特許第6046822号(P6046822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046822素子収納用パッケージおよびこれを備えた実装構造体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046822
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】素子収納用パッケージおよびこれを備えた実装構造体
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/04 20060101AFI20161212BHJP
   H01S 5/022 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   H01L23/04 E
   H01S5/022
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-534250(P2015-534250)
(86)(22)【出願日】2014年8月27日
(86)【国際出願番号】JP2014072381
(87)【国際公開番号】WO2015030034
(87)【国際公開日】20150305
【審査請求日】2015年11月6日
(31)【優先権主張番号】特願2013-176379(P2013-176379)
(32)【優先日】2013年8月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006633
【氏名又は名称】京セラ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】白崎 隆行
【審査官】 井上 和俊
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−136036(JP,A)
【文献】 特開平7−302856(JP,A)
【文献】 特開2003−309312(JP,A)
【文献】 特開2002−243992(JP,A)
【文献】 特開2003−174108(JP,A)
【文献】 特開2003−318477(JP,A)
【文献】 特開2003−60104(JP,A)
【文献】 特開2004−247511(JP,A)
【文献】 特開2010−171356(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/04
H01S 5/022
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に素子を搭載する実装領域を有する基板と、
前記実装領域を取り囲むように前記基板の前記上面に配置された、貫通孔を有する枠体と、
前記枠体の前記貫通孔を通って前記枠体の内側および外側にわたって配置されたコネクタと、
前記枠体の内側に位置して前記基板の前記上面に配置された台座部材と、
第1接合部材を介して前記台座部材の上面に接合され、前記コネクタに接続された配線基板とを備え、
前記貫通孔の貫通方向に沿った縦断面において、前記枠体の前記貫通方向に沿った厚みが前記基板の厚みよりも厚く、
前記貫通孔の貫通方向に沿った縦断面において、前記台座部材の幅が、前記台座部材の高さよりも大きく、
前記台座部材の側面は第2接合部材を介して前記枠体の内面に接合されているとともに、前記台座部材の下面は前記基板の上面に接合されていない素子収納用パッケージ。
【請求項2】
前記台座部材の前記下面に切欠き部または凹部が形成されている請求項1に記載の素子収納用パッケージ。
【請求項3】
前記台座部材の前記下面に対向する前記基板の前記上面に、凹部が形成されている請求項1または2に記載の素子収納用パッケージ。
【請求項4】
前記台座部材の前記上面および前記側面にめっき層が形成されているとともに、前記台座部材の前記下面に前記めっき層が形成されていない請求項1〜3のいずれかに記載の素子収納用パッケージ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の素子収納用パッケージと、
前記基板の前記実装領域に実装された素子とを備える実装構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、素子を収納するための素子収納用パッケージおよびこれを備えた実装構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
素子を収納するための素子収納用パッケージは、上面に素子を搭載する実装領域を有する基板と、基板の上面に配置された枠体と、枠体の内側および外側に配置されたコネクタと、枠体の内側に位置した台座部材と、コネクタに電気的に接続された配線基板とを備えている(例えば、特開2003−309312号公報参照)。また、この配線基板は、接合部材を介して台座部材の上面に接合されている。
【0003】
また、素子収納用パッケージの内側で台座部材の位置を固定するために、台座部材の側面が接合部材を介して枠体の内面に接合されているとともに、台座部材の下面が接合部材を介して基板の上面に接合されている。
【0004】
ここで、このような素子収納用パッケージでは、素子収納用パッケージの組立工程や実装構造体の作動環境において、素子収納用パッケージの外部から基板、枠体、台座部材および配線基板に熱が加えられたり、素子の駆動の際に素子から熱が発生し、この熱が基板、枠体、台座部材および配線基板に伝達する。そのため、素子収納用パッケージの外部環境による温度変化や、素子の駆動による温度変化によって、基板、枠体、台座部材および配線基板が熱膨張または熱収縮し、これら部材の熱膨張係数の違いに起因して応力が発生する可能性がある。
【0005】
このとき、枠体の内面および基板の上面の両方に接合される台座部材には応力が加わりやすく、この応力は台座部材の上面に集中する場合がある。そのため、この台座部材の上面に接合されている配線基板に大きな応力が加わりやすくなるので、配線基板にクラックが発生し、配線基板およびコネクタの接続信頼性が低下する可能性があるという問題点があった。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、配線基板およびコネクタの接続信頼性の低下を抑制できる素子収納用パッケージを提供することにある。
【発明の概要】
【0007】
本発明に係る素子収納用パッケージは、上面に素子を搭載する実装領域を有する基板と、前記実装領域を取り囲むように前記基板の前記上面に配置された、貫通孔を有する枠体と、前記枠体の前記貫通孔を通って前記枠体の内側および外側にわたって配置されたコネクタと、前記枠体の内側に位置して前記基板の前記上面に配置された台座部材と、第1接合部材を介して前記台座部材の上面に接合され、前記コネクタに接続された配線基板とを備えている。前記貫通孔の貫通方向に沿った縦断面において、前記枠体の前記貫通方向に沿った厚みが、前記基板の厚みよりも厚い。前記貫通孔の貫通方向に沿った縦断面において、前記台座部材の幅が、前記台座部材の高さよりも大きい。前記台座部材の側面は第2接合部材を介して前記枠体の内面に接合されているとともに、前記台座部材の下面は前記基板の上面に接合されていない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係る素子収納用パッケージおよびこれを備えた実装構造体であって、蓋体を外した状態での分解斜視図である。
図2図1の素子収納用パッケージであって、蓋体を外した状態を見た斜視図である。
図3図1の素子収納用パッケージであって、蓋体を外した状態を見た斜視図である。
図4図1の素子収納用パッケージであって、蓋体を外した状態での平面図である。
図5図1の素子収納用パッケージの要部を示す断面斜視図である。
図6図5のI−I線に沿った断面図である。
図7】本発明の他の実施形態に係る素子収納用パッケージの要部を示す断面斜視図である。
図8図7のII−II線に沿った断面図である。
図9】本発明の他の実施形態に係る素子収納用パッケージの要部を示す断面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る素子収納用パッケージの要部を示す断面図である。
図11】本発明の他の実施形態に係る素子収納用パッケージの要部を示す断面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る素子収納用パッケージの要部を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[素子収納用パッケージおよび実装構造体]
本発明の実施形態に係る素子収納用パッケージおよびこれを備えた実装構造体について、図1図6を参照しながら説明する。
【0010】
実装構造体1は、図1に示すように、素子2と、素子収納用パッケージ3とを備えている。
【0011】
素子2としては、例えば、半導体素子、トランジスタ、レーザーダイオード、フォトダイオードまたはサイリスタ等の能動素子、あるいは抵抗器、コンデンサ、太陽電池、圧電素子、水晶振動子、光集積回路素子、光導波路素子、光スイッチング素子またはセラミック発振子等の受動素子が挙げられる。
【0012】
素子2は、基板31の上面31aにおける実装領域31bに配置されている。また、図1に示すように、素子2は素子収納用パッケージ3に収納されている。
【0013】
素子収納用パッケージ3は、図1図3に示すように、基板31と、枠体32と、コネクタ33と、台座部材34と、配線基板35と、リード端子36と、環状部材37とを備えている。素子収納用パッケージ3は、高耐圧化、大電流化や大電力化または高速・高周波化に対応している素子を実装して機能させることに適している。なお、本実施形態の素子2としては光導波路素子を採用している。
【0014】
基板31は素子2を支持する機能を有する。基板31は上面31aを有している。また、図4に示すように、基板31の上面31aは、素子2を搭載するための実装領域31bを有している。
【0015】
枠体32は、図1図4に示すように、素子2(実装領域31b)を取り囲むように基板31の上面31aに配置されている。また、枠体32には複数の貫通孔Tが形成されている。枠体32の貫通孔Tには、コネクタ33、リード端子36、および光ファイバやフェルールなどの光信号を入出力させる部品が固定される環状部材37が挿通される。
【0016】
また、本実施形態では、基板31および枠体32は一体的に形成されている。なお、基板31および枠体32を一体的に形成せずに、基板31および枠体32を別体として形成してもよい。なお、基板31および枠体32を別体として形成した場合は、枠体32の下面を基板31の上面31aに銀(Ag)ろうやリン銅ろう等のろう材で接合すればよい。
【0017】
基板31および枠体32の材料としては、例えば銅、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケルまたはコバルトなどの金属、これらの金属を含んだ合金、セラミックス、ガラスあるいは樹脂等が挙げられる。なお、本実施形態の基板31および枠体32では、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)合金が採用されている。これによって、例えば、素子2で発生した熱を基板31および枠体32で放熱しやすくなるので、素子収納用パッケージ3の放熱性が向上するとともに、素子収納用パッケージ3の気密性および長期信頼性が向上する。なお、基板31および枠体32の熱膨張係数は、17.3〜18.7×10−6/℃に設定されている。
【0018】
また、貫通孔Tの貫通方向に沿った縦断面において、枠体32の貫通方向に沿った厚みが基板31の厚み(上下方向の厚み)よりも厚く、設定されている。枠体32の貫通方向に沿った厚みを基板31の上下方向の厚みよりも厚くすることで、コネクタ33を外周面の多くを保持するとともに、基板31から枠体32への熱膨張収縮時の応力を抑えることができる。さらに、素子収納用パッケージ3の剛性を向上できるとともに、外力や熱応力によって生じる素子収納用パッケージ3や枠体32の変形を抑制できる。なお、枠体32の貫通方向に沿った厚みは、1mm〜6mmに設定されている。基板31の(上下方向の)厚みは、1mm〜5mmに設定されている。好ましくは、枠体32は、コネクタ33や台座部材34が接続される側壁の厚みが基板31の(上下方向の)厚みよりも厚く、コネクタ33や台座部材34が接続されない側壁の厚みがコネクタ33や台座部材34が接続される側壁の厚みよりも薄くてもよい。これにより、外力や熱応力によって生じる、コネクタ33や台座部材34が接続される枠体32の側壁の変形を抑制できるとともに、素子収納用パッケージ3の内部容積を増加できる。
【0019】
環状部材37は、光ファイバやフェルールなどの部品を保持する機能を有している。すなわち、環状部材37には光ファイバやフェルールなどが固定された、金属からなる部品が溶接や半田によって接合される。また、環状部材37は、ろう材などを介して枠体32の外面32bに接合されている。また、環状部材37は貫通孔Tの周囲に接合されている。
【0020】
環状部材37によって保持された光ファイバやフェルールなどの部品は、枠体32の貫通孔Tに固定され、枠体32の内側に位置する素子2に光接続される。なお、本実施形態では、2個の環状部材37が配置されている。例えば、一方の環状部材37に固定される光ファイバやフェルールから光信号が入力され、他方の環状部材37に固定される光ファイバやフェルールから光信号が出力される。
【0021】
コネクタ33は、配線基板35および外部のケーブル(不図示)を接続する機能を有する。図5および図6に示すように、コネクタ33は、枠体32の貫通孔Tを通って枠体32の外側および内側にわたって置している。また、本実施形態では、4個のコネクタ33が配置されている。なお、コネクタ33の数は、製品設計に応じて適宜変更してもよい。
【0022】
コネクタ33は、中心導体331、外周導体332および誘電体333を有している。また、図6に示すように、コネクタ33は、枠体32の外面32bに形成された、枠体32の内面32a側に凹んだコネクタ収納部の内面に接合されている。
【0023】
中心導体331は、図5および図6に示すように、枠体32の内側および外側にわたって延在している。中心導体331の周囲には、誘電体333および外周導体332が配置されている。中心導体331は、外周導体332の中心軸を通過して外周導体332に挿通されている。
【0024】
誘電体333は中心導体331を取り囲むように配置されている。また、誘電体333は、中心導体331および外周導体332の間に配置されている。誘電体333の材料としては、絶縁材料である。例えばガラスや樹脂などが挙げられる。
【0025】
外周導体332は、誘電体333を介して中心導体331の外周を取り囲むように配置されている。すなわち、外周導体332は、中心導体331および誘電体333の両方を取り囲んでいる。また、外周導体332は中心導体331および誘電体333を保持している。図5および図6に示すように、外周導体332は枠体32の外面32bに配置されている。また、外周導体332は、枠体32の外面32bに形成されたコネクタ収納部内に位置している。また、外周導体332は、コネクタ収納部の内面にろう材などを介して接合されている。外周導体332は、枠体32における貫通孔Tの周囲に接合されている。
【0026】
図5および図6に示すように、コネクタ33では、中心導体331の一部は枠体32の外側に位置し、中心導体331の他の一部は枠体32の内側に位置している。枠体32の外側に位置するコネクタ33の中心導体331には外部のケーブルなどが接続され、枠体32の内側に位置するコネクタ33の中心導体331には配線基板35の信号導体352が接続される。コネクタ33は、外部のケーブルなどから入力される高周波の信号を配線基板35の信号配線352に伝送する。
【0027】
本実施形態のコネクタ33は、同軸コネクタ構造を採用している。コネクタ33が同軸コネクタ構造である場合には、例えば、鉄−ニッケル−コバルト合金などの金属からなる外周導体332に鉄−ニッケル−コバルト合金などの金属からなる中心導体331が挿通されており、中心導体331および外周導体332の間にガラスなどの誘電体333を配置し、この誘電体333によって中心導体331が外周導体332の内側に保持されている。
【0028】
中心導体331および外周導体332の材料は、例えば銅、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケルもしくはコバルトなどの金属、またはこれらの金属を含んだ合金が挙げられる。
【0029】
台座部材34は配線基板35を支持する機能を有する。台座部材34は、枠体32の内側に位置し、基板31の上面31aに配置されている。また、図5および図6に示すように、台座部材34は枠体32の貫通孔Tに隣接している。なお、本実施形態の台座部材34は直方体状であるが、これには限定されない。
【0030】
台座部材34は、上面34a、下面34bおよび側面34cを有している。台座部材34の上面34aには配線基板35が配置されている。この配線基板35は、第1接合部材B1を介して台座部材34の上面34aに接合されている。なお、本実施形態では、配線基板35の下面の略全面に第1接合部材B1が配置されている。
【0031】
また、台座部材34では、枠体32の内面32aに対向する側面34cが第2接合部材B2を介して枠体32の内面32aに接合されている。なお、本実施形態では、台座部材34における枠体32の内面32aに対向する側面34cの略全面に対して、第2接合部材B2が配置されている。なお、第1接合部材B1および第2接合部材B2としては、半田または銀ろうなどのろう材などが挙げられる。
【0032】
また、図6に示すように、本実施形態の第1接合部材B1および第2接合部材B2はそれぞれの接合箇所の端部で接触してもよい。すなわち、第1接合部材B1および第2接合部材B2は一体的に形成されてもよい。これによって、台座部材34を枠体32の内面32aに接合できるとともに、配線基板35を台座部材34の上面に接合できるので、台座部材34や配線基板35の位置ずれ、および台座部材34の枠体32の内面32aの剥がれや、配線基板35の台座部材34からの剥がれを抑制できる。さらに、配線基板35から枠体32に至る、第1接合部材B1および第2接合部材B2を介した放熱性を向上できる。
【0033】
また、台座部材34の下面34bは基板31の上面31aに接合されていない。すなわち、台座部材34の下面34bおよび基板31の上面31aの間には、接合部材が介在していない。
【0034】
台座部材34は、側面34cで枠体32の内面32aに接合しているが、下面34bでは基板31の上面31aに接合されていない。なお、台座部材34は基板31の上面31aに接合されていないが、台座部材34は枠体32の内面32aに接合されており、枠体32は基板31と一体的に形成されているので、素子収納用パッケージ3内での台座部材34の位置は固定されている。
【0035】
また、台座部材34の下面34bが基板31の上面31aに接合され、台座部材34の側面34cが枠体32の内面32aに接合されない場合には、基板31の熱膨張および熱収縮による基板31の変形によって台座部材34の位置がずれたりたり、台座部材34が変形したりすることにより、台座部材34の上面に接合された配線基板35(信号配線352)、および配線基板35に接続されるコネクタ33(中心導体331)の位置がずれ、信号配線352および中心導体331の接合部に応力が集中したり、配線基板35に応力が集中したりする可能性がある。
【0036】
これに対して、台座部材34の下面34bが基板31の上面31aに接合されず、台座部材34の側面34cが枠体32の内面32aに接合されていることで、基板31の熱膨張および熱収縮による基板31の変形によって台座部材34の位置がずれたり、台座部材34が変形したりすることを抑制でき、配線基板35(信号配線352)およびコネクタ33(中心導体331)の位置がずれることを低減でき、信号配線352および中心導体331の接合部に応力が集中することを抑制できるとともに、配線基板35に応力が集中することを抑制できる。
【0037】
台座部材34の材料としては、例えば銅、鉄、タングステン、モリブデン、ニッケルもしくはコバルトなどの金属、またはこれらの金属を含んだ合金、セラミックス、ガラスあるいは樹脂等が挙げられる。なお、本実施形態の台座部材34では、合金が採用されている。なお、台座部材34の熱膨張係数は、9.4〜10.0×10−6/℃に設定されている。
【0038】
また、貫通孔Tの貫通方向に沿った縦断面において、台座部材34の幅が、台座部材34の高さよりも大きく設定されている。台座部材34の幅が、台座部材34の高さよりも大きく設定されていることで、配線基板35の実装面積を確保するとともに、台座部材34から基板31への熱膨張収縮時の応力を緩和することができる。さらに、貫通孔Tの貫通方向に沿った台座部材34の剛性を向上できる。よって、貫通孔Tの貫通方向に沿った方向における台座部材34の変形を抑制できることから、台座部材34の変形に伴って生じる配線基板35の変形や応力を低減できる。なお、台座部材34の幅は、2mm〜5mmに、台座部材34の高さは1mm〜4mmに設定されている。
【0039】
また、本実施形態では、酸化腐食を防止するために、電気めっき法または無電解めっき法を用いて、台座部材34の表面にニッケルまたは金等のめっき層が形成されている。
【0040】
また、本実施形態では、台座部材34の上面34aおよび側面34cにめっき層が形成されているが、台座部材34の下面34bにはめっき層が形成されていない。すなわち、めっき処理は、台座部材34の下面34bを除いた、少なくとも台座部材34の側面34cの表面に形成されている。そして、台座部材34は、めっき層を介してろう材で枠体32の内面32aに接合される。なお、めっき層の厚みは、例えば0.5μm〜9μmの範囲に設定できる。
【0041】
配線基板35は、素子2およびコネクタ33の中心導体331を接続する機能を有する。配線基板35は台座部材34の上面34aに配置されている。また、配線基板35は第1接合部材B1を介して台座部材34の上面34aに接合されている。
【0042】
配線基板35は、図5に示すように、絶縁基板351、信号配線352および導電膜353を有している。
【0043】
絶縁基板351は信号配線352および導電膜353を支持する機能を有している。絶縁基板351の材料は、例えば酸化アルミニウム質焼結体、ムライト質焼結体、炭化珪素質焼結体、窒化アルミニウム質焼結体または窒化珪素質焼結体などのセラミックスが挙げられる。なお、絶縁基板351の熱膨張係数は、2〜8×10−6/℃に設定されている。
【0044】
信号配線352は、素子2およびコネクタ33の間で電気信号を伝送する機能を有する。信号配線352は絶縁基板351の上面に配置されている。また、信号配線352は、半田または銀ろうなどのろう材を介して枠体32の内側に位置する中心導体331の端部に接続されている。
【0045】
導電膜353は絶縁基板351の上面に配置されている。また、絶縁基板351の上面に位置する導電膜353は、信号配線352の両側に位置しており、信号配線352に接触していない。なお、導電膜353は、例えばグランド電位など一定の電位に設定されている。
【0046】
配線基板35では、絶縁基板351の上面に信号配線352から離して導電膜353を形成することで、コプレーナ線路が構成され、信号配線352を伝達する高周波信号を所定のインピーダンスに整合させやすくなり、高周波信号に対する伝送損失を抑制して、高周波信号を効率良く入出力させることができる。
【0047】
リード端子36は、外部からの電気信号を素子2に伝送する機能を有する。図1および図2に示すように、複数のリード端子36は枠体32の貫通孔Tに挿通されている。複数のリード端子36の各々は、セラミックスなどの絶縁部材を介して各々の貫通孔Tに挿通されている。なお、本実施形態のリード端子36は、直流電圧が印加される。
【0048】
蓋体38は、素子2を保護する機能を有する。また、図1に示すように、蓋体38は素子収納用パッケージ3の開口を封止している。蓋体38はシールリングなどを介して枠体32に接合されている。蓋体38の材料としては、例えば鉄、銅、銀、ニッケル、クロム、コバルト、モリブデンまたはタングステンなどの金属材料、あるいはこれらの金属材料を複数組み合わせた合金などが挙げられる。
【0049】
素子収納用パッケージ3では、台座部材34の側面34cが枠体32の内面32aに接合されているとともに、台座部材34の下面34bは基板31の上面31aに接合されていない。例えば、素子収納用パッケージ3の組立工程や実装構造体の作動環境において、素子収納用パッケージ3に加えられる熱や素子2で発生した熱が、基板31、枠体32、台座部材34および配線基板35に伝わり、基板31、枠体32、台座部材34および配線基板35が熱膨張および熱収縮した場合であっても、台座部材34は枠体32のみに接合され、基板31に接合されていないので、台座部材34に基板31の熱膨張および熱収縮による応力が加わりにくくなる。これによって、台座部材34の上面34aに応力が集中しにくくなるので、台座部材34の上面34aに接合されている配線基板35に加わる応力や、コネクタ33と配線基板35との接合部に生じる応力も小さくなる。したがって、配線基板35にクラックが発生することや、コネクタ33が配線基板35から剥がれることを低減でき、配線基板35およびコネクタ33の接続信頼性が低下することを抑制できる。
【0050】
また、台座部材34は、側面34cではなく下面34bが接合されていない。ここで、台座部材34の上面34aに加わる応力は、基板31の熱膨張および熱収縮による寄与が大きい傾向にある。そのため、例えば、台座部材34の下面34bを基板31の上面31aに接合して、台座部材34の側面34cを枠体32の内面32aに接合しない場合には、前述のように基板31から台座部材34に対して比較的に大きな応力が加わりやすいので、台座部材34の上面34aに接合された配線基板35に応力が加わりやすくなる。
【0051】
これに対して、素子収納用パッケージ3では、台座部材34の側面34cが枠体32の内面32aに接合されているとともに、台座部材34の下面34bが基板31の上面31aに接合されていないので、前述のように基板31の熱膨張および熱収縮に起因して台座部材34の上面34aに加わる応力が低減され、台座部材34の上面34aに接合されている配線基板35に対して大きな応力が加わることを低減できるとともに、信号配線352および中心導体331の接合部に対して大きな応力が加わることを低減できる。したがって、配線基板35にクラックが発生することや中心導体331が信号配線352から剥がれること、および信号配線352と中心導体331との間に位置ずれが生じることを低減でき、配線基板35およびコネクタ33の接続信頼性が低下することを抑制できる。
【0052】
また、素子収納用パッケージ3では、台座部材34の上面34aおよび側面34cにめっき層が形成されているとともに、台座部材34の下面34bにめっき層が形成されていない。台座部材34の上面34aおよび側面34cにめっき層を形成することで、台座部材34の上面34aおよび側面34cの酸化腐食を防止できる。加えて、台座部材34の下面34bにめっき層を形成しないことで、台座部材34の下面34bがろう材等の接合材で基板31の上面31aに接合され難くなることから、前述のように台座部材34の上面34aに加わる応力を低減することができるので、配線基板35にクラックが発生することを低減できる。
【0053】
また、実装構造体1は、上記の素子収納用パッケージ3の内部に素子2を収納している。素子2は基板31の実装領域31bに実装されている。素子収納用パッケージ3では、配線基板35およびコネクタ33の中心導体331の接続信頼性の低下を抑制できる。
【0054】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良などが可能である。
【0055】
図7および図8に示すように、台座部材34の下面34bから実装領域31b側に切欠き部Cを形成してもよい。これによって、台座部材34の下面34bおよび基板31の上面31aの当接面積が小さくなるので、素子収納用パッケージ3の組立工程や実装構造体の作動環境において、素子収納用パッケージ3に加えられる熱や素子2で発生した熱によって基板31が熱膨張および熱収縮した場合でも、基板31から台座部材34に応力が加わらないようにすることができる。
【0056】
また、台座部材34は、台座部材34の下面34bから実装領域31b側に設けられた切欠き部Cの少なくとも一部に基板31の上面31aと当接する当接部を有してもよい。これにより、素子収納用パッケージ3の組立工程や実装構造体の作動環境で素子収納用パッケージ3が加熱または冷却され、枠体32および台座部材34が熱膨張および熱収縮によって変形した場合でも、当接部によって台座部材34が基板31の上面31aに対して傾くことを抑制できる。
【0057】
また、図9に示すように、切欠き部Cは、台座部材34の下面34bにおける枠体32の内面32a側に形成されていてもよい。これにより、素子収納用パッケージ3の組立工程や実装構造体の作動環境で素子収納用パッケージ3が加熱または冷却され、枠体32および台座部材34が熱膨張および熱収縮によって変形した場合でも、枠体32と台座部材34との接合部を少なくしたことから、枠体32から台座部材34への応力を緩和することができ、台座部材34が枠体32から剥がれることを抑制できる。また、図10に示すように、台座部材34の側面34cから離して凹部Dを台座部材34の下面34bに形成してもよい。これにより、台座部材34の下面34bおよび基板31の上面31aの当接面積が小さくなるので、素子収納用パッケージ3の組立工程や実装構造体の作動環境において、素子収納用パッケージ3に加えられる熱や素子2で発生した熱によって基板31が熱膨張および熱収縮した場合でも、台座部材34に発生する応力を凹部Dによって逃がしやすくすることができ、台座部材34を安定して基板31の上面31aに載置することができることから、台座部材34や配線基板35の傾きや位置ずれを抑制できる。
【0058】
また、図11に示すように、台座部材34の下面34bに対向する基板31の上面31aに、凹部Oを形成してもよい。これによって台座部材34の下面34bおよび基板31の上面31aの当接面積が小さくなるので、素子2で発生した熱によって基板31が熱膨張および熱収縮した場合でも、台座部材34が基板31の上面31aに対して傾くことを抑制しつつ、配線基板35に加わる応力をさらに低減できる。そして、台座部材34を安定して基板31の上面31aに載置することができることから、台座部材34や配線基板35の傾きや位置ずれを抑制できる。
【0059】
また、図12に示すように、第1接合部材B1および第2接合部材B2の間に間隔を空けて第1接合部材B1および第2接合部材B2を配置してもよい。すなわち、第1接合部材B1および第2接合部材B2を接触していない状態にしてもよい。これによって、基板31および枠体32が熱膨張または熱収縮した場合でも、台座部材34および配線基板35ならびに台座部材34および枠体32の接合面積を小さくできることから、枠体32から台座部材34および第2接合部材B2に加わる応力を低減できるので、台座部材34から配線基板35に加わる応力を低減できる。
【0060】
[素子収納用パッケージおよび実装構造体の製造方法]
以下、図1に示す素子収納用パッケージ3および実装構造体1の製造方法を説明する。なお、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0061】
まず、基板31、枠体32、台座部材34および環状部材37を作製する。基板31、枠体32、台座部材34および環状部材37のそれぞれは、溶融した金属材料を型枠に鋳込んで固化させたインゴットを金属加工法を採用することによって所定形状に成形することで作製される。そして、基板31、複数の貫通孔Tが形成される枠体32、台座部材34および環状部材37が形成される。
【0062】
次に、枠体32を基板31の上面31aに配置し、環状部材37を枠体32の貫通孔Tに重なるように配置するとともに、リード端子36を貫通孔Tに挿入し、それぞれの部材を銀ろうで接合する。
【0063】
次に、絶縁基板351、信号導体352および導体膜353を有する配線基板35を作製する。例えば、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、炭化ケイ素または酸化ベリリウムなどのセラミック粉末に、有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合した混合物を所定形状に加工する。次いで、タングステンまたはモリブデンなどの高融点金属粉末を準備し、この粉末に有機バインダー、可塑剤または溶剤等を添加混合して金属ペーストを準備する。そして、所定形状に加工した混合物の表面に金属ペーストを所定のパターンに印刷する。そして、これを焼成することによって、金属ペーストを信号配線352、導電膜353、所定形状に加工した混合物を絶縁基板351とする配線基板35が作製される。
【0064】
次に、配線基板35を第1接合部材B1を介して台座部材34の上面34aに接合する。そして、台座部材34の側面34cを第2接合部材B2を介して枠体32の内面32aに接合して配置する。ここで、台座部材34は、下面34bおよび基板31の上面31aの間に接合部材を介さずに、基板31の上面31aに配置する。
【0065】
次に、外周導体332の中心軸に中心導体331を誘電体333を介して接合固定し、コネクタ33を作製する。そして、コネクタ33を枠体32の貫通孔Tに挿入するとともに、ろう材などを介して、コネクタ33を枠体32の外面32bに固定するとともに、中心導体331および配線基板35を接合する。
【0066】
次に、素子2を基板31の上面31aの実装領域31b上に配置し、素子2をボンディングワイヤなどを介して信号配線352や導電膜353と電気的に接続する。このようにして、実装構造体1を作製することができる。なお、蓋体38を、実装構造体1に素子2を封止するように接続することができる。
【0067】
本実施形態の製造方法では、台座部材34の側面34cを枠体32の内面32aに接合させるとともに、台座部材34の下面34bを基板31の上面31aに接合させないで、台座部材34を配置している。
【0068】
ここで、例えば、素子収納用パッケージ3(実装構造体1)の組立工程で素子収納用パッケージ3が加熱もしくは冷却された場合に、基板31、枠体32、台座部材34および配線基板35が熱膨張および熱収縮する可能性がある。
【0069】
これに対して、台座部材34の側面34cを枠体32の内面32aに接合させるとともに、台座部材34の下面34bを基板31の上面31aに接合させないことで、台座部材34に基板31の熱膨張および熱収縮による応力が加わりにくくなる。したがって、配線基板35にクラックが発生することを低減でき、高い接続信頼性を有する素子収納用パッケージを量産しやすくなる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12