特許第6046772号(P6046772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046772
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】紙葉搬送装置および紙葉搬送方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 9/16 20060101AFI20161212BHJP
   B65H 5/06 20060101ALI20161212BHJP
   B65H 9/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   B65H9/16
   B65H5/06 B
   B65H9/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-122750(P2015-122750)
(22)【出願日】2015年6月18日
【審査請求日】2015年6月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000227205
【氏名又は名称】NECプラットフォームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109313
【弁理士】
【氏名又は名称】机 昌彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124154
【弁理士】
【氏名又は名称】下坂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】大井 聡
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−173683(JP,A)
【文献】 特開平5−330702(JP,A)
【文献】 特開2007−30997(JP,A)
【文献】 特開平6−329303(JP,A)
【文献】 特開2015−160403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H5/06、9/00−9/20、29/20−29/22
B41J13/076
G03G15/00
F16C13/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉に作用する搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記搬送対象の紙葉を挟持し前記搬送ローラの回転力に基づいた力を受けて回転する押圧ローラと、
前記押圧ローラに当該押圧ローラの中心軸に沿って伸長形成されているシャフト挿通孔に挿通されるローラシャフトと、
前記押圧ローラの側端面と間隔を介し、前記紙葉の搬送方向に沿うように設置され、前記搬送対象の紙葉の側端縁が当接することによって当該紙葉の搬送をガイドするガイド壁と
を備え、
前記ローラシャフトは、両端側よりも中央部が太い形状を備え、
前記押圧ローラの一方の前記側端面の側を左側とし、他方の前記側端面の側を右側とするとき、前記ガイド壁が前記左側に設置されている場合には、前記シャフト挿通孔の内壁面における前記中心軸方向の前記中央部よりも前記右側にずれた位置に、一方、前記ガイド壁が前記右側に設置されている場合には、前記シャフト挿通孔の内壁面における前記中心軸方向の前記中央部よりも前記左側にずれた位置に、凹部が形成されている紙葉搬送装置。
【請求項2】
前記凹部は、前記シャフト挿通孔の内壁面を周回する態様でもって形成されている請求項1に記載の紙葉搬送装置。
【請求項3】
複数の前記搬送ローラが前記搬送対象の紙葉を搬送する搬送方向に直交する方向に互いに間隔を介して配列されており、
前記各搬送ローラに個別に対応する前記押圧ローラが配置され、各押圧ローラにおける前記シャフト挿通孔の内壁面には同じ位置に前記凹部が形成されている請求項1又は請求項2に記載の紙葉搬送装置。
【請求項4】
複数の前記搬送ローラが前記搬送対象の紙葉を搬送する方向に互いに間隔を介して配列されており、
前記各搬送ローラに個別に対応する前記押圧ローラが配置され、各押圧ローラにおける前記シャフト挿通孔の内壁面には同じ位置に前記凹部が形成されている請求項1又は請求項2又は請求項3に記載の紙葉搬送装置。
【請求項5】
前記搬送ローラと前記押圧ローラに挟持される前の前記搬送対象の紙葉に前記ガイド壁に向かう方向の力を作用する補正ローラがさらに備えられている請求項1乃至請求項4の何れか一つに記載の紙葉搬送装置。
【請求項6】
回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉に作用する搬送ローラと、前記搬送ローラとの間に前記搬送対象の紙葉を挟持し前記搬送ローラの回転力に基づいた力を受けて回転する押圧ローラと、前記押圧ローラに当該押圧ローラの中心軸に沿って伸長形成されているシャフト挿通孔に挿通されるローラシャフトと、前記押圧ローラの側端面と間隔を介し、前記紙葉の搬送方向に沿うように設置され、前記搬送対象の紙葉の側端縁が当接することによって当該紙葉の搬送をガイドするガイド壁とを備えている装置における前記ローラシャフトを、両端側よりも中央部が太い形状にし、
前記押圧ローラの一方の前記側端面の側を左側とし、他方の前記側端面の側を右側とするとき、前記ガイド壁が前記左側に設置されている場合には、前記シャフト挿通孔の内壁面における前記中心軸方向の前記中央部よりも前記右側にずれた位置に、一方、前記ガイド壁が前記右側に設置されている場合には、前記シャフト挿通孔の内壁面における前記中心軸方向の前記中央部よりも前記左側にずれた位置に、凹部を形成し、
前記凹部に起因した力によって、前記搬送対象の紙葉における側端縁を前記ガイド壁に添わせながら前記搬送対象の紙葉を搬送する紙葉搬送方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローラを用いて紙葉を搬送する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
図7は、紙葉搬送装置において、紙葉を搬送する主要な構成部分の一例を説明する図である。この例においては、紙葉搬送装置は、搬送ローラ55と、押圧ローラ56とを有し、これらローラ55,56を利用して紙葉60を搬送する構成を備えている。図8は、図7における上方側から搬送ローラ55を含む構成部分を見た態様を表す図である。
【0003】
図8の例では、複数の搬送ローラ55が紙葉60を搬送する方向Aに直交する方向に互いに間隔を介して配置され、これら搬送ローラ55は共通の回転シャフト57に取り付けられている。また、搬送ローラ55が取り付けられている複数の回転シャフト57が、紙葉60の搬送方向Aに配列配置されている。回転シャフト57は、その中心軸を中心にして回転可能な状態で支持部材(図示せず)に支持されている。搬送ローラ55は、回転シャフト57と一体化しており、回転シャフト57の回転と一体的に回転する。
【0004】
さらに、複数の回転シャフト57は、例えばモータ等の駆動装置(図示せず)に共通に接続されており、駆動装置の駆動力によってその中心軸を中心にして同じ回転数でもって同方向に回転する。
【0005】
押圧ローラ56は、各搬送ローラ55に個別に対向して配置される。押圧ローラ56には、押圧機構(図示せず)によって搬送ローラ55に向かう方向の力が作用する構成となっており、その力によって押圧ローラ56は搬送ローラ55に押し付けられる。これにより、搬送ローラ55と押圧ローラ56は、搬送対象の紙葉60を挟持できる。
【0006】
上記のような搬送ローラ55と押圧ローラ56を備えた紙葉搬送装置においては、搬送ローラ55と押圧ローラ56により挟持された紙葉60は、駆動装置による搬送ローラ55の回転力を受けることにより、搬送方向Aに進行する(搬送される)。この際、その紙葉60の進行に連れて押圧ローラ56がその中心軸を回転中心にして回転する。
【0007】
ところで、紙葉60が長方形(正方形を含む)である場合に、搬送ローラ55と押圧ローラ56は、紙葉60を、その側端縁60Aと搬送方向Aがほぼ平行となる姿勢でもって搬送できることが好ましい。しかしながら、紙葉60が図8の点線に表されるように搬送方向Aに対して傾いた姿勢でもって搬送される場合がある。このような紙葉60の傾き搬送は、搬送ローラ55や押圧ローラ56の寸法ばらつき等の複数の要因に因る。
【0008】
特許文献1には、そのような紙葉の傾き搬送を防止する構成が提案されている。この提案では、紙葉搬送装置には、紙葉の傾き量(曲がり量)を検知するセンサが設けられている。また、紙葉の搬送方向に直交する方向に並設されている複数の搬送ローラ(ステアリングローラ)は、別々の駆動装置によって回転する構成となっている。さらに、紙葉搬送装置に設けられている制御装置は、センサによって検知された傾き量が無くなるように、各駆動装置における搬送ローラ(ステアリングローラ)の回転量をそれぞれ制御する。これにより、紙葉の傾きが修正される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013−67456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1における提案では、紙葉の傾きを検知するセンサと、搬送ローラを回転する複数の駆動装置とを紙葉搬送装置に設ける必要がある。これにより、特許文献1における紙葉搬送装置には、複数の駆動装置を設けることにより、搬送ローラを回転する駆動装置が1つで済む場合に比べて、構成部品が増加し、また、大型化する虞があるという問題が生じる。また、制御装置は、センサの検知結果に基づいて、各駆動装置を個別に制御する必要があるために、駆動装置の制御が煩雑化する虞がある。
【0011】
本発明は上記のような課題を解決するために考え出された。すなわち、本発明の主な目的は、部品点数の増加と装置の大型化と制御の煩雑化を抑制しつつ、紙葉が傾いた状態で搬送される傾き搬送を防止する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の紙葉搬送装置は、
回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉に作用する搬送ローラと、
前記搬送ローラとの間に前記搬送対象の紙葉を挟持し前記搬送ローラの回転力に基づいた力を受けて回転する押圧ローラと、
前記押圧ローラに当該押圧ローラの中心軸に沿って伸長形成されているシャフト挿通孔に挿通されるローラシャフトと、
前記搬送対象の紙葉の側端縁が当接することによって当該紙葉の搬送をガイドするガイド壁と
を備え、
前記ローラシャフトは、両端側よりも中央部が太い形状を備え、
前記押圧ローラにおける前記シャフト挿通孔の内壁面には、前記ガイド壁と前記押圧ローラとの位置関係に基づいて定まる位置に、凹部が形成されている。
【0013】
本発明の紙葉搬送方法は、
回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉に作用する搬送ローラと、前記搬送ローラとの間に前記搬送対象の紙葉を挟持し前記搬送ローラの回転力に基づいた力を受けて回転する押圧ローラと、前記押圧ローラに当該押圧ローラの中心軸に沿って伸長形成されているシャフト挿通孔に挿通されるローラシャフトと、前記搬送対象の紙葉の側端縁が当接することによって当該紙葉の搬送をガイドするガイド壁とを備えている装置における前記ローラシャフトを、両端側よりも中央部が太い形状にし、
前記押圧ローラにおける前記シャフト挿通孔の内壁面には、前記ガイド壁と前記押圧ローラとの位置関係に基づいて定まる位置に、凹部を形成し、
前記凹部に起因した力によって、前記搬送対象の紙葉における側端縁を前記ガイド壁に添わせながら前記搬送対象の紙葉を搬送する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、部品点数の増加と装置の大型化と制御の煩雑化を抑制しつつ、紙葉が傾いた状態で搬送される傾き搬送を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る第1実施形態の紙葉搬送装置の構成を説明する図である。
図2】本発明に係る第2実施形態の紙葉搬送装置の構成を説明する図である。
図3図2に表されている構成の側面図である。
図4】第2実施形態の紙葉搬送装置が備える押圧ローラの模式的な断面図である。
図5】押圧ローラを説明する図である。
図6】本発明に係るその他の実施形態の紙葉搬送装置の構成を説明する図である。
図7】紙葉搬送装置の主要な構成部分の一例を図8と共に説明する図である。
図8】紙葉搬送装置の主要な構成部分の一例を図7と共に説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明に係る実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
<第1実施形態>
図1(a)は、本発明に係る第1実施形態の紙葉搬送装置の構成を説明する断面図であり、図1(b)は、図1(a)に表されている構成部分の模式的な側面図である。
【0018】
第1実施形態の紙葉搬送装置は、搬送ローラ2と、押圧ローラ3と、ローラシャフト4と、ガイド壁5とを有している。搬送ローラ2は、駆動装置(図示せず)に接続され、この駆動装置の駆動力により回転するローラであり、この回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉6に作用する。
【0019】
ガイド壁5は、搬送ローラ2および押圧ローラ3の側端面と間隔を介し、搬送対象の紙葉6の搬送方向Aに沿うように設置されている。このガイド壁5は、紙葉6の側端縁が当接することによって紙葉6の搬送をガイドする機能を備えている。
【0020】
押圧ローラ3には、搬送ローラ2に押し付ける方向の力が作用する構成となっており、押圧ローラ3は、その力によって搬送ローラ2に押し付けられる。この押圧ローラ3は、搬送ローラ2との間に搬送対象の紙葉6を挟持する。また、押圧ローラ3は、その中心軸が搬送ローラ2の中心軸と平行又は略平行となるように配置されている。
【0021】
このような押圧ローラ3には中心軸に沿ってシャフト挿通孔8が伸長形成されている。ローラシャフト4は、そのシャフト挿通孔8に挿通されている。このローラシャフト4は、両端側よりも中央部が太い形状を備えている。
【0022】
さらに、押圧ローラ3におけるシャフト挿通孔8の内壁面には、凹部10が形成されている。凹部10の形成位置は、押圧ローラ3とガイド壁5の位置関係に基づいて定められた位置である。
【0023】
このような押圧ローラ3は、搬送ローラ2の回転力を受けて、その中心軸(ローラシャフト4)を中心にして回転する。
【0024】
この第1実施形態の紙葉搬送装置は上記のような構成を備えている。この紙葉搬送装置では、搬送ローラ2と押圧ローラ3に挟持された紙葉6は、搬送ローラ2の回転力を受けて搬送方向Aに進行する(搬送される)。このとき、押圧ローラ3は、その紙葉6の進行に連れて(つまり、搬送ローラ2の回転力を紙葉6を介し受けて)回転する。この押圧ローラ3のシャフト挿通孔8の内壁面には凹部10が形成されており、ローラシャフト4は凹部10の開口端縁と点状に接触する。このため、ローラシャフト4を中心にして押圧ローラ3が回転している際に、凹部10が形成されている部分の回転(転がり)抵抗は、凹部10が形成されていない場合に比べて大きくなる。これにより、凹部10の形成位置等を調整することにより、シャフト挿通孔8における回転抵抗が大きくなる部分の位置が調整される。押圧ローラ3におけるその回転抵抗が大きい部分は、他の回転抵抗が小さい部分よりも紙葉6の搬送量が小さくなる。このことに起因して、まず、紙葉6が搬送方向Aに対して傾いた姿勢となるが、この傾きによって紙葉6の側端縁がガイド壁5に当接する。この状態で、紙葉6の搬送を継続することにより、紙葉6の側端縁がガイド壁5に倣う結果、紙葉6は、傾きが修正される。
【0025】
すなわち、第1実施形態の紙葉搬送装置は、部品点数の増加と装置の大型化と制御構成の煩雑化を抑制しながら、紙葉6の傾き搬送を防止できる。紙葉6の搬送の下流側において当該紙葉6に文字を印刷する等の処理が行われる場合に、紙葉6が傾いていると、当該紙葉6に印刷された文字が傾いたり、印刷の開始位置が指定されている位置からずれるという問題が発生する。これに対し、この第1実施形態の紙葉搬送装置では、紙葉6の傾き搬送が防止されるので、そのような問題の発生を回避できる。
【0026】
<第2実施形態>
以下に、本発明に係る第2実施形態を説明する。
【0027】
図2は、第2実施形態の紙葉搬送装置の構成を簡略化して表す平面図である。図3は、図2の下方側から見た図2における構成部分を表す側面図である。第2実施形態の紙葉搬送装置20は、長方形(正方形を含む)の紙葉27を搬送方向Aに搬送する装置である。この紙葉搬送装置20は、搬送ローラ21と、回転シャフト22と、押圧ローラ23と、ローラシャフト24と、ガイド壁25とを有している。
【0028】
この第2実施形態では、搬送ローラ21は弾性材料(例えばゴム)により構成されている。また、搬送方向Aに直交する方向に複数(3個)の搬送ローラ21が互いに間隔を介し、かつ、中心軸を同軸上にして配置されており、これら搬送ローラ21の中心部には、共通の回転シャフト22が挿通されている。回転シャフト22はそれら搬送ローラ21と一体化されている。この第2実施形態では、搬送ローラ21と一体化した複数の回転シャフト22が搬送方向Aに互いに間隔を介して並設されている。また、複数の回転シャフト22は、駆動装置28に共通に接続されている。駆動装置28は、例えばモータであり、回転シャフト22が中心軸を中心にして回転する動力源である。この駆動装置28の駆動力によって、全ての搬送ローラ21は、同じ回転方向および同じ回転数でもって回転する。
【0029】
押圧ローラ23は、非弾性材料(例えばプラスチック)により構成されており、各搬送ローラ21に個別に対向して配置されている。この第2実施形態では、紙葉搬送装置20には、各押圧ローラ23を個別に収容する複数のローラケース30が設けられている。各ローラケース30は、固定部材(図示せず)に固定されている。各押圧ローラ23は、搬送ローラ21に対向している一部分がローラケース30から搬送ローラ21側に突出した状態でローラケース30に収容されている。各押圧ローラ23は、その中心軸が、対向している搬送ローラ21の中心軸と平行あるいは略平行となるように、配設される。
【0030】
図4は、押圧ローラ23を、中心軸を含む平面で切った場合における押圧ローラ23の断面図である。各押圧ローラ23には、中心軸に沿って伸びるシャフト挿通孔33が形成されている。このシャフト挿通孔33の孔径は、孔の長さ方向の位置によらずに同様である。シャフト挿通孔33にはローラシャフト24が挿通されている。この第2実施形態では、ローラシャフト24は、両端側よりも中央部が太い形状(クラウン形状)となっている。
【0031】
ローラシャフト24の両端側は、搬送ローラ21に対する遠近方向に移動可能な状態でローラケース30に支持されている。また、ローラケース30の内部には、例えばスプリング等の弾性部材(図示せず)が設けられており、この弾性部材によって、ローラシャフト24には、搬送ローラ21に向かう方向の付勢力が作用している。この付勢力は、ローラシャフト24を介して押圧ローラ23に作用し、押圧ローラ23を搬送ローラ21に押し付ける。このような押圧ローラ23は、搬送ローラ21との間に搬送対象の紙葉27を挟持する。
【0032】
この第2実施形態では、搬送ローラ21と押圧ローラ23により挟持された紙葉27は、駆動装置28による搬送ローラ21の回転力を受けることにより、搬送方向Aに進行する。また、この紙葉27の進行に連れて押圧ローラ23が回転する。この紙葉搬送装置20には、そのように搬送ローラ21と押圧ローラ23により搬送される紙葉27の紙面に添うように紙葉27の表裏両面側をガイドするガイド面31が配設されている。
【0033】
ガイド壁25は、そのガイド面31の端縁部に立設されている。当該ガイド壁25は、紙葉27を搬送する搬送方向Aに沿う壁面25Aを備えている。この第2実施形態では、ガイド壁25は、その壁面25Aに紙葉27の側端縁を添わせて紙葉27が搬送されることにより、紙葉27の搬送をガイドする。
【0034】
ところで、押圧ローラ23は、一端側から他端側にかけて同じ太さであることが好ましい。これに対し、押圧ローラ23には、製造精度に起因して、図5に表されているような寸法ばらつきが生じる。つまり、図5に表されている押圧ローラ23は、一端側(以下、説明を分かり易くするために右端側と記す)の太さが他端側(以下、左端側と記す)よりも細い(右端側の径が左端側の径よりも小さい)態様となっている。このような押圧ローラ23の寸法ばらつきは、紙葉27が搬送方向Aに対して傾いた姿勢でもって搬送される傾き搬送の原因の一つになる。この第2実施形態では、そのような押圧ローラ23の寸法ばらつきに起因した紙葉27の傾き搬送を改善する手法として、ローラシャフト24が、前述したように、両端側よりも中央部が太い形状(クラウン形状)となっている。
【0035】
つまり、紙葉27の傾き搬送を抑制するためには、押圧ローラ23は、ローラの幅方向に紙葉27に線状に接触することが好ましい。しかし、押圧ローラ23に前述したような寸法ばらつきがある場合には、当該押圧ローラ23は、紙葉27に点状に接触する虞がある。
【0036】
これに対し、ローラシャフト24がクラウン形状であることにより、ローラシャフト24の太い部分が押圧ローラ23のシャフト挿通孔33の内壁面に点接触する。そして、ローラシャフト24に付与されている弾性部材の付勢力によって、その点接触部分を基にして押圧ローラ23の外周面が搬送ローラ21の外周面に倣う。つまり、押圧ローラ23は線状に紙葉27に接触することとなる。
【0037】
しかしながら、押圧ローラ23に寸法ばらつきがある場合には、そのように押圧ローラ23が紙葉27に線状に接触できても、紙葉27を傾けて搬送してしまうことに本発明者は気付いた。つまり、押圧ローラ23において例えば図5に表されるように左端側と右端側の径が異なる場合には、ローラシャフト24は、まず、押圧ローラ23のシャフト挿通孔33の内壁面における径が大きい側において点接触する。この状態から、ローラシャフト24の左右両端側に弾性部材による同様な大きさの付勢力が作用することにより、その点接触部分から遠い側のローラシャフト24のモーメントが大きくなる結果、ローラシャフト24が傾く。そして、ローラシャフト24は、シャフト挿通孔33の内壁面における左右の中央部において点接触状態となり、この状態でもって安定する。
【0038】
しかし、この状態では、ローラシャフト24の中心軸Pから押圧ローラ23における紙葉27に接触している外周面部分までの長さは、左右で異なることとなり、これにより、押圧ローラ23における回転半径が左右で異なる。このため、搬送ローラ21の回転駆動による紙葉27の進行に連れて押圧ローラ23が回転した際に、押圧ローラ23の回転半径の小さい方における紙葉27の搬送量が回転半径の大きい方よりも小さくなる。換言すれば、紙葉27に対する押圧ローラ23の搬送負荷は、回転半径の小さい方が回転半径の大きい方よりも大きくなる。これにより、紙葉27が搬送方向Aに対して傾きながら搬送されてしまう事態が発生してしまう。
【0039】
このような事態を考慮し、本発明者は次のような構成を考え出した。すなわち、この第2実施形態では、図4に表されるような凹部(溝部)35が押圧ローラ23のシャフト挿通孔33の内壁面に当該内壁面を周回する態様でもって形成されている。この凹部35の形成位置は、押圧ローラ23の中央部よりも図4に表される左側あるいは右側にずれた位置である。このずれる方向およびずれ量は、ガイド壁25と押圧ローラ23との位置関係に基づいて定まる。また、そのずれ量や、凹部35の幅は、ローラシャフト24のクラウン形状外周面の曲率等をも考慮して設計される。
【0040】
すなわち、ローラシャフト24がシャフト挿通孔33の内壁面に線接触している状態において、シャフト挿通孔33の内壁面に凹部35が形成されていることにより、ローラシャフト24はその凹部35の開口端縁においては点接触状態となる。例えば、図4のように、凹部35がシャフト挿通孔33の中央部よりも右側にずれている場合には、凹部35の開口端縁と内壁面との点接触により、ローラシャフト24とシャフト挿通孔33の内壁面との回転(転がり)抵抗は、左側よりも右側が大きくなる。このため、押圧ローラ23の右側は左側よりも回転しづらくなり、これにより、紙葉27に対する押圧ローラ23の右側の搬送抵抗が左側よりも大きくなる。これにより、紙葉27は、押圧ローラ23によって搬送方向Aに対し右側に傾く。
【0041】
この第2実施形態では、押圧ローラ23の図4における左側にガイド壁25が配置されていることから、上記のような紙葉27の傾きにより、紙葉27の後端側がガイド壁25に当接する。この当接による反作用の力が紙葉27に作用している状態で、紙葉27の搬送を継続することにより、紙葉27の左側端縁がガイド壁25に倣っていき、結果として、紙葉27は、傾きが修正される。
【0042】
このように、紙葉搬送装置20は、押圧ローラ23のシャフト挿通孔33の内壁面に設けた凹部35と、ガイド壁25とにより、紙葉27の傾きを修正することができる。その凹部35の形成位置は、具体的には、押圧ローラ23とガイド壁25との位置関係に基づいて、例えば、実験やシミュレーション等により次のように定められる。つまり、紙葉27の後端側からガイド壁25に倣わせたい場合であって、押圧ローラ23よりも左側にガイド壁25が配置されている場合には、凹部35は、シャフト挿通孔33における中央部よりも右側にずれた位置に配置される。また、紙葉27の後端側からガイド壁25に倣わせたい場合であって、押圧ローラ23よりも右側にガイド壁25が配置されている場合には、凹部35は、シャフト挿通孔33における中央部よりも左側にずれた位置に配置される。
【0043】
この第2実施形態では、複数の押圧ローラ23が設けられており、これら全ての押圧ローラ23におけるシャフト挿通孔33の内壁面において同様の凹部35が形成されている。
【0044】
この第2実施形態の紙葉搬送装置20では、上記のように、押圧ローラ23に挿通されるローラシャフト24がクラウン形状(太鼓形状)である。また、押圧ローラ23のシャフト挿通孔33の内壁面には凹部35が形成され、かつ、ガイド壁25が設けられている。これらの構成により、紙葉搬送装置20は、押圧ローラ23の寸法ばらつきに起因した紙葉27の傾き搬送を抑制することができる。これにより、紙葉搬送装置20は、当該紙葉搬送装置20により搬送された紙葉27に対して施される処理(例えば印字処理)において、傾き搬送に起因した不具合を回避することができる。
【0045】
<その他の実施形態>
なお、本発明は第1と第2の実施形態に限定されずに様々な実施の形態を採り得る。例えば、第2実施形態の構成に加えて、図6に表されるような補正ローラ37が設けられている紙葉搬送装置にも本発明を適用することができる。
【0046】
図6に表されている紙葉搬送装置においては、補正ローラ37は紙葉27に向けて前進する方向と紙葉27から後退する方向とに移動可能な状態で配設されている。また、補正ローラ37をそのような前進方向と後退方向に移動する移動機構が設けられている。補正ローラ37は、紙葉27にガイド壁25に向かう(寄せる)方向の力を回転力に基づいて作用するように設置される。
【0047】
補正ローラ37は、通常、紙葉27から後退した位置に待機している。そして、紙葉27が紙葉搬送装置20に挿入されて補正ローラ37に対向したことを例えば光学式センサにより検知した場合に、移動機構が紙葉27に向けて補正ローラ37を移動する。そして、補正ローラ37が紙葉27に当接した状態で補正ローラ37が回転することにより、補正ローラ37は紙葉27をガイド壁25側に寄せる方向の力を紙葉27に作用する。これにより、紙葉搬送装置20に紙葉27が傾いた状態で挿入された場合に、その紙葉27の傾きを補正することができる。その後、移動機構が補正ローラ37を後退した後に搬送ローラ21が回転駆動することにより、紙葉27が搬送ローラ21と押圧ローラ23に挟持され、第2実施形態で述べたように、当該搬送ローラ21と押圧ローラ23により搬送される。
【0048】
このような補正ローラ37を備えた紙葉搬送装置20においても、第2実施形態と同様の構成を備えることにより、押圧ローラ23の寸法ばらつきに起因した紙葉27の傾き搬送を防止することができる。
【0049】
さらに、第2実施形態では、複数の搬送ローラ21が取り付けられている回転シャフト22が複数本設けられている。これに対し、そのような回転シャフト22が1本だけ配置されている紙葉搬送装置にも本発明は適用することができる。さらに、複数の搬送ローラ21が搬送方向Aに沿って1列に配列されている構成を持つ紙葉搬送装置にも本発明は適用することができる。
【0050】
さらにまた、第2実施形態では、紙葉27の搬送方向における後端側をガイド壁25に当接させるように紙葉27を傾ける凹部35が形成されている。これに対し、紙葉27の搬送方向における前端側をガイド壁25に当接させるように紙葉27を傾ける凹部35が形成されてもよい。この場合には、例えば、ガイド壁25が押圧ローラ23よりも左側に配置している場合には、凹部35は、押圧ローラ23のシャフト挿通孔33において中央部よりも左側にずれた位置に形成される。また、ガイド壁25が押圧ローラ23よりも右側に配置している場合には、凹部35は、押圧ローラ23のシャフト挿通孔33において中央部よりも右側にずれた位置に形成される。
【0051】
さらに、第2実施形態では、凹部35は、シャフト挿通孔33の内壁面を周回する態様を持つ溝部である。これに代えて、例えば、複数の凹部35がシャフト挿通孔33の内壁面を周回する方向に間隔を介して配列している態様であってもよい。
【符号の説明】
【0052】
2,21 搬送ローラ
3,23 押圧ローラ
4,24 ローラシャフト
5,25 ガイド壁
6,27 紙葉
8,33 シャフト挿通孔
10,35 凹部
【要約】
【課題】 部品点数の増加と装置の大型化と制御の煩雑化を抑制しつつ、紙葉が傾いた状態で搬送される傾き搬送を防止する。
【解決手段】 紙葉搬送装置は、搬送ローラ2と、押圧ローラ3と、ローラシャフト4と、ガイド壁5とを有する。搬送ローラ2は、回転力に基づいた力を搬送対象の紙葉6に作用する。押圧ローラ3は、搬送ローラ2との間に紙葉6を挟持し搬送ローラ2の回転力に基づいた力を受けて回転する。押圧ローラ3には、押圧ローラ3の中心軸に沿ってシャフト挿通孔8が伸長形成されている。ローラシャフト4は、シャフト挿通孔8に挿通される。ガイド壁5は、紙葉6の側端縁が当接することによって紙葉6の搬送をガイドする。ローラシャフト4は、両端側よりも中央部が太い形状を備えている。押圧ローラ3におけるシャフト挿通孔8の内壁面には、ガイド壁5と押圧ローラ3との位置関係に基づいて定まる位置に、凹部10が形成されている。
【選択図】 図1
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図2
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図8