実施形態では、融合タンパク質をコードするポリヌクレオチドが構築される。これらのポリヌクレオチドはベクター中に挿入され、ベクターは細胞中に導入され得る(細胞中にポリヌクレオチドを導入するためのベクターおよび方法に関する付加的開示に関しては、下記を参照されたい)。
【0157】
本明細書中に記載される方法のある実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、ジンクフィンガー結合ドメインならびにFok I制限酵素からの切断半ドメインを含む融合タンパク質を含み、2つのこのような融合タンパク質が細胞中で発現される。細胞中の2つの融合タンパク質の発現は、細胞への2つのタンパク質の送達;細胞への1つのタンパク質およびタンパク質のうちの1つをコードする1つの核酸の送達;各々がタンパク質のうちの1つをコードする2つの核酸の細胞への送達から;あるいは両タンパク質をコードする単一核酸の細胞への送達により、生じ得る。付加的実施形態では、融合タンパク質は、2つの切断半ドメインおよびジンクフィンガー結合ドメインを含む単一ポリペプチドを含む。この場合、単一融合タンパク質は細胞中で発現され、理論に縛られずに考えると、切断半ドメインの分子内二量体の形成の結果としてDNAを切断する。
【0158】
ある実施形態では、融合タンパク質(例えばZFP−Fok I融合物)の構成成分は、ジンクフィンガードメインが融合タンパク質のアミノ末端に最も近く、切断半ドメインがカルボキシ末端に最も近いよう、並べられる。これは、切断ドメイン、例えばFok I酵素由来のものを天然に二量体化するに際しての切断ドメインの相対的配向を反映し、この場合、DNA結合ドメインはアミノ末端に最も近く、切断半ドメインはカルボキシ末端に最も近い。これらの実施形態では、機能的ヌクレアーゼを形成するための切断半ドメインの二量体化は、反対DNA鎖上の部位への融合タンパク質の結合によりもたらされ、結合部位の5’末端は互いに近位にある。
【0159】
付加的実施形態では、融合タンパク質(例えばZEP−Fok I融合物)の構成成分は、切断半ドメインが融合タンパク質のアミノ末端に最も近く、ジンクフィンガードメインがカルボキシ末端に最も近いよう、並べられる。これらの実施形態では、機能的ヌクレアーゼを形成するための切断半ドメインの二量体化は、反対DNA鎖上の部位への融合タンパク質の結合によりもたらされ、結合部位の3’末端は互いに近位にある。
【0160】
さらなる付加的実施形態では、第一融合タンパク質は、融合タンパク質のアミノ末端に最も近い切断半ドメインならびにカルボキシ末端に最も近いジンクフィンガードメインを含有し、そして第二融合タンパク質は、ジンクフィンガードメインが融合タンパク質の網の末端に最も近く、切断半ドメインがカルボキシ末端に最も近いように並べられる。これらの実施形態では、両融合タンパク質は同一DNA鎖に結合され、第一融合タンパク質の結合部位は、アミノ末端に最も近いジンクフィンガードメインを含有する大に融合タンパク質の結合部位の5’側に配置されるカルボキシ末端に最も近いジンクフィンガードメインを含有する。
【0161】
開示融合タンパク質のある実施形態では、ジンクフィンガードメインおよび切断ドメイン(または切断半ドメイン)間のアミノ酸配列は、「ZCリンカー」を示す。ZCリンカーは、上記のフィンガー間リンカーとは区別されるべきものである。切断を最適化するZCリンカーの獲得についての詳細に関しては、例えば米国特許第20050064474A1号および第20030232410号、ならびに国際特許公報WO05/084190を参照されたい。
【0162】
一実施形態では、当該開示は、表Aに示されている認識らせんアミノ酸配列を有するジンクフィンガータンパク質を含むZFNを提供する。別の実施形態では、表Aに示される認識らせんを有するZFPをコードするヌクレオチド配列を含むZFP発現ベクターが、本明細書中で提供される。
【0163】
遺伝子発現の調節
種々の検定を用いて、ZFPが遺伝子発現を変調するか否かを確定し得る。特定ZFPの活性は、例えば、イムノアッセイ(例えばELISAおよび免疫組織化学的検定(抗体を用いる))、ハイブリダイゼーション検定(例えばRNアーゼ保護、ノーザン、in situハイブリダイゼーション、オリゴヌクレオチドアレイ試験)、比色検定、増幅検定、酵素活性検定、表現型検定等を用いて、例えばタンパク質またはmRNAレベル、生成物レベル、酵素活性;レポーター遺伝子の転写活性化または抑制を測定することにより、種々のin vitroおよびin vivo検定を用いて査定され得る。
【0164】
ZFPは、典型的には、ELISA検定を用いて、次に腎臓細胞を用いて、in vitroでの活性に関して先ず試験される。ZFPはしばしば、レポーター遺伝子を伴う一過性発現系を用いて先ず試験され、次に、標的内因性遺伝子の調節が、細胞でおよび植物体全体で、in vivoとex-vivoの両方で、試験される。ZFPは、細胞中で組換え的に発現され、植物中に移植された細胞中で組換え的に発現され、あるいはトランスジェニック植物中で組換え的に発現され得るし、ならびに下記の送達ビヒクルを用いて、植物または細胞にタンパク質として投与され得る。細胞は、固定され、溶液中に存在し、植物中に注入され、あるいはトランスジェニックまたは非トランスジェニック植物中に天然に存在し得る。
【0165】
遺伝子発現の変調は、本明細書中に記載されるin vitroまたはin vivo検定のうちの1つを用いて試験される。試料または検定はZFPで処理され、試験化合物を有さない対照試料と比較されて、変調の程度を調べる。内因性遺伝子発現の調節に関して、ZFPは、典型的には、200nM以下、さらに好ましくは100nM以下、さらに好ましくは50nM、最も好ましくは25nM以下のK
dを有する。
【0166】
ZFPの作用は、上記のパラメーターのいずれかを調べることにより測定され得る。任意の適切な遺伝子発現、表現型または生理学的変化を用いて、ZFPの影響を査定し得る。機能的結果が無傷細胞または植物を用いて確定される場合、植物成長、既知の且つ非特性化遺伝子マーカーに対する転写的変化(例えばノーザンブロットまたはオリゴヌクレオチドアレイ試験)、細胞代謝における変化、例えば細胞の増殖またはpHの変化、ならびに細胞内二次メッセンジャー、例えばcGMPにおける変化のような種々の作用を測定し得る。
【0167】
内因性遺伝子発現のZFP調節に関する好ましい検定は、in vitroで実施され得る。好ましい一in vitro検定フォーマットでは、培養細胞中の内因性遺伝子発現のZFP調節は、ELISA検定を用いてタンパク質産生を検査することにより、測定される。試験試料は、空ベクターで、あるいは別の遺伝子に対して標的化される無関係なZFPで処理された対照細胞と比較される。
【0168】
別の実施形態では、内因性遺伝子発現のZFP調節は、標的遺伝子mRNA発現のレベルを測定することにより、in vitroで確定される。遺伝子発現のレベルは、増幅を用いて、例えばPCR、LCRまたはハイブリダイゼーション検定、例えばノーザンハイブリダイゼーション、RNアーゼ保護、ドットブロッティングを用いて測定される。RNアーゼ保護は、一実施形態で用いられる。タンパク質またはmRNAのレベルは、本明細書中に記載されるように、直接的にまたは間接的に標識された検出作用物質、例えば蛍光的にまたは放射能的に標識された核酸、放射能的または酵素的に標識された抗体等を用いて検出される。
【0169】
代替的には、レポーター遺伝子系は、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質、CATまたはβ−galのようなレポーター遺伝子と操作可能的に連結される標的遺伝子プロモーターを用いて考案され得る。レポーター構築物は、典型的には、培養細胞中に同時トランスフェクトされる。選ばれたZFPでの処理後、当業者に知られている標準技法に従って、レポーター遺伝子の転写、翻訳または活性の量が測定される。
【0170】
トランスジェニックおよび非トランスジェニック植物も、in vivoでの内因性遺伝子発現の調節を検査するための好ましい実施形態として用いられる。トランスジェニック植物は、選ばれたZFPを安定的に発現し得る。代替的には、選ばれたZFPを一時的に発現するか、またはZFPが送達ビヒクル中で投与された植物が、用いられ得る。内因性遺伝子発現の調節は、本明細書中に記載される検定のうちのいずれか1つを用いて試験される。
【0171】
標的化切断のための方法
開示される方法および組成物を用いて、細胞クロマチン中の当該領域(例えば突然変異体または野生型の、EPSPS遺伝子内のまたはそれに隣接するゲノム中の所望のまたは予定の部位)でDNAを切断し得る。このような標的化DNA切断に関して、ジンクフィンガー結合ドメインは、予定切断部位でまたはその付近で、標的を結合するよう改変され、改変ジンクフィンガー結合ドメインおよび切断ドメインを含む融合タンパク質は細胞中で発現される。融合タンパク質のジンクフィンガー部分の、標的部位との結合時に、DNAは、切断ドメインにより標的部位付近で切断される。切断の正確な部位は、ZCリンカーの長さに依っている。
【0172】
代替的には、各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質は、細胞中で発現され、機能的切断ドメインが再構成され、DNAが標的部位に近接して切断されるような方法で並置される標的部位と結合される。一実施形態では、切断は、2つのジンクフィンガー結合ドメインの標的部位間で起きる。ジンクフィンガー結合ドメインの一方または両方が、改変され得る。
【0173】
ジンクフィンガー結合ドメイン−切断ドメイン融合ポリペプチドを用いる標的化切断に関して、結合部位は切断部位を包含するか、あるいは結合部位の近縁は、切断部位から1、2、3、4、5、6、10、25、50またはそれより多くのヌクレオチド(あるいは1〜50の任意の整数値のヌクレオチド)であり得る。結合部位の正確な位置は、切断部位に関しては、特定切断ドメインに、ならびにZCリンカーの長さに依っている。各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む2つの融合ポリペプチドが用いられる方法に関して、結合部位は一般的に切断部位をまたぐ。したがって、第一結合部位の近縁は切断部位の一側上の1、2、3、4、5、6、10、25またはそれより多いヌクレオチド(または1〜50の任意の整数値のヌクレオチド)であり得るし、第二結合部位の近縁は切断部位の他側上の1、2、3、4、5、6、10、25またはそれより多いヌクレオチド(または1〜50の任意の整数値のヌクレオチド)であり得る。切断部位をin vitroおよびin vivoでマッピングするための方法は、当業者に知られている。
【0174】
したがって、本明細書中に記載される方法は、切断ドメインと融合された改変ジンクフィンガー結合ドメインを用い得る。これらの場合、結合ドメインは、切断が所望される箇所またはその近くで、標的配列と結合するよう改変される。融合タンパク質またはそれをコードするポリヌクレオチドは、植物細胞中に導入される。一旦細胞中に導入されるかまたは細胞中で発現されると、融合タンパク質は標的配列と結合し、標的配列で、またはその近くで切断する。切断の正確な部位は、切断ドメインの性質、ならびに/あるいは結合ドメインと切断ドメインとの間のリンカー配列の存在および/または性質に依っている。各々が切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質が用いられる場合、結合部位の近縁間の距離は1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、25またはそれより多いヌクレオチド(または1〜50の任意の整数値のヌクレオチド)であり得る。切断の最適レベルは、2つの融合タンパク質の結合部位間の距離(例えばSmith et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28: 3361-3369;Bibikova et al. (2001) Mol. Cell. Biol. 21: 289-297参照)と、各融合タンパク質中のZCリンカーの長さの両方にもより得る。米国特許公報第20050064474A1号、ならびに国際特許公報WO05/084190、WO05/014791およびWO03/080809も参照されたい。
【0175】
ある実施形態では、切断ドメインは、その両方が結合ドメインを含む単一ポリペプチドの一部である2つの切断半ドメイン(第一切断ハンドメインおよび第二切断半ドメイン)を含む。切断半ドメインは、それらがDNAを切断するよう機能する限り、同一アミノ酸配列を有し得るし、あるいは異なるアミノ酸配列を有し得る。
【0176】
切断半ドメインは、別個の分子中でも提供され得る。例えば、2つの融合ポリペプチドが細胞中に導入され得るが、この場合、各ポリペプチドは結合ドメインおよび切断半ドメインを含む。切断半ドメインは、それらがDNAを切断するよう機能する限り、同一アミノ酸配列を有し得るし、あるいは異なるアミノ酸配列を有し得る。さらに、結合ドメインは、融合ポリペプチドの結合時に、切断ドメインの再構成を可能にし(例えば、半ドメインの二量体化により)、それにより機能的切断ドメインを形成するために互いに対比して半ドメインを配置して、当該領域中の細胞クロマチンの切断を生じる、互いに対する空間配向で2つの切断半ドメインが存在するような方法で、典型的には配置される標的配列と、結合ドメインは結合する。一般的には、再構成切断ドメインは、2つの標的配列間に置かれる部位で起きる。
【0177】
2つの融合タンパク質は同一のまたは反対の極性で当該領域で結合し得るし、それらの結合部位(すなわち、標的部位)は任意数のヌクレオチド、例えば0〜200ヌクレオチド、またはその間の任意の整数値のヌクレオチドにより分離され得る。ある実施形態では、各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質に関する結合部位は、他の結合部位に最も近い各結合部位の縁から測定して、5〜18ヌクレオチド離れて、例えば5〜8ヌクレオチド離れて、または15〜18ヌクレオチド離れて、または6ヌクレオチド離れて、または16ヌクレオチド離れて配置され、切断は結合部位間で起こる。
【0178】
DNAが切断される部位は、一般的には、2つの融合タンパク質に関する結合部位間に存在する。DNAの二本鎖切断はしばしば、2つの一本鎖切断、あるいは1、2、3、4、5、6またはそれより多くのヌクレオチドにより埋め合わされる「ニック」に起因する(例えば、ネイティブFok Iによる二本鎖DNAの切断は、4ヌクレオチドにより埋め合わされる一本鎖切断に起因する)。したがって、切断は、必ずしも各DNA鎖上の真反対の部位で起きるわけではない。さらに、融合タンパク質の構造ならびに標的部位間の距離は、切断が単一ヌクレオチド対に隣接して起きるか、あるいは切断がいくつかの部位で起きるかに影響を及ぼし得る。しかしながら、多数の用途、例えば標的化組換えおよび標的化突然変異誘発(以下参照)に関して、一連のヌクレオチド内の切断は一般的に十分であり、特定塩基対間の切断は必要とされない。
【0179】
上記のように、融合タンパク質(単数または複数)は、ポリペプチドおよび/またはポリヌクレオチドとして導入され得る。例えば、各々が上記のポリペプチドのうちの1つをコードする配列を含む2つのポリヌクレオチドが細胞中に導入され、そしてポリペプチドが発現され、各々がその標的配列と結合すると、切断が標的配列で、またはその付近で起こる。代替的には、両方の融合ポリペプチドをコードする配列を含む単一ポリヌクレオチドが、細胞中に導入される。ポリヌクレオチドは、DNA、RNA、あるいはDNAおよび/またはRNAの修飾形態または類似体であり得る。
【0180】
切断特異性を増大するために、本明細書中に記載される方法には付加的組成物も用いられ得る。例えば、単一切断半ドメインは、限定された二本鎖切断活性を示し得る。各々が3−フィンガージンクフィンガードメインおよび切断半ドメインを含有する2つの融合タンパク質が細胞中に導入される方法では、どちらか一方のタンパク質が、約9−ヌクレオチド標的部位を特定する。18ヌクレオチドの集合体標的配列は哺乳類ゲノムに独特であると思われるが、しかし、ヒトゲノム中に平均して約23,000回、任意の所定の9−ヌクレオチド標的部位が生じる。したがって、単一半ドメインの部位特異的結合のため、非特異的切断が起こり得る。したがって、本明細書中に記載される方法は、2つの融合タンパク質と一緒に細胞中で発現されるFok I(またはそれをコードする核酸)のような切断半ドメインのドミナントネガティブ突然変異体の使用を意図する。ドミナントネガティブ突然変異体は、二量体化し得るが、切断することは出来ず、さらに、それが二量体化される半ドメインの切断活性を遮断する。融合タンパク質に対して過剰モルでドミナントネガティブ突然変異体を提供することにより、両融合タンパク質が結合される領域のみが、二量体化および切断が起きるために十分に高い局所的濃度の機能的切断半ドメインを有する。2つの融合タンパク質のうちの1つだけが結合される部位で、その切断半ドメインはドミナントネガティブ突然変異体半ドメインと二量体を形成し、望ましくない非特異的切断は起きない。
【0181】
Fok I切断半ドメイン中に3つの触媒性アミノ酸残基が同定されている:Asp450、Asp467およびLys469(Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10,570-10,575)。したがって、これらの部位のうちの1つでの1つまたは複数の突然変異を用いて、ドミナントネガティブ突然変異を生成し得る。さらに、他のIIS型エンドヌクレアーゼの多数の触媒性アミノ酸残基が知られており、および/または例えば、Fok I配列を有するアラインメントにより、および/または触媒活性に関する突然変異体の生成および試験により、確定され得る。
【0182】
切断半ドメインにおける二量体化ドミナント突然変異
ZFPおよび切断半ドメイン間の融合物(例えば、ZFP/Fok I融合物)の使用を包含する標的化切断のための方法は、各々が一般的に異なる標的配列に向けられる2つのこのような融合分子の使用を要する。2つの融合タンパク質に関する標的配列は、標的化切断が上記のようなゲノム中の独自の部位に向けられるよう、選択され得る。切断特異性低減の潜在的源は、2つのZFP/切断半ドメイン融合物のうちの1つのホモ二量体化に起因する。これは、例えば機能的二量体の形成を可能にする配向および間隔で、同一融合タンパク質の2つのコピーに結合させるよう配置された2つのZFP/切断半ドメイン融合物のうちの1つに関する標的配列の逆反復のゲノム中の存在のために起こり得る。
【0183】
意図された標的部位以外の配列でのこの型の異所性切断の確率を低減するための一アプローチは、ホモ二量体化を最小限にするかまたは阻止する切断半ドメインの変異体を生成することを包含する。好ましくは、その二量体化に関与する半ドメインの領域中の1つまたは複数のアミノ酸は、変更される。Fok Iタンパク質二量体の結晶構造では、切断半ドメインの構造はFok IによるDNAの切断中の切断半ドメインの配列に類似することが報告されている(Wah et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10564-10569)。この構造は、位置483および487のアミノ酸残基がFok I切断半ドメインの二量体化において重要な役割を果たす、ということを示す。当該構造は、位置446、447、479、483、484、486、487、490、491、496、498、499、500、531、534、537および538のアミノ酸残基はすべて、二量体化に影響を及ぼすのに十分に二量体化界面に近い、ということも示す。したがって、上記の位置のうちの1つまたは複数でのアミノ酸配列変更は、切断半ドメインの二量体化特性を変更すると思われる。このような変化は、例えばこの位置で異なるアミノ酸残基を含有する(またはことする)ライブラリーを構築し、所望の特性を有する変異体を選択することにより、あるいは個々の突然変異体を合理的に設計することにより、導入され得る。ホモ二量体化を阻止することのほかに、これらの突然変異のいくつかは、2つの野生型切断半ドメインを用いて得られた上記の切断効率を増大し得る、ということも可能である。
【0184】
したがって、二量体化に作用する任意のアミノ酸残基でのFok I切断半ドメインの変更を用いて、望ましくない配列での切断をもたらし得るホモ二量体化を一対のZFP/Fok I融合物のうちの1つが受けないようにし得る。したがって、一対のZFP/Fok I融合物を用いる標的化切断に関して、切断が所望の標的部位で起きるよう、自己二量体化を抑制するがしかし2つの融合タンパク質のヘテロ二量体化を起こさせる1つまたは複数のアミノ酸変更を、融合タンパク質のうちの一方または両方が含み得る。ある実施形態では、変更は両方の融合タンパク質中に存在し、そして変更は付加的作用を有し;すなわち、異所性切断をもたらすいずれかの融合物のホモ二量体化は、最小限にされるかまたは無効にされ、一方、2つの融合タンパク質のヘテロ二量体化は、野生型切断半ドメインを用いて得られるものと比較して、促進される。
【0185】
パラロガスゲノム配列の標的化変更および標的化組換えのための方法
例えば1つまたは複数のパラロガス遺伝子のゲノム配列(例えば細胞クロマチン中の当該EPSPS標的ゲノム領域)を、相同非同一配列で取り替える方法(すなわち、標的化組換え)も、本明細書中に記載される。特定配列を取り替えるための従来の試みは、染色体領域(すなわち、ドナーDNA)と相同性を保有する配列を含むポリヌクレオチドと細胞を接触させて、その後、ドナーDNA分子が当該ゲノムへの相同組換えを受けていた細胞を選択することを包含した。相同組換えの効率が不十分であり、標的部位以外のゲノムの領域中へのドナーDNAの非特異的挿入の頻度が高いため、相同組換えのこれらの方法の成功率は低い。
【0186】
本開示は、より高い効率の標的化組換えならびにより低い頻度の非特異的挿入事象により特徴づけられる標的化配列変更の方法を提供する。当該方法は、細胞DNA中に1つまたは複数の標的化二本鎖切断を作製するために、切断ドメイン(または切断半ドメイン)と融合されるパラロガス遺伝子配列(例えばEPSPS遺伝子配列(単数または複数))でまたはその付近で結合する改変ジンクフィンガー結合ドメインを作製することならびに使用することを包含する。細胞DNAにおける二本鎖切断が、切断部位の直ぐ近くでは数千倍細胞修復機序を刺激するため、このような標的化切断は、ゲノム中の事実上任意の部位で遺伝子配列(例えばEPSPS)の変更または取替え(相同性指示修復)を可能にする。
【0187】
本明細書中に記載される方法は、任意の生物体または種からの任意のパラロガス(例えばEPSPS)遺伝子配列に適用可能である。ある実施形態では、変更されるEPSPS標的ゲノム領域は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含むEPSPS遺伝子に属する。
【0188】
本明細書中に記載される融合分子のほかに、選択されたゲノム配列の標的化取替えは、取替え(ドナー)配列の導入も要する。ドナー配列は、融合タンパク質(単数または複数)の発現の前に、同時に、または後に、細胞中に導入され得る。ドナーポリヌクレオチドは、それと、それが相同性を保有するEPSPSゲノム配列との間の相同組換え(または相同性指示修復)を指示するのに十分なゲノム配列(例えばEPSPS)に対する相同性を含有する。ドナーおよびゲノム配列間の約25、50、100、200、500、750、1,000、1,500、2,000ヌクレオチドまたはそれより多くの配列相同性(あるいは10〜2,000ヌクレオチドまたはそれより多い任意の整数値)は、その間の相同組換えを指示する。ドナー配列は、10〜5,000ヌクレオチド(またはその間の任意の整数値のヌクレオチド)またはそれ以上の長さの範囲であり得る。ドナー配列は典型的にはそれが取り変わるゲノム配列と同一ではない、ということが容易に明らかになる。例えば、染色体配列との十分な相同性が存在する限り、ドナーポリヌクレオチドの配列は、ゲノム配列に関して、1つまたは複数の単一塩基変化、挿入、欠失、逆位または再編成を含有し得る。代替的には、ドナー配列は、相同の2つの領域が側面に位置する非相同配列を含有し得る。さらに、ドナー配列は、細胞クロマチン中の当該領域と相同でない配列を含有するベクター分子を含み得る。一般的には、ドナー配列の相同領域(単数または複数)は、組換えが所望されるゲノム配列と少なくとも50%の配列同一性を有する。ある実施形態では、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%または99.9%の配列同一性が存在する。ドナーポリヌクレオチドの長さによって、1%〜100%の間の任意の値の配列同一性が存在し得る。
【0189】
ドナー分子は、細胞クロマチンとの相同性を有するいくつかの不連続領域を含有し得る。例えば、当該領域中に普通は存在しない配列の標的化挿入に関して、上記の配列は、ドナー核酸分子中に存在し、当該領域中の遺伝子配列との相同性を有する領域が側面に位置する。
【0190】
ドナー配列の上首尾の挿入を確定するための検定(例えばハイブリダイゼーション、PCR、制限酵素消化)を簡単にするために、EPSPSゲノム配列と比較した場合に、ある配列差がドナー配列中に存在し得る。好ましくは、コード領域中に置かれる場合、このようなヌクレオチド配列差はアミノ酸配列を変えないし、あるいはサイレントアミノ酸変化(すなわち、タンパク質の構造または機能に影響を及ぼさない変化)を作り出す。ドナーポリヌクレオチドは、任意に、当該領域中のジンクフィンガードメイン結合部位に対応する配列中の変化を含有して、相同組換えにより細胞クロマチン中に導入されているドナー配列の切断を阻止する。
【0191】
ドナーポリヌクレオチドは、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAであり、線状または環状形態で細胞中に導入され得る。線状形態で導入される場合、ドナー配列の末端は、当業者に知られた方法により(例えばエキソヌクレアーゼ分解から)保護され得る。例えば、1つまたは複数のジデオキシヌクレオチド残基は、線状分子の3’末端に付加され、および/または自己相補的オリゴヌクレオチドは、一方または両方の末端と結紮される(例えばChang et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84: 4959-4963;Nehls et al. (1996) Science 272: 886-889参照)。分解から外因性ポリヌクレオチドを保護するためのさらなる方法としては、末端アミノ基(単数または複数)の付加、修飾ヌクレオチド間結合、例えばホスホロチオエート、ホスホルアミデートおよびO−メチルリボースまたはデオキシリボース残基の使用が挙げられるが、これらに限定されない。
【0192】
ポリヌクレオチドは、付加的配列、例えば複製開始点、プロモーターおよび抗生物質耐性をコードする遺伝子を有するベクター分子の一部として、細胞中に導入され得る。さらに、ドナーポリヌクレオチドは、裸核酸として、リポソームまたはポロキサマーのような作用物質と複合された核酸として導入され得るし、あるいは細菌またはウイルス(例えばアグロバクテリウム、根粒菌NGR234株、アルファルファ根粒菌、ミヤコグサ根粒菌、タバコモザイクウイルス、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルスおよびキャッサバ葉脈モザイクウイルス)により送達され得る(例えばChung et al. (2006) Trends Plant Sci. 11(1): 1-4参照)。
【0193】
一理論に縛られずに考えると、切断に隣接するかまたはその周囲の領域との相同性を有する外因性DNA分子の存在と結合される細胞性配列における二本鎖切断の存在は、ドナー分子から細胞性(例えばゲノムまたは染色体)配列中への配列情報の移動により;すなわち、「遺伝子変換」としても知られている相同性指示修復のプロセスにより、切断を修復する細胞機序を活性化する、ということは明らかである。出願人等の方法は、標的配列の切断が、外因性配列の挿入が望ましいゲノムの領域における二本鎖切断を生じるよう、改変ZFPの強力なターゲッティング能力を切断ドメイン(または切断半ドメイン)と有益に組合せて、パラロガス遺伝子、例えばEPSPS遺伝子を特異的に標的にする。
【0194】
染色体配列の変更に関して、庶務の配列変更を実行するのに十分なドナー配列がコピーされる限り、ドナーの全配列が染色体にコピーされる必要はない。
【0195】
相同組換えによるドナー配列の挿入の効率は、二本鎖切断と組換えが所望される部位との間の、細胞DNAにおいて、距離に反比例して関連づけられる。言い換えれば、二本さ切断が、組換えが所望される部位により近い場合、より高い相同組換え効率が観察される。組換えの精確な部位が予定されない(例えば、所望の組換え事象がゲノム配列の区間全体で起こり得る)場合、ドナー核酸の長さおよび配列は、切断の部位(単数または複数)と一緒に、選択されて所望の組換え事象を得る。所望の事象がゲノム配列中の単一ヌクレオチド対の配列を変えるよう意図される場合、細胞クロマチンはそのヌクレオチド対のいずれかの側で10,000ヌクレオチド内で切断される。ある実施形態では、切断は、その配列が変えられるべきであるヌクレオチド対のいずれかの側で、1,000、500、200、100、90、80、70、60、50、40、30、20、10、5または2ヌクレオチド内、あるいは2〜1,000ヌクレオチドの任意の整数値内で起こる。
【0196】
上で詳述したように、各々がジンクフィンガー結合ドメインおよび切断半ドメインを含む2つの融合タンパク質に関する結合部位は、他の結合部位に最も近い各結合部位の縁から測定して、5〜8または15〜18ヌクレオチド離れて配置され、切断は結合部位間で起こる。切断ゲノム配列はドナー配列により取り替えられるため、切断が結合部位間の単一部位で起きるか、多数の部位で起きるかは重要ではない。したがって、標的化組換えによる単一ヌクレオチド対の配列の効率的変更に関して、結合部位間の領域の中間点は、そのヌクレオチド対の10,000ヌクレオチド内、好ましくは1,000ヌクレオチド、または500ヌクレオチド、または200ヌクレオチド、または100ヌクレオチド、または50ヌクレオチド、または20ヌクレオチド、または10ヌクレオチド、または5ヌクレオチド、または2ヌクレオチド、または1ヌクレオチド内または当該ヌクレオチド対である。
【0197】
ある実施形態では、相同染色体はドナーポリヌクレオチドとして役立ち得る。したがって、例えばへテロ接合体における突然変異の修正は、一染色体上の突然変異体配列と結合し、切断するが、相同染色体上の野生型配列を切断しない改変融合タンパク質により達成され得る。突然変異保有染色体上の二本鎖切断は、相同染色体からの野生型配列が切断染色体中にコピーされ、したがって野生型配列の2つのコピーを回復する相同ベースの「遺伝子変換」過程を刺激する。
【0198】
標的化組換えのレベルを増強し得る方法および組成物も提供され、例としては、相同組換えに関与する遺伝子、例えばRAD52エピスタシス基の成員(例えば、Rad50、Rad51、Rad51B、Rad51C、Rad51D、Rad52、Rad54、Rad54B、Mre11、XRCC2、XRCC3)、その産物が上記遺伝子産物と相互作用する遺伝子(例えばBRCA1、BRCA2)、および/またはNBS1複合体中の遺伝子の発現を活性化するための付加的ZFP−機能的ドメインの使用が挙げられるが、これに限定されない(例えばBoyko et al. (2006) Plant Physiology 141: 488-497およびLaFarge et al. (2003) Nucleic Acids Res 31(4): 1148-1155参照)。同様に、ZFP−機能的ドメイン融合物は、本明細書中に開示される方法および組成物と組合せて用いられて、非相同末端結合に関与する遺伝子(例えば、Ku70/80、XRCC4、ポリ(ADPリボース)ポリメラーゼ、DNAリガーゼ4)の発現を抑制し得る。例えばRiha et al. (2002) EMBO 21: 2819-2826;Freisner et al. (2003) Plant J. 34: 427-440;Chen et al. (1994) European Journal of Biochemistry 224: 135-142を参照されたい。ジンクフィンガー結合ドメインおよび機能的ドメイン間の融合を用いる遺伝子発現の活性化および抑制のための方法は、例えば共有米国特許第6,534,261号;第6,824,978号および第6,933,113号に開示されている。さらなる抑制方法としては、抑制されるべき遺伝子の配列に対して標的化されるアンチセンスオリゴヌクレオチドおよび/または小干渉RNA(siRNAまたはRNAi)あるいはshRNAの使用が挙げられる。
【0199】
相同組換えに関与する遺伝子産物の発現を活性化する代わりに、あるいはそのほかに、これらのタンパク質(またはその機能的断片)と当該ゲノム領域(例えばEPSPS)に対して標的にされるジンクフィンガー結合ドメインとの融合物を用いて、これらのタンパク質(組換えタンパク質)を当該領域に動員し、それによりそれらの局所濃度を増大し、さらに相同組換え過程を刺激し得る。代替的には、上記のような相同組換えに関与するポリペプチド(またはその機能的断片)は、ジンクフィンガー結合ドメイン、切断ドメイン(または切断半ドメイン)および組換えタンパク質(またはその機能的断片)を含む三重融合タンパク質の一部であり得る。上記の方法および組成物に用いられ得る遺伝子変換および組換え関連クロマチンモデリングに関与する付加的タンパク質としては、ヒストンアセチルトランスフェラーゼ(例えばEsalp、Tip60)、ヒストンメチルトランスフェラーゼ(例えばDotlp)、ヒストンキナーゼおよびヒストンホスファターゼが挙げられる(Bhat et al. (1999) Plant J. 33: 455-469も参照)。
【0200】
ジンクフィンガー/ヌクレアーゼ融合分子およびドナーDNA分子を含む細胞中での標的化組換えの効率のさらなる増大は、相同性駆動性修復過程が最大に活性である場合、細胞周期のG
2期において細胞を遮断することにより達成される。このような休止は、多数の方法で達成され得る。例えばG
2期で細胞を休止するために、細胞周期進行に影響を及ぼす薬剤、化合物および/または小分子で細胞は処理され得る。この型の分子の例としては、微小管重合に影響を及ぼす化合物(例えばビンブラスチン、ノコダゾール、タキソール)、DNAと相互作用する化合物(例えばシス−プラチナ(II)ジアミンジクロリド、シスプラチン、ドキソルビシン)、および/またはDNA合成に影響を及ぼす化合物(例えばチミジン、ヒドロキシ尿素、L−ミモシン、エトポシド、5−フルオロウラシル)が挙げられるが、これらに限定されない。組換え効率における付加的増大は、ゲノムDNAを細胞組換え機構によりアクセス可能にするようクロマチン構造を変更するヒストンデアセチラーゼ(HDAC)阻害剤(例えば酪酸ナトリウム、トリコスタチンA)の使用により達成される。
【0201】
細胞周期休止のための付加的方法としては、例えば細胞中にタンパク質をコードするcDNAを導入することにより、あるいはタンパク質をコードする遺伝子の発現を活性化する改変ZFPを細胞中に導入することにより、CDK細胞周期キナーゼの活性を抑制するタンパク質の過剰発現が挙げられる。細胞周期休止は、例えばRNAi法(例えば米国特許第6,506,559号)を用いて、サイクリンおよびCDKの活性を抑制することにより、あるいは、例えばサイクリンおよび/またはCDK遺伝子のような細胞周期進行に関与する1つまたは複数の遺伝子の発現を抑制する改変ZFPを細胞中に導入することによっても達成される。遺伝子発現の調節のための改変ジンクフィンガータンパク質の合成のための方法に関しては、例えば共有米国特許第6,534,261号を参照されたい。
【0202】
代替的には、ある場合には、標的化切断は、ドナーポリヌクレオチドの非存在下で(好ましくはSまたはG
2期に)実行され、組換えは相同染色体間で起こる。
【0203】
発現ベクター
1つまたは複数のZFPをコードする核酸は、複製および/または発現のために原核生物または真核生物細胞中への形質転換のためにベクター中でクローン化され得る。ベクターは、原核生物ベクター、例えばプラスミド、またはシャトルベクター、昆虫ベクター、または真核生物ベクターであり得る。ZFPをコードする核酸は、植物細胞への投与のために、発現ベクター中でもクローン化され得る。
【0204】
ZFPを発現するために、ZFPをコードする配列は、典型的には、転写を指図するプロモーターを含有する発現ベクター中でサブクローン化される。適切な細菌および真核生物プロモーターは当該技術分野でよく知られており、例えばSambrook et al., Molecular Cloning, A Laboratory Manual (2
nd ed. 1989; 3
rd ed., 2001);Kriegler, Gene Transfer and Expression: A Laboratory Manual (1990);およびCurrent Protocols in Molecular Biology (Ausubel et al.、上記。ZFPを発現するための細菌発現系は、例えば大腸菌、枯草菌種およびサルモネラにおいて利用可能である(Palva et al., Gene 22: 229-235 (1983)))に記載されている。このような発現系のためのキットは、市販されている。哺乳類細胞、酵母および昆虫細胞に関する真核生物発現系は当業者によく知られており、これらも市販されている。
【0205】
ZFPコード核酸の発現を指図するために用いられるプロモーターは、特定の用途に依っている。例えば、宿主細胞に適合された強力な構成的プロモーターは、典型的には、ZFPの発現および精製のために用いられる。
【0206】
それに対比して、ZFPが植物遺伝子の調節のためにin vivoで投与される場合(下記の「植物細胞への核酸送達」の節を参照)、ZFPの特定の用途によって、構成的または誘導的プロモーターが用いられる。植物プロモーターの非限定例としては、シロイヌナズナユビキチン−3(ubi−3)(Callis, et al., 1990, J. Biol. Chem. 265-12486-12493);アグロバクテリウム・ツメファシエンス・マンノピンシンターゼ(Δmas)(Petolino et al.、米国特許第6,730,824号);および/またはキャッサバ葉脈モザイクウイルス(CsVMV)(Verdaguer et al., 1996, Plant Molecular Biology 31: 1129-1139)が挙げられる。実施例も参照されたい。
【0207】
プロモーターのほかに、発現ベクターは、典型的には、原核生物または真核生物の宿主細胞中での核酸の発現のために必要とされるすべての付加的素子を含有する転写ユニットまたは発現カセットを含有する。したがって、典型的発現カセットは、例えばZFPをコードする核酸に操作可能的に連結されるプロモーター、ならびに転写物の効率的ポリアデニル化、転写終結、リボソーム結合部位または翻訳終結のために必要とされるシグナルを含有する。カセットの付加的素子としては、例えばエンハンサー、ならびに異種スプライシングシグナルが挙げられ得る。
【0208】
細胞中に遺伝情報を移すために用いられる特定の発現ベクターは、ZFPの意図される用途、例えば、植物、動物、細菌、真菌、原生動物等における発現に関して選択される(下記の発現ベクター参照)。標準細菌および動物発現ベクターは当該技術分野で知られており,例えば米国特許公報第20050064474A1号、ならびに国際特許公報WO05/084190、WO05/014791およびWO03/080809に詳細に記載されている。
【0209】
標準トランスフェクション法は、大量のタンパク質を発現し、これが次に標準技法を用いて精製され得る細菌、哺乳類、酵母または昆虫細胞株を産生するために用いられ得る(例えばColley et al., J. Biol. Chem. 264: 17619-17622 (1989);Guide to Protein Purification, in Methods in Enzymology, vol. 182 (Deutscher, ed., 1990)参照)。真核生物および原核生物細胞の形質転換は、標準技法に従って実施される(例えばMorrison, J. Bact. 132: 349-351 (1977);Clark-Curtiss & Curtiss, Methods in Enzymology 101: 347-362 (Wu et al., eds., 1983)参照)。
【0210】
このような宿主細胞中に外来ヌクレオチド配列を導入するための周知の手法のいずれかが用いられ得る。これらの例としては、リン酸カルシウムトランスフェクション、ポリブレン、原形質体融合、電気穿孔、超音波法(例えば超音波穿孔)、リポソーム、マイクロインジェクション、裸DNA、プラスミドベクター、ウイルスベクター(エピソームおよび組込みの両方)、ならびにクローン化ゲノムDNA、cDNA、合成DNAまたはその他の外来遺伝物質を宿主細胞中に導入するためのその他の周知の方法のいずれかの使用が挙げられる(例えばSambrook et al.、上記、参照)。用いられる特定遺伝子改変手法が選択されるタンパク質を発現し得る宿主細胞中に少なくとも1つの遺伝子を首尾よく導入し得る、ということのみが必要である。
【0211】
植物細胞への核酸送達
上記のように、DNA構築物は、種々の慣用的技法により所望の植物宿主中(例えばそのゲノム中)に導入され得る。このような技法の検討に関しては、例えばWeissbach & Weissbach Methods for Plant Molecular Biology (1988, Academic Press, N.Y.) Section VIII, pp.421-463;およびGrierson & Corey, Plant Molecular Biology (1988, 2d Ed.), Blackie, London, Ch. 7-9を参照されたい。
【0212】
例えばDNA構築物は、電気穿孔ならびに植物細胞原形質体のマイクロインジェクションのような技法を用いて植物細胞のゲノムDNA中に直接導入され得るし、あるいはDNA構築物は、DNA微粒子衝撃のような微粒子銃法を用いて植物組織に直接導入され得る(例えばKlein et al (1987) Nature 327: 70-73参照)。代替的には、DNA構築物は、適切なT−DNAフランキング領域と組合されて、慣用的アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主ベクター中に導入され得る。アグロバクテリウム・ツメファシエンス媒介性形質転換技法、例えばバイナリーベクターの無害化および使用は、科学文献中に十分に記載されている。例えばHorsch et al (1984) Science 233: 496-498およびFraley et al (1983) Proc. Nat’l. Acad. Sci. USA 80: 4803を参照されたい。
【0213】
さらに、遺伝子移入は、非アグロバクテリウム細菌またはウイルス、例えば根粒菌NGR234株、アルファルファ根粒菌、ミヤコグサ根粒菌、ジャガイモウイルスX、カリフラワーモザイクウイルスおよびキャッサバ葉脈モザイクウイルスを用いて達成され得る(例えばChung et al. (2006) Trends Plant Sci. 11(1): 1-4参照)。
【0214】
アグロバクテリウム・ツメファシエンス宿主の病原性機能は、バイナリーT DNAベクター(Bevan (1984) Nuc. Acid Res. 12: 8711-8721)または同時培養手法(Horsch et al (1985) Science 227: 1229-1231)を用いて細胞が細菌に感染される場合、植物細胞DNA中への構築物および隣接マーカーの挿入を指図する。一般的には、アグロバクテリウム形質転換系は、双子葉植物を改変するために用いられる(Bevan et al (1982) Ann. Rev. Genet 16: 357-384;Rogers et al (1986) Methods Enzymol. 118: 627-641)。アグロバクテリウム形質転換系は、DNAを単子葉植物および植物細胞に形質転換し、ならびに移入するためにも用いられ得る。米国特許第5,591,616号;Hernalsteen et al (1984) EMBO J 3: 3039-3041;Hooykass-Van Slogteren et al (1984) Nature 311: 763-764;Grimsley et al (1987) Nature 325: 1677-179;Boulton et al (1989) Plant Mol. Biol. 12: 31-40;およびGould et al (1991) Plant Physiol. 95: 426-434を参照されたい。
【0215】
代替的遺伝子移入および形質転換方法としては、裸DNAの、カルシウム−、ポリエチレングリコール(PEG)−または電気穿孔−媒介性取込みによる原形質体形質転換(Paszkowski et al. (1984) EMBO J 3: 2717-2722;Potrykus et al. (1985) Molec. Gen. Genet. 199: 169-177;Fromm et al. (1985) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82: 5824-5828;およびShimamoto (1989) Nature 338: 274-276参照)、ならびに植物組織の電気穿孔(D’Halluin et al. (1992) Plant Cell 4: 1495-1505)が挙げられるが、これらに限定されない。植物細胞形質転換のための付加的方法としては、マイクロインジェクション、シリコンカーバイド媒介性DNA取込み(Kaeppler et al. (1990) Plant Cell Reporter 9: 415-418)、ならびに微粒子発射衝撃(Klein et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85: 4305-4309;およびGordon-Kamm et al. (1990) Plant Cell 2: 603-618参照)が挙げられる。
【0216】
開示される方法および組成物は、植物細胞ゲノム中の予定位置に外因性配列を挿入するために用いられ得る。これは、植物ゲノム中への導入遺伝子の発現が決定的にその取込み部位に依っているために、有用である。したがって、例えば栄養素、抗生物質または治療用分子をコードする遺伝子は、標的化組換えにより、それらの発現に有利な植物ゲノムの領域中に挿入され得る。
【0217】
上記の形質転換技法のいずれかにより産生される形質転換植物細胞は、培養されて、形質転換化遺伝子型を、したがって所望の表現型を保有する全植物体を再生し得る。このような再生技法は、組織培養増殖培地中でのある種の植物ホルモンの操作に頼っており、典型的には、所望のヌクレオチド配列と一緒に導入された殺生物剤および/または除草剤マーカーに頼っている。培養原形質体からの植物再生は、Evans, et al., ”Protoplasts Isolation and Culture” in Handbook of Plant Cell Culture, pp. 124-176, Macmillian Publishing Company, New York, 1983;およびBinding, Regeneration of Plants, Plant Protoplasts, pp. 21-73, CRC Press, Boca Raton, 1985に記載されている。再生は、植物カルス、外植片、器官、花粉、胚またはその一部からも得られる。このような再生技法は、一般的に、Klee et al (1987) Ann. Rev. of Plant Phys. 38: 467-486に記載されている。
【0218】
植物細胞中に導入される核酸は、本質的に任意の植物に所望の形質を付与するために用いられ得る。広範な種々の植物および植物細胞系は、本開示の核酸構築物ならびに上記の種々の形質転換方法を用いて、本明細書中に記載される所望の生理学的および農学的特徴に関して改変され得る。好ましい実施形態では、改変のための標的植物および植物細胞としては、単子葉および双子葉植物、例えば作物、例えば穀物(例えばコムギ、トウモロコシ、コメ、アワ、オオムギ)、果実作物(例えばトマト、リンゴ、ナシ、イチゴ、オレンジ)、飼料作物(例えばアルファルファ)、根菜作物(例えばニンジン、ジャガイモ、テンサイ、ヤムイモ)、葉物作物(例えばレタス、ホウレンソウ);花卉植物(例えばペチュニア、バラ、キク)、球果植物およびマツ類(例えばモミ、トウヒ);植物集含み用いられる植物(例えば重金属蓄積植物);油糧作物(例えばヒマワリ、ナタネ)および実験目的のために用いられる植物(例えばシロイヌナズナ)が挙げられるが、これらに限定されない。したがって、開示される方法および組成物は、広範囲の植物、例えばアスパラガス属、カラスムギ属、ブラシカ属、ミカン属、キトルルス属、トウガラシ属、カボチャ属、ニンジン属、ムカシヨモギ属、ツルマメ属、ワタ属、オオムギ属、アキノノゲシ属、ホソムギ属、トマト属、リンゴ属、マニホット属、タバコ属、オオアラセイトウ属、イネ属、ペルセア属、インゲンマメ属、エンドウ属、ナシ属、サクラ属、ダイコン属、ライムギ属、ナス属、モロコシ属、コムギ属、ブドウ属、ササゲ属およびトウモロコシ属からの植物種(これらに限定されない)に亘る使用を有する。
【0219】
発現カセットがトランスジェニック植物中に安定的に組入れられて、操作可能であると確証された後、それは、性的交雑により他の植物中に導入され得る、と当業者は認識する。交雑されるべき種によって、多数の標準育種技法のいずれかが用いられ得る。
【0220】
形質転換中のDNA上に存在するマーカー遺伝子によりコードされる形質に関して、改変植物物質を選択し、スクリーニングすることにより、形質転換植物細胞、カルス、組織または植物は同定され、単離され得る。例えば、形質転換遺伝子構築物が耐性を付与する阻害量の抗生物質または除草剤を含有する培地上で改変植物物質を増殖させることにより、選択は実施され得る。さらに、形質転換化植物および植物細胞は、組換え核酸構築物上に存在し得る任意の可視的マーカー遺伝子(例えば、β−グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、BまたはC1遺伝子)の活性に関してスクリーニングすることによっても同定され得る。このような選択およびスクリーニング方法は、当業者によく知られている。
【0221】
挿入遺伝子構築物を含有する植物または植物細胞形質転換体を同定するために、物理学的および生化学的方法も用いられ得る。これらの方法としては、以下のものが挙げられるが、これらに限定されない:1)組換えDNA挿入物の構造を検出し、確定するためのサザン分析またはPCR増幅;2)遺伝子構築物のRNA転写物を検出し、検査するためのノーザンブロット、S1 RNアーゼ保護、プライマー延長または逆転写酵素−PCR増幅;3)酵素またはリボザイム活性を検出するための酵素的検定(この場合、このような遺伝子産物は遺伝子構築物によりコードされる);4)タンパク質ゲル電気泳動、ウエスタンブロット技法、免疫沈降法または酵素結合イムノアッセイ(この場合、遺伝子構築物産物はタンパク質である)。付加的技法、例えばin situハイブリダイゼーション、酵素染色および免疫染色も、特定の植物器官および組織中の組換え構築物の存在または発現を検出するために用いられ得る。これらの検定すべてを実行するための方法は、当業者によく知られている。
【0222】
本明細書中に開示される方法を用いた遺伝子操作の作用は、例えば、当該組織から単離されるRNA(例えばmRNA)のノーザンブロットにより観察され得る。典型的には、mRNAの量が増大した場合、対応する内因性遺伝子は以前より高率で発現されているものである、と推定される。遺伝子および/またはCYP74B活性を測定する他の方法が用いられ得る。用いられる基質、ならびに反応産物または副産物の増大または低減を検出する方法によって、異なる型の酵素検定が用いられ得る。さらに、発現されるCYP74Bタンパク質のレベルは、免疫化学的に、すなわち当業者によく知られたELISA、RIA、EIAおよびその他の抗体ベースの検定により、例えば電気泳動的検出検定により(染色によりまたはウエスタンブロッティングにより)測定され得る。導入遺伝子は、植物のいくつかの組織中で、またはいくつかの発生段階で、選択的に発現され得るし、あるいは導入遺伝子は、実質的にすべての植物組織中で、実質的にその全生活環に沿って、発現され得る。しかしながら、任意の組合せ発現方式も適用可能である。
【0223】
本開示は、上記のトランスジェニック植物の種子も包含し、この場合、種子は導入遺伝子または遺伝子構築物を有する。本開示はさらに、上記のトランスジェニック植物の子孫、クローン、細胞株または細胞を包含し、この場合、上記の子孫、クローン、細胞株または細胞は、導入遺伝子または遺伝子構築物を有する。
【0224】
ZFPおよびZFPをコードする発現ベクターは、遺伝子調節、標的化切断および/または組換えのために植物に直接投与され得る。ある種の実施形態では、植物は、多数のパラロガス標的遺伝子を含有する。植物は多数のパラロガス遺伝子を含有することが知られており、例えばセイヨウアブラナは5つのパラロガスEPSPS遺伝子(配列番号10〜14)を有し、これは1つまたは複数のZFPにより標的化され得る(実施例参照)。したがって、植物中の1つまたは複数のEPSPS遺伝子を標的にするために、1つまたは複数の異なるZFPまたはZFPをコードする発現ベクターが植物に投与され得る。例えば、植物中に存在する1、2、3、4、5または任意数までのパラログ(例えばEPSPSパラログ)またはすべてのパラログ(例えばEPSPSパラログ)が標的にされ得る。
【0225】
ある実施形態では、標的にされるEPSPS遺伝子は、配列番号10〜14からなる群から選択されるヌクレオチド配列、あるいはそれと少なくとも約80〜100%の配列同一性、例えば、これらの範囲内の任意の%の同一性、例えば81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99%の配列同一性を有する配列を含む。
【0226】
有効量の投与は、処理されるべき植物細胞との最終的接触にZFPを導入するために普通に用いられる経路のいずれかによる。ZFPは、任意の適切な方法で、好ましくは製薬上許容可能な担体とともに投与される。このようなモジュレーターの適切な投与方法は、当業者に利用可能であり、よく知られているが、しかし、特定組成物を投与するために1つより多くの経路が用いられ得るし、特定経路はしばしば、別の経路より即時の且つより効率的な反応を提供し得る。
【0227】
担体はさらにまた、一部は投与されている特定組成物により、ならびに組成物を投与するために用いられる特定の方法により、用いられ、確定され得る。したがって、利用可能である製剤組成物の広範な種々の適切な処方物が存在する(例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences, 17
th ed. 1985参照)。
【0228】
用途
農業における一特定当該領域は、除草剤耐性を付与するための植物の遺伝的改良である。多数の除草剤は、成長のために必要な重要植物酵素またはタンパク質を阻害することにより作用する。例えば除草剤グリホサートは、芳香族アミノ酸を合成する5−エノールピルビニル−3−ホスホシキメートシンターゼ(EPSPS)の活性を抑制することにより、植物を破壊する。グリホサート耐性植物は、EPSPS導入遺伝子を植物ゲノム中に挿入し、EPSPSを過剰発現し、EPSPSを選択的に突然変異誘発して、グリホサート耐性突然変異体を産生することにより、産生されてきた(例えば米国特許第5,312,910号および第6,987,213号;ならびにPapanikou et al. (2004) Planta 218(4): 589-598参照)。
【0229】
例えば、開示される方法および組成物は、EPSPS遺伝子の発現を変調するために、ならびにその標的化変更のために用いられ得る。一態様では、改変ZFPは、植物中のEPSPSの発現を上方または下方調節するために用いられる。ZFPは、任意に、遺伝子発現の変調のために調節ドメインと会合され、これは共有的にまたは非共有的に会合され、そしてEPSPS遺伝子転写を活性化するかまたは抑制する。このようなZFPは、EPSPS酵素の産生を増大するかまたは低減するために、植物中の芳香族アミノ酸の整合性を制御するために、あるいは除草剤グリホサートに対する植物の耐性を増大するかまたは低減するために、例えば作物を除草剤グリホサートに対して耐性にし、作物収量を増大し、あるいは雑草または野生植物におけるグリホサートに対する抵抗性を無効にするために用いられ得る。
【0230】
1つまたは複数のZFPまたはそれらをコードするポリヌクレオチドを含む組成物は、植物細胞に投与され得る。一実施形態では、EPSPS遺伝子の同一標的配列または異なる標的配列を認識する少なくとも2つのZFP、あるいはこのようなZFPをコードするポリヌクレオチドが、細胞に投与される。第一のZFPは、任意に、第二のZFPと、共有的にまたは非共有的に、会合される。会合されたまたは個々のZFPによる隣接標的部位の認識を用いて、ZFPの協力的結合を生じて、それらのそれぞれの標的部位に独立して結合される場合、ZFPの親和性より高い親和性をもたらし得る。
【0231】
遺伝子発現の抑制に関しては、典型的には遺伝子の発現は、約20%(すなわち80%の非ZFP変調発現)、好ましくは約50%(すなわち50%の非ZFP変調発現)、さらに好ましくは約75〜100%(すなわち25%〜0%の非ZFP変調発現)低減される。遺伝子発現の活性化に関しては、典型的には発現は、約1.5倍(すなわち150%の非ZFP変調発現)、好ましくは2倍(すなわち200%の非ZFP変調発現)、さらに好ましくは5〜10倍(すなわち500〜1000%の非ZFP変調発現)、少なくとも100倍までまたはそれ以上、活性化される。
【0232】
改変ZFP活性化因子および制御因子の発現は、小分子調節系、例えばtet調節系およびRU−486系によっても制御され得る(例えばGossen & Bujard, PNAS 89: 5547 (1992);Oligino et al., Gene Ther. 5: 491-496 (1998);Wang et al., Gene Ther. 4: 432-441 (1997);Neering et al, Blood 88: 1147-1155 (1996);およびRendahl et al., Nat. Biotechnol. 16: 757-761 (1998)参照)。これらの調節系は、ZFP活性化因子および制御因子の発現に小分子制御を付与し、当該標的遺伝子(単数または複数)(例えばEPSPS)にさらなるレベルの制御を課する。
【0233】
別の態様では、例えば2つの部位で切断し、間に配列を欠失することにより、単一部位での切断とその後の非相同末端結合、切断間の外因性配列の挿入を伴う1または2つの部位で切断し、および/または1または2つまたは2〜3個のヌクレオチドを除去するために一部位で切断することにより、EPSPSゲノム配列中に突然変異を導入するために、ZFNが用いられる。標的化切断は、遺伝子ノックアウトを作製するために(例えば機能的ゲノムまたは標的妥当化のために)、そしてゲノム中への配列の標的化挿入(すなわち遺伝子ノックイン)を促進するため;例えば細胞改変またはタンパク質過剰発現の目的のためにも用いられ得る。挿入は、相同組換えを介した染色体配列の取替えによるか、あるいは標的化組込みにより得るが、この場合、染色体中の当該領域に相同な配列が側面に位置する新規の配列(すなわち当該領域に存在しない配列)が、予定標的部位に挿入される。同一方法は、野生型EPSPS遺伝子配列を突然変異体EPSPS遺伝子配列と取り替えるためにも、またはある対立遺伝子を異なる対立遺伝子に変換するためにも用いられ得る。本明細書中に記載される組成物および方法は、ゲノム中に安定的に組込まれる誘導的ZFPおよび/またはZFNを有する植物系統を生成するためにも用いられ得る。したがって、ジンクフィンガー含有タンパク質をコードする安定的組込み配列は、適切な誘導時に発現されて、多数の植物世代に亘って、植物発生の任意の段階で、植物における所望の作用を達成し得る。
【0234】
さらに、感染または組込み植物病原体の標的化切断は、その病原性が低減されるかまたは排除されるよう、例えば病原体のゲノムを切断することにより、植物宿主における病原体感染を処理するために用いられ得る。さらに、植物ウイルスに関する受容体をコードする遺伝子の標的化切断は、このような受容体の発現を遮断し、それにより植物におけるウイルス感染および/またはウイルス蔓延を防止するために用いられ得る。
【0235】
植物病原体の例としては、植物ウイルス、例えばアルファルファのモザイクウイルス、アルファクリプトウイルス、バドナウイルス、ベータクリプトウイルス、ビゲミニウイルス、ブロモウイルス、ビモウイルス、カピロウイルス、カルラウイルス、カルモウイルス、カウリモウイルス、クロステロウイルス、コモウイルス、ククモウイルス、シトルハブドウイルス、ジアントウイルス、エナモウイルス、ファバウイルス、フィジウイルス、フロウイルス、ホルデイウイルス、ハイブリゲミニウイルス、イデオウイルス、イラルウイルス、イポモウイルス、ルテオウイルス、マクロモウイルス、マクルラウイルス、マラフィウイルス、モノゲミニウイルス、ナナウイルス、ネクロウイルス、ネポウイルス、ヌクレオラブドウイルス、オリザウイルス、オウルミアウイルス、フィトレオウイルス、歩テックスウイルス、ポティウイルス、リモウイルス、サテライトRNA、サテリウイルス、セキウイルス、ソベモウイルス、テヌイウイルス、トバモウイルス、トブラウイルス、トンブスウイルス、トスポウイルス、トリコウイルス、ティモウイルス、ウンブラウイルス、バリコサウイルスおよびワイカウイルス;真菌病原体、例えば黒穂菌(例えばクロホ菌目)、錆菌(錆菌目)、麦角菌(麦角菌)およびうどん粉菌;カビ(卵菌綱)、例えばジャガイモ疫病菌(ジャガイモ胴枯病);細菌病原体、例えばエルウィニア属(例えばエルウィニア・ヘルビコラ)、シュードモナス(例えば緑膿菌、シュードモナス・シリンゲ、シュードモナス・フルオレッセンス、シュードモナス・プチダ)、ラルストリア(例えばラルストリア・ソラナセルム)、アグロバクテリウムおよびキサントモナス;回虫(線形動物);ならびにネコブカビ(ポリミクサおよびプラスモジオフォーラ)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0236】
標的化組換えに関して開示される方法は、1つまたは複数のEPSPSゲノム配列を相同非同一配列と取り替えるために用いられ得る。例えば、作物を除草剤グリホサートに耐性にし、作物収量を増大し、雑草または野生植物におけるグリホサートに対する耐性を無効にするために、例えば突然変異体ゲノム配列は、野生型配列により取り替えられ得るか、代替的には、野生型ゲノム配列は突然変異体配列により取り替えられ得る。同様の方式で、遺伝子の一対立遺伝子は、本明細書中に開示される標的化組換えの方法を用いて、異なる対立遺伝子により取り替えられ得る。
【0237】
これらの場合の多くにおいて、当該EPSPSゲノム領域は突然変異を含み、ドナーポリヌクレオチドは対応する野生型配列を含む。同様に、野生型ゲノム配列は、このようなものが望ましい場合、突然変異体配列により取り替えられ得る。例えば、グリホサート耐性は、突然変異化または外因性EPSPSを野生型遺伝子に取り替え、外因性EPSPS遺伝子を除去して、EPSPS遺伝子をグリホサートに対してより低い耐性に突然変異させるか、EPSPS遺伝子の制御配列をEPSPSのより低いレベルの発現を指示する配列と取り替えることにより、植物において無効にされるかまたは低減され得る。代替的には、突然変異は、グリホサート耐性EPSPS酵素を産生するようEPSPS遺伝子を突然変異させることにより、またはEPSPS遺伝子の制御配列をEPSPSの発現のレベルを増大する配列に取り替えることにより、植物におけるグリホサートに対する抵抗性を付与するEPSPS遺伝子中に導入され得る。除草剤グリホサートに対する耐性を増大するEPSPS遺伝子修飾および突然変異体EPSPS酵素は、当該技術分野で知られている(例えば米国特許第7,238,508号、第7,214,535号、第7,141,722号、第7,045,684号、第6,803,501号、第6,750,377号、第6,248,876号、第6,225,114号、第6,040,497号、第5,866,775号、第5,804,425号、第5,776,760号、第5,633,435号、第5,627,061号、第5,554,798号、第5,463,175号、第5,312,910号、第5,310,667号、第5,188,642号、第5,415,783号、第4,971,908号および第4,940,835号、ならびにWO 00/66748(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)参照)。
【0238】
標的化切断および標的化組換えは、非コード配列(例えば調節配列、例えばプロモーター、エンハンサー、イニシエーター、ターミネーター、スプライス部位)を変更して、EPSPS遺伝子産物の発現のレベルを変更するためにも用いられ得る。このような方法は、例えば、作物におけるグリホサート耐性EPSPS変異体の発現を増大するために用いられ得る。
【0239】
EPSPS遺伝子の不活性化は、例えば単一切断事象により、切断とその後の非相同末端連結により、2つの切断部位間の配列を欠失するための2つの部位での切断とその後の連結により、コード領域中でのミスセンスまたはナンセンスコドンの標的化組換えにより、あるいは遺伝子または調節領域を分断するための遺伝子またはその調節領域中での無関連配列(すなわち「スタッファー」配列)の標的化組換えにより、達成され得る。
【0240】
共有WO 01/83793中に開示されるようなクロマチン構造の標的化修飾は、融合タンパク質と細胞クロマチンとの結合を促すために用いられ得る。
【0241】
付加的実施形態では、ジンクフィンガー結合ドメインおよびリコンビナーゼ(またはその機能的断片)間の1つまたは複数の融合物は、本明細書中に開示されるジンクフィンガー切断ドメインに加えて、またはその代わりに、標的化組換えを促すために用いられ得る。例えば共有米国特許第6,534,261号およびAkopian et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100: 8688-8691を参照されたい。
【0242】
付加的実施形態では、開示される方法および組成物は、ZFP結合ドメインと、それらの活性のために二量体化(ホモ二量体化またはへテロ二量体化)を要する転写活性化または抑制ドメインとの融合物を提供するために用いられる。これらの場合、融合ポリペプチドは、ジンクフィンガー結合ドメインおよび機能的ドメイン単量体(例えば二量体転写活性または抑制ドメイン)を含む。2つのこのような融合ポリペプチドの、適正に適合された標的部位との結合は、機能的転写活性化または抑制ドメインを再構成するために二量体化を可能にする。
【0243】
さらに、上で開示されたように、本明細書中に記述される方法および組成物は、切断が、相同依存性機序による挿入(例えば、予定ゲノム配列(すなわち標的部位)と同一であるか、または相同であるが同一でない1つまたは複数の配列とともに、外因性配列を含むドナー配列を挿入)を増強する細胞のゲノム中の当該領域中への外因性配列(例えばEPSPS遺伝子の調節またはコード配列)の標的化組込みのために用いられ得る。
【0244】
上記のように、ある実施形態では、相同依存性および相同非依存性機序の両方による標的化組込みは、切断により生成される末端間の外因性配列の挿入を包含する。挿入される外因性配列は、任意の長さ、例えば1〜50ヌクレオチド長の相対的に短い「パッチ」配列(例えば2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45または50ヌクレオチド配列)であり得る。
【0245】
標的化組込みが相同依存性である場合、ドナー核酸またはドナー配列は、外因性配列を、予定ゲノム配列(すなわち標的部位)と同一であるか、または相同であるが同一でない1つまたは複数の配列と一緒に含む。ある実施形態では、同一配列のうちの2つ、または相同であるが同一でない配列のうちの2つ(または各々のうちの1つ)が存在し、外因性配列の側面に位置する。外因性配列(あるいは外因性核酸または外因性ポリヌクレオチド)は、当該領域中に普通は存在しないヌクレオチド配列を含有するものである。
【0246】
外因性配列の例としては、cDNA、プロモーター配列、エンハンサー配列、エピトープタグ、マーカー遺伝子、切断酵素認識部位および種々の型の発現構築物が挙げられるが、これらに限定されない。マーカー遺伝子としては、化学物質または抗生物質耐性(例えばアンピシリン耐性、カナマイシン耐性、G418耐性、ヒグロマイシンB耐性、プロマイシン耐性、ハービエース耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色または蛍光または発光タンパク質(例えば緑色蛍光タンパク質、強化型緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、ならびに強化型細胞増殖および/または遺伝子増幅を媒介するタンパク質(例えばジヒドロフォレートレダクターゼ)が挙げられるが、これらに限定されない。エピトープタグとしては、例えばFLAG、His、myc、Tap、HAまたは任意の検出可能なアミノ酸配列のうちの1つまたは複数のコピーが挙げられる。
【0247】
タンパク質発現構築物としては、cDNAおよびcDNA配列と操作的に連結した転写制御配列が挙げられるが、これらに限定されない。転写制御配列としては、プロモーター、エンハンサーおよびインシュレーターが挙げられる。発現構築物中に包含される付加的転写および翻訳調節配列としては、例えば内部リボソーム進入部位、2Aペプチドをコードする配列、およびポリアデニル化シグナルが挙げられる。例示的タンパク質発現構築物は、抗体重鎖をコードする配列ならびに抗体軽鎖をコードする配列を含む抗体発現構築物であり、各配列はプロモーター(プロモーターは同一であるかまたは異なる)と操作可能的に連結され、そしていずれかのまたは両方の配列が任意にエンハンサーと操作可能的に連結される(そして両方のコード配列がエンハンサーと連結されている場合、エンハンサーは同一であるかまたは異なる)。
【0248】
切断酵素認識部位としては、例えば制限エンドヌクレアーゼ、ホーミングエンドヌクレアーゼおよび/またはメガヌクレアーゼにより認識される配列が挙げられる。切断酵素認識部位の標的化組込み(相同依存性まあは相同非依存性機序による)は、そのゲノムが特定酵素により切断され得る単一部位のみを含有する細胞を生成するために有用である。このような細胞の、単一部位で認識し、切断する酵素との接触は、その後の外因性配列の標的化組込み(相同依存性または相同非依存性機序による)および/または切断される部位での標的化突然変異誘発を促進する。
【0249】
ホーミングエンドヌクレアーゼの例としては、I−CeuI、PI−PspI、PI−Sce、I−SceIV、I−CsmI、I−PanI、I−SceI、I−SceII、I−PpoI、I−SceIII、I−CreI、I−TevI、I−TevIIおよびI−TevIIIが挙げられる。それらの認識配列が知られている。米国特許第6,833,252号、米国特許第5,420,032号;Belfort et al. (1997) Nucleic Acids Res.25: 3379-3388;Dujon et al. (1989) Gene 82: 115-118;Perler et al. (1994) Nucleic Acids Res. 22, 1125-1127;Jasin (1996) Trends Genet. 12: 224-228;Gimble et al. (1996) J. Mol. Biol. 263: 163-180;Argast et al. (1998) J. Mol. Biol. 280: 345-353およびNew England Biolabsカタログも参照されたい。
【0250】
ほとんどのホーミングエンドヌクレアーゼの切断特異性はそれらの認識部位に関して絶対的でないが、しかしその部位は、その認識部位の単一コピーを含有する細胞中でホーミングエンドヌクレアーゼを発現することにより哺乳類型のゲノム当たり単一切断事象が得られるのに十分な長さを有する。切断酵素は非天然標的部位を結合するよう改変され得る、ということも報告されている。例えばChevalier et al. (2002) Molec. Cell 10: 895-905;Epinat et al. (2003) Nucleic Acids Res. 31: 2952-2962;Ashworth et al. (2006) Nature 441: 656-659参照。
【0251】
ホーミングエンドヌクレアーゼを用いて標的化組換えおよび組込みを得るための従来の方法は、認識部位の標的化挿入が非常に非効率的で、所望の位置に挿入された認識部位を含有する細胞を同定するためには困難なスクリーニングを要するという問題に苦労した。本発明の方法は、DNA切断酵素に関する認識部位の高効率的標的化組込み(相同依存性または相同非依存性)を可能にすることによりこれらの問題を克服する。
【0252】
ある実施形態では、標的化組込みを用いて、RNA発現構築物、例えばミクロRNA、shRNAまたはsiRNAの発現調節に関与する配列を挿入する。上記のようなプロモーター、エンハンサーおよび付加的転写調節配列も、RNA発現構築物中に組入れられ得る。
【0253】
標的化組込みが相同依存性機序により起きる実施形態では、ドナー配列は、外因性配列の側面に位置する領域で、ゲノム配列中の二本鎖切断の相同性指示修復を支持するのに十分な相同性を含有し、それによりゲノム標的部位に外因性配列を挿入する。したがって、ドナー核酸は、相同依存性修復機序(例えば相同組換え)による外因性配列の組込みを支持するのに十分な任意のサイズを有し得る。如何なる特定の理論にも縛られずに考えると、外因性配列の側面に位置する相同性の領域は、二本鎖切断の部位での遺伝情報の再合成のための鋳型を破断染色体末端に提供する。
【0254】
上記のような外因性配列の標的化組込みは、タンパク質発現のための細胞および細胞株を生成するために用いられ得る。例えば共有米国特許出願公開番号2006/0063231(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)を参照されたい。ゲノム中に組込まれる外因性配列によりコードされる1つまたは複数のタンパク質の最適発現のために、染色体組込み部位は、好ましくは広範囲の細胞型および発生段階で、組込み配列の高レベル転写と適合すべきである。しかしながら、組込み配列の転写は、特に、組込み部位のゲノムのクロマチン構造のため組込み部位によって変化する、ということが観察されている。したがって、組込み配列の高レベル転写を支持するゲノム標的部位が望ましい。ある実施形態では、外因性配列の組込みが1つまたは複数の細胞性遺伝子(例えば癌遺伝子)の異所性活性化を生じない、ということも望ましい。他方で、プロモーターおよび/またはエンハンサー配列の組込みの場合、異所性発現が所望され得る。
【0255】
ある実施形態に関しては、必須遺伝子(例えば細胞成育可能性に不可欠な遺伝子)の不活性化が外因性配列の組込みに起因しないよう、組込み部位は上記必須遺伝子中に存在しない、というのが望ましい。一方、目的が遺伝子機能を無能にする(すなわち遺伝子「ノックアウト」を作製する)ことである場合、内因性遺伝子を分断するための外因性配列の標的化組込みは有効な方法である。これらの場合、外因性配列は、内因性遺伝子の転写を遮断し、または非機能的翻訳産物を生成し得る任意の配列、例えば任意に検出可能であるアミノ酸配列の短いパッチ(上記参照)であり得る。ある実施形態では、外因性配列はマーカー遺伝子(上記)を含んで、標的化組込みを受けた細胞の選択を可能にする。
【0256】
組込み配列の高レベル転写を支持する付加的ゲノム標的部位は、共有米国特許出願公開番号2002/0064802(2002年5月30日)および2002/0081603(2002年6月27日)に記載されているように、開放クロマチンの領域または「アクセス可能領域」として同定され得る。
【0257】
ゲノム配列中の二本鎖切断の存在は、外因性配列の相同依存性組込み(相同組換え)だけでなく、二本鎖切断部位でのゲノム中への外因性配列の相同非依存性組込みも促進する。したがって、本明細書中に開示される組成物および方法は、ゲノム配列の標的化切断と、その後の標的化切断部位でのまたはその付近での外因性配列の非相同依存性組込みのために用いられ得る。例えば、細胞は、外因性配列の全部または一部が当該領域に組込まれる細胞を得るために、本明細書中に上記したようにゲノム中の当該領域で切断するよう改変された1つまたは複数のZFP切断ドメイン(または切断半ドメイン)融合タンパク質(またはこのような融合タンパク質をコードする1つまたは複数のポリヌクレオチド)、ならびに当該領域との相同性を欠く外因性配列を含むポリヌクレオチドと節制クされ得る。
【0258】
本明細書中に開示される相同依存性および非依存性の両方である標的化組込み(すなわちゲノム中への外因性配列の挿入)の方法は、多数の目的のために用いられ得る。これらの例としては、細胞による遺伝子またはcDNAの転写および/または翻訳産物の発現を可能にするための細胞のゲノム中への遺伝子またはcDNA配列の挿入が挙げられるが、これに限定されない。疾患または病態が複数の突然変異(例えば、遺伝子の配列全体に及ぶ多数の点突然変異)のうちの1つに起因し得る状況に関しては、野生型遺伝子のcDNAコピーの標的化組込み(相同依存性または相同非依存性)が特に有効である。例えば、このような野生型cDNAは、非翻訳リーダー配列中に、またはすべての既知の突然変異の上流の遺伝子の第一エキソン中に挿入される。翻訳リーディングフレームが保存されるある組込み物では、結果は、野生型cDNAが発現され、その発現は適切な内因性転写調節配列により調節される、というものである。付加的実施形態では、このような組込みcDNA配列は、野生型cDNAの下流および突然変異体内因性遺伝子の上流に配置される転写(および/または翻訳)終結シグナルを包含し得る。このようにして、疾患を引き起こす遺伝子の野生型コピーが発現され、突然変異体内因性遺伝子は発現されない。他の実施形態では、野生型cDNAの一部は、遺伝子(例えば疾患を引き起こす突然変異が群れを成す遺伝子)の適切な領域中に挿入される。
【実施例】
【0259】
以下は、本発明の開示を実行するための特定の実施形態の実施例である。実施例は、例示的目的のためにのみ提供されるものであって、如何なる点でも本発明の開示の範囲を限定するよう意図されない。
【0260】
用いられる数(例えば量、温度等)に関する精度を保証するために努力がなされてきたが、しかし多少の実験誤差および偏差は、もちろん、許容されるべきである。
【0261】
実施例1:セイヨウアブラナにおける標的配列同定
A.配列同定
既知の機能を有するネイティブ・ナタネ遺伝子に関するDNA配列を、改変ジンクフィンガーヌクレアーゼを用いたゲノム編集のための標的として選択した。5−エノールピルビルシキメート−3−ホスフェートシンターゼ(EPSPS)遺伝子と呼ばれるこれらの遺伝子の配列は、セイヨウアブラナNex710に由来する。酵素EPSPSは、シキメート経路の第六酵素であり、これは、植物における芳香族アミノ酸および多数の芳香族代謝産物の合成に不可欠である(Bentley (1990) Crit. Rev. Biochem. Mol Biol. 25: 307-384)。それは、ピルビン酸ホスホエノール(PEP)のエノールピルビル部分の、シキメート3−ホスフェート(S3P)の5−ヒドロキシルへの転移を触媒する。セイヨウアブラナはカブ類(2n=20、AA)とヤセイカンラン(2n=18、CC)の染色体組の組合せから生じる複二倍体種であるため(Morinaga, 1934;U, 1935)、この種においてはEPSPSの1つより多くの遺伝子が存在し得る、と予測される。
【0262】
B.DNA単離
セイヨウアブラナ変種Nex710種子を、温室に植えつけた。播種後13日目に試料を収穫し、液体窒素中で瞬間凍結させて、使用するまで−80℃で貯蔵した。
【0263】
植物DNAの単離のための臭化セチル−トリメチルアンモニウム(CTAB)沈殿またはPLANT DNEASY抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、ゲノムDNAを単離した。CTABを用いる手法に関しては、1gの葉組織(6植物のプール)を液体窒素中で粉砕した。Permingeat等(Plant Mol. Biol. Reptr. (1998) 16: 1-6)(この記載内容は参照により本明細書中で援用される)により記載されたように、DNAを単離したが、但し、抽出緩衝液は修正した。修正抽出緩衝液は、100mMのトリス−HCl(pH8.0)、2MのNaCl、25mMのEDTA、2.5%CTAB(Sigmaカタログ番号H−5882)および1.5%ポリビニルピロリドン−40(PVP−40)を含有した。1つの修正を加えてメーカーの推奨に従って、PLANT DNEASY抽出キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、総ゲノムDNAを単離した。PVP−40を、最終濃度1%でAP1緩衝液(Qiagen)に付加した。DNAが制限酵素で消化されるべきものである場合、それはさらに、以下のような2つのポリエチレングリコール(PEG、分子量8,000)沈殿工程により精製した。等容積の1.2MのNaCl/13%PEGをDNAに付加し、氷上で2時間インキュベートした。次に試料を5,000×gで10分間回転し、上清を捨てて、ペレットを70%エタノールで洗浄した。凍結乾燥によりエタノールを完全に除去し、DNAペレットをEB緩衝液(Qiagen)中に再懸濁した。
【0264】
次に、販売元の使用説明書(Molecular Probes, Eugene, OR)に従って二本鎖DNAを定量するためのPICOGREEN蛍光核酸染色を用いて、そして260および280nmでの吸光度読取により、DNAを測定した。トリス−酢酸EDTA(TAE)緩衝液を用いて0.8%アガロースゲル上でDNA試料を移動させる(Sambrook et al. (1989) Gel electrophoresis of DNA, Molecular Cloning. Cold Spring Harbor Laboratory Press, p. 6.7)ことにより、DNA品質を検査した。
【0265】
C.サザン解析によるEPSPS遺伝子コピー数概算
セイヨウアブラナゲノムDNAの遺伝子増幅、クローニングおよびシーケンシング前のサザン解析により、EPSPS遺伝子コピー数の概算を実施した。EPSPS遺伝子プローブとのハイブリダイゼーション時にEPSPS遺伝子の各々に関して独自サイズを有するゲノムDNA断片が作製されるよう、遺伝子中で1回(Gasser and Klee (1990) Nucleic Acid Research 18: 2821)、そして2回目にはゲノム配列の側面に位置して、DNAを切断するゲノムDNAの消化のための制限酵素を選択した。選択される制限酵素(Pvu II、Nde I、Bsr BI、Bsa I、Bcl I、Bsm I、Afl II)の大多数は、遺伝子の5’末端または中間に向けて切断したが、但し、Bcl Iに関しては、プローブがハイブリダイズする遺伝子の3’末端で切断した(下記参照)。
【0266】
DNA試料(Nex710に関しては各5μg、カブ類(B. rapa)に関しては各4μgおよびキャベツ類(B. oleracea)に関しては各々3μg)を、メーカーの使用説明書(New England BioLabs)に従って、エッペンドルフ管中で別々に、30単位の各制限酵素Pvu II、Nde I、Bsr BI、Bsa I、Bcl I、Bsm IおよびAfl IIで一晩消化した。次に、消化DNA試料をエタノール沈降に付して、ペレットを凍結乾燥した。
【0267】
乾燥ペレットを2×添加用緩衝液中に再懸濁し、0.85%アガロースゲル上に載せ、0.4×トリス−酢酸緩衝液、pH8.0中で電気泳動に付した(Sambrook et al. (1989) Gel electrophoresis of DNA, Molecular Cloning. Cold Spring Harbor Laboratory Press, p. 6.7)。次にゲルを臭化エチジウムで染色し、DNA帯域をUVにより可視化した。その後、25mMのNaピロリン酸緩衝液中のGENESCREEN PLUSハイブリダイゼーション転写膜(DuPont NEN, Boston, MA, USA)上にDNAを移した(Murray et al. (1992) Plant Mol. Biol. Reptr. 10: 173-177)。SIGMA PERFECT HYB PLUSハイブリダイゼーション緩衝液(Sigma, St. Louis, MO)中で65℃で最低2時間、プレハイブリダイゼーションを実行した。放射性プローブの付加後に、緩衝液中で一晩、ハイブリダイゼーションを実行した(下記参照)。プレハイブリダイゼーションおよびハイブリダイゼーションの両工程のために、ハイブリダイゼーション炉(Robbins Scientific Corp, Sunnyvale, CA, USA))を用いた。200mMのリン酸ナトリウム、pH7.8、50mMのピロリン酸ナトリウム、10mMのEDTAおよび2%SDSを含む洗浄緩衝液の20倍希釈液中で、膜を洗浄した(Murray et al.、上記)。最初に5分間すすぎ、その後、各々15分間洗浄した。次にブロットを、室温で12時間、リン画像化スクリーンに曝露した後、BIORAD PERSONAL FXリン画像解析装置(Bio-Rad, Hercules, CA)で走査した。
【0268】
セイヨウアブラナ変種Nex710をゲノムDNA鋳型として用いて、PCRにより、サザンブロットハイブリダイゼーションのためのEPSPSプローブを生成した。VECTORNTIソフトウェア(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて公表済みのセイヨウアブラナゲノムDNA配列(Gasser and Klee、上記)を基礎にした、エキソン−8配列から、プライマーを設計し、MWG BIOTECH, Inc.(High Pint, NC, USA)により注文合成した。順およびリバースプライマーの配列は、それぞれ、以下のものであった:
TTGGAGCTACAGTGGAAGAAGGTT(配列番号1)および
CGATTGCATCTCACTCAGTTCATTA(配列番号2)。PCR反応は、5μlの10×HOT START PCR緩衝液(Qiagen, Valencia, CA, USA)、2μlの25mM MgCl
2、4μlの10mM ヌクレオチド・ミックス、1μlの各プライマー(20μM)、1.5単位のHOT START Taq DNAポリメラーゼ(Qiagen, Valencia, CA)、5μlのNex710鋳型DNA、および滅菌水を総容量50μl中に含有した。以下のパラメーターを用いて、ICYCLER IQ実時間PCR計器(Bio-Rad, Hercules, CA)で、増幅を実施した:95℃で15分間、その後、95℃で30秒間を35サイクルの初期変性、55.5℃および52.9℃で30秒間、ならびに72℃で30秒間のアニーリング。350塩基対のPCR産物をQIAQUICKヌクレオチド除去キット(Qiagen, Valencia, CA)で精製した。2.0%E−GELアガロースゲル(Invitrogen, Carlsbad, CA)上での電気泳動により、DNAサイズおよび完全性を立証した。PICOGREEN DNA定量試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、断片品質を確定した。READY−TO−GO DNA標識ビーズ(−dCTP)(Amersham Biosciences, Piscataway, NJ)を用いて、DNAプローブを標識した。
【0269】
サザンブロット解析は、多数のセイヨウアブラナEPSPS特異的帯域(4またはそれ以上)が、潜在的に多数の遺伝子として、存在することを示した(
図1)。カブ類(B. rapa)およびキャベツ類(B. oleracea)DNAはより少ない帯域とハイブリダイズし、それらの数および位置はセイヨウアブラナパターンでは合算しなかったが、これは、複二倍性のために親およびセイヨウアブラナゲノム中に配列多様性が生じた、ということを示す。小帯域は、限定配列相同性を有する他のセイヨウアブラナ遺伝子との交差ハイブリダイゼーションのためであり得る。
【0270】
D.遺伝子増幅および配列解析
本発明の試験では、BLASTアルゴリズムを用いてTIGRセイヨウアブラナESTデータベース(tigrblast.tigr.org/tgi/よりインターネット上で利用可能)を照会するために、カブ類(B. rapa)EPSPS cDNA配列(GenBank寄託番号AY512663、配列番号3)を用いた。2つの配列、TC1307(部分および非注釈)およびTC1308(全長EPSPS)を同定した。TC1307配列は、EPSPS遺伝子配列であった。AY512663およびTC1307の配列を用いて、PCRプライマーとして用いるための多数の短いオリゴヌクレオチド、例えば以下のフォワードオリゴヌクレオチド:
5’−ATGGCGCAAGCTAGCAGAATCTGCC−3’(配列番号4)
5’−ATGGCGCAAGCTAGCAGAATC−3’(配列番号5)
5’−CCAGCAGCAGCGTGGAGCTTATCAGATA−3’(配列番号6)、ならびに以下のリバースオリゴヌクレオチド:
5’−GGCCCAAAACTGATTCAACGATTGC−3’(配列番号7)
5’−CGTTGCCACCAGCAGCAGTA−3’(配列番号8)
5’−GATGGTCCAGTCACAGTCACACTGTTCTCTGT−3’(配列番号9)を設計した。オリゴヌクレオチドプライマーはすべて、Integrated DNA Technologies (IDT, Coralville, IA)により合成され、そこから購入された。
【0271】
PCRベースの解析のために、2.5μlの10×LA PCR緩衝液II(Mg
2++)(Takara Bio Inc., Otsu, Shiga, Japan)、0.7μlの25mM MgCl
2、4μlの10mMヌクレオチド・ミックス、0.5μlの各プライマー(20μM)、1.25単位のTAKARA LA Taqポリメラーゼ(Takara Bio Inc.)、1μlの鋳型セイヨウアブラナ変種Nex710DNA(3〜10ngのDNA)および滅菌水(総容量25μlにする)を含有するPCR反応混合物中で、DNA増幅を実行した。以下のパラメーターを用いて、MJサーモサイクラー(Bio-Rad, Hercules, CA)またはGENEAMP PCR系9700(Applied Biosystems, Foster City, CA)で、増幅を実施した:94℃で1分間の初期変性、その後、94℃で20秒間を30サイクル、59℃で30秒間、ならびに72℃で2分。電気泳動により、PCR産物のサイズおよび完全性を立証した。
【0272】
SR130およびSR131プライマー(それぞれ、配列番号4および7)を用いてPCRを実施する場合、2.6kb〜3kbサイズのDNA断片を増幅した。メーカーの推奨に従って、TAクローニングキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、これらの断片をベクターpCR2.1(Invitrogen, Carlsbad, CA)中に直接クローン化した。メーカーの推奨に従って、CEQ染料ターミネーター・サイクル・シーケンシングキット(Beckman Coulter, Fullerton, CA)を用いてDASで、クローン化断片をシーケンシングするか、あるいはシーケンシング・サービスをCogenics(以前はLark Technologies, Inc. Houston, TX)と契約した。多数のクローンの配列解析は、3つの異なる遺伝子断片を明示した。これらの遺伝子断片は、EPSPSパラログC、DおよびEと呼ばれた(配列番号12〜14)。
【0273】
セイヨウアブラナゲノム中に存在し得る遺伝子の他の変異体を同定するために、上記と同一PCR条件下で温度勾配を用いて、PCRを実行した。以下のパラメーターを用いて、ICYCLER IQ実時間PCR計器(Bio-Rad, Hercules, CA)で、増幅を実施した:94℃で1分間、その後、94℃で20秒間を30サイクルの初期変性、40℃〜60℃の勾配温度で30秒間、ならびに72℃で4分間。72℃で30分の最終伸長を実施し、その後、4℃で無期限保持した。これらの条件下で、約2.5kb増幅DNAに対応する一特定帯域を、52.5℃で産生した。増幅DNAをベクターpCR2.1中にクローン化し、前記と同様にシーケンシングした。多数のクローンの配列解析は、このPCR産物が異なる遺伝子を表し、これはEPSPSパラログB(配列番号11)として同定されることを明らかに示した。
【0274】
断片TC1307に対応するプライマー1307F(配列番号5)および1307R(配列番号8)を、以下の組成物のPCR反応に用いた:5μlの10×Hot Start PCR緩衝液(Qiagen, Valencia, CA)、3μlの25mM MgCl
2、4μlの10mM ヌクレオチド・ミックス、1μlの各プライマー(20μM)、1.5単位のHOT START TaqDNAポリメラーゼ(Qiagen, Valencia, CA)、5μlのNex710鋳型DNA、および滅菌水を総容量50μl中に含有。以下のパラメーターを用いて、ICYCLER IQ実時間PCR計器(Bio-Rad, Hercules, CA)で、増幅を実施した:95℃で15分間、その後、95℃で30秒間を35サイクルの初期変性、40℃〜60℃の温度勾配で30秒間、ならびに72℃で1分間。72℃で10分の最終伸長を実施し、その後、4℃で無期限保持した。これらの条件下で、増幅DNAの700bp帯域を、41.4℃で産生した。このベクターをTOPO PCR2.1ベクター中にクローン化し、前記と同様にシーケンシングした。多数のクローンアラインメントは669 bp配列を生じ、これはEPSPSパラログA(配列番号10)として同定される。
【0275】
プライマー4
th_Gene_F2(配列番号6)およびEPSP_cDNA_R9(配列番号9)を用いて付加的PCR反応を実施して、パラログAのより長い配列を増幅した。PCR反応混合物は、以下の組成を有するものであった:PCR増幅のための10.0μlのACCUPRIME SUPERMIX II試薬(Invitrogen, Carlsbad, CA)、0.5μlの各プライマー(20μM)、3μlのNex710鋳型DNAおよび滅菌水(総容量20μl中)。以下のパラメーターを用いて、増幅を実施した:95℃で3分間、その後、95℃で30秒間を10サイクル、73℃(−0.5℃/サイクル)で30秒間および68℃で3分間、その後、95℃で30秒間、68℃で30秒間および68℃で3分間を30サイクル。この後、68℃で30分間最終伸長した。約2kbの増幅断片をTOPO PCR2.1ベクター中にクローン化し、次に、前記と同様にシーケンシングした。多数のクローンのアラインメントは、パラログAの1571bp配列を生じた。
【0276】
カブ類(B. rapa)cDNA(配列番号3)およびセイヨウアブラナゲノムDNA(配列番号14)の比較は、EPSPS遺伝子中の8つのエキソンおよび7つのイントロンの存在を示した。この比較に基づいて、セイヨウアブラナ変種Nex710 DNAから単離された5つの遺伝子パラログすべてのアラインメントは、予定コード領域中の遺伝子間に小さな差、例えば単一ヌクレオチド多形性(SNP)が存在し、一方、イントロン配列はヌクレオチドレベルでより有意に変化する、ということを示した。全体的に、5つのEPSPSパラログ間に84%またはそれ以上の配列相同性が認められた(表2参照)。
【0277】
【表2】
【0278】
配列依存性DNA結合タンパク質、例えばジンクフィンガータンパク質により区別され得る配列の重要領域であるため、5つのパラログ間のこれらの差に注目した。配列が非常によく似ている場合でも、ある遺伝子配列と結合するが、別のものとは結合しないジンクフィンガーDNA結合ドメインを設計することがのぞましい。パラログB、C、DおよびEの4つに関するほぼ全長遺伝子配列(配列番号11〜14)ならびに1575kbのパラログAに関する部分遺伝子配列(配列番号10)を、下記のように、ジンクフィンガーヌクレアーゼの設計のための標的として選択した。
【0279】
実施例2:EPSPSジンクフィンガーDNA結合ドメインの設計
セイヨウアブラナEPSPSのパラログA〜E内から同定された標的部位を用いて(実施例1、
図9〜13)、認識らせんをEPSPSジンクフィンガーに関して選択した。代表的EPSPSジンクフィンガー設計のための認識らせんを、以下の表Aに示す。
【0280】
【表3】
【0281】
【表4】
【0282】
【表5】
【0283】
(
*注−10657と10658、12202、14318と14320、10740と11034、10741と11036、ならびに10742と11037ZFNは、認識らせんに配置されない突然変異により、互いに異なる)
【0284】
ジンクフィンガー設計の標的部位を、以下の表Bに示す。ZFP 10654および10658を、パラログCおよびDにおける部位に関して設計した;ZFP 9875および10275を、パラログDにおける標的部位に関して設計した;ZFP 10740、10741および10742を、パラログAおよびBにおける標的部位と結合するよう設計した。
【0285】
【表6】
【0286】
CCHC構造を有する少なくとも1つのフィンガーを有するタンパク質をコードするジンクフィンガー発現ベクター中に、EPSPS設計を組入れた(米国特許出願番号60/874,911参照)。特に、各タンパク質中の最終フィンガーは、CCHC主鎖を有した。次にジンクフィンガーコード配列をIIS型制限酵素Fok Iのヌクレアーゼドメインと融合して(4つのアミノ酸ZCリンカーを介するWah et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95: 10564-10569の配列のアミノ酸384〜579)、EPSPS ZFNを形成した。種々のZFNを、米国特許出願番号60/995,566に記載されたように生物学的活性および/または毒性に関して検定した。
【0287】
実施例3:HEK293細胞におけるEPSPS特異的ZFNの機能的確証
相同組換えを促す本明細書中に記載されるようなEPSPS ZFNの能力を、Urnov (2005) Nature 435 (7042): 646-51および米国特許公開番号20050064474(例えば実施例6〜11)に記載されたGFP系で試験した。要するに、当該EPSP遺伝子領域を保有するHEK293レポーター細胞株を、以下のように生成した。当該EPSP遺伝子領域をPCRにより増幅し、その後、pcDNA4TO−GIF中にクローン化した。HEK293細胞を上記のプラスミドでトランスフェクトし、その後、400μg/mlのゼオシンの存在下で、トランスフェクションの48時間後に選択した。
【0288】
次に、得られた安定クローンのプールを、上記で生成したレポーター細胞株中のEPSP遺伝子の特定当該領域に向けられるZFNを用いて、以下のように試験した。Invitrogenリポフェクタミン2000プロトコールに従って、試料当たり2uLのリポフェクタミン2000(Invitrogen)を用いて、レポーター細胞株を、DMEM、10%FBS培地(PSGなし)1mL中の12ウエルプレート中に、350,000細胞/ウエルで植えつけて、各々50または100ngのZFNでトランスフェクトし、無プロモーターGFPドナー(Urnov (2005) Nature)500ngを500,000レポーター細胞中にトランスフェクトした。各ZFN対に関するトランスフェクションを、三重反復実験で実行した。トランスフェクションの1日後に、1mLのDMEM培地に1.5uLのビンブラスチンを最終濃度0.2
μM〜1mMで各ウエルに付加し、トランスフェクション後72時間で取り出した。Guava卓上FACS分析器でトランスフェクション当たり40,000細胞を測定することにより、トランスフェクションの5日後のGFP発現に関して、細胞を検定した。結果の例を、
図14、パネルA〜Eに示す。
【0289】
実施例4:1つのZFNはセイヨウアブラナ変種Nex710における2つまたはそれより多くのEPSPSパラログを切断し得る
植物細胞中の意図されたジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質の機能性を査定するために、生きている植物細胞中のこのようなタンパク質の発現のための方法を利用した。ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質をコードするDNAを、DNAが植物細胞ゲノム中に組入れられない条件下で、植物細胞中に送達し得る。したがって、DNA分子を一時的に植物細胞中に保持し、遺伝子発現の鋳型として作用させる。代替的には、DNA分子が植物細胞中に安定的に保持されて、遺伝子発現のための鋳型として作用するよう、ジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質をコードするDNAを、DNAを植物細胞中に組入れさせる条件下で植物細胞中に送達して、ジンクフィンガーヌクレアーゼコード遺伝子の遺伝子組換えを生じ得る。生きている植物細胞中でのこれらのタンパク質の機能性を査定するために、ジンクフィンガーヌクレアーゼコードDNAの一過性またはトランスジェニック発現を、当業者は利用し得る。
【0290】
A.ベクター設計
セイヨウアブラナ細胞中でのZFNタンパク質の発現のためのプラスミドベクターを構築した。機能的ジンクフィンガーヌクレアーゼへテロ二量体を形成するために必要とされる2つの異なるタンパク質の発現および相対的化学量論を最適にするために、単一プロモーターにより駆動される単一ベクター中の両ZFN単量体のオープンリーディングフレームの挿入を生じる発現戦略を採用した。この戦略は、SMVウイルス核局在化(NLS)シグナル(PKKKRKV(配列番号15);Kalderon et al. (1984a) Nature 311: 33-38;Kalderon et al. (1984b) Cell 39: 499-509)またはopaque-2遺伝子(op−2;Maddaloni et al. (1989) Nucleic Acids Research 17: 7532;Van Eenennaam et al. (2004) Metabolic Engineering 6: 101-108)からのトウモロコシNLS、ならびにキャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーターまたはCsVMV由来のプロモーターのいずれかであるThesoa assignaウイルス由来の2A配列(Mattion, et al. (1996) J. Virol. 70, 8124-8127)の機能性を利用した(表3参照)。
【0291】
【表7】
【0292】
CsVMV=キャッサバ葉脈モザイクウイルスプロモーターおよびリーダー配列(517bp)(Verdaguer et al. (1998) Plant Mol. Biol. 37:1055-1067);AtuORF23=アグロバクテリウム・ツメファシエンスORF23 3’UTR;AtUbi10=シロイヌナズナ・ユビキチン遺伝子 10プロモーター;Pat=ストレプトミセス・ビリドクロモゲンからのホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ遺伝子。それは、米国特許第5633434号で報告されたものの改造遺伝子である);AtuORF1=アグロバクテリウム・ツメファシエンスORF1 3’UTR(GeneBank寄託番号X00493、NC_002377);RB7 MAR=タバコマトリックス結合領域;40CSδmas2’=発現を増強するために4×OCS素子を含有する修飾マンノピンシンターゼプロモーター;遮断ipt(onc4)遺伝子Orf=アグロバクテリウム・ツメファシエンス分断ipt遺伝子(GeneBank配列ID ATTMRPTIを設計のために用いた)。
【0293】
ライブラリー保管所から選択され、de novoで合成される任意の所定対のZFNコード遺伝子に関するこれらの発現ベクターを開発するために、段階的モジュールクローニング・スキームを考案した。第一に、
図2A〜2Eに示したようにN末端発現ドメインを包含するために、pVAXベクター(例えば米国特許公報2005-0267061参照;この記載内容は参照により本明細書中で援用される)を修飾した。この修飾プラスミド(pVAX−N2A−NLSop2−EGFP−FokMono)(
図2A)の特徴としては、双子葉類コドンバイアスを利用したNLSをコードする再設計および合成セグメント、ならびにFok Iヌクレアーゼドメインをコードする再設計および合成セグメントが挙げられる。付加的には、独自Xho I部位の下流の単一ヌクレオチド挿入(C)は、クローニング便宜性のためのSac I外部位を作製した。
【0294】
第二に、pVAXベクター(例えば米国特許公報2005-0267061参照)を、C末端発現ドメインを包含するようも修飾した。この修飾プラスミド(pVAX−C2A−NLSop2−EGFP−FokMono)(
図2B)の特徴としては、双子葉類コドンバイアスを利用したNLSをコードする再設計および合成セグメント、ならびにFok Iヌクレアーゼドメインをコードする再設計および合成セグメントが挙げられる。付加的には、2つのタンパク質コードドメインのその後の連結の目的のために、Thosea asignaウイルスからの2A配列(EGRGSLLTCGDVEENPGP、配列番号16)を、ZFN ORFのN末端に導入した。
【0295】
適合性末端を作製するための制限酵素Kpn IおよびBamH Iを用いた結紮により、個々のジンクフィンガータンパク質のORFをコードする遺伝子カセットを、N2AまたはC2Aベクター中にクローン化した。次に、同一制限部位を用いて、C2AベクターからのBgl II/Xho I断片をN2Aベクター中に挿入して、Nco IおよびSac I制限部位が側面に位置する2つのZFNコードドメインを含めたカセットを含有する中間構築物を生じた(
図2C)。
【0296】
最後に、両ZFN遺伝子を含有するこの中間構築(
図2C)からのNco I/SacIカセットを、それらの制限酵素を用いて切り出して、プラスミド主鎖pDAB3731に結紮した。その結果生じたプラスミド、例えばpDAB7151(
図2D)は、プラスミド保持のために、ZFN遺伝子+関連プロモーターおよびターミネーター配列+選択可能マーカーを包含した(表2)。制限酵素消化およびシーケンシングにより、配列を確証した。この構築物において、ZFN発現カセット(プロモーターおよびターミネーター素子を含めて)は、Invitrogen(Carlsbad, CA)からのGATEWAY系を用いた便利な操作のために、attLが側面に位置する。このクローニングスキームを用いて生成されたZFN構築物の各々を、大腸菌DH5α細胞(Invitrogen, Carlsbad, CA)中で形質転換し、その後、適切な選択下で保持した。
【0297】
アグロバクテリウム媒介性植物形質転換のために、GATEWAY LR CLONASE反応(Invitrogen、カタログ番号11791−019)を用いて、ZFNカセットを二成分構築物中にクローン化した。その結果生じた二成分構築物(
図2E)を、制限酵素消化により確証し、次に、アグロバクテリウム・ツメファシエンスZ707s株中に形質転換した。制限酵素消化およびシーケンシング反応により、クローンを含有するコロニーを確証した。
【0298】
B.一過性および安定性発現系
メーカーの推奨に従って、無エンドヌクレアーゼGIGAPREPキット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて、抗生物質を含有するLB培地中で増殖させた大腸菌の2L培養から、
図2で示すようなpDAB7151のようなZFN発現構築物のプラスミド調製物を生成した。種々の方法を用いて、プラスミドDNAをセイヨウアブラナ胚軸細胞に直接送達した。
【0299】
一過性ZFN送達の一例では、アブラナ胚軸セグメントを、胚軸セグメントのウィスカー媒介性一過性形質転換によるDNA送達に付した。セイヨウアブラナ変種Nex710の種子を、10%(v/v)CLOROX(5.25%次亜塩素酸ナトリウム)で10分間、表面滅菌して、滅菌蒸留水で3回すすいだ。その後、フィタトレイ当たり25個の種子を有するフィタトレイ中に含入された1/2濃度のMS培地(ビタミン、1%スクロース、0.8%寒天、pH5.8を有する1/2MS基本塩溶液)上で種子を発芽させた。種子を培養室中に入れ、16時間明期、8時間暗期で、23℃で5日間発芽させた。5日目に、胚軸セグメント(長さ3mm)を無菌的に切り出して、さらなるセグメントを切断しながら、滅菌水中に入れて乾燥を防止した。苗条および根切片を捨てた。切片を滅菌濾紙片の上部に水平に置いて、MSK1D1培地(ビタミン、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−ジクロロフェノキシ酢酸[2,4−D]、30g/Lのスクロース、7g/LのTC寒天、pH5.8を有するMS基本塩溶液)の表面に載せた。23℃で3日間、16時間明期で、セグメントを培養した。
【0300】
ウィスカー処理当日、300個の部分カルス化胚軸セグメントを、室温で1時間の前処理のために、30mlの「高浸透圧培地」(B5ビタミン、4.42mg/Lの2,4−Dおよび12%スクロースを有するMS培地)とともにSorvallボトル中に入れた。この前処理は、その後のウィスカー処理中に細胞壁が破られた場合に、細胞損傷を改善しようとして組織を部分的に原形質分離させる一手段である。その後、8.1mlの5%SilarSO−9炭化ケイ素ウィスカー(Advanced Composite Materials, LLC Greer, SC)溶液および170μgの非二成分ZFNプラスミドDNA(表2)(上記と同様に調製)を、Sorvallボトルに付加した。次にボトルを、ペイントミキサー(Red Devil Equipment Co., Minneapolis, MN)上で30秒間、激しく掻き混ぜた(この場合、ペイントミキサーは、Sorvallボトルを保持するよう改良されたアセンブリーを固定し得る)。撹拌後、100mlの「高浸透圧培地」を直ちにボトルに付加して、これを次に室温で20分間放置し、回収した。次に、適切なサイズの滅菌金網を通してボトルの内容物を注ぎ入れてセグメントを回収し、ウィスカーおよびボトルの液体内容物とセグメントを分離した。最後に、濾紙を入れたMSK1D1培地の新たなプレート上にセグメントを戻した。ウィスカー処理後1、2、3および7日目に、一過性発現解析のために約100mgの試料を採取した。
【0301】
別の例では、一過性送達系は、胚軸原形質体のポリエチレングリコール(PEG)媒介性形質転換を用いた。Sun et al.(Can. J. Bot. (1998) 76: 530-541)が記載した方法に修正を加えた方法を用いて、セイヨウアブラナ変種Nex710幼苗の胚軸組織から、原形質体を調製した。種子を表面滅菌し、上記のような1/2MSアブラナ培地上で7日間発芽させた。1gの胚軸を、各処理のために収集した。胚軸を≦1mmのサイズの薄い切片に切断して、100mmペトリ皿中に含入されたMS9m培地(9%マンニトール、5mMのMES、10mMのアルギニン、0.3%ポリビニルピロリドン−40(PVP−40))中に入れた。すべての胚軸切片をペトリ皿中に入れた後、液体培地をピペットで取り出して、6mlの酵素溶液(0.1%マセロザイム−R10(Yakult Honsha Co. Ltd, Tokyo, Japan)、1%セルラーゼ−R10(Yakult Honsha Co. Ltd, Tokyo, Japan)、1%ペクチナーゼ(Sigma Chemical Co.)を含有するMS9m)と取り替えた。
【0302】
細胞壁を消化するために40rpmの回転振盪機上で静かに振盪しながら、25℃で16時間、組織を暗所に置いた。インキュベーション後、酵素−原形質体溶液を、50ml使い捨て遠心管の上部に置いた100μm細胞濾し器(Sigma Chemical Co.)を通して無菌条件下で濾過した。溶液を、50×gで5分間遠心分離した。上清を捨てた後、原形質体ペレットを、4mlのMS9m培地中に再懸濁した。原形質体懸濁液を、15ml遠心管中の0.5Mスクロースを有するMS 4.5mlの上部に静かに重ね入れて、50×gで遠心分離した。原形質体を、中間期に位置決定された厚い帯域からマイクロピペットで引き出して、50×gで5分間、遠心分離することにより、MS9m培地 5mlで洗浄した。
【0303】
DNA処理のために、原形質体ペレットを、200μlのMg−マンニトール溶液中に再懸濁して、最終濃度を1×10
5原形質体/mlとした。非二成分プラスミドDNA、例えばpDAB7151(表2)の50μl試料を、15ml使い捨て滅菌遠心管中に含入された200μlの原形質体溶液に付加し、混合した。等容量の40%PEG−3350溶液(Sigma Chemical Co.)を原形質体溶液に付加し、室温で20分間インキュベートした。その後、0.8mlのW5培地(125mMのCaCl
2・H
2O、154mMのNaCl、5mMのKClおよび5mMのグルコース)を付加し、さらに10分間インキュベートした後、180×gで3分間、遠心分離した。PEG溶液をピペットで取り出し、原形質体を1mlのWI溶液中に再懸濁した。次に遠心管を暗所で約18時間インキュベートした後、180×gで3分間、遠心分離した。上清を除去し、100μlの原形質体懸濁液を2mlエッペンドルフ管に移した。原形質体(10
5/ml)を、DNA処理後、0、1、2、3日目に収集し、分析するまで−80℃で貯蔵した。原形質体懸濁液の10μl試料を二酢酸フルオレセイン染色液と混合して、成育可能な原形質体を血球計数器で計数した。
【0304】
別の例では、一過性送達系は、胚軸セグメントのアグロバクテリウム媒介性形質転換を用いた。節をカルス誘導培地MSK1D1上の滅菌濾紙上で培養し、ウィスカープロトコールに関して上記したように3日前処理を施した。アグロバクテリウム処理の前日に、pDAB7147(表2)のような二成分プラスミドの細菌培養(1ループ)を、適切な抗生物質を含有するYEP培地35mlを含入するフラスコ中に接種した。細菌培養を、200rpmで絶えず振盪しながら、暗所で28℃で〜16時間の間、一晩増殖させた。翌日、アグロバクテリウム溶液を、液体M培地中で最終濃度Klett 50に調製した。胚軸セグメントを、濾紙から、40mlのアグロバクテリウム懸濁液を含入する100×25mmペトリ皿に移して、10分毎に定期的に掻き混ぜながら、室温で30分間インキュベートした。処理期間終了時に、アグロバクテリウム溶液を除去し、胚軸セグメントを、MSK1D1培地を濾紙とともに含入する元のプレートに戻した。プレートをアルミ箔で覆うことにより光強度低減下で、Percivalまたは培養室中で3日間、セグメントを同時培養した。
【0305】
同時培養の3日後に、カルス誘導培地MSK1D1TC(MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、0.5gm/lのMES、5mg/lのAgNO
3、300mg/lのチメンチン、200mg/lのカルベニシリン、3%スクロース、0.7%Phytagar)上に移した。アグロバクテリウム処理後、0、2、3、4および7日目に約100mgの胚軸組織を採取し、分析するまで−80℃で貯蔵した。
【0306】
安定トランスジェニック発現系を用いるZFN送達の一例では、セイヨウアブラナ変種Nex710の種子を表面滅菌して、5日間発芽させ、≦1mmの胚軸セグメントを調製し、ウィスカー処理に関して記載したように3日間前処理した。3日後、上記のようなアグロバクテリウム媒介性一過性発現系に関して記載したように、胚軸セグメントを二成分アグロバクテリウム株(表2)のいずれかで処理し、3日間同時培養した。
【0307】
同時培養の3日後に、300の胚軸セグメントをカルス誘導培地MSK1D1H1(MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、0.5gm/lのMES、5mg/lのAgNO
3、300mg/lのチメンチン、200mg/lのカルベニシリン、1mg/lのハービエース、3%スクロース、0.7%Phytagar)上に、低レベルの除草剤選択で、7日間移した。次に胚軸セグメントを、高レベルの選択を含有するMSK1D1H3培地(MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、0.5gm/lのMES、5mg/lのAgNO
3、300mg/lのチメンチン、200mg/lのカルベニシリン、3mg/lのハービエース、3%スクロース、0.7%Phytagar)に2週間移して、その後、MSK1D1H5培地(MS、1mg/Lのキネチン、1mg/Lの2,4−D、0.5gm/lのMES、5mg/lのAgNO
3、300mg/lのチメンチン、200mg/lのカルベニシリン、5mg/lのハービエース、3%スクロース、0.7%Phytagar)にさらに2週間移した。二成分構築物(表2)の各々に関して、合計203および227のカルス株を得た(それぞれ、67.6%および75.5%のカルス頻度を示す)。次に、50の無作為カルス株を、アグロバクテリウム処理の5〜7週間後に、DNA解析に付した。
【0308】
C:標的化ZFN媒介性二本鎖切断に関するEPSPSパラログ解析
本実施例におけるZFNの機能性は、作物種の細胞中で発現するZFNの能力、ならびにその所望の標的との結合およびその切断についての認識によりその作物の内因性ゲノムにおいてそのZFNが二本鎖(ds)破断を媒介する能力を包含する(しかしそれに限定されない)と理解される。本実施例では、ZFNの標的は、作物ゲノム内の内因性遺伝子座およびその立体配座中の遺伝子である、ということも理解される。改変ZFNがゲノム状況中の予測標的遺伝子に対する機能性を有するか否かを査定するために、DNA配列ベースの検定を展開した。DNA中のZFN誘導性ds破断は、非相同性末端結合(NHEJ)のような修復機序を誘導すると予測される(Cahill et al. (2006) Front Biosci. 1: 1958-1976により検討されている)。NHEJの結果の1つは、破断DNA鎖の一部は不完全な方法で修復されて、切断部位に小さな欠失、挿入または置換を引き起こす、というものである。種々の方法により、DNA配列におけるこれらの変化を、当業者は検出し得る。
【0309】
EPSPSパラログにおけるNHEJの同定のために、遺伝子特異的検定を、PCRベースのアプローチを用いて開発した。5つのEPSPSパラログのうちの4つ、A、B、CおよびDにおける十分な配列差が、パラログ特異的検定の開発を可能にした。パラログDおよびEの配列は、標的化遺伝子座で十分に区別され得ず、両方のパラログを代表する1つの検定のみの開発をもたらした。標的遺伝子に特異的で、ZFNの予測切断部位が側面に位置するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR増幅を実行した。パラログ特異的PCRプライマーを以下に示す:
パラログA:
フォワードプライマー:5’−TCCCAGCTTCTTTAGATTCTAAGG−3’(配列番号17)
リバースプライマー:5’−CTGCAACTTTTCACATAGCAA−3’(配列番号18)
パラログB:
フォワードプライマー:5’−CAAGAGTGATATCGAGTTGTACCTTGGGAATGCT−3’(配列番号19)
リバースPCRプライマー:5’−AGGCCATCATATCGAGCAAACGCAGT−3’(配列番号20)
パラログC:
フォワードプライマー:5’−GGGTAAACAACCGTGCTGTA−3’(配列番号21)
リバースプライマー:5’−AAAGACTGCTGCAAACAAGATC−3’(配列番号22)
パラログD/E:
フォワードプライマー:5’−GGTTGTTGAAGGATGCGGT−3’(配列番号23)
リバースプライマー:5’−GCAAACAATTCATAGAGTAAATGTG−3’(配列番号24)
【0310】
順およびリバースPCRプライマーはすべて、所定のパラログに関して組合せて用いて、以下の条件下でパラログの各々を含有する精製ゲノムDNAまたは陽性対照プラスミドDNAを増幅した:2.5μlのDNA鋳型(10ng/μl)またはプラスミドDNA陽性対照(1ng/μl)、0.625μlの各プライマー(各々10μMで)、2.5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液IIおよび0.15μl(0.75単位)のACCUPRIME TaqDNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する25μlの反応容量。以下のパラメーターを用いて、ICYCLER IQ(Bio-Rad, Hercules, CA)で、増幅を実施した:94℃で2分間、(94℃で30秒間、アニーリング(以下の勾配参照)30秒、68℃で1分間)の35サイクル、68℃で10分間、4℃を無期限に保持。
【0311】
最適反応条件を確定するために、勾配を実行した。購買温度は、65.0℃〜50.0℃であった。パラログA、B、CおよびD/Eは、それぞれ62.1℃、65.0℃、65.0℃および59.3℃アニーリング温度で最良の増幅を示し(
図3A〜3D)、これらの温度をその後の試験で用いた。4つのパラログすべてに関するPCR産物をTOPO pCR2.1ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA)中にクローン化し、パラログ特異的増幅に関してシーケンシングすることにより確証した。
【0312】
上記のような胚軸細胞へのZFN送達の3つの一過性方法および1つの安定的方法を比較して、ZFN効能を査定するための最も有効な方法を同定した(最高数のNHEJの存在により確定)。腎臓293細胞において有効であることが立証されたパラログD特異的ZFNを、この試験に用いた。これらのZFNタンパク質は、パラログDの2つの短いEPSPS遺伝子特異的配列と結合して、二本鎖DNAを切断するヘテロ二量体ヌクレアーゼを作製すると予測された(
図4)。これらのZFN遺伝子は、4つの構築物中に存在した:2つの二成分構築物、pDAB7147およびpDAB7150(アグロバクテリウム媒介性形質転換に特異的であった)、ならびに残り2つの構築物pDAB7151およびpDAB7154(一過性形質転換のための)(表2)。安定的形質転換カルス組織を、さらに「緑色」および「褐色」試料に分類したが、「褐色」組織中ではより高いZFN発現の可能性があり、それゆえ、より高頻度のNHEJの機会を有した。後者は、細胞毒性を生じて、組織を「褐色」に変色させ得る。非処理対照を含めた全試料を収集し(セクション4B参照)、凍結し、凍結乾燥したが、但し、原形質体試料に関しては、これらをDNA単離のために直接用いた。上記のようなQiagen法により、ゲノムDNAを単離した。メーカーの推奨に従って、3μgのすべてのゲノムDNAを5単位のMae III制限エンドヌクレアーゼ(Roche Applied Science, Indianapolis, IN)で一晩消化した。
【0313】
次に、0.1容積の3M酢酸ナトリウム、pH5.2および2容積の100%エタノールを付加することによるエタノール沈殿後、10,000gで5分間、マイクロ遠心機で遠心分離することにより、DNAを精製した。次にDNAを70%エタノールで洗浄し、ペレットをSPEEDVAC蒸発器(Savant)で乾燥し、水中に再懸濁した。次に、上記と同様に、DNAを一晩、第二Mae III消化に付して、エタノールで沈殿させた。制限酵素部位は、対の2つの単量体ZFN結合位置間に位置し(
図4)、Fok Iドメインが二量体化し、ゲノムDNAにおける二本鎖破断を誘導する場所に近い。それゆえ、制限酵素消化は、NHEJを受けたことのある断片に関して強化され、制限酵素認識部位の損失を生じる。
【0314】
次に、パラログDに特異的で且つZFNの予定切断部位の側面に位置するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR増幅を実行した。標的化EPSPSパラログDに特異的なフォワードPCRプライマー(5’−GGTTGTTGAAGGATGCGGT−3’)(配列番号23)およびリバースPCRプライマー(5’−GCAAACAATTCATAGAGTAAATGTG−3’)(配列番号24)を組合せて用いて、以下の条件下で、精製ゲノムDNAを増幅した:10μlのMae III消化gDNA(26.4ng)鋳型、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液II、5μlの10%PVP−40および1μl(5単位)のACCUPRIME TaqDNAポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を含有する55μlの反応容量。予測サイズの増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、59.3℃で30秒、68℃で1分間)の40サイクル、68℃で10分間、4℃を無期限に保持。TAクローニングキット(Invitrogen, Carlsbad, CA)を用いて、増幅断片をベクターpCR2.1中に直接クローン化した。
【0315】
約90の個々のクローン化断片/時点/処理を、pCR2.1ベクター上に存在するM13順およびM13逆プライミング部位を用いて、シーケンシングした。所定の処理に関しては、非処理対照を包含した。約3000クローンをこのようにしてシーケンシングした。
【0316】
2つの異なるZFN処理全体のシーケンシング結果すべての解析は、pDAB7151中に存在するZFNのまさに切断部位に小欠失を含有する13のクローン(順および逆シーケンシングプライマーの両方により確証)を明示したが、これは、NHEJ機序が、その部位でのDNA配列の不完全修復を媒介した、ということを示す(
図5)。これらの特定クローンは、ZFN形質転換の3日後の原形質体DNA試料から得た。これらの結果は、作物種内の内因性遺伝子座で特異的方法で標的化二本鎖破断を誘導する改変ZFNの能力を実証した。この型のシーケンシングを用いたZFN処理の任意の他の方法においては、NHEJは観察されなかった。
【0317】
D.大規模並列シーケンシング解析
別の例では、PCRおよび大規模並列ピロシーケンシング法の組合せを適用して、上記で得られたような試料中のパラログDを照会した。同一組の順および逆パラログD特異的プライマー(配列番号23および配列番号24)を用いて、ナタネ胚軸細胞中へのZFN形質転換の3つの一過性および1つの安定的方法を表すすべての試料のDNAを増幅した。増幅条件は、上記と同様であった。
【0318】
次に、このプライマー増幅産物を、MINELUTE PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製し、10μl中でDNAを溶離した。第二組の入れ子状態プライマーは、大規模並列シーケンシングに適合させた約100bp断片を増幅するよう意図された。フォワードPCRプライマー(5’−XXX AGTTGTACCTTGGGAATG−3’)(配列番号25)(ここで、XXX=GGC、CGC、GGC、CGG、CCGまたはGCG)の6つの変異体、ならびにリバースPCRプライマー(5’−XXX ATCAATTTCTTGACAATAACA−3’)(配列番号26)(ここで、XXX=GGC、CGC、GGC、CGG、CCGまたはGCG)の6つの変異体を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。各プライマーの5’末端の3bpタグは、鑑別子キーとして役立ち、どの細胞からアンプリコンが生じるかを示した。マッチング識別子タグ(キー)を有するプライマー対を組合せて用いて、以下の条件下で、上記の試料由来の精製第一PCRアンプリコンを増幅した:10μlの精製PCRアンプリコン(1:10希釈)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液Iおよび0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。予測サイズの増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、62℃で30秒、68℃で30秒)の30サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持し、メーカーの推奨に従って、MINELUTE PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製した。
【0319】
大規模並列ピロシーケンシング反応(454シーケンシングとしても知られている)を、(Margulies et al. (2005) Nature 437: 376-380)に記載されているように、PCR産物に関して直接実施した。DNA分子内の予測サイズおよび位置の欠失を含有する配列読取値を同定することにより、454シーケンシング結果の解析を実行した。これらの解析結果は、
図6に示されているように、これらのZFNに関する予測切断部位での多数の小さな9〜12bp欠失の存在を示した。48の欠失のうち46を、ZFN構築物pDAB7147で安定的に形質転換された緑色カルスから得られた配列読取値で観察された(表3)。同一ZFN対を伴う2つの付加的欠失、すなわち、一過性処理原形質体DNAからのもの(pDAB7151)と、アグロバクテリウムで一過的処理された胚軸組織からのもの(dDAB7147)を得た。これらの欠失は、ZFN標的部位にまさに配置され、そして、ZFNにより誘導されたds破断が生成され、これはその後、NHEJ機序により修復される、ということを示した。
【0320】
パラログDおよびEは本実施例で用いられるPCR検定により区別可能でないため、ZFNにより当該パラログの一方または両方を切断することが出来る。これらの結果は、作物種内の内因性遺伝子座で特異的方法で標的化二本鎖破断を誘導する改変ZFNの能力をさらに実証する。それはさらに、ZFN形質転換の安定的方法が、最新実験条件化でNHEJをスクリーニングするための最も有効な方法である、ということを立証した。構築物pDAB7150およびpDAB7154中に存在するZFNは、異なる形質転換方法で処理された多数の試料全体で如何なる欠失も示さなかった(表4参照)。
【0321】
表4.ZFNpDAB7147およびpDAB7151を用いたセイヨウアブラナ胚軸セグメントの一過性および安定性形質転換から得られたEPSPSパラログDの標的化配列中のNHEJを示す大規模並列シーケンシング結果。対照試料はZFNで処理されていない組織で構成された。
【0322】
【表8】
【0323】
他のEPSPSパラログにおけるZFN誘導性二本鎖破断を解析する努力に際して、PCRおよび大規模並列ピロシーケンシングの組合せを実施して、ZFN誘導性二本鎖破断に関して残りのEPSPSパラログのDNAを照会した。節4D〜Eに記載したような、pDAB7147およびpDAB7150を含有するアグロバクテリウム株で形質転換された同一の「緑色」安定カルスからのMaeI IIIで消化されたゲノムDNAを用いた。次に、ZFNの予測切断部位の側面に位置するゲノムDNA上に固定されたEPSPSパラログA、B、CおよびDに特異的なオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR増幅を実行した。パラログAに関するフォワードPCRプライマー(5’−TCCCAGCTTCTTTAGATTCTAAGG−3’)(配列番号17)およびリバースPCRプライマー(5’−CTGCAACTTTTCACATAGCAA−3’)(配列番号18)、パラログBに関するフォワードPCRプライマー(5’−CAAGAGTGATATCGAGTTGTACCTTGGGAATGCT−3’)(配列番号19)およびリバースPCRプライマー(5’−AGGCCATCATATCGAGCAAACGCAGT−3’)(配列番号20)、パラログCに関するフォワードPCRプライマー(5’−GGGTAAACAACCGTGCTGTA−3’(配列番号21)およびリバースPCRプライマー(5’−AAAGACTGCTGCAAACAAGATC−3’)(配列番号22)、パラログDに関する同一組の順および逆プライマー(配列番号23および配列番号24)(節4D〜Eに記載)を組合せて用いて、以下の条件下で、別々に、パラログの各々に関するゲノムDNAを増幅した:200ngのMae III消化gDNA鋳型(10μl)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液II、5μlの10%PVP−40および0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、30秒間アニーリング、68℃で1分間)の25サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持。以下のパラログに関するアニーリング温度を示す:A=62.1℃、B=65℃、C=65℃、およびD=59.3℃。
【0324】
この第一増幅産物を、次に、Qiagen MINELUTE PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製し、10μlの緩衝液EB中で溶離した。パラログAフォワードPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX ATCGAGTTGTACCTTGGGAATG−3’)(配列番号27)(ここで、XXX=GGC、CGGまたはGCC)、ならびにパラログAリバースPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX AATAAGTCCTTAACCTTACCTT−3’)(配列番号28)(ここで、XXX=GGC、CGGまたはGCC)を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。パラログBフォワードPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX AGAGTGATATCGAGTTGTACCTTG−3’)(配列番号29)(ここで、XXX=CGG、CGCまたはGCC)、ならびにパラログBリバースPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX ACACTCCTTAACCTTACCTT−3’)(配列番号30)(ここで、XXX=CGG、CGCまたはGCC)を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。パラログCフォワードPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX AGAGTGATATTGAGTTGTACCTTG−3’)(配列番号31)(ここで、XXX=CGG、GGCまたはGCC)、ならびにパラログCリバースPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX AAAGCTCCTTAACCTTTACCT−3’)(配列番号32)(ここで、XXX=CGG、GGCまたはGCC)を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。パラログDに関する第二PCR増幅のためのプライマー(配列番号25および配列番号26)は、節4Dに記載されている。各プライマーの5’末端の3bpタグは、鑑別子キーとして役立ち、どのセイヨウアブラナ試料からアンプリコンが生じるかを示した。マッチング識別子タグ(キー)を有するプライマー対を組合せて用いて、以下の条件下で、上記の試料由来の精製第一PCRアンプリコンを増幅した:10μlの精製PCRアンプリコン(1:10希釈)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液Iおよび0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。予測サイズの増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、62℃で30秒、68℃で30秒)の33サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持し、メーカーの推奨に従って、Qiagen(Valencia, CA)のMINELUTE PCR精製キットを用いて精製した。
【0325】
大規模並列ピロシーケンシング反応を、節4Dに記載されたようにPCR産物に関して直接実施した。DNA分子内の予測サイズおよび位置の欠失を含有する配列読取値を同定することにより、シーケンシング結果の解析を実行した。
【0326】
これらの解析結果は、パラログCおよびD中の予測ZFN切断部位での多数の小さな欠失の存在を示した(
図7)。pDAB7147 ZFNは、さらにまた、2つのパラログCおよびD(およびE)を切断するのにも有効であった。5〜32bpのこれらの欠失は、ZFN標的部位にまさに配置され、そして、pDAB7147ZFNによる2またはそれより多くのEPSPSパラログの切断を実証した。これらの結果はさらに、作物種内の内因性遺伝子座で特異的方法で標的化二本鎖破断を誘導する改変ZFNの能力を実証した。
【0327】
1つのNHEJは各々、pDAB7147およびpDAB7150で処理した試料5、6および9のパラログAおよびBで観察された(表5)。これらのNHEJは、予測位置で観察された。しかしながら、対照試料のいくつかも1つのNHEJを含有したため(表5の試料2、7および13)、ZFNはこれらのパラログを切断するのに有効であるとみなされなかった。
【0328】
表5.セイヨウアブラナにおける4つのEPSPSパラログの標的化配列中のZFN媒介性二本鎖破断とその後のNHEJ修復を受けたDNA分子を示す大規模並列シーケンシング結果。対照試料はZFNで処理されていないトランスジェニック・カルスを表す。
【0329】
【表9】
【0330】
実施例5:第2ZFNはセイヨウアブラナにおける5つのパラログのうちの残り2つのパラログを切断する
次に、残り2つのパラログAおよびBにおける二本鎖破断を誘導することに重点を置くZFN媒介性二本鎖切断を試みた。第一ZFN結合位置から約350bp 5’にある異なる配列を標識にした2つの新規の改変ZFNを用いた(
図4)。これらの特定のZFN構築物pDAB7185およびpDAB7186(表3)を、実施例4、節Bに記載したように、セイヨウアブラナ胚軸セグメントの安定形質転換に用いた。ZFNを用いた安定形質転換カルスを、実施例4の節Cに前記したように、凍結し、凍結乾燥し、DNA抽出した。次にDNAをBso B1(New England Biolabs, Ipswich, MA)またはLwe I(Fermentas, Inc., Hanover, MD)で消化して、NHEJを受けたことのある断片に関して濃化した(
図4)。メーカーの使用説明書に従って消化を一晩実行し、前記と同様にエタノール沈殿により精製した。次に、標的遺伝子に特異的な且つZFNの予定切断部位の側面に位置するオリゴヌクレオチドプライマーを用いて、PCR増幅を実行した。標的化EPSPS遺伝子パラログに特異的な、パラログAに関するフォワードPCRプライマー(5’−CAGCGTGGAGCTTATCAGA−3’)(配列番号33)およびリバースPCRプライマー(5’−AAACGCAACACTAAGCAAAC−3’)(配列番号35)、パラログBに関するフォワードPCRプライマー(5’−GAAGAGTAACAACGGCTCTGTG−3’)(配列番号34)およびリバースPCRプライマー(5’−GAAAGAAAGAAGCAAACCGAC−3’)(配列番号90)を組合せて用いて、以下の条件下で精製ゲノムDNAを増幅した。
【0331】
パラログAに関しては、420〜700ngのBso BI消化ゲノムDNA鋳型(10μl)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液II、5μlの10%PVP−40および0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、60℃で30秒間、68℃で1分間)の28サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持。
【0332】
パラログBに関しては、420〜700ngのBso BI消化gDNA鋳型(10μl)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液II、5μlの10%PVP−40および0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、58℃で30秒間、68℃で1分間)の28サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持。次に、この第一増幅産物を、MINELUTE PCR精製キット(Qiagen, Valencia, CA)を用いて精製し、10μlの緩衝液EB中で溶離した。パラログAフォワードPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX TCTGTTTCCACGGCGGAG−3’)(配列番号36)(ここで、XXX=CCG、GCGまたはCGC)、ならびにパラログAリバースPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX AAGCGGCAAGAAGAAGAATC−3’)(配列番号37)(ここで、XXX=CCG、GCGまたはCGC)を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。パラログBフォワードPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX TCTGTTTCCACGGCTGAG−3’)(配列番号38)(ここで、XXX=GGC、GCCまたはCGG)、ならびにパラログBリバースPCRプライマーの3つの変異体(5’−XXX ATTGGACAGAGATTTGGGTC−3’)(配列番号39)(ここで、XXX=GGC、GCCまたはCGG)を合成し、HPLC精製した(IDT, Coralville, IA)。各プライマーの5’末端の3bpタグは、鑑別子キーとして役立ち、どの試料から増幅断片が生じるかを示した。マッチング識別子タグ(キー)を有するプライマー対を組合せて用いて、以下の条件下で、上記の試料由来の精製第一PCRアンプリコンを増幅した:10μlの精製PCRアンプリコン(1:10希釈)、1.25μlの各プライマー(各々10μMで)、5μlの10×ACCUPRIME PCR緩衝液Iおよび0.3μl(1.5単位)のACCUPRIME TaqDNA高忠実度ポリメラーゼ(Invitrogen, Carlsbad, CA)を、酵素メーカー緩衝液中に含有する50μlの反応容量。
【0333】
予測サイズの増幅産物は、以下の増幅サイクルから得た:94℃で2分間、(94℃で30秒間、30秒間アニーリング、68℃で30秒)の25サイクル、68℃で5分間で、4℃を無期限に保持し、メーカーの推奨に従って、Qiagen(Valencia, CA)のMINELUTE PCR精製キットを用いて精製した。上記の第二PCR反応に関するアニーリング温度を以下に示す:パラログA:66℃およびパラログB:64℃。
【0334】
大規模並列ピロシーケンシング反応を、PCR産物に関して直接実施した。DNA分子内の予測サイズおよび位置の欠失を含有する配列読取値を同定することにより、シーケンシング結果の解析を実行した。
【0335】
これらの解析結果は、予測切断部位での多数の小さな欠失の存在を示した(
図8、表6)。さらにまた、これらの欠失はZFN標的部位にまさに配置され、そして、ZFNにより誘導された二本鎖破断がゲノム中に生成され、その後NHEJにより修復されることを示した。pDAB7185中にクローン化されたZFNは全体的に、ZFN pDAB7186より二本鎖破断を引き起こすに際して有効であった。
【0336】
これらの結果はさらに、作物種内の内因性遺伝子座で特異的方法で標的化二本鎖破断を誘導するこれらの改変ZFNの能力を実証した。結果は、2つのEPSPSパラログAおよびBを切断する同一ZFNの能力も実証した。
【0337】
表6.セイヨウアブラナにおけるEPSPSパラログAおよびBの標的化配列中のZFN媒介性二本鎖破断とその後のNHEJ修復を受けたDNA分子を示す大規模並列シーケンシング結果。対照試料はZFNで処理されていないトランスジェニック・カルスを表す。
【0338】
【表10】
【0339】
実施例6:2つのZFNはすべてのEPSPSパラログを切断し得る
別の例では、セイヨウアブラナ胚軸セグメントを2つのZFNと同時形質転換して、ZFNをともに含有する安定トランスジェニック事象を作製したが、これは、すべてのEPSPSパラログにおけるNHEJを実証する。この実験における同時形質転換のために用いられた特異的ZFN構築物は、pDAB7147およびpDAB7185であった(表3)。安定トランスジェニック・カルス事象を生成し、DNA単離し、実施例4および5に記載したように解析した。4つのEPSPSパラログA、B、CおよびDすべてにおけるNHEJを、節4および5に記載したものと同様に、同定した。さらにまた、パラログDおよびEにおけるNHEJは、配列類似性のために区別できなかった。NHEJのすべてが、種々のパラログの予測標的配列中に配置された。
【0340】
これらの結果は、以下の2点を立証する:1.ZFNは、1〜2つの遺伝子/パラログを特異的に切断するために、多数の遺伝子ファミリーの識別配列に対して意図され得る。2.すべての遺伝子パラログを同時的に切断するために、必要に応じて、多数のZFNが用いられ得る。
【0341】
標的化切断、標的化組換えおよび標的化組込みに関するさらなる情報は、米国特許出願公開番号US-2003-0232410;US-2005-0026157;US-2005-0064474;US-2005-0208489およびUS-2007-0134796(これらの記載内容は参照により本明細書中で援用される)に見出され得る。
【0342】
本明細書中で言及される特許、特許出願および出版物はすべて、これらの記載内容が参照により本明細書中で援用される。
【0343】
理解をたやすくするために例証および実施例により多少詳細に開示を提供してきたが、本発明の精神または範囲を逸脱しない限り、種々の変更および修正が成され得ることは当業者には明らかである。したがって、前記の説明および実施例は、本発明を限定するものではない。