【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的は、請求項1及び2に記載の方法、請求項3に記載の光学デバイス、及び請求項13に記載の使用によって実現される。好適実施例は従属請求項に開示されている。
【0006】
本発明の方法は、光ビームが通過可能な所与の
延在軸を有する長方形の入射窓を備える透明部材内
に前記光ビームを結合させることを可能にする。前記入射窓の実際の形状はかなりの程度任意である。ただし前記入射窓の実際の形状は典型的には、前記窓の
延在軸に沿った長さと該長さよりも短い幅を有する長方形である(又は少なくとも長方形の領域を含む)。前記入射窓の典型的なアスペクト比(つまり長さと幅との比)は約20:1〜3:2の範囲である。
【0007】
当該方法は、焦線(典型的には2つの焦線のうちの第1)が前記入射窓の軸に沿って延びるように前記入射窓上で前記光ビームを非点集束させる段階を有する。
【0008】
本願において、「非点集束」とは、(非対称な)光ビームの集束であって、前記光ビームのすべての光線は−理論的にも−同一焦点で出会わないようなものを意味する。その代わり、前記光ビームの光線が通過する少なくとも1本の一次元の線分(以降「焦線」と呼ばれる)が存在する。通常、2本のそのような焦線が特定されうる。前記2本のそのような焦線は互いに平行ではなく(典型的には互いに垂直)、光軸に沿って離間している。
【0009】
しかも前記入射窓の軸に沿った(第1)焦線の
延在とは、前記(第1)焦線と前記入射窓の軸との間の角が約45°未満で好適には約20°未満であることを意味する。前記焦線と前記入射窓の軸とは実質的に平行であることが最も好ましい(
この向きの許容度は、全記入者窓の結合NA、第1焦点距離、第2焦点距離、及び高さによって定められる前記焦線の実際の形状に依存する)。
【0010】
前記第1焦線を用いて平面状光学部材内
に光を結合させた後、前記光は、全反射を利用して前記光学部材内部で前記光軸に沿って導光される。その結果、高強度の領域が、前記入射窓からの巨視的な距離である前記光学部材内部の前記第2焦線の位置で生じる。前記巨視的な距離は、非点光学系の2つの焦点距離の差によって与えられる。これらの特徴は、前記光学部材の端部から数mm離れた位置にセンサ領域を有する薄い光学部材(たとえばカートリッジ)にとっては特に重要である。
【0011】
本発明はさらに、2つの主要部材を有する光学デバイスに関する。当該2つの主要部材とは具体的には以下である。
【0012】
a) 長方形の入射窓を有する透明部材が設けられ得る又は設けられ
ている収容空間(又はホルダ)。第1の場合(「設けられ得る」)では、前記透明部材は典型的には、当該光学デバイスに属さない交換可能な素子である。第2の場合(「設けられ
ている」)では、前記透明部材は、前記収容空間に恒久的に配置され、かつ、当該光学デバイスの一部とみなすことができる。
【0013】
b) (好適には第1)焦線は前記入射窓の軸に沿って延びるように、前記収容空間
にある前記透明部材の入射窓上
に光ビームを非点
集束させる集束光学系。
【0014】
当該方法及び光学デバイスは、本発明の関連実施例である。従って、これらの実施例のうちの一に供される説明及び定義は他の実施例にも有効である。
【0015】
当該方法及び光学デバイスは、長方形の入射窓を用いて平面状透明部材内
への完全な光ビームの結合を可能にするという利点を有する。これは通常、前記透明部材の単純な形状でも利用可能である。焦線が前記入射窓の軸に沿って延びるような前記光ビームの非点集束を用いることによって、前記入射窓の長方形の形状は、最適に利用される。これにより、前記光ビームの他の集束特性に関する−以降で詳述する第2焦線に関する−自由度が残される。
【0016】
以降では、当該方法及び光学デバイスに関する本発明の様々な実施例が説明される。
【0017】
非点集束した光ビームは通常、第2焦線を有することは既に述べた。本発明の好適実施例では、光学設計パラメータの設計は、第2焦線が前記透明部材内部に設けられるように行われる。これにより、すべての光線が集中する領域を前記透明部材内部に生成することが可能となる。
【0018】
一般的には、前記長方形の入射窓が供されている限り、前記透明部材は任意の3次元形状を有して良い。しかも全反射の導波条件が満たされることが好ましい。好適実施例では、前記透明部材は(透明)材料の平板又はシートであるので、最も容易に実現可能な形状を有する。具体的には、前記透明部材はホイルであり、好適には厚さが約50μm〜約1000μmのホイルである。光学検査用に試料を内部
に供することが可能な使い捨てカートリッジがたとえば、係るホイルによって実効的に実現され得る。
【0019】
前記透明部材と前記集束光学系の設計は、前記光ビーム−又は前記光ビームの少なくとも1本の光線−が少なくとも1回前記透明部材内部で全反射するようにされることが好ましい。このようにして、前記光ビーム又は該光ビームの一部は、損失することなく前記透明部材内部を伝播するので、前記入射窓から離れた標的領域に到達することができる。好適には前記光ビームは、たとえば2つの対向する表面で複数回全反射
し、故に、導波路内で伝播するように伝播する。
【0020】
上述の設計は、たとえば前記第1焦線に属するNAが最大値NA
max未満である場合に
実現され、前記透明部材内での全反射
が保証され、それにより導波路として機能す
る。この最大値は次式のように推定されうる。
【0021】
【数1】
ここでn
componentは前記透明部材の屈折率で、n
surroundingは前記透明部材の周辺媒質の屈折率である(たとえば空気の下でかつ水の上である場合にはn
surrounding=n
waterである)。
【0022】
他の実施例によると、前記透明部材は、前記光ビームが(前記透明部材への入射後に)全反射される検出領域を有する表面を備える。これにより、たとえば前記反射表面付近の限られた領域を照射するのに、全反射によって生じるエバネッセント波の生成を利用することが可能となる。よって試料の標的成分はたとえば、減衰全反射によって検出されて良い。最も好適には、前記非点集束光ビームの第2焦線は前記検出領域に設けられることで、この領域に前記光ビームの全光線が到達する。ここで前記第2焦線は、前記検出領域に対して垂直な向きをとることが好ましい。
【0023】
光ビームの非点集束を実現するため、前記集束光学系は非点収差レンズ−たとえばシリンドリカルレンズ−を有して良い。
【0024】
非点集束される前記光ビームは原則として、任意の光源−たとえば環境光−を起源として良い。しかし最も好適には、当該光学デバイスは、前記光ビームを制御可能なように生成する(技術的な)光源を有する。前記光源はたとえば、レーザー又は発光ダイオード(LED)であって良い。前記光源には任意で前記光ビームをコリメートする光学系が供されて良い。前記集束光ビームのNAは、全反射条件を満たすのに十分小さく−
先に定義されたNA
max未満であることが好ましい−なければならない。
【0025】
測定又は検出処理が意図されるとき、前記透明部材を飛び出す光を検出するために光検出器が通常は追加される。この光は具体的には、前記透明部材内
に結合した前記光ビームを起源として良い。つまりこの光は、該光ビームの(たとえば反射又は散乱)光子又はこの光ビームによって誘起された(たとえば蛍光)光子で構成されて良い。前記検出器は、所与のスペクトルの光が検出可能な適切なセンサ又は複数のセンサ−たとえばフォトダイオード、フォトレジスタ、光電池、CCDチップ、又は光電子増倍管−を含んで良い。
【0026】
上述の実施例の発展型によると、前記光検出器の信号を処理及び評価する評価ユニットが供される。前記評価ユニットはたとえば、専用電子機器ハードウエア及び/又はソフトウエアが付属するデジタルデータ処理用ハードウエアによって実現されて良い。
【0027】
さらに前記透明部材内部及び/又は該透明部材に隣接する空間内に磁場を発生させる磁場発生装置(たとえば永久磁石又は電磁石)が供されて良い。前記磁場によって、たとえば前記透明部材の近くに存在する試料内の磁気的にラベルが付された標的成分を操作することが可能となる。
【0028】
本発明はさらに、分子診断、生体試料分析、化学試料分析、食品分析、及び/又は鑑識分析への上述の光学デバイスの使用に関する。分子診断はたとえば、標的分子に直接的若しくは間接的に付着する磁気ビーズ又は蛍光粒子の助けを借りることによって実現されて良い。
【0029】
本発明の上記及び他の態様は、後述する実施例を参照することによって明らかとなる。