(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
(A)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)前記内面がN個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第1の熱分解炉管であって、(a)前記外面と前記フィン谷底部とが平均距離t1で隔てられ、(b)各フィン先端部が前記フィン谷底部から平均距離t2で内方に突出し、(c)前記第1の熱分解炉管が、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N≧6である、第1の熱分解炉管と、
(B)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)前記内面がN’個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第2の熱分解炉管であって、(a)前記外面と前記フィン谷底部とが平均距離t1’で隔てられ、(b)各フィン先端部が前記フィン谷底部から平均距離t2’で内方に突出し、(c)前記第2の熱分解炉管が、該第2の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N’≧6である、第2の熱分解炉管と、
(C)前記第1及び第2の熱分解炉管を接続し、流体の流れに対して開放された管継手と、
を備えている接合された熱分解炉管であって、
(i)前記第1の熱分解炉管の前記第2の面が、前記第2の熱分解炉管の前記第1の面に接合され、前記第1の熱分解炉管の前記第2の面が、前記第2の熱分解炉管と実質的に同じ外部断面を有し、
(ii)前記第1の熱分解管の前記第2の面が、(a)前記第2の面から距離L/2だけ前記第1の炉管の中に入った第1の位置まで延び、Lが(t2/t1)・2.5cmから(t2/t1)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)前記第1の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角で外方に延びる実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有し、
(iii)前記第2の熱分解炉管の前記第1の面が、(a)前記第1の面から距離L’/2だけ前記第2の炉管の中に入った第2の位置まで延び、L’が(t2’/t1’)・2.5cmから(t2’/t1’)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)前記第2の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角を有する実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有し、
(iv)前記第1の熱分解炉管の前記第2の面は、j型ベベル溶接プレップ又はv型ベベル溶接プレップをさらに有し、ベベル角度は、第3の位置で前記外面と交差し、
(v)前記第2の熱分解炉管の前記第1の面は、j型ベベル溶接プレップ又はv型ベベル溶接プレップをさらに有し、ベベル角度は、第4の位置で前記外面と交差し、
(vi)前記第1の位置及び前記第3の位置は、長手方向距離≧t1/4で隔てられ、
(vii)前記第2の位置及び前記第4の位置は、長手方向距離≧t1’/4で隔てられている、
ことを特徴とする接合された熱分解炉管。
前記第1の熱分解炉管が、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして、22重量%から28重量%までのクロム及び32重量%から38重量%までのニッケルを含み、前記第2の熱分解炉管が、該第2の熱分解炉管を基準にして、42重量%から48重量%までのクロム及び32重量%から38重量%までのニッケルを含む、
請求項1〜3のいずれか1項に記載の接合された熱分解炉管。
前記第1及び第2の管の前記外面が、約1.5インチ(3.8cm)から12インチ(30cm)までの範囲内の実質的に均一な外径を有する円筒面であり、前記第1及び第2の管の前記内面が、フィン付き円筒面であり、前記内面が前記外面と実質的に同心である、
請求項1〜4のいずれか1項に記載の接合された熱分解炉管。
【背景技術】
【0003】
エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどの軽質オレフィンは、高温(700°以上)及び低圧(大気圧又は大気圧より僅かに上)での炭化水素の熱分解で製造される。水蒸気分解(スチーム・クラッキング)などの従来の熱分解プロセスを利用してこれを行うことができる。その他の副生成物は、水蒸気分解ナフサ(SCN)、水蒸気分解ガス油(SCGO)及び水蒸気分解タール(SCT)を含む。
【0004】
炭化水素の水蒸気分解は、典型的には、気化された又は実質的に気化された形態の炭化水素供給原料を相当量の水蒸気との混合物として、熱分解炉内の、管で作られた適切なコイルに供給することによって行われている。反応混合物を熱分解炉の対流部を通過する多数の平行なコイルに通し、そこで高温燃焼ガスが反応混合物の温度を上昇させることが通常である。反応混合物は、次に熱分解炉の放射部筐体内の多数の特別に設計された管で作られた放射コイルを通り、そこで複数のバーナが、反応物を所望の反応温度にして所望の反応を達成するのに必要な熱を供給する。熱分解由来の所望されない副生成物分子は、コークス及びアスファルテンを含む。アスファルテン分子は、凝縮するとプロセス中に表面を汚すことがあり、また、一般に価値が低いので望ましくない。相当量のコークスが熱分解反応系内の表面上に堆積し、最終的にこれをデコーキングによって除去しなければならない。
【0005】
水蒸気分解で用いられる熱分解炉は、化学プロセス工業において遭遇する最も過酷な動作条件のうちの幾つかをもたらす。高い動作温度に加えて、管は、コーキング、浸炭、酸化、クリープ及び動作中の熱サイクルを経験する。長年にわたって、供給原料転化率及び望ましい生成物収率を向上させるために炉温が高くなる傾向にあり、熱分解管にますます過酷な動作条件を課している。
【0006】
水蒸気分解のような炭化水素クラッキング・プロセスにおける重要事項は、コークスの形成である。炭化水素供給原料が水蒸気熱分解炉において一般的な加熱条件に供されると、コークス堆積物がクラッキングコイルを形成する管の内壁上に形成される傾向がある。このようなコークス堆積物は、管壁を通って反応物の流れへと至る熱流を妨害し、管金属温度を上昇させる。
【0007】
熱分解炉での使用のために様々な耐熱合金鋼が開発されている。比較的高含有量のクロム及びニッケルを含む合金鋼が比較的長い性能寿命を有する耐熱性熱分解管の構築に有用であることは公知であるが、管の早すぎる破損が依然として問題になっている。このような破損の1つの原因は、極端な高温及び浸炭雰囲気に遭遇することにより引き起こされる管の浸炭である。このような管の浸炭は、炭素(例えばコークス由来)が合金鋼の中へと拡散することに起因するものであり、付加的な炭化物の形成の原因となり、鋼の脆化を生じさせる。鋼はひとたび脆化してしまうと、クリープ破壊による破損、及び/又は熱応力に起因する脆性破壊をより受けやすくなる。浸炭はしばしば、管の局所的スポットで生じ、もちろんこれが破損点又は潜在的破損点まで進行すると、たとえ1スポットのみであっても、管を交換しなければならない。
【0008】
放射部コイルは、2つ又は3つ以上の管を典型的には溶接で接合することによって製作される。管の破損は、2つの管を溶接接合した箇所又はその付近で生じることが多い。この問題は、供給物がエタン、プロパン、ガス油、原油、又はその他の重質油のうちの1つ又は2つ以上を含んでいる場合などのように、熱分解を達成するために比較的高温が必要とされる場合にはさらに悪化する。
【0009】
特許文献1には、内部フィン付きU字管コイルが開示され、多数の当該コイルは、火力ヒータの放射部内に封入されて、炭化水素供給原料からオレフィンを生成するためのプロセスで利用される。特許文献1は、第6欄、第62〜67行目に、溶接部が隣接コイルによる直接放射から遮蔽されるU字管コイルの底部での中間溶接を開示する。フィンはこの接続部において位置合わせされる。
【0010】
特許文献2は、内部フィン付き水蒸気分解管の突合せ溶接を開示する。この管は、ナフサの水蒸気分解のために使用される。特許文献2は、≦75°、好ましくは8°から30°までの範囲内の円錐形カウンターボアが水蒸気分解中のコークスの蓄積を減らすことを開示する。円錐形カウンターボアの長さL/2は、特定の範囲内に固定され、その範囲は、直径に沿った管の外側と管のフィンの底(溝)との間の距離、及びフィンの平均高さに依存する。Lがこの範囲より小さいと、コークスがカウンターボア領域内に付着することが観察される。Lがこの範囲より大きいと、高乱流が熱点をもたらすことになる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
熱分解炉において見られる放射管の破損、特に比較的高い熱分解温度で使用されるような比較的高含有量のクロム及びニッケルを含む熱分解管の破損の頻度を低減するための、改善された管継手技術が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって用いられる方法及び装置は、エタン、プロパン、エタン−プロパン混合物(E/Pミックス)、ナフサ又はガス油のような常態で液体又は常態で気体の炭化水素供給原料を熱分解して、より飽和度の低いアセチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン等の生成物を生成するのに特に好適かつ有利である。その他の適切な供給原料は、≧約0.1重量%のアスファルテンを含むものも含めて、減圧ガス油、原油、残油、又は残油混合物のうちの1つ又は2つ以上を含む。随意に、熱分解炉は、供給原料の品質向上のために、少なくとも1つの組込まれた分離装置(フラッシュポット又はフラッシュドラム)有する。このような蒸気/液体分離装置は、供給原料成分が≧約0.1重量%のアスファルテンを含む場合に特に適している。
【0014】
本発明は、炭化水素熱分解、特にエチレン及びその他の不飽和副生成物を生成するための水蒸気分解の文脈で記載し、説明する。
【0015】
1つの実施形態において、本発明は接合された熱分解炉管に関し、この接合された熱分解炉管は、
(A)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)内面がN個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第1の熱分解炉管であって、(a)外面とフィン谷底部とが平均距離t
1で隔てられ、(b)各フィン先端部がフィン谷底部から平均距離t
2で内方に突出し、(c)第1の熱分解炉管が、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N≧6である、第1の熱分解炉管と、
(B)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)内面がN’個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第2の熱分解炉管であって、(a)外面とフィン谷底部とが平均距離t
1’で隔てられ、(b)各フィン先端部がフィン谷底部から平均距離t
2’で内方に突出し、(c)第2の熱分解炉管が、該第2の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N’≧6である、第2の熱分解炉管と、
(C)第1及び第2の熱分解炉管を接続する、流体の流れに対して開放された管継手と、を含み、
(i)第1の熱分解炉管の第2の面は、第2の熱分解炉管の第1の面に接合され、第1の熱分解炉管の第2の面は、第2の熱分解炉管と実質的に同じ外部断面を有し、
(ii)第1の熱分解管の第2の面は、(a)第2の面から距離L/2だけ第1の炉管の中に入った第1の位置まで延びる、Lが(t
2/t
1)・2.5cmから(t
2/t
1)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)第1の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角で外方に延びる実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有し、
(iii)第2の熱分解炉管の第1の面は、(a)第1の面から距離L’/2だけ第2の炉管の中に入った第2の位置まで延びる、L’が(t
2’/t
1’)・2.5cmから(t
2’/t
1’)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)第2の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角を有する実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有する。
【0016】
別の実施形態において、本発明は、炭化水素転化プロセスに関し、該プロセスは、
(1)水及び炭化水素を含む第1の混合物を準備することであって、炭化水素が2又は3個の炭素原子を有するアルカン及びその混合物を≧75.0重量%含む、第1の混合物を準備することと、
(2)熱分解炉を準備することであって、熱分解炉が、少なくとも1つの接合された熱分解炉管を含む1つ又は2つ以上の放射コイルを含む放射部を含み、該接合された熱分解炉管が、
(a)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)内面がN個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第1の熱分解炉管であって、(a)外面とフィン谷底部とが平均距離t
1で隔てられ、(b)各フィン先端部がフィン谷底部から平均距離t
2で内方に突出し、(c)第1の熱分解炉管が、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして≧33.0重量%のクロム及び≧43.0重量%のニッケルを含み、(d)N≧6である、第1の熱分解炉管と、
(b)(i)外面と、(ii)内面と、(iii)第1及び第2の面とを有し、(iv)内面がN’個のフィンを有し、各フィンが2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有する、第2の熱分解炉管であって、(a)外面とフィン谷底部とが平均距離t
1’で隔てられ、(b)各フィン先端部がフィン谷底部から平均距離t
2’で内方に突出し、(c)第2の熱分解炉管が、該第2の熱分解炉管の重量を基準にして≧33.0重量%のクロム及び≧43.0重量%のニッケルを含み、(d)N’≧6である、第2の熱分解炉管と、
(c)第1及び第2の熱分解炉管を接続する、流体の流れに対して開放された管継手と、を含み、ここで
(i)第1の熱分解炉管の第2の面が、第2の熱分解炉管の第1の面に接合され、
(ii)第1の熱分解管の第2の面が、(a)第1の面から距離L/2だけ第1の炉管の中に入った第1の位置まで延びる、Lが(t
2/t
1)・2.5cmから(t
2/t
1)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に均一なカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)第1の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角を有する円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有し、
(iii)第2の熱分解炉管の第1の面が、(a)第2の面から距離L’/2だけ第2の炉管の中に入った第2の位置まで延びる、L’が(t
2’/t
1’)・2.5cmから(t
2’/t
1’)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に均一なカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)第2の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角を有する実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有する、
熱分解炉を準備することと、
(3)第1の混合物を少なくとも1つの接合された熱分解炉管を通して導いて第1の混合物を熱分解条件下で≧400°の温度に曝し、第1の混合物のアルカンの少なくとも一部をC
2不飽和に転化することと、
を含む。
【発明を実施するための形態】
【0018】
従来の水蒸気分解は、対流部及び放射部という2つの主要部を有する熱分解炉を使用する。炭化水素供給原料は、典型的には炉の対流部に入り、そこで放射部からの高温煙道ガスとの間接接触により、及び、第1の混合物の水蒸気成分との直接接触により、加熱され気化される。典型的には、水蒸気は、0.20から1.0重量の水蒸気/炭化水素重量、又は好ましくは0.20から0.50重量の水蒸気/炭化水素重量の割合で供給される。水蒸気−気化炭化水素混合物は、次に放射部に導入され、そこでクラッキングの大部分が行われる。熱分解流出物は、熱分解炉から外に導かれ、これには供給原料の熱分解から得られる生成物及び何らかの未反応成分が含まれる。少なくとも1つの分離ステージが一般に熱分解炉の下流に配置され、この分離ステージは、軽質オレフィン、水蒸気分解ナフサ(SCN)、水蒸気分解ガス油(SCGO)、水蒸気分解タール(SCT)、水、未反応炭化水素成分のうちの1つ又は2つ以上の分離のために使用される。分離ステージは、例えば一次精留塔を含むことができる。一般に、典型的には直接急冷又は間接熱交換のいずれかである冷却ステージが、熱分解炉と分離ステージとの間に配置される。
【0019】
概要において示したように、様々な炭化水素供給原料が使用される。特に有望なC
2不飽和(エチレン及びアセチレン)の収率は、エタン、プロパン、及びそれらの混合物(例えば、エタン−プロパン混合物又は「E/P」ミックス)を含む供給原料から得られる。エタン・クラッキングのためには、少なくとも75重量%のエタン濃度が好ましい。E/Pミックスの場合、少なくとも75重量%のエタン+プロパン濃度が好ましく、E/Pミックス中のエタンの量は、E/Pミックスの重量を基準にして≧20.0重量%、例えば約25.0重量%から約75.0重量%までの範囲内にある。E/Pミックス中のプロパンの量は、E/Pミックスの重量を基準にして≧20.0重量%、例えば約25.0重量%から約75.0重量%までの範囲内にある。
【0020】
代表的な熱分解炉を
図1に示す。
図1を参照すると、供給物は、1つ又は2つ以上の入口ライン9を通って対流部10に入り、そこで水蒸気と組み合わされ、高温燃焼ガスによって、例えば約750°Fから約1400°Fまで(400℃から760℃まで)の範囲の温度まで予熱される。燃焼ガスは、約1500°Fから約2400°Fまで(816℃から1316℃まで)の範囲内の温度であることが好ましい。加熱された供給物−水蒸気混合物(「プロセス流体」)は、次に放射部入口分配器12に導かれる。放射部入口分配器12から、予熱された供給物は、放射ボックスとしても知られる放射部筐体16の内側に設置された放射コイル14に入る。放射部筐体16は、典型的には、熱エネルギーを保存するために断熱耐火材料で裏打ちされている。
【0021】
放射部筐体(エンクロージャ)は、複数の管を含む。管の端部は1つ又は2つ以上の入口分配器12に接続され、これがプロセス流体を放射管の入口脚部20に導入する。放射管の各々の反対側の端部は、出口脚部22であり、これは、熱分解生成物及び何らかの未反応プロセス流体を含む放射部流出物を回収するための出口ヘッダ26に接続される。放射部流出物の温度は、典型的には約1300°Fから約2000°Fまで(700℃から1100℃まで)の範囲内で放射管の出口脚部を出て行く。そこからプロセス流体は、プロセス流体を冷却して熱クラッキング反応を停止させる急冷交換器27に通される。
図1に描かれていない別の実施形態において、各放射管の出口脚部は、個別の急冷交換器に直接接続されてプロセス流体が冷却される。各々の個別の急冷交換器からの出口は、次に出口ヘッダに接続される。このような配置は、当該分野で直結式トランスファーライン交換器として知られている。
図1に描かれていないさらに別の実施形態において、各管の出口脚部は急冷ポイントに接続され、そこでプロセス流体が急冷液体に直接接触し、急冷液体が気化してプロセス流体が冷却される。
【0022】
放射コイル内滞留時間は、一般に0.10から2.0秒の範囲内にあり、圧力は一般に1.0から5.0バール絶対圧の範囲内にある。
【0023】
図1に示す熱分解炉は、U字管コイルを使用しており、これは各コイルが二次元で見たときに文字「U」に類似した形であるためそのように呼ばれている。定義する特徴は、U字管コイルが、放射部筐体を通る2つのパスを有効に作ることである。U字管コイルは、入口脚部20と、出口脚部22と、入口脚部20と出口脚部22とを接続する曲線状又は湾曲した部分21とから構成される。
【0024】
他の実施形態は、放射部筐体を通る2パスよりも多い又は少ない数のパスを使用する。例えば二重「U」コイル(一般に「W」コイルとも呼ばれる)は4パスを有することになる。より多数のパス、例えば6、8、10若しくは12又はそれより多くのパスを利用する実施形態は、例えば蛇行形コイルを使用する。複数の管を放射筐体内に配置するための当該分野で知られた様々な方法があるが、本発明はそれらに限定されない。例えば、特定の実施形態において、コイルは、1つ又は2つ以上の分岐部分を含むことができる。他の実施形態において、出口脚部は、1つ又は2つ以上の分岐部分を含むことができる。さらに他の実施形態において、入口脚部20は、1つより多くの分岐管を含むことができる。
【0025】
放射部筐体は、管の外部表面を放射熱に曝すための複数のバーナ28を含む。生ガス又は予混合バーナを含む従来のバーナを用いることができるが、本発明はそれらに限定されない。特定の実施形態において、炉の燃焼流出物中のNOx形成を制限するために様々な煙道ガス再循環技術が利用される。燃焼用空気源は、例えば、周囲空気、予熱空気、又はガスタービン排気のうちの1つ又は2つ以上からのものとすることができる。
【0026】
本発明は、特定の水蒸気分解装置構成に限定されない。当業者は、空間配置、バーナの位置、入口ヘッダ及び出口手段の位置、並びに管それ自体の熱応力を、これらの構成要素の配置を選択する際に考慮することになる。特定の実施形態において、管の各々は、単一平面上にある。他の実施形態において、管は、主として熱応力を低減するために、平面から外に曲げられている。
【0027】
放射部コイルは、2つ又は3つ以上の管を典型的には溶接によって接合することによって製作される。典型的には、接合される個々の管の長さは、約2フィート(61cm)から約20フィート(610cm)までである。接合される管は、同じ又は異なる長さとすることができる。典型的には、管は、対で接合され、第1の管の端又は面が第2の管の端又は面に突合せ溶接される。この溶接を適正に作り出すために、接合される各管の端又は面に溶接プレップ(weld prep)を切り込むことができる。
【0028】
例えば、U字管コイルの全長は、約60フィートから約90フィート(20mから27m)の範囲内にあることが好ましい。このような長さの内部フィン付き管を製造することは難しいので、2つ又は3つ以上の管を中間溶接で接合することが必要となるであろう。
図1を参照すると、入口脚部20は、例えば位置20Aで接合された2つの管を含むことができ、出口脚部22は、例えば位置22Aで接合された2つの管を含むことができる。
【0029】
管という用語は、流体の輸送に適した細長い中空部材を意味する。本発明の態様はまた、ユニオン、エルボー、「T」形、「Y」形などのコネクタ及び/又はフィッティング、並びに付属器具、例えば弁手段にも適用可能である。
【0030】
管は、熱伝達及びデコーキングの効率を改善するために内部にフィンを付けることができる。内部フィン付き管の断面を
図2に示し、このフィン付き管は外面49を有する。
図2に示すように、管の内面上に断面で見たときに波の形に似た12個のフィンがある。各フィンは、2つのフィン谷底部54に隣接したフィン先端部56を有する。典型的には、管は6個と36個との間のフィンを有する。特定の実施形態において、フィンは管の長軸に実質的に平行に方向付けられる。他の実施形態において、フィンの向きは、砲身内の旋条のように長手方向に渦巻き状に回転する。このようなフィンは、細長い螺旋として説明することができる。管のフィンに「波形」仕上げを使用することができるが(一般に「ランド」とも呼ばれる)、本発明はそれに限定されない。例えば、特定の実施形態において、フィンは三角形又は矩形を有する。
【0031】
D
oで示される管の外径50は、1.75インチから12インチ(4.4cmから30.5cm)、好ましくは2.0から6.0インチ(5cmから15.2cm)の範囲内にある。t
1で示されるフィン谷底部における金属厚さ53は、管の内面と外面との間の最小金属厚さである。典型的にはt
1は、0.25インチから1.00インチ(0.64cmから2.54cm)までの範囲内にあり、又は0.25インチから0.50インチ(0.64cmから1.27cm)までの範囲内にある。t
2で示されるフィン高さ52は、フィン先端部が内方に(管の中心に向かって)突出する距離であり、フィン谷底部54の底部とフィン先端部56の頂部との間の距離に等しい。t
2の値は、例えば、約0.05インチから約0.4インチ(0.13cmから1.0cm)まで、好ましくは0.1インチから0.25インチ(0.25cmから0.64cm)までの範囲内にあり、典型的にはt
2≦t
1/2である。管の内面の円周を囲むフィンの数は重要ではなく、例えば≧6、例えば約6から約36までの範囲内とすることができる。特定の実施形態、例えば曲線状のフィンを用いる実施形態において、フィン谷底部の半径58及びフィン先端部の半径60は、例えば、約0.05インチから約0.45インチ(0.13cmから1.2cm)まで、好ましくは0.1インチから0.2インチ(0.25cmから0.5cm)までの範囲内とすることができる。1つの実施形態において、フィン谷底部半径及びフィン先端部半径は実質的に等しい。D
iで示される管の内径62は、管の中心を通るフィン谷底部からフィン谷底部までの距離として定義される。特定の実施形態において、D
iは、約1.25インチから約10.0インチ(3.175cmから25.4cm)、好ましくは約1.5インチから約6.0インチ(3.8cmから15.2cm)の範囲内にある。特定の実施形態において、内径に対するフィン高さの比t
2/D
iは、0.05から0.20の範囲内、より好ましくは0.07から0.14の範囲内にある。この範囲内のt
2/D
iは、例えば過剰な圧力低下又は過度な詰まりを生じさせることなく、改善された熱伝達を提供することができる。
【0032】
例えばオーステナイト系ステンレス鋼管のようなステンレス鋼管が、本発明の実施に適している。そのような管は、典型的には鋳造法で製作され、合金の総重量を基準にして≧17重量%のクロム、例えば約17重量%から約40重量%までのクロム、及び≧15重量%のニッケル、例えば約15重量%から約50重量%までのニッケルを含むことができる。
【0033】
このような鋼は、炭素と、より少量のケイ素、モリブデン、マンガン、ニオブ、コバルト、タングステン、タンタル、及びアルミニウムのような多数の微量合金化元素(micro alloying element)とを含む。鋼の、クロム、ニッケル、炭素及び微量合金要素の以外の残余は鉄である。「残余」を構成するものとして合金の鉄含有量に言及する際には、不純物並びにその他の元素及び物質が存在し得ることを理解されたい。そのような他の元素及び物質は、各々、上限約5重量%までのレベルで存在し得る。このような元素及び物質の非限定的な例として、窒素、銅、ハフニウム、希土類元素等が挙げられる。このような合金において典型的に見いだされる少量の不純物、並びに鉛、スズ、亜鉛、セレン等のような混入元素(トランプ元素)もまた存在し得る。
【0034】
実施形態(I)において、管材料は、約17重量%から約40重量%までのクロム、約15重量%から約50重量%までのニッケル、約0.06重量%から約0.6重量%までの炭素、≦約2重量%のマンガン、約1重量%から約2.5重量%までのケイ素;≦約2重量%のニオブ、≦約2重量%のモリブデン、≦約3重量%のタングステン、≦約17重量%のコバルトを含み、残余が鉄の、オーステナイト系ステンレス鋼であり、ここで全ての重量パーセントは合金の総重量に基づく。
【0035】
別の実施形態(II)において、管材料は、約17重量%から約40重量%までのクロム、約15重量%から約50重量%までのニッケル、約0.06重量%から約0.6重量%までの炭素、約1重量%から約2.5重量%までのケイ素、≦約2重量%のマンガン、≦約3重量%のタングステン、≦約2重量%のモリブデン、≦約2重量%ニオブを含み、残余が鉄の、オーステナイト系ステンレス鋼である。
【0036】
さらに別の実施形態(III)において、HK及びHP型オーステナイト系ステンレス鋼が用いられる。例えば、HK型鋼は一般に、約20重量%から約30重量%までのクロム、約16重量%から約24重量%までのニッケル、約0.2重量%から約0.5重量%までの炭素、約0.6重量%から約2重量%までのケイ素、及び≦約2重量%のマンガンを含み、残余が鉄のものである。HP型合金鋼は一般に、約20重量%から約30重量%までのクロム、約30重量%から約40重量%までのニッケル、約0.06重量%から約0.8重量%までの炭素、約0.6重量%から2重量%までのケイ素、約0.5重量%から約2重量%までのマンガン、≦上限約2重量%のモリブデン、≦約3重量%のタングステンを含み、残余が鉄のものである。
【0037】
例えば、鋼は、約25重量%のクロム及び約35重量%のニッケルに加えて微量合金化元素を含むことができる。さらに別の実施形態において、鋼は、約35重量%のクロム及び約45重量%のニッケルに加えて微量合金化元素を含む。
【0038】
合金のニッケル及びクロム含有量に言及する場合、これらの元素の標準的な工業的な濃度のばらつきは±約2.0重量%又は±約3.0重量%であることが当業者には理解される。例えば、特定の実施形態において、鋼は、(i)約22重量%から約28重量%のクロム及び約32重量%から約38重量%のニッケル(加えて微量合金化元素)又は(ii)約32重量%から38重量%のクロム及び42重量%から48重量%のニッケル(加えて微量合金化元素)を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲において提示される全てのクロム及びニッケルの含有量は、上記の標準的な工業的ばらつきを伴う公称値を表す。ここでの全ての重量パーセントは合金の総重量に基づくものであることもさらに理解される。
【0039】
高いクロム及びニッケル含有量は、強度を改善し、水蒸気分解中に遭遇する高温での結晶粒クリープの影響を低減するために必要とされる。不都合なことに、高いクロム及びニッケル含有量は、管の延性の低下をもたらし、その結果、2つの管を溶接接合した付近での破壊の傾向が増すことになる。
【0040】
フィン付き管が使用される実施形態において、接合された管の2つの断面においてフィンを正確に一列に並べることは必須ではない。しかしながら、フィンの位置合わせが不正確だと管継手でのコーキングが増加し、継手における管金属温度の上昇をもたらす。これが管の溶接接合の付近での破壊の傾向をさらに増大させる場合がある。位置合わせ不良の影響は、管の長軸に平行な方向で管継手からある特定の距離にわたってフィンを研削除去することによって低減する又は回避することができる。このことは、例えば円筒形カウンターボアを使用してある特定の距離にわたってフィンを完全に除去し、それに続いて、例えば約5°から約20°までの範囲内にある円錐形カウンターボアによってフィンにその通常の厚さまで傾斜を付けることによって達成することができる。
【0041】
この手法を、本発明による2つの内部フィン付き管の接合のためのJ形溶接プレップ(prep)を描いた
図3に示す。
図3は、溶接プレップを内部及び外部管表面に関して示したものであり、「ランド」56の頂部(管の最小内径点)から外部(外側)管表面49までが示されている。寸法80は、接合される2つの管にわたる円筒形カウンターボアの全長の二分の一を表す。円錐形カウンターボア角度84は、φで定義される。管の外面に切り込まれたJ形接合プレップは、例えば約20°+/−15°、例えば15°から25°の、θで示される溶接プレップ・ベベル角度72で切削された、pで示される長さ78及びt
pで示される厚さ76の先端部74を含む。
【0042】
管の外部表面を接合するための代替的な溶接プレップを
図4A(代替的なJ形溶接プレップを示す)及び
図4B(V形溶接プレップを示す)に示す。
図4A及び
図4Bは、溶接プレップを管の外部表面に関して示したものであり、溝54の底部(管の最大内径点)から外部管表面49までが示されている。
図4A及び
図4Bは、隣接する管の外部表面を接合するための溶接プレップを例証しているので、内部の円筒形及び円錐形のカウンターボアは図示していない。
図4Aは、
図3のJ形溶接プレップよりも急角度を有するJ形溶接プレップを示す。
図4Bは、V形溶接プレップを示し、これは、
図3及び
図4Aに示すJ形溶接プレップの代わりに隣接する管の外部表面を接合するために用いることができる。この場合、先端部74は存在しないので、先端部の長さ78は実質的にゼロに等しく、すなわちp=0である。V形溶接プレップに関する溶接プレップ・ベベル角度72は、J形溶接プレップに関する溶接プレップ・ベベル角度よりも大きくなり、例えば約38°+/−15°である。
【0043】
管継手における破壊の傾向は、(i)管の温度が動作温度からより低い、例えばデコーキングのための温度にサイクルした場合に継手の破損をもたらす可能性のある応力集中の影響を低減する、及び(ii)動作中に溶接部にかかる応力の影響を低減するために、接合される管の内側表面からフィンを除去するための円筒形及び円錐形カウンターボアの寸法、及び管の外側表面上の溶接プレップに対するその関係を注意深く選択することによって克服される。換言すれば、管の強度及び耐クリープ性が不所望に低下することになる、延性の冶金学的改善(クロム及びニッケルの量を減らすことによる)によって破壊を低減する代わりに、本発明は、以下の節でより詳細に特定するように、管継手の特別な機械的設計によって破壊を軽減する。
【0044】
第1に、従来の上限75°のカウンターボアよりはるかに小さい5°から20°までの範囲内の比較的浅い円錐形カウンターボア角度φを使用する。
【0045】
第2に、先行技術よりもかなり長い最小カウンターボア長さ、例えば(t
2/t
1)・1.0インチ[25mm]≦L≦(t
2/t
1)・5.0インチ[127mm]、より好ましくは(t
2/t
1)・1.0インチ[25mm]≦L≦(t
2/t
1)・2.0インチ[51mm]を有することが有益である。Lがこの範囲よりも大きければ、熱交換が低減し、炉の動作効率が下がる。Lがこの範囲よりも小さいと、指定の溶接プレップは、特に高いクロム及びニッケル含有量の鋼の場合には管の延性の低下の結果として、突合せ溶接を弱めることになる。
【0046】
第3に、カウンターボア寸法と溶接プレップとの間の関係は、管金属の厚さがオフセットの長さにわたってt
1と実質的に等しい値に維持されるようなオフセットCを与えるように選択される。
図3において、オフセットは符号82で示される。特定の実施形態において、Cは≧t
1/4、好ましくは≧t
1/2である。
【0047】
当業者は、Cの値が管の組成及び幾何学的形状に依存し得ることを理解するであろう。指定の合金(I)、(II)及び(III)に関して、オフセットCは他の管寸法から以下の式(1)によって計算することができることが見いだされた。
【数1】
式中、
θ=溶接プレップ・ベベル角度
p=J形溶接プレップの先端部長さ
p=V形溶接プレップの場合は0
t
p=先端部厚さ
【0048】
本発明の特定の態様は、以下、2つの隣接する炉管の接合に関して説明する。本発明は、これらの態様に限定されるものではなく、この説明は、本発明のより広い範囲内の他の実施形態を排除することを意味するものではない。
【0049】
I.対面接合される隣接する熱分解炉管
特定の実施形態において、本発明は、第1及び第2の熱分解炉管、並びに第1及び第2の管を接合する管継手を含む、接合された熱分解炉管に関する。
【0050】
第1の熱分解炉管は、内面及び外面、並びに第1及び第2の面を有する。内面はN個のフィンを有し、各フィンは2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有し、ここで(a)外面とフィン谷底部とは平均距離t
1で隔てられ、(b)各フィン先端部は、フィン谷底部から平均距離t
2で内方に突出し、(c)第1の熱分解炉管は、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N≧6である。
【0051】
第2の熱分解炉管もまた、内面及び外面、並びに第1及び第2の面を有する。内面はN’個のフィンを有し、各フィンは2つのフィン谷底部に隣接するフィン先端部を有し、ここで(a)外面とフィン谷底部とは平均距離t
1’で隔てられ、(b)各フィン先端部は、フィン谷底部から平均距離t
2’で内方に突出し、(c)第2の熱分解炉管は、該第2の熱分解炉管の重量を基準にして≧17重量%のクロム及び≧15重量%のニッケルを含み、(d)N’≧6である。第1及び第2の熱分解炉管は、管継手において接続される。管継手は、第1の管の第2の面及び第2の管の第1の面の中へと形作られ、第1及び第2の管を例えば溶接によって接合することができるようになっている。管(管継手を含む)は、流体の流れに対して開放されている。例えば、管及び管継手は、第1の管の第1の面に入り、第1の管を通り、第1の管の第2の面を出て、管継手を通り、第2の管の第1の面に入り、第2の管を通り、次いで第2の管の第2の面から出る流体の流れに対して開放されている。一般に、第1の熱分解炉管の第2の面は、第2の熱分解炉管と実質的に同じ外部断面を有する。
【0052】
管継手は、一般に、第1の管の第2の面及び第2の管の第1の面を座ぐりすることによって作られる。例えば、第1の熱分解炉管の第2の面は、第1及び第2のカウンターボアを有することができる。第1のカウンターボアは、第2の面から距離L/2だけ前記第1の炉管の中に入った第1の位置まで延びており、第1のカウンターボアは、Lが(t
2/t
1)・2.5cmから(t
2/t
1)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである。第2のカウンターボアは、第1の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲の円錐角で外方に延びる実質的に円錐形のカウンターボアである。
【0053】
同様に、第2の熱分解炉管の第1の面は、(a)第1の面から距離L’/2だけ前記第2の炉管の中に入った第2の位置まで延びる、L’が(t
2’/t
1’)・2.5cmから(t
2’/t
1’)・12.7cmまでの範囲内にある実質的に円筒形のカウンターボアである、第1のカウンターボアと、(b)第2の位置から始まり、5.0°から20.0°までの範囲内の円錐角を有する実質的に円錐形のカウンターボアである、第2のカウンターボアと、を有する。
【0054】
随意に、第1の管の第2の面における第1の管の外面を、第2の管の第1の面における第2の管の外面に接合するために、V形ベベルまたはJ形ベベルを用いることができる。例えば、第1の熱分解炉管の第2の面は、リップを有するj形ベベル開先溶接プレップをさらに含むことができ、この溶接プレップは外面に切り込まれて、(a)t
1/8からt
1/4までの範囲内のリップ厚さ、(b)t
1/2からt
1/4までの範囲内のリップ長さ、及び(c)15°から25°までの範囲内のベベル角度を与え、ベベル角度は、第3の位置で外面と交差する。同様に、第2の熱分解炉管の第1の面は、リップを有するj形ベベル開先溶接プレップをさらに含むことができ、溶接プレップは外面に切り込まれて、(a)t
1’/8からt
1’/4までの範囲内のリップ厚さ、(b)t
1’/2からt
1’/4までの範囲内のリップ長さ、及び(c)15°から25°までの範囲内のベベル角度を与え、ベベル角度は、第4の位置で外面と交差する。随意に、第1の位置及び第3の位置は、長手方向距離≧t
1/4で隔てられ、第2の位置及び第4の位置は、長手方向距離≧t
1’/4で隔てられる。管継手は溶接部とすることができ、例えば、第1及び第2の管の内面は、管継手における内側溶接プレップにおける溶接によって接合することができ、第1及び第2の管の外面は、外側溶接プレップにおける溶接によって接合することができる。随意に、第1の位置及び第3の位置は、長手方向距離≧t
1/2で隔てられ、第2の位置及び前記第4の位置は、長手方向距離≧t
1’/2で隔てられる。
【0055】
特定の態様において、第1の熱分解炉管は、該第1の熱分解炉管の重量を基準にして、22重量%から28重量%までのクロム及び32重量%から38重量%までのニッケルを含み、第2の熱分解炉管は、該第2の熱分解炉管を基準にして42重量%から48重量%までのクロム及び32重量%から38重量%までのニッケルを含む。
【0056】
管の外面の形状は重要ではない。特定の態様において、第1及び第2の管の外面は各々円筒面であり、各外側円筒面は、約1.5インチ(3.8cm)から12インチ(30cm)までの範囲内の実質的に均一な外径を有し、第1及び第2の管の内面は、フィン付き円筒面であり、内面は外面と実質的に同心である。
【0057】
随意に、接合された熱分解炉管は、以下の特性のうちの1つ又は2つ以上を有する。
(i)Lは、(t
2/t
1)・2.5cmから(t
2/t
1)までの範囲内にあり、L’は、(t
2/t
1)・2.5cmから(t
2/t
1)・5.1cmまでの範囲内にあり、t
2≦t
1、かつt
2’≦t
1’である。
(ii)第1及び第2の管のフィンは、細長い螺旋である。
(iii)第1及び第2の管のフィンは、内面の円周を均一な間隔で囲み、波形の断面を有する。
(iv)N及びN’は、各々独立して6から36までの範囲内にある。
(v)t
1及びt
1’は、0.25インチ(0.64cm)から0.75インチ(1.91cm)までの範囲内にあり、t
2及びt
2’は、0.125インチ(0.32)から0.375インチ(0.95cm)までの範囲内にあり、t
2≦t
1/2、かつt
2’≦t
1’/2である。
(vi)Lは実質的にL’と等しく、t
1は実質的にt
1’と等しく、t
2は実質的にt
2’と等しく、Nは実質的にN’と等しい。
(vii)第1及び第2の熱分解炉管は、各々独立して、約2フィート(60cm)から約20フィート(600cm)までの範囲内の全長を有する。
【0058】
II.接合された熱分解炉管を使用する炭化水素転化プロセス
特定の態様において、本発明は炭化水素転化プロセスに関する。プロセスは、水及び炭化水素を含む第1の混合物を準備することによって開始することができ、炭化水素は、2又は3個の炭素原子を有するアルカン及びその混合物を≧75.0重量%含む。プロセスは、1つ又は2つ以上の熱分解炉の中で行われることができ、例えば、熱分解炉は、1つ又は2つ以上の放射コイルを含む放射部を含み、放射コイルの各々は、少なくとも1つの接合された熱分解炉管を含む。接合された熱分解炉管は、前述の態様Iで説明したものから選択することができる。
【0059】
随意に、第1の混合物の炭化水素は、該第1の混合物の炭化水素の重量を基準にして≧75.0重量%のエタンを含む。所望であれば、第1の混合物は、希釈剤、例えば、炭化水素重量当たり0.20から1.0重量の水蒸気をさらに含むことができる。
【0060】
随意に、熱分解条件は、
(i)700℃から1100℃までの範囲内の最大炭化水素温度、
(ii)1.0から5.0バール(絶対)の範囲内の圧力、及び
(iii)0.10から2.0秒までの範囲内の放射コイル内滞留時間、
のうちの1つ又は2つ以上を含む。
【0061】
実施例1
これは、新規な放射コイルを、クラッキング中に炉管をプロパン又はナフサのような液体供給物の水蒸気分解よりもかなり高温に曝すことを必要とする、主としてエタン又はE/Pミックスの水蒸気分解用に設計された既存の熱分解炉に後付けするための管継手設計である。この実施例において、中間溶接で管を接合することを必要とする蛇行形放射部コイルが使用される。
【0062】
エタンのクラッキング中に遭遇する高温のため、管は35%のクロム及び45%のニッケルに加えて微量合金化元素を含む鋼合金を使用する。
【0063】
管は、熱伝達性能を高めるために内部フィンを有する。管は、対ごとに接合され、第1の管が第2の管にJ形溶接プレップを用いた突合せ溶接で接合される。この実施例において、両方の管が30個の内部フィンを有する。接合される管は、実質的に同じ内部及び外部寸法、並びに実質的に同じ溶接プレップ構成を有する。
【0064】
図2を参照すると、管は両方とも、6インチ(15cm)の外径50及び5.25インチ(13.3cm)の内径62を有し、フィン高さt
2は0.18インチ(0.46cm)、最小管金属厚さt
1は0.375インチ(0.95cm)である。
図2及び
図3を参照すると、管には、0.50インチ(1.3cm)の深さ80まで円筒形カウンターボアが設けられ、それに続いてフィンが全高に達するまで内方に進む、角度φ84が15°の円錐形カウンターボアが設けられる。管の外側は、0.0625インチ(0.16cm)の厚さ76を有するリップを与えるように旋削され、リップは0.125インチ(0.32cm)の長さ78にわたってカウンターボアと平行に延び、次いで溶接プレップ・ベベル角度θに関して20°の角度72で外方に延びる。このとき距離L/2は0.50インチ(1.3cm)、Lは1.00インチ(2.54cm)である。式(1)を当てはめると、オフセットCは0.261インチ(0.66cm)である。t
1は0.375インチ(0.95cm)なので、オフセットC=t
1/1.44である。
【0065】
実施例2
これは、蛇行形放射部コイルの新規な放射コイルを、主としてエタン又はE/Pミックスの水蒸気分解用に設計された既存の熱分解炉に後付けするための管継手設計である。
【0066】
実施例2において、管は実施例1の温度の約0.75から0.90倍の温度に曝されるので、管は、25%のクロム及び35%のニッケルに加えて微量合金化元素を含む鋼合金を使用する。
【0067】
管は、対で据え付けられ、第1の管が第2の管にJ形溶接プレップを用いた突合せ溶接で接合される。この実施例において、両方の管が24個の内部フィン及び同じ寸法を有する。
【0068】
図2を参照すると、管は両方とも、6インチ(15cm)の外径50及び4.25インチ(10.8cm)の内径62を有し、フィン高さt
2は0.18インチ(0.46cm)、最小管金属厚さt
1は0.325インチ(0.83cm)である。
図2及び
図3を参照すると、管には、0.50インチ(1.3cm)の深さ80まで円筒形カウンターボアが設けられ、それに続いてフィンが全高に達するまで内方に進む、角度φ84が15°の円錐形カウンターボアが設けられる。管の外側は、0.0625インチ(0.16cm)の厚さ76を有するリップを与えるように旋削され、リップは0.125インチ(0.32cm)の長さ78にわたってカウンターボアと平行に延び、次いで溶接プレップ・ベベル角度θに関して20°の角度72で外方に延びる。このとき距離L/2は0.50インチ(1.3cm)、Lは1.00インチ(2.54cm)である。式(1)を当てはめると、オフセットCは0.279インチ(0.71cm)である。t
1は0.325インチ(0.83cm)なので、オフセットC=t
1/1.16である。
【0069】
本明細書において引用される全ての特許、試験手順、及び他の文献は、優先権書類も含めて、かかる開示が矛盾しない範囲において、かつ、かかる組入れが許される全ての管轄権に関して、引用により全てが組み入れられる。
【0070】
本明細書において開示される例証的な形態を詳細に説明してきたが、開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々なその他の改変が当業者には明らかであり、また当業者によって容易に行うことができる。従って、添付された特許請求の範囲は、ここで述べられた実施例及び説明に限定されることを意図したものではなく、むしろ、特許請求の範囲は、そこに存する特許性のある新規性の全ての特徴を、本開示が関与する分野の当業者によってその均等物として扱われるであろう全ての特徴を含めて、包含するものとして解釈される。
【0071】
ここで数の下限及び数の上限が挙げられる場合、いずれの下限からいずれの上限までの範囲も意図される。