(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046850
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】筋膜リリース用具
(51)【国際特許分類】
A61H 7/00 20060101AFI20161212BHJP
A61H 39/04 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
A61H7/00 102
A61H39/04 S
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2016-115747(P2016-115747)
(22)【出願日】2016年5月23日
【審査請求日】2016年6月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510016726
【氏名又は名称】三井 優美
(72)【発明者】
【氏名】小出 一雅
(72)【発明者】
【氏名】三井 優美
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−087347(JP,A)
【文献】
特開2013−244265(JP,A)
【文献】
特表2008−513093(JP,A)
【文献】
特開平11−019174(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3191108(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 7/00
A61H 39/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片手で容易に把持できる大きさの、次の特徴を持つ筋膜リリース用具
(1)連続した一平面で皮膚をとらえる形状である
(2)皮膚に密着させて、皮膚の可動域いっぱいの範囲を往復させても皮膚自体をこすら ない程度の摩擦係数を持つ単一素材で作製されている
(3)施術時に加える程度の力で容易に変形する
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筋膜リリースを実現する器具に関する。
【背景技術】
【0002】
浅筋膜とは皮膚の直下で筋肉を包む膜であるが、従来、皮膚とその浅筋膜との癒着を改善に導く、いわゆる筋膜リリースを実現する機器は存在している。
【先行技術文献】
【0003】
【非特許文献1】メディセル[平成28年5月23日検索]、インターネット〈URL:http://www.mj−company.co.jp/about〉
【非特許文献2】PRセル[平成28年5月23日検索]、インターネット〈URL:http://www.respect−force.co.jp/detail.html?detail_id=611〉
【非特許文献3】スーパーセルライト[平成28年5月23日検索]、インターネット〈URL:http://taisya.net/product/metabo/supercellulite.html〉
【0004】
上記非特許文献1は、皮膚を吸引した状態で往復動作をすることで皮膚と浅筋膜との癒着をはがす働きを持つ機器であり、関節可動域を増やしたり、血液やリンパの流れをよくしたりするなどの効果を持つ。
主に医療分野で使用されているが、次のような効果から、美容分野でも活用されている。
血液やリンパの流れがスムーズになることで、老廃物の排出も促進される。
セルライトとは、皮下脂肪組織が水分や老廃物をため込んだものであるが、上記非特許文献1に挙げられている機器は、このセルライトを除去する働きも持ち合わせている。
【0005】
また、上記非特許文献2と3も、非特許文献1とほぼ同じ原理、仕様であり、主に美容分野で活用されている機器である。
【0006】
しかしながら上記非特許文献に挙げた3機器は、皮膚の吸引力が強く、吸引時の機器のヘッド部との摩擦によって炎症が起きるなど、部位によっては皮膚が傷みやすい。
また、膝やくるぶしなど、関節周辺は骨の突出が多いため、硬い機器のヘッド部を使って硬い骨周辺に施術する際ヘッドを適当な大きさのものに付け替えるなどの手間がかかり、場所によっては既存のどのヘッドを使用しても施術に困難さを伴う。
さらにまたこれらの機器は高価であるうえに、接骨院や治療院、エステサロンなど使用場所が限られている。
【0007】
したがって、本発明の目的は、皮膚の傷みを最低限に抑え、体の各部位に難なく施術でき、安価で、誰でもが簡便に筋膜リリースを行う用具を提供することにある。
【0008】
本発明は、シリコン樹脂などに代表される、皮膚との摩擦係数を大きくする素材を利用する。
当該物質で作製された物体を手で把持し、筋膜リリースを行いたい部位に適度な力によって指で押し付け、皮膚の可動域いっぱいの範囲で往復動作をすることにより、上記目的を達成するものである。
【0009】
片手で容易に把持できる大きさで、形状は、任意の多面体状や円錐状、円柱状など、皮膚に密着する一面を持つものとする。
ただし、把持しやすさ、皮膚への密着のしやすさなどを考慮して、例えば、円錐から一部を除去して円錐台にしたり、施術時の指を押し付ける部分を直方体から除去したりするように、これらの形状から一部を除去した形状であってもよい。
そして素材については、シリコン樹脂に代表される、皮膚との摩擦係数を大きくする単一素材によって作製されるものとする。
なお、皮膚に密着させる面には凹凸は存在させない。
【0010】
次に本発明品の使用法を説明する。
本発明品を手で把持し、皮膚に密着させる
この時、本発明品が皮膚に密着している範囲はどこも分断されておらず、連続面であることが必要である。
そしてその状態で皮膚の可動域いっぱいの範囲を、こするような動作で往復させる。
なおこの場合、皮膚との摩擦係数を大きくする素材で皮膚をしっかりととらえているため、皮膚自体をこすって傷めてしまうことはない。
【0011】
上記非特許文献に挙げた3機器はどれも、皮膚表面を付属のヘッド部によって吸引することで皮膚をとらえて動かすものである。
これに対し、本発明品は、皮膚との摩擦係数を大きくする素材を皮膚に密着させて動かすものである。
これらについて、皮膚をとらえて動かすという点において両者は当該部位に対して同じことをしていると言える。
このことから、上記非特許文献に挙げた3機器が、皮膚と皮下組織との癒着を解消し、本来あるべき隙間を作る効果をもつのであれば、本発明品も同等の効果を持つ可能性が高いと言える。
上記非特許文献に挙げた3機器の吸引圧について、ダイヤルを手動で操作することによる調節であるため、施術する部位ごとの吸引圧の微妙な調節は困難である。
これに対し本発明における器具は、使用者本人の感覚による調節であるため、大腿部外側などの比較的硬い皮膚に施術する場合と、顔面などの柔らかい皮膚に施術する場合など、部位別に常に皮膚への負担が少なくなるように考慮できる。
【0012】
さらにまた、上記非特許文献に挙げた3機器は、部位によっては被施術者は脱衣の必要性があるが、本発明品を使用した場合、服の下で簡単に施術ができるためその必要がないという違いもある。
これは、特に女性の被施術者にとっては大きな利点である。
【0013】
さて、皮膚との摩擦係数を大きくする、ゴムなどを利用した筋膜リリース用具は存在している。
【0014】
【非特許文献4】ミオラブ[平成28年5月23日検索]、インターネット〈URL:http://www.myorub.net/access.html〉
【0015】
上記非特許文献4には、エラストマー樹脂で作製された本体にゴムのカバーをかぶせて使用する器具が挙げられている。
ゴムは接する物質との摩擦係数を大きくするため、一見、本発明品と類似しているようであるが、以下の点で違いがある。
【0016】
まず最大の違いは、患部のとらえ方にある。
上記非特許文献4に挙げられている器具は、患部を挟んだ2点で皮膚をとらえ、往復動作によって、2点間の皮膚全体を動かすことを目的として作製されたものである。
この場合、患部はこの2点間の皮下に存在する。
これに対し本発明は、その皮下に患部が存在する皮膚を直接とらえることを目的として作成されたものであるという点で、上記非特許文献4とは異なる。
【0017】
また、上記非特許文献4に挙げられている器具は、長さ10cm、幅6cmという大きさであり、本体のエラストマー樹脂部は、手よりもやや硬めであり、施術時の力によって容易に形を変えない硬さである。
この上記非特許文献4に挙げられている器具の場合は、顔や関節周辺のように、骨と筋肉が作る細かな凹凸が存在している部位には施術が困難である。
これに対して本発明品は、皮膚との摩擦係数を大きくする素材を用い、施術時の力で容易に変形する硬度で作製することで、関節部の凹凸を包む込むことができるうえ、本発明品の本体が持つカドの部分も施術に利用できるため、骨と筋肉によって細かな凹凸の存在する部位でも容易に施術することが可能になる。
このような点でも違いがある。
【0018】
さらにまた、上記非特許文献4に挙げられている器具は、とらえた二点間の皮膚を動かすことを目的としているために一直線上の往復動作をするものであるが、本発明品は連続した一平面で皮膚をとらえることを目的としているため、あらゆる方向へ動かすことが可能である。
【0019】
そしてまた、上記非特許文献4に挙げられている器具は、エラストマー樹脂製の本体にゴムのカバーをかけて使用するものであるのに対し、本発明における器具は、皮膚との摩擦係数を大きくする単一素材で作製するものである。
本発明における器具は本体とカバーという境界がなく一体化しているため、施術時に加える力によるズレが発生しないという利点もある。
【0020】
以上のような点において、本発明品は従来品とは異なるものである。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】 円錐状から把持しやすさを目的として一部を除去した、本発明の実施例
【
図2】 直方体状から把持しやすさを目的として一部を除去した、本発明の実施例
【要約】 (修正有)
【課題】皮膚の傷みをできるだけ少なくし、手軽に行える筋膜リリース用具を提供する。
【解決手段】筋膜リリース用具は、シリコン樹脂に代表されるような皮膚との摩擦係数を大きくする素材を用い、少なくとも皮膚への密着面には凹凸を存在させないで、施術時に加える力で容易に変形する程度の硬度の材料にて作製する。
【選択図】
図1