特許第6046827号(P6046827)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 浙江工▲業▼大学の特許一覧 ▶ ▲塩▼城鼎▲竜▼化工有限公司の特許一覧

特許60468274−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用
<>
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000018
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000019
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000020
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000021
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000022
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000023
  • 特許6046827-4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用 図000024
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046827
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム、並びにその製造及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07D 263/57 20060101AFI20161212BHJP
   C08G 73/22 20060101ALI20161212BHJP
   D01F 6/74 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   C07D263/57CSP
   C08G73/22
   D01F6/74 Z
【請求項の数】20
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2015-542137(P2015-542137)
(86)(22)【出願日】2013年2月9日
(65)【公表番号】特表2016-505522(P2016-505522A)
(43)【公表日】2016年2月25日
(86)【国際出願番号】CN2013071589
(87)【国際公開番号】WO2014075403
(87)【国際公開日】20140522
【審査請求日】2015年11月20日
(31)【優先権主張番号】201210465960.6
(32)【優先日】2012年11月16日
(33)【優先権主張国】CN
(31)【優先権主張番号】201210499035.5
(32)【優先日】2012年11月28日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515126422
【氏名又は名称】浙江工▲業▼大学
(73)【特許権者】
【識別番号】515126433
【氏名又は名称】▲塩▼城鼎▲竜▼化工有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】金▲寧▼人
(72)【発明者】
【氏名】何彪
(72)【発明者】
【氏名】金菁
【審査官】 伊佐地 公美
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2007/032296(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第101209998(CN,A)
【文献】 中国特許出願公開第101016275(CN,A)
【文献】 DEAN, D. R. et al.,Multidimensional Benzobisoxazole Rigid-Rod Polymers. II. Processing, Characterization, and Morphology,Journal of Polymer Science: Part A: Polymer Chemistry,1997年,Vol. 35, No. 16,pp. 3457-3466
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
C08G
D01F
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)に示される4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム。
【化1】
【請求項2】
請求項1記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法であって、該方法は下記の工程を含む:
1)式(II)に示される4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸又は式(III)に示される4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド分子内塩を原料として、水系溶媒においてアンモニアと十分に反応させ、得られた反応液を直接加熱することにより過量のアンモニアを除去し、アンモニア除去過程で系の水量が変わらないように維持し、それから冷却し、ろ過し、洗浄し、乾燥して4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを得る。
【化2】
【請求項3】
更に、以下の精製工程2)を含む、請求項2記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法:
2)4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを原料として、アンモニア水に溶解させ、得られた溶解液を直接加熱して過量のアンモニアを除去し、アンモニア除去過程で系の水量を変わらないように維持し、それから冷却し、ろ過し、洗浄し、乾燥して、精製4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを得る。
【請求項4】
前記工程1)において、アンモニアと4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸又は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド分子内塩との投入モル比は8〜30:1であり、水の質量用量は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸又は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド分子内塩の質量の16〜70倍である、請求項2記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項5】
前記工程2)において、アンモニアと4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムとの投入モル比は8〜30:1であり、水の質量用量は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの質量の16〜70倍である、請求項3記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項6】
前記工程1)は、得られた反応液に活性炭を投入して不純物を吸着させ、次いで前記活性炭をろ過して除去し、不純物除去後の濾液を再度加熱して過量のアンモニアを除去する不純物除去工程を含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項7】
前記工程2)は、得られた溶解液に活性炭を投入して不純物を吸着させ、次いで前記活性炭をろ過して除去し、不純物除去後の濾液を再度加熱して過量のアンモニアを除去する不純物除去工程を含む、請求項3又は5記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項8】
前記工程1)は、前記反応液に抗酸化剤として亜硫酸アンモニウムを投入し、次いで直接加熱して過量のアンモニアを除去することを含む、請求項2〜5のいずれか1項に記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項9】
前記工程1)は、不純物除去後の濾液に抗酸化剤として亜硫酸アンモニウムを投入し、次いで直接加熱して過量のアンモニアを除去することを含む、請求項6記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項10】
前記精製工程2)は、前記溶解液に抗酸化剤として亜硫酸アンモニウムを投入し、次いで直接加熱して過量のアンモニアを除去することを含む、請求項3又は5に記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項11】
前記精製工程2)は、不純物除去後の濾液に抗酸化剤として亜硫酸アンモニウムを投入し、次いで直接加熱して過量のアンモニアを除去することを含む、請求項7記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項12】
前記工程1)において、原料とアンモニアとの反応は40〜80℃で撹拌しながら溶解するまで行われ、加熱による過量のアンモニアの除去は、80℃以下の温度条件で実施され、反応系のpHが7.0〜7.5になるまで除去する、請求項2記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項13】
前記工程2)において、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムのアンモニア水への溶解は、40〜80℃で撹拌しなが実施され、加熱による過量のアンモニアの除去は、80℃以下の温度条件で実施され、反応系のpHが7〜7.5になるまで除去する、請求項3記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項14】
式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸は、出発物質である式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルについて、エステル基を加水分解した後、ニトロ基を還元することにより得られ(スキームA)、又はニトロ基を還元した後、エステル基を加水分解することにより得られ(スキームB)、
【化3】

前記還元において、ヒドラジン水和物が還元剤として、且つFe2+/C又はFe3+/Cが触媒として用いられ、前記触媒Fe2+/Cは、水溶性フェライト及び活性炭で構成される触媒系であり、前記Fe3+/Cは、水溶性第二鉄塩及び活性炭で構成される触媒系であり、
エステル基を加水分解した後、ニトロ基を還元するスキームAは、式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルを原料として、アルコール−水溶媒及びKOHで形成されたアルカリ性条件でエステル基を加水分解して式(V)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得た後、単離せずに触媒であるFe2+/C又はFe3+/C及び還元剤であるヒドラジン水和物を加えてニトロ還元反応を行い、反応終了後、後処理を行って式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得るものであり、
ニトロ基を還元した後、エステル基を加水分解するスキームBは、式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルを原料として、アルコール−水溶媒で触媒であるFe2+/C又はFe3+/Cの存在下、ヒドラジン水和物によって還元を行い、式(VI)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルを得た後、単離せずにNaOHを加えてエステル基の加水分解反応を行い、反応終了後、後処理を行って式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得るものである、請求項2記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項15】
上記スキームAは、反応容器に4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル、アルコール、水及びKOHを加え、混合物を撹拌しながら加熱して還流温度まで昇温させて0.5〜2.5時間反応させ、次いで触媒及びヒドラジン水和物を加え、また適量のアルコールを加え、加熱して還流温度までさせ、1.25〜4.5時間反応させてから反応を停止させ、熱いうちにろ過して廃炭を除去し、濾液に塩酸を滴下して固体を析出させ、ろ過し、水洗いをし、真空で乾燥して、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得ることにより実施され、
前記KOHと4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入モル比は2.50〜2.82:1であり、
前記水とアルコールと4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入質量比は1.9〜3.8:13〜26:1であり、
前記ヒドラジン水和物と4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入モル比は4〜4.5:1であり、
前記水溶性フェライト又は第二鉄塩と活性炭と4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入質量比は0.08〜0.12:0.17〜0.21:1である、請求項14記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項16】
上記スキームBは、反応容器に4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル、触媒、ヒドラジン水和物及びアルコールを加え、混合物を撹拌しながら加熱して還流温度まで昇温させて2〜4時間反応させた後、更に反応容器にNaOH及び水を加えて1〜3時間還流反応させ、熱いうちにろ過して廃炭を除去し、濾液に塩酸を滴下して黄色固体を析出させ、ろ過し、水洗いをし、真空で乾燥して、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得ることにより実施され、
前記ヒドラジン水和物と4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入モル比は2.47〜3.35:1であり、
前記アルコールの質量用量は4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルの質量の11.2〜20.5倍であり、
前記水溶性フェライト又は第二鉄塩と活性炭と4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入質量比は0.12〜0.15:0.18〜0.21:1であり、
前記NaOHと4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルとの投入モル比は3.09〜4.19:1であり、
前記水の用量は4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルの質量の0.2〜0.8倍である、請求項14記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの製造方法。
【請求項17】
均一重縮合による式(IV)のPBOの製造又は共重縮合による式(V)の変性PBO線維の製造における単量体としての、請求項1記載の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの使用。
【化4】
【請求項18】
ポリリン酸を溶媒とし、五酸化二リンを脱水剤として用いて、単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの均一重縮合又は単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムと3−水酸基−4−アミノ安息香酸との共縮合を行い、上記PBO又は変性PBOのポリリン酸液晶溶液を得て、乾噴湿紡法により式(IV)のPBO繊維又は式(V)の変性PBO繊維を得る、請求項17記載の使用。
【請求項19】
上記PBO繊維の製造は下記の工程を含む、請求項18記載の使用:
1)>84%Pを含有するポリリン酸溶媒に単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを投入し、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの質量濃度を12〜15%にし、次いで、100〜160℃において次第に昇温させ、2〜5時間反応させて、PBOの液晶紡糸原液を得る;
2)PBOの液晶紡糸原液から直接に連続で伸糸し、後処理により式(IV)のPBO繊維を得る。
【請求項20】
上記変性PBO繊維の製造は下記の工程を含む、請求項18記載の使用:
1)>84%Pを含有するポリリン酸溶媒に、単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム及び3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸を質量比60〜80%:40〜20%で投入し、単量体総質量濃度を12〜15%にし、次いで、80〜170℃において次第に昇温させ、2〜5時間共縮合反応させて、変性PBOの液晶紡糸原液を得る;
2)変性PBOの液晶紡糸原液から直接に連続で伸糸し、後処理により式(V)の変性PBO繊維を得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(略称;ABAA)、並びにその製造及びPBOと変性PBO繊維の製造における単量体としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
PBOのAB型単体について、早くも1990年には、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシ−2−ベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)の合成及びそのPPA溶剤における均一凝縮反応によるPBO樹脂の製造に関する研究(Polymer preprints, 1990,31(2),681-682)があった。式(1)及び式(2)参照。
【0003】
【化1】
【0004】
しかし、その後、なかなか進歩がなく、2007年になって初めて、東洋紡(株)は、AB型単量体の均一重縮合紡糸により、PBO繊維を製造するパイロット試験技術を開発し、前後して2007年3月(WO2007032296A1)及び2008年10月(US20080269455A1)に公開した。式(2)はHClガスの放出と妨害を完全に防止し、重縮合グループの等モル均一重合を実現させ、縮合効率を大いに向上させた。しかしながら、式(1)でABAを製造する方法を採用したため、単量体に縮合阻止物質である残余DMFが含有されており、品質が縮合級に達成できず、キー原料である4−アミノ−6−ニトロレソルシノール(ANR)が分解し易く、また取得しにくい等の問題がある。東洋紡(株)が自社で製造したABAは、DMF−メタノールにおいて再結晶により精製した後も、純度が単に99%であり、しかも比較的激しい製造条件(縮合温度が220℃、二軸縮合総時間が6時間、極限粘度数[η]が34dl/g)で、抗酸化剤である塩化第一スズを加えて初めて実現できる。文献(Polymer preprints,1990, 31 (2),681-682)のスモールスケール試験製造では、抗酸化剤を加える代わりに、減圧して窒素を3時間導入し、90℃で12時間溶解し、120〜200℃で9.5時間縮合させて、[η]が最高で12.5dl/gとなった。その上、式(1)の方法でABAを製造する場合、反応工程が多く、歩留まりが低く、脱水剤として高額のTSPPの用量が大きく、触媒PD/Cの費用が高く、3つの反応工程がいずれも異なる有機溶剤を使用していることから、製造コストがPBO繊維の販売価格に近いため、実用性に欠けている。
【0005】
本発明者は、構造が新規なエステル式AB型PBOモノマーである4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MAB)及びその必要な安定的なキー中間体である4−アミノ−6−ニトロレソルシノール塩酸塩(ANR・HCl)等の新物質を前後して設計及び合成し、また、4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾーズ−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)を通じて、新規プロセスにより、酸式AB型PBOモノマーであるABA(特許1:ZL200610155719.8)を製造した。その後、AB型モノマーの製造が複雑・困難で、経済性が低い等の従来の理念を突破することに成功し、かつ重大な実用価値を得た上、更にカルボアミド塩である新規AB型モノマーの4−(5−アミノ−6−-ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド塩(ABAS)の構造及び製造技術の革新まで広げた。式(3)を参照。そのうち、MNB加水分解後還元析出法(特許1:ZL200610155719.8)及びMAB加水分解析出法で製造されたAB型単量体(特許2:ZL200610155718.3)がそれぞれABA又はそれと互変構造となるカルボアミド塩(ABAS)に属することは、既に証明された。式(3)を参照。
【0006】
【化2】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開2007/032296号公報
【特許文献2】米国特許公開2008/0269455号公報
【特許文献3】中国特許ZL200610155719.8号公報
【特許文献4】中国特許ZL200610155718.3号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Polymer preprints, 1990,31(2),681-682
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、縮合級AB型PBOの新規単量体の製造及び使用において、特許1及び2で製造された新規AB型単量体は、その他の文献及び東洋紡社の特許と比べて、DMF縮合阻止不純物を全く含有しない、及び製造プロセスが簡単で経済性が高い等の特徴があるが、使用効果に明らかな改善がなく、主にAB型新規単量体に含有される金属イオンが多すぎ、又は品質が縮合級でないため(特許1における次亜硫酸ナトリウム還元法及びNBA触媒水素投入NaHSO析出法及び特許2のMAB加水分解NaHSO析出法は、単量体に少量の亜硫酸塩類物質が存在し、金属イオン含有量が5000〜10000ppmに達し、また、製造過程で亜硫酸塩類無機物を含有する廃水による汚染が生じる)、ABA自己重縮合反応過程が阻害され、ガラス縮合器で製造されたPBOの極限粘度も僅か15dl/gであり、文献(Polymer preprints,1990, 31 (2),681-682)で開示されたDMF縮合阻止不純物を含有するABAの縮合で製造されたPBOの12.5dl/g1よりやや高い。従って、超高分子量PBOの製造への使用から見れば、縮合級AB型PBOの新規単量体を製造し、式(3)のABAの合成プロセスを改変し、汚染が少なく、金属イオンを効果的に除いた精製方法及びその技術発明を開発するのは、重要でかつ必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第一の目的は、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)を提供する。この化合物は、重縮合グループ完全当量比、抗酸化性及び熱安定性が高く、及びいかなる抗酸化剤と不活性雰囲気による保護がない環境条件で少なくとも3年以上保存しても品質が変わらないとの独特のメリットがあり、且つポリリン酸に対する溶解性が良く、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)及び4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド塩(ABAS)と比べ、AB型単量体としてPBOまたは変性PBO繊維を製造するのに適している。
【0011】
本発明の第二の目的は、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを製造する方法を提供する。この方法は、操作が簡便で、金属イオンの低減が有効且つ制御可能で、経済性が高く、環境にやさしく、製品が縮合級(純度が99.5%以上、金属イオン含有量が200ppm以下、且つDMF縮合阻止不純物が非含有)に達するとの特徴がある。
【0012】
本発明の第三の目的は、PBO及び変性PBO繊維の製造における、上記4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムのAB型モノマーとしての使用を提供する。この使用は、反応工程を短縮し、縮合速度を向上させ、縮合温度を下げ、得られたPBO及び変性PBOは分子量が高く、引張性能が優れているとの特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】ABA製品の赤外スペクトルである。
図2】ABAA製品の赤外スペクトルである。
図3】ABAA精製製品の赤外スペクトルである。
図4】ABASのDMF−メタノール再結晶精製製品の赤外スペクトルである。
図5】PBO繊維の赤外スペクトルである。
図6a】R(ポリ−2,6−ベンズオキサゾール,PBO)で変性されたPBO繊維の赤外スペクトルである。
図6b】R(ポリ−2,6−ベンズオキサゾール,PBO)で変性されたPBO繊維の赤外スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下で本発明の技術方案を具体的に説明する。
本発明は、新規化合物である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを提供する。その構造を式(I)に示す。
【0015】
【化3】
【0016】
本発明は、上記4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)の製造方法を提供する。この方法に下記のステップが含まれる。
【0017】
1)式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)または式(III)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸カルボアミド塩(ABAS)を原料として、水系溶媒中でアンモニアと十分に反応させ、次いで、得られた反応液を直接に加熱することにより、過量のアンモニアを除去し、アンモニア除去過程で反応系における水系溶媒の量を変わらないように維持し、それから冷却し、ろ過し、洗浄し、乾燥して、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)を得る。
【0018】
【化4】
【0019】
本発明の工程1)で使用される原料であるABAまたはABASは、文献に基づいて製造できるが、製造方法によっては、異なった純度(異なった含有量の金属イオンを含有するものを含む)のABAまたはABASが得られる。例えば、特許1:ZL200610155719.8で製造されたABAまたはABASは、金属イオン含有量が比較的高いため、目的化合物であるABAAの品質に影響する。本発明の工程1)で使用する物質はいずれも外来の金属及びイオンが導入されず、異なる金属含有量の原料(ABAまたはABAS)について、投入された脱イオン水と原料との質量倍数により、ABAAの製造または精製後の低下した金属含有量の倍数に近似してABAAAにおける金属イオン含有量を計算して、ABAAの品質を実現し、効果的に管理する。工程1)において、アンモニアは精製級アンモニア水の方式(例えば精製級25%アンモニア水)で投入され、また、投入された水は脱イオン水である。反応系中の原料の溶解性はアンモニア及び水の用量と関連し、好ましくは、アンモニアと原料(ABAまたはABAS)との投入モル比は8〜30:1であり、更に好ましくは18〜28:1である。水の質量用量(精製級アンモニア水における水及び脱イオン水を含む)は原料(ABAまたはABAS)質量の16〜70倍であり、更に好ましくは24〜56倍であり、より好ましくは24〜28倍である。
【0020】
工程1)において好ましくは、原料とアンモニアとの反応は、40〜80℃の撹拌条件で実施され、溶解するまで撹拌してよい。
【0021】
工程1)の加熱による過量のアンモニアの除去は、80℃以下の温度条件で実施し、反応系のpHが7.0〜7.5になるまで除去するのが好ましい。上記の加熱による過量のアンモニアの除去は、60〜80℃の温度条件で実施し、反応系のpHが7になるまで除去するのが更に好ましい。アンモニア除去の過程で黄色結晶が絶えず析出し、該過程で系中の水量を安定的に維持して(例えば、連れ出された水を凝縮させて母液に還流させる方式を採用する)、濃縮した製品の品質への不利な影響を防止する必要があり、除去されたアンモニアをアンモニア水の方式で回収する。
【0022】
更に、製造過程で原料中の不純物(例えば、金属イオン)の含有量が比較的高い場合、工程1)において、得られた反応液に活性炭を投入して不純物を吸着させ、活性炭をろ過して除去し、不純物除去後のろ液を直接加熱して過量のアンモニアを除去する不純物除去工程を含むことができる。好ましくは、上記の活性炭は粉末状で、その用量は原料(ABAまたはABAS)質量の0.05〜0.13倍であり、更に望ましくは、0.1倍である。好ましくは、活性炭による不純物の吸着・除去は、60〜90℃で実施される。
【0023】
更に、原料及びABAA製品の高温アルカリ性水溶液における酸化を防止するために、上記工程1)において、得られた反応液(活性炭による不純物除去工程があった場合、活性炭による不純物の吸着・除去後のろ液)に、抗酸化剤として亜硫酸アンモニウムを投入し、その後、直接に加熱して過量のアンモニアを除去する工程を含めることができる。
【0024】
好ましくは、上記亜硫酸アンモニウムの投入量は原料(ABAまたはABAS)質量の0.14〜0.50倍であり、更に望ましくは0.15〜0.25倍である。
【0025】
更に、本発明の上記工程1)で製造されたABAAが依然として縮合級とならない場合、以下の精製工程2)を含めることができる。
【0026】
2)4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)を原料として、アンモニア水で溶解し、得られた溶解液を直接に加熱して過量のアンモニアを除去し、アンモニア除去過程で反応系の水量を変わらないように維持し、それ後冷却し、ろ過し、洗浄し、乾燥して、精製4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを得る。
【0027】
工程2)において、アンモニア水は、脱イオン水で希釈した精製級アンモニア水(例えば、精製級25%アンモニア水)の形式で加えることができる。好ましくは、アンモニアと原料ABAAとの投入モル比が8〜30:1であり、更に好ましくは18〜28:1である。水(精製級アンモニア水における水及び脱イオン水を含む)の質量用量は原料ABAA質量の16〜70倍であり、好ましくは24〜56倍であり、更に好ましくは48〜56倍である。
【0028】
工程2)において、アンモニア水でABAAを溶解させるのは40〜80℃、撹拌条件で実施され、溶解まで撹拌することが好ましい。
【0029】
工程2)の過量のアンモニアを加熱して除去する操作条件は、工程1)におけるものと同じであることが好ましい。
【0030】
更に、金属イオンを効果的に除去するために、上記工程2)において、得られた溶解液に活性炭を投入し不純物を吸着させ、次いで活性炭をろ過して除去し、不純物除去後のろ液を直接に加熱して過量のアンモニアを除去する、活性炭による不純物除去を含めることができる。上記活性炭の用量は原料ABAA質量の0.05〜0.13倍であり、更に好ましくは0.1倍である。不純物吸着・除去の操作条件は、工程1)におけるのと同じである。
【0031】
更に、高温アルカリ性水溶液における原料及び生成物の酸化を防止するために、上記の工程2)において、得られた反応液(活性炭による不純物除去を行った場合、活性炭による不純物の吸着・除去後のろ液)に、抗酸化剤である亜硫酸アンモニウムを加え、その後、直接に加熱して過量のアンモニアを除去する工程を含んでもよい。上記の亜硫酸アンモニウムの添加量は、原料であるABAAの質量の0.14〜0.50倍であり、好ましくは0.15〜0.25倍である。
【0032】
本分野の技術者は、実際の状況により、必要な精製回数を確定することができる。
【0033】
更に、重縮合によるPBOの製造において、如何なる有害ガスと妨害が生じず、同時に有機縮合阻止不純物DMFを含有せず、かつ金属イオン含有量が低い原料4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)を得るために、本発明は、ワンポット法で4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)を製造する方法を提供する。この方法には下記のプログラムと工程が含まれる。
【0034】
式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)を原料として、まずエステル基を加水分解し、それからニトロ基を還元して式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得る(プログラムA)を得る。あるいは、ニトロ基を還元し、それからエステル基を加水分解して式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を得る(プログラムB)。式(5)を参照。
【0035】
【化5】
【0036】
プログラムA及びBに記載のニトロ基の還元は、ヒドラジン水和物を還元剤とし、かつFe2+/CまたはFe3+/Cを触媒とし、エステル基の加水分解は、アルカリ金属水酸化物を加水分解剤としており、いずれもアルコール−水溶媒においてワンポットin−situ法で合成される。
【0037】
使用するアルコール溶剤として好ましくは、メタノール、エタノール、イソプロピル等であり、更に好ましくはメタノールである。使用する触媒は水溶性第二鉄塩または水溶性フェライト及び活性炭からなる触媒システムであり、そのうち触媒Fe2+/CにおけるFe2+は水溶性フェライトであり、塩化第一鉄、硫酸第一鉄等とする。触媒Fe3+/CにおけるFe3+は水溶性第二鉄塩で、塩化鉄、硫酸鉄等とする。
【0038】
好ましくは、上記のエステル基加水分解及びニトロ還元はいずれも回流温度で実施され、エステル基加水分解の反応時間は0.5〜3時間、ニトロ還元の反応時間は1.25〜4.5時間である。ニトロ還元反応終了後、簡単な後処理により対象産物を得ることができる。
【0039】
好ましくは、上記の後処理は下記の方法を採用する:反応終了後、熱いうちに活性炭をろ過して除去し、ろ液に塩酸を滴下して固体を析出させ、ろ過し、水洗し、真空乾燥してABAを得る。
【0040】
エステル基を加水分解し、次いでニトロ基を還元するプログラムAは、具体的に下記の通りである。
【0041】
式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)を原料として、アルコール−水溶媒において、KOHで形成されたアルカリ性条件下でエステル基を加水分解し、0.5〜2.5時間回流反応させて、式(V)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸を生成させ、次いで分離せずに触媒Fe2+/C及び還元剤ヒドラジン水和物を投入して、ニトロ基を還元し、1.25〜4.5時間回流反応させ、反応終了後処理して式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)を得る。そのうち、水とアルコールとMNBとの投入質量比は1.9〜3.8:13〜26:1である。KOHとMNBとの投入モル比は2.50〜2.82:1である。ヒドラジン水和物とMNBとの投入モル比は4〜4.5:1であり、水溶性フェライトまたは第二鉄塩、活性炭とMNBとの投入質量比は0.08〜0.12:0.17〜0.21:1である。
【0042】
ニトロ基を還元し、次いでエステル基を加水分解するプログラムBは、具体的に下記の通りである。
【0043】
式(IV)の4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)を原料として、アルコール−水溶媒において、触媒Fe2+/C及びヒドラジン水和物を投入してニトロ基を還元し、2〜3時間回流反応させて式(VI)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステルを生成させ、次いで分離せずにNaOH及び水を加えてエステル基の加水分解反応を行い、1〜3時間回流反応させ、再度処理して式(II)の4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)を得る。そのうち、アルコールの用量はMNB質量の11.2〜20.5倍であり、ヒドラジン水和物とMNBとの投入モル比は2.47〜3.35:1であり、水溶性フェライト又は第二鉄塩、活性炭とMNBとの投入質量比は0.12〜0.15:0.18〜0.21:1である。上記NaOHとMNBとの投入モル比は3.09〜4.19:1であり、上記水の用量はMNB質量の0.2〜0.8倍である。
【0044】
本発明は更に、均一重縮合による式(VII)のPBOの製造又は共重縮合による式(VIII)の変性PBO繊維の製造における、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの単量体としての使用を提供する。
【0045】
【化6】
【0046】
更に、上記の使用では、ポリリン酸(PPA)を溶媒とし、五酸化二リンを脱水剤として窒素ガスの保護下で単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム自身の均一重縮合、又は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムと3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸との共重縮合により、それぞれ上記PBO又は変性PBOのポリリン酸液晶溶液を得て、次いで乾噴湿紡法によりそれぞれ式(VII)のPBO繊維又は式(VIII)の変性PBO繊維を得る。変性PBO繊維の製造において、単量体4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムと3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸との質量比は、60〜80%:40〜20%が好ましい。
【0047】
更に、上記PBO繊維の製造は、下記の工程を含む。
【0048】
A)>84%Pを含有するポリリン酸溶媒に単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムを投入し、4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムの質量濃度を12〜15%にし、次いで、窒素ガスの保護下で100〜160℃において次第に昇温させ、2〜5時間反応させて、PBOの液晶紡糸原液を得る。
B)PBOの液晶紡糸原液から直接に連続で伸糸し、後処理により式(VII)のPBO繊維を得る。
【0049】
更に、上記変性PBO繊維の製造は、下記の工程を含む。
【0050】
a)>84%Pを含有するポリリン酸溶媒に、単量体である4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム及び3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸を質量比60〜80%:40〜20%で投入し、単量体総質量濃度を12〜15%にし、次いで、窒素ガスの保護下で80〜170℃において次第に昇温させ、2〜5時間共重縮合反応させて、変性PBOの液晶紡糸原液を得る;
b)変性PBOの液晶紡糸原液から直接に連続で伸糸し、後処理により式(VIII)の変性PBO繊維を得る。
【0051】
上記PBO繊維及び変性PBO繊維の製造において用いられる単量体4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウムは、縮合級、即ち純度が99.5%以上で、金属イオン含有量は200ppm以下、且つDMF縮合阻止不純物を含有しないものが好ましい。
【0052】
上記工程B)及び工程b)の後処理には、通常の凝固、洗浄、及び乾燥等の工程が含まれる。
【0053】
本発明により製造されたPBO樹脂の極限粘度は18〜39dl/g、PBO繊維の直径は20〜120μm、繊度は1.1tex、単糸引張強度は3.8〜4.2GPaである。
【0054】
本発明により製造された変性PBOの極限粘度は14〜25dl/g、変性PBO繊維の単糸繊維強度は2.8〜3.6GPaである。
【0055】
従来技術と比べ、本発明は下記の有利な効果がある:
1)4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)は、使用価値が高い新規物質であり、その性質には次の特殊性がある。まず、ABAAはイオン結合が明確で安定的な分子構造であり、且つ互変性のABA及びABAS構造を有しないので、ABA及びABAS構造に依然として存在する酸化性質を回避し、抗酸化性能が優れている。それは、重縮合グループ完全当量比、初期加熱分解温度が260℃、熱安定性が優れており、また、如何なる抗酸化剤及び不活性雰囲気保護がない環境条件でも、少なくとも3年以上保存しても質量が変わらないという独特メリットがある。そしてABAAはPPAに溶解しやすい。従って、ABAAがABA(AB型単量体で、外観が浅灰黄色、品質保証期間が10カ月)及びDAR・2HCl(AA型単量体で、外観が白色結晶、品質保証期間が3カ月)の代わりにPBO繊維の製造に応用されるのは必然的な趨勢となる。
【0056】
2)本発明の方法で製造された4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)は、縮合級単量体の品質レベル(純度99.5%以上、金属イオン200ppm以下、且つDMF縮合阻止不純物を非含有)に達し、PBO樹脂及び繊維の製造への使用に明らかなメリットがある。ABAAがPPAに溶解すると、ABAAとPPAとのアンモニア交換反応によりポリリン酸アンモニウムが生成し、その後、高温においてその一部がアンモニアガスNHを放出して分解し、高活性のABAが得られる。NHの還元性により、抗酸化剤としての塩化第一スズの投入を代替することができ、生成したABAは、高活性及び均一反応により、重縮合基の完全当量比の縮合反応速度を大幅に速くすることができるため、生産能力を数倍も拡大させ、且つ得られたPBOの分子量をより高くすることができる。例えば、40mlガラス縮合反応器において、低金属イオン含有量の縮合級ABAAを用いて均一快速反応させ、自己重縮によりPBOを合成することは、ABA均一縮合及びDAR−TPA混合重縮合と比べ、縮合温度(100〜160℃)が比較的低く、繊維の紡糸性が優れているとの特徴がある。短時間で極限粘度数η=24dL/g以上、最高が39.5dL/gのPBO樹脂を得ることができ、既存技術によるABAの縮合でのηの結果より遙かに高い。手動で連続して伸ばされたPBO単糸繊維の引張強度は3.8GPa、弾性率は250GPaとなる。また、ABAAの金属イオン含有量が低く、且つ過程に抗酸化剤Sn2+を投入する必要がなく、PPA回収循環の縮合過程で混入する金属イオン上限の要求を満たしており、PPAの回収、加工及び循環使用と循環経済の発展を可能にしたので、より産業化、経済及び環境上の優位性を有する。
【0057】
3)本発明のABAAの製造方法には下記の特徴がある:(1)常規の安息香酸類物質は、アンモニアと反応溶解後、過飽和まで濃縮しないと析出させることができないが、過飽和まで濃縮して析出された安息香酸類アンモニウム塩の品質は低くなる。本発明は、アンモニア除去過程で水量の安定を維持してこの問題を解決して、産物品質の低下を防止できる。(2)ABAAの製造工程1)又は精製工程2)には、外来の金属及びイオンの混入がなく、異なる金属含有量の原料(ABA、ABAS、ABAA)について、投入された脱イオン水と原料との質量倍数により、ABAAの製造又は精製後の金属含有量低下後の倍数に近似してABAAにおける金属イオン含有量を計算して、精製の必要性又は精製回数が確定するので、ABAAの品質を実現させ、効果的に管理することができる。(3)本発明では、活性炭投入による不純物除去工程を通じて、更に不純物を除去することができる。(4)本発明では、反応系に抗酸化剤を投入することにより、ABAAの製造及び精製過程における原料と産物との高温アルカリ性溶液での酸化課題を効果的に解決できる。(5)本発明で除去されたアンモニアは、水により吸収させた後、循環して使用することができ、常用の酸塩による精製(アンモニア水で無機酸を溶解して析出させる)における無機アンモニウム塩汚染の防止に十分な効果があり、清浄生産の目的を達成できる。まとめると、本発明のABAAの製造方法は、操作が便利で、金属イオンの低下に有効且つ制御可能で、経済性が高く且つ環境に優しく、ABAA製品が縮合級(純度99.5%以上、金属イオン含有量200ppm以下、且つDMF縮合阻止不純物が非含有)に達するとの特徴がある。
【0058】
4)本発明のABAの製造方法には下記の特徴がある:(1)アルコール−水を溶媒とする加水分解及びヒドラジン水和物による還元のワンポット法でABAを原位で合成することにより、文献のMNB−NBA−ABA分段合成法及び触媒水素投入等の複雑な工程を回避したので、過程が簡略化し、安全になり、設備が普通で、経済性・省エネ性があり、有機溶剤汚染が少ない等のメリットがある。得られたABAは、純度が高く、且つDMF有機縮合阻止不純物を含有せず、重縮合効果により優れている。本発明者の以前の特許(ZL200610155719.8)の方法、即ち、最初に加水分解し、次いで次亜硫酸ナトリウムで還元するという方法と比べ、より制御しやすく、且つ操作が安定で、収率が高く、次亜硫酸ナトリウムの代わりにヒドラジン水和物を還元剤とすることにより、産物におけるナトリウムイオン含有量を大きく減少させ、縮合効率を引き上げた。本発明者の以前の特許の最初に還元(ZL200410093359.4)し、次いで加水分解(ZL200610155718.3)の分段法によるABA製造と比べ、更に簡単で、収率がより高い。(2)本発明のMNBのワンポット法によるABA原位合成の加水分解反応と還元反応において使用される溶媒は、いずれもアルコール−水溶媒であり、溶媒の回収及び重複使用が便利で、回収されたアルコールに30%の水が含まれ、且つ精留する必要がなく、アルコール−水溶媒におけるアルコール含有量を正確に測定すれば、追加する水又はアルコールを計算することができ、且つ回収溶媒に直接投入するという方式で循環使用する。アルコールの回収率は95%となり、清浄化生産の目的を完全に達成できる。
【実施例】
【0059】
以下において、具体的な実施例により本願発明の内容を更に説明するが、本願発明の保護範囲はそれに限られない。
【0060】
実施例1:ABAを原料とする製造方法
(1)ABA製品(純度98.82%。K:5489ppm、Na:155ppm、Fe:75ppm。IRについて図1参照)13.5g(0.05mol)を、脱イオン水326mlに投入し、撹拌しながら60℃に昇温し、5分で50gの25%アンモニア水(0.73mol)を溶解するまで滴加した。次いで、活性炭1.5gを加え、80℃に引き続き昇温し、10分間吸着・脱色させた。そして、65〜70℃で熱間ろ過し、ろ液に4.5g亜硫酸アンモニウムに再度加えた後、60〜80℃でpH7.0まで1時間ほど真空脱アンモニアを行い、室温まで冷却してろ過し、ろ過ケーキを150mlの脱イオン水でパルプにして洗浄・ろ過後、60℃で真空乾燥させて、黄色結晶産物ABAA10.8g(0.0376mol)を得た。純度は99.41%、金属イオン総含有量は176ppm(K:161ppm、Na:15ppm、Fe:0ppm)、収率は75.26%であった。そのIRについては図2参照。IR(KBr, cm-1)3328.8(m), 1627.1(m), 1592.3(s), 1561.0(s), 1538.8(s), 1379.9(s), 1334.0(s),1311.4(s),1210.2(s), 1132.2(s), 1072.4(s), 882.5(s), 843.8(s), 790.2(s), 715.1(s), 436.8(s)。 元素分析 C14H13N3O4理論計算:C,58.53。H,4.56。N,14.63。O,22.28。実測:C,58.55。H,4.43。N,13.44。定性は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸アンモニウム(ABAA)である。
【0061】
(2)粗ABA(文献記載のNBA水素添加法により製造され、純度94.21%、K:264ppm、Na:347ppm、Fe:132ppmであり、IRは図1と同様である。)13.5gを取り、その他の原料及び方法はいずれも(1)と同じとして、60℃で真空乾燥させて土黄色結晶産物であるABAA7.6g(0.0265mol)を得た。純度は97.51%、金属イオン総含有量は132ppm(K16ppm、Na67ppm、Fe49ppm)、収率は52.96%であった。ABAS−IRは図2と同様である。
【0062】
実施例2:粗ABAを原料とする製造法
粗ABA(特許ZL200610155719.8におけるNBA次亜硫酸ナトリウム還元法で製造されたものであり、純度98.22%9、含塩分10%1。K:362ppm、Na:50773ppm、Fe:239ppm。IRは図1と類似する)20.0g(0.074mol)を取り、脱イオン水400mlに加え、撹拌しながら75℃までに昇温させた。5分間で25%アンモニア水120g(1.76mol)を溶解するまで滴加し、次いで活性炭2.0gを加え、80℃に引き続き昇温させ、10分間吸着・脱色させた。65〜70℃で熱間ろ過し、ろ液に亜硫酸アンモニウム5.0gを再度加えた後、55〜70℃でpH7.0まで1時間20分ほど真空脱アンモニアを行い、室温まで冷却してろ過し、ろ過ケーキを200mlの脱イオン水で洗浄・ろ過後、60℃で真空乾燥させて黄色結晶であるABAA製品15.8g(0.055mol)を得た。その純度は99.27%(K:34ppm、Na:3692ppm、Fe:22ppm)、収率は74.32%であった。ABAS−IRは図2と同じである。IR(KBr,cm-1) 3328.2(s),1627.5(s),1559.9(s), 1538.1(s), 1471.2(s),1379.4(s), 1334.0(s), 1311.1(s), 1209.5(s), 1132.5(s), 1072.8(s), 883.9(s), 843.8 (s), 789.8(s),714.6(s)。
【0063】
実施例3:ABAAを原料とする精製法
実施例2で製造されたABAA製品 (純度99.27%、K:34ppm、Na:3692ppm、Fe:22ppm)10.0gを、脱イオン水500mlに加え、撹拌しながら60℃に昇温させた。5分間で25%アンモニア水70g(1.03mol)を溶解するまで滴加し、次いで活性炭1.0gを加え、80℃に引き続き昇温させ、10分間吸着・脱色させた。65〜70℃で熱間ろ過し、ろ液に亜硫酸アンモニウム2.3gを再度加えた後、60〜80℃でpH7.5まで1時間ほど真空脱アンモニアを行い、室温まで冷却してろ過し、ろ過ケーキを150mlの脱イオン水で洗浄・ろ過後、60℃で真空乾燥させて、黄色結晶産物であるABAA精製製品8.1gを得た。純度は99.53%、金属イオン総含有量は176ppm(K:0ppm、Na:176ppm、Fe:0ppm)であり、品質が縮合級単量体レベルに達し、収率は81.0%であった。ABAA−IRについて図3を参照。IR(KBr, cm-1) 3329.2(s), 1627.3(s), 1592.3(s), 1561.0(s), 1538.7(s), 1379.9(s), 1334.1(s), 1311.5(s),1210.2(s),1132.3(s),1072.6(s),883.3(s),843.8(s),790.1(s),715.1(s),437.1(s)。
【0064】
実施例4〜11
実施例1〜3と同様の方法により、プロセス保護範囲(HO/原料質量比、NH/原料モル比、亜硫酸アンモニウム/原料質量比、C/原料質量比)でABAAの製造及び縮合級ABAAの試験を実施した。その結果を表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
比較例1:ABASを原料とするDMF/メタノール再結晶精製法
ABAS製品(特許2:ZL200610155718.3により製造されたもので、純度;98.57%,K;573、Na;28390、Fe;109)5.0gを、DMF5.0gを、DMF−CHOH:150ml−50ml混合溶媒に加え、90℃に昇温させて30分間撹拌し、溶解後に活性炭0.5gを加え、95℃で吸着・脱色し、15分間で熱間ろ過し、ろ液に300mlメタノールを加えて粗生成物を析出させ、該粗生成物を順次50ml及び100mlメタノールで洗浄・ろ過した後、60℃で真空乾燥させて、浅灰色結晶である一次精製品2.6gを得た。純度98.04%、収率52%であった。IRについて図4を参照。IR(KBr, cm-1) 3270.2(m), 1673.5(s), 1617.8(s), 1581.0(s), 1466.9(s), 1411.0(s), 1381.6(s), 1295.7(s), 1178.7(s), 1129.1 (s), 1054.0(s), 970.0(s), 860.3(s),781.8(s),710.2(s),505.3(s)。元素分析 C14H10N2O4 理論計算:C,62.22。H,3.73。N,10.37。O,23.68。実測:C,61.86。H,3.49。N,10.85。定性は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール-−2−イル)安息香酸(ABA)である。金属総量を表2に示す。
【0067】
比較例2:ABAを原料とするDMF/メタノール混合溶媒再結晶精製法
ABA製品(実施例1(1)と同じ、純度98.82%。K:5489ppm、Na:155ppm、Fe:75ppm)5gを、DMF−CHOH:150ml−50ml混合溶媒に加え、90℃に昇温させて30分間撹拌し、溶解後に活性炭0.5gを加え、95℃で吸着・脱色し、15分間で熱間ろ過し、ろ液に300mlメタノールを加えて粗生成物を析出させ、該粗生成物を順次50ml及び100mlメタノールで洗浄・ろ過した後、60℃で真空乾燥させて、深クリーム色の結晶産物である一次精製品ABA3.95gを得た。純度98.01%、収率79.0%であった。ABA−IRは図4と同じである。IR(KBr,cm-1):3271.1(m),1682.7(s),1617.9(s),1581.2(s), 1467.4(s),1410.8(s),1381.0(s),1293.4(s),1178.6(s),1128.6(s),1054.4(s),971.9(s),860.6(s),781.9(s),710.4(s),505.2(s)。定性はABAである。金属総量を表2に示す。
【0068】
比較例3:ABAを原料とするDMF/メタノール混合溶媒再結晶精製法
粗ABA5g(特許1:ZL200610155719.8)のスキーム(3)に基づいて、MNBの加水分解によりNMBを得て、次いでスキーム(1)に基づいて、DMF溶媒中で触媒によるNMBの水素化により調製されたABAで、純度94.21%、K:264ppm、Na:347ppm、Fe:132ppm)を取り、比較例1の配合比で原料を投入し、DMF/メタノール混合溶媒再結晶を行い、60℃で真空乾燥させて、灰色結晶3.0gを得た。純度97.42%、精製収率60.0%であった。IRは図4と同じである。定性はABAである。金属総量を表2に示す。
【0069】
【表2】
【0070】
実施例12;ABAAの原料の一つである4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)の製造(プログラムA加水分解後還元ワンポット一鍋法)
反応容器に4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)12g(0.038mol)、メタノール306g、水45g、及びKOH5.36g(0.096mol)を投入し、撹拌しながら75℃に回流まで昇温させ、反応物は黄色懸濁液から赤色絮状物に変化し、1時間程引き続き反応させた。次いで、順に塩化第一鉄1.2g、活性炭2.4g、80%ヒドラジン水和物10.2g(0.163mol)を投入し、75℃に回流まで昇温させ2時間程反応させ、反応液はオレンジ色に変化した。熱間ろ過して廃炭を除去し、ろ液に濃塩酸19gを滴加して、黄色固体を析出させ、ろ過及び水洗を行い、真空で乾燥して、産物ABA9.52gを得た。純度は96.2%、金属イオン(K、Fe2+)総含有量は3252ppm、収率は92.25%であった。そのIRは図1参照。IR(KBr、cm−1)の吸収ピークの帰属分析は下記の通りである。
【0071】
3422.1 (s,水酸基OH吸収),3336.3、3270.7(m,アミノN−H特徴吸収),3099.6、2601.5(m,芳香カルボン酸O−H会合状態),1697.6(s,芳香カルボン酸C=O吸収),1616.6(s,オキサゾールC=N吸収),1580.2、1557.9(s, ベンゼン環C=C吸収),1490.7、1468.7(s,オキサゾール複素環吸収),1382.1(s,フェノール水酸基OH吸収),1327.3(s,芳香カルボン酸C−O吸収),1302.7(s,芳香族アミンC−N吸収),1278.6(s,オキサゾールC−O吸収),1220.9、1114.6(s,水酸基C−O吸収),1411.0、1053.8(s, ベンゼン環C−C骨組み吸収),860.5(s, ベンゼン環パラ位二置換C−H吸収),709.4(s,ベンズオキサゾール環特徴吸収)。H−NMR(DMSO)6.94, 7.04, 8.10, 8.18。定性は4−(5−アミノ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸(ABA)である。
【0072】
実施例13〜19:ABAの製造(プログラムA)
MNB12g及び80%工業ヒドラジン水和物10.2gを用い、実施例12と同様の方法により、本発明に記載のパラメータ範囲であり、且つ異なるパラメータ(メタノール、水、KOH、塩酸用量)でABAを製造した。結果を表3に示す。
【0073】
【表3】
【0074】
実施例20:ABAの製造(プログラムBの還元後加水分解ワンポット法)
反応容器に4−(5−ニトロ−6−ヒドロキシベンズオキサゾール−2−イル)安息香酸メチルエステル(MNB)10g(0.032mol)、活性炭1.98g、塩化鉄1.4g、80%ヒドラジン水和物5.9g(0.094mol)、及びメタノール202gを投入し、撹拌して回流まで昇温させ、3.5時間程反応させ、反応物は黄色から茶褐色に変化した。次いで、反応容器にNaOH4.95g(0.12mol)及び水8gを投入して3時間程反応させ、反応物は溶解しオレンジ色に変化した。熱間ろ過して廃炭を除去し、pHが6〜7になるまでろ液に濃塩酸を滴加して、黄色固体を析出させ、ろ過及び水洗を行い、真空で乾燥させて、ABA産物6.35gを得た。純度は95.34%、金属イオン(Na、Fe2+)総含有量は4415ppm、収率は73.84%であった。得られた産物の赤外スペクトルは図1と類同し、定性はABAである。
【0075】
実施例21〜25:ABAの製造(プログラムB)
MNB10g及び80%工業ヒドラジン水和物5.9gを用い、実施例20と同様の方法により、本発明に記載のパラメータ範囲であり、且つ異なるパラメータ(還元時間、加水分解時間、ヒドラジン水和物、NaOH)でABAを製造した。結果を表4に示す。
【0076】
【表4】
【0077】
応用実施例1:ABAAの均一重縮合によるPBO繊維の製造
自家製ガラス縮合反応器に、順にP3.2g及び83%PPA24.0gを投入した。混合物を90℃に昇温させ、透明になるまで1時間ほど撹拌して、85.0%のPを含むPPAを形成させた。次いで、窒素を投入してやや冷却後、実施例3で製造されたABAA4.11g(0.0143mol)を投入して、13.1%(wt)の単量体濃度に配合した。110℃に昇温させ、1.5時間撹拌し溶解させ、全体的に蛍光になるまで45分間で次第に125℃に昇温させ、125℃で40分間反応させた後、1時間で150℃に次第に昇温させ、糸状になった後、また160℃に昇温させ、20分間程反応させて、縮合反応を終了させ、PBOの液晶原液を得た。この液晶原液から120℃で手作業により直接且つ連続して繊維(長さ約8〜15m)に伸糸し、中性になるまで数回の沸騰洗浄後、110℃で乾燥し、黄金色のPBO繊維を得た。測定された繊維の引張強度は3.9GPa、弾性率は152GPa、極限粘度数η=31.2dl/gであり、総収率は96.1%であった。PBO繊維のIRについて図5参照。
【0078】
応用実施例2
自家製ガラス縮合反応器に、順に83.8%Pを含有するPPA21.3g及び実施例9で製造されたABAA3.76g(0.0131mol)を投入し、15.0%(wt)の単量体濃度に配合した。窒素の保護下で15分間で120℃に昇温させ、25分間程撹拌すると、溶解すると共に全体的に蛍光になった。120℃で1時間撹拌後、160℃に速やかに昇温させ、45分間反応させ、液晶糸状になった段階で縮合反応が終了し、PBOの液晶原液が得られた。この液晶原液から120℃で手作業により直接且つ連続して繊維(長さ約6〜8m)に伸糸し、中性になるまで数回の沸騰洗浄後、110℃で乾燥し、黄金色のPBO繊維を得た。測定された繊維の引張強度は4.05GPa、弾性率は249GPa、極限粘度数η=38.1dl/gであった。
【0079】
応用実施例3〜5
応用実施例1と同様の方法により、プロセス保護範囲(単量体濃度、P含有量、縮合温度、縮合総時間)で試験を行った。その結果を表3に示す(応用実施例1〜2の結果も比較用に同時に示す)。
【0080】
【表5】
【0081】
応用比較例1:ABAの均一重縮合によるPBO樹脂の製造(文献;Polymer preprints, 1990,31(2),681-682)
縮合反応器に順に、ABA1.163g(4.31mmol)、P0.766g及び115%PPA18.188gを投入し、均一に撹拌後、真空度0.09MPaの減圧下、90℃で3時間、窒素を導入することにより、酸素を除去し、次いで、常圧下で12時間、反応系が透明になるまで窒素を導入した。重縮合は、120℃で3時間、次いで150℃で3時間、次いで180℃で1時間、そして最後に190〜200℃で2.5時間行われた。重縮合後、水中に導入して沈澱させ、ろ過し、ろ過ケーキをそれぞれ水で還流して12時間洗浄し、それからアセトンで還流して8時間洗浄後、175℃で3時間真空乾燥して、PBO樹脂0.94gを得た(極限粘度12.5dl/g、収率93.3%)。
【0082】
応用比較例2:
応用比較例1のABAに代えて、文献(Polymer preprints, 1990,31(2),681-682)に記載の方法により製造した精製ABA(純度97.42%、K:39ppm、Na:56ppm、Fe:7ppm)1.163gを用いる他は、応用比較例1と同様の方法により重縮合を行った。最終的に得られたPBO樹脂の極限粘度数は9.2dl/gで、紡糸性が比較的低かった。
【0083】
応用比較例3:ABAの均一重縮合によるPBO樹脂の製造(特許1:ZL200610155719.8)
縮合反応器にABA1.8g(実施例1(1)と同じ、純度98.82%。K:5489ppm、Na:155ppm、Fe:75ppm)、PPA19.48g、P9gを投入し、窒素を導入した。撹拌しながら120℃に昇温させて3時間反応させ、色はオレンジになった。160℃に昇温させて3時間反応させ、色は橙褐色になり、乳光の現象が現れた。180℃に引き続き昇温させて2時間反応させ、色は緑褐色になった。最後に、200℃に昇温させて3時間反応させ、色は深緑になり、均一縮合が終了した。冷却し、かつ縮合物を100mL/回の水中に入れ、60℃に昇温させ、撹拌して2回洗浄し(必要により、縮合物を細かく切って洗浄する)、105℃で10時間乾燥して、PBO縮合物1.76gを得た。測定された特性粘度[η]は10.31dl/g(30℃、MSA)であった。
【0084】
応用比較例4:ABASの均一重縮合によるPBO樹脂の製造(特許2:ZL200610155718.3)
縮合反応器に1.8gABAS(純度98.57%、K:573ppm、Na:28390ppm、Fe:109ppm、DMFは未検出)、19.48gPPA、及び9gPを投入し、更に窒素を導入した。撹拌しながら120℃に昇温させ、3時間反応させた後、反応液はオレンジ色となった。それから更に160℃に昇温させ、3時間反応させた後、反応液は橙褐色となり、乳白光現象が現れた。引き続き180℃に昇温させ、2時間反応させた後、反応液は緑褐色となった。最後に、200℃に昇温させ、3時間反応させ、反応液が深緑食となった段階で均一重縮合が終了した。その後冷却し、かつ縮合物を100mLの水中に投入し、60℃に昇温させ、撹拌して2回洗浄処理し(必要に応じて、縮合物を細かく切って洗浄する。)、105℃で10時間乾燥し、PBO縮合物1.76gを得た。測定された特性粘度[η]は13.1dl/g(30℃、MSA)であった。
【0085】
【表6】
【0086】
応用実施例6:ABAAと3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸(HABA)共縮合による、R(ポリ−2,6−ベンズオキサゾール(PBO))で変性されたPBO樹脂及び繊維の製造
(1)R−PBO(PBO:PBOユニット鎖レート1.7:1.0)繊維の合成
縮合反応器にPPA19.66gを投入し、加熱して80℃に昇温させ、P4.75gを投入し、撹拌して溶解後、原料単量体である3−ヒドロキシ−4−アミノ安息香酸(HABA)1.5g及び実施例10で製造されたABAA1.5gをそれぞれ投入し、100℃に昇温させて3時間反応させ、次いで130℃に昇温させて1時間反応させ、反応液の粘度が大きく、撹拌し難くなった。その後、150℃に昇温させると、反応液の粘度が低くなり、流動性がよくなり、また1時間反応させて、共縮合反応は終了した。手作業で伸糸後、中性になるまで熱湯で数回洗浄し、100℃で乾燥し、ポリ−2,6−ベンズオキサゾール(PBO)を主とするR−PBO繊維を得た。極限粘度数は14.6dL/g、分解温度は641.6℃であった。繊維−IRについて図6−aを参照。繊維強度は2.86GPaであった。
【0087】
(2)R−PBO(PBO:PBOユニット鎖レート0.44:1.0)繊維の合成
縮合反応器にPPA23.68gを投入し、80℃に昇温させ、P5.95gを投入し、撹拌して溶解後、HABA0.89g及び実施例10で製造されたABAA3.55gを投入し、0.5時間反応させ、120℃に昇温するまで反応させ、0.5時間反応後、温度が126℃に上昇すると、気泡が生じ、底部に蛍光が出現し、130℃に昇温させ、1時間反応後、撹拌すると液晶現象が現れ、更に1時間反応させ、140℃に昇温させ、0.5時間反応後、気泡がなくなり、155℃に引き続き昇温させ、0.5時間反応させ、170℃に昇温すると、共縮合反応が終了した。手作業で伸糸後、中性になるまで熱湯で数回洗浄し、100℃で乾燥してPBOを主とするR−PBO繊維を得た。糸の強度は非常に高く、色は比較的薄い。極限粘度数は16.1dL/g、分解温度は669.8℃であった。繊維−IRについて図6−bを参照。繊維強度は3.23GPaであった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6a)】
図6b)】