(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記特性データはさらに、前記レーザ測距装置から見た前記構造物の第1傾き、前記レーザ測距装置から見た前記第1面の第2傾き、および前記構造物の終端部の位置の対応関係を、複数の前記構造物についてそれぞれ前記レーザ測距装置を用いて計測した結果を記述しており、
前記形状解析プログラムは、前記コンピュータにさらに、
前記レーザ測距装置から見た前記計測対象の第3傾きを前記レーザ測距装置から取得するステップ、
前記レーザ測距装置から見た前記第2面の第4傾きを前記レーザ測距装置から取得するステップ、
を実行させ、
前記形状解析プログラムは、前記特定ステップにおいて、前記コンピュータに、
前記第3距離と前記第4距離に加えて前記第3傾きと前記第4傾きを用いて前記特性データを照会することにより、前記第3距離、前記第4距離、前記第3傾き、および前記第4傾きに対応する前記対応関係を特定させる
ことを特徴とする請求項1記載の形状解析プログラム。
前記特性データはさらに、前記レーザ測距装置から見た前記構造物の厚さと前記構造物の終端部の位置の対応関係を、複数の前記構造物についてそれぞれ前記レーザ測距装置を用いて計測した結果を記述しており、
前記形状解析プログラムは、前記コンピュータにさらに、前記レーザ測距装置から見た前記計測対象の厚さを取得するステップを実行させ、
前記形状解析プログラムは、前記特定ステップにおいて、前記コンピュータに、
前記第3距離、前記第4距離、前記第3傾き、および前記第4傾きに加えて前記計測対象の厚さを用いて前記特性データを照会することにより、前記第3距離、前記第4距離、前記第3傾き、前記第4傾き、および前記計測対象の厚さに対応する前記対応関係を特定させる
ことを特徴とする請求項2記載の形状解析プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施の形態1:レーザスポットと終端部の関係について>
図1は、レーザスポットが計測対象の終端部をまたがる様子を示す図である。
図1において、計測対象210は平面220よりも上方に配置された板状の部材である。レーザ測距装置300は、計測対象210の上方からレーザビーム311を照射することにより、レーザ測距装置300から計測対象210までの距離を計測する。
【0012】
レーザ測距装置300は、計測対象210の表面上の複数個所を同様に計測し、各箇所とレーザ測距装置300との間の距離を計測する。
図1においては、x方向に沿って複数個所にレーザを走査して計測する様子を例示した。レーザ測距装置300は、必ずしも自身が移動しながら照射位置を走査する必要はなく、固定位置から各照射位置に対してレーザを照射してもよい。以下では説明の簡易のため、計測対象210の表面に対して略法線方向からレーザを照射するものと仮定する。
【0013】
レーザ測距装置300がレーザを走査する過程において、レーザが計測対象の終端部に到達する。
図1(a)においては、左から3番目の照射位置がこれに当たる。レーザスポット312はある程度のサイズを有するので、レーザスポットが終端部をまたがるようにしてレーザが計測対象210に対して照射されることがある。この場合、レーザの一部は計測対象210の表面から反射され、残部はレーザ測距装置300から見て計測対象210よりも奥にある平面220から反射される。
【0014】
図1(b)は、終端部においてレーザスポット312が分割されている様子を示す側面図である。斜線はレーザスポット321の範囲を示し、黒丸はレーザスポット312の中心を示す。
図1(b)に示すように、レーザスポット312が計測対象210の終端部をまたがるようにレーザ照射すると、レーザの一部は計測対象210に対して照射され、残部はその奥にある平面220に対して照射される。レーザ測距装置300は、これら双方から反射された反射光を平均して距離を計測するので、その計測結果は点線で示すような中途半端なものとなる。この中途半端な計測結果がノイズとなり、終端部の正確な位置を計測することを妨げている。
【0015】
<実施の形態1:形状解析プログラム>
図2は、本発明の実施形態1に係る形状解析プログラム111を実行するコンピュータ100の構成図である。コンピュータ100は、レーザ測距装置300から計測結果を受け取り、これを形状解析プログラム111によって処理することにより、計測対象210の形状を解析する。コンピュータ100は、CPU(Central Processing Unit)110、記憶装置120を備える。
【0016】
CPU110は、形状解析プログラム111を実行する。形状解析プログラム111が実装する処理の内容については後述する。以下では記載の便宜上、形状解析プログラム111を動作主体として説明する場合があるが、実際に形状解析プログラム111を実行するのはCPU110である。
【0017】
記憶装置120は、特性データ121を格納している。特性データ121は、あらかじめ複数の構造物の終端部についてレーザ測距装置300を用いて計測した結果を記録するデータファイルである。特性データ121の詳細については後述する。
【0018】
<実施の形態1:特性データについて>
図3は、特性データ121が記述している内容を説明する図である。レーザスポットが終端部をまたがるように照射されたときのレーザ測距装置300による計測結果は、レーザ測距装置300から計測対象210までの距離とレーザ測距装置300から平面220までの距離が同一であれば、同様の計測結果が得られると考えられる。そこで本実施形態1においては、計測対象210と平面220の間の位置関係と同様な構造物について、レーザスポットが終端部をまたがる際の計測結果を、複数パターンあらかじめ取得しておくこととした。
【0019】
図3(a)は、レーザ測距装置300から構造物231までの距離が比較的近く、構造物231とその奥の平面241が接近している場合の計測結果である。レーザスポットが構造物231の終端部をまたがらない位置においては構造物231と平面241がそれぞれ正確に測距され、レーザスポットが構造物231の終端部をまたがる範囲においては分離したレーザスポットの平均値に基づき中途半端な計測結果となる。この計測結果を計測位置(図面の左右方向における位置)と対応付けて、
図3(a)に示すような曲線データとして特性データ121内に記録する。ここでいう計測位置とは、後述する終端部の正確な位置に対する相対位置である。
【0020】
図3(b)は、レーザ測距装置300から構造物232までの距離が
図3(a)と比較してやや離れ、さらに構造物232とその奥の平面242が
図3(a)と比較して離れている例である。
図3(c)は、構造物233からその奥の平面243までの距離がさらに離れた例である。これら距離の様々な組み合わせについて終端部をまたがって計測した結果を、特性データ121内にあらかじめ記録しておく。これら計測結果は、
図3に概念的に示す特性曲線として表すことができる。
【0021】
様々な構造物(例えば
図3における構造物231〜233)について特性データ121を記録する際に、レーザ測距装置300による計測結果を特性曲線として記録することに加えて、各特性曲線における終端部の正確な位置を併せて記録しておく。
図3の太矢印は終端部の位置を示す。レーザ測距装置300による計測位置を終端部に対して正確に位置合わせすることにより、各特性曲線と終端部の位置を対応付けて記録することができる。位置合わせは、例えばレーザ測距装置300とは別の計測精度が高い適当な位置合わせ器を用いればよい。
【0022】
<実施の形態1:解析手順について>
図4Aは、形状解析プログラム111が計測対象210の終端部を特定する手順を説明する図である。レーザ測距装置300は、レーザスポットが計測対象210の終端部をまたがらない位置において、レーザ測距装置300と計測対象210との間の距離、およびレーザ測距装置300と平面220との間の距離を、それぞれ計測する。形状解析プログラム111は、その計測結果を取得する(
図4A(1))。
【0023】
特性データ121は、これら2つの距離の組み合わせごとに特性曲線を記録している。したがって形状解析プログラム111は、レーザ測距装置300から取得した2つの距離を用いて特性データ121を照会することにより、計測対象210と平面220に対応する特性曲線を特定することができる(
図4A(2))。
【0024】
特性データ121は、構造物(
図3の例においては構造物231〜233)の終端部近傍における計測結果の変化を、計測位置に対応付けて記録したものであるに過ぎない。したがって、計測対象210と平面220に対応する特性曲線を特定したとしても、レーザ測距装置300がその特性曲線のうちどの部分を計測したのかについては、改めて特定する必要がある。
【0025】
図4Bは、形状解析プログラム111が計測対象210の終端部を特定する次手順を説明する図である。形状解析プログラム111が計測対象210と平面220に対応する特性曲線を特定した後、レーザ測距装置300は計測対象210の終端部近傍に対してレーザを照射することにより測距を実施する(
図4B(3))。このときの計測位置は、レーザスポットが終端部をまたがっていればよく、終端部に対して正確に位置合わせする必要はない。
【0026】
形状解析プログラム111は、レーザ測距装置300から終端部近傍の計測結果を取得する。この計測結果は、先に特定した特性曲線のうち終端部近傍の値に相当する。形状解析プログラム111は、取得した計測結果を用いて特性曲線を照会することにより、レーザ測距装置300が特性曲線のうちいずれの部分に対応する位置において測距したのかを特定することができる(
図4B(4.1))。形状解析プログラム111は、特定したレーザ測距装置300の位置と、特性曲線が記録している終端部位置との間の差分を求めることにより、計測対象210の終端部位置を求めることができる。すなわち、レーザ測距装置300が測距した位置から終端部までの距離を求めることができる(
図4B(4))。
【0027】
<実施の形態2>
図5は、本発明の実施形態2における特性データ121が記述している内容を説明する図である。特性データ121の違いに関連する事項以外は実施形態1と同様であるので、以下では主にその差異点について説明する。
【0028】
構造物231〜233と平面241〜243との間の配置関係によっては、これら一方または双方が、レーザ測距装置300から見て傾いている場合がある。レーザ測距装置300が構造物231〜233の終端部近傍を測距したときの計測結果は、これら傾きに応じて異なると考えられる。そこで本実施形態2においては、(a)レーザ測距装置300と構造物231〜233との間の距離、(b)レーザ測距装置300と平面241〜243との間の距離、に加えて、(c)レーザ測距装置300から見た構造物231〜233の傾き、(d)レーザ測距装置300から見た平面241〜243の傾き、の組み合わせごとに、特性データ121を記録することとした。
【0029】
図5(a)は、レーザ測距装置300から見て構造物231のみが傾いている例を示している。その他は
図3(a)と同様である。
図5(b)は、レーザ測距装置300から見て構造物232が傾き、さらに平面242が反対向きに傾いている例である。その他は
図3(b)と同様である。
図5(c)は、レーザ測距装置300から見て平面243のみが傾いている例である。その他は
図3(c)と同様である。
【0030】
形状解析プログラム111は、
図4A〜
図4Bと同様の手順により、計測対象210の終端部位置を特定する。ただし、
図4Aにおいてはレーザ測距装置300と計測対象210との間の距離、およびレーザ測距装置300と平面220との間の距離をそれぞれ計測しているが、本実施形態2においてはこれら距離とともに計測対象210の傾きと平面220の傾きを計測する点が異なる。これら傾きは、レーザ測距装置300との間の距離と計測位置から容易に求めることができる。形状解析プログラム111は、計測した各距離と各傾きに対応する特性曲線を、特性データ121から取得する。以後の手順は実施形態1と同様である。
【0031】
<実施の形態3>
図6は、本発明の実施形態3における特性データ121が記述している内容を説明する図である。特性データ121の違いに関連する事項以外は実施形態2と同様であるので、以下では主にその差異点について説明する。
【0032】
構造物231がある程度の厚さを有する場合において、構造物231が
図6に示す方向に傾いている場合、その厚さに応じて計測結果が異なる。
図6(a)に示す位置(構造物231の終端部の底面側)を測距している場合、レーザスポットの右半分は構造物231に対して入射し、左半分は平面241に対して入射する。
図6(b)に示す位置(構造物231の終端部の上面側)を測距している場合、レーザスポットの右半分は構造物231の上面に対して入射し、左半分のうち一部は終端部に対して入射し、左半分のうち残部は平面241に対して入射する。
【0033】
図6(a)(b)に示すように、終端部の側壁(厚さ部分)に対してレーザが入射することにより、計測結果は
図3や
図5で説明したものとは異なるものとなる。そこで本実施形態3においては、(a)レーザ測距装置300と構造物231〜233との間の距離、(b)レーザ測距装置300と平面241〜243との間の距離、(c)レーザ測距装置300から見た構造物231〜233の傾き、(d)レーザ測距装置300から見た平面241〜243の傾き、に加えて、(e)構造物231〜233の厚さ、の組み合わせごとに、特性データ121を記録することとした。ただし構造物231〜233が
図5に示す向きに傾いている場合は、終端部の側壁に対してレーザが入射しないので、構造物231〜233の厚さを用いる必要はないことを付言しておく。
【0034】
構造物231〜233の終端部の位置(
図6(c)の太矢印)は、
図6(a)に示す位置(構造物231の終端部の底面側のx座標)として定義してもよいし、
図6(b)に示す位置(構造物231の終端部の上面側のx座標)として定義してもよい。
【0035】
形状解析プログラム111は、
図4A〜
図4Bと同様の手順により、計測対象210の終端部位置を特定する。ただし形状解析プログラム111は、実施形態2で説明した事項に加えて、計測対象210の厚さを用いて特性曲線を特定する点が、実施形態2とは異なる。計測対象210の厚さは、適当な計測手段によって計測してもよいし、ユーザが入力することによって与えてもよいし、その他適当な手段によって与えてもよい。
【0036】
<実施の形態4>
本発明の実施形態4では、特性データ121が記述していない特性曲線を補う手法について説明する。コンピュータ100、レーザ測距装置300その他構成は実施形態1〜3と同様である。
【0037】
以上の実施形態1〜3において、特性データ121は、(a)レーザ測距装置300と構造物231〜233との間の距離、(b)レーザ測距装置300と平面241〜243との間の距離(以上実施形態1)、(c)レーザ測距装置300から見た構造物231〜233の傾き、(d)レーザ測距装置300から見た平面241〜243の傾き(以上実施形態2)、(e)構造物231〜233の厚さ(実施形態3)、の様々な組み合わせを記述していることを説明した。しかし特性データ121はレーザ測距装置300による実計測結果を記述するものであるので、特性データ121が記述している各レコード間には空隙部分が必ず存在する。
図4Aで説明した手順により特性曲線を特定する際に、特性データ121が対応する特性曲線を保持していない場合は、既存の特性曲線を用いて演算により対応する特性曲線を求める必要がある。
【0038】
具体的には、特性データ121が記述している既存の特性曲線に対して内挿または外挿を実施することにより、不足している特性曲線を演算で求めることができる。内挿は、特性データ121が記述しているレコード間のデータ点を補間して不足しているデータ点を補うことに相当する。外挿は、特性データ121が記述しているレコード間の外側で予想されるデータ点を求めることに相当する。
【0039】
特性曲線を内挿または外挿により求めるとは、下記式1を満たすq
iを決定することである。Paは、上記パラメータ(a)〜(e)のベクトルである。パラメータ(a)〜(e)を全て用いる場合、Paは式1に示すように5次元ベクトルとなる。特性曲線は、q
iを用いて下記式2により算出することができる。
【0042】
外挿を実施する際には、特性データ121が記述しているレコードのうち、演算により求めようとする目標データ点と最も近いものを特定する必要がある。各レコードは多次元ベクトルであるので、例えばその重心と目標データ点との間のユークリッド距離が最も近いものを、目標データ点と最も近いレコードとして取り扱うことができる。
【0043】
<実施の形態5>
本発明の実施形態5では、レーザスポットが楕円形状で近似できる場合の特性曲線を求める手法について説明する。コンピュータ100、レーザ測距装置300その他構成は実施形態1〜3と同様である。
【0044】
図7は、レーザ測距装置300が照射する測距レーザのレーザスポットが楕円形である場合における、計測対象210の上面図である。
図7(a)は、計測対象210の終端部形状がレーザスポットの短径と並行であり長径に対して垂直である場合を示す。
図7(b)は、計測対象210の終端部形状がレーザスポットの長径と並行であり短径に対して垂直である場合を示す。
図7(c)は、計測対象210の終端部形状がレーザスポットの短径と長径に対して傾いている場合を示す。
【0045】
図7(a)(b)を比較すると、レーザスポットが楕円形状であることに起因して、レーザスポットが計測対象210の終端部を交差する時間が
図7(a)(b)それぞれにおいて互いに異なることが分かる。そうすると、計測対象210の終端部近傍をレーザ測距したとき得られる特性曲線も、
図7(a)(b)それぞれにおいて互いに異なると考えられる。
図7(c)における特性曲線は、
図7(a)(b)における特性曲線の中間の形態となると考えられる。
【0046】
そこで本実施形態5において、特性データ121は、実施形態1〜3で説明した(a)レーザ測距装置300と構造物231〜233との間の距離、(b)レーザ測距装置300と平面241〜243との間の距離(以上実施形態1)、(c)レーザ測距装置300から見た構造物231〜233の傾き、(d)レーザ測距装置300から見た平面241〜243の傾き(以上実施形態2)、(e)構造物231〜233の厚さ(実施形態3)、に加えて、(f)レーザスポットの短径または長径に対する計測対象210の終端部の傾き、を記述することとした。例えば
図7(c)に示す角度φを上記パラメータ(f)とすることができる。
【0047】
レーザ測距装置300による計測結果を用いて特性曲線をあらかじめ記録する際には、実施形態1〜3それぞれで説明した上記パラメータに加えてパラメータ(f)を計測すればよい。例えば実施形態1においてはパラメータ(a)(b)(f)の組み合わせごとに特性曲線をあらかじめ記録することになる。
【0048】
レーザ測距装置300による計測結果を用いて角度φを計測する手法としては、任意の公知技術を用いることができるが、例えば“決定木を用いた距離画像からの高速なエッジ検出”、http://www.vision.cs.chubu.ac.jp/flabresearcharchive/bachelor/B13/Abstract/kaneko.pdfに記載されているものを用いることができる。
【0049】
図7(c)においては、レーザスポットが長径方向に沿って進行する例を示したが、レーザスポットが計測対象210の終端部に対して直交する方向に進行する場合も同様に、レーザスポットの短径または長径に対する計測対象210の終端部の傾きを新たなパラメータとして記録すればよい。
【0050】
<実施の形態6>
本発明の実施形態6では、レーザスポットが楕円形状で近似できる場合の特性曲線を求める手法について説明する。コンピュータ100、レーザ測距装置300その他構成は実施形態1〜3と同様である。
【0051】
図8は、レーザ測距装置300が照射する測距レーザのレーザスポットが楕円形である場合における、計測対象210の上面図である。
図8(a)において、レーザスポットは短径aと長径bを有する楕円形状であるものとする。
【0052】
この場合、
図7で説明したように、計測対象210の終端部とレーザスポットの短径または長径が平行である場合とは異なる特性曲線が計測されることになる。したがって、計測対象210の終端部とレーザスポットの短径または長径が平行である場合における特性曲線については、別途計測により取得することが必要になる。この計測作業は手間がかかるので、本実施形態6においてはこれを演算により求めることとする。以下その原理について説明する。
【0053】
実施形態1で説明したように、レーザスポットが計測対象210の終端部をまたがって照射しているときの特性曲線の値は、計測対象210から反射されたレーザビーム強度と平面220から反射されたレーザビーム強度を平均した値によって構成されている。計測対象210から反射されるレーザビーム強度は、レーザスポットのうち計測対象210に対して照射される部分の面積によって定まる。平面220から反射されるレーザビーム強度は、レーザスポットのうち平面220に対して照射される部分の面積によって定まる。すなわちこのときの特性曲線の値は、これら2つの面積比によって定まるということができる。本実施形態6においては、この原理を利用して、
図7(a)において得られた特性曲線を用いて
図7(c)の特性曲線を演算により求める。
【0054】
図8(a)における座標空間を、短径方向(
図8のx軸方向)にb/a倍することにより、レーザスポットが真円形状になるように伸長したものと仮定する。
図8(b)はその伸長により得られるレーザスポットを示している。このとき、レーザスポットは1次元方向においてのみ伸長されているので、レーザスポットのうち計測対象210に対して照射される部分の面積とレーザスポットのうち平面220に対して照射される部分の面積の比は、伸長前後において変わらない。したがって、
図8(b)のようなレーザスポットを用いてレーザ測距を実施したと仮定したとき得られる特性曲線上の値は、
図8(a)と同一である。ただし座標空間をx軸方向に変換しているので、終端部の傾きφ(第5傾き)はφ’(第6傾き)に変換されている。傾きφ’は、tanφ’=(a/b)tanφにより表される。
【0055】
図8(b)のレーザスポットをさらに、計測対象210の終端部に対して平行な方向に収縮することにより、短径aと長径bを有する楕円形状のレーザスポットを得ることができる。
図8(c)はその収縮により得られるレーザスポットを示している。
図8(c)に示すレーザスポットのうち計測対象210に対して照射される部分の面積とレーザスポットのうち平面220に対して照射される部分の面積の比は、収縮前後において変わらない。したがって、
図8(c)のようなレーザスポットを用いてレーザ測距を実施したと仮定したとき得られる特性曲線上の値は、
図8(b)と同一である。
【0056】
図8(b)におけるレーザスポットの中心Oから計測対象210の終端部までの距離l’(第7距離)は、
図8(a)におけるレーザスポットの中心Oから計測対象210の終端部までの距離をl(第6距離)とすると、l’=l×cosφ’によって表される。
【0057】
楕円形状のレーザスポットを、長径方向が計測対象210の終端部に対して直交する方向に進行させたとき得られる特性曲線は、
図7(a)によって実測することができる。この実測により得られた特性曲線の値のうち、レーザスポットの中心Oから計測対象210の終端部までの距離がl’であるときの値は、
図8(d)において得られる特性曲線上の値に相当する。レーザスポットのうち計測対象210に対して照射される部分の面積とレーザスポットのうち平面220に対して照射される部分の面積の比は、
図8(c)(d)において同一である。したがって、
図8(d)のようなレーザスポットを用いてレーザ測距を実施したと仮定したとき得られる特性曲線上の値は、
図8(c)と同一である。
【0058】
以上の検討によれば、
図8(a)において得られる特性曲線上の値は、
図8(d)において得られる特性曲線上の値と同一であることが分かる。形状解析プログラム111は、この関係を利用して、
図7(a)において得られた特性曲線を用いて
図7(c)の特性曲線を演算により求めることができる。対応するデータ点が存在しない場合は、実施形態4で説明した内挿または外挿によって補えばよい。
【0059】
図7(a)における特性曲線が関数f(x)によって表されるとすると、
図8(a)または
図8(d)における特性曲線の値は、f(l’)=f(l×cosφ’)=f(l×cos(tan
−1((a/b)tanφ)))によって求められる。形状解析プログラム111は、求めた値を
図8(a)(または
図7(c))に対応する特性曲線として特性データ121に対して記録する。
【0060】
図8においては、レーザスポットの短径を伸長することにより真円形状に変換したと仮定して説明したが、長径を収縮することによっても同様の説明をすることができる。ただし伸長と収縮が
図8とは反対になる。
【0061】
<本発明のまとめ>
本発明に係る形状解析プログラム111は、構造物231〜233に例示するような複数の構造物について、レーザスポットが終端部をまたがる場合における計測結果をあらかじめパターン化しておき、計測対象210がそのいずれのパターンに該当するのかを特定することにより、計測対象210の終端部の位置を求める。これにより、レーザ測距装置300のレーザスポットが計測対象210の終端部をまたがる場合であっても、
図1で説明したようなノイズによる影響を抑制して終端部の位置を精度よく求めることができる。
【0062】
<本発明の変形例について>
以上の実施形態においては、計測対象210や平面220が平面状の部材である例を説明したが、これらが平面状ではない場合であっても、近似的に平面とみなすことができるサイズや範囲内で同様の処理を実施することにより、本発明と同様の効果を発揮することができる。
【0063】
以上の実施形態においては、コンピュータ100がレーザ測距装置300から計測結果を取得することを説明したが、レーザ測距装置300自身が形状解析プログラム111を搭載してこれを実行することによっても同じ効果を発揮することができる。
【解決手段】レーザ測距装置300、構造物231−233、レーザ測距装置から見て構造物よりも奥にある面241ー243の対応関係をあらかじめ複数計測しておき、計測対象がその対応関係のいずれに該当するかを特定することにより、計測対象の終端部の位置を取得する。