(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤにおいて、前記シーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを貼り付けるシート貼り付け装置であって、
前記シーラントタイヤの外部から前記シーラント層のタイヤ半径方向内側に向かって前記シートを連続的に供給するシート供給機構と、
前記シート供給機構から供給された前記シートを折り返し、前記シートの進行方向を変更するシート折り返し機構と、
前記シート折り返し機構によって折り返された前記シートを前記シーラント層に接触させ、前記シーラント層のタイヤ半径方向内側に前記シートを貼り付けるシート貼り付け機構とを備えるシート貼り付け装置。
前記シート折り返し機構によって折り返された前記シートを前記シート貼り付け機構に向かって案内するシート案内機構を更に備える請求項1又は2記載のシート貼り付け装置。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明のシート貼り付け装置は、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤにおいて、上記シーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを貼り付けるシート貼り付け装置であって、上記シーラントタイヤの外部から上記シーラント層のタイヤ半径方向内側に向かって上記シートを連続的に供給するシート供給機構と、上記シート供給機構から供給された上記シートを折り返し、上記シートの長さ方向を上記シーラントタイヤの周方向に対して略平行にするシート折り返し機構と、上記シート折り返し機構によって折り返された上記シートを上記シーラント層に接触させ、上記シーラント層のタイヤ半径方向内側に上記シートを貼り付けるシート貼り付け機構とを備える。
【0021】
本発明では、シート供給機構と、シート折り返し機構と、シート貼り付け機構とにより、シーラントタイヤの外部からシートを連続的に供給しながら、シーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを貼り付けることができる。これにより、タイヤの内径に制限されることなくシートの供給元の大きさを設定することができるため、シートの供給元の取替え回数を大きく減らすことが可能となる。また、シートの供給元をタイヤ内部に設置していた従来の装置と比較して、シートの供給元の交換作業を容易に行うことができる。
【0022】
シートをシーラント層に貼り付ける最初のアプローチの際にタイヤの周方向からシートの角度がずれると、シートがらせん状に貼り付けられてしまい、シートがシーラント層を充分に覆うことができなくなるおそれがある。よって、タイヤの周方向に合わせた角度でシートを挿入し、シートの始点と終点が揃うように貼り付けることが特に重要である。本発明では、シート折り返し機構により、シートの角度を調整し、タイヤの周方向に合わせた角度でタイヤの内周面にシートを挿入することができるため、高精度なシートの貼り付けを行うことができる。
【0023】
以下、本発明のシーラントタイヤの製造方法の好適例について説明する。
【0024】
シーラントタイヤは、例えば、シーラント材を構成する各成分を混合してシーラント材を調製し、次いで、得られたシーラント材を塗布等によりタイヤ内周面に貼り付け、シーラント層を形成することにより、製造できる。該シーラントタイヤは、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有する。
【0025】
シーラント材はゴム成分と架橋の量により、硬さ(粘度)をコントロールして、使用温度に応じた粘度にコントロールする必要がある。そこでゴム成分のコントロールとして、液状ゴム、可塑剤、カーボンブラックの種類や量を調整する。一方、架橋の量のコントロールのために、架橋剤と架橋助剤の種類や量を調整する。
【0026】
シーラント材としては、粘着性を有するものであれば特に限定されず、タイヤのパンクシールに用いられる通常のゴム組成物を使用することができる。ゴム組成物の主成分を構成するゴム成分として、ブチル系ゴムが用いられる。ブチル系ゴムとしては、ブチルゴム(IIR)の他、臭素化ブチルゴム(Br−IIR)、塩素化ブチルゴム(Cl−IIR)などのハロゲン化ブチルゴム(X−IIR)等も挙げられる。なかでも、流動性等の観点から、ブチルゴム、若しくはハロゲン化ブチルゴムのどちらか一方、又は両方を好適に使用できる。また、ブチル系ゴムは、ペレット化されたものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機にブチル系ゴムを精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0027】
ブチル系ゴムとして、シーラント材の流動性の低下抑制の観点から、125℃のムーニー粘度ML1+8が20以上40未満のブチル系ゴムA及び/又は125℃のムーニー粘度ML1+8が40以上80以下のブチル系ゴムBの使用が好ましく、なかでも、少なくともブチル系ゴムAを用いることが好適である。なお、ブチル系ゴムA及びBを併用する場合、配合比は適宜設定すれば良い。
【0028】
ブチル系ゴムAの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは25以上、更に好ましくは28以上であり、また、より好ましくは38以下、更に好ましくは35以下である。20未満であると、流動性が低下するおそれがあり、40以上であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。
【0029】
ブチル系ゴムBの125℃のムーニー粘度ML1+8は、より好ましくは45以上、更に好ましくは48以上であり、また、より好ましくは70以下、更に好ましくは60以下である。40未満であると、併用する場合、その効果が得られないおそれがある。80を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0030】
なお、125℃のムーニー粘度ML1+8は、JIS K−6300−1:2001に準拠し、試験温度125℃で、L形の形状を有するロータを余熱時間1分間とし、ロータの回転時間を8分間として測定されるものである。
【0031】
ゴム成分として、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系ゴム等、他の成分を併用しても良いが、流動性等の観点から、ゴム成分100質量%中のブチル系ゴムの含有量は、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、100質量%が特に好ましい。
【0032】
シーラント材中の液状ポリマーとして、液状ポリブテン、液状ポリイソブテン、液状ポリイソプレン、液状ポリブタジエン、液状ポリα−オレフィン、液状イソブチレン、液状エチレンα−オレフィン共重合体、液状エチレンプロピレン共重合体、液状エチレンブチレン共重合体等が挙げられる。なかでも、粘着性付与等の観点から、液状ポリブテンが好ましい。液状ポリブテンとしては、イソブテンを主体とし、更にノルマルブテンを反応させて得られる長鎖状炭化水素の分子構造を持った共重合体等が挙げられ、水素添加型液状ポリブテンも使用可能である。
【0033】
液状ポリブテン等の液状ポリマーとして、高速走行時のシーラント材の流動を防止する観点から、100℃の動粘度が550〜625mm
2/sの液状ポリマーA及び/又は100℃の動粘度が3540〜4010mm
2/sの液状ポリマーBの使用が好ましく、該液状ポリマーA及びBの併用がより好ましい。
【0034】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの100℃における動粘度は、好ましくは550mm
2/s以上、より好ましくは570mm
2/s以上である。550mm
2/s未満であると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該100℃における動粘度は、好ましくは625mm
2/s以下、より好ましくは610mm
2/s以下である。625mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり、押し出し性が悪化するおそれがある。
【0035】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの100℃における動粘度は、好ましくは3600mm
2/s以上、より好ましくは3650mm
2/s以上である。3540mm
2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該100℃における動粘度は、好ましくは3900mm
2/s以下、より好ましくは3800mm
2/s以下である。4010mm
2/sを超えると、シール性が悪化するおそれがある。
【0036】
液状ポリブテン等の液状ポリマーAの40℃における動粘度は、好ましくは20000mm
2/s以上、より好ましくは23000mm
2/s以上である。20000mm
2/s未満であると、シーラント材が柔らかく、流動が生じるおそれがある。該40℃における動粘度は、好ましくは30000mm
2/s以下、より好ましくは28000mm
2/s以下である。30000mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0037】
液状ポリブテン等の液状ポリマーBの40℃における動粘度は、好ましくは120000mm
2/s以上、より好ましくは150000mm
2/s以上である。120000mm
2/s未満であると、シーラント材の粘度が下がり過ぎて、タイヤ使用中に流動しやすくなり、シール性、ユニフォミティーが悪化するおそれがある。
該40℃における動粘度は、好ましくは200000mm
2/s以下、より好ましくは170000mm
2/s以下である。200000mm
2/sを超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0038】
なお、動粘度は、JIS K2283−2000に準拠し、100℃、40℃の条件で測定される値である。
【0039】
液状ポリマーの含有量(液状ポリマーA、B等の合計量)は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上、更に好ましくは150質量部以上である。50質量部未満では、粘着性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは400質量部以下、より好ましくは300質量部以下、更に好ましくは250質量部以下である。400質量部を超えると、シーラント材の流動が生じるおそれがある。
【0040】
液状ポリマーA、Bを併用する場合、これらの配合比(液状ポリマーAの含有量/液状ポリマーBの含有量)は、好ましくは10/90〜90/10、より好ましくは30/70〜70/30、更に好ましくは40/60〜60/40である。上記範囲内であると、良好な粘着性が付与される。
【0041】
有機過酸化物(架橋剤)としては特に限定されず、従来公知の化合物を使用できる。有機過酸化物架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0042】
有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド類、1−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシフタレートなどのパーオキシエステル類、メチルエチルケトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類、ジ−t−ブチルパーオキシベンゾエート、1,3−ビス(1−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼンなどのアルキルパーオキサイド類、t−ブチルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド等が挙げられる。なかでも、粘着性、流動性の観点から、アシルパーオキサイド類が好ましく、ジベンゾイルパーオキサイドが特に好ましい。また、有機過酸化物(架橋剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に有機過酸化物(架橋剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0043】
有機過酸化物(架橋剤)の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは5質量部以上である。0.5質量部未満では、架橋密度が低くなり、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、架橋密度が高くなり、シーラント材が硬くなり、シール性が低下するおそれがある。
【0044】
架橋助剤(加硫促進剤)としては、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオ尿素系、グアニジン系、ジチオカルバミン系、アルデヒド-アミン系、アルデヒド-アンモニア系、イミダゾリン系、キサントゲン酸系、及びキノンジオキシム化合物(キノイド化合物)からなる群より選択される少なくとも1種を使用することができるが、例えば、キノンジオキシム化合物(キノイド化合物)を好適に使用可能である。有機過酸化物に更に架橋助剤を添加した架橋系において、ブチル系ゴムや液状ポリマーを用いることで、粘着性、シール性、流動性、加工性が改善される。
【0045】
キノンジオキシム化合物としては、p−ベンゾキノンジオキシム、p−キノンジオキシム、p−キノンジオキシムジアセテート、p−キノンジオキシムジカプロエート、p−キノンジオキシムジラウレート、p−キノンジオキシムジステアレート、p−キノンジオキシムジクロトネート、p−キノンジオキシムジナフテネート、p−キノンジオキシムスクシネート、p−キノンジオキシムアジペート、p−キノンジオキシムジフロエート(difuroate)、p−キノンジオキシムジベンゾエート、p−キノンジオキシムジ(o−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−クロロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ビトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(3,5−ジニトロベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(p−メトキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(n−アミルオキシベンゾエート)、p−キノンジオキシムジ(m−ブロモベンゾエート等が挙げられる。なかでも、粘着性、シール性、流動性の観点から、p−ベンゾキノンジオキシムが好ましい。また、架橋助剤(加硫促進剤)は、粉体状態のものを使用することが好ましい。これにより、連続混練機に架橋助剤(加硫促進剤)を精度良く好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0046】
キノンジオキシム化合物等の架橋助剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上、更に好ましくは3質量部以上である。0.5質量部未満では、シーラント材の流動が生じるおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下、更に好ましくは15質量部以下である。40質量部を超えると、シール性が低下するおそれがある。
【0047】
シーラント材には、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、硫酸バリウム、タルク、マイカ等の無機充填剤、芳香族系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等の可塑剤を添加しても良い。
【0048】
紫外線による劣化を防止する観点から、無機充填剤としてカーボンブラックが好ましい。この場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは10質量部以上である。1質量部未満では、紫外線による劣化により、シール性が低下するおそれがある。該含有量は、好ましくは50質量部以下、より好ましくは40質量部以下、更に好ましくは25質量部以下である。50質量部を超えると、シーラント材の粘度が高くなり過ぎて、シール性が悪化するおそれがある。
【0049】
可塑剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは1質量部以上、より好ましくは5質量部以上である。1質量部未満では、タイヤへの粘着性が低下し、充分なシール性が得られないおそれがある。該含有量は、好ましくは40質量部以下、より好ましくは20質量部以下である。40質量部を超えると、混練機内ですべりが生じ、シーラント材を混練することが困難となるおそれがある。
【0050】
シーラント材としては、ペレット化したブチル系ゴム、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることが好ましく、ペレット化したブチル系ゴム、液状のポリブテン、可塑剤、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤を混合することにより調製されたものであることがより好ましい。これにより、連続混練機に各原料を好適に供給でき、シーラント材を生産性よく製造できる。
【0051】
シーラント材としては、ブチルゴムを含むゴム成分に対して、所定量の液状ポリマー、有機過酸化物、架橋助剤を配合したものが好ましい。
【0052】
シーラント材に、ブチルゴムに液状ポリブテン等の液状ポリマーを配合したものを用いること、特にブチルゴム、液状ポリマーとして、それぞれ異なる粘度の2種以上の材料を併用することで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。これは、ゴム成分としてブチルゴムを用いた有機過酸化物架橋系に、液状ポリマー成分を導入して粘着性が付与されるとともに、特に異なる粘度の液状ポリマーや固形ブチルゴムにより高速走行時のシーラント材の流動が抑制されることで、粘着性、シール性、流動性、加工性がバランス良く改善される。
【0053】
シーラント材の粘度(40℃)は特に限定されないが、粘着性、流動性、及びシーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を好適に保持する等の観点から、好ましくは3000Pa・s以上、より好ましくは5000Pa・s以上であり、また、好ましくは70000Pa・s以下、より好ましくは50000Pa・s以下である。3000Pa・s未満であると、シーラント材の塗布後にタイヤを停止したときにシーラント材が流動し、膜厚を維持できないおそれがある。また、70000Pa・sを超えると、ノズルからシーラント材を吐出させることが困難となる。
なお、シーラント材の粘度は、JIS K 6833に準拠し、40℃の条件で、回転式粘度計により測定される値である。
【0054】
前述の各材料を混合してシーラント材を調製し、作製されたシーラント材をタイヤ内周面(好ましくはインナーライナーのタイヤ半径方向内側部分)に適用することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できるが、シーラント材を構成する各材料の混合は、例えば、公知の連続混練機を用いて実施できる。なかでも、同方向回転又は異方向回転の多軸混練押出機、特に二軸混練押出機を用いて混合することが好ましい。
【0055】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、原料を供給する供給口を複数有することが好ましく、少なくとも3つの供給口を有することがより好ましく、少なくとも上流側、中流側、下流側の3つの供給口を有することが更に好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)に上記各種原料を順次供給することにより、上記各種原料が混合され、順次連続的にシーラント材が調製される。
【0056】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への原料の供給は、粘度の高い材料から順に行うことが好ましい。これにより、各材料が充分に混合され、品質が一定のシーラント材を調製できる。また、粉体材料を投入すると混練性が良くなる為なるべく上流で投入する事が望ましい。
【0057】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)への有機過酸化物の供給は、下流側の供給口から行うことが好ましい。これにより、有機過酸化物を供給してからシーラント材をタイヤに塗布するまでの時間を短くできるので、シーラント材の硬化が進む前にタイヤに塗布でき、より安定的にシーラントタイヤを製造できる。
【0058】
液状ポリマーを一度に多量に連続混練機(特に、二軸混練押出機)へ投入すると混練がうまくいかないため、連続混練機(特に、二軸混練押出機)への液状ポリマーの供給は、複数の供給口から行うことが好ましい。これにより、シーラント材の混練をより好適に行うことができる。
【0059】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用いる場合、シーラント材は、少なくとも3つの供給口を有する連続混練機(特に、二軸混練押出機)を用い、当該連続混練機(特に、二軸混練押出機)の上流側の供給口から、ブチル系ゴム等のゴム成分、無機充填剤、及び架橋助剤を供給し、中流側の供給口から、液状ポリマーBを供給し、下流側の供給口から、液状ポリマーA、有機過酸化物、及び可塑剤を供給し、混練押出することにより調製されることが好ましい。なお、各供給口からは、液状ポリマー等の各材料の全量又は一部を供給してもよいが、各材料の全量中の95質量%以上を供給することが好ましい。
【0060】
連続混練機に投入される全ての原料が、定量供給制御可能な供給装置により制御されて、連続混練機に投入されることが好ましい。これにより、連続的かつ自動化された状態でシーラント材を調製することが可能となる。
【0061】
供給装置は、定量供給制御可能であれば特に限定されず、公知の供給装置を使用でき、例えば、スクリュー式フィーダー、プランジャーポンプ、ギアポンプ、モーノポンプ等を使用できる。
【0062】
ペレット化されたブチル系ゴム、粉体のカーボンブラック、粉体の架橋剤、及び粉体の架橋助剤等の固形原料(特に、ペレットや粉体)は、スクリュー式フィーダーを用いて定量供給することが好ましい。これにより、固形原料を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0063】
また、各固形原料は、それぞれ別個の供給装置で供給することが好ましい。これにより、事前に各原料をブレンドする必要が無いため、量産時の材料の供給が容易になる。
【0064】
可塑剤は、プランジャーポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、可塑剤を精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0065】
液状ポリマーは、ギアポンプを用いて定量供給することが好ましい。これにより、液状ポリマーを精度良く定量供給することが可能となり、より品質の高いシーラント材、ひいてはより品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0066】
供給される液状ポリマーは、定温管理されていることが好ましい。定温管理することにより、より精度良く液状ポリマーを定量供給することが可能となる。供給される液状ポリマーの温度は、好ましくは20〜90℃、より好ましくは40〜70℃である。
【0067】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の混合は、混合の容易性、押し出し性の観点から、バレル温度50〜150℃で実施することが好ましい。
【0068】
充分な混合性の観点から、上流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分、中流側で供給する材料の混合時間は、1〜3分であることが好ましい。一方、架橋を防止する観点から、下流側で供給する材料の混合時間は、0.5〜2分であることが好ましい。なお、各混合時間は、連続混練機(特に、二軸混練押出機)に供給されてから排出されるまでの滞留時間をいい、例えば、下流側で供給された材料の混合時間は、下流側の供給口への供給時から排出されるまでの滞留時間である。
【0069】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)のスクリューの回転数や、温調機の設定で、排出口から吐出されるシーラント材の温度を調整でき、ひいてはシーラント材の硬化促進速度をコントロールできる。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は、スクリューの回転数を上げると混練性と材料温度が上がる。なお、スクリューの回転数は吐出量には影響しない。スクリューの回転数は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、50〜550rpmであることが好ましい。
【0070】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の温度は、充分な混合性、及び硬化促進速度のコントロールの観点から、70〜150℃であることが好ましく、90〜130℃であることがより好ましい。シーラント材の温度が上記範囲内であると、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、後述の架橋工程を必要としない。
【0071】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口から吐出されるシーラント材の量は、供給口への原料の供給量に基づいて決定される。供給口への原料の供給量は、特に限定されず、当業者であれば適宜設定可能である。ユニフォミティー及びシール性により優れたシーラントタイヤが好適に得られるという理由から、排出口から吐出されるシーラント材の量(吐出量)が実質的に一定であることが好ましい。
ここで、本明細書において、吐出量が実質的に一定とは、吐出量の変動が93〜107%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0072】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口にはノズルを接続することが好ましい。連続混練機(特に、二軸混練押出機)は材料を高圧で吐出できるので、ノズル(好ましくは抵抗の大きい小径ノズル)を排出口に取付けることにより、調製したシーラント材を細い略紐状形状(ビード状)にしてタイヤに貼り付けることができる。すなわち、シーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出して順次タイヤの内周面に塗布することで、シーラント材の厚さが実質的に一定となり、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0073】
次いで、混合したシーラント材を連続混練機(特に、二軸混練押出機)等押出機の排出口に接続されたノズルから吐出することで、加硫成形済みのタイヤの内周面に直接フィードし、内周面に適用すること等により、シーラントタイヤが製造される。これにより、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行する。これにより、タイヤの内周面に塗布されたシーラント材は、好適に略紐状形状を保持したままシーラント層を形成する。従って、一連の工程でシーラント塗布加工が可能になり、生産性もより向上する。また、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。更に、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することが好ましい。これにより、連続混練機(特に、二軸混練押出機)内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に連続的に塗布できるため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、好適に架橋反応が進行し、より生産性良く重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0074】
タイヤの内周面へのシーラント材の塗布は、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面、より好ましくは、少なくともブレーカーに対応するタイヤの内周面に行えばよい。シーラント材の塗布が不要な部分への塗布を省略することにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
ここで、トレッド部に対応するタイヤの内周面とは、路面に接するトレッド部のタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味し、ブレーカーに対応するタイヤの内周面とは、ブレーカーのタイヤ半径方向内側に位置するタイヤの内周面を意味する。なお、ブレーカーとは、トレッドの内部で、かつカーカスの半径方向外側に配される部材であり、具体的には、
図9のブレーカー16などに示される部材である。
【0075】
通常、未加硫タイヤは、ブラダーを使用して加硫する。このブラダーは、加硫時に膨張し、タイヤの内周面(インナーライナー)に密着することとなる。そこで、加硫が終了した際に、ブラダーとタイヤの内周面(インナーライナー)とが癒着しないように、通常、タイヤの内周面(インナーライナー)には離型剤が塗布されている。
【0076】
離型剤としては、通常、水溶性ペイントや離型用ゴムが使用される。しかしながら、タイヤの内周面に離型剤が存在すると、シーラント材とタイヤの内周面との粘着性が低下するおそれがある。そのため、タイヤの内周面から予め離型剤を除去しておくことが好ましい。特に、タイヤの内周面のうち、少なくともシーラント材の塗布を開始する部分において、予め離型剤を除去しておくことがより好ましい。なお、タイヤの内周面のうち、シーラント材を塗布する全ての部分から予め離型剤を除去しておくことが更に好ましい。これにより、シーラント材のタイヤの内周面への付着性がより向上し、よりシール性の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0077】
タイヤの内周面から離型剤を除去する方法としては、特に限定されず、バフ処理、レーザー処理、高圧水洗浄、洗剤(好ましくは中性洗剤)による除去等の公知の方法が挙げられる。
【0078】
ここで、
図7を使用して、シーラントタイヤの製造方法に用いる製造設備の一例を簡単に説明する。
製造設備は、二軸混練押出機60、二軸混練押出機60に原料を供給する材料フィーダー62、タイヤ10を固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置50を有する。二軸混練押出機60は、供給口61を5個有している。具体的には、上流側の供給口61aを3個、中流側の供給口61bを1個、下流側の供給口61cを1個有している。更に、二軸混練押出機60の排出口にはノズル30が接続されている。
【0079】
原料が材料フィーダー62から、二軸混練押出機60が有する供給口61を介して二軸混練押出機60に順次供給され、各原料が二軸混練押出機60により混練され、シーラント材が順次調製される。調製されたシーラント材は、二軸混練押出機60の排出口に接続されたノズル30から連続的に吐出される。タイヤ駆動装置でタイヤを回転させながらトラバース及び/又は昇降させ(タイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させ)、ノズル30から吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。すなわち、タイヤを回転させながらタイヤの幅方向及び/又は半径方向に移動させつつ、連続混練機(特に、二軸混練押出機)から連続的に吐出されるシーラント材を順次タイヤの内周面に直接塗布することにより、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることが可能となる。
【0080】
タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの内周面にシーラント材を連続的にらせん状に貼り付けることにより、タイヤ周方向及びタイヤ幅方向(特に、タイヤ周方向)においてシーラント材が均一なシーラント層を形成できるため、シール性に優れたシーラントタイヤを安定的に生産性良く製造できる。なお、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止できると共に、より均一なシーラント層を形成できる。
【0081】
また、原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)に順次供給し、連続混練機(特に、二軸混練押出機)によりシーラント材が順次調製され、調製されたシーラント材が、連続混練機(特に、二軸混練押出機)の排出口に接続されたノズルから連続的に吐出され、シーラント材が順次タイヤの内周面に直接塗布される。これにより、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0082】
シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を、連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより形成されることが好ましい。シーラント層は、シーラント材が積層されて形成されてもよいが、シーラント材1層からなることが好ましい。
【0083】
シーラント材が、略紐状形状であると、シーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材1層からなるシーラント層を形成できる。シーラント材が、略紐状形状であると、塗布されるシーラント材にある程度の厚さがあるため、シーラント材1層からなるシーラント層であっても、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤを製造できる。また、シーラント材を何層も積層することなく、1層塗布するだけでよいため、より生産性よくシーラントタイヤを製造できる。
【0084】
シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数は、タイヤのユニフォミティーの悪化を防止でき、重量バランスに優れると共に、良好なシール性を有するシーラントタイヤをより生産性よく製造できるという理由から、好ましくは20〜70回、より好ましくは20〜60回、更に好ましくは35〜50回である。ここで、巻き付ける回数が2回とは、タイヤ内周面を2周するようにシーラント材が塗布されていることを意味し、
図4において、シーラント材を巻き付ける回数は、6回である。
【0085】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)を使用する事により、シーラント材の調製(混練)とシーラント材の吐出(塗布)を同時に連続的に行うことができ、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材をハンドリングすることなく直接タイヤの内周面に塗布でき、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。また、バッチ式混練装置で硬化剤も含めて混練し、シーラント材を調製した場合、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定とならないが、有機過酸化物を含む原料を連続混練機(特に、二軸混練押出機)により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布することにより、シーラント材の調製からタイヤに貼り付けるまでの時間が一定となるため、ノズルを使用してシーラント材を塗布する場合には、ノズルからのシーラント材の吐出量が安定し、更には、シーラント材のタイヤへの粘着性の低下を抑制しつつ一定の粘着性となり、高粘度で粘着性が高く取り扱いが難しいシーラント材を使用しても精度良くタイヤの内周面に塗布でき、安定的に一定の品質のシーラントタイヤを製造できる。
【0086】
次に、以下において、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する方法について説明する。
【0087】
<第1実施形態>
第1実施形態では、シーラントタイヤは、タイヤを回転させ、かつ、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの幅方向に移動させながら、粘着性のシーラント材を上記ノズルによって上記タイヤの内周面に塗布する際、非接触式変位センサによって上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との距離を測定する工程(1)と、測定結果に基づき、上記タイヤ及びノズルの少なくとも一方をタイヤの半径方向に移動させることで、上記タイヤの内周面と上記ノズルの先端との間隔を所定の距離に調整する工程(2)と、上記間隔が調整されたタイヤの内周面に上記シーラント材を塗布する工程(3)とを行うこと等により、製造できる。
【0088】
非接触式変位センサを用いてタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定し、その測定結果をフィードバックすることで、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を一定の距離に保つことができる。そして、上記間隔を一定の距離に保ちながらタイヤの内周面にシーラント材を塗布していくため、タイヤ形状のばらつきやジョイント部等の凹凸による影響を受けることなく、シーラント材の厚さを均一にすることができる。さらに、従来のようにタイヤサイズごとに座標値を入力する必要がないため、効率良くシーラント材を塗布することができる。
【0089】
図1は、本発明のシーラントタイヤの製造方法で用いる塗布装置の一例を模式的に示す説明図である。また、
図2は、
図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図である。
【0090】
図1は、タイヤ10の一部を子午線方向に切った断面(タイヤの幅方向及び半径方向を含む平面で切った断面)を示しており、
図2は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。
図1及び
図2においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0091】
タイヤ10は、タイヤを固定して回転させるとともに、タイヤの幅方向及び半径方向に移動させる回転駆動装置(図示せず)にセットされている。この回転駆動装置により、タイヤの軸周りの回転、タイヤの幅方向の移動及びタイヤの半径方向の移動が独立して可能になっている。
【0092】
また、回転駆動装置は、タイヤの半径方向の移動量を制御可能な制御機構(図示せず)を備えている。制御機構は、タイヤの幅方向の移動量及び/又はタイヤの回転速度を制御可能であってもよい。
【0093】
ノズル30は、押出機(図示せず)の先端に取り付けられており、タイヤ10の内側に挿入することが可能である。そして、押出機から押し出された粘着性のシーラント材20が、ノズル30の先端31から吐出される。
【0094】
非接触式変位センサ40は、ノズル30に取り付けられており、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間の距離dを測定する。
このように、非接触式変位センサが測定する距離dとは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0095】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、
図1及び
図2に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
【0096】
後述するように、シーラント材20は略紐状形状であることが好ましく、より具体的には、シーラント材がタイヤの内周面に塗布された時点で、シーラント材が略紐状形状を保持することが好ましく、この場合、略紐状形状のシーラント材20は、連続的にタイヤ10の内周面11にらせん状に貼り付けられることになる。
【0097】
なお、本発明において、略紐状形状とは、幅よりも長さの方が長く、ある程度の幅及び厚さを有する形状を意味する。略紐状形状のシーラント材が連続的にタイヤの内周面にらせん状に貼り付けられた状態の一例を
図4に模式的に示す。また、
図4のシーラント材をシーラント材の塗布方向(長さ方向)と直交する直線AAで切断した際のシーラント材の断面の一例を
図8に模式的に示す。このように、略紐状形状のシーラント材は、ある程度の幅(
図8中、Wで示される長さ)とある程度の厚さ(
図8中、Dで示される長さ)を有する。なお、ここで、シーラント材の幅とは、塗布後のシーラント材の幅を意味し、シーラント材の厚さとは、塗布後のシーラント材の厚さ、より具体的には、シーラント層の厚さを意味する。
【0098】
略紐状形状のシーラント材は、具体的には、後述する、シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)の好ましい数値範囲、及びシーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ、
図6中、W
0で示される長さ)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材、より好ましくは、後述する、シーラント材の厚さと、シーラント材の幅の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)の好ましい数値範囲を満たすシーラント材である。また、後述する、シーラント材の断面積の好ましい数値範囲を満たすシーラント材でもある。
【0099】
本発明のシーラントタイヤの製造方法では、以下の工程(1)〜(3)により、シーラント材をタイヤの内周面に塗布する。
【0100】
<工程(1)>
図2に示すように、非接触式変位センサ40により、シーラント材20を塗布する前のタイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との距離dを測定する。距離dの測定は、シーラント材20を各タイヤ10の内周面11に塗布する度に行い、シーラント材20の塗布開始から塗布終了まで行う。
【0101】
<工程(2)>
距離dの測定データを回転駆動装置の制御機構に転送する。制御機構では、測定データに基づき、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔が所定の距離になるように、タイヤの半径方向の移動量を調整する。
【0102】
<工程(3)>
シーラント材20は、ノズル30の先端31から連続的に吐出されているので、上記間隔が調整されたタイヤ10の内周面11に塗布されることになる。以上の工程(1)〜(3)により、タイヤ10の内周面11に均一な厚さのシーラント材20を塗布することができる。
【0103】
図3は、タイヤに対するノズルの位置関係を模式的に示す説明図である。
本発明では、
図3に示すように、ノズル30がタイヤ10に対して(a)〜(d)で示す位置に移動する間、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を所定の距離d
0に保ちながらシーラント材を塗布することができる。
【0104】
本発明の効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d
0は、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1.0mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、所定の厚さを有するシーラント材を塗布することが困難となる。また、調整後の間隔d
0は、好ましくは3.0mm以下、より好ましくは2.0mm以下である。3.0mmを超えると、シーラント材をタイヤにうまく貼り付けられず、製造効率が低下するおそれがある。
ここで、調整後の間隔d
0とは、上記工程(2)により調整された後のタイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0105】
また、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、調整後の間隔d
0は、塗布後のシーラント材の厚さの30%以下が好ましく、20%以下がより好ましく、また、塗布後のシーラント材の厚さの5%以上が好ましく、10%以上がより好ましい。
【0106】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。なお、シーラント材の厚さは、タイヤの回転速度、タイヤの幅方向の移動速度、ノズルの先端とタイヤの内周面との距離等を調整することにより調整することができる。
【0107】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
ここで、本明細書において、厚さが実質的に一定とは、厚さの変動が90〜110%(好ましくは95〜105%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0108】
本発明では、ノズルも目詰まりが少なく、操業安定性に優れるという理由、及び、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、略紐状形状のシーラント材を使用することが好ましく、略紐状形状のシーラント材をタイヤの内周面にらせん状に貼り付けることがより好ましい。しかし、略紐状形状ではないシーラント材を使用し、タイヤの内周面にスプレーすることでシーラント材を塗布してもよい。
【0109】
略紐状形状のシーラント材を使用する際、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。
【0110】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅(塗布後のシーラント材の幅、
図4中、Wで示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0111】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、
図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm
2以上、より好ましくは1.95mm
2以上、更に好ましくは3.0mm
2以上、特に好ましくは3.75mm
2以上であり、好ましくは180mm
2以下、より好ましくは104mm
2以下、更に好ましくは45mm
2以下、特に好ましくは35mm
2以下、最も好ましくは25mm
2以下である。
【0112】
シーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは40m/min以下、より好ましくは30m/min以下、更に好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び40m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を塗布することが困難となる。
【0113】
本発明では、非接触式変位センサを用いることにより、シーラント材がセンサに付着することによる故障のリスクを低減させることができる。本発明で使用する非接触式変位センサとしては、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できるものであれば特に限定されないが、例えば、レーザセンサ、光センサ、静電容量センサ等が挙げられる。これらのセンサは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、ゴムを測定するという観点から、レーザセンサ、光センサが好ましく、レーザセンサがより好ましい。レーザセンサを使用する場合、タイヤの内周面にレーザを照射し、レーザの反射からタイヤの内周面とレーザセンサの先端との距離を測定し、その値からレーザセンサの先端とノズルの先端との距離を差し引くことにより、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を求めることができる。
【0114】
非接触式変位センサの位置は、シーラント材を塗布する前のタイヤの内周面とノズルの先端との距離を測定できる位置であれば特に限定されないが、ノズルに取り付けることが好ましく、シーラント材が付着しない位置に設置することがより好ましい。
【0115】
その他、非接触式変位センサの個数、大きさなどについても、特に限定されない。
【0116】
非接触式変位センサは、熱に弱いため、ノズルから吐出される高温のシーラント材からの熱影響を防止するために、断熱材等を用いた保護及び/又はエアー等を用いた冷却を行うことが好ましい。これにより、センサの耐久性を向上させることができる。
【0117】
第1実施形態の説明では、タイヤの幅方向及び半径方向の移動として、ノズルは移動せずタイヤが移動する例を説明したが、本発明においては、タイヤが移動せずノズルが移動してもよいし、タイヤ及びノズルの両方が移動してもよい。
【0118】
また、回転駆動装置は、タイヤのビード部の幅を広げる手段を有することが好ましい。シーラント材をタイヤに塗布する際に、タイヤのビード部の幅を広げることにより、シーラント材をタイヤに容易に塗布することができる。特に、タイヤを回転駆動装置にセットした後に、タイヤの内周面近傍にノズルを導入する際に、ノズルを平行移動するだけでノズルを導入でき、制御が容易となり、生産性が向上する。
【0119】
タイヤのビード部の幅を広げる手段としては、タイヤのビード部の幅を広げることが可能であれば特に限定されないが、互いに位置の変わらない複数(好ましくは2個)のロールを有する装置2組を用い、それぞれがタイヤ幅方向に動く機構等が挙げられる。該装置をタイヤ開口部両側からタイヤ内に入れてタイヤのビード部の幅を広げればよい。
【0120】
上記製造方法では、二軸混練押出機等で混合され、かつ押出機内での架橋反応の進行が抑制されたシーラント材を、そのままタイヤ内周面に塗布するため、塗布時から架橋反応が始まり、タイヤ内周面への良好な粘着性を有すると共に、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。そのため、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する必要がなく、良好な生産性が得られる。
【0121】
なお、本発明では、必要に応じて、シーラント材を塗布したシーラントタイヤを更に架橋する架橋工程を行なってもよい。
架橋工程では、シーラントタイヤを加熱することが好ましい。これにより、シーラント材の架橋速度を向上でき、架橋反応をより好適に進行でき、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。加熱方法としては、特に限定されず、公知の方法を採用できるが、オーブンを使用する方法が好適である。架橋工程は、例えば、シーラントタイヤを70℃〜190℃(好ましくは150℃〜190℃)のオーブン内に2〜15分間入れればよい。
なお、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができるという理由から、架橋する際に、タイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。回転速度は、好ましくは300〜1000rpmである。具体的には、例えば、オーブンとして回転機構付きオーブンを使用すれば良い。
【0122】
また、架橋工程を別途行わない場合であっても、シーラント材の架橋反応が終了するまでタイヤをタイヤ周方向に回転させることが好ましい。これにより、塗布直後の流動しやすいシーラント材でも流動を防ぎユニフォミティーを悪化させずに架橋反応を行うことができる。回転速度は、架橋工程の場合と同様である。
【0123】
シーラント材の架橋速度を向上させるために、シーラント材を塗布する前に予めタイヤを温めておくことが好ましい。これにより、より生産性良くシーラントタイヤを製造できる。タイヤの予熱温度は、好ましくは40〜100℃、より好ましくは50〜70℃である。タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、塗布時から架橋反応が好適に始まり、架橋反応がより好適に進行し、シール性の高いシーラントタイヤを製造できる。また、タイヤの予熱温度を上記範囲内とすることにより、架橋工程を行う必要がなくなるため、生産性良くシーラントタイヤを製造できる。
【0124】
連続混練機(特に、二軸混練押出機)は一般に連続運転を行う。一方、シーラントタイヤを製造する際には、1のタイヤへの塗布が終了するとタイヤを取り替える必要がある。この際に、生産性の低下を抑制しつつ、より品質の高いシーラントタイヤを製造するために、以下の(1)、(2)の方法を採用すればよい。(1)の方法では、品質の低下、(2)の方法では、コストの増大というデメリットがあるため、状況に応じて適宜使い分ければ良い。
(1)連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働、停止させることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、1のタイヤへの塗布が終了すると、連続混練機、全ての供給装置を同時に停止させ、タイヤを交換し(1分以内に交換することが好ましい)、連続混練機、全ての供給装置を同時に稼働させ、タイヤへの塗布を再開すればよい。タイヤの交換を速やかに(好ましくは1分以内に)行うことにより、品質の低下を抑制できる。
(2)連続混練機、全ての供給装置を稼働させたまま、流路を切り替えることにより、シーラント材のタイヤの内周面への供給を制御する
すなわち、連続混練機に、タイヤの内周面に直接フィードするノズルとは別の流路を設けておき、1のタイヤへの塗布が終了すると、タイヤの交換が終了するまで、調製されたシーラント材を別の流路から排出すれば良い。この方法では、連続混練機、全ての供給装置を稼働させたままシーラントタイヤを製造できるため、より品質の高いシーラントタイヤを製造できる。
【0125】
<第2実施形態>
第1実施形態の方法のみでは、シーラント材が略紐状形状の場合に、タイヤの内周面へのシーラント材の貼り付けが難しい場合があり、特に、貼り付け開始部分のシーラント材が剥離しやすいという問題があることが本発明者の検討の結果明らかとなってきた。第2実施形態では、上記シーラントタイヤの製造方法において、タイヤの内周面とノズルの先端との間隔を距離d
1にしてシーラント材を貼り付けた後、上記間隔を距離d
1より大きい距離d
2にしてシーラント材を貼り付けることを特徴としている。これにより、貼り付け開始時においてタイヤの内周面とノズルの先端との間隔を近づけることで、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることができ、少なくともトレッド部に対応するタイヤの内周面に、粘着性を有し、かつ略紐状形状のシーラント材が連続的にらせん状に貼り付けられており、シーラント材の長さ方向における端部の少なくとも一方が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部であることを特徴とするシーラントタイヤを容易に製造することができる。該シーラントタイヤでは、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
なお、第2実施形態の説明では、主に第1実施形態と異なる点のみを説明し、第1実施形態と重複する内容については記載を省略する。
【0126】
図5は、
図1に示す塗布装置を構成するノズルの先端付近の拡大図であり、(a)がシーラント材の貼り付け開始直後の状態、(b)が所定時間経過後の状態を示している。
【0127】
図5は、タイヤ10の一部をタイヤの周方向及び半径方向を含む平面で切った断面を示している。
図5においては、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
【0128】
第2実施形態では、まず、加硫工程で成形されたタイヤ10を回転駆動装置にセットし、ノズル30をタイヤ10の内側に挿入する。そして、
図1及び
図5に示すように、タイヤ10を回転させ、かつ、タイヤ10を幅方向に移動させながら、シーラント材20をノズル30から吐出することによってタイヤ10の内周面11に連続的に塗布する。タイヤ10の幅方向の移動は、例えば、予め入力しておいたタイヤ10の内周面11のプロファイル形状に沿って行う。
【0129】
シーラント材20は、粘着性を有し、かつ略紐状形状であるため、トレッド部に対応するタイヤ10の内周面11に、連続的にらせん状に貼り付けられることになる。
【0130】
この際、貼り付け開始から所定時間の間は、
図5(a)に示すように、タイヤ10の内周面11とノズル30の先端31との間隔を距離d
1にしてシーラント材20を貼り付ける。そして、所定時間経過後、
図5(b)に示すように、タイヤ10を半径方向に移動させることで上記間隔を距離d
1より大きい距離d
2に変更してシーラント材20を貼り付ける。
【0131】
なお、シーラント材の貼り付けを終了する前に、上記間隔を距離d
2から距離d
1に戻してもよいが、製造効率、タイヤの重量バランスの観点からは、シーラント材の貼り付けを終了するまで距離d
2であることが好ましい。
【0132】
また、貼り付け開始から所定時間の間は上記距離d
1の値を一定に保ち、所定時間経過後は上記距離d
2の値を一定に保つことが好ましいが、d
1<d
2の関係を満たす限り、距離d
1及びd
2の値は必ずしも一定でなくてもよい。
【0133】
上記距離d
1の値は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは0.5mm以上である。0.3mm未満であると、ノズルの先端がタイヤの内周面に近すぎるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、上記距離d
1の値は、好ましくは2mm以下、より好ましくは1mm以下である。2mmを超えると、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。
【0134】
上記距離d
2の値も特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.3mm以上、より好ましくは1mm以上であり、また、好ましくは3mm以下、より好ましくは2mm以下である。距離d
2は、上述の調整後の間隔d
0と同一であることが好ましい。
【0135】
なお、本明細書において、タイヤの内周面とノズルの先端との距離d
1、d
2とは、タイヤの内周面とノズルの先端とのタイヤの半径方向の距離である。
【0136】
シーラント材を貼り付ける際におけるタイヤの回転速度は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは30m/min以下、より好ましくは20m/min以下である。5m/min未満である場合及び30m/minを超える場合には、均一な厚さのシーラント材を貼り付けることが困難となる。
【0137】
以上の工程により、第2実施形態のシーラントタイヤを製造することができる。
図6は、第2実施形態のシーラントタイヤに貼り付けられているシーラント材の一例を模式的に示す説明図である。
【0138】
略紐状形状のシーラント材20は、タイヤの周方向に巻き付けられており、連続的にらせん状に貼り付けられている。そして、シーラント材20の長さ方向における一方の端部が、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部21となっている。この幅広部21が、シーラント材の貼り付け開始部分に対応している。
【0139】
シーラント材の幅広部の幅(塗布後のシーラント材の幅広部の幅、
図6中、W
1で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、幅広部以外の幅(
図6中、W
0で示される長さ)の103%以上が好ましく、110%以上がより好ましく、120%以上が更に好ましい。103%未満では、幅広部を設ける効果が充分に得られないおそれがある。また、シーラント材の幅広部の幅は、幅広部以外の幅の210%以下が好ましく、180%以下がより好ましく、160%以下が更に好ましい。210%を超えると、幅広部を形成するためにノズルの先端をタイヤの内周面に過度に近づける必要があるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。
【0140】
なお、シーラント材の幅広部の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。例えば、幅広部は、貼り付け開始部分の幅が最も広く、長さ方向につれて幅が狭くなっていく形状であってもよい。ここで、本明細書において、幅が実質的に一定とは、幅の変動が90〜110%(好ましくは97〜103%、より好ましくは98〜102%、更に好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0141】
シーラント材の幅広部の長さ(塗布後のシーラント材の幅広部の長さ、
図6中、L
1で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは650mm未満、より好ましくは500mm未満、更に好ましくは350mm未満、特に好ましくは200mm未満である。650mm以上であると、タイヤの内周面にノズルの先端を近づけている時間が長くなるため、シーラント材がノズルに付着しやすくなり、ノズルを掃除する頻度が高くなるおそれがある。また、タイヤの重量バランスが崩れるおそれがある。なお、シーラント材の幅広部の長さは短いほど好ましいが、タイヤの内周面とノズルの先端との距離を制御することを考慮すると、10mm程度が限界である。
【0142】
シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、
図6中、W
0で示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは1.3mm以上、更に好ましくは1.5mm以上である。0.8mm未満であると、シーラント材をタイヤの内周面に巻き付ける回数が多くなり、製造効率が低下するおそれがある。また、シーラント材の幅広部以外の幅は、好ましくは18mm以下、より好ましくは13mm以下、更に好ましくは9.0mm以下、特に好ましくは7.0mm以下、最も好ましくは6.0mm以下、より最も好ましくは5.0mm以下である。である。18mmを超えると、重量アンバランスが発生しやすくなるおそれがある。W
0は、上述のWと同一であることが好ましい。
【0143】
なお、シーラント材の幅広部以外の幅は、長さ方向において実質的に一定であることが好ましいが、実質的に一定でない箇所があってもよい。
【0144】
シーラント材が貼り付けられている領域の幅(以下、貼り付け領域の幅ともいい、
図6ではW
1+6×W
0で表される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、トレッド接地幅の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、また、120%以下が好ましく、110%以下がより好ましい。
【0145】
本明細書において、トレッド接地幅は、以下のように定められる。まず、正規リムにリム組みされかつ正規内圧が充填された無負荷の正規状態のタイヤに、正規荷重を負荷してキャンバー角0度で平面に接地させたときの最もタイヤ軸方向外側の接地位置を「接地端」Teと定める。そして、この接地端Te、Te間のタイヤ軸方向の距離をトレッド接地幅TWと定める。特に断りがない場合、タイヤ各部の寸法等は、この正規状態で測定された値である。
【0146】
上記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めているリムであり、JATMAであれば“標準リム”、TRAであれば“Design Rim”、ETRTOであれば“Measuring Rim”となる。また、上記「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば“最高空気圧”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“INFLATION PRESSURE”とするが、タイヤが乗用車用である場合には180kPaとする。
【0147】
また、上記「正規荷重」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば“最大負荷能力”、TRAであれば表“TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES”に記載の最大値、ETRTOであれば“LOAD CAPACITY”であるが、タイヤが乗用車用の場合には上記荷重の88%に相当する荷重とする。
【0148】
第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材は、幅方向に重ならないように貼り付けられていることが好ましく、隙間なく貼り付けられていることがより好ましい。
【0149】
また、第2実施形態のシーラントタイヤでは、シーラント材の長さ方向におけるもう一方の端部(貼り付け終了部分に対応する端部)も、長さ方向に隣接する部分よりも幅が広い幅広部となっていてもよい。
【0150】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)は特に限定されないが、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.5mm以上、更に好ましくは2.0mm以上、特に好ましくは2.5mm以上であり、また、好ましくは10mm以下、より好ましくは8.0mm以下、更に好ましくは5.0mm以下である。1.0mm未満であると、タイヤがパンクした際にパンク穴を確実に塞ぐことが困難となる。また、10mmを超えても、パンク穴を塞ぐ効果はあまり変わらず、タイヤの重量が増加してしまうため好ましくない。
【0151】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ)は、実質的に一定であることが好ましい。これにより、タイヤのユニフォミティーの悪化をより防止でき、より重量バランスに優れたシーラントタイヤを製造できる。
【0152】
シーラント材の厚さ(塗布後のシーラント材の厚さ、シーラント層の厚さ、
図8中、Dで示される長さ)と、シーラント材の幅広部以外の幅(塗布後のシーラント材の幅広部以外の幅、
図6中、W
0で示される長さ)の比率(シーラント材の厚さ/シーラント材の幅広部以外の幅)は、好ましくは0.6〜1.4、より好ましくは0.7〜1.3、更に好ましくは0.8〜1.2、特に好ましくは0.9〜1.1である。該比率が1.0に近いほど、シーラント材の形状が理想的な紐状形状となり、シール性の高いシーラントタイヤをより生産性良く製造できる。
【0153】
シーラント材の断面積(塗布後のシーラント材の断面積、
図8では、D×Wで算出される面積)は、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、好ましくは0.8mm
2以上、より好ましくは1.95mm
2以上、更に好ましくは3.0mm
2以上、特に好ましくは3.75mm
2以上であり、好ましくは180mm
2以下、より好ましくは104mm
2以下、更に好ましくは45mm
2以下、特に好ましくは35mm
2以下、最も好ましくは25mm
2以下である。
【0154】
第2実施形態では、シーラント材の粘度が上記範囲内であっても、特に、粘度が比較的高くても、貼り付け開始部分に対応するシーラント材の幅を広くすることにより、当該部分の接着力を改善し、当該部分におけるシーラント材の剥離を防止することができる。
【0155】
第2実施形態のシーラントタイヤは、上記の製造方法で製造することが好ましいが、シーラント材の少なくとも一方の端部を幅広部とすることができる限り、他の任意適当な製造方法で製造してもよい。
【0156】
上述の説明、特に、第1実施形態の説明では、タイヤの内周面にシーラント材を塗布する際に、非接触式変位センサを用いる場合について説明したが、本発明では、非接触式変位センサによる測定を行わずに、予め入力しておいた座標値に基づいて、ノズル及び/又はタイヤの移動を制御してタイヤの内周面にシーラント材を塗布してもよい。
【0157】
上述の製法等により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造できる。なかでも、シーラント材の流動等による問題が生じにくく、タイヤサイズが変わってもプログラミングで対応できる等のメリットもあるため、シーラント層は、加硫成形済みのタイヤの内周面にシーラント材を塗布する製法により形成されたものであることが好ましい。ユニフォミティーの悪化を抑制できるという理由から、シーラント層は、略紐状形状のシーラント材を連続的にらせん状にタイヤの内周面に塗布する製法により形成されたものであることが好ましい。シーラント材のハンドリングが容易で生産性が高いという理由により、架橋剤を含む原料を連続混練機により混合することにより順次調製されるシーラント材を順次タイヤの内周面に塗布する製法により形成されたものであることが好ましい。すなわち、上述の製法により得られたシーラントタイヤに本発明の手法、すなわち、保管中はシーラント層をシートで覆い、使用前にシートを除去する手法を適用することにより、上述の製法により得られたシーラント材は流動等による問題が生じにくく、シートを除去した場合であっても優れたシール性が得られるため、シーラントタイヤをリム組みする前に、シートを除去することにより、より好適にシール性に優れたシーラントタイヤを提供できる。
【0158】
上述の製法等により、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を有するシーラントタイヤを製造した後、すなわち、シーラント材をタイヤの内周面に塗布することにより、インナーライナーのタイヤ半径方向内側にシーラント層を形成する工程を行った後、本発明では、更に、形成されたシーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを設ける工程と、シーラントタイヤをリム組みする前に上記シートを除去する工程とを行う。
【0159】
<シートを設ける工程>
シートを設ける工程では、インナーライナーのタイヤ半径方向内側に形成されたシーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを設ける。シーラント層を構成するシーラント材は、粘着力を有するため、シートをシーラント層に接触させることにより容易にシーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを設けることが可能である。シートは、タイヤ周方向に隙間なく設けられることが好ましい。
【0160】
シーラント層のタイヤ半径方向内側にシートが設けられたシーラントタイヤの断面の一例を
図10に模式的に示す。
図10では、シーラント層22のタイヤ半径方向内側にシート23が設けられている。
【0161】
シートの厚みは、好ましくは0.5〜10mm、より好ましくは1.0〜5.0mmである。
【0162】
シートのタイヤ幅方向の長さ(
図10中、W
3で示される長さ)は、特に限定されないが、シーラント材が貼り付けられている領域の幅(
図10中、W
2で示される長さ)−20mmよりも大きいことが好ましく、シーラント材が貼り付けられている領域の幅よりも大きいことがより好ましく、シーラント材が貼り付けられている領域の幅+20mmよりも大きいことが更に好ましい。一方、上限は特に限定されないが、シーラント材が貼り付けられている領域の幅+80mmよりも小さいことが好ましく、シーラント材が貼り付けられている領域の幅+65mmよりも小さいことがより好ましい。これにより、シーラント材が貼り付けられている領域をほぼシートにより覆うことができ、シーラント材への異物の付着を好適に防止できる。
【0163】
また、シートのタイヤ幅方向の長さ(
図10中、W
3で示される長さ)は、特に限定されないが、シーラント材が貼り付けられている領域の幅(
図10中、W
2で示される長さ)よりも6〜60mm大きいことが好ましく、シーラント材が貼り付けられている領域の幅よりも25〜55mm大きいことがより好ましい。これにより、シーラント材が貼り付けられている領域をほぼシートにより覆うことができ、シーラント材への異物の付着を好適に防止できる。
【0164】
シートのタイヤ幅方向の長さ(
図10中、W
3で示される長さ)は、特に限定されないが、シーラント材が貼り付けられている領域の幅(
図10中、W
2で示される長さ)の80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、100%以上が更に好ましく、110%以上が特に好ましく、また、150%以下が好ましく、140%以下がより好ましく、135%以下が更に好ましい。これにより、シーラント材が貼り付けられている領域をほぼシートにより覆うことができ、シーラント材への異物の付着を好適に防止できる。
【0165】
シートのタイヤ幅方向の長さが、実質的に一定であることが好ましい。これにより、シートを設ける工程を自動化しやすく、コストダウンに有効である。
ここで、本明細書において、長さが実質的に一定とは、長さの変動が98〜102%(好ましくは99〜101%)に収まることを意味する。
【0166】
シートは、シーラント層の全面と密着している必要はなく、少なくとも、タイヤ赤道面近傍領域でシーラント層とシートが密着していればよい。すなわち、シートのタイヤ幅方向中央部において、シーラント層とシートが密着していればよい。シートのタイヤ幅方向中央部において、シーラント層とシートが密着していれば、シートの張力により、タイヤとの一体化は損なわれないためである。一方、全面に密着させようとすると、タイヤ幅方向は内径が異なる(トレッド端側に行くに従い内周が小さくなる)ことからしわが生じ、無理に押さえるとしわが発生しシーラント材に転写され、シーラント材の厚みが部分的に変わってしまい、シール性を損なうおそれがある。また、それにより外観が悪くなり商品性が低下してしまうおそれもある。
【0167】
具体的には、例えば、
図11のように、タイヤ赤道面(
図11のCL)近傍領域でシーラント層22とシート23が密着していればよく、シートの両端部においては、シーラント層22とシート23が密着していなくてよい。シートの両端部において、シーラント層とシートが密着していないことにより、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去することができる。
【0168】
シートのタイヤ幅方向中央部におけるシーラント層とシートが密着している密着領域のタイヤ幅方向の長さ(
図11中、W
4で示される長さ)は、特に限定されないが、シーラント材が貼り付けられている領域の幅(
図10中、W
2で示される長さ)の5〜50%が好ましく、10〜25%がより好ましい。これにより、シーラント材への異物の付着を好適に防止できると共に、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去することができる。
【0169】
シートのタイヤ幅方向中央部におけるシーラント層とシートが密着している密着領域のタイヤ幅方向の長さ(
図11中、W
4で示される長さ)は、特に限定されないが、好ましくは5〜150mm、より好ましくは10〜130mm、更に好ましくは15〜110mm、特に好ましくは20〜90mm、最も好ましくは25〜60mmである。これにより、シーラント材への異物の付着を好適に防止できると共に、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去することができる。
【0170】
図12は、シーラントタイヤを輪切りした際の断面の一例を模式的に示す説明図である。複数枚のシートによりシーラント層を覆ってもよいが、
図12に示すように、シートは加工、取り外しがしやすいように、一枚のシートをタイヤ周方向にオーバーラップするように設けることが好ましい。オーバーラップしている長さは、好ましくは5〜70mm、より好ましくは5〜50mmである。これにより、シーラント材への異物の付着を好適に防止できると共に、後述するシートを除去する工程において、オーバーラップしている部分を掴んでシートを除去することにより、容易にシートを除去することができる。なお、オーバーラップが長すぎてもシート端部が浮きやすく却って異物が入りやすくなり逆効果になる。
【0171】
上記シートとしては、シート状のものであれば特に限定されないが、例えば、合成樹脂、紙を使用できる。
【0172】
合成樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂、アクリル樹脂等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、アルキド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。なかでも、本発明の効果がより好適に得られるという理由から、熱可塑性樹脂が好ましく、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニルがより好ましく、ポリプロピレンが更に好ましい。
【0173】
紙としては、例えば、和紙、洋紙、コピー紙、新聞紙、不織布、上質紙等が挙げられる。なかでも、和紙、洋紙、コピー紙、新聞紙、不織布が好ましく、洋紙、不織布がより好ましい。
【0174】
シートは、材質として均一であっても、各種材質が混ざっていてもよく、特定の加工(撥水性、防汚性、離型性、電飾、意匠の印刷等)を施したものでもよい。シーラント層が高い粘着性を有するため、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去できるように、シートは、離型処理が施されたシートであることが好ましい。また、物流中や保管中にタイヤ内部に水が入ることがあるが、離型処理が施されたシートを使用することにより、水に濡れた状態でもシートが破れたりすることもなく、また、水に濡れた状態でも、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去できる。
【0175】
なお、離型処理は、シーラント層に接する面に施されていればよく、コストという観点から、シーラント層に接する面にのみ離型処理が施されたシートを使用することが好ましい。また、シートのタイヤ幅方向中央部にのみ離型処理を施すこととしてもよい。また、離型処理としては、特に限定されず、公知の離型処理を適用でき、公知の方法により行うことができる。なかでも、シリコン物質で表面処理することが好ましく、ポリラミネートした後、シリコン物質で表面処理することがより好ましい。上記シートが、紙の場合はポリラミネートした後、シリコン物質で表面処理した離型紙であることが好ましい。上記シートが、合成樹脂の場合は、シリコン物質で表面処理した離型シートであることが好ましい。
【0176】
離型処理が施されたシートのなかでも、コスト、異物の付着防止性能、シートの除去しやすさという観点から、離型紙が好ましい。
【0177】
離型紙としては、セパレート紙、セパ紙、剥離紙、ポリシート等の従来公知のものを好適に使用できる。なかでも、ポリラミネートした後、シリコン物質で表面処理した離型紙であることが好ましく、剥離紙がより好ましい。
【0178】
ポリラミネート法によりシートに塗設又は貼着される物質としては、特に限定されないが、例えば、上述の熱可塑性樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ポリエチレン等が挙げられる。なかでも、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去できるという理由から、シリコーン樹脂、ポリエチレンが好ましい。
【0179】
ポリラミネート法によりシートに上記物質を塗設又は貼着する方法は、公知の方法により行うことができる。
【0180】
シリコン物質としては、ケイ素原子を有する物質であれば特に限定されないが、例えば、シリカ、シリコーン、フッ素系シリコン剤等が挙げられる。なかでも、後述するシートを除去する工程において、容易にシートを除去できるという理由から、フッ素系シリコン剤が好ましい。
【0181】
シリコン物質による表面処理は、公知の方法により行うことができる。
【0182】
シートを設ける工程により、形成されたシーラント層のタイヤ半径方向内側にシートが設けられる。このシートにより、物流中や保管中にシーラント材にごみなどの異物の付着を防止できる。
【0183】
以下、シートを設ける工程を、本発明のシート貼り付け装置を用いて実施する場合について説明する。
【0184】
<シート貼り付け装置の第1実施形態>
図13は、本発明の第1実施形態に係るシート貼り付け装置を模式的に示す説明図であり、
図14は、
図13に示すシート貼り付け装置にシートを設置した状態を模式的に示す説明図であり、
図15は、
図13に示すシート貼り付け装置によってシーラント層にシートを貼り付けていく状態を模式的に示す説明図である。
図15において、タイヤ10は、シーラントタイヤであり、内周面にシーラント層(図示せず)を有している。
【0185】
シート貼り付け装置200Aは、タイヤ10の外部からシーラント層のタイヤ半径方向内側に向かってシート23を連続的に供給するシート供給機構201と、シート供給機構201から供給されたシート23を折り返し、シート23の進行方向を変更するシート折り返し機構202と、シート折り返し機構202によって折り返されたシート23をシーラント層に接触させ、シーラント層のタイヤ半径方向内側にシート23を貼り付けるシート貼り付け機構203とを備える。
【0186】
また、シート貼り付け装置200Aは、シート折り返し機構202によって折り返されたシート23をシート貼り付け機構203に向かって案内するシート案内機構204と、タイヤ10を起立状態で回転可能に保持するタイヤ回転保持機構205と、タイヤ10の上部を押さえるタイヤ上部押さえ機構206と、シート貼り付け機構203よりも先まで繰り出されたシート23の端部を固定するシート固定機構208とを更に備える。
【0187】
シート23は、シート供給機構201から引き出された後、シート折り返し機構202、シート案内機構204、及びシート貼り付け機構203をこの順に通過する。
【0188】
シート供給機構(レットオフ機構)201は、ロール状のシート23(シート巻回体)を回転可能に保持するシャフト201aを備えている。シート巻回体からシート23の端部を引っ張ると、シャフト201aの回転によってシート巻回体が回転し、シート23を連続的に繰り出すことができる。
【0189】
また、シート供給機構201は、シャフト201aの回転速度を一定の範囲内に制限するブレーキ機構(図示せず)を備えている。ブレーキ機構によって回転速度を調整することで、シート23に加わる張力を一定の範囲内に保つことができるため、シート23の貼付け時(シート巻回体が回転しているとき)や、シート23の貼り付け完了時(シート巻回体の回転が停止したとき)にシート23のたるみが発生することを防止できる。ブレーキ機構としては特に限定されず、エアブレーキなど、一般的なものを使用できる。エアブレーキの場合、レギュレータなどを設置して、材料に合った適正な力のブレーキをかけることが好ましい。
【0190】
シート供給機構201は、タイヤ10の外部からシーラント層のタイヤ半径方向内側に向かってシート23を供給し得る位置に配置すればよいが、本実施形態のように、シート供給機構201からのシート23の繰り出し方向がタイヤ軸方向と略平行となる位置に配置することが好ましい。シート供給機構201をこのように配置することで、シート23とタイヤ10とが干渉(接触)しにくくなるため、本発明の装置に適用可能なタイヤサイズやビード径の範囲を広げることができる。
【0191】
シート供給機構201から繰り出されたシート23は、シート折り返し機構202に向かって進行する。シート供給機構201から供給されたシート23がシート折り返し機構202に巻き付いて折り返されることで、シート23の進行方向が変更される。
【0192】
シート折り返し機構202の角度は、シート供給機構201などの配置に合わせて適宜設定すればよいが、より高精度なシート23の貼り付けが可能になるという理由から、本実施形態のように、折り返し後のシート23の進行方向(シート23の長さ方向)がタイヤ10の周方向に対して略平行となる角度に設定することが好ましい。例えば、シート23の繰り出し方向がタイヤ軸方向と略平行となる位置にシート供給機構201が配置されている場合、シート折り返し機構202の角度は、タイヤ周方向に対して略45度にすればよい。
【0193】
本実施形態のように、シート折り返し機構がローラである場合、シートに余分な負荷をかけずにシートの変更方向を容易に変更することができ、より精度よくシートの貼り付けを行うことが可能となる。
【0194】
シート折り返し機構202から繰り出されたシート23は、シート案内機構204に向かって進行する。シート案内機構204は、2本のローラ(第1案内ローラ204a、第2案内ローラ204b)で構成されている。シート案内機構204に到達したシート23は、まず、第1案内ローラ204aによって進行方向が反転されてから、第2案内ローラ204bによって進行方向がタイヤ半径方向下側に向けられた後、シート貼り付け機構203まで案内される。このように、シート案内機構204によってシート23の進行方向を変更することで、シート貼り付け機構203によるシート23の貼り付け位置を調整することが可能となる。
なお、シート案内機構204の構成はこれに限定されず、シート貼り付け機構203などの位置に合わせて適宜変更可能である。
【0195】
第1案内ローラ204aには、シート23の幅に合わせてセットカラー204cが2つ設置されている。これにより、シート23の横方向のズレを防止することができる。
なお、本実施形態において、セットカラー204cは、第1案内ローラ204aにのみ設置されているが、これに限定されず、他のローラに設置されていてもよい。
【0196】
本実施形態では、シート23の貼り付け位置が、タイヤ10の下部の内周面の略中心となるよう、シート案内機構204及びシート貼り付け機構203を配置している。この位置は、タイヤサイズが変更となった場合に対応しやすく、また、シート貼り付け機構203によるシート23の貼り付けを安定的に行うことができるという点で有利である。
【0197】
また、本実施形態では、シート貼り付け機構203に案内されるシート23の幅方向の中心と、タイヤ10の幅方向の中心とが平面視で重なるように、シート折り返し機構202及びシート案内機構204を配置している。これにより、シート23のより高精度な貼り付けが可能となる。
【0198】
シート貼り付け機構203を通過したシート23の先端部分は、シート貼り付け機構203の上部に設けられたシート固定機構208で固定される。本実施形態では、クリップ状の部材でシート固定機構208を構成しているが、シート23を固定可能な部材であれば特に限定されず、他の部材も使用可能である。
【0199】
以上、説明した手順により、シート23の設置が完了すると、
図14に示した状態となる。
【0200】
次に、
図15に示すように、タイヤ10をシート貼り付け装置200Aに取り付ける。
【0201】
シート折り返し機構202、シート貼り付け機構203、昇降用シリンダ203a、及びシート案内機構204は、1つのユニット(以下、貼り付けユニットともいう)として組み付けられている。貼り付けユニットは、高さ調整を行うためのユニット高さ調整機構207を備えており、タイヤの取り付け・取り外し時等には、必要に応じて貼り付けユニットの高さを調節する。
【0202】
図16は、シート折り返し機構202、シート貼り付け機構203、昇降用シリンダ203a、及びシート案内機構204で構成されるユニット(貼り付けユニット)をタイヤの幅方向から見た状態を模式的に示す説明図である。
図16において、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。
図16に示すように、本実施形態では、タイヤの幅方向から見て、貼り付けユニットを構成する機構(特に、シート折り返し機構202、シート貼り付け機構203、及び昇降用シリンダ203a)がT字型になるように配置している。タイヤ内部は円形であるため、各機構をこのように配置することで、貼り付けユニットをタイヤ内部に配置しやすくなり、作業性を向上できる。
【0203】
シート貼り付け装置200Aに取り付けられたタイヤ10は、タイヤ回転保持機構205により、起立状態で回転可能に保持される。タイヤ回転保持機構205は2本のローラで構成されており、これらのローラの回転に伴い、タイヤ10も回転する。タイヤ10を取り付けた後、シート23をシーラント層に貼り付ける前に、タイヤ10を回転させてセンタリング(中央合わせ)を行うことが好ましい。これにより、シート23の貼り付け時のタイヤ10の蛇行を防止できる。
【0204】
タイヤ10を取り付けて、センタリングを行った後、まず、ユニット高さ調整機構207によって貼り付けユニットを下降させ、シート23をタイヤ10の内周面に向かってに挿入する。その後、シート貼り付け機構203に接続された昇降シリンダ203aにより、シート貼り付け機構203を下降させ、タイヤ10の内周面のシーラント層とシート23とを接触させる。このシート貼り付け機構203の下降時の張力によってシート固定機構208に固定されたシート23の先端が外れるよう、シート固定機構208の固定力や、上述のシート供給機構201のブレーキ機構による張力を調整しておくと、作業性の面で有利である。
なお、シート貼り付け機構203の昇降のストロークが長く取れるレイアウトである場合には、高さ調整機構207を省略することも可能であるが、高さ調整機構207を設けて、シート貼り付け機構203の昇降のストロークを最小限にしておくと、シート貼り付け機構203の下降時にシート固定機構208から外れたシート23の先端部が不安定になりにくいという点で有利である。
【0205】
そして、シート貼り付け機構203によってシート23とシーラント層が接触した状態でタイヤ10を回転させることで、シーラント層のタイヤ半径方向内側にシート23を順次貼り付けていくことができる。
【0206】
シート23の貼り付け時にタイヤ10を回転させる操作は、手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。自動で行う場合、エンコーダ(位置センサ)など、必要な回転が行われたことを検出可能な機構を設置しておき、自動で回転が停止されるように制御すればよい。
【0207】
シート貼付け時のタイヤの回転速度は特に限定されないが、上述のシーラント材を塗布する際におけるタイヤの回転速度と同様、好ましくは5m/min以上、より好ましくは10m/min以上であり、また、好ましくは40m/min以下、より好ましくは30m/min以下、更に好ましくは20m/min以下である。
【0208】
シート23の貼り付け時のシーラント層の変形や損傷の発生を防止するとともに、シーラント層の変形に伴うシート23のしわの発生を防止するため、昇降シリンダ203aは、レギュレータなどで圧力調整を行うことが好ましい。同様の理由から、シート貼り付け機構203を構成するローラは、ウレタンやスポンジなどの緩衝材で覆うことが好ましい。
【0209】
タイヤ10の回転時の浮き上がりを防止するため、タイヤ10の上部は、シリンダなどで昇降可能に構成されたタイヤ上部押さえ機構206によって押さえられている。タイヤ上部押さえ機構206の圧力が高すぎると、タイヤ10が変形し、タイヤ10の内周面に塗布されたシーラント層が変形したり、剥がれたりする可能性があるため、レギュレータなどで圧力調整を行うことが好ましい。
【0210】
シート貼り付け機構によりシートを押圧する圧力は、シーラント材の粘着性、シートにかかる張力、及びしわ発生の防止という観点から適宜調整すればよいが、例えば、0.01〜1.0MPaである。
【0211】
シーラント層へのシート23の貼り付けが完了すると、タイヤ10の回転を停止させる。そして、シート貼り付け機構203の手前又は以降の部分で、シート23を手動又は自動でカットし、再び、シート23の先端部分をシート固定機構208に固定する。
【0212】
以上、説明した作業を繰り返すことで、1つのシート巻回体を使用して、複数のシーラントタイヤに対してシートの貼り付け作業を実施することができる。
【0213】
<シート貼り付け装置の第2実施形態>
図17は、本発明の第2実施形態に係るシート貼り付け装置を模式的に示す説明図である。第2実施形態のシート貼り付け装置200Bは、シーラントタイヤのビード部の幅を広げるビード部広幅化機構209を更に備える点を除き、第1実施形態のシート貼り付け装置200Aと同様であるため、ビード部広幅化機構209以外の説明は省略する。
【0214】
ビード部広幅化機構209は、2組の装置で構成されており、各装置は、タイヤの幅方向に移動可能な台座209aと、互いに位置の変わらない2本のビード部押さえローラ209bとを備えている。
【0215】
図18は、ビード部広幅化機構の動作を模式的に示す説明図である。
図18において、X方向がタイヤの幅方向(軸方向)、Y方向がタイヤの周方向、Z方向がタイヤの半径方向である。タイヤ10を取り付ける際には、台座209aをタイヤの幅方向外側に向かって移動させ、タイヤ10を取り付けた後は、台座209aをタイヤの幅方向内側に向かって移動させる。そして、ビード部押さえローラ209bをタイヤ10の開口部に挿入してから、再び、台座209aをタイヤの幅方向外側に向かって移動させることで、ビード部の幅、すなわち、タイヤ10の開口部の幅を広げることができる。この操作により、
図19に示すように、ビード部を広げた状態でタイヤを保持することができる。なお、
図19では、シートや貼り付けユニットなどの記載を省略している。
【0216】
ビード部広幅化機構209によってビード部を広げる操作は、手動で行ってもよいし、自動で行ってもよい。自動で行う場合、中心から両側に同じストロークとなるような機構としたシリンダなどを、レギュレータなどの圧力調整できる装置と組み合わせて使用するか、モーター、ボールねじの組み合わせにエンコーダなどを更に組み合わせて使用し、同じサイズのタイヤに対しては常に一定幅を広げるように設定することでシートの貼り付けを安定させることができる。
【0217】
ビード部広幅化機構209によってビード部の幅を広げることで、シート貼付け時のシートとビード部との接触を防止できる。また、ビード部広幅化機構209によってビード部の幅を広げると、ビード部広幅化機構209がタイヤの両側からタイヤに接触することになる。これにより、タイヤの回転時の横方向のズレが防止されるため、より高精度なシート貼り付けを行うことが可能となる。
【0218】
ビード部押さえローラ209bは、タイヤのサイズに合わせて角度を調整することが好ましいが、その影響は比較的小さいことから、作業を簡略化して、一定角度で運用してもよい。この場合、タイヤのサイズ(ビード径)によっては、ビード部押さえローラ209bとビード部との摩擦によってタイヤが上昇する方向や下降する方向に力が働く場合がある。よって、ビード部押さえローラ209bを一定角度で運用する場合には、タイヤの浮き上がりを防止するため、本実施形態のように、タイヤ上部押さえ機構206を設けることが好ましい。
【0219】
本実施形態では、シートを貼り付ける際のタイヤ10の回転を、タイヤ回転保持機構205の回転で行ってもよいし、ビード部押さえローラ209bの回転で行ってもよいが、回転中心が一定となってシートの貼り付けが安定しやすいという理由から、ビード部押さえローラ209bの回転で行うことが好ましい。
【0220】
以上、説明したように、本発明のシート貼り付け装置を用いた場合、シートを設ける工程では、シーラントタイヤの外部からシーラント層のタイヤ半径方向内側に向かってシートを連続的に供給する工程(シート供給工程)と、供給されたシートを折り返し、シートの進行方向を変更する工程(シート折り返し工程)と、折り返されたシートをシーラント層に接触させ、シーラント層のタイヤ半径方向内側にシートを貼り付ける工程(シート貼り付け工程)とを実施することになる。これにより、シーラント層にシートが貼り付けられたシート付きシーラントタイヤを高精度に効率良く製造することができる。
なお、本明細書では、2つの実施形態に基づいて本発明のシート貼り付け装置について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない限り、種々の変更を加えてもよい。
【0221】
<シートを除去する工程>
シーラントタイヤをリム組みする前にシートを除去する工程を行う。シーラントタイヤをリム組みする前に、すなわち、使用する前に、シートを除去することにより、シートに起因したシール性の低下を抑制でき、シール性に優れたシーラントタイヤを提供できる。
【0222】
シートを除去する方法は特に限定されず、例えば、人の手により、シートを剥がせばよい。シーラント層に接する面に離型処理が施されたシートを使用したり、タイヤ周方向にオーバーラップするように設けられた一枚のシートを使用したりした場合、より容易にシートを剥がすことができる。