特許第6046712号(P6046712)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6046712ハニカム構造体成形用口金及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046712
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体成形用口金及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B28B 3/26 20060101AFI20161212BHJP
【FI】
   B28B3/26 A
【請求項の数】13
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2014-519993(P2014-519993)
(86)(22)【出願日】2013年6月3日
(86)【国際出願番号】JP2013065418
(87)【国際公開番号】WO2013183613
(87)【国際公開日】20131212
【審査請求日】2016年2月19日
(31)【優先権主張番号】特願2012-126946(P2012-126946)
(32)【優先日】2012年6月4日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】北村 和正
(72)【発明者】
【氏名】細川 博史
(72)【発明者】
【氏名】長江 智毅
【審査官】 佐溝 茂良
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−121081(JP,A)
【文献】 特開平09−141629(JP,A)
【文献】 特開2010−228290(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B28B 3/00−5/12
B01D 46/00−46/54
B01D 39/00−41/04
F01N 3/02
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形原料を導入するための裏孔が形成された第2の板状部と、
前記裏孔に連通する穴部が形成されるとともに、前記穴部に連通するスリットが形成される、炭化タングステン基超硬合金製の第1の板状部とを備え、
前記第2の板状部が、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されたものであり、
前記第1の板状部は、前記第2の板状部側に配設された第1の層と、前記第1の層に配設された第2の層とから構成され、
前記穴部が、前記第1の層の両面に開孔するように形成され、
前記スリットが、前記第2の層の両面に開孔するように形成され
前記第1の層を構成する炭化タングステン基超硬合金と、前記第2の層を構成する炭化タングステン基超硬合金との種類が異なるハニカム構造体成形用口金。
【請求項2】
前記第1の層の厚さが、0.1〜90mmである請求項1に記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項3】
前記第2の層の厚さが、0.5〜10mmである請求項1又は2に記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項4】
前記穴部の直径が、前記裏孔の直径とは異なる大きさである請求項1〜3のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項5】
前記穴部の直径が、前記裏孔の直径よりも大きく、前記穴部の直径が、前記裏孔の直径の1.01〜1.50倍である請求項4に記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項6】
前記裏孔の直径が、前記穴部の直径よりも大きく、前記裏孔の直径が、前記穴部の直径の1.01〜1.50倍である請求項4に記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項7】
前記第1の層は、ビッカース硬度が300〜2000HVであり、ヤング率が200〜600GPaである炭化タングステン基超硬合金によって構成され、
前記第2の層は、ビッカース硬度が500〜3000HVであり、ヤング率が400〜700GPaである炭化タングステン基超硬合金によって構成され、
前記第2の層のビッカース硬度及びヤング率が、前記第1の層のビッカース硬度及びヤング率よりも大きい請求項1〜6のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項8】
前記穴部の先端部分である底部の形状が、前記第1の板状部の表面に直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、又は外側に凸の曲線状である請求項1〜のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項9】
前記スリットの底部の形状が、前記スリットに直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、外側に凸の曲線状、又は外側に凸のV字状である請求項1〜8のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項10】
前記第1の板状部の前記第1の接合面側の、前記スリットの端部に沿って形成されるとともに、前記スリットに連通し、前記スリットの幅よりも大きな幅の空間であるバッファ部を有する請求項1〜9のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項11】
前記バッファ部の底部の形状が、前記スリットに直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、外側に凸の曲線状、又は外側に凸のV字状である請求項10に記載のハニカム構造体成形用口金。
【請求項12】
鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されるとともに成形原料を導入するための裏孔が形成された第2の板状部材と、
炭化タングステン基超硬合金により構成された第1の層及び前記第1の層に配設された炭化タングステン基超硬合金により構成された第2の層から構成され、前記第1の層が、ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製であり、前記第2の層が、ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金製であり、前記第2の層のビッカース硬度及びヤング率が、前記第1の層のビッカース硬度及びヤング率よりも大きく、前記第1の層の両面に開孔するように穴部が形成され、前記第2の層の両面に開孔するようにスリットが形成された第1の板状部材と、を接合し、ハニカム構造体成形用口金を製造するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【請求項13】
ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製の板に、前記穴部になる複数の穴部形成用貫通孔を形成して第1超硬合金板を作製し、
ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金製の第2超硬合金板と、前記第1超硬合金板と、を接合して前記第1の板状部材を作製する請求項12に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体成形用口金及びその製造方法に関する。さらに詳しくは、寿命が長いハニカム構造体成形用口金及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハニカム構造体成形用口金は、例えば、両面に開口する複数の裏孔が形成された第2の板状部と、第2の板状部に形成された裏孔に連通するようにスリットが形成された第1の板状部とが、積層されて形成されている。このようなハニカム構造体成形用口金は、例えば、裏孔が形成された第2の板状部材と、第1の板状部材とが、ホットプレスにより接合され、第1の板状部材に、裏孔に連通するスリットが形成されて作製されている(例えば、特許文献1参照)。このようなハニカム構造体成形用口金は、セラミック原料を押出成形してセラミックハニカム構造体を製造するための、押出成形用の口金として用いられる。
【0003】
一方、上記のようなハニカム構造体成形用口金では、裏孔の直径に比べて、スリットの幅が非常に狭く形成されている。そのため、セラミック原料を裏孔から導入すると、裏孔内の圧力が高くなってスリットに応力が集中しやすい。したがって、スリットの摩耗や変形が生じやすく、問題となっていた。
【0004】
このような問題に対して、スリットの摩耗や変形を抑制しようとするハニカム構造体成形用口金が検討されている(例えば、特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2に記載の口金は、成形するハニカム構造体の断面形状に対応する断面形状を有する格子状の成型溝と、成型溝に連通する複数の「断面が実質上四辺形の開孔(穴部)」とが形成された、耐磨耗性合金からなる成型部を備えるものである。さらに、特許文献2に記載の口金は、成型部の「「開孔」が形成される面」側に配設された、ダイス基部を備えるものである。ダイス基部には、成型部の「開孔」に連通するように通孔部(裏孔)が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−051682号公報
【特許文献2】特公平06−022806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献2に記載の口金によれば、裏孔からセラミック原料を導入した際に、セラミック原料は、耐摩耗性合金から形成された開孔(穴部)を経由して、スリット内に導入される。そのため、特許文献2に記載の口金は、摩耗や変形が生じるという問題を、解消し得るものである。特に、裏孔が形成される板状部がステンレス鋼で形成され、穴部及びスリットが形成される板状部が耐摩耗性合金で形成されている口金の場合は、摩耗や変形を抑えることができる。
【0008】
しかし、特許文献2の口金は、開孔(穴部)を形成したため、耐摩耗性合金が大きく削られて、複数の大きな貫通孔が形成された状態になっている。そのため、第1の板状部は、割れ易くなっている。そして、第1の板状部が割れ易いため、口金の寿命が短くなるという新たな問題が生じている。
【0009】
そのため、口金の寿命を長くすることが求められている。
【0010】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものである。本発明のハニカム構造体成形用口金は、寿命が長いハニカム構造体成形用口金、及びそのような本発明のハニカム構造体成形用口金を効率的に製造することができるハニカム構造体成形用口金の製造方法を提供することを特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって、以下のハニカム構造体成形用口金及びその製造方法が提供される。
【0012】
[1] 成形原料を導入するための裏孔が形成された第2の板状部と、前記裏孔に連通する穴部が形成されるとともに、前記穴部に連通するスリットが形成される、炭化タングステン基超硬合金製の第1の板状部とを備え、前記第2の板状部が、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されたものであり、前記第1の板状部は、前記第2の板状部側に配設された第1の層と、前記第1の層に配設された第2の層とから構成され、前記穴部が、前記第1の層の両面に開孔するように形成され、前記スリットが、前記第2の層の両面に開孔するように形成され、前記第1の層を構成する炭化タングステン基超硬合金と、前記第2の層を構成する炭化タングステン基超硬合金との種類が異なるハニカム構造体成形用口金。
【0013】
[2] 前記第1の層の厚さが、0.1〜90mmである[1]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0014】
[3] 前記第2の層の厚さが、0.5〜10mmである[1]又は[2]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0015】
[4] 前記穴部の直径が、前記裏孔の直径とは異なる大きさである[1]〜[3]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0016】
[5] 前記穴部の直径が、前記裏孔の直径よりも大きく、前記穴部の直径が、前記裏孔の直径の1.01〜1.50倍である[4]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0017】
[6] 前記裏孔の直径が、前記穴部の直径よりも大きく、前記裏孔の直径が、前記穴部の直径の1.01〜1.50倍である[4]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0019】
] 前記第1の層は、ビッカース硬度が300〜2000HVであり、ヤング率が200〜600GPaである炭化タングステン基超硬合金によって構成され、前記第2の層は、ビッカース硬度が500〜3000HVであり、ヤング率が400〜700GPaである炭化タングステン基超硬合金によって構成され、前記第2の層のビッカース硬度及びヤング率が、前記第1の層のビッカース硬度及びヤング率よりも大きい[1]〜[6]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0020】
] 前記穴部の先端部分である底部の形状が、前記第1の板状部の表面に直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、又は外側に凸の曲線状である[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
[9] 前記スリットの底部の形状が、前記スリットに直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、外側に凸の曲線状、又は外側に凸のV字状である[1]〜[8]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
【0021】
[10] 前記第1の板状部の前記第1の接合面側の、前記スリットの端部に沿って形成されるとともに、前記スリットに連通し、前記スリットの幅よりも大きな幅の空間であるバッファ部を有する[1]〜[9]のいずれかに記載のハニカム構造体成形用口金。
[11] 前記バッファ部の底部の形状が、前記スリットに直交する断面において、平らな形状、平らな形状において角部が直線状に切り取られた形状、外側に凸の曲線状、又は外側に凸のV字状である[10]に記載のハニカム構造体成形用口金。
【0022】
12] 鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されるとともに成形原料を導入するための裏孔が形成された第2の板状部材と、炭化タングステン基超硬合金により構成された第1の層及び前記第1の層に配設された炭化タングステン基超硬合金により構成された第2の層から構成され、前記第1の層が、ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製であり、前記第2の層が、ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金製であり、前記第2の層のビッカース硬度及びヤング率が、前記第1の層のビッカース硬度及びヤング率よりも大きく、前記第1の層の両面に開孔するように穴部が形成され、前記第2の層の両面に開孔するようにスリットが形成された第1の板状部材と、を接合し、ハニカム構造体成形用口金を製造するハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【0023】
13] ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製の板に、前記穴部になる複数の穴部形成用貫通孔を形成して第1超硬合金板を作製し、ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金製の第2超硬合金板と、前記第1超硬合金板と、を接合して前記第1の板状部材を作製する[12]に記載のハニカム構造体成形用口金の製造方法。
【発明の効果】
【0025】
本発明のハニカム構造体成形用口金は、第2の板状部と第1の板状部とを備えるものである。第2の板状部は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されたものである。更に、第2の板状部は、成形原料を導入するための裏孔が形成されたものである。第1の板状部は、炭化タングステン基超硬合金製である。更に、第1の板状部は、上記裏孔に連通する穴部が形成されるとともに、前記穴部に連通するスリットが形成されるものである。さらに、第1の板状部は、第1の層と第2の層とから構成されている。さらに、穴部は、第1の層の両面に開孔するように形成され、スリットは、第2の層の両面に開孔するように形成されている。このように、本発明のハニカム構造体成形用口金は、第1の板状部が第1の層及び第2の層の2層から構成されているため、押出成形時の応力が緩和され、破損等を防止することが可能となる。そのため、本発明のハニカム構造体成形用口金は、寿命が長いものである。
【0026】
本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法は、裏孔が形成された第2の板状部材と、「第1の層、及び、第1の層に配設された第2の層」から構成された第1の板状部材と、を接合して、ハニカム構造体成形用口金を製造する方法である。そして、第2の板状部材は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されたものである。そして、第1の層及び第2の層が、炭化タングステン基超硬合金により構成されている。更に、第1の層の両面に開孔するように穴部が形成され、第2の層の両面に開孔するようにスリットが形成されている。そのため、寿命の長いハニカム構造体成形用口金を製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態を模式的に示し、スリットが形成された第1の板状部側から見た斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態を模式的に示し、裏孔が形成された第2の板状部側から見た斜視図である。
図3図1に示すハニカム構造体成形用口金の、第1の板状部側の表面の一部を示す拡大平面図である。
図4A図3に示すハニカム構造体成形用口金のA−A’断面を示す模式図である。
図4B】本発明のハニカム構造体成形用口金の他の実施形態の、厚さ方向に平行な断面を示す模式図である。
図4C】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、厚さ方向に平行な断面を示す模式図である。
図5】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図6】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図7】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図8】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、第1の板状部の表面に直交する断面の一部を示す断面図である。
図9】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、第1の板状部の表面に直交する断面の一部を示す断面図である。
図10】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図11】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図12】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
図13】本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の、スリットに直交する断面の一部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しながら具体的に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、適宜設計の変更、改良等が加えられることが理解されるべきである。
【0029】
(1)ハニカム構造体成形用口金:
本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態について説明する。図1は、本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態を模式的に示し、スリットが形成された第1の板状部側から見た斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態を模式的に示し、裏孔が形成された第2の板状部側から見た斜視図である。図3は、図1に示すハニカム構造体成形用口金の、第1の板状部側の表面の一部を示す拡大平面図である。図4Aは、図3に示すハニカム構造体成形用口金のA−A’断面を示す模式図である。図4Aに示されるハニカム構造体成形用口金は、第1の接合面における穴部の開口部が、第2の接合面における裏孔の開口部と一致するように配置されている状態を示している。
【0030】
図1図4Aに示されるように、本実施形態のハニカム構造体成形用口金1は、第2の板状部3と、炭化タングステン基超硬合金製の第1の板状部7とを備えるものである。第2の板状部3は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成されたものである。更に、第2の板状部3は、成形原料を導入するための裏孔5が形成されたものである。第1の板状部7は、裏孔5に連通する穴部11が形成されるとともに、穴部11に連通するスリット9が形成されたものである。さらに、第1の板状部7は、第2の板状部3側に配設された第1の層7aと、第1の層7aに配設された第2の層7bとから構成されている。そして、穴部11が、第1の層7aの両面に開孔するように形成され、スリット9が、第2の層7bの両面に開孔するように形成されている。ハニカム構造体成形用口金1が、このように構成されることにより、口金の寿命が長くなる。
【0031】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金の厚さは、特に限定されないが、5〜100mmが好ましい。5mmより薄いと、成形時に口金が破壊されることがある。100mmより厚いと、ハニカム構造体を成形する際に、圧力損失が高く、成形し難いことがある。
【0032】
(1−1)第2の板状部:
第2の板状部3は、鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種により形成された板状部材から構成される。鋼材とは、ステンレス鋼、ダイス鋼及びハイス鋼からなる群から選択される少なくとも一種のことである。第2の板状部3の材質としては、これらの中でも、鋼材が好ましく、ステンレス鋼が更に好ましい。尚、本明細書において、「鉄、鋼材、アルミ合金、銅合金、チタン合金及びニッケル合金からなる群から選択される少なくとも一種」のことを「快削材」と称することがある。「快削材」は、炭化タングステン基超硬合金と比較して、容易に研削加工することができる材質(材料)である。第2の板状部3は、スリットが形成されていないため、第1の板状部7に比べて、摩耗の問題が少ない。第2の板状部3は、上記「快削材」により形成されたものであるため、炭化タングステン基超硬合金に比べて、加工性に優れたものである。また、炭化タングステン基超硬合金より、上記「快削材」のほうが安価であるため、製造コストを低下させることが可能である。
【0033】
第2の板状部3の材質の一種である上記「ステンレス鋼」としては、公知のステンレス鋼を用いることができる。例えば、SUS304、SUS303等を挙げることができる。
【0034】
また、上記第2の板状部3の大きさは、特に限定されず、用途に合わせて、所望の大きさにすることができる。ただし、第2の板状部3が円板状である場合、円板の直径(一方の面及び他方の面の直径)は、30〜500mmが好ましい。
【0035】
また、第2の板状部3の厚さについては、特に制限はなく、例えば、スリット形状、裏孔形状等を考慮して、用途に合わせて適宜決定することができる。
【0036】
(裏孔)
上記第2の板状部3には、成形原料を導入するための裏孔5が形成されている。「裏孔5」は、成形原料を導入するための貫通孔(第2の板状部3の両面に開口する孔)である。このハニカム構造体成形用口金1を用いてハニカム構造体を成形する場合に、裏孔5からハニカム構造体の成形原料が導入される。
【0037】
また、裏孔5の形状については、導入された成形原料を、穴部11及びスリット9に導くことができるような形状であれば特に制限はない。例えば、裏孔の「成形原料が流れる方向(第2の板状部の厚さ方向)に直交する断面」における形状が、円形であることが好ましい。また、裏孔5の開口部の直径は、0.5〜5.0mmであることが好ましく、0.8〜3.0mmであることが更に好ましい。このような裏孔5は、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法によって形成することができる。これらの方法の中でも、効率的に、精度良く裏孔5を形成することが可能であることより、電解加工(ECM加工)が好ましい。裏孔の空間は、円柱形状であることが好ましい。この場合、裏孔の「成形原料が流れる方向(第2の板状部の厚さ方向)に直交する断面」における直径(裏孔の直径)が、一定の値となる。そして、この場合、裏孔の直径は、「第2の接合面における裏孔の開口部の直径」と同じ値になる。また、裏孔の個数は、特に限定されず、作製しようとするハニカム構造体の形状等に合わせて適宜決定することができる。
【0038】
(1−2)第1の板状部:
第1の板状部7は、炭化タングステン基超硬合金製の板状部材から構成される。そして、裏孔5の直径に比べて、スリット9の幅が非常に狭く形成されている。そのため、成形原料を押出成形する際に、裏孔5内の圧力が高くなって、スリット9に応力が集中し、摩耗したり変形したりする等の不具合が生じやすい。そのため、第1の板状部7は、耐摩耗性の高い材料である炭化タングステン基超硬合金によって形成されている。
【0039】
上記「炭化タングステン基超硬合金(超硬合金)」とは、炭化タングステンと結合材とが焼結した合金である。結合材は、コバルト(Co)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、及びクロム(Cr)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。このような炭化タングステン基超硬合金は、耐摩耗性や機械的強度に特に優れている。
【0040】
また、上記第1の板状部7の大きさは、特に限定されず、用途に合わせて、所望の大きさにすることができる。ただし、第1の板状部7が円板状である場合、円板の直径は、30〜500mmが好ましい。第1の板状部7及び第2の板状部3が円板状である場合、第1の板状部7の直径は、第2の板状部材3の直径の90〜100%が好ましい。
【0041】
なお、第1の板状部7の厚さは、0.6〜95mmが好ましく、1.0〜20mmが更に好ましい。また、第1の板状部7の厚さは、第2の板状部3の厚さの0.05〜5倍であることが好ましい。
【0042】
さらに、上記第1の板状部7は、第2の板状部3側に配設された第1の層7aと、第1の層7aに配設された第2の層7bとから構成されている。本実施形態のハニカム構造体成形用口金1は、このように第1の板状部が、第1の層7a及び第2の層7bの2層から構成されているため、押出成形時の応力を緩和することができ、破損を防止することができる。第1の層7aと第2の層7bの材質は、異なる種類であ
【0043】
(第1の層)
第1の層7aは、第1の板状部7を構成する一の層であり、第2の板状部3側に配置される層である。第1の層7aには穴部11が形成されている。さらに、第1の層7aは、ビッカース硬度が300〜2000HVであり、ヤング率が200〜600GPaである超硬合金製の層であることが好ましい。第1の層7aは、上記のようなビッカース硬度とヤング率を有する場合、穴部11にかかる応力に耐え得る硬度と、靭性を備えた層となる。そのため、裏孔5から穴部11に流入したセラミック原料の応力によって、第1の板状部7が割れるなどの不具合を防止でき、口金の寿命を長くすることができる。穴部11は、第1の層7aの両面に開孔するように形成されている。
【0044】
第1の層7aのビッカース硬度は、300〜2000HVであることが好ましく、300〜1500HVであることが更に好ましい。上記所定のビッカース硬度を有することにより、第1の層7aは、裏孔5から穴部11に流入したセラミック原料の応力に耐え得る硬度を備えることができる。そのため、穴部11が磨耗することを防ぐことができる。第1の層7aのビッカース硬度が300HV未満である場合には、強度不足で磨耗が生じることがある。また、第1の層7aのビッカース硬度が2000HV超である場合には、硬すぎることにより、第1の層7aが割れ易くなることがある。
【0045】
また、第1の層7aのヤング率は、200〜600GPaであることが好ましく、300〜500GPaであることが更に好ましい。これにより、第1の層7aの破損を防止することができる。第1の層7aのヤング率が、200GPa未満である場合には、靭性が小さすぎることにより、割れてしまうなどの不具合が生じることがある。また、ヤング率が600GPa超である場合には、靭性が大きすぎてしまい、穴部11が変形してしまうおそれがある。穴部11が変形した口金を使用してハニカム構造体を成形すると、ハニカム構造体に歪みが生じ、成形性が低下する。
【0046】
(第2の層)
第2の層7bは、第1の板状部7を構成する残りの一の層である。第2の層7bは、第1の層7aに配設された層である。第2の層7bには、スリット9が形成され、スリット9は、第2の層7bの両面に開孔するように形成されている。「第2の層7bの両面」とは、第2の層7bの、第1の層7aに接する(接合している)面と、当該「第1の層7aに接する面」に対して反対側(裏側)の面との両方の面を意味する。スリットの成形原料吐出口を、スリット9の開口部9aと称する。さらに、第2の層7bは、ビッカース硬度が500〜3000HVであり、ヤング率が400〜700GPaであることが好ましい。第2の層7bは、上記のようなビッカース硬度とヤング率を有する場合、スリット9にかかる応力に耐え得る靭性及び硬度を備えた層となる。そのため、スリット9の変形や磨耗を防ぐことができる。
【0047】
第2の層7bは、ビッカース硬度が500〜3000HVであることが好ましく、ビッカース硬度が2000〜3000HVであることが更に好ましい。上記のようなビッカース硬度を有することにより、第2の層7bの磨耗を抑制できることができる。第2の層7bのビッカース硬度が500HV未満である場合には、硬度不足で簡単に磨耗が生じることがある。また、ビッカース硬度が3000HV超である場合には、第2の層7bが割れやすくなることがある。
【0048】
第2の層7bは、ヤング率が400〜700GPaであることが好ましく、ヤング率が500〜700GPaであることが更に好ましい。第2の層7bは、上記のようなヤング率を有する場合、割れ難いものである。第2の層7bのヤング率が、400GPa未満である場合には、靭性が小さすぎることにより、割れなどの不具合が生じやすくなることがある。また、ヤング率が700GPa超であると、靭性が大きすぎることにより、第2の層7bが変形することがある。
【0049】
(第1の層と第2の層との関係)
さらに、本実施形態のハニカム構造体成形用口金は、第2の層7bのビッカース硬度とヤング率が、第1の層7aのビッカース硬度とヤング率よりも大きいものであることが好ましい。すなわち、第2の層7bのビッカース硬度が、第1の層7aのビッカース硬度よりも大きく、第2の層7bのヤング率が、第1の層7aのヤング率よりも大きいことが好ましい。このような関係にすることで、スリット9が形成された第2の層7bが、摩耗し難いものとなり、穴部11が形成された第1の層7aが、割れ難いものとなる。そして、磨耗を抑制する第2の層7bと、割れを抑制する第1の層7aとにより、ハニカム構造体成形用口金の寿命を、より長くすることができる。
【0050】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金においては、第2の層7bのビッカース硬度が第1の層7aのビッカース硬度よりも、1000〜2500HV大きく、第2の層7bのヤング率が、第1の層7aのヤング率よりも50〜300GPa大きいことが好ましい。これにより、耐摩耗性を備えた第2の層7bと、高い靭性を備えた第1の層7aを確実に第1の板状部7に形成することができ、口金の寿命を長くすることができる。
【0051】
また、第1の層7aの厚さが、0.1〜90mmであることが好ましく、第1の層7aの厚さが、0.2〜65mmであることが更に好ましい。第1の層7aが上記範囲内の厚さに形成されることにより、第2の板状部の摩耗を効果的に抑制することができる。第1の層7aの厚さが、0.1mm未満であると、第2の板状部が摩耗し易くなることがある。また、第1の層7aの厚さが、90mm超であると、ハニカム構造体成形用口金の厚さが厚くなりすぎ、押出成形時の圧力が高くなりすぎることがある。
【0052】
また、第2の層7bの厚さが、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜6mmであることが更に好ましい。第2の層7bが上記範囲内の厚さに形成されることにより、押出成形されたハニカム構造体の変形を抑制することが可能となる。第2の層7bの厚さが、0.5mm未満であると、押出成形されたハニカム構造体の形状が変形することがある。第2の層7bの磨耗や変形が生じる虞がある。また、第2の層7bの厚さが、10mm超であると、第2の層7bの厚さが厚くなり、スリットの深さ(成形原料を押し出す方向におけるスリットの長さ)が深くなりすぎるため、押出成形時の圧力が高くなりすぎることがある。
【0053】
(スリット)
第1の板状部7には、穴部11に連通し、成形原料を成形するためのスリット9が形成される。スリットは、第1の板状部7に形成された隙間(切れ込み)である。裏孔5から導入された成形原料が、ハニカム構造体成形用口金内で上記スリット9に入り、さらに、スリット9の開口部9aから成形原料が押し出されて、ハニカム形状の成形体が形成される。
【0054】
スリット9は、第2の層の両面に開孔するように形成されている。スリットは、第2の層のみに形成されていてもよいが、第1の層にも形成されていることが好ましい。第1の層に形成されるときには、第2の層に形成されたスリットが第1の層側に延長されるようにして第1の層に形成されることが好ましい。この場合、第1の層に形成されるスリットは、第1の層の、「第2の層に接する面」に形成されることになる。また、この場合、スリットの深さが、第2の層の厚さよりも深く形成されていることになる。スリットの深さは、0.5〜10mmであることが好ましく、1〜8mmであることが更に好ましい。スリットの、第1の層側に延長された部分の深さは、0.1〜10mmであることが好ましく、0.2〜5mmであることが更に好ましい。これにより、良好なハニカム形状の成形体を形成することができる。
【0055】
第1の板状部7上のスリットが形成される領域や、スリットの形成パターンは、特に限定されず、用途に合わせて、適宜決定することができる。たとえば、スリットの形成パターンとしては、成形原料が押し出される(流れる)方向に直交する断面において、三角形、四角形、五角形、六角形、八角形等の多角形、丸形、これらの多角形及び丸形の中の複数個が組み合されて形成されたパターン等が好ましい。例えば、図1図3に示されるハニカム構造体成形用口金1においては、成形原料が押し出される方向に直交する断面において、スリット9の形成パターンは、四角形である。
【0056】
また、スリットの幅については、成形するハニカム構造体の形状によって適宜決定することができる。例えば、一般的な排ガスフィルター用又は触媒担体用のセラミックハニカム構造体を押出成形するためのハニカム構造体成形用口金を製造するためには、スリットの幅が0.05〜1.0mmであることが好ましく、0.06〜0.5mmであることが更に好ましい。
【0057】
(穴部)
さらに、第1の板状部7の第1の層7aには、「穴部11」が形成されている。この「穴部11」は、第2の板状部3に形成される裏孔5、及び、第1の板状部7に形成されるスリット9に連通するように形成される。また、この「穴部11」は、第1の板状部7の第1の層に形成された貫通孔である。すなわち、「穴部11」は、第2の層の「第2の板状部に接する側の面(第1の板状部7の第1の接合面10)」に開口するとともに、第2の層の「第1の層に接する側の面(第2の層の一方の面7ba)」に開口する貫通孔である。第1の接合面10は、図4Aに示されるように、第1の板状部7の、第2の板状部3に接合されている(接している)面である。このような「穴部11」が形成されることにより、第2の板状部3に形成された裏孔5から導入された成形原料が、この「穴部11」を通過して、上記スリット9に入る。そして、スリットの開口部9aから成形原料が押し出され、ハニカム形状の成形体(ハニカム構造体)が形成される。
【0058】
穴部11は、深さh(図4A参照)が0.1〜90mmであることが好ましく、0.2〜65mmであることが更に好ましい。このように、穴部11の深さhが上記範囲であることにより、第2の板状部の摩耗を効果的に抑制することができる。穴部の深さhが、0.1mm未満であると、成形原料を押出成形する際に、第1の板状部材の強度が低下し易くなることがある。穴部の深さhが、90mm超であると、本実施形態のハニカム構造体成形用口金を作製する際に、第1の板状部材を加工して穴部を形成することが困難となることがある。ここで、「穴部11の深さh」とは、図4Aに示されるように、第1の板状部7の第1の接合面10から、第2の層7bの一方の面7baまでの距離である。なお、この穴部11の深さは、第1の層7aの厚さと一致する。
【0059】
穴部の開口部11aの直径は、0.5〜5.0mmであることが好ましく、0.8〜3.0mmであることが更に好ましい。穴部11は、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法によって形成することができる。これらの中でも、効率的に、精度良く穴部11を形成することが可能であることより、電解加工(ECM加工)が好ましい。穴部の空間は、円柱形状であることが好ましい。この場合、穴部の「成形原料が流れる方向(第1の板状部の厚さ方向)に直交する断面」における直径(穴部の直径)が、一定の値となる。そして、この場合、穴部11の直径は、「第1の接合面10における穴部の開口部11aの直径」と同じ値になる。また、穴部11の個数は、裏孔の個数と同じであることが好ましい。
【0060】
(穴部の開口部と裏孔の開口部との関係)
図4Aに示されるように、本実施形態のハニカム構造体成形用口金1は、第1の接合面10における「穴部の開口部11a(円形)」の直径dが、第2の接合面6における「裏孔の開口部5a(円形)」の直径Dと同じ大きさに形成されている。ここで、第2の接合面6は、図4Aに示されるように、第2の板状部3の、第1の板状部7に接合されている(接している)面である。
【0061】
「第1の接合面における穴部の開口部11a」は、第1の接合面10に開口する、貫通孔の入口部分(成形原料の流入部分)である。また、「第2の接合面における裏孔の開口部5a」は、裏孔の「第2の接合面6に開口する、第2の接合面6側の出口部分」(成形原料の出口部分)である。セラミック原料は、この出口部分を通過すると同時に、穴部11に供給される。
【0062】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金1を用いて押出成形されるセラミックハニカム構造体は、流体の流通方向に延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁を備えたセラミックハニカム構造体である。本実施形態のハニカム構造体成形用口金1を用いてセラミックハニカム構造体を製造する際に用いる成形原料は、セラミック粉末に水、バインダ、造孔剤等が混合、混練された原料である。
【0063】
(1−3)本発明のハニカム構造体成形用口金の他の実施形態:
次に、本発明のハニカム構造体成形用口金の他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Aは、以下のとおりである。すなわち、図4Bに示されるように、上記本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態(図4Aを参照)において、第1の接合面10における穴部の開口部11aの直径dが、第2の接合面6における裏孔の開口部5aの直径Dとは異なる大きさである。更に、本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Aは、図4Bに示されるように、第1の接合面10における穴部11の開口部の直径dは、第2の接合面6における上記裏孔5の開口部の直径Dよりも大きく形成されている。そして、第1の接合面10における穴部の開口部11aの内側に、第2の接合面6における裏孔の開口部5aが位置するように、穴部の開口部11aと裏孔の開口部5aとが配置されている。そのため、穴部11内の成形原料が均一な流れになり、均一な圧力でスリット内に導入される。これにより、成形されるハニカム形状の成形体の形状が変形することを防止することができる。図4Bは、本発明のハニカム構造体成形用口金の他の実施形態の「厚さ方向に平行な断面」を示す模式図である。
【0064】
「第1の接合面10における穴部の開口部11aの内側に、第2の接合面6における裏孔の開口部5aが位置する」とは、以下の通りである。すなわち、開口径の大きな穴部11と開口径の小さな裏孔5とが連通するとともに、穴部11の開口部の外周(外縁)と裏孔5の開口部の外周(外縁)とが、交差していない状態を意味する。尚、裏孔5の開口部の外周(外縁)が、穴部11の開口部の外周(外縁)に内接する状態は、「第1の接合面10における穴部の開口部11aの内側に、第2の接合面6における裏孔の開口部5aが位置する」に含まれる。
【0065】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Aは、「第1の接合面10における穴部の開口部11aの直径d」が、「第2の接合面6における裏孔の開口部5aの直径D」の1.01〜1.50倍であることが好ましい。これにより、ハニカム構造の成形体を成形する際の成形性を向上させることができる。1.01倍より小さいと、ハニカム構造体成形用口金を製造する際に、第1の板状部と第2の板状部とを接合したときに、穴部の開口部と裏孔の開口部とが、ずれることがある。1.50倍より大きいと、裏孔と裏孔とが連結して、所望の成形体を成形できないことがある。
【0066】
(1−4)本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態:
次に、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Bは、以下のとおりである。すなわち、図4Cに示されるように、上記本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態(図4Aを参照)において、第1の接合面10における穴部の開口部11aの直径dが、第2の接合面6における裏孔の開口部5aの直径Dとは異なる大きさである。更に、本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Bは、図4Cに示されるように、第2の接合面における上記裏孔5の開口部の直径Dは、第1の接合面における穴部11の開口部の直径dよりも大きく形成されている。そして、第2の接合面6における裏孔の開口部5aの内側に、第1の接合面10における穴部の開口部11aが位置するように、穴部の開口部11aと裏孔の開口部5aとが配置されている。そのため、穴部11内の成形原料が均一な流れになり、均一な圧力でスリット内に導入される。これにより、成形されるハニカム形状の成形体の形状が変形することを防止することができる。図4Cは、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態の「厚さ方向に平行な断面」を示す模式図である。
【0067】
「第2の接合面6における裏孔の開口部5aの内側に、第1の接合面10における穴部の開口部11aが位置する」とは、以下の通りである。すなわち、開口径の大きな裏孔5と開口径の小さな穴部11とが連通するとともに、裏孔5の開口部の外周(外縁)と穴部11の開口部の外周(外縁)とが、交差していない状態を意味する。尚、穴部11の開口部の外周(外縁)が、裏孔5の開口部の外周(外縁)に内接する状態は、「第2の接合面6における裏孔の開口部5aの内側に、第1の接合面10における穴部の開口部11aが位置する」に含まれる。
【0068】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金1Cは、「第2の接合面6における裏孔の開口部5aの直径D」が、上記「第1の接合面10における穴部の開口部11aの直径d」の1.01〜1.50倍であることが好ましい。これにより、ハニカム構造の成形体(ハニカム構造体)を成形する際の成形性を向上させることができる。1.01倍より小さいと、ハニカム構造体成形用口金を製造する際に、第1の板状部と第2の板状部とを接合したときに、穴部の開口部と裏孔の開口部とが、ずれることがある。穴部の開口部と裏孔の開口部とが、ずれると、ハニカム構造体を成形する際に得られるハニカム構造体が変形し易くなる。1.50倍より大きいと、裏孔と裏孔とが連結して、所望の成形体を成形できないことがある。穴部の開口部の形状、及び裏孔の開口部の形状は、特に限定されないが、円形が好ましい。
【0069】
本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図5に示されるように、「スリットの底部9bの形状が、スリット9に直交する断面において、外側に凸の曲線状」であるものも好ましい態様である。ここで、本明細書において「スリット9に直交する断面」というときは、スリット9に直交するとともに、スリット9の深さ方向(第1の板状部の表面から内部に向かう方向)に平行な断面であることを意味する。スリットの底部9bは、スリット9に直交する断面において、スリット9の「第1の板状部7の第1の接合面10側」の端部である。尚、スリット9の、「第1の板状部7の表面7c側」の端部が、スリット9の開口部9aになる。また、本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図6に示されるように、「スリットの底部9bの形状が、スリット9に直交する断面において、外側に凸のV字状」であるものも好ましい態様である。また、本発明のハニカム構造体成形用口金においては、「スリットの底部の形状が、スリットに直交する断面において、「平らな形状(直線状)において角部が直線状に切り取られた(C面取りされた)形状」」であるものも好ましい態様である。また、本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図7に示されるように、「スリット9の形状が、スリット9に直交する断面において、開口部9aからスリットの底部9bに向かって細くなるようなテーパー状」であるものも好ましい態様である。スリットの形状としては、上記のような種々の形状を挙げることができる。図5は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1C)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。図6は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1D)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。図7は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1E)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。
【0070】
本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図8に示されるように、穴部11の底部11bの形状が、第1の板状部7の表面7cに直交する断面において、外側に凸の曲線状であるものも好ましい態様である。また、本発明のハニカム構造体成形用口金は、「穴部の底部の形状が、第1の板状部の表面に直交する断面において、「平らな形状(直線状)において角部が外側に凸の曲線状に形成された形状」」であることも好ましい態様である。また、本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図9に示されるように、穴部11の底部11bの形状が以下のようなものも、好ましい態様である。つまり、穴部11の底部11bの形状が、「第1の板状部7の表面7cに直交する断面において、「平らな形状(直線状)において角部が直線状に切り取られた(C面取りされた)形状」」であるものも好ましい態様である。穴部11の底部11bの形状としては、上記のような種々の形状を挙げることができる。尚、上記、図7に示されるハニカム構造体成形用口金1Eは、「穴部11の底部11bの形状が、第1の板状部の表面に直交する断面において、「平らな形状(直線状)」」である。これは、穴部11の底部11bの形状が、第1の板状部の表面に直交する断面において、角部が直角になるような形状であるということもできる。また、図8図9に示されるハニカム構造体成形用口金1F,1Gにおいては、スリット9の底部9bの形状は、スリット9に直交する断面において、平らな形状(直線状)である。これは、スリット9の底部9bの形状が、スリット9に直交する断面において、角部が直角になるような形状であるということもできる。図8は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1F)の、第1の板状部7の表面7cに直交する断面の一部を示す断面図である。図9は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1G)の、第1の板状部7の表面7cに直交する断面の一部を示す断面図である。
【0071】
本発明のハニカム構造体成形用口金は、「「第1の板状部の第1の接合面側の、スリットの端部」に沿って形成されるとともに、スリットに連通し、スリットの幅よりも大きな幅の空間である」バッファ部、を有することが好ましい。図10に示されるように、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態は、スリット9に直交する断面において、スリット9の「第1の板状部7の第1の接合面10側」の端部に連通する空間であるバッファ部21が形成されたものである。バッファ部21の幅Aは、スリット9の幅よりも大きい。バッファ部21は、スリット9全体の「第1の板状部7の第1の接合面10側」の端部に沿うように形成されている。ハニカム構造体成形用口金1Hは、バッファ部21を有することにより、裏孔5から流入させた成形原料を、幅の狭いスリット9内に流入させる前に、幅の広いバッファ部21内に容易に広げることができる。そして、成形原料を、バッファ部21からスリット9内に流入させることができる。これにより、成形原料をスリット9全体に、均一に流し易くなる。また、ハニカム構造体成形用口金1Hが、バッファ部21を有することにより、成形原料を押出成形する際の圧力損失を小さくすることができる。バッファ部21の幅Aは、0.1〜4.0mmが好ましく、0.2〜3.0mmが更に好ましく、0.5〜2.0mmが特に好ましい。バッファ部21の幅Aが0.1mmより狭いと、成形原料をスリット9全体に、均一に流し易くする効果が低減することがある。バッファ部21の幅Aが4.0mmより広いと、成形時に口金が破壊され易くなることがある。また、バッファ部21の深さBは、0.05〜5.0mmが好ましく、0.1〜4.0mmが更に好ましく、0.5〜2.0mmが特に好ましい。バッファ部21の深さBが、0.05mmより浅いと、成形原料をスリット9全体に、均一に流し易くする効果が低減することがある。バッファ部21の深さBが、5.0mmより深いと、加工が困難となることがある。バッファ部21の深さとは、バッファ部21の、「ハニカム構造体成形用口金1Hの厚さ方向」における長さのことである。尚、ハニカム構造体成形用口金1Hにおいては、スリット9に直交する断面において、バッファ部21の形状が長方形である。すなわち、バッファ部21の底部21aの形状が、スリット9に直交する断面において、「平らな形状(直線状)」である。また、バッファ部21の「底部21aに対して反対側の端部21b」の、ハニカム構造体成形用口金1Hの厚さ方向における位置は、スリット9に直交する断面において、穴部11の底部11bと同じ位置であることが好ましい態様である。バッファ部21の「底部21aに対して反対側の端部21b」は、バッファ部21の「スリット9に繋がっている」端部である。図10は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1H)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。
【0072】
本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図11に示されるように、バッファ部21が形成されるとともに、スリット9に直交する断面において、バッファ部21の底部21aの形状が、外側に凸の曲線状であるものも好ましい態様である。図11は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1I)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。
【0073】
本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図12に示されるように、バッファ部21が形成されるとともに、バッファ部21の底部21aが、以下のような形状であることも好ましい態様である。すなわち、スリット9に直交する断面において、底部21aの形状が、「平らな形状(直線状)において角部が直線状に切り取られた(C面取りされた)形状」であることが好ましい態様である。また、スリットに直交する断面において、底部の形状が「V字状」のバッファ部が形成された、ハニカム構造体成形用口金も好ましい態様である。図12は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1J)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。
【0074】
本発明のハニカム構造体成形用口金においては、図13に示されるように、バッファ部21が形成されるとともに、バッファ部21の配置が、以下のような配置であることも好ましい態様である。すなわち、ハニカム構造体成形用口金1Kの厚さ方向において、バッファ部の底部21aが穴部11の底部11bと重なるように、バッファ部21が形成(配置)されていることも、好ましい態様の1つである。図13は、本発明のハニカム構造体成形用口金の更に他の実施形態(ハニカム構造体成形用口金1K)の、スリット9に直交する断面の一部を示す断面図である。バッファ部21の形状としては、例えば、上記図10図13に示されるハニカム構造体成形用口金1H〜1Kのバッファ部のように、種々の形状を挙げることができる。
【0075】
なお、図5図13に示されるハニカム構造体成形用口金1C〜1Kは、穴部の開口部の直径が、裏孔の開口部の直径と同じ長さであり、両開口部がずれることなく重なっている例である。穴部の開口部の直径が、裏孔の開口部の直径よりも小さく、穴部の開口部が裏孔の開口部の内側に配置された実施形態も好ましい態様である。更に、ハニカム構造体成形用口金1C〜1Kにおいて、穴部の開口部の直径が、裏孔の開口部の直径よりも大きく、裏孔の開口部が穴部の開口部の内側に配置された実施形態も好ましい態様である。また、図5図13に示されるハニカム構造体成形用口金1C〜1Kは、第1の板状部の第1の層と第1の板状部の第2の層とが同じ種類の材質で構成された例である。そして、第1の板状部の第1の層と第1の板状部の第2の層とが異なる種類の材質で構成された実施形態も好ましい形態である。また、本発明のハニカム構造体成形用口金に形成されるスリット9は、図5図8に示されるハニカム構造体成形用口金1C〜1Fのそれぞれのスリット9の形状と同じ形状のスリットが2つ以上組み合わされたもの、であってもよい。また、本発明のハニカム構造体成形用口金に形成される穴部は、図8図10に示されるハニカム構造体成形用口金1F〜1Hのそれぞれの穴部11の形状と同じ形状の穴部が2つ以上組み合わされたもの、であってもよい。また、本発明のハニカム構造体成形用口金に形成されるバッファ部は、図10図13に示されるハニカム構造体成形用口金1H〜1Kのそれぞれのバッファ部21の形状と同じ形状のバッファ部が2つ以上組み合わされたもの、であってもよい。
【0076】
(2)本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法:
次に、図1図4Aに示される本発明のハニカム構造体成形用口金(ハニカム構造体成形用口金1)を製造する方法である、本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法の一の実施形態について説明する。本発明のハニカム構造体成形用口金を製造するハニカム構造体成形用口金の製造方法は、以下の通りである。すなわち、当該製造方法は、「快削材により形成されるとともに、成形原料を導入するための裏孔が形成された第2の板状部材」と、第1の板状部材とを接合し、ハニカム構造体成形用口金を製造する方法である。第1の板状部材は「第1の層」及び「第1の層に配設された第2の層」から構成されている。第1の層は、ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製である。第2の層は、ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金製である。第1の層には、両面に開孔するように穴部が形成されている。また、第2の層には、両面に開孔するようにスリットが形成されている。また、第2の層のビッカース硬度及びヤング率が、第1の層のビッカース硬度及びヤング率よりも大きい。上記のような方法でハニカム構造体成形用口金を製造することにより、得られたハニカム構造体成形用口金の寿命が長くなる。
【0077】
(2−1)第2の板状部材:
快削材により形成された円板に、複数の裏孔5(貫通孔)を形成して、第2の板状部材を作製する(工程(1))。裏孔5の「開口部の直径」等の各条件は、上記本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態において好ましいとされた条件とすることが好ましい。
【0078】
裏孔5を形成する方法については特に制限はないが、例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法を好適に用いることができる。これらのなかでも、電解加工(ECM加工)を用いることが好ましい。電解加工(ECM加工)を用いることにより、効率的に寸法精度の高い裏孔を形成することができる。
【0079】
(2−2)第1の板状部材:
第1の板状部材は、第1超硬合金板と第2超硬合金板とを接合することにより作製することが好ましい。そして、第1超硬合金板は、ビッカース硬度300〜2000HV、ヤング率200〜600GPaの炭化タングステン基超硬合金製の板に、穴部になる複数の穴部形成用貫通孔を形成することにより、作製されることが好ましい。穴部形成用貫通孔は、「作製されるハニカム構造体成形用口金における」穴部になる部分である。また、第2超硬合金板は、ビッカース硬度500〜3000HV、ヤング率400〜700GPaの炭化タングステン基超硬合金の板であることが好ましい。上記のように、あらかじめ貫通孔が形成された第1超硬合金板に第2超硬合金板を接合して第1の板状部材を作製することにより、穴部が形成されていない板状の部材に穴部を形成する場合と比べて、製造時間が大幅に短縮される。これは、板状の部材に穴部(板状部材の片面のみに開孔している窪み)を形成する時間よりも、板状の部材に貫通孔を形成する時間のほうが、短くすることが可能であるからである。
【0080】
第2超硬合金板のビッカース硬度とヤング率が、第1超硬合金板のビッカース硬度とヤング率よりも大きいことが好ましい。
【0081】
第1超硬合金板に貫通孔を形成する方法は、特に限定されない。例えば、電解加工(ECM加工)、放電加工(EDM加工)、レーザ加工、ドリル等の機械加工等の方法を好適に用いることができる。これらのなかでも、電解加工(ECM加工)を用いることが好ましい。電解加工(ECM加工)を用いることにより、効率的に寸法精度の高い裏孔を形成することができる。
【0082】
第1超硬合金板と第2超硬合金板とを接合する方法は特に限定されない。例えば、接着剤や両面テープで接合することが好ましい。また、ろう材を用いた接合方法(ろう付け接合)や、ホットプレスを用いた接合方法(ホットプレスによる直接接合)であってもよい。また、ろう材及びホットプレスの両方を用いた接合方法であってもよい。
【0083】
本実施形態のハニカム構造体成形用口金の製造方法においては、穴部11(穴部形成用貫通孔)の開口部の直径dと裏孔5の開口部の直径Dとが同じになるように形成されている(図4A参照)。一方、本発明のハニカム構造体成形用口金の製造方法においては、直径dと直径Dとが、異なる大きさであることも好ましい態様である。穴部11の個数は、裏孔5の個数と同じにし、穴部11の配置は、第1の板状部材と第2の板状部材とを接合した際に、裏孔5と同じ位置になるようにする。
【0084】
次に、第2の板状部材と第1の板状部材とを接合する(工程(A))。ここで、第2の板状部材の一方の面を第2の接合面6(第2の板状部3の第2の接合面6となる面(図4A参照))とする。また、第1の板状部材の「第1の層側の面」を第1の接合面10(第1の板状部7の第1の接合面10となる面(図4A参照))とする。工程(A)では、第2の接合面と第1の接合面とを対向させた状態で、第1の板状部材と第2の板状部材とを積層し、第1の板状部材と第2の板状部材とを接合する。これにより、第2の板状部材の第2の接合面と、第1の板状部材の第1の接合面とが接合された状態となる。
【0085】
また、第1の板状部材と第2の板状部材とを積層する際に、第1の板状部材と第2の板状部材との間に接合材を配置することが好ましい。そして、第1の板状部材と第2の板状部材との間に接合材を配置した状態で、第1の板状部材と第2の板状部材とを接合することが好ましい。接合材の形状は、フィルム状、シート状、板状等の形状であることが好ましい。
【0086】
接合材の材質としては、例えば、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、ニッケル(Ni)、及びアルミニウム(Al)からなる群より選択される少なくとも一つを含む金属又は合金であることが好ましい。さらに、第1の板状部材と第2の板状部材との間に挟んで、加熱しながら加圧(ホットプレス)したときに、第1の板状部と第2の板状部の少なくとも一方の内部に浸透するものであることが好ましい。接合材を、このように構成することによって、第1の板状部と第2の板状部との接合を良好なものとすることができる。
【0087】
また、接合材は、例えば、パラジウム(Pd)、ケイ素(Si)、スズ(Sn)、コバルト(Co)、リン(P)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)等の添加剤を更に含んだものであってもよい。このような添加剤を更に含んだものは、接合温度を下げることができ、信頼性を向上させることができる。
【0088】
第1の板状部材と第2の板状部材とを積層して接合する際には、第1の板状部材と第2の板状部材とを積層したものを、ホットプレスにより接合することが好ましい。ホットプレスを行う際の温度は、900〜1200℃であることが好ましく、1000〜1150℃であることが更に好ましい。このような温度で加熱することにより、第1の板状部材と第2の板状部材とを良好に接合するとともに、第2の板状部材の強度低下を防止することができる。また、ホットプレスを行う時間は、1分〜1時間が好ましく、10〜45分が更に好ましい。1分より短いと、第1の板状部材と第2の板状部材とを、強い接合強度で接合できないことがある。1時間より長いと、第1の板状部材および第2の板状部材に母材劣化相が生じやすくなる。また、ホットプレスを行う際の圧力は、第1の板状部材及び第2の板状部材の形状、大きさ等によって適宜決定することができるが、0.01〜100MPaが好ましく、0.1〜10MPaが更に好ましい。ホットプレスを行う装置としては、例えば、「富士電波工業株式会社製、FVHP−R」等を使用することができる。
【0089】
次に、第1の板状部材の「第1の接合面に対して反対側の面(表面)」から、穴部11及び裏孔5と連通するスリット9を形成してハニカム構造体成形用口金1を得る(図1図4A参照)。第1の板状部材にスリットを形成する方法については特に制限はないが、例えば、ダイヤモンド砥石による研削加工等の従来公知の方法を好適に用いることができる。また、図1図4Aに示されるハニカム構造体成形用口金1は、スリット9により形成されるセルブロック13の平面形状(スリットの形成パターン)が四角形である。スリットの形成パターン等のスリットについての各条件は、上記本発明のハニカム構造体成形用口金の一の実施形態において好ましいとされた条件と同じであることが好ましい。
【実施例】
【0090】
以下、本発明を実施例によって更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0091】
(実施例1)
まず、ステンレス鋼(SUS303)製の板状部材(第2の板状部材)に、直径(板状部材の厚さ方向に直交する断面における直径)2mmの裏孔(貫通孔)を放電加工(EDM加工)によって2000個形成した。裏孔の形状は、円柱状(板状部材の厚さ方向に直交する断面が円形)とした。これにより、「第2の接合面における裏孔の開口部の直径」は、2mmとなる。第2の板状部材の形状は、直径200mmの円板形状とした。また、第2の板状部材の厚さは、50mmであった。裏孔を形成した領域(裏孔形成領域)は、第1の板状部材の中心を中心とした、円形状の領域であって、その直径が150mmの領域とした。裏孔のピッチは5mmとした。
【0092】
次に、第1超硬合金板と第2超硬合金板とを接合することにより、第1の板状部材を作製した。第1超硬合金板が、第1の板状部における第1の層となる。また、第2超硬合金板が、第2の板状部における第2の層となる。第1超硬合金板は、ビッカース硬度300HV、ヤング率300GPaの炭化タングステン基超硬合金製の板に、穴部になる複数の穴部形成用貫通孔を形成することにより、作製した。また、第1超硬合金板の形状は、直径200mmの円板形状とした。第1超硬合金板の厚さは、1mmであった。穴部形成用貫通孔の、「直径(板状部材の厚さ方向に直交する断面における直径)、個数及びピッチ」は、上記第2の板状部材の裏孔と同じとし、穴部形成用貫通孔の開口部の位置と、裏孔の開口部の位置とが、ずれないで一致するようにした。また、第2超硬合金板は、ビッカース硬度2000HV、ヤング率600GPaの炭化タングステン基超硬合金の板とした。上記のように、第2超硬合金板のビッカース硬度とヤング率は、第1超硬合金板のビッカース硬度とヤング率よりも、大きな値であった。
【0093】
第1超硬合金板に貫通孔を形成する方法は、電解加工の方法とした。
【0094】
第1超硬合金板と第2超硬合金板とを接合する方法は、接着剤を用いて接合する方法とした。
【0095】
次に、第1の板状部材と第2の板状部材とを、その間に、接合材を配して積層した。第1の板状部材と第2の板状部材とを積層する際には、第1の板状部材の「第1超硬合金板側の面」である第1の接合面と、第2の板状部材の一方の面である第2の接合面とが対向するようにした。接合材としては、厚さ0.01mmのフィルム状のアルミニウム(Al)を用いた。
【0096】
次に、第1の板状部材と第2の板状部材とを積層したものを、0.5MPa、900℃の条件で、0.5時間ホットプレスして、第1の板状部材と第2の板状部材とを接合させた。ホットプレスする際には、第1の板状部材及び第2の板状部材よりも大きな「プレス用板状部材」で、「第1の板状部材と第2の板状部材とを積層したもの(積層体)」を挟み、当該「プレス用板状部材」によって当該積層体を加圧することが好ましい。これにより、積層体を均一に加圧することができる。尚、「ホットプレスする」とは、「加熱しながら加圧する」ということを意味する。
【0097】
この様にして得られた「第1の板状部材と第2の板状部材とを接合させたもの」を、常温まで冷却した後に、第1の板状部材にスリットを形成して、図1図4Aに示すような構造のハニカム構造体成形用口金を得た。スリットは、ダイヤモンド砥石によって、穴部に連通するように格子状に形成した。スリットの幅は0.5mm、スリットのピッチは5mmとした。スリットを形成する際には、スリットの交点に穴部が位置するようにした。得られたハニカム構造体成形用口金は、第1の接合面における穴部の開口部が、第2の接合面における裏孔の開口部と一致するものであった。得られたハニカム構造体成形用口金について、以下に示される「割れ観察」及び「成形試験」を行った。結果を表1に示す。表1において、「歩留まり」は、「成形試験」の結果を示す。
【0098】
(割れ観察)
セラミック原料として、アルミナ、タルク及びカオリンの混合物を用いる。当該混合物に、有機バインダを混合し、水を添加して混練し、真空土練機により坏土(成形原料)を作製する。得られた坏土を、ハニカム構造体成形用口金を装着した押出成形機により成形して、円筒状のハニカム成形体(ハニカム構造体)を得る。上記ハニカム成形体を作製する操作を100回繰り返す。その後、ハニカム構造体成形用口金を、顕微鏡(200倍)で観察することで割れの発生を確認する。
【0099】
(成形試験)
セラミック原料として、アルミナ、タルク及びカオリンの混合物を用いる。当該混合物に、有機バインダを混合し、水を添加して混練し、真空土練機により坏土(成形原料)を作製する。得られた坏土を、ハニカム構造体成形用口金を装着した押出成形機により成形して、円筒状のハニカム成形体(ハニカム構造体)を得る。次に、得られたハニカム成形体を、誘電乾燥機を用いて乾燥させ、その後、焼成炉を用いて焼成して、ハニカム構造体を得る。上記方法によりハニカム構造体を100個作製する。得られたハニカム構造体について、セルの「歪み」の有無を目視により観察する。「歪み」のないものを良品とし、「歪み」のあるものを不良品として、良品の「歩留まり」(100×良品の数/全体の数)(%)を算出する。
【0100】
【表1】
【0101】
(実施例2)
第1の板状部の穴部の直径を、第2の板状部の裏孔の直径よりも大きくし、第2の接合面における裏孔の開口部が、第1の接合面における穴部の開口部の内側に配置されるように形成した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体成形用口金を作製した。尚、第1の接合面における穴部の開口部の直径を2.0mmとした。また、穴部の深さを5mmとした。また、第2の接合面における裏孔の開口部の直径を1.5mmとした。得られたハニカム構造体成形用口金について、上記「割れ観察」及び「成形試験」を行った。結果を表1に示す。
【0102】
(実施例3)
第2の板状部の裏孔の直径を、第1の板状部の穴部の直径よりも大きくし、第1の接合面における穴部の開口部が、第2の接合面における裏孔の開口部の内側に配置されるように形成した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体成形用口金を作製した。尚、第2の接合面における裏孔の開口部が、第1の接合面における穴部の開口部の外側に配設されるようにした。第1の接合面における穴部の開口部の直径を2.0mmとした。また、穴部の深さを5mmとした。また、第2の接合面における裏孔の開口部の直径を1.5mmとした。得られたハニカム構造体成形用口金について、上記「割れ観察」及び「成形試験」を行った。結果を表1に示す。
【0103】
(比較例1)
第1の板状部材を、ビッカース硬度が2000HVであり、ヤング率が600GPaである、炭化タングステン基超硬合金(超硬合金)製の板状部材(1層構造)から形成した以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体成形用口金を作製した。得られたハニカム構造体成形用口金は、裏孔と穴部とがずれた状態で第1の板状部材と第2の板状部材とが接合されていた。得られたハニカム構造体成形用口金について、上記「割れ観察」及び「成形試験」を行った。結果を表1に示す。
【0104】
表1より、実施例1〜実施例3のハニカム構造体成形用口金は、割れが生じず、寿命が長いことがわかる。これに対して、比較例1のハニカム構造体成形用口金は、割れが生じ、寿命が短いことがわかる。さらに、実施例1〜実施例3のハニカム構造体成形用口金を用いてハニカム構造の成形体を成形すると、良好な成形性を得られることがわかる。一方、比較例1のハニカム構造体成形用口金は、裏孔と穴部とがずれた状態で第1の板状部材と第2の板状部材とが接合されているため、ハニカム構造体を製造する際に、成形されたハニカム構造体に歪みが生じ易く、歩留まりが悪いことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明のハニカム構造体成形用口金は、触媒用担体、排気ガス中の微粒子を捕集するフィルター等に用いられるハニカム構造体を作製する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0106】
1,1A,1B,1C,1D,1E,1F,1G,1H,1I,1J,1K:ハニカム構造体成形用口金、3:第2の板状部(第2の板状部材)、5:裏孔、5a:裏孔の開口部、6:第2の接合面、7:第1の板状部(第1の板状部材)、7a:第1の層、7b:第2の層、7ba:第2の層の一方の面、7c:表面、9:スリット、9a:スリットの開口部、9b:スリットの底部、10:第1の接合面、11:穴部、11a:穴部の開口部、11b:底部、13:セルブロック、21:バッファ部、21a:バッファ部の底部、21b:端部(バッファ部の、底部に対して反対側の端部)、d:穴部の開口部の直径、D:裏孔の開口部の直径、h:穴部の深さ。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13