(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046809
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】内燃機関用ベアリング
(51)【国際特許分類】
F16C 33/24 20060101AFI20161212BHJP
F16C 9/00 20060101ALI20161212BHJP
C23C 14/14 20060101ALI20161212BHJP
C23C 14/34 20060101ALI20161212BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F16C33/24 Z
F16C9/00
C23C14/14 B
C23C14/34 N
C23C28/00 A
【請求項の数】17
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-516387(P2015-516387)
(86)(22)【出願日】2013年6月12日
(65)【公表番号】特表2015-527535(P2015-527535A)
(43)【公表日】2015年9月17日
(86)【国際出願番号】BR2013000208
(87)【国際公開番号】WO2013185197
(87)【国際公開日】20131219
【審査請求日】2016年1月18日
(31)【優先権主張番号】BR102012014337-2
(32)【優先日】2012年6月13日
(33)【優先権主張国】BR
(73)【特許権者】
【識別番号】512012425
【氏名又は名称】マーレ メタル レーベ ソシエダーデ アノニマ
【氏名又は名称原語表記】MAHLE Metal Leve S/A
(73)【特許権者】
【識別番号】506292974
【氏名又は名称】マーレ インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】MAHLE International GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ホセ ヴァレンティム リマ サラバンダ
(72)【発明者】
【氏名】マリオ セルジオ ダ シルヴァ プラーサ
(72)【発明者】
【氏名】マテウス ドス サントス フェレイラ
【審査官】
上谷 公治
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2004/092602(WO,A1)
【文献】
特表2012−500365(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0142384(US,A1)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0187260(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 33/24
C23C 14/14
C23C 14/34
C23C 28/00
F16C 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関用ベアリングであって、
前記ベアリング(1)は、青銅合金の第1層(2)と蒸着層(4)とが順に積層された鉄製基材(10)を備え、
前記第1層(2)の上にバインディング層(3)が形成され、
前記バインディング層(3)は、前記第1層(2)と前記蒸着層(4)との結合を促進し、
前記バインディング層(3)は、ニッケルとクロムとを含むとともに、前記蒸着層(4)は、アルミニウムとスズとにより構成される合金を含み、
前記蒸着層(4)の上に、アルミニウム、銅、銀、タングステン合金、及びステンレス鋼(inox)から選ばれるソフトメタルと、フルオロポリマーと、シラン系材料とを備えた重合性ポリアミド−イミドマトリックスを含む滑り層(5)が形成され、
前記ベアリング(1)は、85MPaよりも高いグリップ荷重(gripping load)に耐える
ことを特徴とする内燃機関用ベアリング。
【請求項2】
前記蒸着層(4)は、スパッタリングにより蒸着されることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項3】
前記滑り層(5)は、前記ソフトメタルを体積で1%〜14%、好ましくは11%〜14%含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項4】
前記滑り層(5)は、前記ソフトメタルを体積で12.5%含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項5】
前記滑り層(5)のソフトメタルは、フレーク状又は粉末状のアルミニウムであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項6】
前記滑り層(5)は、フルオロポリマーを体積で2%〜8%含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項7】
前記フルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)型のものであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項8】
前記滑り層(5)は、前記シラン系材料を体積で3%〜6%含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項9】
前記基材(10)は、低炭素鋼又は中炭素鋼を含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項10】
前記蒸着層(4)は、1%〜40%のスズ、1%のシリコン、1%の銅、2%の鉄、バランス材としてのアルミニウムを含むことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項11】
前記蒸着層(4)は、3〜20マイクロメートルの範囲の厚さを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項12】
前記滑り層(5)は、5〜20マイクロメートル、好ましくは7〜20マイクロメートルの範囲の厚さを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項13】
前記蒸着層(4)は、3〜20マイクロメートル、好ましくは5〜20マイクロメートルの範囲の厚さを備えたことを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項14】
前記バインディング層(3)は、3〜20マイクロメートル、好ましくは1〜5マイクロメートルの範囲の厚さを備えたことを特徴とする請求項13に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項15】
前記滑り層(5)は、前記ベアリング(1)の耐用寿命を通じて前記蒸着層(4)に機能的に結合したままであることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項16】
前記ベアリング(1)は、120MPa〜150MPa、好ましくは140MPa〜150MPaの負荷容量を有することを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【請求項17】
前記ベアリング(1)は、85MPa〜90MPaの範囲のグリップ荷重に耐えることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用ベアリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑性の低い高圧条件下での使用においても耐用寿命を増加させることを目的とした重合性滑り層を備えた内燃機関用ベアリングに関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明は、ポリマーを含むベアリングに関し、鉄基材が青銅合金層で被覆され、その上にスパッタリングにより層が蒸着され、そして他の元素の間にソフトメタル合金を備えた重合性滑り層が形成され、第1層とスパッタ層はバインディング層により結合され得る。
【0003】
自動車産業の需要増大を鑑みると、特に環境問題に関する限り、新しい要請が生じてきており、このことは、内燃機関の構成に直接反映される。その影響を当然経験するいくつかの部品は、ベアリングであり、結果として青銅製ベアリングである。
【0004】
耐腐食性、摩擦係数及び耐擦傷性を向上させるために多くの改良が行われてきている。一方、内燃機関の作動圧の上昇によりベアリングの消耗が早くなってしまい、このような試みは成功しづらい。この作業分野では将来は簡単にならない点に注目すべきである;回転数が上昇し、より効率的であり、より低燃費の、より強力なものが求められることに注目すれば十分である。
【0005】
当然に、新しい需要に直面すれば、既知材料は今日の内燃機関のパフォーマンスを制限するものと同じであるため、新しい材料が必要となるであろう。
【0006】
さらに、内燃機関に関する需要の増大により、摩擦を低減するために粘度を低減させた潤滑油を使用してきている。このことは、高速においてベアリング周りのオイル層が薄くなっていき、金属製部材間の接触が増加し、ベアリングの早期消耗をもたらすため、内燃機関のベアリングには特に深刻な問題となる。
【0007】
上記問題を解決しようとする目的で、多層ブロンズベアリングが開発されている。層の構成は、通常例えばソフトメタル合金で被覆された鋼等の抵抗基材と少なくとも1つの滑り層とを含んでおり、潤滑油の膜と接触し続けることになる。これらの層は一般に最初は支持材に密着したロール材と、最初のロール材の表面に密着した、ロール材の少なくとも1つの追加層のコーティングにより形成される。後者のロール材の外側表面は車軸と相互作用する実際の滑り層を形成する。
【0008】
上記層の重要性は滑り層に排他的に限定されるものではないことに注意すべきである。代わりに、上記層の機能は、層間の相互作用を通じて観察され、それぞれがベアリングのパフォーマンスにおいて特別な役割を有するとともに、近接層と関連する機能を有している。さらに、役割として、ベアリングにはその耐用寿命を延ばすために1つ以上の層が備えられる。従って、1つの滑り層が消耗しても、他の層の表面が潤滑油と接触するようになり、滑り層又は消耗層としてはたらく。このような状況では、基材上に形成された層(第1層)は耐傷つき性をもたらすとともに、滑り層としても満足なパフォーマンスで作動するという目的を持っている。
【0009】
典型的には、第1層は、ベアリング表面と車軸表面との間のずれを最小限にすることについても、表面の擦り傷や消耗を生じ得るオイル膜中に存在する粒子を抑制することについても、性能は劣る。
【0010】
この課題のために、複数の層により構成し、それぞれの層が上記課題を避けるためにトライボロジー的性能(tribologic output)を改善する特定の機能を有するという解決策が提案されている。
【0011】
これらの解決策のうちの1つは、ベアリング材の第1層上にスパッタリング工程によりアルミニウムとスズを蒸着することにより実行され得る。そのようなベアリングは主な性質として、高い負荷に耐えるという効果を有する。それにもかかわらず、課題は蒸着層がオイル膜中における大きな変位又は不連続性に対する感度が低く、結果として、ベアリングの劣化をもたらす可能性があるとともに、長期使用時には性能の低下をもたらし、これによりエンジンの機能低下又はそれらの故障をもたらすことである。
【0012】
特許文献1に記載されている重合性滑り層は、高負荷条件下で運転するエンジンに使用するためのベアリングの性能を向上させることを目的としている。記載されている重合性層は摩擦を低減する添加物を含有しており、金属粉末、好ましくはアルミニウム、銅、銀、タングステン及びステンレス鋼からなる群から選ばれる金属粉末を体積で5%〜15%含むマトリックスと、フルオロポリマー、好ましくはPTFE又はFEPを体積で1%〜15%と、ポリアミド―イミド樹脂であるバランス材とにより構成されている。
【0013】
この重合性層の優れた特性は、ブッシング上において、その使用年数を通じて消耗することなく留まっていることであり、これにより、従来のブッシングに比べて高い負荷容量がもたらされることに注目すべきである。そのような効果は、一般的に、アルミニウム粉末が使用された場合に優れた性能をもたらす。しかしながら、この特許文献1により開示されているベアリングは課題も有する。スパッタリング工程により蒸着された層がないために、ベアリングの負荷容量が低下する。この課題が、より高負荷の内燃機関に対する需要が高まっていることと組み合わされた場合、このベアリングの適用は確実に制限され得る。
【0014】
従来技術により知られるもう1つのベアリングは、特許文献2に記載されている。上記特許文献1と異なり、本文献で開示されているベアリングは、スパッタリング工程により蒸着された層を備えた構造的構成を有する。この蒸着層が単に存在するだけで、ベアリングはより高負荷容量を有し、消耗に対する抵抗性があることが示されている。しかしながら、スパッタリング工程により蒸着された層を備えたベアリングは以前より既知であるため、本文献の新規性はこの事実にあるのではない。
【0015】
従って、本特許文献に示されているベアリングは、重要な点に基づいている。重合性滑り層を蒸着層の上に設けることである。しかしながら、この重合性滑り層は、特許文献1の重合性滑り層とは関連していない点に注意すべきである。なぜならば、知られているように、これは優れた潤滑剤である二硫化モリブデンを備えた重合性犠牲層であるからである。
【0016】
しかしながら、そのポリマーの化学組成は、ベアリングの耐用寿命を通じて維持され得るように想定されていなかった。その代わり、この重合性層は運転開始から数時間で消耗することを目的としており、これにより二硫化モリブデンがポリマーから放出されて蒸着層に浸透する。
【0017】
結果として、本文献に記載されたベアリングは、運転開始から数時間後には従来技術のものと同等の構造的構成を有する、すなわち、耐久性に関する性能を示す主な要素がスパッタ層であるベアリングとして動作するようになる。従って、このベアリングは、優れた耐グリップ性(resistance to gripping)を示すものの、高負荷容量を保証することはできない。
【0018】
これら2つの文献を組み合わせると、耐グリップ性と高負荷容量との間のバランス点をもたらすことができるベアリングを得ることは極めて困難であることがわかる。当然に、これらの特性は、常に求められてきたが、未だ実現には至っておらず、現在の適用においてでさえそうなのであるから、自動車産業が極めて重要であると言われてきている将来的な需要においてはなおさらである。
【0019】
この理由は、従来のベアリングが通常遭遇する限界値にある。この点について、スパッタ滑り層を備えたベアリングの負荷容量値は通常100MPa〜120MPaの範囲にあり、通常のグリップ荷重(gripping load)は50MPa〜60MPaの範囲にあることに注意するべきである。耐グリップ性の向上を目的として、ポリマーを有するバイメタルベアリング85MPa〜90MPaという桁の値を達成し得る。しかし、通常の負荷容量は約70MPa〜80MPaである。このような値は、上記特性のうちの一方を、他方を大きく損なうことなく改善することは困難であることをはっきりと示している。
【0020】
当然に、両立させる技術は可能であるが、たいていは開発コストや生産コストが高すぎて実用的ではなかった。この点について、層を組み合わせるのではなく、単に層を変更することによって耐久性のより高いベアリングを達成しようとしてきた。
【0021】
従って、ベアリングの耐久性をもたらす特性を組み合わせることができるベアリングを見出す必要があり、これにより後者は120MPa以上の負荷容量値、且つ85MPaより高いグリップ荷重の値を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】英国特許出願公開第2465852号明細書
【特許文献2】米国特許第7541086号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
従って、本発明の目的はベアリングの耐久性をもたらす異なる特性を併せ持つことが可能なベアリングを提供することであり、これにより、負荷容量値及び耐グリップ性の値を同時に向上させることである。
【0024】
本発明の目的はまた、滑り重合性層を受ける少なくとも1つのスパッタ層を備えるベアリングを提供し、そのポリマーコーティングはそのベアリングの耐用寿命にわたり作動し続け得ることである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、ポリマーコーティングを備えた少なくとも1つのスパッタ層を備えたベアリングを提供し、その重合性滑り層は、他の要素の中で、ソフトメタル合金により構成されていることである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明の目的は、内燃機関用ベアリングであって、前記ベアリングは、青銅合金の第1層と蒸着層とが順に積層された鉄製基材を備え、前記蒸着層の上に、ソフトメタルとフルオロポリマーとシラン系材料とを備えた重合性ポリアミド−イミドマトリックスを含む滑り層が形成され、前記ベアリングは、85MPaよりも高いグリップ荷重に耐えることができるベアリングによって達成される。
【0027】
図面に示された実施例を参照して、本発明は詳述されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明に係るベアリングの層を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るベアリングの層の写真である。
【
図3】
図3は、従来技術のベアリングと本発明に係るベアリングとを比較するための比較グラフ図である。
【
図4】
図4は、従来技術のベアリングと本発明に係るベアリングとを比較するための比較写真であり、1000時間のエンジンテスト後のものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び
図2は、本発明に係るベアリングの断面図を示す。好ましくは、しかし強制的ではなく、本発明に係るベアリング1は鉄製基材10を備え、その上に青銅合金の第1層2が積層されている。第1層2はさらにスパッタリングにより蒸着された層4を受け、今度は、その層がソフトメタル、フルオロポリマー及びシラン系材料を含む重合性ポリアミド−イミドマトリックスを備えた滑り層5を受けている。代替的な構成では、
図1に示されたものと同等であるが、ベアリング1は第1層2の上に積層されたバインディング層3を備え、該バインディング層3は、第1層2と蒸着層4との密着性を向上させることを主な目的とする。
【0030】
本発明に係るベアリング1の特徴については、基材10が鉄合金、好ましくは、厚さ1mm〜5mmの範囲の低炭素鋼又は中炭素鋼を含むことに注目すべきである。
【0031】
第1層2については、その組成は、好ましくは
4%〜8%のスズ、1%〜4%のビスマス、1%〜3%のニッケル、バランス材としての銅である。銅合金は150〜400マイクロメートルの範囲の厚さである。第1層2は鉛を含んでもよいし、含まなくてもよいことに注目すべきである。
【0032】
バインディング層3は、
第1層2と蒸着層4との間の結合を向上させるものであり、ニッケル及びクロムを含み、その厚さは1〜5
マイクロメートルである。
【0033】
蒸着層4は、1%〜40%のスズ、1%のシリコン、1%の銅、2%の鉄、バランス材としてのアルミニウムを含む。蒸着層4の厚さは、3〜20
マイクロメートルの範囲である。
【0034】
上述のごとく、本発明は、この重合性滑り層5をスパッタリングにより蒸着した層4の上に成膜することに関する。より具体的には、重合性滑り層5は、ソフトメタル、フルオロポリマー、及びシラン系材料を備えた重合性ポリイミド−イミドマトリックスを含む。
【0035】
好ましくは、滑り層5は、体積で1〜14%の濃度、より好ましくは、11〜14%、理想的な濃度は12.5%のソフトメタル(粉末状又はフレーク状)を有する。ソフトメタルは、アルミニウム、銅、銀、タングステン合金及びステンレス鋼(inox)であってよい。
【0036】
本発明に係る好ましい実施形態において、滑り層は、5
マイクロメートルより小さい粒径のアルミニウム粉末を含む。メタルの形状は、最大面積をもたらし、重合性マトリックス中でソフトメタルの指向性を向上させ、結果として、オイル薄膜中に存在する粒子の吸収という点で性能を向上させるように形成され得る。
【0037】
好ましくは、滑り層5は体積で2〜8%濃度のフルオロポリマーを含む。このフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン及びフルオロエチレン−プロピレンから選んでよく、好ましくは、滑り層5のフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、その量は5.7%である。このフルオロポリマーを使用することにより、ベアリングの摩擦係数を低減し、その潤滑性が向上する点に注目すべきである。
【0038】
滑り層5を構成する重合性マトリックスはまた、シラン系材料を含む。これらの材料は、マトリックスの安定性を促進するとともに、スパッタリングにより蒸着された層4への材料の密着性を促進する。シラン材料は、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシラン又はビス−(ガンマ−トリメトキシシリルプロピル)アミンから選んでもよく、好ましくは、シラン材料は、ガンマ−アミノプロピルトリエトキシシランである。滑り層は、好ましくは、体積で3〜6%、好ましくは4.8%濃度の材料、又はシラン系材料の混合物を含む。
【0039】
滑り層5の重合性マトリックスはさらに、0.1%より低い量の他の要素と、通常は77%の量となり得るバランス材としてのポリイミド−イミドを含む。
【0040】
最後に、滑り層5の厚さは、5〜20
マイクロメートル、好ましくは7〜20
マイクロメートルの範囲である。
【0041】
簡単に、本発明の新しい概念は、スパッタリングにより蒸着された層4を重合性マトリックスの滑り層5と組み合わせて関連づけることである。本発明はそれぞれの解決策の最良の性質を結合することである。一方、蒸着層4が良好な耐久性及び良好な負荷容量を保証し、重合性滑り層5が良好な耐グリップ性をもたらすと考えることは妥当であろう。従って、最良の仮説では、従来技術に見られた値、すなわち120MPaと同等の負荷容量を有するベアリング1を達成するとともに、85MPa以上のグリップ荷重の値を両立させ得ることが期待される。
【0042】
驚くべきことに、この新規の組合せは予測された結果を上回っており、負荷容量150MPaまで、及びグリップ荷重90MPaの値を達成している。これらの値は、従来技術の結果を分析した場合の単なる予測を顕著に上回るものである。
【0043】
従って、本発明に係る構造的構成は、当初の予測を超えており、この新規ベアリング1を十分に正当化するが、コストは問題である。換言すると、本発明に係るベアリング1のコストは一部の層のみ使用しているベアリングのコストに比べて高いというのは理解できる。従って、まず、本発明に係るベアリング1は商業的に実施可能ではないと考えられかもしれない。しかしながら、達成された優れたトライボロジー性の結果により、かなりストレスのより高い最新のエンジンを含む通常のものよりも、内燃機関により長い耐用寿命を確実にもたらす。従って、本発明に係るベアリング1により達成された結果は、従来技術と同じ高さであり、潤滑性に乏しい条件下であっても、現在の限界を超えて、より長時間、エンジンを駆動するため、商業的成功であると予測される。
【0044】
このような新規の予想外の効果はおそらく新しいメカニズム及び新しい機能に起因するものであり、この新しいメカニズム及び新しい機能には、滑り層5の重合性マトリックス中にソフトメタルフレーク又は粉末を添加したことが特別に影響している。従来技術、すなわちMiba特許は、ソフトメタルは分解してこれらの薄いメタル粒子がオイルに移動し、ベアリングの潜在的な危険、すなわち早期の消耗を引き起こし得るため、重合性層にはソフトメタルを使用するべきではないと明確に述べている。本発明の原理は、重合性滑り層5の組成中にソフトメタルの存在を必要とする点で明確な特徴がある。
【0045】
滑り層5に導入されるソフトメタルフレーク又は粉末の機能は、ベアリングの耐用寿命を通じてベアリングに重合性層が付着したままであることを考慮すると、エンジンの保護効果である。そのようなメタル、例えば、アルミニウムは、潤滑油中に存在する残りの粒子の吸収を促進し、これにより、後者がエンジンにダメージを与えるのを防止する。
【0046】
高負荷及び高速により生ずるベアリングに位置する障害については、衝撃が重合性滑り層5を超えていく可能性があるということである。この点、本発明に係るベアリング1の構造的構成が機能して、蒸着層4がこれらの有害な衝撃を部分的に吸収することができるという効果をもたらす。このような効果は、その化学組成がまたソフトメタルによりもたらされているという事実により生ずる。従って、蒸着層及び滑り層5は結合して機能し、ベアリング1がより消耗しにくいようになっている。
【0047】
より高い耐グリップ性及び高負荷容量のベアリングをもたらしているのは、2つの層4,5間のこのダイナミクスである。この点について、上述のベアリング1を内燃機関におけるその性能を評価するための種々のテストの対象とし、このベアリングによれば、摩擦が低減され、ベアリングの耐用寿命を通じて耐削れ性が向上することが明らかとなっている。
【0048】
達成された結果によれば、ハード特性(負荷容量)とソフト特性(耐グリップ性)の間の関係を考慮した値を確立することができる。両指数はメガパスカル単位(MPa)で使用することを考慮すると、ハード特性(IH)とソフト特性(IS)との合計に相当し得るマテリアルインデックス(IM)を決定することが可能であり、次の関係が得られる:IM=IH+IS。
【0049】
表1は、本発明に係るベアリング1と従来技術のベアリングのマテリアルインデックス(IM)の比較を示している。
【0051】
表1によれば、本発明に係るベアリング1は、従来技術の最高値を遙かに40%を上回るマテリアルインデックスを達成している。
【0052】
図4の写真は、1000時間の試験において最適な結果が達成されたことを示しており、
図4の上側のベアリングは従来技術のベアリングを示し、下側のベアリングが本発明のものを示すことが判る。最も印象的なのは、本発明に係るベアリング1には全く擦り傷がない点であり、これによりその顕著な優位性が証明された。
【0053】
この試験は高負荷ディーゼルエンジンを用いて行われた。適用された容量負荷は85MPaであった。
【0054】
一方、
図3は本発明に係るベアリング1と従来技術のものとの間で行われた試験を示す。
【0055】
この試験は、ベンチテストで行われ、テストオイルをオンオフして最低限の給油条件下での耐擦り傷性についてのベアリングの性能を評価したものである。試験は以下の工程で行われた:
1)適量の給油で15分間ベンチテストのエンジンを運転;
2)3分間適量の給油を行った後90秒間給油を停止;
3)3分間適量の給油を行った後150秒間給油を停止。
【0056】
本明細書において開示された本発明に係るベアリング1は、ベアリングに擦り傷が全く発生せず、次の工程へ進んだ。従来技術のベアリングは、5回の試験のうち4回で失敗し、その失敗のうち3回は最初の工程で起こった。当然に、これは控えめに言ったとしてもかなりの違いである。
【0057】
従って、本発明に係るベアリング1の優位性は明らかで、すなわち、化学元素の組合せをそのような特定の構造的構成で調整することにより顕著な結果をもたらしていることであり、このような結果はこれまでには得られなかったものである。
【0058】
実施形態の好ましい例について述べてきたが、本発明の範囲は、他の可能な変更例を含み、付随する請求項の内容によってのみ限定されるものではなく、可能な同等なものを含む。