(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
隣り合う前記線材同士の接触圧が高まるような外力が加わると、隣り合う前記線材のうちの一方の線材が他方の線材に乗り上げる場合が生じ、前記外力が減少または解除されると、前記一方の線材は、その復元力により、前記他方の線材の前記突出部を前記一方の線材の湾曲部が摺動して、元の位置に戻るよう構成されている請求項1または2に記載のコイル。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明のコイルおよびガイドワイヤを添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0026】
<第1実施形態>
図1は、本発明のガイドワイヤ(コイル)の第1実施形態を示す部分縦断面図(概略側面図)、
図2は、
図1に示すコイルが変形する過程を示す縦断面図、
図3は、
図1に示すコイルの製造方法を説明するための図(斜視図)、
図4は、
図1に示すコイルを製造する過程を順に示す図(縦断面図)である。なお、以下では、説明の都合上、
図1、
図2および
図4中の右側を「基端」、左側を「先端」と言い、上側を「上」、下側を「下」と言う。また、
図1〜
図4では、理解を容易にするため、コイルおよびガイドワイヤの長さ方向を短縮し、コイルおよびガイドワイヤの径方向(太さ方向)を誇張して模式的に図示しており、長さ方向と径方向の比率は、実際とは異なる(
図5も同じ)。
【0027】
図1に示すガイドワイヤ1は、カテーテル(内視鏡も含む)の内腔に挿入して用いられるカテーテル用ガイドワイヤであって、先端側に配置された第1ワイヤ2と、第1ワイヤ2の基端側に配置された第2ワイヤ3とを接合(接続)してなる可撓性を有するワイヤ本体10と、螺旋状のコイル4とを備えている。ガイドワイヤ1の全長は、特に限定されないが、200〜5000mm程度であるのが好ましい。また、ガイドワイヤ1の外径は、特に限定されないが、通常、0.2〜1.2mm程度であるのが好ましい。
【0028】
第1ワイヤ2は、柔軟性または弾性を有する線材(芯材)で構成されている。第1ワイヤ2の長さは、特に限定されないが、20〜1000mm程度であるのが好ましい。
【0029】
本実施形態では、第1ワイヤ2は、その外径が一定である部分(外径一定部)と、外径が先端方向へ向かって漸減しているテーパ状の部分(外径漸減部)(テーパ部)とを有する。図示の構成では、第1ワイヤ2は、基端側から先端側に向って順に、外径一定部25と、テーパ部24と、外径一定部25より外径が小さい外径一定部23と、テーパ部(本体側テーパ部)22と、最先端部21とを有している。
【0030】
前記テーパ部22、24を有することにより、第1ワイヤ2の剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)を先端方向に向かって徐々に減少させることができ、その結果、ガイドワイヤ1は、先端部に良好な柔軟性を得て、血管等の生体管腔(体腔)への追従性、安全性が向上すると共に、折れ曲がり等も防止することができる。
【0031】
テーパ部22、24のテーパ角度(外径の減少率)は、それぞれ、ワイヤ本体10の長手方向(以下、単に「長手方向」と言う)に沿って一定でも、長手方向に沿って変化する部位があってもよい。例えば、テーパ角度(外径の減少率)が比較的大きい箇所と比較的小さい箇所とが複数回交互に繰り返して形成されているようなものでもよい。
【0032】
最先端部21は、例えば、外径一定部23より外径が小さい外径一定部とすることができる。
【0033】
また、最先端部21は、例えば、平板状(リボン状)をなし、所望の形状に変形(リシェイプ:形状付け)させて用いることができるように構成してもよい。一般に、ガイドワイヤでは、誘導するカテーテル等の先端部を血管形状に対応させたり、血管分岐を円滑に誘導したりするために、医師がガイドワイヤの先端部を予め所望の形状に曲げて使用することがあり、このようにガイドワイヤの先端部を所望の形状に曲げることをリシェイプと言う。そして、この最先端部21を設けることにより、リシェイプを容易かつ確実に行うことができ、ガイドワイヤ1を生体内に挿入する際の操作性が格段に向上する。
【0034】
最先端部21の長さは、特に限定されないが、5〜200mm程度であるのが好ましく、10〜150mm程度であるのがより好ましい。特に、最先端部21をリシェイプさせて用いる場合は、最先端部21の長さが長すぎると、その構成材料によっては、ガイドワイヤ1の操作性が低下するおそれがあり、一方、最先端部21の長さが短すぎると、ガイドワイヤ1の先端部の形状を所望の形状にすることができなくなるおそれがある。
【0035】
第1ワイヤ2の構成材料(素材)は、特に限定されず、例えば、Ni−Ti系合金、ステンレス鋼などの各種金属材料を使用することができるが、擬弾性を示す合金(超弾性合金を含む。)であるのが好ましい。より好ましくは超弾性合金である。超弾性合金は、比較的柔軟であるとともに復元性があり、曲がり癖が付き難いので、第1ワイヤ2を超弾性合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、その先端側の部分に十分な柔軟性と曲げに対する復元性が得られ、複雑に湾曲・屈曲する血管に対する追従性が向上し、より優れた操作性が得られるとともに、第1ワイヤ2が湾曲・屈曲変形を繰り返しても、第1ワイヤ2に復元性により曲がり癖が付かないので、ガイドワイヤ1の使用中に第1ワイヤ2に曲がり癖が付くことによる操作性の低下を防止することができる。
【0036】
擬弾性合金には、引張りによる応力−ひずみ曲線のいずれの形状も含み、As、Af、Ms、Mf等の変態点が顕著に測定できるものも、できないものも含み、応力により大きく変形(歪)し、応力の除去により元の形状にほぼ戻るものは全て含まれる。
【0037】
超弾性合金の好ましい組成としては、49〜52原子%NiのNi−Ti合金等のNi−Ti系合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(Xは、Be、Si、Sn、Al、Gaのうちの少なくとも1種)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等が挙げられる。このなかでも特に好ましいものは、上記のNi−Ti系合金である。なお、Ni−Ti系合金に代表される超弾性合金は、後述する樹脂被覆層8等の密着性にも優れている。
【0038】
第1ワイヤ2の基端(外径一定部25の基端)には、第2ワイヤ3の先端が接合(接続)されている。第2ワイヤ3は、柔軟性または弾性を有する線材(芯材)で構成されている。第2ワイヤ3の長さは、特に限定されないが、20〜4800mm程度であるのが好ましく、1400〜3000mm程度であるのがより好ましい。
【0039】
第2ワイヤ3の平均外径は、第1ワイヤ2の平均外径より大きい。これにより、ガイドワイヤ1は、その先端側である第1ワイヤ2上では、より柔軟性に富み、基端側である第2ワイヤ3上では、より剛性が高いものとなるので、先端部の柔軟性と優れた操作性(押し込み性、トルク伝達性等)とを両立することができる。
【0040】
前記第1ワイヤ2と第2ワイヤ3との接合方法は、特に限定されず、例えば、溶接やろう接等、種々の方法を用いることができるが、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とは溶接により接合されているのが好ましい。
【0041】
また、前記溶接方法としては、特に限定されず、例えば、摩擦圧接、レーザを用いたスポット溶接、アプセット溶接等の突き合わせ抵抗溶接などが挙げられるが、比較的簡単で高い接合強度が得られることから、突き合わせ抵抗溶接が特に好ましい。
【0042】
第2ワイヤ3は、第1ワイヤ2と異なる材料で構成されており、特に、第1ワイヤ2の構成材料より弾性率(ヤング率(縦弾性係数)、剛性率(横弾性係数)、体積弾性率)が大きい材料で構成されているのが好ましい。これにより、第2ワイヤ3に適度な剛性(曲げ剛性、ねじり剛性)が得られ、ガイドワイヤ1がいわゆるコシの強いものとなって押し込み性およびトルク伝達性が向上し、より優れた挿入操作性が得られる。
【0043】
第2ワイヤ3の構成材料(素材)は、第1ワイヤ2と異なるものであれば特に限定されず、ステンレス鋼(例えば、SUS304、SUS303、SUS316、SUS316L、SUS316J1、SUS316J1L、SUS405、SUS430、SUS434、SUS444、SUS429、SUS430F、SUS302等のSUS全品種)、ピアノ線、コバルト系合金、擬弾性合金などの各種金属材料を使用することができるが、ステンレス鋼またはコバルト系合金であるのが好ましく、ステンレス鋼であるのがより好ましい。第2ワイヤ3をステンレス鋼またはコバルト系合金で構成することにより、ガイドワイヤ1は、より優れた押し込み性およびトルク伝達性が得られる。
【0044】
なお、本実施形態では、ワイヤ本体10は、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3とを接合したものであるが、これに限らず、例えば、1本の連続した線材で構成されていてもよい。
【0045】
ワイヤ本体10の先端部外周、すなわち、第1ワイヤ2の最先端部21、テーパ部22および外径一定部23の外周には、コイル4が設置されている。このコイル4は、線材40を螺旋状に巻回してなる部材であり、ワイヤ本体10の先端部、すなわち、第1ワイヤ2の最先端部21と、テーパ部22と、外径一定部23の基端部を除く部分(外径一定部23の大部分)とを覆うように設置されている。また、第1ワイヤ2は、コイル4の内側のほぼ中心部に挿通されている。
【0046】
図1に示すように、コイル4は、第1ワイヤ2の最先端部21、テーパ部22および外径一定部23に対応し、その外径および内径が一定である部分(外径・内径一定部)と、外径および内径が先端方向へ向かって漸減しているテーパ状の部分(外径・内径漸減部)(テーパ部)とを有する。図示の構成では、コイル4は、基端側から先端側に向って順に、外径・内径一定部43と、テーパ部42と、外径・内径一定部43より外径および内径が小さい外径・内径一定部(内径一定部)41とを有している。これら外径・内径一定部43、テーパ部42および外径・内径一定部41は、それぞれ、第1ワイヤ2の外径一定部23、テーパ部22および最先端部21に位置している。また、ワイヤ本体10の先端部において、そのワイヤ本体(芯材)10の外表面とコイル4の内表面との間の距離が長手方向に沿って実質的に一定になるように構成されている。
【0047】
このように第1ワイヤ2とコイル4とが同心状に配置されることにより、ガイドワイヤ1の先端部分は、偏りのない変形を可能とする。
【0048】
また、コイル4の外径・内径一定部41、テーパ部42および外径・内径一定部43のすべてにおいて、外力を付与しない自然状態で、隣接する2つの線材40同士が接触している。すなわち、線材40同士が隙間なく密に配置されている。
【0049】
この線材40は、先端側に位置する線材40Aと、線材40Aよりも基端側に位置する線材40Bとに分けることができる(
図1参照)。線材40Bは、横断面形状が円形をなし、コイル4の外径・内径一定部43およびテーパ部42を構成している。
【0050】
一方、線材40Aは、横断面形状がコイル4の中心軸300側に湾曲面を有する略半円形をなし、コイル4の外径・内径一定部41を構成している。これにより、外径・内径一定部41の内径を小さくすることなく外径・内径一定部41の外径を小さくすることができる。よって、コイル4内の空間を十分に確保しつつ、ガイドワイヤ1の細径化を図ることができるため、ワイヤ本体10の形状、大きさを選択的に設定することが可能となる。
【0051】
次に、線材40Aについて詳細に説明する。なお、以下では、理解を容易にするため、外径・内径一定部41の一部(線材40Aを3回巻回した部分)について
図2を参照しつつ説明する。この線材40Aを3回巻回した部分を先端側から順に線材41A、線材41B、線材41Cとする。また、線材41Aと線材41Bと線材41Cの構成は同様であるため、以下、線材41Aを代表的に説明する。
【0052】
線材41Aの横断面形状は、湾曲部44と、平坦部45と、突出部46とを有する形状をなしている。
【0053】
湾曲部44は、中心軸300側に設けられ、中心軸300に向って円弧状に湾曲した部分である。湾曲部44の曲率R3は、15×10
3〜5×10
4が好ましく、28×10
3〜4×10
4がより好ましい。
【0054】
平坦部45は、コイル4の外周側に位置し、湾曲部44の曲率より小さい曲率の平坦な形状をなしている。平坦部45の曲率R2は、0〜2×10
4が好ましく、0〜4×10
3がより好ましい。これにより、外径・内径一定部41の外周面の凹凸が少なくなる。よって、外径・内径一定部41の外表面は滑らかになり、外径・内径一定部41の細径化と相まって湾曲した血管内を進みやすくなっている。
【0055】
突出部46は、湾曲部44と平坦部45との基端側の境界部に設けられ、基端側に位置する(隣接する)線材41Bに向って突出している。この突出部46の外表面は、湾曲部44の曲率R3よりも大きい曲率で湾曲している。また、突出部46は、平坦部45と連続しており、平坦部45と突出部46との境界部は滑らかになっている。この突出部46は、自然状態で、線材41Aの湾曲部44の先端部に接触している。
【0056】
突出部46の曲率R1は、3×10
4〜2×10
5が好ましく、6×10
4〜12×10
5がより好ましい。また、突出部46の曲率R1は、湾曲部44の曲率R3の10〜70%が好ましく、30〜40%がより好ましい。
【0057】
ここで、線材40Aに、線材41Aおよび線材41Bの接触圧と、線材41Bおよび41Cの接触圧とが高まるような外力(以下、この外力を単に「外力」という)が加わった場合について説明する。
【0058】
ガイドワイヤ1を生体内で先端側に向って押し込む際、線材40Aに外力が加わる。これにより、線材41Aの突出部46と線材41Bの湾曲部44との接触圧が高まるとともに線材41Bの突出部46と線材41Cの湾曲部44との接触圧が高まる。この外力が、線材41A〜線材41Cが姿勢を維持することができる限界を超える程度に大きい場合には、線材41Bは、線材41Aおよび線材41Cにより
図2(b)中矢印A方向に弾かれる。その際、線材41Bの湾曲部44が線材41Aの突出部46上を摺動し、線材41Bと突出部46が線材41Cの湾曲部44上を摺動して線材41Bは、線材41Aと線材41Cに乗り上げる。
【0059】
この状態から、ガイドワイヤ1の先端側への押し込みを停止、または抑制すると外力を減少または解除すると、線材41Aの突出部46と線材41Bの湾曲部44との接触圧が低下するとともに線材41Bの突出部46と線材41Cの湾曲部44との接触圧が低下する。これにより、線材41B自身の復元力(弾性力)により、線材41Bは、元の位置(自然状態)に戻ろうとする。このとき、線材41Bの湾曲部44は線材41Aの突出部46上を摺動し、線材41Bの突出部46は、線材41Cの平坦部45上を摺動して、線材41Bは元の状態に戻ることができる(
図2(c)参照)。
【0060】
このように線材41Bは、線材41Aおよび線材41Cに乗り上げたとしても容易に元の状態に戻ることができる。よって、線材40Bが線材40Aおよび40Cに乗り上げた状態のままとなる塑性変形を確実に防止することができる。したがって、ガイドワイヤ1の先端に押し込み力および回転力を確実に伝達することができる。このように、ガイドワイヤ1は操作性に優れている。
【0061】
なお、線材41Bが隣接する線材41Aおよび線材41Cに乗り上げた場合について説明したが、線材41Aまたは線材41Cが隣接する線材40Bに乗り上げた場合であっても上記効果を得ることができるのは言うまでもない。また、本実施形態では、突出部46は、基端側に向って突出しているが、先端側に向って突出するよう構成されている場合であっても同様の効果を得ることができる。
【0062】
このようなコイル4は、金属材料で構成されているのが好ましい。コイル4を構成する金属材料としては、例えば、ステンレス鋼、超弾性合金、コバルト系合金や、金、白金、タングステン等の貴金属またはこれらを含む合金(例えば白金−イリジウム合金)等が挙げられる。特に、貴金属のようなX線不透過材料で構成した場合には、ガイドワイヤ1にX線造影性が得られ、X線透視下で先端部の位置を確認しつつ生体内に挿入することができ、好ましい。また、コイル4は、その先端側と基端側とを異なる材料で構成してもよい。例えば、先端側をX線不透過材料のコイル、基端側をX線を比較的透過する材料(ステンレス鋼など)のコイルにて各々構成してもよい。なお、コイル4の全長は、特に限定されないが、5〜500mm程度であるのが好ましい。
【0063】
コイル4の先端部および基端部は、それぞれ、固定材料51および53により第1ワイヤ2に固定されている。また、コイル4の中間部は、固定材料52により第1ワイヤ2に固定されている。固定材料51〜53は、半田(ろう材)で構成されている。なお、固定材料51〜53は、半田に限らず、接着剤でもよい。また、コイル4の固定方法は、固定材料によるものに限らず、例えば、溶接でもよい。また、血管等の体腔の内壁の損傷を防止するために、固定材料51の先端面は、丸みを帯びているのが好ましい。
【0064】
本実施形態では、このようなコイル4が設置されていることにより、ガイドワイヤ1の先端部において適度の柔軟性が得られ、また、第1ワイヤ2は、コイル4に覆われて接触面積が少ないので、摺動抵抗を低減することができ、よって、ガイドワイヤ1の操作性がより向上する。
【0065】
また、ガイドワイヤ1は、ワイヤ本体10の外周面(外表面)の全部または一部を覆う樹脂被覆層8を有している。図示の構成では、第1ワイヤ2のテーパ部24および外径一定部25と、第2ワイヤ3との外周に、それぞれ、樹脂被覆層8が設けられている。
【0066】
この樹脂被覆層8は、種々の目的で形成することができるが、その一例として、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)を低減し、摺動性を向上させることによってガイドワイヤ1の操作性を向上させることがある。
【0067】
ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)の低減を図るためには、樹脂被覆層8は、以下に述べるような摩擦を低減し得る材料で構成されているのが好ましい。これにより、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)が低減されて摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、ガイドワイヤ1の摺動抵抗が低くなることで、ガイドワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に、第1ワイヤ2と第2ワイヤ3の接合部(接合面)6付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0068】
このような摩擦を低減し得る材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(PET、PBT等)、ポリアミド、ポリイミド、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリカーボネート、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂(PTFE、ETFE等)、またはこれらの複合材料が挙げられる。
【0069】
その中でも特に、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、ガイドワイヤ1とカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)をより効果的に低減し、摺動性を向上させることができ、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。また、これにより、ガイドワイヤ1をカテーテル内で移動および/または回転した際に、ガイドワイヤ1のキンク(折れ曲がり)やねじれ、特に溶接部付近におけるキンクやねじれをより確実に防止することができる。
【0070】
また、フッ素系樹脂(またはこれを含む複合材料)を用いた場合には、焼きつけ、吹きつけ等の方法により、樹脂材料を加熱した状態で、ワイヤ本体10への被覆を行うことができる。これにより、ワイヤ本体10と、樹脂被覆層8との密着性は特に優れたものとなる。
【0071】
また、樹脂被覆層8がシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものであると、樹脂被覆層8を形成する(ワイヤ本体10に被覆する)際に、加熱しなくても、ワイヤ本体10に確実かつ強固に密着した樹脂被覆層8を形成することができる。すなわち、樹脂被覆層8をシリコーン樹脂(またはこれを含む複合材料)で構成されたものとする場合、反応硬化型の材料等を用いることができるため、樹脂被覆層8の形成を室温にて行うことができる。このように、室温にて樹脂被覆層8を形成することにより、簡便にコーティングができるとともに、接合部6における接合強度を十分に維持した状態にてガイドワイヤの操作ができる。
【0072】
樹脂被覆層8の厚さは、特に限定されず、樹脂被覆層8の形成目的や構成材料、形成方法等を考慮して適宜されるが、通常は、樹脂被覆層8の厚さ(平均)は、1〜100μm程度であるのが好ましく、1〜30μm程度であるのがより好ましい。樹脂被覆層8の厚さが薄すぎると、樹脂被覆層8の形成目的が十分に発揮されないことがあり、また、樹脂被覆層8の剥離が生じるおそれがある。また、樹脂被覆層8の厚さが厚すぎると、ワイヤ本体10の物理的特性に影響を与えるおそれがあり、また樹脂被覆層8の剥離が生じるおそれがある。
なお、樹脂被覆層8は、単層でもよく、また、2層以上の積層体でもよい。
【0073】
また、本発明では、ワイヤ本体10の外周面(表面)に、樹脂被覆層8の密着性を向上するための処理(粗面加工、化学処理、熱処理等)を施したり、樹脂被覆層8の密着性を向上し得る中間層を設けたりすることもできる。
【0074】
また、ガイドワイヤ1の少なくとも先端部の外面には、親水性材料がコーティングされているのが好ましい。本実施形態では、ガイドワイヤ1のコイル4の外周面(外表面)に、親水性材料で構成された親水性潤滑層7が被覆されている。これにより、親水性材料が湿潤して潤滑性を生じ、ガイドワイヤ1の摩擦(摺動抵抗)が低減し、摺動性が向上する。従って、ガイドワイヤ1の操作性が向上する。特に、外径・内径一定部41における線材40Aの外周側の部位は、曲率半径が大きく構成されていることにより、その外径・内径一定部41における親水性潤滑層7の外表面は、実質的に平滑な外表面を形成する。そのため、血管壁やカテーテル等の内壁との接触面積が大きくなり、潤滑性が向上する。さらに、外径・内径一定部41の基端側に続いているテーパ部42は、円形の線材40Bで形成されているため、そのテーパ部42における親水性潤滑層7の外表面は、実質的に波状(波形)の外表面を形成する。これにより、比較的狭い狭窄部を通過する場合には、狭窄部を安全に押し広げながら押し込むことが可能となる。
【0075】
親水性材料(親水性潤滑層7の構成材料)としては、例えば、セルロース系高分子物質、ポリエチレンオキサイド系高分子物質、無水マレイン酸系高分子物質(例えば、メチルビニルエーテル−無水マレイン酸共重合体のような無水マレイン酸共重合体)、アクリルアミド系高分子物質(例えば、ポリアクリルアミド、ポリグリシジルメタクリレート−ジメチルアクリルアミド(PGMA−DMAA)のブロック共重合体)、水溶性ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。
【0076】
このような親水性材料は、多くの場合、湿潤(吸水)により潤滑性を発揮し、ガイドワイヤ1とともに用いられるカテーテルの内壁との摩擦抵抗(摺動抵抗)を低減する。これにより、ガイドワイヤ1の摺動性が向上し、カテーテル内でのガイドワイヤ1の操作性がより良好なものとなる。
【0077】
次に、コイル4の製造方法について
図3および
図4を参照しつつ説明する。
図3および
図4では、コイル用部材400を研削してコイル4を形成する。なお、コイル用部材400では、加工して外径・内径一定部41となる部分のみを図示している。
【0078】
まず、
図3に示すように、横断面形状が円形をなす線状の母材を螺旋状に巻回してなるコイル用部材400と、円柱状をなす研削砥石100を用意する。この研削砥石100の砥粒を構成する材料としては、特に限定されず、例えば、酸化セリウム(CeO
2)、二酸化マンガン(MnO
2)、ヒュームドアルミナ、コロイダルアルミナ等のアルミニウム酸化物(Al
2O
3)などの金属酸化物、沈降シリカ、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等の珪素酸化物(SiO
2)、ダイヤモンド等を用いることができる。
【0079】
次に、コイル用部材400の内側に、コイル用部材400の内径と同じ大きさの外径(太さ)、または若干小さい外径の硬質の芯材200を挿入する。
【0080】
次に、コイル用部材400をコイル4に中心軸300回りに芯材200ごと回転させる。このときコイル用部材400は先端側から見て時計回りに回転している。また、コイル用部材400の回転数は、1.5〜90rpsが好ましく、15〜25rpsがより好ましい。なお、コイル用部材400および芯材200を反時計回りに回転させてもよい。
【0081】
次に、研削砥石100をその中心軸回りに回転させつつ、
図4中矢印C方向(コイル4の中心軸300方向に沿って)に移動させる。また、研削砥石100は
図3および
図4中の矢印B方向に回転している。なお、研削砥石100は移動せず、コイル用部材400と芯材200が
図4中矢印C方向と反対方向へ(コイル4の中心軸300方向に沿って)移動する場合もある。
【0082】
研削砥石100の回転数は、10〜1500rpsが好ましく、500〜1000rpsがより好ましい。また、研削砥石100、コイル用部材400および芯材200の移動速度Vは、それぞれ、0.5〜10.0mm/sが好ましく、1.0〜4.0mm/sがより好ましい(
図3参照)。
【0083】
図4(b)に示すように、コイル用部材400の研削砥石100が通過する部分、すなわち、コイル用部材400の外周面の一部である削り代401は、研削砥石100の移動とともに研削され、除去される。また、研削砥石100は
図3中矢印B方向に回転しているため、削り代401は進行方向前方に向って研削されていく。この研削の際に、コイル用部材400には、削り代401が除去された部分の外表面に平坦部45が形成されるとともに、バリ402が形成される。
【0084】
バリ402は、削り代401のうちの削られず残った部分が、基端側に寄せられて形成された部分である。このバリ402は、前述したように、研削砥石100が先端側に向って移動しつつ、その進行方向に向ってコイル用部材400を研削するように回転しているため、進行方向前方(基端側)に向って突出するよう形成される。バリ402は、前述した突出部46として機能する。
【0085】
このように、突出部46となるバリ402を形成するようにコイル用部材400を研削することで、隣り合う線材40同士の乗り上げを防止することができるコイル4を容易に得ることができる。
【0086】
<第2実施形態>
図5は、本発明のガイドワイヤ(コイル)の第2実施形態が変形する過程を示す縦断面図である。
【0087】
以下、この図を参照しつつ本発明のガイドワイヤの第2実施形態について説明するが、前述した第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。なお、説明の都合上、
図5中の右側を「基端」、左側を「先端」と言い、上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0088】
本実施形態は、線材40A’の横断面形状が異なること以外は前記第1実施形態と同様である。また、第1実施形態と同様に線材41Bについて代表的に説明する。
【0089】
図5に示すように、線材41Bの横断面形状は、平坦部45と、湾曲部44と一対の突出部46とを有している。一対の突出部46は、湾曲部44の両端、具体的には、湾曲部44と平坦部45との境界部の両端にそれぞれ設けられている。一対の突出部46は、自然状態で、線材41Aの突出部46と、線材41Cの突出部46とそれぞれ接触している。
【0090】
図5(a)に示す初期状態から、
図5(b)に示すように、線材41Bが線材41Aおよび線材41Cに乗り上げた場合、外力を減少または解除すると、線材41B自身の復元力により、線材41Bは、元の位置(自然状態)に戻ろうとする。このとき、線材41Aの突出部46の外周面を線材41Bの突出部46が摺動し、線材41Bの突出部46を線材41Cの突出部46が摺動して、線材41Bは元の状態に戻ることができる。
【0091】
このように線材41Bは、線材41Aおよび線材41Cに乗り上げた状態から容易に元の状態に戻ることができる(
図5(c)参照)。
【0092】
また、線材40A’を製造するには、線材40A’を、基端側から先端側に向って、研削していく。換言すれば、第1実施形態の研削砥石100の移動方向とは反対側に移動させつつ線材40A’を研削する。このとき、研削砥石100は、第1実施形態の研削砥石100の回転方向とは反対側に回転している。これにより、移動方向前方に突出部46として機能するバリ402が形成される。よって、一対の突出部46が形成された線材40A’を得ることができる。
【0093】
以上、本発明のコイルおよびガイドワイヤを、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0094】
なお、各実施形態では、突出部は湾曲部と平坦部との境界部に設けられているが、本発明ではこれに限定されず、突出部は境界部付近に設けられていてもよい。
【0095】
また、各実施形態では、コイル用部材は研削して加工されるが、本発明ではこれに限定されず、コイル用部材を切削して加工してもよい。
【0096】
また、コイル用部材を加工する際、研削砥石を複数回移動させて少しずつ削り代を研削してもよい。