(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
結晶性酸化チタンが結晶面(110)及び結晶面(111)を有するルチル型酸化チタン及び/又は結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するルチル型酸化チタンである請求項1に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の製造方法。
遷移金属化合物担持酸化チタン濃度を10重量%に調整した場合、その粘度(22.5℃における)が5〜25mPa・sである請求項1〜4の何れか1項に記載の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液]
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、結晶性酸化チタンに遷移金属化合物が担持されてなる、平均アスペクト比(長径/短径)が1.5以上の遷移金属化合物担持酸化チタンの懸濁液であって、前記遷移金属化合物担持酸化チタンを4重量%以上含有する場合、その懸濁液の上澄み液の電気伝導度は300μS/cm以下であることを特徴とする。
【0018】
遷移金属化合物担持酸化チタンを懸濁する溶媒としては、例えば、水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトン等)、及びこれらの混合物等の親水性溶媒を挙げることができる。本発明においては、なかでも安全性に優れ、取り扱いが容易である点で水を使用することが好ましい。
【0019】
遷移金属化合物担持酸化チタンの平均アスペクト比(長径/短径)は1.5以上であり、好ましくは1.5〜100、より好ましくは1.5〜50、特に好ましくは1.5〜20、最も好ましくは2〜15である。平均アスペクト比が上記範囲を下回ると、酸化反応場と還元反応場の分離性が低下し、逆反応や副反応の進行が避けられなくなり、光触媒能が低下するため好ましくない。
【0020】
本発明において平均アスペクト比は、下記方法で調製したサンプルについて、電界放出型走査電子顕微鏡(商品名「FE-SEM JSM-6700F」、日本電子(株)製、加速電圧:15kV、WD:約3mm、倍率:20万倍)を使用して結晶粒子をランダムに観察し、代表的な3カ所を抽出し、抽出されたSEM写真全体の中で、見た目に極端に大きく又は小さくなく、平均的な大きさの粒子を中心に輪郭がはっきりしている粒子30個を抽出してOHPシートに写し、それらの粒子について、画像解析ソフトウェア(商品名「WinROOF Version5.6」、三谷商事(株)製)を用いて長径(最大長径)及び短径(最大長径に直交する幅)を求め、それらの比を平均した値である。
<サンプル調製方法>
1.遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液20gを常圧下、105℃で1時間乾燥して、遷移金属化合物担持酸化チタン(粉体)を得る。
2.得られた粉体の少量(耳かきサイズのスパチュラで半分程度の量)を9mLのガラス製サンプル瓶に入れ、エタノールを7mL入れ、超音波洗浄器にて超音波を5分間かけて、粉体をエタノール中に分散させエタノール分散液を得る。
3.得られたエタノール分散液をガラス製スポイドで1滴取り、SEM用試料台の上に落として自然乾燥させた後、30秒間白金蒸着を行う。
【0021】
前記結晶性酸化チタンとしては、例えば、ルチル型、アナターゼ型、ブルッカイト型酸化チタン等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、安定な結晶面が露出している点でルチル型又はアナターゼ型酸化チタン(より優れた光触媒能を発揮することができる点でルチル型酸化チタンが更に好ましく、特に好ましくは結晶面(110)及び結晶面(111)を有するルチル型酸化チタン及び/又は結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するルチル型酸化チタン)が好ましい。
【0022】
遷移金属化合物は、例えば、遷移金属イオン、遷移金属単体、遷移金属塩、遷移金属酸化物、遷移金属水酸化物、又は遷移金属錯体の状態で担持される。遷移金属化合物の担持量としては、例えば50ppm以上、好ましくは100ppm以上、更に好ましくは200ppm以上、特に好ましくは300ppm以上、最も好ましくは500ppm以上である。遷移金属化合物の担持量の上限は、例えば5000ppm程度、好ましくは3000ppm、特に好ましくは2000ppmである。遷移金属化合物の担持量が上記範囲を下回ると、可視光応答性が低下する傾向がある。一方、遷移金属化合物の担持量が上記範囲を上回ると、注入電子の逆電子移動等により励起電子が有効に作用せず、光触媒能が低下する傾向がある。
【0023】
前記遷移金属化合物は、結晶性酸化チタンの表面に面選択的に担持されることが、酸化反応と還元反応の反応場の分離性をより高めることができ、それにより励起電子とホールの再結合を抑制し、逆反応の進行を抑制することができ、光触媒活性を飛躍的に向上できる点で好ましく、特に、酸化反応面に選択的に遷移金属化合物が担持されていることが好ましい。
【0024】
尚、本発明において遷移金属化合物が「面選択的に」担持とは、遷移金属化合物の50%を超える量(好ましくは70%以上、特に好ましくは80%以上)が結晶性酸化チタンの2面以上の結晶面のうち、全ての面ではなく、特定の面(例えば、特定の1面又は2面等)に担持されていることをいう。尚、面選択率の上限は100%である。面選択性は、透過型電子顕微鏡(TEM)やエネルギー分散型蛍光X線分析装置(EDX)を使用し、各結晶面上の遷移金属化合物由来のシグナルを確認することで判定することができる。
【0025】
遷移金属化合物としては、可視光領域に吸収スペクトルを有し、励起状態で伝導帯に電子を注入することができるものであればよいが、本発明においては、周期表第3〜第11族元素化合物が好ましく、なかでも周期表第8〜第11族元素化合物、特に好ましくは鉄化合物又は白金化合物、最も好ましくは三価の鉄化合物(Fe
3+)である。三価の鉄化合物(Fe
3+)は酸化チタンに吸着しやすく、二価の鉄化合物(Fe
2+)は吸着しにくい特性を有するため、その特性を利用することにより容易に面選択的に担持することができるからである。
【0026】
前記遷移金属化合物担持酸化チタンの比表面積は、例えば10m
2/g以上である。比表面積の下限は、好ましくは30m
2/g、より好ましくは50m
2/g、特に好ましくは60m
2/g、最も好ましくは70m
2/gである。比表面積の上限は、例えば200m
2/g、好ましくは150m
2/g、特に好ましくは100m
2/gである。
【0027】
前記遷移金属化合物担持酸化チタンの比表面積は、例えば10〜200m
2/g、好ましくは10〜150m
2/g、より好ましくは30〜150m
2/g、更に好ましくは50〜100m
2/g、特に好ましくは60〜100m
2/g、最も好ましくは70〜100m
2/gである。比表面積が上記範囲の遷移金属化合物担持酸化チタンは、高活性面の露出量が多くなるため、優れた光触媒能を発揮することができる。
【0028】
前記比表面積は、遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液20gを常圧下、105℃で1時間乾燥して、遷移金属化合物担持酸化チタン(粉体)を得、得られた粉体を測定セルに入れ、100℃(真空下)で60分間脱気して得られるサンプルについて、高速比表面積・細孔径分布測定装置(商品名「NOVA-1200」、Quantachtome.Co製)を使用して下記条件下でサンプルを換えて2回測定して得られた値の平均である。
【0029】
<比表面積測定条件>
測定原理:定容法(ブランク補正型)
検出法:相対圧力(圧力トランスデューサによるサンプルセル内の吸着平衡圧力(P)と飽和蒸気圧(P
0)の比)と吸着ガス量(圧力トランスデューサによる圧力検出とサーミスタによるマニホールド温度検出から理想気体での注入ガス量を計算)
吸着ガス:窒素ガス
セルサイズ:スモールペレットセル(セル容量:1.8cm
3、ステム外径:9mm)
測定項目:P/P
0=0.1、0.2、0.3の吸着側3点
解析項目:BET多点法による比表面積
【0030】
また、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は高分散された遷移金属化合物担持酸化チタンを含有する。遷移金属化合物担持酸化チタンの平均粒子径は、例えば20μm以下程度(例えば、1〜20000nm)が好ましく、更に好ましくは20〜20000nm、特に好ましくは50〜5000nm、最も好ましくは100〜1500nmである。平均粒子径が上記範囲の遷移金属化合物担持酸化チタンは、高活性面の露出量が多くなるため、優れた光触媒能を発揮することができる。
【0031】
前記平均粒子径は、下記方法により調整されたサンプルについて、レーザー回折式粒度分布測定装置(商品名「SALD-2000J」、島津製作所製)を使用して得られた値である。尚、本発明における平均粒子径とは、存在する最小の粒子(一次粒子径)のサイズの平均値ではなく、凝集・会合等により生じた二次粒子を含む全粒子のサイズの平均値である。
<サンプルの調製方法>
1.遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を高速遠心分離機(商品名「HP−301」、ベックマン・コールター社製)で処理(40000Gで1時間)して上澄み液を採取し、これをサンプルの希釈用に使用する。
2.遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を前記上澄み液で吸光度が0.05〜0.08の範囲に入る濃度まで希釈し、これを測定セルに入れて粒度分布を測定する。相対屈折率はルチル型酸化チタン2.750に設定する。
尚、上記2における希釈には、上記1に記載の上澄み液に代えてクロスフロー方式で膜濾過した際に得られる透過液(電気伝導度300
μS/cm以下のもの)を使用しても良い。
【0032】
また、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、前記遷移金属化合物担持酸化チタンを4重量%以上含有するように調整した場合、その上澄み液の電気伝導度は300μS/cm以下(例えば0.5〜300μS/cm、好ましくは0.5〜250μS/cm、特に好ましくは1〜200μS/cm)である。
【0033】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、上澄み液の電気伝導度が上記範囲であるため、イオン性不純物の含有量が極めて低く(イオン性不純物の含有量は、例えば0.01〜5000ppm程度、好ましくは1〜3000ppm)、優れた光応答性を有する。
【0034】
更に、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の上澄み液のpHは3以上であることが好ましく、更に好ましくは3〜7、特に好ましくは3〜6、最も好ましくは3〜5.5である。上澄み液のpHが上記範囲を下回ると、担持されている遷移金属化合物が溶出し易くなり、可視光応答性が低下する傾向がある。上澄み液のpHは、例えば、アンモニア等による中和や、クロスフロー方式による膜濾過の洗浄度合いを調整することにより調整することができる。
【0035】
尚、本発明において遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の上澄み液とは、遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を高速遠心分離機(遠心効果:40000Gで60分)により分離して得られる上澄み液である。
【0036】
また、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、上記の平均粒子径を有する遷移金属化合物担持酸化チタンを含有するため粘度が高く、例えば、遷移金属化合物担持酸化チタン濃度を10重量%に調整した場合、その粘度(22.5℃における)は、例えば5〜25mPa・s、好ましくは5〜15mPa・s、特に好ましくは5〜10mPa・s、最も好ましくは6〜10mPa・sである。遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の濃度の調整は溶媒で希釈又は濃縮[溶媒を減圧留去する方法、膜濃縮する方法(例えば、中空糸型濾過膜やチューブラー膜を使用した限外濾過法)等]により行うことができる。
尚、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の粘度は、回転粘度計(B型粘度計、TOKIMEC BM型、東京計器(株)製)を使用し、110mLのガラス製サンプル瓶に22.5℃に調整した懸濁液100mL(液高さ:90mm)を入れ、ローターNo.1(60rpm)で測定した値である。
【0037】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、上記の平均粒子径を有する遷移金属化合物担持酸化チタンを含有し、上記の粘度を有するため、極めて優れた分散安定性を有し、調整後1週間静置(25℃、60%RH条件下)しても、沈降することなく高分散性を維持することができる。
【0038】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は上記特性を有するため、極めて優れた光応答性を発揮することができる。すなわち、紫外線域から可視光線域までの広い波長範囲の光に対する応答性を有する。そのため、太陽光や白熱灯、蛍光灯、LED等の通常の生活空間における光を吸収して、高い触媒活性を発揮して有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することができ、抗菌(細菌、放線菌、菌類、藻類などの殺菌・殺藻)、防かび、脱臭(例えば、アンモニア、アミン類、メチルメルカプタン、硫化水素などの硫黄含有物質、酢酸、アルデヒド類、エチレンなどの悪臭ガスの脱臭)、大気浄化、水質浄化、防汚などさまざまな効果を発揮することができる。また、本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、必要に応じてバインダー、溶剤、分散剤、増粘剤、界面活性剤等を混合した状態で塗布又は混合することにより、被塗布体又は被混合物に前記効果を付与することができる。
【0039】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の被塗布体、及び被混合物としては、例えば、建材、建物外装、建物内装、建築用塗料、壁、壁紙、床、窓枠、窓ガラス、結晶化ガラス、ガラス、網戸、雨樋、日射熱反射シート、郵便受け箱、構造部材、舗装材料、表示板、交通標識、道路標識反射板、ディスプレイパネル、ディスプレイフィルター、路面表示材、道路用化粧板、フェンス、門扉、トンネル用・道路用照明装置、遮音壁、ガードレ−ル、トンネル内装、道路用ミラー、ビニールハウス天井内面、橋梁、橋梁の転落防止柵、自動車・列車・船の内外装及び塗装、車両用ホイール、鉄道車両の構体、車輛用部品、機械装置や物品の外装・防塵カバー・塗装、各種表示装置、広告塔、碍子、太陽光パネル、太陽電池カバー、太陽熱温水器集熱カバー、燃料電池、光ファイバー、車両用照明灯のカバー、漁網、ロープ、ホース、船底部材、防藻材、靴、カバン、ブラインド、カーテン、壁布、衝立、障子、プラスチック障子、襖、合成皮革、テーブルクロス、衣類、レインコート、文房具、本、ノート、紙、ダンボール、乗り物や家電などの各種プラスチックスボディー、玩具、スポーツ用具、楽器、釣具、車内アクセサリー、プラスチック容器、カード類、テント、材木・柱・天井板・板壁などの建築用材、家具、プリント合板、内装用ボード、造花、観葉植物、人工植物、プール・風呂・河川・海・工場排水・生活排水・地下水・池・人工河川等の水処理用充填剤、鏡、洗面用ボウル、タイル、タイルの目地、浴槽、浴室部材、トイレ用床仕上げ材、院内感染防止用病院内部材、窯業系多機能材、釉薬、冷蔵庫内外壁、台、キッチンパネル、流し台、レンジ、加熱調理容器、換気装置、空調、熱交換器、各種フィルター、便器、繊維、不繊布、マスク、衣類、寝具、帽子、ヘルメット、玄関マット、絨毯、医療器具、食品、フォーク、ナイフ、スプーン、食器、包装材、食品用ラップ、食品保存容器、食器洗浄装置、浄水器、生ゴミ処理装置、メラミン化粧板、カーペット、照明装置、照明器具、照明灯、照明傘、ブラックライト、防汚塗料、フィルター、農業用ビニールフィルムなど各種フィルム・シート、超親水性フィルム、防草シート、電子部品、電気製品、電気機器、コロナ帯電器、プラズマ発生装置、オゾン発生装置、露光装置、加湿器、ハンドドライヤー、頭皮ケア装置、電気掃除機、電話機、携帯端末、携帯機器、タッチパネル表示器、有機ELデバイス・ディスプレイパネル、インクジェット記録装置、空気清浄機、冷凍機器、集塵器、装飾品、機械部品、磁気ディスク、ショーケース、計器用カバーガラス、カメラ、メガネ、カメラのレンズ、メガネのレンズ、コンタクトレンズ、ホワイトニング剤、歯科・口腔用材料、歯牙漂白材、インプラント、口腔用器具、化粧品、シャンプー等を挙げることができる。
【0040】
(遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の製造方法)
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、例えば、結晶性酸化チタン懸濁液に遷移金属化合物を含浸させて得られた粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を、クロスフロー方式による膜濾過に付すことにより製造することができる。クロスフロー方式による膜濾過に付した後は、希釈、濃縮等の処理を施しても良い。
【0041】
(クロスフロー方式による膜濾過)
前記クロスフロー方式による膜濾過とは、濾過膜面に平行に被処理水を流し、濾滓の沈着による濾過膜汚染を防ぎながら被処理水の一部を、被処理水の流れの側方で濾過する方法である。上記粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液をクロスフロー方式による膜濾過に付すことにより、濾過膜表面に圧密化された濾滓を形成することなくイオン性不純物を効率よく取り除くことができ、遷移金属化合物担持酸化チタンの結晶構造を維持しつつ、イオン性不純物の含有量を極めて低く低減することができる。
【0042】
クロスフロー方式による膜濾過に付す粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の濃度は、例えば0.1〜40重量%程度(好ましくは0.1〜30重量%)である。粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の濃度が上記範囲を外れると、イオン性不純物の除去効率が低下する傾向がある。また、粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の濃度が上記範囲を上回る場合は、粘度が高くなりすぎ、ファウリング(目詰まり)し易くなる。
【0043】
粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液をクロスフロー方式による膜濾過に付すと、イオン性不純物が透過液と共に分離除去され、濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液が得られる。
【0044】
濃縮倍率は1〜400倍程度(なかでも1〜20倍、特に1〜10倍)に調整することが好ましい。濃縮倍率が上記範囲を上回ると、膜面への付着物質の堆積抑制が困難となり、遷移金属化合物担持酸化チタンの圧密化を防止することが困難となる傾向がある。また、膜面への付着物質の堆積により濾過膜にファウリング(目詰まり)が発生することにより、膜寿命が低下し易くなり、逆洗浄を頻繁に行う必要が生じたり、濾過処理が運転不能となる場合が生じる等、濾過速度が低下し易くなる傾向もある。一方、濃縮倍率が上記範囲を下回ると、イオン性不純物の分離効率が低下し、洗浄水の使用量が増加する傾向がある。
【0045】
前記濃縮倍率は、例えば、濾過圧力、粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の膜面線速(クロスフロー速度)等をコントロールすることにより調整することができる。濾過圧力は、例えば0.001〜5.0MPa程度、好ましくは0.005〜3MPa、特に好ましくは0.01〜2.0MPaである。
【0046】
また、粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を含む供給液の膜面線速は大きいほど膜面への付着物質の堆積が抑制され、高い濾過流束(フラックス)が得られる。膜面線速(クロスフロー速度)は、例えば0.02m/s以上、3m/s未満、好ましくは0.05m/s以上、1.5m/s未満である。
【0047】
クロスフロー方式による膜濾過を経て濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、水を加えて遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の濃度が上記範囲となるように希釈し、再びクロスフロー方式により膜濾過する操作を繰り返すことが好ましい。それにより、ファウリング(目詰まり)等による濾過膜の負荷を軽減し、濾過膜の寿命を向上させつつイオン性不純物の含有量を極めて低く低減することができる。
【0048】
図1は、粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液のクロスフロー方式による膜濾過の一例(循環型膜濾過方式)を示す概略図である。仕込みタンクに仕込まれた粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を含む供給液は、クロスフロー濾過方式で膜濾過され、濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液(濃縮液)が得られる。濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、再度、仕込みタンクへ循環し、希釈用の水(希釈用水)で希釈され、クロスフロー濾過方式で膜濾過される。
【0049】
クロスフロー方式による膜濾過に使用する濾過膜としては、例えば、限外濾過膜、精密濾過膜、ナノフィルター、逆浸透膜等を挙げることができる。本発明においては、なかでも、分離性能に優れる点で限外濾過膜を使用することが好ましい。
【0050】
限外濾過膜としては、平均細孔径が1〜20nm程度(好ましくは、1〜10nm)であり、分子量1000〜300000程度(好ましくは、1000〜50000)、平均粒子径が1〜10nm程度の物質を分離することができるものを使用することが好ましい。
【0051】
限外濾過膜の膜形状としては、例えば、中空糸型濾過膜、チューブラー膜、スパイラル膜、平膜等の何れであっても良いが、逆洗浄が比較的容易に行える点から、中空糸型濾過膜、又はチューブラー膜を使用することが好ましい。
【0052】
中空糸型濾過膜における中空糸膜の内径は、汚染物質の閉塞の防止、膜モジュールへの中空糸充填率の向上という観点から、0.1〜2.0mm程度(好ましくは、0.5〜1.5mm)である。
【0053】
濾過膜の材質としては、例えば、酢酸セルロース、ポリアクリロニトリル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セラミックなどの一般的な材質を挙げることができる。本発明においては、なかでも、酢酸セルロース、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリアクリロニトリル、芳香族ポリアミドが好ましい。
【0054】
中空糸型濾過膜を使用する場合、粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を流す方法(濾過方式)としては、内側(中空糸膜の内側)に粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を含む供給液を流し、外側(中空糸膜の外側)に向けて透過水が流れる方式(内圧濾過方式)と、その逆に外側に粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を含む供給液を流し、内側に向けて透過水が流れる方式(外圧濾過方式)が挙げられる。本発明においては、なかでも、膜面流速を高く維持できる点で内圧濾過方式が好ましい。
【0055】
クロスフロー方式による膜濾過においては、濾過膜面への付着物質の堆積を防止して濾過膜への負担を軽減し、長期間膜濾過運転を行うため、濾過膜に対し洗浄水により間欠的な逆洗浄を施すことが好ましい。逆洗浄は圧力及び流速を制御しつつ予め定められた周期で行うことが好ましい。
【0056】
逆洗浄の圧力としては、例えば0.01〜3.0MPa程度であり、好ましくは0.01〜2.0MPa、特に好ましくは0.01〜1.0MPa、最も好ましくは0.01〜0.5MPa、さらに好ましくは0.05〜0.5MPaである。また、逆洗浄の流速としては、例えば0.01〜10kg/mim程度、好ましくは0.05〜5kg/mim、特に好ましくは0.1〜5kg/mim[或いは、例えば1×10
-7〜2×10
-4m/sec程度、好ましくは8×10
-7〜9×10
-5m/sec、特に好ましくは1×10
-6〜9×10
-5m/sec]である。逆洗浄の頻度としては、例えば0.5〜3時間に1回程度行うことが好ましい。逆洗浄の時間は0.5〜10分程度が好ましい。
【0057】
なお、逆洗浄に用いる洗浄水としては、水(例えば、精製水、蒸留水、純水、イオン交換水等)を使用することが好ましい。また、逆洗浄により膜通過した洗浄水は、濃縮された遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の希釈用の水として再利用することが好ましい(
図2参照)。
【0058】
クロスフロー方式による膜濾過は、透過液の電気伝導度が300μS/cm以下(例えば0.5〜300μS/cm、好ましくは0.5〜250μS/cm、特に好ましくは1〜200μS/cm)となるまで繰り返し行うことが好ましい。クロスフロー方式による膜濾過を透過液の電気伝導度が上記範囲となる前に終了すると、イオン性不純物(特に、鉄イオン、塩素イオン)の除去が不十分となる場合がある。
【0059】
(粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液の調製方法)
ここで、クロスフロー方式による膜濾過に付す粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、例えば結晶性酸化チタン懸濁液に遷移金属化合物を含む溶液を添加して含浸させることにより得られる。
【0060】
前記結晶性酸化チタン懸濁液は、特に制限されることが無く周知慣用の方法で製造することができ、例えばロッド状ルチル型酸化チタン懸濁液は、チタン化合物を水性媒体(例えば水、又は水と水溶性有機溶媒との混合液)中で水熱処理[例えば100〜220℃、2〜48時間(好ましくは2〜15時間、特に好ましくは5〜15時間)]することにより合成することができる。また、水熱処理の際にハロゲン化物を添加及び/又は撹拌(例えば、撹拌所要動力Pv値:0.1〜1500W/m
3程度)すると、得られる粒子のサイズ及び表面積を調整することができるため好ましい。
【0061】
前記チタン化合物としては、3価のチタン化合物、4価のチタン化合物を挙げることができる。3価のチタン化合物としては、例えば、三塩化チタンや三臭化チタンなどのトリハロゲン化チタン等を挙げることができる。本発明における3価のチタン化合物としては、安価且つ入手が容易な点で三塩化チタン(TiCl
3)が好ましい。
【0062】
また、本発明における4価のチタン化合物は、例えば、下記式(1)で表される化合物等を挙げることができる。
Ti(OR)
tX
4-t (1)
(式中、Rは炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示す。tは0〜3の整数を示す)
【0063】
式(1)中のRにおける炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル等のC
1-4脂肪族炭化水素基等を挙げることができる。
【0064】
式(1)中のXにおけるハロゲン原子としては、塩素、臭素、ヨウ素等を挙げることができる。
【0065】
このような4価のチタン化合物としては、例えば、TiCl
4、TiBr
4、TiI
4などのテトラハロゲン化チタン;Ti(OCH
3)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Cl
3、Ti(OC
4H
9)Cl
3、Ti(OC
2H
5)Br
3、Ti(OC
4H
9)Br
3などのトリハロゲン化アルコキシチタン;Ti(OCH
3)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Cl
2、Ti(OC
4H
9)
2Cl
2、Ti(OC
2H
5)
2Br
2などのジハロゲン化ジアルコキシチタン;Ti(OCH
3)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Cl、Ti(OC
4H
9)
3Cl、Ti(OC
2H
5)
3Brなどのモノハロゲン化トリアルコキシチタン等を挙げることができる。本発明における4価のチタン化合物としては、安価且つ入手が容易な点で、テトラハロゲン化チタンが好ましく、特に四塩化チタン(TiCl
4)が好ましい。
【0066】
水熱処理により得られたロッド状ルチル型酸化チタン懸濁液は、周知慣用の方法、例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラムクロマトグラフィーや、これらを組み合わせた方法により精製することができる。本発明においては、なかでも、クロスフロー方式により膜濾過することが、酸化チタンの結晶構造を維持しつつ、イオン性不純物の含有量を低減することができ、粉砕処理等を施す必要がなくそのまま遷移金属化合物担持工程に付すことができ、遷移金属化合物を高担持することができる酸化チタンが得られる点で好ましい。
【0067】
前記クロスフロー方式による膜濾過は、上記粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液のクロスフロー方式による膜濾過と同様の方法により行うことができ、透過液のpHが1以上(好ましくは1〜7、特に好ましくは2〜6、最も好ましくは2〜5.5)となるまで繰り返し行うことが好ましい。クロスフロー方式による膜濾過を透過液のpHが上記範囲となる前に終了すると、イオン性不純物(特に、水素イオン、塩素イオン、チタンイオン)の除去が不十分となり、遷移金属化合物の担持が困難となる場合がある。
【0068】
上記方法で得られた結晶性酸化チタン懸濁液へ遷移金属化合物を含浸することにより粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を得ることができる。例えば、遷移金属化合物として三価の鉄化合物(Fe
3+)を担持した粗遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液は、結晶性酸化チタン懸濁液に硝酸鉄(III)、硫酸鉄(III)、塩化鉄(III)等を含む溶液を添加して含浸させることにより得られる。
【0069】
遷移金属化合物を含む溶液の濃度は、例えば0.1〜40重量%程度、好ましくは1〜40重量%である。また、含浸時間としては、例えば1分から24時間程度、好ましくは5分から10時間である。
【0070】
そして、本発明においては、遷移金属化合物を含浸する際に励起光を照射することが、大掛かりな設備などを要することなく容易に、且つ効率よく、結晶性酸化チタンの特定面に選択的に遷移金属化合物を担持することができる点で好ましい。励起光を照射すると、結晶性酸化チタンの価電子帯の電子が伝導帯に励起し、価電子帯にホール、伝導帯に励起電子が生成し、これらは粒子表面へ拡散し、各結晶面の特性に従って励起電子とホールとが分離されて酸化反応面と還元反応面とを形成する。この状態で遷移金属化合物として、例えば三価の鉄化合物の含浸を行うと、三価の鉄化合物(Fe
3+)は酸化反応面には吸着するが、還元反応面では三価の鉄化合物(Fe
3+)は二価の鉄化合物(Fe
2+)に還元され、二価の鉄化合物(Fe
2+)は吸着しにくい特性を有するため、溶液中に溶出し、結果として酸化反応面に選択的に鉄化合物(Fe
3+)が担持された鉄化合物担持酸化チタンを得ることができる。
【0071】
励起光とはバンドギャップエネルギー以上のエネルギーを有する光(例えば、紫外線)である。励起光照射手段としては、例えば、中・高圧水銀灯、UVレーザー、UV−LED、ブラックライト等の紫外線を効率よく発生させる光源を有する紫外線露光装置等を使用することができる。励起光の照射量としては、例えば0.1〜300mW/cm
2程度、好ましくは0.5〜100mW/cm
2である。
【0072】
さらに、本発明においては、含浸の際に犠牲剤を添加することが好ましい。犠牲剤を添加することにより、結晶性酸化チタンの特定の結晶面に高い選択率で遷移金属化合物を担持することができる。犠牲剤としては、それ自体が電子を放出しやすい有機化合物を使用することが好ましく、例えば、メタノール、エタノール等のアルコール;酢酸等のカルボン酸;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、トリエタノールアミン(TEA)等のアミン等を挙げることができる。
【0073】
犠牲剤の添加量は適宜調整することができ、例えば、結晶性酸化チタンの懸濁液の0.5〜20.0重量%程度、好ましくは1.0〜5.0重量%程度である。犠牲剤は過剰量を使用してもよい。
【0074】
[遷移金属化合物担持酸化チタン]
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタンは、上記遷移金属化合物担持酸化チタン懸濁液を乾燥[例えば、F.V.下(1.3kPa[A])以下)、60℃で15時間程度、又は常圧(大気圧)下、105℃で1時間程度]して得られる。
【0075】
本発明の遷移金属化合物担持酸化チタンは可視光応答性に優れ、光照射により優れた光触媒能を発揮して有害化学物質を水や二酸化炭素にまで分解することにより、抗菌、防かび、脱臭、大気浄化、水質浄化、防汚などさまざまな効果を発揮することができる。
【0076】
例えば、上記遷移金属化合物担持酸化チタン(200mg)を使用してトルエンを酸化した際に生成するCO
2量は、例えば300ppm以上である。また、メタノールを酸化した際に生成するCO
2量は、例えば500ppm以上、好ましくは600ppm以上、さらに好ましくは700ppm以上、特に好ましくは750ppm以上である。
【0077】
尚、前記トルエンを酸化した際に生成するCO
2量の測定方法は、下記の通りである。
遷移金属化合物担持酸化チタン200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス125mLを反応容器内に吹き込む。トルエンガスの遷移金属化合物担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/cm
2、光の波長:455nm)を行い、光照射開始から24時間後のCO
2の生成量を測定する。
【0078】
また、前記メタノールを酸化した際に生成するCO
2量の測定方法は、下記の通りである。
遷移金属化合物担持酸化チタン200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込む。メタノールガスの遷移金属化合物担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m
2、光の波長:455nm)を行い、光照射開始から24時間後のCO
2の生成量を測定する。
【実施例】
【0079】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0080】
実施例1
(粗酸化チタン懸濁液の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、撹拌所要動力(Pv値)1360W/m
3で撹拌しつつ、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で5時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを40℃以下まで冷却した。その後、更に、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で5時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン懸濁液(1)5650gを取り出した。
【0081】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた粗酸化チタン懸濁液(1)を純水で3倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。尚、pHはpH試験紙を使用して測定した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。その後、純水の仕込みを停止し、酸化チタン濃度を濃縮させて酸化チタン懸濁液(1-1)を得た。酸化チタン懸濁液(1-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(1)525gを得た(
図3参照)。得られた酸化チタン(1)の下記紫外線によるトルエン酸化法で評価した光触媒能は625ppm(分解率:94%)であった。
【0082】
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン懸濁液(1-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール95g(酸化チタン懸濁液の1.7重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm
2)、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(1)を得た。
【0083】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(1)を純水で3倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。その後、純水の仕込みを停止し、鉄化合物担持酸化チタン濃度を濃縮させて、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(1-1)(平均粒子径:1000nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:15重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:4.9)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0084】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、鉄化合物担持酸化チタン(1)(比表面積:77m
2/g、平均アスペクト比:6)を得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(1)の鉄化合物の含有量は800ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は734ppmであった。更に、得られた鉄化合物担持酸化チタン(1)は、結晶面(110)及び結晶面(111)を有し、前記結晶面(111)にのみ鉄化合物が担持されたロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有し、前記結晶面(001)及び結晶面(111)に鉄化合物が担持されたロッド状ルチル型酸化チタンの混合物であった。
【0085】
実施例2
(粗酸化チタン懸濁液の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、撹拌所要動力(Pv値)220W/m
3で撹拌しつつ、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン懸濁液(2)5650gを取り出した。
【0086】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた粗酸化チタン懸濁液(2)を純水で3倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。その後、純水の仕込みを停止し、酸化チタン濃度を濃縮させて酸化チタン懸濁液(2-1)を得た。酸化チタン懸濁液(2-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(2)533gを得た。得られた酸化チタン(2)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は647ppm(分解率:95%)であった。
【0087】
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン懸濁液(2-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール95g(酸化チタン懸濁液の1.7重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm
2)、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(2)を得た。
【0088】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(2)を純水で2倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。その後、純水の仕込みを停止し、鉄化合物担持酸化チタン濃度を濃縮させて鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(2-1)(平均粒子径:880nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:4.9、粘度(22.5℃における):7mPa・s)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0089】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(2)(比表面積:78m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(2)の鉄化合物の含有量は830ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は775ppmであった。
【0090】
実施例3
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が150μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例2と同様にして、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(3-1)(平均粒子径:550nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:150μS/cm、上澄み液のpH:4.9、粘度(22.5℃における):6.9mPa・s)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(3)(比表面積:78.5m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(3)の鉄化合物の含有量は890ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は795ppmであった。
【0091】
実施例4
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が100μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例2と同様にして、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(4-1)(平均粒子径:400nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:100μS/cm、上澄み液のpH:5.2、粘度(22.5℃における):6.8mPa・s)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(4)(比表面積:79m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(4)の鉄化合物の含有量は950ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は800ppmであった。
【0092】
実施例5
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が50μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例2と同様にして、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(5-1)(平均粒子径:300nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:50μS/cm、上澄み液のpH:5.2、粘度(22.5℃における):6.6mPa・s)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(5)(比表面積:80m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(5)の鉄化合物の含有量は1200ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は800ppmであった。
【0093】
実施例6
上記(鉄化合物担持処理)において、塩化鉄水溶液(35重量%)の使用量を7.5gから6.5gに変更した以外は実施例2と同様にして、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(6)を得、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(6-1)(平均粒子径:840nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:4.9)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(6)(比表面積:76m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(6)の鉄化合物の含有量は700ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は780ppmであった。
【0094】
実施例7
上記(鉄化合物担持処理)において、塩化鉄水溶液(35重量%)の使用量を7.5gから15.0gに変更した以外は実施例2と同様にして、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(7)を得、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(7-1)(平均粒子径:940nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:4.9、粘度(22.5℃における):7.4mPa・s)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(7)(比表面積:80m
2/g、平均アスペクト比:3)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(7)の鉄化合物の含有量は2000ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は753ppmであった。
【0095】
実施例8
上記(粗酸化チタン懸濁液の調製)において、反応温度(オートクレーブ内温度)を140℃から120℃に変更した以外は実施例2と同様にして、粗酸化チタン懸濁液(8)を得、得られた粗酸化チタン懸濁液(8)について、実施例2と同様に上記(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))を施したところ、酸化チタン懸濁液(8-1)を得、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(8)530gを得た。得られた酸化チタン(8)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は600ppm(CO
2発生率:90%)であった。
【0096】
その後、実施例2と同様に(鉄化合物担持処理)、(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))を施して、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(8)を得、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(8-1)(平均粒子径:800nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:5.2)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(8)(比表面積:85m
2/g、平均アスペクト比:2)を得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(8)の鉄化合物の含有量は780ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は691ppmであった。
【0097】
実施例9
上記(粗酸化チタン懸濁液の調製)において、反応温度(オートクレーブ内温度)を140℃から160℃に変更した以外は実施例2と同様にして、粗酸化チタン懸濁液(9)を得、得られた粗酸化チタン懸濁液(9)について、実施例2と同様に上記(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))を施したところ、酸化チタン懸濁液(9-1)を得、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(9)530gを得た。得られた酸化チタン(9)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は645ppm(分解率:95%)であった。
【0098】
その後、実施例2と同様に(鉄化合物担持処理)、(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))を施して、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(9)を得、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(9-1)(平均粒子径:1000nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:5.2)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(9)(比表面積:55m
2/g、平均アスペクト比:12)を得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(9)の鉄化合物の含有量は820ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は727ppmであった。
【0099】
実施例10
(粗酸化チタン懸濁液の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液5650gを容量10Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、撹拌所要動力(Pv値)13W/m
3で撹拌しつつ、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン懸濁液(10)5650gを取り出した。
【0100】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた粗酸化チタン懸濁液(10)を純水で希釈することなく、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが4.0になるまで繰り返し濾過処理に付した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。これにより、酸化チタン懸濁液(10-1)5650gを得た。酸化チタン懸濁液(10-1)を常圧下、105℃で1時間乾燥したところ、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(10)を得た。得られた酸化チタン(10)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は647ppm(分解率:95%)であった。
【0101】
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン懸濁液(10-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)7.5gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール95g(酸化チタン懸濁液の1.7重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:5mW/cm
2)、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(10)を得た。
【0102】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(10)を純水で希釈することなく、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.02MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が200μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付した。この間、1時間に1回の割合で0.1MPaの圧力、2kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。これにより、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(10-1)(平均粒子径:920nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:200μS/cm、上澄み液のpH:4.9)を得た。
【0103】
その後、常圧下、105℃で1時間乾燥して、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(10)(比表面積:76m
2/g、平均アスペクト比:5)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(10)の鉄化合物の含有量は820ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は778ppmであった。
【0104】
実施例11
(粗酸化チタン懸濁液の調製)
室温(25℃)にて、四塩化チタン水溶液(Ti濃度:16.5重量%±0.5重量%、塩素イオン濃度:31重量%±2重量%、東邦チタニウム(株)製)をTi濃度が5.6重量%になるように純水で希釈した。希釈後の四塩化チタン水溶液560gを容量1Lのタンタルライニングのオートクレーブに入れ密閉した。熱媒を用い、2時間かけて上記オートクレーブ内温度を140℃まで昇温した。その後、撹拌所要動力(Pv値)13W/m
3で撹拌しつつ、温度:140℃、圧力:その温度における蒸気圧の条件下で10時間保持した後、熱媒を冷却することによりオートクレーブを冷却した。オートクレーブ内温度が40℃以下になったことを確認して、粗酸化チタン懸濁液(11)560gを取り出した。
【0105】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(1))
得られた粗酸化チタン懸濁液(11)を純水で10倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.05MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液のpHが2.9になるまで繰り返し濾過処理に付した。その後、純水の仕込みを停止し、酸化チタン濃度を濃縮させて酸化チタン懸濁液(11-1)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.15MPaの圧力、0.1kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。酸化チタン懸濁液(11-1)を減圧下、60℃で15時間乾燥したところ、結晶面(110)及び結晶面(111)を有するロッド状ルチル型酸化チタンと、結晶面(110)、結晶面(111)及び結晶面(001)を有するロッド状ルチル型酸化チタンの混合物である酸化チタン(11)を得た。得られた酸化チタン(11)の下記紫外線によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は617ppm(CO
2発生率:93%)であった。
【0106】
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン懸濁液(11-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)0.3gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール9.6g(酸化チタン懸濁液の1.7重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:0.9mW/cm
2)、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(11)を得た。
【0107】
(クロスフロー方式による膜濾過処理(2))
粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(11)を純水で10倍に希釈して、中空糸型限外濾過膜(商品名「FS03−FC−FUS03C1」、材質:PES、公称分画分子量:3万、ダイセン・メンブレン・システムズ(株)製)を用い、室温(25℃)、濾過圧力0.05MPaにて、透過液量と同量の純水を加えながらクロスフロー方式による濾過処理を行った。濾過処理を経て得られた濃縮液は再度仕込みタンクに循環し、透過液の電気伝導度が21μS/cmになるまで繰り返し濾過処理に付した。その後、純水の仕込みを停止し、鉄化合物担持酸化チタン濃度を濃縮させて、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(11-1)(平均粒子径:800nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:5重量%、上澄み液の電気伝導度:21μS/cm、上澄み液のpH:5.2)を得た。この間、1時間に1回の割合で0.15MPaの圧力、0.1kg/minの流速で1分間逆洗浄を実施した。この逆洗浄により膜通過した洗浄水は仕込みタンクに循環した。
【0108】
その後、減圧下、60℃で15時間乾燥して、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(11)(比表面積:71m
2/g、平均アスペクト比:9)40gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(11)の鉄化合物の含有量は420ppmであった。また、下記可視光によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は416ppmであり、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は716ppmであった。
【0109】
比較例1
実施例11で得られた粗酸化チタン懸濁液(11)を高速遠心分離(20000G×60分間)し、上澄み液のpHが2.9になるまで高速遠心分離し、上澄み液抜取、純水添加、水分散の繰り返しによる水洗処理を施して
濾滓(12-1)を得た。得られた
濾滓を水に懸濁させて、平均粒子径が800nmとなるまで粉砕し酸化チタン懸濁液(12-1)(酸化チタン濃度:5重量%)を得た。
【0110】
(鉄化合物担持処理)
上記で得られた酸化チタン懸濁液(12-1)に塩化鉄水溶液(35重量%)0.3gを添加し、室温(25℃)にて30分撹拌した。その後、メタノール9.6g(酸化チタン懸濁液の1.1重量%)を添加し、100Wの高圧水銀ランプを用いて紫外線(UV)を3時間照射して(UV照射量:0.9mW/cm
2)、粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(12)を得た。
【0111】
得られた粗鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(12)を、更に、上記と同様に高速遠心分離し、上澄み液の電気伝導度が21μS/cmになるまで高速遠心分離し、上澄み液抜取、純水添加、水分散の繰り返しによる水洗処理を施して濾滓(12-2)を得た。得られた
濾滓を水に懸濁させて平均粒子径が800nmとなるまで粉砕し、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(12-1)(平均粒子径:800nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:5重量%、上澄み液の電気伝導度:21μS/cm、上澄み液のpH:5.2)を得た。
その後、減圧下、60℃で15時間乾燥して、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(12)(比表面積:220m2/g、平均アスペクト比:1.3)40gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(12)の鉄化合物の含有量は88ppmであった。また、下記可視光によるトルエン酸化法により評価した光触媒能は459ppmであり、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は491ppmであった。
【0112】
比較例2
上記(クロスフロー方式による濾過処理(2))において、透過液の電気伝導度が700μS/cmになるまで繰り返した以外は実施例2と同様にして、鉄化合物担持酸化チタン懸濁液(13-1)(平均粒子径:80000nm、鉄化合物担持酸化チタン濃度:10重量%、上澄み液の電気伝導度:700μS/cm、上澄み液のpH:2.9)を得、結晶性の鉄化合物担持酸化チタン(13)(比表面積:78m
2/g、平均アスペクト比:1.2)530gを得た。得られた鉄化合物担持酸化チタン(13)の鉄化合物の含有量は20ppmであった。また、下記可視光によるメタノール酸化法により評価した光触媒能は300ppmであった。
【0113】
<光触媒能の評価方法>
(可視光によるトルエン酸化法)
実施例及び比較例で得られた鉄化合物担持酸化チタンを光触媒として使用し、気相にてトルエンを酸化し、生成するCO
2量を測定することにより光触媒能を評価した。
鉄化合物担持酸化チタン200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。トルエンガスの鉄化合物担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5mW/cm
2、光の波長:455nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO
2の生成量(反応容器内のCO
2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)に付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0114】
(可視光によるメタノール酸化法)
実施例及び比較例で得られた鉄化合物担持酸化チタンを光触媒として使用し、気相にてメタノールを酸化し、生成するCO
2量を測定することにより光触媒能を評価した。
鉄化合物担持酸化チタン 200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、800ppmのメタノールガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。メタノールガスの鉄化合物担持酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:2.5W/m
2、光の波長:455nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO
2の生成量(反応容器内のCO
2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)を付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。
【0115】
(紫外線によるトルエン酸化法)
実施例で得られた酸化チタンを光触媒として使用し、気相にてトルエンを酸化し、生成するCO
2量を測定することにより光触媒能を評価した。
酸化チタン200mgをガラス製皿に広げて反応容器(テドラーバッグ、材質:フッ化ビニル樹脂)の中に入れ、100ppmのトルエンガス125mLを反応容器内に吹き込んだ。トルエンガスの酸化チタンへの吸着が平衡に達した後、室温(25℃)で光照射(LED、光強度:0.1mW/cm
2、光の波長:365nm)を行った。光照射開始から24時間後のCO
2の生成量(反応容器内のCO
2濃度)をメタナイザー(商品名「MT221」、GLサイエンス(株)製)を付属した水素炎イオン化検出器付きガスクロマトグラフ(商品名「GC−14B」、島津製作所製)を使用して測定した。