(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046695
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】遠位先端部および近位溶液管腔を有するマイクロカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/00 20060101AFI20161212BHJP
A61M 25/14 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61M25/00 534
A61M25/14 512
【請求項の数】30
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2014-503256(P2014-503256)
(86)(22)【出願日】2012年4月4日
(65)【公表番号】特表2014-517725(P2014-517725A)
(43)【公表日】2014年7月24日
(86)【国際出願番号】IB2012051641
(87)【国際公開番号】WO2012137139
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2015年3月10日
(31)【優先権主張番号】13/079,866
(32)【優先日】2011年4月5日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507248996
【氏名又は名称】サーモピューティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100116872
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 和子
(72)【発明者】
【氏名】ソーラー ロナルド ジェイ
(72)【発明者】
【氏名】シェイクド ヨアフ
(72)【発明者】
【氏名】リーバー グレン
【審査官】
姫島 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−130110(JP,A)
【文献】
米国特許第05925016(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2001/0041905(US,A1)
【文献】
特開2006−055337(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/00
A61M 25/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体近位端、胴体遠位端および細長管状体を通して軸方向に延びる溶液管腔を有する前記細長管状体であって、前記細長管状体は前記胴体遠位端において前記溶液管腔内に出口を備える、細長管状体と、
先端部近位端、先端部遠位端および先端部を通して軸方向に延びる先端部管腔を有する前記先端部であって、前記先端部は少なくとも10mmの長さを有し、前記先端部は前記細長管状体よりも小さい直径を有し、前記細長管状体から軸方向に延びて前記細長管状体と連続しており、前記先端部管腔は前記溶液管腔よりも小さい内径を有し、前記溶液管腔と連続しており、前記先端部管腔は、前記先端部管腔に保持されるガイドワイヤを十分に適合するようにサイズ合わせされた、先端部と、
を備える、マイクロカテーテル。
【請求項2】
前記先端部近位端は、前記細長管状体の前記出口の遠位に配置される、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項3】
前記細長管状体は、前記細長管状体内にガイドワイヤの近位部を保持するように構成される、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項4】
前記先端部は前記細長管状体から分離している、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項5】
前記先端部は前記先端部近位端において近位開口部を有し、前記近位開口部は前記出口と同一線上にない、請求項4に記載のマイクロカテーテル。
【請求項6】
前記細長管状体の直径は前記先端部の直径より大きい、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項7】
前記先端部は少なくとも部分的にX線不透過性である、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項8】
前記先端部はX線不透過物質と合成される高分子から構成される、請求項7に記載のマイクロカテーテル。
【請求項9】
前記先端部は10mm〜120mm長の範囲である、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項10】
前記先端部の内径は、前記先端部を通して配置されるガイドワイヤの直径より
約0.00508cm大きい、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項11】
前記出口は複数の開口部を備える、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項12】
前記出口は前記胴体遠位端における開口部を備え、前記開口部は血管内に直接通じる、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項13】
前記先端部遠位端に配置されるバルーンをさらに備える、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項14】
前記バルーンはコンプライアント材料からなる、請求項13に記載のマイクロカテーテル。
【請求項15】
前記バルーンはセミコンプライアント材料からなる、請求項13に記載のマイクロカテーテル。
【請求項16】
前記細長管状体の長さに沿って延び、前記細長管状体に結合されるスパインワイヤをさらに備え、前記スパインワイヤはさらに、前記先端部に少なくとも部分的に接続される、請求項1に記載のマイクロカテーテル。
【請求項17】
胴体近位端、胴体遠位端、および細長管状体を通して軸方向に延びる溶液管腔を有する前記細長管状体であって、前記細長管状体は前記胴体遠位端において出口を備える、細長管状体と、
先端部近位端、先端部遠位端、および先端部を通して軸方向に延びる先端部管腔を有する前記先端部であって、前記先端部は少なくとも10mmの長さを有し、前記先端部管腔は、前記先端部管腔に保持されるガイドワイヤを十分に適合するようにサイズ合わせされ、前記先端部の内径は、前記先端部管腔を通して配置される前記ガイドワイヤの直径より約0.002インチ(約0.00508cm)大きくされることで、前記ガイドワイヤにタイトフィットを与え、これにより、マイクロカテーテルの遠位部の最小化ならびに前記ガイドワイヤの改良された押し易さおよび操縦性を与え、前記先端部は前記先端部近位端において近位開口部を有し、前記先端部は前記細長管状体から分離され、かつ、前記先端部は前記細長管状体に対して偏心し、前記先端部の前記近位開口部は前記出口と同一線上にない、先端部と、
を備える、マイクロカテーテル。
【請求項18】
前記細長管状体および前記先端部は実質的に同じ直径を有する、請求項17に記載のマイクロカテーテル。
【請求項19】
前記先端部近位端は前記細長管状体の前記出口の遠位に配置される、請求項17に記載のマイクロカテーテル。
【請求項20】
前記先端部は少なくとも部分的にX線不透過性である、請求項17に記載のマイクロカテーテル。
【請求項21】
前記先端部はX線不透過物質と合成される高分子から構成される、請求項20に記載のマイクロカテーテル。
【請求項22】
前記先端部は10mm〜120mm長の範囲である、請求項17に記載のマイクロカテーテル。
【請求項23】
血管の一部に溶液を提供する方法であって、前記方法は、
細長管状体を通して軸方向に延びる管腔および出口を有する前記細長管状体と、前記細長管状体の遠位の先端部とを有するマイクロカテーテルを提供する工程であって、前記先端部は少なくとも10mmの長さを有し、前記先端部は前記先端部を通して軸方向に延びる先端部管腔を有しており、前記先端部の内径は、前記先端部管腔を通して配置されるガイドワイヤの直径より約0.002インチ(約0.00508cm)大きくされることで、前記ガイドワイヤにタイトフィットを与え、これにより、前記マイクロカテーテルの遠位部の最小化ならびに前記ガイドワイヤの改良された押し易さおよび操縦性を与える、工程と、
血管内にガイドワイヤを配置する工程と、
前記マイクロカテーテルの少なくとも前記先端部を通して前記ガイドワイヤを配置することによって血管内に前記マイクロカテーテルを進入させ、前記ガイドワイヤ上で前記マイクロカテーテルを進入させる工程と、
胴体近位端において前記細長管状体内に溶液を導入する工程と、
前記ガイドワイヤが前記先端部に留置されている間と同時に、前記出口を介して血管内に前記溶液を注入する工程と、
を含む、方法。
【請求項24】
前記溶液は対照液である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記溶液は治療溶液または診断溶液である、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
交互に前記溶液を注入する工程、血管内に前記ガイドワイヤを進入させる工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記注入する工程は短時間の放出で行われる、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記ガイドワイヤは前記細長管状体および前記先端部を通して配置され、前記溶液は、前記細長管状体内に前記ガイドワイヤを有する前記細長管状体内に注入される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
前記先端部は前記細長管状体に対して偏心し、前記ガイドワイヤは前記先端部を通してのみ配置される、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
迅速交換遠位レールとして前記先端部を使用することによって前記ガイドワイヤを交換する工程をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガイドワイヤを保持するための先端部と、溶液管腔を有する近位体とを有するマイクロカテーテルに関する。
【0002】
より具体的には、本発明は、対照液または治療液もしくは診断液などの溶液を近位管腔内に保持し、同時に遠位端管腔内にガイドワイヤを保持するために設計されるマイクロカテーテルであって、ガイドワイヤまたはマイクロカテーテルを血管内で操作しながら血管内に溶液を注入するために使用され得る、マイクロカテーテルに関する。
【背景技術】
【0003】
マイクロカテーテルは一般に、介入手順の間、動脈血管系の領域に慎重にアクセスするために医師により使用される。それらは典型的に、ガイドワイヤの配置および交換を容易にするために使用され、また、治療剤を選択的に注入または送達するために使用され得る。マイクロカテーテルのいくつかの例は、Skyway(登録商標)およびMinnie(登録商標)(Vascular Solutions,Inc)、Rebar(登録商標)、Nautica(商標)およびEchelon(商標)(ev3,Inc.)、Quick−Cross(登録商標)Select(Spectranetics,Inc.)、Tracker(登録商標)Excel(商標)(Boston Scientific,Inc.)およびCorsair(登録商標)(Asahi Intecc)であり、それらの全ては単一の管腔カテーテルであり、管腔は、ガイドワイヤに支持を与えるために、その管腔に配置されるガイドワイヤと十分に適合するようにサイズ合わせされている。これらの装置は、単層もしくは多層ポリマーシャフト、またはステンレス鋼ブレードを有するポリマーシャフトから構成され得る。診断剤または治療剤の灌流を実施するために、ガイドワイヤは管腔から取り除かれなければならず、この結果、遠位血管系へのアクセスの損失が起こり得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の実施形態によれば、マイクロカテーテルが提供される。マイクロカテーテルは、胴体近位端、胴体遠位端および細長管状体を軸方向に延びる溶液管腔を有する細長管状体を備える。細長管状体は胴体遠位端において出口を有する。マイクロカテーテルはさらに、先端部近位端、先端部遠位端、および先端部を通して軸方向に延びる先端部管腔を有する先端部を備える。先端部管腔は、その中に保持されるガイドワイヤを十分に適合する(ぴったりと合う)ようにサイズ合わせされ、細長管状体の直径より小さい直径を有する。
【0005】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、マイクロカテーテルは、細長管状体の長さに沿って延び、その細長管状体に結合され、さらに先端部に少なくとも部分的に接続されるスパインワイヤをさらに備えてもよい。先端部近位端は細長管状体の出口の遠位に配置されてもよい。一部の実施形態において、細長管状体は、先端部と一つながりであり、その細長管状体にガイドワイヤの近位部を保持するように構成される。他の実施形態において、先端部は管状体から分離されており、管状体に対して偏心されてもよい。一部の実施形態において、先端部は先端部近位端において近位開口部を有し、近位開口部は出口と同一線上にない。先端部は少なくとも部分的にX線不透過性であってもよく、10mm〜120mmの長さを有してもよい。先端部の内径は、先端部を通して配置されるガイドワイヤの直径より約0.002インチ(約0.00508cm)大きくてもよいか、またはタイトフィットがガイドワイヤ周囲で提供されるように任意のサイズであってもよい。一部の実施形態において、バルーンは遠位先端部に配置されてもよく、バルーンは用途に応じてコンプライアント材料またはセミコンプライアント材料から作製されてもよい。バルーンは、先端部の近位端、先端部の遠位端、または用途に応じて間のいずれかの部位に配置されてもよい。
【0006】
本発明の別の実施形態によれば、マイクロカテーテルが提供される。マイクロカテーテルは、胴体近位端、胴体遠位端、および細長管状体を通して軸方向に延びる溶液管腔を有する細長管状体であって、その細長管状体は、胴体遠位端における出口を有する、細長管状体と、先端部近位端、先端部遠位端、および先端部を通して軸方向に延びる先端部管腔を有する先端部であって、先端部管腔は、その中に保持されるガイドワイヤを十分に適合する(ぴったり合う)ようにサイズ合わせされ、先端部は先端部近位端において近位開口部を有し、先端部は細長管状体に対して偏心し、先端部の近位開口部は出口と同一線上にない、先端部と、を備える。
【0007】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、細長管状体および先端部は、実質的に同じ直径を有してもよく、または異なる直径を有してもよい。先端部近位端は細長管状体の出口の遠位に配置される。先端部は少なくとも部分的にX線不透過性であってもよく、一部の実施形態において、先端部はX線不透過物質と合成される高分子からなる。先端部は10mm〜120mm長の範囲であってもよい。先端部の内径は、それを通して配置されるガイドワイヤの直径より約0.002インチ(約0.00508cm)長くてもよい。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、血管の一部に溶液を提供するための方法が提供される。方法は、細長管状体を通して軸方向に延びる管腔および出口を有する細長管状体と、細長管状体の遠位の先端部であって、その先端部は、それを通して軸方向に延びる先端部管腔を有する、先端部と、を有するマイクロカテーテルを提供する工程を含む。方法は、血管内にガイドワイヤを配置する工程と、マイクロカテーテルの少なくとも先端部を通してガイドワイヤを配置することによって血管内にマイクロカテーテルを進入させ、ガイドワイヤ上でマイクロカテーテルを進入させる工程と、胴体近位端における細長管状体内に溶液を導入する工程と、出口を介して血管内に溶液を注入する工程とを含む。
【0009】
本発明の実施形態におけるさらなる特徴によれば、溶液は、対照液、治療溶液、診断溶液であってもよく、または血管内に導入され得る任意の他の溶液であってもよい。方法は、交互に溶液を注入する工程および血管内にガイドワイヤを進入させる工程を含んでもよい。一部の実施形態において、注入する工程は短時間の放出(short puff)で行われてもよい。一部の実施形態において、ガイドワイヤは細長管状体および先端部の両方を通して配置され、溶液はガイドワイヤを有する細長管状体内に注入される。他の実施形態において、先端部は細長管状体から分離され、ガイドワイヤは先端部を通してのみ配置される。一部の実施形態において、ガイドワイヤは迅速交換遠位レールとして先端部を使用することによって交換されてもよい。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態によれば、血管内の閉塞を交差する方法が提供される。方法は、逆方向から血管内に反転ガイドワイヤを進入させる工程と、順方向から血管内に順行ガイドワイヤを進入させる工程と、順行ガイドワイヤ上でカテーテルを進入させる工程であって、カテーテルは、その遠位端に配置されるコンプライアントバルーンを備える、工程と、カテーテルから順行ガイドワイヤを取り除く工程と、バルーンを膨張させる工程と、カテーテルを近位に引っ張り、それにより、バルーンにおいて漏斗形状を形成する工程と、バルーンを通して、カテーテル内に反転ガイドワイヤを進入させる工程と、を含む。
【0011】
他に定義しない限り、本明細書に使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明に属する当業者により一般に理解されているものと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または等しい方法および材料が、本発明の実施形態の実施または試験に使用され得るが、適切な方法および材料を以下に記載する。矛盾する場合、定義を含めて本明細書に従う。さらに、材料、方法、および実施例は例示のみであり、限定することを目的とするわけではない。
【0012】
ここで、本発明を添付の図面を参照して例示のみの目的で記載する。ここで特に詳細に図面を参照することにより、本発明の種々の実施形態のみの例および説明の目的が特に示され、最も有益であり、容易に理解される本発明の原理および概念の説明と考えられるものを提供するために提示されることが強調される。これに関して、本発明の基本的な理解に必要なものより詳細に本発明の構造の詳細を示すための試みはなされず、当業者は図面を参照して詳細を理解し、本発明のいくつかの実施形態を実際に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係るマイクロカテーテルの概略図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る
図1のマイクロカテーテルの遠位部の断面図である。
【
図3】
図3は、所定の位置にガイドワイヤ32を有し、出口を介して溶液が押し出される、本発明の実施形態に係る
図1のマイクロカテーテルの遠位部の概略図である。
【
図4】
図4Aおよび4Bは、本発明の別の実施形態に係るバルーンを有するマイクロカテーテルの遠位部の概略図である。
【
図5】
図5Aおよび5Bは、本発明のさらなる実施形態に係るマイクロカテーテルの断面図である。
【
図6】
図6Aおよび6Bは、本発明のさらに別の実施形態に係るマイクロカテーテルの概略図である。
【
図7】
図7A〜7Dは、本発明の実施形態に従って、血管の一部に溶液を提供する方法の工程の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る、さらなる方法の工程の概略図である。
【
図9】
図9A〜9Fは、本発明のさらなる実施形態に係る、血管内に管腔を交差する方法の工程の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
例示の簡略化および明確さのために、図面に示した要素は必ずしも正確ではなく、縮尺通りではないことは理解されるであろう。例えば、要素の一部の寸法は明確さのために他の要素に対して誇張されてもよいか、またはいくつかの物理的構成要素が1つの機能ブロックもしくは要素に含まれてもよい。さらに、適切であると考えられる場合、参照番号は対応するまたは類似の要素を示すために図面の間で反復され得る。さらに、図面に示したブロックの一部は単一の機能に組み合わされてもよい。
【0015】
以下の詳細な説明において、本発明の完全な理解を提供するために複数の具体的詳細を記載している。本発明の実施形態はこれらの具体的詳細を用いずに実施されてもよいことは当業者により理解されるであろう。他の例において、周知の方法、手順、構成要素および構造は、本発明を分かりにくくしないように詳細に記載されていない。
【0016】
本発明は、近位溶液管腔を有するマイクロカテーテルおよびその使用方法に関する。本発明のマイクロカテーテルは、血管内へのガイドワイヤと同時に血管内への溶液の注入を可能にする。溶液が対照液である場合、本発明の設計は、ワイヤが進入するにつれて改善された視界を可能にし、また、使用される対照液の最小化を提供する。本発明のマイクロカテーテルの設計のさらなる利点は本明細書以下に記載する。
【0017】
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は以下の説明に記載したまたは図面に示した構成要素の構造および構成の詳細に対するその適用に限定されないことは理解される。本発明は他の実施形態であってもよく、または種々の方法で実現または実施されてもよい。また、本明細書に利用される用語および専門用語は説明の目的のためであり、限定とみなされるべきではないことが理解される。
【0018】
ここで
図1を参照すると、本発明の実施形態に係るマイクロカテーテル10の概略図が示される。マイクロカテーテル10は、胴体近位端14および胴体遠位端16を有する細長管状体12を有する。胴体近位端14は、対照液などの溶液を導入するため、およびガイドワイヤをマイクロカテーテル10内に導入するために使用され得る導入口13に接続される。導入口13は、そこを通してガイドワイヤ32を導入するためのガイドワイヤ口15および溶液を導入するための溶液口17を備えてもよい。先端部22が胴体遠位端16の遠位に配置される。先端部22は、細長管状体12とつながっていてもよいか、または本明細書以下にさらに詳細に記載するように細長管状体12から分離されていてもよい。出口20が先端部22に近接した胴体遠位端16に配置される。出口20は1つまたは複数の開口部を備えてもよい。先端部22は、先端部近位端24と、先端部遠位端26とを有する。先端部22は10mmから120mmの長さを有する。先端部22は、そこを通るガイドワイヤと適合する(ぴったり合う)ようにサイズ合わせされる。したがって、先端部22は、タイトフィットを得るようにそこを通して配置されるガイドワイヤの直径より約0.002インチ(約0.00508cm)大きいオーダーで内径を有してもよい。例えば、先端部22は、そこを通る0.014インチ(0.03556cm)の直径のガイドワイヤを配置するために0.016インチ(0.04064cm)の内径を有してもよいか、または先端部22は、そこを通る0.018インチ(0.04572cm)のガイドワイヤを配置するために0.020インチ(0.0508cm)の内径を有してもよいか、または先端部22は、そこを通る0.035インチ(0.0889cm)のガイドワイヤを配置するために0.037インチ(0.09398cm)の内径を有してもよい。先端部22は、ガイドワイヤが内側で適合する(ぴったりと合う)限り、他の直径を有してもよいことは容易に理解されるべきである。ガイドワイヤのためのタイトフィットは、マイクロカテーテル10の遠位部の最小化ならびに改良された押し易さおよび操縦性を与える。さらに、一部の実施形態において、タイトフィットはまた、封止として作用するので、細長管状体12を通して導入された溶液が出口20から出ていき、先端部22を通らない。ガイドワイヤ32はマイクロカテーテル10内に配置されて示され、先端部22を通して延びる。
【0019】
細長管状体12は、本明細書以下の
図2〜5に関して記載するように種々の実施形態を有してもよい。実施形態の全てにおいて、細長管状体12は、対照液、または医薬または他の種類の溶液を血管内に導入するための溶液管腔を備える。一部の実施形態において、同じ管腔がガイドワイヤ32のために使用され、一方、他の実施形態において、別の管腔がガイドワイヤ32のために使用される。一部の実施形態において、ガイドワイヤ32は、先端部22のみを通して配置され、細長管状体12を通らない。実施形態の全てにおいて、ガイドワイヤ32は少なくとも先端部22を通して配置可能である。
【0020】
ここで
図2を参照すると、本発明の実施形態に係る、マイクロカテーテル10の遠位部の断面図が示される。
図2に示した実施形態において、細長管状体12は、血管内に導入されるガイドワイヤ32および溶液の両方を収容するように十分に広い直径を有する溶液管腔18を備える。溶液管腔18は、導入口13と流体接続する溶液管腔近位端(図示せず)と、その遠位端における出口20を有する溶液管腔遠位端19とを有する。出口20は1つまたは複数の開口部を備えてもよい。先端部22は先端部近位端24から先端部遠位端26まで延びる先端部管腔28を有する。ガイドワイヤ32(図示せず)が、溶液管腔18を通して、さらに先端部管腔28を通して配置されて、先端部遠位端26から出てもよい。先端部22を通して配置されるガイドワイヤ32は先端部22を実質的に封止するので、ガイドワイヤが所定の位置にある間、溶液管腔18を通して導入される溶液は、胴体遠位端16における出口20から出ていく。したがって、ガイドワイヤ32およびマイクロカテーテル10を血管内で同時に操作しながら、対照液などの溶液を、例えば血管内に導入することが可能となる。
【0021】
マイクロカテーテル10のさらなる特徴は、マイクロカテーテル10の壁内に埋め込まれるスパイン(spine)ワイヤ30を備える。スパインワイヤ30は、剛性の近位端(0.015インチ(0.0381cm)の外径)および0.003インチ(0.00762cm)の寸法で先細状の柔軟性の遠位端を有するスプリングが調節された304ステンレス鋼ワイヤである。したがって、スパインワイヤ30は、マイクロカテーテル10の先端部22および細長管状体12に沿って延びる剛性および柔軟性の両方のワイヤである。細長管状体12は、ナイロンなどの高分子材料から構成されてもよく、それ故、血管を通して進入するための柔軟性を有するが、押し易さ(pushability)およびトルク性(torqueability)のために十分な剛性を有さなくてもよい。したがって、スパインワイヤ30は、マイクロカテーテル10の押し易さおよびトルク性を改善するために細長管状体12に剛性を与える。さらに、スパインワイヤ30は、細長管状体12の押し易さおよびトルク性を維持し、それらをマイクロカテーテル10の遠位先端に伝えながら、高い柔軟性を与えるために先細の遠位端を有する。
【0022】
マイクロカテーテル10はさらに、先端部22に含まれる少なくとも1つのX線不透過性マーカー38を含んでもよい。X線不透過性マーカー38は、タングステン、白金/イリジウムまたは金などの任意のX線不透過物質から構成され、例えば、先端部22内に埋め込まれて、血管内の先端部22の位置を可視化できる。別の実施形態において、先端部22はそれ自体、X線不透過物質から構成される。これは、例えば高分子とX線不透過物質とを合成することによって行われ得る。
【0023】
ここで
図3を参照すると、溶液管腔18および先端部22を通して所定の位置にガイドワイヤ32を有し、溶液は出口20から押し出される、マイクロカテーテル10の遠位部の概略図が示される。細長管状体12は、その中に埋め込まれるスパインワイヤ30(薄い破線で示す)を有して示される。溶液管腔18は溶液とガイドワイヤ32の両方を保持する。ガイドワイヤ32は、溶液管腔18内(厚い破線を有する)、先端部22内(厚い破線を有する)に示され、先端部22の外側の遠位に延びる。矢印40により示される溶液は出口20を介して出て行く。
【0024】
ここで
図4Aおよび4Bを参照すると、本発明の別の実施形態に係るマイクロカテーテル10の遠位部の概略図が示される。この実施形態において、バルーン36が先端部22に配置される。バルーン36は、
図4Aに示すように先端部22の近位端24にあってもよく、または
図4Bに示すように先端部22の遠位端26にあってもよく、または用途に応じて、間の任意の点であってもよい。バルーン36を膨張させるために、追加の膨張管腔が、膨張流体をバルーン36内に導入するために加えられてもよい。この場合、膨張部はマイクロカテーテル10の近位端14における導入部13に加えられる。バルーン36は、コンプライアントまたはセミコンプライアントバルーンであってもよく、両方の種類は当該技術分野において一般に公知である。特にセミコンプライアントバルーンと使用される場合、
図4Aに示した実施形態が、例えば慢性完全閉塞(CTO)を治療するのに適している。CTOの場合、バルーン36は損傷を分解するために使用されてもよく、次いで損傷を通してガイドワイヤ32を進入させ、同時に、ガイドワイヤ32の進入を可視化するために出口20を介して対照溶液を注入する。コンプライアントバルーンと使用される場合、
図4Bに示した実施形態は、足の動脈のアクセスを反転するのに好適であり得る。一般に、このような処置において、中空ニードルが足に配置され、大腿動脈まで進入し、ガイドワイヤは中空ニードルを通して進入する。鞘が大腿動脈を通して閉塞の上から導入される。ガイドワイヤはさらに、鞘を通して配置される中空ニードルを介して進入し、次いで損傷を通して押される。しかしながら、特に鞘は通常、比較的短いため、ガイドワイヤを鞘内に進ませることは困難である。本発明のマイクロカテーテルは鞘の代わりに使用されてもよく、閉塞領域に進入できる。次いでコンプライアントバルーン36は、引き戻され得、本明細書以下により詳細に記載するように、中空ニードルから来るガイドワイヤを捕まえるための漏斗として使用され得る。
【0025】
ここで
図5Aおよび5Bを参照すると、本発明のさらなる実施形態に係るマイクロカテーテル10の断面図が示される。マイクロカテーテル10は、胴体近位端14および胴体遠位端16を有する細長管状体12を有する。胴体近位端14は、溶液口17を通して溶液(対照液など)を導入するため、およびガイドワイヤ口15を通してマイクロカテーテル10内にガイドワイヤを導入するために使用され得る導入口13に接続される。先端部22は胴体遠位端16の遠位に配置される。先端部22は細長管状体12とつながっている。出口20は、先端部22に近接した、胴体遠位端16に配置される。出口20は1つまたは複数の開口部を備えてもよい。先端部22は、先端部近位端24と、先端部遠位端26とを有する。先端部22は10mm〜120mmの長さを有する。先端部22はそこを通るガイドワイヤと適合する(ぴったりと合う)ようにサイズ合わせされ、X線不透過性マーカー38をさらに含んでもよい。
【0026】
図5Aおよび5Bに示した実施形態において、細長管状体12は溶液管腔18および分離したガイドワイヤ管腔21を備え、ガイドワイヤ管腔21は先端部管腔28内に直接通じるので、ガイドワイヤ32は細長管状体12を通して先端部22内に直接配置されてもよい。この実施形態に係るマイクロカテーテル10の図を、それに配置されるガイドワイヤ32と共に
図5Bに示す。容器管腔18は、細長管状体近位端14から細長管状体遠位端16まで延び、出口20における遠位で終端する。したがって、溶液は、ガイドワイヤ管腔21と分離しているが、平衡に延びる溶液管腔18を通して導入される。スパインワイヤ30は、細長管状体12内に埋め込まれ、先端部22を通して遠位に延び得る。したがって、ガイドワイヤ32およびマイクロカテーテル10を血管内で同時に操作しながら、対照液などの溶液を例えば血管内に導入することが可能となる。
【0027】
ここで
図6Aおよび6Bを参照して、本発明のさらに別の実施形態に係るマイクロカテーテル10の概略図が示される。マイクロカテーテル10は、胴体近位端14および胴体遠位端16を有する細長管状体12を有する。胴体近位端14は対照液などの溶液を導入するために使用され得る導入口13に接続される。細長管状体12は溶液管腔18を備える。分離先端部22が、細長管状体12の遠位端16に接続され、分離先端部管腔28を有する。先端部22は細長管状体12から分離しており、細長管状体12に対して偏心している。先端部22は胴体遠位端16に取り付けられる遠位レールとして示され得る。出口20が胴体遠位端16に配置され、出口20は血管内への溶液管腔18からの開口部である。先端部22は、先端部近位端24と、先端部遠位端26と、X線不透過性マーカー38とを有する。先端部22は10mmから30mmの長さまたはワイヤを迅速に交換するのに適した任意の長さを有する。先端部22はそこを通るガイドワイヤと適合する(ぴったり合う)ようにサイズ合わせされる。
【0028】
ガイドワイヤ32は、先端部管腔28においてのみ配置され、溶液管腔18には配置されない。溶液管腔18は、そこを通る溶液を導入するために保有される。この実施形態において、先端部22は、先端部近位端24における近位開口部25および先端部遠位端26における遠位開口部27を有する。近位開口部25は出口20と同一線上にはない。ガイドワイヤ32は、先端部管腔28内に直接導入され、導入口13を通さない。この実施形態において、導入口13はガイドワイヤ口17を備えなくてもよい。スパインワイヤ30は細長管状体12内に埋め込まれ、先端部22の遠位に延びてもよい。よって、血管内でガイドワイヤ32およびマイクロカテーテル10を同時に操作しながら、対照液などの溶液を、例えば血管内に導入することが可能となる。
【0029】
一実施形態において、
図6Aに示すように、先端部22および細長管状体12は異なる直径を有する。したがって、所望の場合、異なるサイズのワイヤが、先端部管腔28および溶液管腔18の各々を通して導入されてもよい。別の実施形態において、
図6Bに示すように、先端部22および細長管状体12は実質的に同じ直径を有する。この実施形態において、同じサイズを有するワイヤが、先端部管腔28および溶液管腔18の各々を通して導入されてもよい。
【0030】
ここで
図7A〜7Dを参照して、本発明の実施形態に係るマイクロカテーテル10を使用する方法の概略図が示される。まず、
図7Aに示すように、ガイドワイヤ32が血管202内に導入される。一部の実施形態において、閉塞204が血管202内に存在し得、マイクロカテーテル10が閉塞204を治療するために使用される。次に、
図7Bに示すように、マイクロカテーテル10は血管202内へガイドワイヤ32上で導入される。
図7A〜7Dに示した実施形態は本出願の
図1〜5に示した実施形態に係るマイクロカテーテル10を示しているが、本発明の範囲内に含まれる、
図6に示した実施形態に係るマイクロカテーテル10、またはマイクロカテーテル10の任意の他の実施形態が、
図7A〜7Dに示した方法のために使用されてもよいことは容易に理解されるべきである。
【0031】
一旦、マイクロカテーテル10が進入すると、矢印40により示した溶液が
図7Cに示すように血管202内に導入され得る。溶液は、例えば血管202の内部を可視化するための対照液であってもよい。あるいは、溶液は閉塞204を治療するための診断溶液または治療溶液であってもよい。マイクロカテーテル10の設計の特定の利点は、溶液が、マイクロカテーテル10の溶液管腔18内に保存され得、必要な場合のみ、種々の量で血管202内に導入され得ることである。例えば、対照液は、溶液管腔18内に保存されてもよく、潜在的に有害な溶液に対する暴露を最小化するように短時間の放出で血管202内に導入されてもよい。このように、マイクロカテーテル10およびガイドワイヤ32は、可視化を最大化し、対照液に対する暴露を最小化するように交互または同時に、あるいは任意の他の順序で進入でき、可視化され得る。同様に、溶液が治療溶液または診断溶液である場合、血管202内に導入される量は、処置時間を考慮した要因に応じて、リアルタイムで変化されてもよい。そのような要因としては、例えば、閉塞204の組成またはサイズあるいは他の要因が挙げられ得る。マイクロカテーテル10の進入が
図7Dに示される。本発明の別の利点は、ガイドワイヤ32が、そのタイトフィットに起因して先端部22を閉塞でき、それによって、溶液が出口20のみを介して血管に進入できることである。
【0032】
ここで、
図8を参照すると、先端部22にバルーン36を有するマイクロカテーテル10の概略図が示される。先端部22は閉塞204を有する血管202の領域内に進入でき、バルーン36は閉塞204を分解するために拡張され得る。溶液を導入し、ガイドワイヤを操作する残りの工程がこの実施形態において同様に行われ得る。
【0033】
ここで、
図9A〜9Fを参照すると、例えば、足の動脈などの動脈からの損傷へのアクセスを反転するためのマイクロカテーテル10を使用する方法の概略図が示される。記載したマイクロカテーテルだけでなく、遠位端にコンプライアントバルーンを有する任意のカテーテルがこの方法に使用されてもよいことが容易に理解されるべきである。
図9Aに示すように、まず反転ガイドワイヤ33が閉塞304を有する血管302内に進む。反転ガイドワイヤ33は、例えば中空ニードルを介して逆方向から血管302内に導入される。次に、ガイドワイヤ32は、
図9Bに示すように順方向から血管302内に進む。次に、先端部22上にバルーン36を有するマイクロカテーテル10、または任意の他の適切なカテーテルがガイドワイヤ32上を進む。バルーン36はコンプライアントバルーンであり、先端部22の遠位部に配置される。
図7A〜7Dに関して上に記載したように、溶液は、マイクロカテーテル10が血管302内に進入する任意の時点の間に出口20を介して導入されてもよい。マイクロカテーテル10が、閉塞304の順行側における所定の位置に配置される場合、ガイドワイヤ32はマイクロカテーテル10から除去され、
図9Dに示すようにバルーン36が拡張する。次に、
図9Eに示すように、マイクロカテーテル10は、矢印42により示すように、近位に後方に引っ張られ、バルーン36の対応した特性に起因して、バルーン36は血管302内および/または閉塞304内に漏斗形状を形成する。次に、
図9Fに示すように、反転ガイドワイヤ33は、閉塞304を介して、マイクロカテーテル10の先端部22内に進入し得る。バルーン36の漏斗形状のために、先端部22において開口を見つけることは比較的容易である。反転ガイドワイヤ33は、バルーン36に穴を開けないようにフレキシブルな材料および/または設計(例えばコイルバネ)から構成され得る。ガイドワイヤ32は、代替として、反転ガイドワイヤ33を進入する直前にマイクロカテーテル10から除去されてもよいことが容易に理解されるべきである。一旦、反転ガイドワイヤ33がマイクロカテーテル10に存在すると、反転ガイドワイヤ33はマイクロカテーテル10を介して近位に進入でき、次いで後の処置のためにガイドワイヤ32を取り換えるために使用される。
【0034】
本発明はその特定の実施形態と併せて記載しているが、多くの改変、修飾および変更が当業者に明らかであることは自明である。したがって、全てのこのような改変、修飾および変更は添付の特許請求の範囲の精神および広範な範囲内に含まれることが意図される。本明細書に記載される全ての刊行物、特許および特許出願は、各々の個々の刊行物、特許または特許出願が、具体的かつ個々に本明細書に参照として組み込まれていると示されるものと同程度まで、それらの全体が本明細書に参照として組み込まれる。さらに、本明細書における任意の参照の引用または識別は、そのような参照が本発明の従来技術として利用可能であるという承認と解釈されるべきではない。