(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046713
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】超電子供与体によるスルホン変換のプロセス
(51)【国際特許分類】
C10G 53/14 20060101AFI20161212BHJP
C10G 27/04 20060101ALI20161212BHJP
C10G 29/20 20060101ALI20161212BHJP
C10G 21/00 20060101ALI20161212BHJP
C10G 25/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
C10G53/14
C10G27/04
C10G29/20
C10G21/00
C10G25/00
【請求項の数】20
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-520194(P2014-520194)
(86)(22)【出願日】2012年6月19日
(65)【公表番号】特表2014-522900(P2014-522900A)
(43)【公表日】2014年9月8日
(86)【国際出願番号】US2012043118
(87)【国際公開番号】WO2013009440
(87)【国際公開日】20130117
【審査請求日】2015年3月25日
(31)【優先権主張番号】13/181,043
(32)【優先日】2011年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513185700
【氏名又は名称】サウジ アラビアン オイル カンパニー
【氏名又は名称原語表記】SAUDI ARABIAN OIL COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】アル−ハジ、アドナン
(72)【発明者】
【氏名】ボウラネ、アブデヌール
(72)【発明者】
【氏名】コセオグル、オメル、レファ
【審査官】
▲来▼田 優来
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第03505210(US,A)
【文献】
特開2003−268385(JP,A)
【文献】
特開2004−019445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化水素原料からスルホン及びスルホキシドを除去することによって炭化水素原料を改良する方法であって、
a.炭化水素原料を酸化反応器に供給する工程であって、前記炭化水素原料が硫黄含有化合物を含む工程;
b.前記炭化水素原料を、酸化反応器内で、炭化水素原料中に存在する硫黄化合物を選択的に酸化するのに十分な条件下、触媒の存在下で酸化剤と接触させて、炭化水素及び酸化硫黄含有化合物を含む炭化水素の流れを生成する工程;
c.前記酸化硫黄含有炭化水素の流れを水相及び非水性酸化溶出液に分離する工程;
d.前記非水性酸化溶出液を回収し、それを電子供与剤と接触させて、非水性酸化溶出液中に存在するスルホン及びスルホキシドを減少させ、スルホン及びスルホキシド中の炭素−硫黄結合の還元的開裂を引き起こして分解し、副生成物の塩と脱硫された炭化水素を生成する工程;
e.副生成物の塩を分離し、脱硫された炭化水素の流れを回収する工程;を含む
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
原料のスルホン及びスルホキシド含有量に基づき、1〜5モル当量の電子供与剤を使用する
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1〜3モル当量の電子供与剤を使用する
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記分解は100〜300℃の温度で実施する
請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記分解は100〜200℃で実施する
請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記分解は100〜150℃で実施する
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記分解は3〜30kg/cm2の圧力で実施する
請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記分解は0.05〜4.0h−1で実施する
請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記電子供与剤は、スルホン及びスルホキシドの還元的開裂を実施するのに十分な酸化電位を有する
請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記電子供与剤はテトラアザアルケンである
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
テトラアザアルケンがビスイミダゾリリデンである
請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記炭化水素原料は原油、油、シェールオイル、石炭液体、中間精油生成物及びその蒸留留分である
請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記電子供与剤は、飽和カロメル電極を参照したときに、ジメチルホルムアミド中で少なくとも−1.2Vの半電位を有する
請求項9に記載の方法。
【請求項14】
前記炭化水素原料は36〜2000℃の範囲で沸騰する
請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記工程cの後、非水性酸化溶出液を溶媒で抽出して処理する
請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記溶媒は極性溶媒である
請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抽出は20〜60℃及び圧力1〜10barで実施する
請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記抽出の工程の後、抽出された溶出液を吸着処理する
請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記吸着処理の吸着剤は、活性炭、シリカゲル、アルミナ、天然粘土、極性ポリマーが塗布されたシリカゲル、活性炭及びアルミナからなる群から選択される
請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記吸着処理は20〜60℃及び圧力1〜15barで運転する
請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願:
本出願は、2011年7月12日に出願された特許文献1の利益を主張するものであり、この特許文献1の開示を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
本発明のプロセスは、原油若しくは蒸留油の酸化脱硫、又は包括的水素化脱硫/酸化脱硫の後の酸化硫黄含有化合物の除去に関する。より具体的には、本発明のプロセスは、酸化脱硫後の残留スルホン及びスルホキシドの分解のためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
原油は、世界的に、燃料及び石油化学原料として使用される炭化水素の主要供給源である。天然の石油又は原油の組成はきわめて多様であるが、すべての原油が硫黄化合物を含有し、ほとんどが窒素化合物を含有し、この窒素化合物は酸素も含有することがあるが、ほとんどの原油の酸素含有量は低い。一般的に、原油の硫黄濃度は約5重量%未満であり、ほとんどの原油は硫黄濃度が約0.5〜約1.5重量%の範囲である。窒素濃度は通常0.2重量%未満であるが、1.6重量%もの高濃度の場合もある。
【0004】
原油は精油所で精製され、輸送燃料及び石油化学原料が生産される。一般的に、輸送用燃料は、原油から得た留分を、特定の最終用途の規格に適合するように加工及びブレンドすることによって生産される。現在大量に入手できる原油の大部分は硫黄分が高いことから、性能規格及び/又は環境基準に適合する製品を得るには、留分を脱硫しなければならない。
【0005】
燃料中の硫黄含有有機化合物は、実際に、環境汚染の主要発生源である。硫黄化合物は燃焼プロセスで硫黄酸化物に変換され、硫黄オキシ酸を生成し、粒子状物質排出に寄与する。酸素化燃料ブレンド化合物及び炭素−炭素化学結合をほとんど又はまったく含有しない化合物(例えば、メタノール及びジメチルエーテル)は、煙及びエンジン排気の排出を低減することが知られている。しかし、この種のほとんどの化合物は、蒸気圧が高く、及び/又はディーゼル燃料にほぼ不溶であり、そのセタン価が示すように、着火性が低い。例えば、化学的水素処理及び水素化によって硫黄分及び芳香分を低減した精製ディーゼル燃料は、燃料潤滑性の低下も生じる。潤滑性が低いディーゼル燃料は、燃料ポンプ、インジェクタ及びその他の高圧下で燃料と接触する可動部品の過度の摩耗を引き起こすことがある。中間留出物(公称沸点が180℃〜370℃の範囲の留分)は、圧縮点火内燃機関(ディーゼルエンジン)用の燃料又は燃料用ブレンド成分に使用される。中間抽出物は通常、約1〜3重量%の硫黄を含有する。1993年以降、ヨーロッパ及び米国における中間留出物の規格は、3000重量百万分率(ppmw)から5〜50ppmwに引き下げられている。
【0006】
これらの超低硫黄分燃料の規制に準拠するため、精油業者は、ゲートでのブレンド後に厳しい規格に適合できるよう、精油所ゲートにおいてさらに低い硫黄レベルを有する燃料を生産する必要がある。
【0007】
低圧の従来の水素化脱硫(HDS)プロセスを使用して、精油所輸送燃料のブレンド用の石油留出物から硫黄の大部分を除去することができる。HDS装置は、穏和な条件(すなわち、圧力30bar)では、多環式芳香族硫黄化合物のような硫黄原子が立体的に遮蔽されている化合物からの硫黄除去に効果的ではない。これは、硫黄ヘテロ原子が2個のアルキル基によって遮蔽されている場合(例えば、4,6−ジメチルジベンゾチオフェン)に特に当てはまる。これらの遮蔽されたジベンゾチオフェンは、50〜100ppmwのような低硫黄レベルで大半を占める。こうした難処理性の硫黄化合物から硫黄を除去するには、苛酷な運転条件(すなわち、より高い水素分圧、温度、触媒量)を適用しなければならない。水素分圧の増大は、再循環ガスの純度を挙げることでのみ実施でき、そうでなければ新たな草の根装置を設計しなければならず、これは費用のかかる選択肢である。苛酷な運転条件の使用は、収率損失、触媒サイクルの低下及び製品品質の劣化(例えば、色)を生じる。
【0008】
将来のより厳しい規格に適合するためには、このような遮蔽された硫黄化合物も留出物原料及び製品から除去する必要があるだろう。この必要性が、新たな非従来プロセス技術開発への取組みの駆動力となった。酸化脱硫は、硫黄を低レベルに削減する既知技術の1つである。しかし、硫黄がH
2Sとして除去され、窒素がNH
3として除去されるという、水素化脱硫プロセスで広く実施されている状況と異なり、酸化脱硫は、酸化された硫黄化合物(例えば、スルホキシド及びスルホン)及び窒素化合物を生じる。例えば、当初500ppmwの硫黄を含有する水素処理したディーゼル1000トンの酸化脱硫では、完全変換すると考えると、1トンのスルホンが生成する。これらの酸化化合物は、その後抽出又は吸着によってさらに除去される。
【0009】
炭化水素燃料に一般的に存在する硫黄含有化合物には、スルフィド、ジスルフィド及びメルカプタンのような脂肪族分子並びにチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェン及びアルキル誘導体(例えば4,6−ジメチル−ジベンゾチオフェン)のような芳香族分子が包含される。これらの芳香族分子は脂肪族分子よりも沸点が高く、その結果、高沸点留分中に、より豊富に存在する。
【0010】
脂肪族硫黄化合物は、水素化脱硫法を用いて容易に脱硫されるが、一部の高分岐脂肪族分子は、硫黄原子除去を妨害する可能性があり、脱硫がやや困難である。
【0011】
硫黄含有芳香族化合物のうち、チオフェン及びベンゾチオフェンは水素化脱硫が比較的容易であるが、環化合物へのアルキル基の付加は、水素化脱硫の難度をわずかに上げる。ベンゾチオフェン類に別の環を付加することで得られるジベンゾチオフェンは脱硫が方向的により困難である。その難度はそのアルキル置換によって大きく変動し、ジ−ベータ置換が最も脱硫が困難で、その「難処理性」という名称の根拠となっている。これらのいわゆるベータ置換基は、ヘテロ原子を触媒の活性部位から見えないように遮蔽する。このように、いわゆる「難処理性硫黄」の経済的な除去は、実現がきわめて困難であり、そのため、炭化水素燃料中の硫黄化合物を約10ppmw未満のレベルまで除去することは、現在の水素処理技術では非常に費用がかかる。より厳しい硫黄規格に適合するためには、これらの難処理性硫黄化合物を炭化水素燃料の流れから除去する必要がある。
【0012】
炭化水素の流れの硫黄レベルを経済的に低減する可能性の高い選択肢として、水素化脱硫プロセスに酸化反応ゾーンを統合することが考えられる。酸化反応ゾーンでは、炭化水素系硫黄化合物が、非常に穏和な条件下で、硫黄及び酸素を含有する化合物(例えばスルホキシド又はスルホン)へと容易に変換される。変換された化合物は異なる化学及び物理的特性を有することから、硫黄含有化合物をもとの炭化水素の流れの残部から除去することが可能になる。酸化硫黄化合物を除去する技術として、抽出、蒸留及び吸着加工工程が挙げられる。しかし、スルホキシド及びスルホンを最終的に処分するための効率的な方法は提案されていない。
【0013】
先行技術のいくつかの教示は、水素化脱硫工程及び酸化脱硫工程を統合する脱硫プロセスを扱っている。例えば、参照により本明細書に組み込まれる特許文献2は、炭化水素原料を最初に水素化脱硫反応ゾーンで水素化脱硫触媒に接触させて硫黄含有量を低硫黄レベルまで低減させる統合プロセスを開示している。水素化脱硫から得られた炭化水素の流れは、続いて、その全体が酸化剤を含有する酸化ゾーンへ送られ、そこで、残留硫黄が穏和な条件下で酸化硫黄化合物へと変換される。残留酸化剤を分解した後、生成した酸化硫黄化合物を溶媒で抽出し、酸化硫黄化合物を含有する流れ及び酸化硫黄化合物の濃度が低下した炭化水素油の流れが得られる。最終工程の吸着が、後者の炭化水素油の流れにおいて実施され、超低硫黄レベルに到達する。しかし、この文献は、酸化硫黄化合物の最終的な処分方法に関する教示を与えていない。
【0014】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献3には、炭化水素油を含む流れ及び酸化硫黄化合物を含有する再循環流を水素化脱硫反応ゾーンで水素化脱硫触媒と接触させて、低レベルの硫黄を得る、炭化水素系油の脱硫のプロセスが開示されている。得られた炭化水素の流れは、続いて、その全体を酸化反応ゾーンの酸化剤と接触させ、残留硫黄化合物を酸化硫黄化合物に変換する。残留酸化剤を分解した後、酸化硫黄化合物を除去し、酸化硫黄化合物を含有する流れ及び酸化硫黄化合物の濃度が低下した炭化水素油の流れが得られる。プロセスからの炭化水素回収を増大するため、酸化硫黄化合物の少なくとも一部は水素化脱硫反応ゾーンに戻され再循環される。しかしながら、生成したスルホン化合物の一部は、還元されて最初の硫黄化合物に戻るため、硫黄処分問題は完全に解決されずになお残されている。
【0015】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献4は、留出物供給流よりも低い硫黄レベルを有する留出燃料を生産するプロセスを開示している。留出物供給流は、最初に、硫黄を約50〜100ppmwしか含有しない軽質留分と、重質留分に分画される。軽質留分は、続いて、水素化脱硫反応ゾーンへと送られ、その中に含まれる実質的にすべての硫黄が除去される。最後に、脱硫された軽質留分が、重質留分の半分とブレンドされ、低硫黄留出燃料を生産する。しかし、低硫黄留出燃料製品を得るために、留出物供給流のすべてが回収されているわけではない。
【0016】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献5は、炭化水素系原料を最初に水素化脱硫反応ゾーンで水素化脱硫触媒と接触させて硫黄レベルを低硫黄レベルに低下させる統合プロセスを開示している。得られた炭化水素の流れは、続いて、その全体が酸化剤を含有する酸化ゾーンへ送られ、そこで、残留硫黄が穏和な条件下で酸化硫黄化合物へと変換される。残留酸化剤を分解した後、生成した酸化硫黄化合物を溶媒で抽出し、酸化硫黄化合物を含有する流れ及び酸化硫黄化合物の濃度が低下した炭化水素油の流れが得られる。最終工程の吸着が、炭化水素油の流れにおいて実施され、超低硫黄レベルに到達する。
【0017】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献3は、炭化水素油を含む流れ及び酸化硫黄化合物を含有する再循環流を水素化脱硫反応ゾーンで水素化脱硫触媒と接触させて、低レベルの硫黄を得る、炭化水素系油の脱硫のプロセスが開示さしてる。得られた炭化水素の流れは、続いて、その全体を酸化反応ゾーンの酸化剤と接触させ、残留硫黄化合物を酸化硫黄化合物に変換する。残留酸化剤を分解した後、酸化硫黄化合物を除去し、酸化硫黄化合物を含有する流れ及び酸化硫黄化合物の濃度が低下した炭化水素油の流れが得られる。酸化硫黄化合物の炭化水素部分を回収するため、酸化硫黄化合物の少なくとも一部は水素化脱硫反応ゾーンに戻され再循環される。
【0018】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献6では、2段階脱硫プロセスが水素処理装置の下流に設けられている。水素化脱硫反応ゾーンで水素処理された後、全留出物供給流が酸化反応ゾーンに送られ、ギ酸水溶液−過酸化水素水の二相酸化により、チオフェン系硫黄化合物が対応する酸化化合物、すなわちスルホンへと変換される。このスルホンの一部は、酸化反応終了時に酸化水溶液に存在し、その後の相分離工程によって更に除去される。残留スルホンを含有する油相は最終的に液−液抽出工程で処理される。スルホンの運命に関する記述はない。
【0019】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献7は、炭化水素の流れから硫黄を除去するプロセスを開示している。硫黄化合物を含有する炭化水素の流れは、酸化反応ゾーンへ送られ、そこで水性酸化剤を用いて有機硫黄化合物が対応するスルホンへと酸化される。水性酸化剤を炭化水素相から分離した後、得られた炭化水素の流れを素化脱硫工程へ送る。得られた炭化水素は、実質的に硫黄が低減されている。
【0020】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献8は、留出物原料の硫黄及び/又は窒素含有量を低減して、輸送燃料又は輸送燃料用ブレンド成分を生産するプロセスを開示している。水素処理された原料を、酸化/吸着ゾーンで、酸素含有ガス及びチタン含有メソ多孔性酸化触媒と接触させて、硫黄化合物を触媒上に吸着される対応するスルホンに変換する。スルホンの運命に関する記述はない。
【0021】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献9は、炭化水素の流れ中に存在する硫黄化合物を除去するプロセスを開示している。硫黄化合物は最初に濃縮ゾーンに導入され、例えばアンモニウム錯体との錯化、吸着又は抽出によってその濃度が増大され、その後、硫黄枯渇石油原料から分離される。続いて、分離された硫黄化合物の選択的酸化を、担持触媒の存在下で空気又は酸素を用いて気相中で実施し、有用な酸素化製品及び硫黄欠損炭化水素を得る。
【0022】
参照により本明細書に組み込まれる特許文献10には、液体炭化水素からの有機硫黄化合物の除去に有効なプロセスが開示されている。このプロセスは、より具体的には、ガソリン、ディーゼル燃料、及び灯油などの多数の石油留分からのチオフェン及びチオフェン誘導体の除去に関する。プロセスの第1段階では、チオフェン化合物の少なくとも一部をスルホンに酸化するため、液体炭化水素を酸化条件下に置く。これらのスルホンは、その後、触媒分解して炭化水素(例えば、ヒドロキシビフェニル)及び揮発性硫黄化合物(例えば、二酸化硫黄)を生成することができる。炭化水素分解生成物は、有用なブレンド成分として処理液体中に残るが、揮発性硫黄化合物は、フラッシュ蒸発又は蒸留のような周知の技術を用いて、処理液体から容易に分離される。
【0023】
スルホンの還元的除去及び古典的スルホンアミドの還元的開裂に関して、アルカリ金属(Li、Na、K)、リチウムナフタレニド、SmI
2−HMPA、又はLiAlH
4をニッケル化合物の存在下で用いる種々の方法が報告されている(非特許文献1)及び(非特許文献2)。これらの還元方法はすべて、攻撃性の高い含金属還元剤によって媒介される。アリールスルホン(非特許文献3)(ArSO
2R)及びスルホンアミド(非特許文献4)の還元的開裂には、電気化学的還元も使用される。
【0024】
テトラアザアルケンを用いたスルホン及びスルホンアミドの還元的開裂も報告されている。テトラアザアルケンは中性の有機電子供与体であり、最近「超電子供与体」試薬と命名された試薬の系列の1つである(非特許文献5)。より強力な還元剤がビスイミダゾリリデンとして合成された。しかし、ビスイミダゾリリデンに関する研究は限られており、モデル化合物でしか実施されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】米国特許出願公開第13/181,043号明細書
【特許文献2】米国特許第6,174,178号明細書
【特許文献3】米国特許第6,277,271号明細書
【特許文献4】米国特許第6,087,544号明細書
【特許文献5】米国特許第6,174,178号明細書
【特許文献6】国際公開第2002/18518号パンフレット
【特許文献7】国際公開第2003/014266号パンフレット
【特許文献8】国際公開第2006/071793号パンフレット
【特許文献9】米国特許出願公開第2005/0150819A1号明細書
【特許文献10】米国特許第6,368,495号明細書
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Jones,Simpkins et al.1998
【非特許文献2】Prakash,Chacko et al.2009
【非特許文献3】Jolivet et al.,Tetrahedron Letters,43(44),7907−7911 2002
【非特許文献4】Klein et al.,Journal of Electroanalytic Chemistry;487(1):66−71(2000)
【非特許文献5】Schoenebeck,JASC,129(44):13368−13369(2007)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0027】
本発明のプロセスは、炭化水素原料をスルホン及びスルホキシドの除去によって改良する方法であって、
a.炭化水素原料を酸化反応器に供給する工程であって、炭化水素原料が硫黄含有化合物を含む、工程;
b.前記炭化水素原料を、酸化反応器内で、炭化水素原料中に存在する硫黄化合物を選択的に酸化するのに十分な条件下、触媒の存在下で酸化剤と接触させて、炭化水素及び酸化硫黄含有化合物を含む炭化水素の流れを生成する工程;
c.前記酸化硫黄含有炭化水素の流れを水相及び非水性酸化溶出液に分離する工程;
d.前記非水性酸化溶出液を回収し、それを電子供与剤と接触させて、非水性酸化溶出液中に存在するスルホン及びスルホキシドを
減少させ、スルホン及びスルホキシド中の炭素−硫黄結合の還元的開裂を引き起こして分解し、副生成物の塩と脱硫された炭化水素を生成する工程;及び、
e.
副生成物の塩を分離し、脱硫された炭化水素の流れ
を回収する工程;を含む方法である。
【0028】
本発明によると、酸化脱硫後に残留するスルホン及びスルホキシド中の炭素−硫黄結合を還元的に開裂する。
【0029】
また本発明によると、電子供与剤を用いることによって、スルホン及びスルホキシド中の炭素−硫黄結合の還元的開裂を引き起こす。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本プロセスに先行する炭化水素原料の酸化脱硫を含めた本発明のスルホン分解プロセスのフローチャート
【
図2】本プロセスに先行する炭化水素原料の酸化脱硫及び溶媒抽出を含めた本発明のスルホン分解プロセスのフローチャート
【
図3】本プロセスに先行する炭化水素原料の酸化脱硫、溶媒抽出及び吸着を含めた本発明のスルホン分解プロセスのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明のプロセスによると、スルホン及びスルホキシドのような硫黄化合物の酸化物を含有する酸化炭化水素の流れを、最初に電子供与剤と接触させて、高温で硫黄化合物を分解する。このプロセスでは触媒を使用する必要はない。
【0032】
本発明のプロセスは一般的に、酸化脱硫又は酸化脱硫が後に続く統合的水素化脱硫に続いて実施される。しかし、上述のように、酸化反応副生成物、すなわち酸化硫黄化合物の最終的な処分のための効率的な方法はこれまでに開示されていない。本発明のプロセスは、このような処分を、電子供与剤を用いていかにして実施するかを開示する。
【0033】
1つの態様において、本発明は炭化水素原料、特に硫黄含有化合物を包含する炭化水素原料を改良する方法を提供する。特定の実施形態において、炭化水素原料は、酸化及び除去され得る窒素含有種を硫黄種に加えて又は硫黄種の代わりに包含する。
【0034】
本発明の一実施形態である
図1に示すように、スルホン変換装置10は、酸化反応器12、第1分離装置16、スルホン分解容器19及び第2分離装置22を包含する。炭化水素原料11は酸化反応器12に導入され、そこで炭化水素原料11が触媒14の存在下で酸化剤13と接触する。特定の実施形態において、触媒14を、このプロセス又は別のプロセスから再生して新しい触媒と共に又は新しい触媒の代わりに供給することができる。
【0035】
炭化水素原料11は、いかなる石油系炭化水素であることもでき、元素硫黄のような種々の不純物、並びに/又は硫黄及び/若しくは窒素を包含する化合物を包含することができる。特定の実施形態において、炭化水素原料11は、約36℃〜2000℃の沸点を有するディーゼル油であることができる。あるいは、炭化水素原料11は、約80℃〜約560℃の沸点を有することができる。好ましくは、炭化水素原料11は、約180℃〜約400℃の沸点を有することができる。特定の実施形態において、炭化水素原料11は固体残渣であることができる。特定の実施形態において、炭化水素原料11は重質炭化水素を包含できる。本明細書で使用するとき、重質炭化水素は、約360℃を超える沸点を有する炭化水素を指し、芳香族炭化水素及びナフタレン、並びにアルカン及びアルケンを包含し得る。一般的に、特定の実施形態において、炭化水素原料11は、全範囲の原油、抜頭原油、製油所生成物の流れ、製油所の蒸気分解プロセス生成物の流れ、液化石炭、油又はタールサンドから回収される液体生成物、ビチューメン、オイルシェール、アスファルテンなど、及びそれらの混合物から選択できる。
【0036】
炭化水素原料11中に存在する代表的な硫黄化合物としては、スルフィド、ジスルフィド、及びメルカプタン、並びにチオフェン、ベンゾチオフェン、ジベンゾチオフェンのような芳香族分子、及び4,6−ジメチル−ジベンゾチオフェンのようなアルキルジベンゾチオフェンが挙げられる。芳香族化合物は一般的に、低沸点留分中に通常存在する量よりも、高沸点留分中に豊富に存在する。
【0037】
特定の実施形態において、炭化水素原料11は窒素含有化合物を包含することができ、特定の実施形態において、代表的化合物として、塩基性及び中性窒素化合物、例えばインドール、カルバゾール、アニリン、キノリン、アクリジンなどが挙げられる。
【0038】
酸化反応器12は、従来のディーゼル型原料の水素化脱硫プロセスで一般的に使用される条件と比較して温和な条件で運転できる。より具体的には、特定の実施形態において、酸化反応器12は、約20℃〜約150℃、あるいは約30℃〜約150℃、あるいは約30℃〜約90℃、又は約90℃〜約150℃の温度で運転できる。特定の実施形態において、この温度は、好ましくは約30℃〜約75℃、より好ましくは約45℃〜60℃である。
【0039】
酸化反応器12の運転圧力は、約1〜30bar、あるいは約1〜15bar、あるいは約1〜80bar、好ましくは約2〜3barであることができる。炭化水素原料11の酸化反応器12内での滞留時間は、約1〜180分、あるいは約15〜180分、あるいは約15〜90分、あるいは約5〜60分、あるいは約30〜60分、あるいは約60〜120分、あるいは約120〜180分であることができ、好ましくは、炭化水素原料11中に存在するいかなる硫黄又は窒素化合物も酸化するのに十分な時間存在する。一実施形態において、炭化水素原料11の酸化反応器12内での滞留時間は約15〜45分である。比較して、従来のディーゼル型原料の水素化脱硫は、一般的に、それよりも厳しい条件下、例えば、温度約330℃〜380℃、圧力約50〜80kg/cm
2、及び液空間速度(LHSV)約0.5〜2h
−1にて実施される。
【0040】
酸化反応器12は、触媒14の存在下で、反応器内に収容された硫黄及び窒素含有化合物の少なくとも一部が酸化されるための炭化水素原料11と酸化剤13との間の十分な接触が確実となるように適切に構成されたいかなる反応器であることもできる。酸化反応器12に適した反応器としては、バッチ反応器、固定床反応器、沸騰床反応器、リフト反応器、流動床反応器、スラリー床反応器などが挙げられる。炭化水素原料11中に存在する特定の硫黄及び窒素化合物は、酸化反応器12内で酸化されてスルホン、スルホキシド及び酸化窒素化合物となり、これらはその後分離、抽出及び/又は吸着によって除去できる。酸化窒素化合物の例としては、ピリジン及びピロール−系化合物又はピリジン−ジフラン化合物が挙げられる。多くの場合、酸化では、窒素原子自体が酸化されるのではなく、化合物が酸化されて、残りの化合物から容易に分離される化合物が生成する。
【0041】
好適な酸化剤としては、空気、酸素、オゾン、過酸化水素、有機過酸化物、ヒドロペルオキシド、有機過酸、ペルオキソ酸、窒素の酸化物など、及びこれらの組み合わせが挙げられる。代表的な過酸化物は、過酸化水素などから選択できる。代表的なヒドロペルオキシドは、t−ブチルペルオキシドなどから選択できる。代表的な有機過酸は、過酢酸などから選択できる。
【0042】
窒素よりも硫黄の濃度が高い炭化水素原料のような、特定の実施形態において、炭化水素原料中に存在する酸化剤対硫黄のモル比は、約1:1〜50:1、好ましくは約2:1〜20:1、より好ましくは約4:1〜10:1であることができる。
【0043】
硫黄よりも窒素の濃度が高い炭化水素原料、例えば南米産原油、特定のアフリカ産原油、特定のロシア産原油、特定の中国産原油、並びに特定の中間精製の流れ(例えばコーカー、熱分解、ビスブレーキング、FCCサイクルオイルなど)のような、特定のその他の実施形態において、炭化水素原料中に存在する酸化剤対窒素のモル比は、約1:1〜50:1、好ましくは約2:1〜20:1、より好ましくは約4:1〜10:1であることができる。
【0044】
触媒14は、化学式MxOy(式中、Mは周期表のIVB族、VB族、又はVIB族から選択される金属である)を有する金属酸化物を少なくとも1つ包含することができる。特定の代表的な触媒は、1つ以上の金属酸化物を包含する均一触媒であることができる。代表的な金属として、チタン、バナジウム、クロム、モリブデン、及びタングステンが挙げられる。特定の好ましい金属としては、モリブデン及びタングステンの酸化物が挙げられる。
【0045】
触媒対油の比は、約0.1重量%〜約10重量%、好ましくは約0.5重量%〜約5重量%である。特定の実施形態において、この比は約0.5重量%〜約2.5重量%である。あるいは、この比は約2.5重量%〜約5重量%である。
【0046】
酸化反応器12内に存在する触媒は、炭化水素原料11中の種々の硫黄及び/又は窒素含有化合物の酸化速度を増大すること、及び/又は酸化反応に必要な酸化剤の量を削減することができ、それにより、より短時間で、及び/又は硫黄及び窒素含有化合物の酸化実現に必要な酸化剤の量が削減されて、硫黄及び窒素含有化合物の反応及び酸化を完了する。特定の実施形態において、触媒は、硫黄含有化合物の酸化を目的として選択することができる。好ましい実施形態では、触媒は、炭化水素原料11中に存在する芳香族炭化水素の酸化を最小にするように選択される。
【0047】
酸化剤副生成物の組成は、プロセスに使用される元の酸化剤の性質によって変動するであろう。例えば、酸化剤が過酸化水素である実施形態では、酸化反応の副生成物として水が生成する。酸化剤が有機過酸化物である実施形態では、酸化反応の副生成物としてアルコールが生成する。副生成物は一般的に、抽出及び溶媒回収工程で除去される。
【0048】
酸化反応器12から生じる酸化溶出液15は、酸化硫黄及び酸化窒素化合物を包含し、酸化反応器12から排出されて第1分離装置16に送られ、そこで酸化溶出液15が、排出される水相17、及びスルホン分解容器19に送られる非水性酸化溶出液18に分離される。
【0049】
酸化硫黄化合物を除去するため、非水性酸化溶出液18及び電子供与剤20は、スルホン分解容器19内で接触させられる。
【0050】
使用される電子供与剤20の量は、原料のスルホン含有量に基づき、約1〜約5モル当量、好ましくは約1〜約3モル当量の範囲である。電子供与剤20は、スルホン及びスルホキシドを還元するための酸化電位を有さなければならない。例えばビスピリジニリデン及びビスイミダゾリリデンなど、種々の電子供与体を有利に使用できるが、酸化時にラジカルカチオン及びジカチオンを生成するテトラアザアルケンを使用することが好ましい。ビスベンズイミダゾリリデンを使用することは特に好ましい。
【0051】
スルホン分解容器19内での分解反応が完了すると、脱硫溶出液21(硫黄の大部分が除去されている)は、スルホン分解容器19を出て第2分離装置22に送られ、そこで水と混合されて、反応副生成物の塩を洗浄及び浄化する。第2分離装置22では、分離が実施され、廃棄される水/塩の流れ23及び回収される脱硫油24が得られる。
【0052】
本発明の別の実施形態である
図2に示すように、スルホン変換装置110は、酸化反応器112、第1分離装置116、抽出容器125、スルホン分解容器119及び第2分離装置122を包含する。炭化水素原料111は、酸化反応器112に供給され、そこで炭化水素原料111が触媒114の存在下で酸化剤113と接触する。特定の実施形態において、触媒をこのプロセス又は別のプロセスから再生して、新しい触媒と共に又は新しい触媒の代わりに供給することができる。炭化水素原料111及び酸化反応器112の特徴、並びに酸化反応器112の運転条件は、先に
図1の実施形態に関して考察されている。
【0053】
酸化反応器112での反応が完了すると、酸化硫黄及び酸化窒素化合物を含有する酸化溶出液115が酸化反応器12から排出されて第1分離装置116に送られる。
【0054】
第1分離装置116では、酸化溶出液115が水相117及び非水性酸化溶出液18に分離される。
【0055】
非水性酸化溶出液118は、抽出容器125に供給され、そこで抽出溶媒126の流れと接触させられる。
【0056】
抽出溶媒126は極性溶媒であることができ、特定の実施形態において、ヒルデブラントの溶解度の値が約19を超え得る。特定の実施形態において、酸化硫黄及び窒素含有種の抽出に使用するための極性溶媒を選択する際、選択は、一部には、溶媒密度、沸点、凝固点、粘度、及び表面張力に基づいて選択されてもよい。抽出工程での使用に好適な代表的な極性溶媒としては、アセトン(ヒルデブラント値19.7)、炭素ジスルフィド(20.5)、ピリジン(21.7)、ジメチルスルホキシド(DMSO)(26.4)、n−プロパノール(24.9)、エタノール(26.2)、n−ブチルアルコール(28.7)、プロピレングリコール(30.7)、エチレングリコール(34.9)、ジメチルホルムアミド(DMF)(24.7)、アセトニトリル(30)、メタノール(29.7)などが挙げられる。特定の実施形態において、アセトニトリル及びメタノールは、その低コスト、揮発性、及び極性から好ましい。特定の実施形態において、硫黄、窒素、又はリンを包含する溶媒は、炭化水素原料からの溶媒の十分なストリッピングを確実とするため、好ましくは比較的高い揮発性を有する。
【0057】
好ましい実施形態では、抽出溶媒は非酸性である。酸の腐食性、及びすべての機器を腐食性環境に合わせて特別に設計する必要があることから、酸の使用は一般的に避けられる。さらに、酢酸のような酸は、エマルションの生成により分離を困難にする可能性がある。
【0058】
抽出容器125は、約20℃〜60℃、好ましくは約25℃〜45℃、さらにより好ましくは約25℃〜35℃の温度で運転できる。抽出容器125は、約1〜10bar、好ましくは約1〜5bar、より好ましくは約1〜2barの圧力で運転できる。特定の実施形態において、抽出容器125は約2〜6barの圧力で運転する。
【0059】
抽出溶媒126対非水性酸化溶出液118の比は、約1:3〜3:1、好ましくは約1:2〜2:1、より好ましくは約1:1であることができる。抽出溶媒126と非水性酸化溶出液118の間の接触時間は、約1秒〜60分、好ましくは約1秒〜約10分であることができる。特定の好ましい実施形態において、接触時間は約15分未満である。特定の実施形態において、抽出容器125は、抽出溶媒126と非水性酸化溶出液118の間の接触時間を延長するため、又は2つの溶媒の混合度合を増大するための種々の手段を包含する。混合の手段としては、メカニカルスターラ、アジテータ、トレイなどの手段が挙げられる。
【0060】
脱硫油127並びにスルホン及びスルホキシドの流れ128が、抽出容器125から発生する。
図1の方法に関して本明細書に開示されている本発明のプロセスに従い、脱硫油127は回収されるが、スルホン及びスルホキシドの流れ128はスルホン分解容器119に送られ、そこで電子供与剤129と接触する。
【0061】
容器119内でのスルホン分解が完了すると、脱硫溶出液130は、前記容器を出て水と混合されて第2分離装置122に送られ、反応副生成物が塩の流れと共に除去されて、その結果水/塩の流れ131が得られ、回収脱硫油の流れ132が回収される。
【0062】
本発明の別の実施形態である
図3に示すように、スルホン変換装置210は、酸化反応器212、第1分離装置216、抽出容器225、吸着ゾーン233、スルホン分解容器219及び第2分離装置222を包含する。炭化水素原料211は、酸化反応器212に供給され、そこで原料211が触媒214の存在下で酸化剤213と接触する。
【0063】
酸化反応器212での反応の完了後、酸化硫黄及び酸化窒素化合物を含有する酸化溶出液215が酸化反応器212から排出されて第1分離装置216に送られる。第1分離装置216において、酸化溶出液215は、排出される水相217及び抽出容器225に送られる非水性酸化溶出液218に分離される。
【0064】
抽出容器225での抽出の完了後、
図2に関して上記に開示された方法に従い、抽出溶出液235は吸着ゾーン233に送られる。適切な滞留時間にわたって適切な吸着性材料と接触した後、脱硫油236が生成及び回収され、スルホン及びスルホキシドの流れ237が除去される。
【0065】
代表的な吸着剤には、活性炭、シリカゲル、アルミナ、天然粘土及びその他の無機吸着剤が挙げられる。シリカゲル、活性炭及びアルミナに塗布された極性ポリマーも挙げられる。
【0066】
吸着ゾーン233は、約20℃〜60℃、好ましくは約25℃〜40℃、さらにより好ましくは約25℃〜35℃の温度で運転されるカラムであることができる。特定の実施形態において、吸着ゾーンは約10℃〜40℃、あるいは約35℃〜75℃の温度で運転できる。特定の実施形態において、吸着ゾーンは約20℃を超える温度又は別の方法として約60℃未満の温度で運転できる。吸着ゾーンは、約15barまで、好ましくは約10barまで、さらにより好ましくは約1〜2barの圧力で運転できる。特定の実施形態において、吸着ゾーンは、約2〜5barの圧力で運転できる。代表的な実施形態において、吸着ゾーンは、約25℃〜35℃の温度及び約1〜2barの圧力で運転できる。ストリップされた油の流れ対吸着剤の重量比は、約1:1〜約20:1、あるいは約5:1〜約15:1である。別の実施形態において、この比は約7:1〜約13:1であり、代表的な比は約10:1である。
【0067】
抽出容器225から排出されたスルホン及びスルホキシドの流れ238は、スルホン分解容器219に送られ、そこで
図1及び
図2方法に関する上記の記載と同じ方法及び同じ条件下で電子供与剤239と接触させられる。
【0068】
容器219内でのスルホン分解が完了すると、脱硫溶出液240(硫黄の大部分が除去されている)は、スルホン分解容器219を出て第2分離装置222に送られ、そこで水と混合されて、反応副生成物の塩を洗浄する。第2分離装置222において、分離が実施され、廃棄される水/塩の流れ241及び回収される脱硫油の流れ242が得られる。
【実施例1】
【0069】
500ppmwの元素硫黄、0.28wt%の有機硫黄を含有し、密度0.85KG/Lである水素処理した直留ディーゼル油を
図2のプロセスに従って酸化脱硫した。反応条件は下記の通りであった。
触媒:モリブデン系Mo(VI)
反応時間:30分
温度:80℃
圧力:1kg/cm
2
【0070】
抽出中、93kgのビスイミダゾリリデンを電子供与剤として使用した。抽出は、110℃、1kg/cm
2の圧力及び0.1h
−1のLHSVで実施した。
【0071】
酸化工程及び抽出工程の物質収支を、それぞれ表1及び2に示す。脱硫ディーゼル油は、40ppmwの硫黄を含有していた。
【0072】
ODS(酸化脱硫)
【0073】
【表1】
【0074】
抽出
【0075】
【表2】
【0076】
スルホン分解
【0077】
【表3】
【0078】
本発明を例証する目的で特定の代表的実施形態及び詳細を示したが、請求項に定義された本発明の範囲を逸脱することなく本明細書に開示された方法に種々の変更を加えてもよい。