特許第6046856号(P6046856)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046856
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】容積ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/08 20060101AFI20161212BHJP
   F04B 53/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   F04B43/08 A
   F04B53/10 F
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-501469(P2016-501469)
(86)(22)【出願日】2015年3月10日
(86)【国際出願番号】JP2015056940
【審査請求日】2016年1月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000127352
【氏名又は名称】株式会社イワキ
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】きさらぎ国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 敏樹
【審査官】 新井 浩士
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−201045(JP,A)
【文献】 特開2009−250363(JP,A)
【文献】 特開昭50−050706(JP,A)
【文献】 実開昭63−024467(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/08
F04B 53/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベローズを伸縮させることによって移送流体を移送する容積ポンプであって、
前記移送流体の吸込口及び吐出口が設けられたポンプヘッドと、
前記ポンプヘッドに伸縮可能に固定され、内部にポンプ室を形成する有底円筒状の前記ベローズと、
前記ポンプヘッドに設けられて前記吸込口から前記ポンプ室に前記移送流体を導く吸込バルブと、
前記ポンプヘッドに設けられて前記ポンプ室から前記吐出口に前記移送流体を吐出する吐出バルブと
を備え、
前記吸込バルブは、
前記ポンプヘッドから前記ポンプ室に向かって突出する円筒状の弁座と、
可撓性の材質からなり、前記ポンプヘッドから前記ポンプ室に向かって突出し、前記ポンプヘッドから遠い部分程半径が大きい略円錐状の弁部、及び、前記弁部と結合し、前記弁座との位置関係が固定された固定部を有する弁体と
を有し、
前記吐出バルブは、
前記ポンプヘッドから前記ポンプ室に向かって突出する円筒状の弁座と、
前記ポンプヘッドから前記ポンプ室に向かって突出する略円柱状の弁体固定部材と、
可撓性の材質からなり、前記弁体固定部材に結合し、前記ポンプヘッドに近付く程半径が大きい略円錐状の弁部を有する弁体と
を有する
ことを特徴とする容積ポンプ。
【請求項2】
前記吐出バルブの弁体固定部材は、
前記弁座と軸の位置が一致する略円柱状に形成され、
前記ポンプ室に突出する端部の外周部分に前記弁体と固定される部分を備える
ことを特徴とする請求項1記載の容積ポンプ。
【請求項3】
前記吐出バルブの弁体は、前記弁座と軸の位置が一致する環状に形成され、内周部分に前記弁体固定部材と固定される部分を備える環状部を更に備え、
前記弁部は、前記環状部と一体に形成される
ことを特徴とする請求項2記載の容積ポンプ。
【請求項4】
前記吐出バルブの弁体は、前記弁体固定部材に向かって突出する突出部を有し、
前記突出部の外周部分に前記弁体固定部材と固定される部分が形成されている
ことを特徴とする請求項1記載の容積ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベローズ、ダイアフラム等の変形可能な部材によってポンプ室内の容積を変化させることにより移送流体を移送する容積ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
ベローズ、ダイアフラム等の変形可能な部材によってポンプ室内の容積を変化させることにより移送流体を移送する容積ポンプが知られている。このような容積ポンプにおいては、ポンプの吸込口とポンプ室との間に吸込バルブが、ポンプの吐出口とポンプ室との間に吐出バルブが設けられる。ここで、例えば、下記特許文献1には、円筒状の弁座と、この円筒状の弁座の内壁に沿って摺動する弁体を備えた吸込バルブ及び吐出バルブを有する容積ポンプが開示されている。また、下記特許文献2には、円筒状の弁座と、この弁座の内壁に沿って摺動する球状の弁体を備えた吸込バルブ及び吐出バルブを有する容積ポンプが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−211512号公報
【0004】
【特許文献2】特開2006−200429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した特許文献1及び2においては、いずれも吸込バルブ及び吐出バルブが摺動部分を有しており、この部分において発生したパーティクルが流体に混合されてしまう場合がある。
【0006】
本発明は、この様な課題に鑑みなされたもので、摺動部分から発生するパーティクルが流体に混ざることを防止することが可能な容積ポンプの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る容積ポンプは、ベローズを伸縮させることによって移送流体を移送する容積ポンプである。この容積ポンプは、伸縮可能に配置され、内部にポンプ室を形成する有底円筒状のベローズと、ポンプ室の吸込側に設けられてポンプ室に移送流体を導く吸込バルブと、ポンプ室の吐出側に設けられてポンプ室から移送流体を吐出する吐出バルブとを備える。また、吸込バルブ及び吐出バルブは、それぞれ、弁座と弁体とを備える。弁体は、可撓性の材質からなり、弁座との位置関係が固定された固定部と、固定部から弁座に向かう方向及び移送流体が移動する方向の間の所定の方向に延びる弁部を有する。
【0008】
即ち、このような容積ポンプにおいては、吸込バルブ及び吐出バルブの弁部が可撓性の材質から構成されており、弁座と弁部の固定部分との位置関係が固定されており、更に弁部の可動部分が、弁体から弁座に延びる方向及び流体が移動する方向の間の所定の方向に延びている。従って、弁座と弁体を押圧接触させることによって流路を塞ぐことが可能であり、弁座と弁体との摺動を防止することが可能である。従って、ポンプ室内に摺動部分を有しないベローズポンプ等の容積ポンプにこのような吸込弁及び吐出弁を利用することにより、摺動部分から発生するパーティクルが流体に混ざることを防止することが可能である。
【0009】
また、本発明の一態様に係る容積ポンプにおいて、吸込バルブの弁座は、ポンプ室に向かって突出する円筒状に形成され、弁部は、移送流体が移動する方向に沿って半径が大きくなる略円錐状に形成されている。
【0010】
また、本発明の一態様に係る容積ポンプにおいて、吐出バルブの弁座は、ポンプ室に向かって突出する円筒状に形成され、弁部は、移送流体が移動する方向に沿って半径が大きくなる略円錐状に形成されている。
【0011】
吐出バルブがこのように構成されている場合、例えば、吐出バルブは、弁座と弁体との位置関係を固定する弁体固定部材を更に備えていても良い。また、弁体固定部材は、弁座と軸の位置が一致する略円柱状に形成され、ポンプ室に向かって突出し、ポンプ室に突出する端部の外周部分に弁体と固定される部分を備えていても良い。尚、ここで言う「弁体と固定される部分」とは、例えば、雄ねじである。
【0012】
また、この場合、更に、吐出バルブの弁体が、弁座と軸の位置が一致する環状に形成され、内周部分に弁体固定部材と固定される部分を備える環状部を更に備え、弁部がこの環状部と一体に形成され、環状部から上記所定の方向に延びていても良い。ここで言う「弁体固定部材と固定される部分」とは、例えば、雌ねじである。この場合、例えば弁体固定部材を弁部と比較して剛性の高い材料から構成することにより、流路に発生した渦等に起因して弁体固定部材の軸が曲がることを防止し、弁体と弁座とが摺動する可能性を低減することが可能である。
【0013】
また、吐出バルブの弁座がポンプ室に向かって突出する円筒状に形成され、弁部が、移送流体が移動する方向に沿って半径が大きくなる略円錐状に形成されている場合、例えば、吐出バルブが、弁座と弁体との位置関係を固定する弁体固定部材を更に備えていても良い。更に、弁体は、弁体固定部材に向かって突出する突出部を有し、突出部の外周部分に弁体固定部材と固定される部分が形成されていても良い。
【0014】
本発明の一態様に係る容積ポンプは、変形可能な部材によってポンプ室内部の容積を変化させることにより移送流体を移送する容積ポンプである。この容積ポンプは、ポンプ室の吸込側に設けられてポンプ室に移送流体を導く吸込バルブと、ポンプ室の吐出側に設けられて前記ポンプ室から前記移送流体を吐出する吐出バルブとを備える。吸込バルブ及び吐出バルブは、それぞれ、弁座と弁体とを備える。弁体は、可撓性の材質からなり、弁座との位置関係が固定された固定部と、固定部から弁座に向かう方向及び移送流体が移動する方向の間の所定の方向に延びる弁部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の第一の実施の形態に係る容積ポンプの断面図である。
図2】同容積ポンプの吸込バルブの構成例を示す断面図である。
図3】同容積ポンプの吐出バルブの構成例を示す断面図である。
図4】同容積ポンプの吐出バルブの他の構成例を示す断面図である。
図5】他の構成例に係る容積ポンプの吸込バルブの構成例を示す断面図である。
図6】同容積ポンプの吐出バルブの構成例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施の形態に係る容積ポンプについて詳細に説明する。
[第一の実施の形態]
図1は、本発明の一実施形態に係るベローズポンプの断面図及びその周辺機構を示す図である。なお、本実施形態に係るベローズポンプとしては、往復動ポンプ構造のいわゆる複胴型を例に挙げて説明するが、いわゆる単胴型のベローズポンプであっても適用可能である。
【0017】
ベローズポンプは、次のように構成されている。中央部に配置されたポンプヘッド1の両側には、ケース部材である有底円筒状のシリンダ2a,2bが同軸配置され、それらの内部に一対の空間が形成されている。これら空間内には、それぞれ有底円筒状のベローズ3a,3bが同軸配置されている。
【0018】
ベローズ3a,3bの開口端はポンプヘッド1に固定され、底部にはシャフト固定板4a,4bが固定されている。ベローズ3a,3bは、例えばフッ素樹脂からなり、内側をポンプ室5a,5b、外側を作動室6a,6bとしてシリンダ2a,2bの内部空間を仕切っている。また、ベローズ3a,3bは、軸方向に沿って交互に形成された山部12a及び谷部12bを備えている。
【0019】
シャフト固定板4a,4bには、同軸に延びるシャフト7a,7bの一端が固定されている。シャフト7a,7bの他端は、それぞれシリンダ2a,2bの底部中心を、シール部材8を介して気密に貫通してシリンダ2a,2bの外側まで延びている。このシャフト7a,7bの他端には、連結板9a,9bがナット10によって固定されている。
【0020】
連結板9a,9bは、シリンダ2a,2bの上下の位置において連結シャフト11a,11bによって連結されている。各連結シャフト11a,11bは、ボルト15によって連結板9a,9bに固定されている。
【0021】
ポンプヘッド1には、ポンプの側面に臨む位置に移送流体の吸込口16と吐出口17とが設けられる。これと共に、ポンプヘッド1には、吸込口16からポンプ室5a,5bに至る位置に吸込弁18a,18bが設けられ、ポンプ室5a,5bから吐出口17に至る経路に吐出弁19a,19bが設けられている。
【0022】
一方、図示しないエアーコンプレッサ等の作動流体源からの作動流体、例えばエアーは、レギュレータ26でそれぞれ所定圧力に制限されて電磁弁27に供給されている。
【0023】
作動室6aが排気状態で作動室6bがエアー導入状態であり、ポンプ室5aが膨張工程でポンプ室5bが収縮工程にあるとする。このとき、吸込弁18a及び吐出弁19bが開状態で吸込弁18b及び吐出弁19aが閉状態となるので、移送すべき液体は、吸込口16からポンプ室5aに導入され、ポンプ室5bから吐出口17を介して吐出される。
【0024】
次に、図2を参照して、吸込弁18bについて、より詳細に説明する。図2は、吸込弁18bの断面図である。尚、図2においては、吸込弁18bを例示しているが、吸込弁18aも吸込弁18bと同様に構成されている。
【0025】
図2に示す通り、吸込弁18bは、ポンプヘッド1に螺合され、ポンプヘッド1からポンプ室5bに突出する弁座21及び弁体22を備える。弁座21は、一例として、円筒状に形成されている。また、弁座21の一端の外周部分には螺合部(雄ねじ)211が形成され、この螺合部211によってポンプヘッド1の雌ねじに螺合されている。
【0026】
弁体22は、フッ素樹脂等の可撓性の材質から構成され、一例として、弁座21と軸の位置が一致する略円柱状に形成されている。弁体22の一端の外周部分には螺合部(雄ねじ)221が形成され、弁体22の一端は、この螺合部221によってポンプヘッド1の雌ねじに螺合されている。また、弁体22の他端は、ポンプヘッド1から遠い部分程半径が大きい略円錐状(ホーン形状)に形成された弁部222を有している。換言すれば、弁部222は、移送流体が移動する方向に沿って半径が大きくなる略円錐状の形状を有する。即ち、図2に示す通り、弁部222は、円柱状に形成された弁体22の本体22A(固定部)と結合しており、その円錐形状部は、本体22Aから徐々に弁座21の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。更に、弁体22には、ポンプヘッド1の吸込口16と、弁座21及び弁体22の間の空間23とに連通する吸込流路223が形成されている。
【0027】
ポンプ室5bが膨張工程にある場合、吸込口16から導入された流体16は、吸込流路223を介して、空間23に導入され、弁部222が流体によって押圧される。ここで、弁体22は可撓性の材質から構成されている。また、弁部222は、円柱状に形成された弁体22の本体と結合しており、本体22Aから徐々に弁座21の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。従って、弁部222が空間23内の流体によって押圧されると、弁部222が流体と共に押し流されて変形し、弁部222の先端部分224と弁座21の内壁部分とが離間する。これにより、空間23がポンプ室5bに連通し、流体がポンプ室5bに導入される。
【0028】
一方、ポンプ室5bが収縮工程にある場合、ポンプ室5b内の流体によって、弁部222が押圧される。ここで、弁体22は可撓性の材質から構成されている。また、弁部222は、円柱状に形成された弁体22の本体と結合しており、本体22Aから徐々に弁座21の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。従って、弁部222がポンプ室5b内の流体によって押圧されると、弁部222が弁座21の内壁部分に向かって押し広げられ、弁部222の先端部分と弁座21の内壁部分とが接触する。これにより、空間23とポンプ室5bとが仕切られ、流体がポンプ室5bから空間23に導入されることを防止する。
【0029】
次に、図3を参照して、吐出弁19bについて、より詳細に説明する。図3は、吐出弁19bの断面図である。尚、図3においては、吐出弁19bを例示しているが、吐出弁19aも吐出弁19bと同様に構成されている。
【0030】
図3に示す通り、吐出弁19bは、ポンプヘッド1に螺合され、ポンプヘッド1からポンプ室5bに突出する弁座31及び弁体固定部材32、並びに、この弁体固定部材32に結合する弁体33を備える。弁座31は、一例として、円筒状に形成されている。また、弁座31の一端の外周部分には螺合部(雄ねじ)311が形成され、この螺合部311によってポンプヘッド1の雌ねじに螺合されている。
【0031】
弁体固定部材32は、一例として、弁座31と軸の位置が一致する略円柱状に形成されている。弁体固定部材32の一端の外周部分には螺合部(雄ねじ)321が形成され、弁体固定部材32はこの螺合部321によってポンプヘッド1の雌ねじに螺合されている。また、弁体固定部材32の他端の外周部分には螺合部(雄ねじ)322が形成され、弁体固定部材32はこの螺合部322によって弁体33に螺合されている。更に、弁体固定部材32には、ポンプヘッド1の吐出口17と、弁座31及び弁体固定部材32の間の空間34とに連通する吐出流路323が形成されている。
【0032】
弁体33は、フッ素樹脂等の可撓性の材質から構成されている。また、弁体33は、一例として、弁座31と軸の位置が一致する環状に形成され、内周部分に、弁体固定部材32の螺合部322と螺合する螺合部(雌ねじ)332(固定部)が形成された環状部335を備えている。即ち、弁体33は、この螺合部332によって弁体固定部材32に螺合されている。また、弁体33は、この環状部335と一体に形成され、ポンプヘッド1に近づく程半径が大きい略円錐状(ホーン形状)に形成された弁部331を構成している。換言すれば、弁部331は、移送流体が移動する方向に沿って半径が大きくなる略円錐状の形状を有する。即ち、図3に示す通り、弁部331は、弁体固定部材322から徐々に弁座31の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。
【0033】
ポンプ室5bが膨張工程にある場合、ポンプ室5b内は減圧状態となり、弁体33がポンプ室5b内に引っ張られる。ここで、弁体33は可撓性の材質から構成されている。また、弁部331は、円柱状に形成された弁体固定部材32と結合しており、弁体固定部材322から徐々に弁座31の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。従って、弁体33がポンプ室5b内に引っ張られると、弁部331が弁座31の内壁部分に向かって押し広げられ、弁部331の先端部分333と弁座31の内壁部分とが接触する。これにより、空間34とポンプ室5bとが仕切られ、流体が空間34からポンプ室5bに導入されることを防止する。
【0034】
一方、ポンプ室5bが収縮工程にある場合、弁部331は、ポンプ室5b内の流体によって押圧される。ここで、弁体33は可撓性の材質から構成されている。また、弁部331は、弁体固定部材32と結合しており、弁体固定部材322から徐々に弁座31の内壁に向かって広がる様に延び、その先端が内壁と押圧接触する様に形成されている。従って、弁部331がポンプ室5b内の流体によって押圧されると、弁部331の先端部分333が流体と共に押し流され、弁部331の先端部分333と弁座31の内壁部分とが離間する。これにより、空間34がポンプ室5bに連通し、流体がポンプ室5bから吐出口17に排出される。
【0035】
即ち、本実施の形態に係る容積ポンプにおいては、弁部が可撓性の材質から構成されており、弁座と弁部の固定部分との位置関係が固定されており、更に弁部の可動部分が、弁体から弁座に延びる方向及び流体が移動する方向の間の所定の方向に延びている。従って、弁座と弁体を押圧接触させることによって流路を塞ぐことが可能であり、弁座と弁体との摺動を防止することが可能である。従って、ポンプ室内に摺動部分を有しないベローズポンプやダイアフラムポンプ等の容積ポンプに本実施の形態に係る吸込弁及び吐出弁を利用することにより、摺動部分から発生するパーティクルが流体に混ざることを防止することが可能である。
【0036】
また、本実施の形態に係る吐出弁19bにおいては、図3に示す通り、弁体固定部材32が円柱状に形成され、その端部の外周部分に螺合部322が形成されている。また、本実施の形態において、弁体33は、弁座31と軸の位置が一致する環状に形成され、内周部分に、弁体固定部材32の螺合部322と螺合する螺合部(雌ねじ)332が形成された環状部335を備えている。また、弁部331は、この環状部335と一体に形成され、この環状部335から上記所定の方向に延びている。従って、例えば弁体固定部32をある程度以上剛性の高い材料から構成することにより、流路に発生した渦等に起因して弁体固定部32の軸が曲がることを防止し、弁体33と弁座31とが摺動する可能性を低減することが可能である。この場合、弁体固定部32に使用される材料の剛性は、少なくとも弁体33に使用される材料の剛性より大きい。
【0037】
[その他の構成例]
図3に示した例においては、弁体固定部材32の螺合部322を雄ねじとし、弁体33の螺合部332を雌ねじとした。しかしながら、例えば、図4に示す通り、弁体固定部材32´の螺合部322´を雄ねじとし、弁体33´の螺合部332´(固定部)を雌ねじとしても良い。尚、図4に示した吐出弁19b´は、その他の点においては、図3に示した吐出弁19bと同様に構成されている。
【0038】
また、弁座と弁体との摺動を防止すると言う意味では、吸込弁及び吐出弁を、それぞれ図5及び図6に示す通りに構成することも考えられる。図5は、他の構成例に係る吸込弁18b´´の断面図である。図6は、他の構成例に係る吐出弁19b´´の断面図である。尚、図5及び図6に示す例においても、吸込弁及び吐出弁以外の構成は、図1を参照して説明した構成と同様に構成されている。
【0039】
図5に示す通り、他の構成例に係る吸込弁18b´´は、ポンプヘッド1を弁座として機能する弁体42と、可撓性の材料からなり、弁体42の一部をポンプヘッド1に対して移動可能に保持する弁体保持部材41とを備える。弁体保持部材41は、略円筒状に形成されており、一端の外周部分にポンプヘッド1との連結部(雄ねじ)411を、他端の内周部分に弁体42との連結部(雌ねじ)413を、これら連結部の間の部分に蛇腹部412を備えている。
【0040】
また、図5に示す通り、弁体42は、弁体保持部材41の連結部413からポンプヘッド1に向かって延びる略円柱状に構成されている。また、弁体42は、一端の外周部分に弁体保持部材41との連結部(雄ねじ)421を、他端にポンプヘッド1との当接部分423を有している。図5に示す通り、弁体42の半径は、ポンプヘッド1との当接部分423において、流路に逆行する方向に向かって徐々に減少する。また、弁体42には、弁体保持部材41と弁体42との間の空間43とポンプ室5bとに連通する流路422が形成されている。
【0041】
図6に示す通り、他の構成例に係る吐出弁19b´´は、ポンプヘッド1に螺合され、ポンプヘッド1からポンプ室5bに突出する弁座51と、ポンプヘッド1及び弁座51とによって係止され、弁座51及びポンプヘッド1によって仕切られる空間53に突出する弁体52とを備える。弁座51は、略有底円筒状に形成されている。また、弁座51の一端の外周部分には螺合部(雄ねじ)511が形成され、この螺合部511によってポンプヘッド1の雌ねじに螺合されている。更に、弁座51の底部には、弁座51及びポンプヘッド1によって仕切られる空間53と、ポンプ室5bとに連通する流路512が形成されている。更に、弁座51には、弁体52との当接部分513が設けられている。この当接部分513は、流路512と弁座51の底部との境界部分に位置する。
【0042】
図6に示す通り、弁体52は、可撓性の材質から構成され、弁座51と軸の位置が一致する略有底円筒状に形成されている。また、弁体52は、一端にポンプヘッド1及び弁座51によって係止される被係止部521を、他端に位置する底部523に弁座51と当接する当接部525を有している。また、弁体52は、被係止部521及び当接部525の間の部分に、蛇腹部522を有している。弁体52の底部523には、弁体52内の空間54と、弁座51及びポンプヘッド1によって仕切られる空間53とに連通する流路524が形成されている。また、底部523の半径は、弁座51との当接部525において、流路に逆行する方向に向かって徐々に減少する。
【0043】
また、本発明は、ポンプ室内に摺動部分を有しない容積ポンプであれば、ベローズポンプ以外のポンプに適用することも可能である。このような容積ポンプとしては、例えば、ダイアフラムポンプが挙げられる。
【符号の説明】
【0044】
1…ポンプヘッド、2a,2b…シリンダ、3a,3b…ベローズ、5a,5b…ポンプ室、6a,6b…作動室、11a,11b…連結シャフト、16…吸込口、17…吐出口、18a,18b…吸込弁、19a,19b…吐出弁、21,31…弁座、22,33…弁体、222,331…弁部。
【要約】
容積ポンプは、ベローズを伸縮させることによって移送流体を移送する容積ポンプである。この容積ポンプは、伸縮可能に配置され、内部にポンプ室を形成する有底円筒状のベローズと、ポンプ室の吸込側に設けられてポンプ室に移送流体を導く吸込バルブと、ポンプ室の吐出側に設けられてポンプ室から移送流体を吐出する吐出バルブとを備える。また、吸込バルブ及び吐出バルブは、それぞれ、弁座と弁体とを備える。弁体は、可撓性の材質からなり、弁座との位置関係が固定された固定部と、固定部から弁座に向かう方向及び移送流体が移動する方向の間の所定の方向に延びる弁部を有する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6