特許第6046731号(P6046731)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6046731改善された温度管理のための誘電性流体組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046731
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】改善された温度管理のための誘電性流体組成物
(51)【国際特許分類】
   H01B 3/20 20060101AFI20161212BHJP
   C10M 105/24 20060101ALI20161212BHJP
   C10M 101/02 20060101ALI20161212BHJP
   C10M 101/04 20060101ALI20161212BHJP
   C10M 105/32 20060101ALI20161212BHJP
   C10M 107/02 20060101ALI20161212BHJP
   H01F 27/12 20060101ALI20161212BHJP
   C10N 20/00 20060101ALN20161212BHJP
   C10N 20/02 20060101ALN20161212BHJP
   C10N 20/04 20060101ALN20161212BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20161212BHJP
   C10N 40/16 20060101ALN20161212BHJP
【FI】
   H01B3/20 X
   C10M105/24
   C10M101/02
   C10M101/04
   C10M105/32
   C10M107/02
   H01B3/20 J
   H01F27/12 Z
   C10N20:00 A
   C10N20:00 Z
   C10N20:02
   C10N20:04
   C10N30:00 Z
   C10N40:16
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-533680(P2014-533680)
(86)(22)【出願日】2012年9月26日
(65)【公表番号】特表2014-530469(P2014-530469A)
(43)【公表日】2014年11月17日
(86)【国際出願番号】US2012057305
(87)【国際公開番号】WO2013049182
(87)【国際公開日】20130404
【審査請求日】2015年9月18日
(31)【優先権主張番号】61/541,584
(32)【優先日】2011年9月30日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】スー・ジュン・ハン
(72)【発明者】
【氏名】ダーク・ビー・ツィンクウェッグ
(72)【発明者】
【氏名】ゼノン・リセンコ
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−092581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 3/20
C10M 101/02
C10M 101/04
C10M 105/24
C10M 105/32
C10M 107/02
H01F 27/12
C10N 20/00
C10N 20/02
C10N 20/04
C10N 30/00
C10N 40/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘電性流体組成物を調製するためのプロセスであって、(a)12−ヒドロキシステアリン酸アルキルを形成するのに適した条件下で12−ヒドロキシステアリン酸メチルと直鎖または分岐のC3からC20のアルコールとを反応させるステップと、(b)前記12−ヒドロキシステアリン酸アルキルと直鎖または分岐のC4〜C20の遊離酸塩化物、脂肪酸、カルボン酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸とを官能性の12−ヒドロキシステアリン酸を形成するのに適した条件下で反応させるステップと、を含むプロセス。
【請求項2】
前記アルコールが、C8からC10のアルコールからなる群から選択される、請求項に記載のプロセス。
【請求項3】
前記カルボン酸が、直鎖または分岐のC8からC10の脂肪酸およびカルボン酸無水物から選択される、請求項またはに記載のプロセス。
【請求項4】
前記カルボン酸は、直鎖または分岐のC8からC10の遊離酸塩化物である、請求項からのいずれか一項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、「DIELECTRIC FLUID COMPOSITIONS FOR ENHANCED THERMAL MANAGEMENT」という名称の、2011年9月30日に出願された米国特許仮出願第61/541,584号からの優先権を主張する非仮出願であり、その教示は、全てが下記に再現されたかのように、参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本発明は、詳細には変圧器の温度管理のために用いられる誘電性流体の分野に関する。より詳細には、変圧器および他の装置のための電気絶縁および/または熱放散の両方を提供する改良された組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
変圧器の温度管理は、変圧器運用の安全性のために重要であることが知られている。従来型の変圧器は、比較的高温で効率よく稼働するが、過度の熱は、変圧器寿命に悪影響をもたらす。これは、変圧器が、電圧を印加された構成部品または導体が他の構成部品、導体または内部回路に接触または弧絡するのを防ぐために利用される電気絶縁を含むからである。一般には、絶縁体は、経験する温度が高ければ高いほど、その寿命は短くなる。絶縁体が機能しなくなった場合は、時々火災に繋がる、内部故障またはショートが発生し得る。
【0004】
過度な温度上昇および早すぎる変圧器故障を防ぐために、一般には変圧器は、通常の変圧器運用時に発生する比較的多量の熱を放散するように冷却液で満たされる。冷却液は、誘電体媒質として変圧器構成部品を電気的に絶縁する働きもする。誘電液体は、20年を超える数多くの用途における変圧器(transfer)の耐用年数の間は、冷却および絶縁が可能でなければならない。誘電性流体は対流によって変圧器を冷却するので、様々な温度における誘電性流体の粘度は、その効率性を決定する主要な要因の1つである。
【0005】
鉱油は、特にある程度の熱および酸化安定性を示し得るので、種々の誘電性配合物において試験されてきた。しかし残念なことに、鉱油は、環境に優しくないと考えられ、場合によっては摂氏150度(℃)まで低い、容認し難いほど低い燃焼点を示す場合があり、これは、誘電性流体が変圧器などの所定の用途において使用される間にさらされる可能性がある最高温度に望ましくなく近い。それらの低い燃焼点のせいで、研究者らは、代替となる誘電材料を探し求めてきた。
【0006】
代替品のためのこの調査において、環境に優しく、望ましく高い燃焼点(150℃より著しく高い)および望ましい誘電特性という所望の特徴を示し得る植物油が、誘電体媒質として早期に特定された。それらは、短い期間内に生分解可能でもあり得る。最後に、それらは、固体絶縁体との強化された親和性を提供し得る。
【0007】
残念なことに、植物油系の流体は、鉱油と比較した場合に、それら特有の欠点に悩まされ得る。例えば、植物油は、例えば0℃より高いなどの高い流動点を有する傾向があり得る。これは、−15℃以下の流動点が必要とされ得る多くの用途のために問題がある。それらは、鉱油系の流体より望ましくなく高い粘度も有し得る。したがって、研究者は、約−15℃から約110℃の広い温度範囲内で安全にかつ適切に運用し得り、その範囲内で熱的および酸化的に安定な誘電性流体を特定しようとしている。
【0008】
代替物を探している研究者は、いくつかの可能性がある流体を特定した。例えば、米国特許第6,340,658 B1号(Cannonら)は、環境に優しく、高い引火点および高い燃焼点を有する植物油系の電気的絶縁流体を記述している。基油は、最大限可能な油の安定性を生じさせるために水素添加される。植物油は、例えば大豆油およびコーン油から選択される。
【0009】
米国特許公開第2008/0283803A1号は、少なくとも1種の精製、漂白、不凍化(winterized)、脱臭された植物油および少なくとも1種の酸化防止剤を含む誘電性組成物を記述している。誘電性流体は、合成エステルがバイオ素材である、少なくとも1種の合成エステルをさらに含む。本特許は、「合成エステル」を(1)バイオ系または石油由来のポリオールと、(2)バイオ系または石油由来であり得る直鎖または分岐の有機酸と、の間の反応によって生成されるエステルを指す語として定義する。「ポリオール」と言う語は、2つ以上のヒドロキシル基を有するアルコールを指す。バイオ系合成エステルの適切な例には、ポリオールと例えばココナツ油などの植物油由来の炭素鎖長C8〜C10の有機酸との反応によって生じるものが含まれる。合成エステルには、C7〜C9の基を有する合成ペンタエリトリトールエステルも含まれる。有機酸と反応して合成エステルを作るのに適した他のポリオールには、ネオペンチルグリコール、ジペンタエリトリトール、ならびにe−エチルヘキシル、n−オクチル、イソオクチル、イソノニル、イソデシルおよびトリデシルアルコールが含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、単に例示することを目的として、エステル交換するアルコールとして2−エチルヘキサノール、エステル交換用触媒としてNaOCHおよびエステル交換温度160℃の使用を示す。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
様々な研究者によるこれらおよび他の取り組みにも拘らず、所望の特性の組み合わせならびに経済的実行可能性および生分解能力を有する誘電性流体を開発する必要性がいまだある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
1つの態様において本発明は、電気装置のための誘電性流体組成物であって、400ダルトン(Da)から10,000Daの数平均分子量(Mn)、20キロボルト/1mmギャップ(kV/mm)より大きい絶縁破壊強度、25℃で0.2パーセント(%)より小さい誘電正接、250℃より高い燃焼点;40℃で35センチストーク(cSt)より低い動粘性率、−30℃より低い流動点、試料グラム当たり0.03ミリグラム水酸化カリウム(mg KOH/g)より低い酸性度およびそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの特性を有する官能性の12−ヒドロキシステアリン酸を含む誘電性流体組成物である。
【0013】
別の態様において本発明は、誘電性流体組成物を調製するためのプロセスであって、(a)12−ヒドロキシステアリン酸アルキルを形成するのに適した条件下で12−ヒドロキシステアリン酸メチルと直鎖または分岐のC3からC20のアルールとを反応させるステップと、(b)12−ヒドロキシステアリン酸アルキルと直鎖または分岐のC4〜C20の遊離酸塩化物、脂肪酸、カルボン酸無水物およびそれらの組み合わせからなる群から選択されるカルボン酸とを官能性の12−ヒドロキシステアリン酸を形成するのに適した条件下で反応させるステップと、を含むプロセスである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、電気装置における温度管理に有用であり、種々の望ましい特性を有する誘電性流体組成物を提供する。これらの特性には、特定のおよび限定されない実施形態において、20kV/mmギャップより大きい絶縁破壊強度、25℃で0.2%より小さい誘電正接、250℃より高い燃焼点、40℃で35cStより低い動粘性率、−30℃より低い流動点および0.03mg KOH/gより低い酸性度から選択される特性または特性の組み合わせが含まれ得る。加えて、組成物は、目的とする用途において有用な粘度を確保するのに役立つ400Daから10,000Daの範囲の数平均分子量(Mn)を示し得る。これらの特性を測定するために用いられる米国試験材料協会(The American Society for Testing and Materials (ASTM))標準を下表1に示す。
【表1】
【0015】
誘電性流体組成物は、市販製品である12−ヒドロキシステアリン酸メチル(12−HMS)、または、前処理ステップにおいては、一般に知られており広く市販されている植物油であるヒマシ油から、これらのいずれかを用いて開始して調製し得る。ヒマシ油は、その主成分として、主にリシノール酸(脂肪酸鎖の約90パーセント)、および、より少ない量で(脂肪酸鎖の約10パーセント)、オレイン酸およびリノール酸を含み、その全てが18−炭素鎖をベースとする。ヒマシ油自体は、比較的低い熱酸化安定性および低温流動性の問題がある。
【0016】
ヒマシ油を前駆物質として開始するために、ヒマシ油は、典型的には水素添加し、次いでメタノールなどとの反応によってエステル交換して12−HMSを形成してもよい。次いで、この12−HMSを残りのヒマシ油生成物から分離してもよい。リシノール酸には、18−炭素鎖の9個目の(第9の)炭素において不飽和が含まれるので、水素添加はこの不飽和を取り除く働きをする。ヒマシ油の水素添加は、当業者に知られており、この水素添加ステップは、場合によっては単なる前処理ステップとして本発明に含まれていてもよい。
【0017】
12−HMSが一度得られれば、または調製されれば、本発明のプロセスの第1のステップにおける使用のための準備が整う。このステップは、12−HMSを12−ヒドロキシステアリン酸アルキルを形成するのに適した条件下で直鎖または分岐のC3からC20のアルコールと反応させる、12−HMSのエステル交換を含む。好ましい実施形態において、このアルコールは、直鎖または分岐のC6からC12のアルコール、より好ましくは直鎖または分岐のC8からC10のアルコールでよい。この反応のための好ましい条件には、化学量論超過のアルコール、より好ましくは12−HMSと化学量論であろう量の3倍から6倍の量、および最も好ましくは4倍から6倍の量が含まれる。例えばナトリウムメトキシド(NaOCH)などのナトリウムおよびカリウム塩基、酸化トリ−n−ブチルスズおよびジラウリン酸ジブチルスズなどの酸化アルキルスズ、チタン酸エステル、塩酸および硫酸などの酸、ならびにそれらの組み合わせから選択される効果があるエステル交換触媒の使用;100℃から200℃、より好ましくは120℃から190℃、および最も好ましくは140℃から180℃の範囲の温度;ならびに、大気圧で、その後に続くWFE薄膜蒸留(wiped film evaporation)などの任意の適した蒸留も含まれる。この第1のステップの反応において、12−ヒドロキシステアリン酸アルキルのアルキル基部分は、アルコール残留物から生じ、すなわちアルコールの化学式ROH中のRである。C3〜C20のアルキル基の限定されない例には、特定の実施形態において、ヘキシル、オクチル、デシル、およびドデシルを含めた直鎖部分、ならびにそれらの同様の分岐部分、例えばエチルヘキシルおよびエチルオクチルが含まれるであろう。
【0018】
12−ヒドロキシステアリン酸アルキルが一度調製されたら(例えば、12−HMSと2−エチルヘキサノールとの反応によってエステル交換生成物が得られ、これは12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシルであり、または12−HMSとオクタノールの反応によってエステル交換生成物が得られ、これは12−ヒドロキシステアリン酸オクチルである)、次いで第2のステップのプロセスにおいて、エステル化剤またはキャッピング剤と反応させることによってさらにエステル化する。この試剤は、直鎖または分岐のC4〜C20、好ましくはC6〜C12、およびより好ましくはC8〜C10のカルボン酸である。こうしたカルボン酸は、遊離酸塩化物、脂肪酸塩化物、カルボン酸無水物、およびそれらの組み合わせから選択してもよい。この第2のステップの目的は、12−ヒドロキシステアリン酸アルキルを官能化することであり、すなわち、遊離ヒドロキシル基をエンドキャップし、それによって粘度の増大を制限しながら分岐を増やして燃焼点を上昇させることである。
【0019】
この第2のステップが適切な条件下で実行されると、その結果は12−ヒドロキシ−ステアリン酸−アルキル由来のキャップされたオキシアルカン酸エステル生成物であり、すなわち、これは官能性の12−ヒドロキシステアリン酸である。例えば、第1のステップのエステル交換生成物が12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシルであり、第2のステップのエステル化(すなわちキャッピング)が塩化デカノイルなどのカルボン酸塩化物を用いてなされる場合は、得られる生成物は12−オキシデカノイルステアリン酸2−エチルヘキシルである。第1のステップのエステル交換生成物が12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシルであり、第2のステップのエステル化が塩化オクタノイルを用いてなされる場合は、結果は12−オキシオクタノイルステアリン酸2−エチルヘキシルである。第1のステップの生成物が12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシルであり、第2のステップのエステル化がイソ酪酸無水物を用いてなされる場合は、結果は12−オキシイソブタノイルステアリン酸2−エチルヘキシルである。選択するアルコールおよびキャッピング(エステル化)剤によって本発明の多数の他の実施形態があること、ならびにこれらの例は例示を目的としてのみ提供されることが当業者に理解されるであろう。
【0020】
この第2のステップの反応のための好ましい条件には、僅かに化学量論超過のキャッピング剤(好ましくは1モルパーセント(mol%)から10mol%、より好ましくは0.5mol%から5mol%、および最も好ましくは0.1mol%から0.2mol%)が含まれる。例えばナトリウムメトキシド(NaOCH)などのナトリウムおよびカリウム塩基、酸化トリ−n−ブチルスズおよびジラウリン酸ジブチルスズなどの酸化アルキルスズ、チタン酸エステル、塩酸および硫酸などの酸、ならびにそれらの組み合わせから選択される効果があるエステル交換触媒の使用;100℃から200℃、より好ましくは120℃から190℃、および最も好ましくは140℃から180℃の範囲の温度;大気圧でその後に続くWFE薄膜蒸留などの任意の適した蒸留も含まれる。商業的規模においては、遊離カルボン酸、デカン酸は、脂肪酸塩化物または無水物よりもより経済的であり得ることが留意される。
【0021】
本発明のプロセスの態様を例示するために、以下のプロセス概略が図1として提供される。図1は、単に例示することを目的として、エステル交換するアルコールとして2−エチルヘキサノール、エステル交換用触媒としてNaOCHおよびエステル交換温度160℃の使用を示す。図1の第2のステップにおいて、12−ヒドロキシステアリン酸2−エチルヘキシルのエステル化は、塩化デカノイルと反応させることにより達成され、キャップされた最終誘電性流体である、12−オキシデカノイルステアリン酸2−エチルヘキシルを形成する。
【0022】
本明細書で述べた通りに調製した場合、上記に述べたプロセスによって調製され得る新規の組成物は、非常に望ましい特性を示し得る。例えば、それらは、400Daから10,000Daの、好ましくは500Daから5,000DaのMn;20kV/mmギャップより大きい、好ましくは25kV/mmギャップより大きい絶縁破壊;25℃で0.2%より小さい、好ましくは25℃で0.1%より小さい誘電正接;250℃より高い、好ましくは300℃より高い燃焼点;40℃で35cStより低い、好ましくは40℃で30cStより低い動粘性率;−30℃より低い、好ましくは−40℃より低い流動点;および/または0.03mg KOH/gより低い、好ましくは0.025mg KOH/gより低い酸性度を、有し得る。いくつかの実施形態において、これらの2つ以上の特性が、その組成物の特徴であってもよい。
【0023】
本発明の誘電性流体組成物のさらなる利点は、混ぜ物無しで、すなわち100重量パーセント(wt%)の誘電性流体で変圧器などの用途に用いてもよく、または1wt%から100wt%の範囲の濃度で、こうした用途のための種々の他の誘電性流体と組み合わせ、適合させ得ることである。特定の実施形態においては、本発明の組成物は、30wt%から90wt%のこうした組み合わせ流体を含むことが好ましい場合があり、より好ましい実施形態においては、同様に40wt%から90wt%、および最も好ましくは50wt%から90wt%を含み得る。
【0024】
本発明の誘電性流体組成物と組み合わせてもよい追加の誘電性流体には、限定されない例において、天然のトリグリセリド類、例えば、ひまわり油、キャノーラ油、大豆油、パーム油、菜種油、綿実油、コーン油、ココナツ油および藻類油(algal oils);遺伝子組み換えされた天然油、例えば高オレイン酸のひまわり油および高オレイン酸のキャノーラ油;合成エステル、例えばペンタエリトリトールエステル;鉱油、例えばUniVolt(商標)電気絶縁油(ExxonMobilから入手可能);ポリアルファオレフィン、例えばポリエチレン−オクテン、−ヘキサン、−ブチレン、−プロピレンおよび/または−デカレン分岐の、500から1200Daの範囲のMn値を有するランダム共ポリオリゴマー(random co−polyoligomers);ならびにそれらの組み合わせが含まれ得る。追加の誘電性および/または非誘電性流体の含有は、特性を著しく変更する場合があり、したがって目的用途に照らしてその影響を考慮に入れるべきであることは、当業者には明らかであろう。
【0025】
本発明の誘電性流体組成物の利点の中で、それらが生分解可能であり、再生可能資源から得られることは、一般には環境に優しいと分類される。さらに、それらの比較的高い燃焼点のおかげで、それらは一般に多くのそれら誘電体の競合相手よりも引火性が低い。それらは、絶縁システムの寿命を延長するのに役に立ち得る、優れた熱および加水分解安定特性も示す。
【実施例】
【0026】
実施例1(12−HMS/2−エチル−1−ヘキサノール/塩化オクタノイル)
1日目:164.75グラム(g)の2−エチル−1−ヘキサノールを1000ミリリットル(mL)の三つ口丸底フラスコへ量り入れる。凝縮装置、ディーン・スターク・トラップ(Dean Stark Trap)、サーモウォッチ(thermowatch)温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機、栓およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。ナトリウム(Na)金属のキューブの半分(〜0.102g、平板化し、小片に切り分ける)をフラスコに加える。温度を60℃まで上げる。45分後Naは溶解する。100.23gの12−HMSをフラスコに加える。断熱材をフラスコに巻き付ける。温度を160℃まで上げる。メタノール塔頂留出物を回収する。反応を、6時間混合し、一晩継続させる。
【0027】
2日目:7時間後、GCで反応が完了したことを確認し、加熱を停止する。反応混合物が室温に戻ったら、100mLのトルエンを加える。試料を分液漏斗に入れ、各50mLの1N HClで3回洗い、Naを中和する。水層を捨てる。有機層は濁っており、500mLの三角フラスコに入れる。硫酸マグネシウム(MgSO)無水粉末を、三角フラスコに、MgSOがフラスコ内で凝集しなくなるまで加える。この時、溶液は透明である。三角フラスコに取り付けた、穴が開けられたプレートが付いたブフナー漏斗(Buchner funnel)を用いて、MgSOをろ過して除去する。トルエンおよび過剰の2−エチル−1−ヘキサノール(2−ethy−1−hexanol)を除去するために、ポンプに固定したロータリーエバポレーター(「ロタバップ(rotavap)」)を用いて試料を蒸発させる。水浴を、初め40℃に設定してトルエンを除去し、次いで90℃に上げて2−エチル−1−ヘキサノールを除去する。GCで過剰の2−エチル−1−ヘキサノールがまだあることが確認されたら、下記条件を用いて、試料をWFEへ通す。
【表2】
【0028】
3日目:塩化オクタノイル(1.1モル過剰)の追加を、初めに107.00gの生成物を500mLの三つ口丸底フラスコに量り入れることにより実施する。凝縮装置、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機、栓およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。100mLのトルエンを加える。追加の漏斗を用いて、44.87gの塩化オクタノイルを加える。1時間後、GCで反応が完了していることを確認する。
【0029】
試料に100mLのメタノールを加える。試料をロタバップに置き、トルエンおよびメタノールを除去する。GCで試料中に幾らかの溶媒がまだ存在することを確認する。次いで、先に述べたのと同じ条件を用いて、試料をWFEに流し落とす。塔頂留出物を捨てる。
【0030】
試料を冷凍庫に一晩入れ、朝に凍結していないことが分かる。酸価は、0.45mg KOH/gである。
【0031】
実施例2 12−HMS/ME−810*(*オクタン酸メチルエステルとデカン酸メチルエステルとのおおよそ50:50wt%のブレンド物)
1日目:301.41gの12−HMSを、1000mLの三つ口、丸底フラスコへ量り入れる。凝縮装置、ディーン・スターク・トラップ、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。410.90gのME−810酸を加える。反応を170℃に加熱し、GPCで反応の進行を完了まで監視する。反応を、連続流および下記条件を用いてWFEに通す。底部(生成物)を回収し、塔頂留出物は捨てる。
【表3】
生成物は、主として固形物で一部液体であり、変圧器流体用途のためには許容されないと考えられる。
【0032】
実施例3 12−HMS/2−エチルヘキサン酸
1日目:101.6gの12−HMSを、500mLの三つ口、丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、ディーン・スターク・トラップ、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機、栓およびN注入口を付け足す。132.9gの2−エチルヘキサン酸を加えて撹拌した反応を170℃に加熱する。3時間後に熱を切る。反応の進行をGPCで監視する。完了したら、下記条件を用いて生成物をWFEに通す。塔頂留出物を捨てる。溶液は透明で、金黄色である。
【表4】
【0033】
実施例4 12−HMS/2−エチル−1−ヘキサノール/塩化デカノイル
1日目:400.66gの2−エチル−1−ヘキサノールを、2000mLの三つ口、丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、副生成物(bi−product)を回収するためのディーン・スターク・トラップ、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機およびN注入口を付け足す。撹拌した反応にNa金属(0.411g、平板化し、小片に切り分ける)を加え、60℃に加熱する。1時間後ナトリウムは溶解する。300.54gの12−HMSをフラスコに加え、160℃に加熱する。反応を一晩混合する。2日目、3日目を通して反応が続く。
【0034】
4日目:GCで反応が完了したことを確認し、2mLの12N HClで室温で反応を中和する。2000mLの枝付き三角フラスコおよびろ紙を付けた150−gのブフナー漏斗を用いて試料をろ過する。試料は、非常に明るい橙色である。過剰の2−エチル−1−ヘキサノールを除去するために、試料を真空で蒸発させる。GCで過剰の2−エチル−1−ヘキサノールがまだあることが確認されたら、下記条件を用いて試料をWFEに通す。
【表5】
【0035】
GPC分析により二量体種の存在が判明し、その生成物を下記の条件下でWFEによって除去する。
【表6】
【0036】
GC分析により、所望の物質のみが蒸留物または塔頂留出物画分中に分離されていることが分かり、この生成物350.12gを、2000mLの三つ口、丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機およびN注入口を付け足す。撹拌した反応に、反応の温度が50℃以下に維持されるような速度で177.32gの塩化デカノイル(1.1モル過剰)を滴下して加える。反応は、加熱せずに撹拌を一晩継続させる。GC分析で反応が完了したことを確認する。
【0037】
35gのメタノールを加えて過剰の酸塩化物を失活させ、試料をロタバップに置いてメタノールを除去する。試料は、透明で、暗い橙色である。試料をWFEに通して残ったあらゆる酸を除去することを決める。WFEは、最初のWFE蒸留と同じ条件を用いてセットする。塔頂留出物を捨てる。
【表7】
378.12gの試料を、1000mLの三つ口、丸底フラスコに入れる。サーモウォッチ温度調節器付き温度計およびオーバーヘッド機械式撹拌機を付け足す。42gのケイ酸マグネシウムを撹拌した反応に加え、次いで反応を1時間70℃に加熱する。次いで試料を冷却し、細孔径1マイクロメートル(um)のろ紙を付けた90ミリメートル(mm)精密ろ過装置を用いてろ過する。最終生成物の酸価は、0.05mg KOH/1gとなることが分かる。
【0038】
実施例5(12−HMS/2−エチル−1−ヘキサノール/塩化2−エチルヘキサノイル)
1日目:514gの2−エチル−1−ヘキサノールを、2000mLの三つ口丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、ディーン・スターク・トラップ、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機、栓およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。Na金属(平板化し、小片に切り分ける)のキューブ1つの量をフラスコに加える。温度を60℃に上げる。45分後Naは溶解する。300gの12−HMSをフラスコに加える。断熱材をフラスコに巻き付ける。温度を160℃に上げる。反応を6時間混合し、一晩継続させる。2日目、3日目を通して反応が続く。
【0039】
4日目、4時間後、GCで反応が完了していることを確認する。12mLのメタノールが回収される。反応を冷却する時に、100mLの脱イオン(DI)水(HO)を加え、150mLの1N HClで中和する。水洗浄を3回行い、分液漏斗を用いて分離する。水層を捨てる。有機層を、2000mLの三角フラスコに入れる。三角フラスコにMgSO無水粉末を、MgSOがフラスコ内で凝集しなくなるまで加える。溶液は、まだ非常に濁っている。セライト(Celite)を用いて用意したカラムをセットし、溶液にトルエンを加え、溶液をセライトカラムに流し込む。この時、溶液は透明である。トルエンおよび過剰の2−エチル−1−ヘキサノールを除去するために、試料をロタバップを用いて真空中で蒸発させる。水浴を、初め40℃に設定してトルエンを除去し、次いで温度を90℃に上げて2−エチル−1−ヘキサノールを除去する。326.81gが回収される。GCで過剰の2−エチル−1−ヘキサノールが残っていることが確認されたら、下記条件を用いて試料をWFEに通す。
【表8】
【0040】
塩化2−エチルヘキサノイル(1.2モル過剰)の追加を、以下に述べるようにバッチ式で実施する。
【0041】
バッチ1:80.77gの生成物を、500mLの三つ口丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機、栓およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。130mLのトルエンを加える。追加の漏斗を用いて、36.72gの塩化2−エチルヘキサノイルを加える。1時間後、塩化2−エチルヘキサノイルを加え、熱を120℃に上げる。1時間後、GCで反応が完了していることを確認する。反応を停止し、とっておく。
【0042】
バッチ2:80.04gの生成物を、500mLの三つ口、丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。130mLのトルエンを加える。追加の漏斗を用いて、39.9gの塩化2−エチルヘキサノイルを加える。1時間後、塩化2−エチルヘキサノイルを加え、熱を120℃に上げる。1時間後、GCで反応が完了していることを確認する。反応を停止し、とっておく。
【0043】
バッチ3:132.12gの生成物を、500mLの三つ口、丸底フラスコに量り入れる。凝縮装置、サーモウォッチ温度調節器付き温度計、オーバーヘッド機械式撹拌機およびN注入口を付け足す。撹拌機のスイッチを入れる。150mLのトルエンを加える。追加の漏斗を用いて、69.93gの塩化2−エチルヘキサノイルを加える。1時間後、塩化2−エチルヘキサノイルを加える。反応は、一晩加熱せずに撹拌を継続させる。翌日、GCで反応が完了していることを確認する。
【0044】
3つのバッチ全てを、2000mLの三つ口、丸底フラスコ内で混合する。温度計およびオーバーヘッド機械式撹拌機を付け足す。試料に300mLのメタノールを加える。撹拌機を開始する。試料を30分間混合させる。試料をロタバップに置き、トルエンおよびメタノールを除去する。431.04gが回収される。酸価を試験し、5.39mg KOH/gになることが分かる。フラスコおよび撹拌機に、50.65gの水酸化ナトリウム(NaOH)ペレットを加えて、試料を一晩撹拌する。翌日、500mLのヘキサンを加え、シリカゲル60(silica 60 gel)で4分の1を満たしたカラムに試料を流し込む。試料が通り抜けたら、各100mLのヘキサンの2分取分でカラムをすすぐ。ロタバップ後、357.78gが回収される。任意の過剰な溶媒を除去するための先の条件と同じ条件を用いて、試料をWFEに流し落とす。塔頂留出物を捨てる。
図1