(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ブラケット本体が、前記ブラケットベースから取外し可能に分離することのできる複数のブラケット本体形態を含み、前記各ブラケット本体形態が取外し可能に分離された後、前記ブラケットベースに再装着される間、前記ブラケットベースが患者の歯に装着されたままである、請求項2に記載の歯科矯正ブラケット。
前記ブラケット本体の前記前側接合面に移動可能に担持され、前記ブラケット本体の前記前側接合面によって画定される前記開口を選択的に閉鎖するゲートをさらに備える、請求項3に記載の歯科矯正ブラケット。
前記横断アーチワイヤスロットが垂直面と水平面の両方において可動であり、中央領域を有し、垂直面または水平面のいずれかにおける前記アーチワイヤスロットの回転が、前記アーチワイヤスロットの前記中央領域を中心に略維持される、請求項3に記載の歯科矯正ブラケット。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の好適な実施形態は、以下の添付図面を参照して説明する。
【
図1】本発明の歯科矯正ブラケットの1形態を示す側立面斜視図である。
【
図1A】各次の移動を示す患者の歯の簡略図である。
【
図2】
図1の線2−2に沿った
図1に示す歯科矯正ブラケットの第1の形態を示す縦横断面図である。
【
図3】ゲート下の構造を示すためにゲートを取り除いた、
図1に示す歯科矯正ブラケットの第1の形態を示す前側立面図である。
【
図4】
図1に示す歯科矯正ブラケットの第1の形態の特徴を成すブラケット本体を示す分解斜視側立面図である。
【
図5】
図1に最も詳しく示す歯科矯正ブラケットの第1の形態において有用なブラケットベースを示す分解斜視拡大側立面図である。
【
図6】本願の歯科矯正ブラケットのいくつかの形態において有用なブラケット本体インサートを示す側立面斜視図である。
【
図7】本発明の歯科矯正ブラケットの第2の形態を示す前面側立面図である。
【
図8】
図7に示す歯科矯正ブラケットの第2の形態を示す近心側立面図である。
【
図9】ゲート下の構造を示すためにゲートを取り除いた、歯科矯正ブラケットの第2の形態を示す前側立面図である。
【
図10】本発明の歯科矯正ブラケットの第2の形態において有用なブラケットベースを示す斜視拡大上平面図である。
【
図11A】本発明の歯科矯正ブラケットの第2の形態において有用なブラケット本体インサートを示す端面図である。
【
図11B】本発明の歯科矯正ブラケットの第2の形態において有用なブラケット本体インサートの1つの可能な形態を示す側立面図である。
【
図11C】本発明の歯科矯正ブラケットの第2の形態において有用なブラケット本体インサートのさらに別の形態を示す端面図である。
【
図11D】上記の歯科矯正ブラケットの第2の形態において有用なブラケット本体インサートのさらに別の形態を示す側立面図である。
【
図12】ゲート下の構造を示すためにゲートを取り除いた、本発明の歯科矯正ブラケットのさらに別の第3の形態を示す前側立面図である。
【
図13A】本発明の第3の形態で採用される際に有用なブラケット本体インサートを示す端面図、側立面図、斜視図である。
【
図13B】本発明の第3の形態で採用される際に有用なブラケット本体インサートを示す端面図、側立面図、斜視図である。
【
図13C】本発明の第3の形態で採用される際に有用なブラケット本体インサートを示す端面図、側立面図、斜視図である。
【
図14】ブラケット本体インサートが第1の配向にある本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態を示す近心側立面図である。
【
図15】ブラケット本体インサートが第2の動作配向にある本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態を示す第2の近心側立面図である。
【
図16】さらに別の動作配向にある本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態を示す近心側立面図である。
【
図17】本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態において有用なブラケット本体を示す側立面斜視図である。
【
図18】本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態の特徴であるアーチワイヤインサートを示す側立面斜視図である。
【
図19A】本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態で使用される際に有用なブラケット本体インサートの個々の形態を示す側立面図である。
【
図19B】本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態で使用される際に有用なブラケット本体インサートの個々の形態を示す側立面図である。
【
図19C】本発明の歯科矯正ブラケットの第4の形態で使用される際に有用なブラケット本体インサートの個々の形態を示す側立面図である。
【
図20A】本発明の各種形態において有用なブラケット本体インサートを示す図である。
【
図20B】本発明の各種形態において有用なブラケット本体インサートを示す図である。
【
図20C】本発明の各種形態において有用なブラケット本体インサートを示す図である。
【
図20D】本発明の各種形態において有用なブラケット本体インサートを示す図である。
【
図21】本発明の歯科矯正ブラケットのさらに別の形態を示す近心側立面図である。
【
図22】本発明の別の形態において有用なブラケットベースを示す拡大斜視図である。
【
図23】本発明の歯科矯正ブラケットのさらに別の形態を示す拡大側立面図である。
【
図24】本発明の1形態の特徴を成すブラケット本体の側立面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な形態を取る本発明は、
図1以降では全体を参照符号1で示す。本願および説明する本発明のいくつかの形態の目的上、以降では、本発明の各種形態は
図1Aに示す患者の歯11、特にその前側接合面12に取外し可能に装着されると理解すべきである。歯科矯正ブラケット10は各種形態で、後述するようにアーチワイヤとの組み合わせで、以降では、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数の選択的トルクエクスプレッションを提供するために採用される。本特許出願の目的上、以降使用する「トルクエクスプレッション」という用語は、患者の歯11を近心/遠心方向であるX軸を中心に回転させる力として定義される。具体的には、本発明の歯科矯正ブラケット10を採用して、
図1Aに示すように、歯科矯正治療期間中に矩形アーチワイヤの臨床上所定の操作、屈曲、捻り、またはその他の回転、あるいは同じアーチワイヤの頻繁な交換を行わずに1次移動13、2次移動14、3次移動15を達成することができる。さらに、本願で後述するように、患者の歯から、後述するように、ブラケットベースを取り外さずに患者の治療を完了まで進めることができるが、治療する臨床医の臨床判断に基づきブラケットベースに取外し可能に搭載されるブラケット本体を治療期間中に他のブラケット本体と交換することもできる。本発明10は、後述するように臨床医がブラケット本体インサートを利用することによって、後述するようなアーチワイヤスロットの断面寸法を容易に調節して患者の歯の1次、2次、3次移動を達成できる新規の手段を提供することによって、患者治療期間を大幅に短縮すると共に、優れた治療結果をもたらし、従来技術の装置または既知の手順では不可能であったように患者の快適度を高めることができる。
【0015】
本発明の第1の形態
本願で先述したように、歯の移動は空間の3平面で定義される。これに関し、これらの各面での移動は、
図1Aに示すように1次移動13、2次移動14、3次移動15に分類される。1次移動13は一般的に回転および/またはインアウト移動とみなされる。これは咬合側から見ることのできる移動を指す。一方、2次移動は傾斜移動と称されることが多く、頬舌または唇舌側から見ることができる。これは、咬合−歯肉方向への移動または頬舌または唇舌軸を中心とした傾斜移動を含むことができる。概して、上記軸を中心とした回転は、患者の歯11の歯根または歯冠の近心または遠心方向への傾斜移動を引き起こす。このような2次移動は、それぞれの歯11の歯根を平行にする、ならびに所与の歯を上昇または降下させるために利用される。最後に、「トルク」として一般的に捉えられる3次移動15は、近心−遠心側面または頬舌側断面から見ることができる。通常、3次移動は近心−遠心軸を中心にした移動を指す。この特別な移動は、適切な切歯あるいは唇舌または頬舌傾斜を達成しようとする際に重要となることが多い。1次、2時、3次移動は
図1Aに最も詳しく示しており、参照符号13、14、15をそれぞれ付す。
図1〜6では、本発明の第1の形態は概して参照符号20で示される。本発明の第1の形態20は、概して参照符号21で示し、パッド22を含むブラケットベースを含む。パッド22は患者の歯11の前側接合面12に、図示しない接着剤を用いて適切に装着される。ブラケットベースは周縁23をさらに含み、前側または外側接合面24と反対側の後側接合面25とによってさらに画定され、患者の歯11の前側接合面12に図示しない接着剤によって装着される。上述したように、このブラケットベースは通常、治療中ずっと患者の歯に固定されたままである。
【0016】
次に
図5を参照すると、本発明の第1の形態20、より具体的にはブラケットベース21の前側接合面24は、概して参照符号30で示される連結部または連結領域を含む。連結部または連結領域30は、
図5では略凹状の湾曲蟻継ぎスロット31によって部分的に画定される。しかしながら、本発明の形態は凹状蟻継ぎスロットとして図示されているが、湾曲蟻継ぎスロット31が凸状湾曲形状を呈するように本発明の形態を加工することも実行可能である。したがって、本発明は図示されるものに限定されるべきではない。よって、凸状または凹状のいずれの湾曲蟻継ぎスロットも本発明の製造の際に等価に採用することができると理解される。上述の連結部は後述するように、ブラケットベースを様々なブラケット本体と共に使用される「万能」ベースとする。図示する構成では、ブラケットベース21には、パッシブライゲーション(passive ligation)、アクティブライゲーション、または従来の連結ブラケットであるブラケット本体を採用することができる。この特徴に鑑み、臨床医は、歯科矯正ブラケットの取外しまたは交換の際にブラケットベースを取り外す必要がない。それどころか、臨床医は単にブラケット本体を連結部30から外して、別のブラケット本体を再装着するだけでよい。ブラケットベースは常時歯にとどめることができる。この特徴は歯科矯正手法を大きく前進させ、患者にとって歯科矯正治療計画をより快適なものにする。湾曲蟻継ぎスロット31は、相互に間隔をおいて配置される側壁32によって部分的に画定される。また、連結部30は、33Aおよび33Bとしてそれぞれ示される対向側面を有する中央隆起領域33によって部分的に画定され、中央隆起領域は湾曲蟻継ぎスロット31の対向側面に位置する。中央隆起領域33Aおよび33Bはそれぞれ湾曲蟻継ぎスロット31と同じ曲率の湾曲上側接合面34を有する。各中央隆起領域33はより詳細に後述するように、可動ブラケットベースを摺動可能かつ噛合可能に捕捉し協働するための手段である、内方に延在するフランジ部35を含む。また、概して参照符号36で示される多数の嵌合領域が、各中央隆起領域33に形成され、湾曲上側接合面34を下方に延在する。嵌合領域は以下の段落でより詳細に後述するように、ブラケット本体インサートを収容し協働する。なお、
図5では、多数の嵌合領域36が所定の空間パターンで配置されており、以下でも説明するようにブラケット本体を調節可能に回転自在に配向する簡便な手段を提供する。
【0017】
図1〜6に示す歯科矯正ブラケット20は、ブラケットベース21に担持される可動ブラケット本体40を有する。これに関し、ブラケット本体40は、前側接合面42と反対側の後側接合面43とによって部分的に画定される本体41を有する。さらに、ブラケット本体は、相互に所定の距離をおいて対向する第1の(近心)側面44と第2の側面(遠心)45によって画定される。ブラケット本体40は上側接合面46と反対側の下側接合面47をさらに含む。上側接合面46と下側接合面47は、当該技術において十分に既知なタイウィング(tie wing)をそれぞれ画定する。
図1〜6に示すように、ブラケット本体40は、概して参照符号50で示され、当該技術において十分に既知な可動ゲートを搭載する。可動ゲート50は、第1の下または開放位置52と第2の上または閉鎖位置53(
図1に示す)との間の移動経路51に沿って往復移動するように動作可能である。ブラケット本体40の前側接合面42と移動可能に協働するゲート50は後述するように、概して参照符号60で示す横断アーチワイヤスロット内にアーチワイヤを選択的に保持するように動作可能である。横断アーチワイヤスロット60はブラケット本体40の第1の近心側面44に隣接する第1の端部61と、第2の側面45に隣接する反対側の第2の遠心端62とを有する。アーチワイヤスロット60は、上側接合面63と反対側の下側接合面64によって少なくとも部分的に画定される。アーチワイヤスロット60を部分的に画定する上面と下面は略平行に相互に間隔をおいて配置される。所与の距離をおくことで、アーチワイヤスロット60は後述するようにアーチワイヤを収容することができる。さらに、本体41は上面63と下面64との間を延在する支持壁65(
図2)を画定するが、より詳細に後述するように、結果として生じるアーチワイヤスロット60は画定していない。アーチワイヤスロット60は参照符号65で示す中央領域または中央部を有する。アーチワイヤスロット60は後述するように、垂直面と水平面の両方において可動である。この垂直面と水平面のいずれかにおけるアーチワイヤスロットの回転は、アーチワイヤスロット60の中央領域66を中心として維持される。本発明のこの特徴は、本発明を採用する臨床医に大きな利点と恩恵をもたらす。図示する構造では、より詳細に後述するように、アーチワイヤスロット60がブラケット本体インサートによって可変となる所定の断面寸法を有し、より詳細に後述するように、本願で上述した多数の利点を達成すると理解すべきである。これは、我々の同時係属米国特許出願第13/745,638号に記載される構造と全く異なり、このようなアーチワイヤスロットの移動と寸法に関する特徴は同出願には開示されていない。
【0018】
説明する歯科矯正ブラケット10、より具体的には第1の形態20は後側接合面43を有するブラケット本体40を含み、後側接合面43は、ブラケットベース21の連結部30と噛合し移動可能に嵌合する補完的な略均一湾曲面を有する。上述したように、ブラケットベース21の連結部30は所定の形状および寸法を有する湾曲蟻継ぎスロット31を画定し、ブラケット本体40は補完的な均一湾曲面80と、
図4に示すようにブラケットベースの連結部と移動可能に嵌合する可動噛合構造とをさらに含む。後側接合面43を形成するこの補完的な略均一湾曲面80は、中央隆起領域33の湾曲上側接合面34と移動可能に協働して、連結部30の特徴を成す。ブラケット本体40は湾曲雄ピン部材81も含み、ブラケット本体40の略均一湾曲面後側接合面80と一体化され、ブラケットベース21に形成される湾曲蟻継ぎスロット31内に補完的に摺動可能かつ嵌合可能に収容される寸法の構造を形成する。この特徴は、様々なブラケット本体がブラケットベース21と噛合し協働するように設計される手段を提供する。当然ながら、これによりブラケットベースは歯科矯正治療中ずっと歯11に装着されたままである。認識されるように、ブラケットベース21に対するブラケット本体40の回転は、ブラケットベース21に形成される湾曲蟻継ぎスロット31に沿って雄ピン部材81を移動させる際に有効である。雄ピン部材81は、中央支持ポストまたはシャフト領域83を含む本体82によって画定され、フランジ部35間に画定され、中央隆起領域33を形成する空間に位置する、あるいはその他の形で収容される。中央支持部またはシャフト83は遠心端84を有する。遠心端84は、拡張された横断配置フランジ部85と一体化される。フランジ部85の幅寸法は、湾曲蟻継ぎスロット31の一部を個別に形成する側壁32間で測定される距離未満である。さらに、この同じフランジ部85の厚さ寸法は、フランジ部35と湾曲蟻継ぎスロット31との間で測定される距離未満である。湾曲構造において、拡張フランジ85は、湾曲蟻継ぎスロット31に設けられるものと同様の曲率の補完湾曲面86を有する。寸法上、雄ピン部材81は湾曲蟻継ぎスロット31に嵌合し、あるいはその他の形で協働して湾曲蟻継ぎスロット31に沿って摺動することによって、ブラケット本体40を湾曲蟻継ぎスロット31内で回転自在とする。また、この特徴は、治療する医師の所望する臨床状のいくつかの追加の利点を実現するために、ブラケット本体をブラケットベースから容易に脱離させ、他の形状のブラケットベースと交換することができる手段を提供する。ブラケットベース21が患者の歯11に適切に装着されると、横断アーチワイヤスロット60はブラケット本体40に対して縦方向に配向される。本発明の構成により、横断アーチワイヤスロット60の縦方向の配向に大きな影響を及ぼさずに、1次移動13、2次移動14、3次移動15として示される個々のトルクエクスプレッションを容易に調節することができる。これは
図2に最も詳しく示される。ブラケットベース21に対するブラケット本体40の回転は、異なるトルクエクスプレッションが患者の歯11の移動のために提供されている間、横断アーチワイヤスロットを縦方向に調節しない。そのため、上記の特徴は従来技術を大きく前進させる。これが、同時係属出願第13/745,638号に開示する我々の前の発明から大幅に進歩した点である。
【0019】
図示するように、歯科矯正ブラケット10、特に本発明の第1の形態20は、アーチワイヤスロット60内に収容されるアーチワイヤ90を収容する。アーチワイヤ90は従来設計のものであり、対向する上面91と下面92および上面と下面を接続する側壁93によって画定され、略矩形状断面を成す。図示する構成では、アーチワイヤ90は横断アーチワイヤスロット60内に収容され、ブラケット本体40はアーチワイヤ90との組み合わせで機能し、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数の選択的トルクエクスプレッション13〜15を提供するように水平面と垂直面の両方において調節可能である。本発明20は、
図6に最も詳しく示され、アーチワイヤ90がアーチワイヤスロット60に収容される前にアーチワイヤスロット60に収容されるブラケット本体インサート100を含む。ブラケット本体インサート100は第1の端部101と反対側の第2の端部102とを有する。ブラケット本体インサートは、上側接合面104と反対側の下側接合面105とによって画定される細長本体103をさらに有する。さらに、本体103はアーチワイヤスロット60の後壁を成す前側接合面106と、ブラケット本体40によって画定される支持壁65に併置する反対側の後側接合面107とによってさらに画定される。ブラケット本体インサート100の上面104と下面105との間で測定される高さ寸法は、アーチワイヤスロット60を部分的に形成する上面63と下面64との間で測定される距離未満である。本体103の高さにより、本体103をアーチワイヤスロット60内に収容し、さらにブラケット本体40によって形成される支持壁65と噛み合せることができる。なお、ブラケット本体インサート100の本体103は、前側接合面106と後側接合面107の間で測定される略一定の厚さを有することができる、あるいは可変寸法を有することができる。そのため、ブラケット本体インサート100は、結果として生じるアーチワイヤスロット60の断面寸法を選択的に調節する簡便な手段を提供することで、本発明の利点、特に、横断アーチワイヤスロット60に収容されるアーチワイヤ90の臨床上所定の操作を行わずに患者の歯11の1次、2次、3次移動を達成する歯科矯正ブラケット10を提供することができる。
【0020】
ブラケット本体100は、ブラケット本体インサート100の第1の端部101と第2の端部102にそれぞれ位置する第1の嵌合部111と第2の嵌合部112をさらに含む。具体的には、第1の嵌合部111と第2の嵌合部112はブラケット本体40の第1の側面44と第2の側面45を超えて外方に延在し、臨床医(図示せず)が容易にブラケット本体インサート100を視覚的に識別できる簡便な手段を提供することによって、より詳細に後述するようにブラケット本体インサート100を適切に位置決めする、あるいはその他の方法で調節することができる。嵌合部111、112はそれぞれ外側接合面113を有し、外側接合面113には、ブラケット本体インサート100をアーチワイヤスロット60から簡便に取り外すために、臨床医がピンセットなどのツールを挿入できる窪みまたは空隙114が形成される。
図6に最も詳しく示されるように、ブラケット本体インサート100は、ブラケット本体の第1の端部101に対して垂直下方に延在する第1の嵌合部材115も含む。第1の嵌合部材は、ブラケット本体40の第1の側面44に形成される第1の通路71に摺動可能に収容されるような寸法に設定される。さらに、ブラケット本体インサート100は第2の嵌合部材116を含み、第2の嵌合部材は第1の嵌合部材115よりも長さが短く、ブラケット本体40の第2の側面45に形成される第2の通路72に収容される。第1の嵌合部材115は、ブラケットベース21に形成される多数の嵌合領域36のうちの1つに噛合して収容されるように動作可能な遠心端117を有する。認識されるように、ブラケット本体インサート100の本体103がアーチワイヤスロット60内に適切に挿入されると、嵌合部材115の遠心端117は多数の嵌合領域36のうちの1つに収容されることによって、ブラケットベース22に対して適切な回転自在な配向でブラケット本体40を確実に回転自在に位置決めするのに有効である。さらに、後の図面(
図19A〜19C)から分かるように、ブラケット本体インサートの本体103は様々な厚さ寸法で製造することができるため、歯科矯正ブラケット20に断面寸法が可変のアーチワイヤスロット60を設ける手段を提供して、本発明の利点をもたらすことができる。さらに、アーチワイヤスロット60内での本体103の方向を逆転させることによって、同じブラケット本体インサート100をブラケットベース21に対する5つの可能な角度配向でブラケット本体40を適切に位置決めし、同じ歯科矯正ブラケット20を採用する臨床医に多数の治療オプションを提供して患者の歯11の調整不良を矯正することができると理解される。
【0021】
したがって、最も広い側面では、本発明10は、第1の形態20において患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されるブラケットベース21を含む歯科矯正ブラケットに関する。また、本発明は、ブラケットベース21に担持され、前側接合面42を有するブラケット本体40を含み、ブラケット本体は、対向する第1の端部61と第2の端部62とを有する横断アーチワイヤスロット60を画定する。アーチワイヤスロット60は選択的に調節可能な断面寸法を有する。本発明20は、横断アーチワイヤスロット60に収容されるアーチワイヤ90をさらに含む。アーチワイヤ90との組み合わせで機能するブラケット本体40は、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数の選択的トルクエクスプレッションを提供するように、水平面と垂直面の両方において調節可能である。上述したような垂直面と水平面のいずれかにおけるアーチワイヤスロットの移動は、中央領域66を略中心として実行される。このようにして、歯科矯正ブラケット20を採用して、横断アーチワイヤスロット60に収容されるアーチワイヤ90の臨床上所定の操作を行わずに、患者の歯11の1次移動13、2次移動14、3次移動15を達成することができる。図面から分かるように、また上述したように、横断アーチワイヤスロット60はブラケット本体40に対して垂直方向に配向される。上述したそれぞれのトルクエクスプレッションは、ブラケットベース21に対する横断アーチワイヤスロット60の垂直方向の配向に有意に影響を及ぼす、あるいは変更することなく容易に調節することができる。言い換えると、ブラケット本体40の回転軸は中央部66周辺である。この場合も、移動は治療する臨床医にとって大きな利点となる。
【0022】
図示するように、本発明の第1の形態20では、ブラケット本体40は、ブラケットベース21が患者の歯11の前側接合面12に搭載されるとき、所与の移動軸方向、ここでは垂直方向にブラケットベース21に対して部分的に回転自在に可動に示されている。本発明の第1の形態20では、アーチワイヤスロット60はブラケット本体40に対して配向を固定されて配置される。これは後述する本発明の第2の形態とは全く異なり、第2の形態では後述するようにアーチワイヤスロットがブラケット本体に対して選択的に可動に調節可能である。上述したように、アーチワイヤスロット60の断面寸法は、所定の間隔をおいて対向する上面63と下面64および、アーチワイヤスロット60の上面63と下面64との間を延在する後壁106によって画定される。後壁106はブラケット本体インサート100によって画定される。後壁106は、上記アーチワイヤスロット60に選択的断面寸法を提供するように、間隔をおいて配置された上面63と下面64に対して選択的に可動に調節可能である。本発明では、アーチワイヤスロット60の断面寸法は、第1の端部61と第2の端部62の間を延在する方向で測定される場合に略均一とすることができる。しかしながら、本発明の別の形態では、アーチワイヤスロットの断面寸法は、アーチワイヤスロット60の第1の端部61と第2の端部62間を延在する方向で測定される場合に非均一としてもよい。
【0023】
本発明の第1の形態20に示される歯科矯正ブラケット10は、横断アーチワイヤスロット60内に取外し可能に収容され、上述したようにアーチワイヤスロット60の一部を少なくとも部分的に形成する本体103を有するブラケット本体インサート100を含む。ブラケット本体インサート100の本体103は、ブラケットベース21に対してブラケット本体40の回転自在な配向を略調節可能に固定する。開示する本発明の形態では、アーチワイヤスロット60の一部を成すブラケット本体インサート100の本体103は均一な寸法を有する。しかしながら、上述したように、アーチワイヤスロット60の一部を成すブラケット本体インサート100の本体103は非均一な寸法を有していてもよい。ブラケット本体インサート100の本体103の寸法の変更は、アーチワイヤスロット60の断面寸法を変更する簡便な手段を提供する。この寸法変更により、臨床医は患者の歯11のいずれかの次の移動を簡易化するようにアーチワイヤを水平移動させることができる。図示する本発明の形態20では、ブラケットベース21は、ブラケットベース21に所定の空間パターンで形成される多数の嵌合領域36をさらに含む。ブラケット本体インサート100は遠心端117を有し、ブラケットベース21に形成される多数の嵌合領域36のうちの1つに収容されるように動作可能な嵌合部材115を有する。嵌合部材115の遠心端117を嵌合領域36のうちの1つに収容することによって、ブラケットベース21に対するブラケット本体40の回転自在な配向が解除可能に固定される。
【0024】
より具体的には、本発明の第1の形態は、患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されるブラケットベース21と、ブラケットベース21と移動可能に協働するブラケット本体40とを有する歯科矯正ブラケット20とを含む。ブラケット本体40は前側接合面42を有し、前側接合面42は、ブラケット本体40の前側接合面と連通する横断アーチワイヤスロット60を少なくとも部分的に画定する。本発明の第1の形態では、横断アーチワイヤスロット60内に取外し可能に収容され、横断アーチワイヤスロット60の一部を少なくとも部分的に形成するブラケット本体インサート100が提供される。さらに、ブラケット本体インサート100は、ブラケットベース21に対する可動ブラケット本体40の配向を選択的に調節可能に固定する。本発明の第1の形態では、アーチワイヤ90は横断アーチワイヤスロット60に収容される。可動ブラケット本体40はブラケット本体インサート100との組み合わせで機能し、アーチワイヤ90と嵌合することで、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数のトルクエクスプレッションを提供して1次移動13、2次移動14、3次移動15を生じさせる。これらの1次、2次、3次移動は通常、同じアーチワイヤ90を利用することによって達成される。上述したように、横断アーチワイヤスロット60は断面寸法を有し、ブラケット本体インサート100は臨床医がこのような患者の歯11に移動を付与できるように横断アーチワイヤスロット60の断面寸法を選択的に調節するように動作可能である。
【0025】
上述したように、ブラケット本体40はブラケット本体40に対する横断アーチワイヤスロット60の垂直方向の配向にほぼ影響を及ぼさずに、ブラケットベース21に対する約60度未満の移動範囲で所定の移動経路に沿って選択的に回転自在である。歯科矯正ブラケット20は、ブラケットベース21に所定の空間パターンで形成される多数の嵌合領域36を有するブラケットベース21を設ける一方、ブラケット本体40と噛合し協働する連結部30をさらに設けることによってこの動作特徴を達成する。ブラケット本体40は、ブラケットベース21の連結部30と噛合し移動可能に嵌合する後側接合面43をさらに有する。ブラケットベース21の連結部30は所定の略均一な曲率を有し、ブラケット本体40の後側接合面43は、ブラケットベースの連結部30と噛合し移動可能に嵌合する構造を形成する補完的な略均一湾曲面80を有する。図示する構成では、ブラケットベース21の連結部30は所定の形状および寸法の湾曲蟻継ぎスロット31を画定する。湾曲雄ピン部材81が設けられ、ブラケット本体40の略均一湾曲面後側接合面43と一体化される。湾曲雄ピン部材81は、ブラケットベース21に形成される湾曲蟻継ぎスロット31に補完的に摺動可能かつ嵌合可能に収容される寸法に設定される。ブラケットベース21に対するブラケット本体40のその後の回転は、ブラケットベース21に形成される湾曲蟻継ぎスロット31に沿って雄ピン部材81を移動させる際に有効である。本願で上に開示したように、上述したこれらの湾曲面と構造は位置を逆にしても本発明の同じ利点を達成できると理解すべきである。
【0026】
図面から分かるように、ブラケットベース21に形成される嵌合領域36は、連結部30の一方の側面または両方の側面に配置される。さらに、本発明の別の形態では、嵌合領域36はブラケットベース21の連結部30に直接形成することができる。本発明の1形態では、横断アーチワイヤスロット60は上に開示した上面63と下面64とによって部分的に画定される。さらに、ブラケット本体インサート100は、アーチワイヤスロット60内に適合するような寸法の細長本体103を有する。上に開示したように、ブラケット本体インサートの本体103は横断アーチワイヤスロット60の後壁106を成す前側接合面を有し、アーチワイヤスロット60の上面63と下面64の間を延在する。ブラケット本体インサート100の本体103の厚さ寸法は、横断アーチワイヤスロット60に選択的な所定の断面寸法を持たせるように選択的に可変である。したがって、アーチワイヤ90が横断アーチワイヤスロット60に収容されると、臨床医は容易に特定の患者の歯11に1次、2次、3次移動を実行させることによって、これまでなかった臨床上の利点を提供することができる。
【0027】
本発明の第2の形態
本発明の第2の形態は
図7〜11に最も詳しく示される。本発明の第2の形態は大部分が本発明の第1の形態20と同じように働く。具体的には、本発明の第2の形態120は周縁123を有するパッド122から成るブラケットベース121を含み、ブラケットベースは前側接合面124と反対側の後側接合面125とをさらに有し、患者の歯11の前側接合面12に接着される。本発明の第2の形態120は
図10に最も詳しく示される連結部130を含む。ここでも、前側接合面124と一体化される連結部130は湾曲蟻継ぎスロット131を画定する。湾曲蟻継ぎスロット131は、概して参照符号132で示される傾斜側壁によって部分的に画定される。湾曲蟻継ぎスロット131は
図10に最も詳しく示されるように断面を見るとやや切頭状である。連結部130は、後述するようにブラケット本体と噛合し協働するように動作可能な湾曲上側接合面133を含む。さらに、
図10に示すように、多数の嵌合領域134が連結部130の湾曲上側接合面133に形成され、本発明の第1の形態20と同様に働く。ただし、これらの嵌合領域はブラケットベースの近心側または遠心側からアクセス不能であることに留意すべきである。
【0028】
本発明の第2の形態120は、上述したブラケット本体と類似のブラケット本体140を含む。ブラケット本体140はブラケットベース121によって移動可能に担持され、前側接合面142と反対側の後側接合面143とを有する本体141をさらに有する。また、ブラケット本体140は第1の近心側面144と反対側の第2の遠心側面145とを有する。ここでも、ブラケット本体は上側接合面146と下側接合面147を有する。また、上述したように、本発明の第2の形態は、ブラケット本体140によって部分的に画定されるアーチワイヤスロット160を選択的に閉鎖するために、所与の移動経路に沿って往復するように動作可能な可動ゲート150を有する。アーチワイヤスロットは対向する第1の端部161と第2の端部162、および上面163と下面164を有する。上面と下面は相互に所定の間隔をおいて略平行に配置される。さらに、本体141は上面と下面間を延在し、ブラケット本体の本体141内に配置される支持壁165を画定する。また、アーチワイヤスロットは中央部または中央領域166を有する。アーチワイヤスロット160の端には個々の通路170が位置し、通路は図面では第1の通路171と第2の通路172として示され、それぞれブラケット本体140に対して後方および内方に延在する。第1および第2の通路はそれぞれ後述するようにブラケット本体インサートの一部と少なくとも部分的に噛合し協働するように動作可能である。ここでも、本発明の第1の形態20と同様、第2の形態120は、概して参照符号180で示される補完的で略均一な湾曲後側接合面を有する。さらに、本発明の第1の形態20に関して上述したものと類似の雄ピン部材181が後面180と一体化される。したがって、構造に関する詳細な説明は行わない。雄ピン部材181は、ブラケットベース121の連結部130内によって画定される湾曲蟻継ぎスロット131内に嵌合し摺動可能に収容されるように動作可能な補完的湾曲面182を有する。ここでも、アーチワイヤスロット160は従来設計のアーチワイヤ190を収容するように動作可能である。また、本発明の第2の形態120は、概して参照符号200で示され、アーチワイヤ190が挿入される前にアーチワイヤスロット160に収容されるブラケット本体インサートを有する。ブラケット本体インサートは対向する第1の端部201と第2の端部202とを有する。後述するように、ブラケット本体インサート200とブラケット本体インサート100とを比較すると、ブラケット本体インサート200の本体203の長さ寸法は、第1の端部201と第2の端部202がブラケット本体140の近心面144および遠心面145と略面一または同一平面となるようにアーチワイヤスロット160の長を超えないことが分かる。したがって、本発明のこの形態では、ブラケット本体インサート200はブラケット本体140との組み合わせで機能し、歯科矯正ブラケット10が患者の歯11の前側接合面12に搭載されると、より審美上魅力的な外観を呈する。図示するブラケット本体インサート200は上側接合面204と反対側の下側接合面205とを含む。上面204と下面205間で測定される距離は、アーチワイヤスロット160の上面163と下面164間で測定されるおよその寸法未満の高さを表す。ここでも、本発明の第1の形態20で説明したように、ブラケット本体インサート200の本体203はアーチワイヤスロット160の後壁を成す前側接合面206を含む。さらに、本体203は、ブラケット本体140の本体141によって画定される支持壁165と併置する後側接合面207を有する。ここでも、ブラケット本体インサートの第1の形態で説明したように、前側接合面206と後側接合面207の間で測定される相対的厚さ寸法は均一であっても可変であってもよい。ブラケット本体インサートの厚さ寸法の変動のため、結果として生じるアーチワイヤスロット160の断面寸法は可変である。この可変断面寸法により、臨床医は所与の患者の歯11に印加されるトルクカップルを容易に調節して、患者の歯科矯正治療計画のために予め決定される臨床上の目的を実現することができる。
【0029】
本発明の第2の形態120で使用されるブラケット本体インサート200は、第1の端部201に搭載され、第1の端部201に対して略垂直に配置される第1のより長い寸法の嵌合部材211を含む。また、ブラケット本体インサート200は第2の端部202に対して垂直下方に延在する第2の嵌合部材212を含む。第1および第2の嵌合部材は、アーチワイヤスロット160の端部に形成される個々の通路171、172内に摺動可能に収容される寸法に設定される。第1のより長い寸法の嵌合部材211は、ブラケットベース121の連結部130に形成される多数の嵌合領域134のうちの1つに取外し可能かつ噛合して収容されるように動作可能な遠心端213を有する。これら嵌合領域134のうちの1つに収容されると、ブラケット本体インサート200はブラケットベース121に対して可動ブラケット本体140を略取外し可能かつ回転自在に固定するように動作可能となり、上述したような歯科矯正の利点を達成する。この場合も、ブラケット本体インサート200の寸法は、患者の歯11に使用することのできる歯科矯正ブラケットを一層魅力的で審美的に好ましいものにする。
【0030】
本発明の第3の形態
本発明の第3の形態は全体を参照符号230で示し、
図12および13に最も詳しく示される。本発明の第3の形態230は、第1の形態と第2の形態とほぼ同様の構造と機能を有する。したがって、発明の本形態の理解を促進するため、本発明の第3の形態の各種特徴は添付図面に示していない。ただし、上に開示された構造は最終的な完成品には存在すると理解すべきである。本発明の第3の形態230は第1の形態20と第2の形態120に類似し、上述したものと同様の連結部を含むブラケットベースを有する。したがって、その構造については繰り返さない。
図12に示すように、本発明の第3の形態はブラケットベース(図示せず)上に担持される可動ブラケット本体240を含む。ブラケット本体240は、後述するようにアーチワイヤスロットを選択的に閉鎖する可動ゲート(図示せず)を含む。しかしながら、ゲートはその下の構造を示すために取り除いてある。ブラケット本体240は、
図12に示す前側接合面242を有する本体241を含む。ブラケット本体は第1の側面すなわち近心側面244と第2の側面すなわち遠心側面245も有する。ここでも、本体241は上側接合面246と反対側の下側接合面247とを有する。本体241は、上述したものと類似のアーチワイヤスロット260を部分的に画定する。アーチワイヤスロット260は対向する第1の端部261と第2の端部262を有し、上面263と下面264をそれぞれ画定する。ここでも上面と下面は、相互に略平行に間隔をおいた所定位置に配される。また、本体241は、上面263と下面264との間を延在する支持壁265を画定する。
図12に示すように、一対の通路266が支持壁265に形成され、ブラケット本体240の後側接合面と連通する。各通路266は、ブラケットベース(図示せず)に形成される多数の嵌合領域のうちの1つと略共軸に揃うように動作可能であり、後述するようにブラケット本体インサートを支持ブラケットベースと嵌合させることによって、本発明の第1の形態20と第2の形態120で説明したとおりブラケットベースに対して可動ブラケット本体240を取外し可能かつ回転自在に固定することができる。
図12にさらに示すように、個々の凹領域267が本体241に形成され、アーチワイヤスロット260の端部に配置される。さらに、アーチワイヤスロット260は中央部または中央領域268を有する。
【0031】
次に
図13A、13B、13Cを参照すると、本発明の第3の形態230がブラケット本体インサート300を含むことが分かる。ブラケット本体インサートは第1の端部301と第2の端部302を有する。図面から分かるように、また本発明の第2の形態120で上述したように、ブラケット本体インサート300の本体303の長さ寸法は、対向する第1の側面すなわち近心側面244と第2の側面すなわち遠心側面245との間で測定されるおよその距離未満である。したがって、本体303はアーチワイヤスロット260に収容され、その一部を成すが、通常ブラケット本体の対向側を超えては延在せず、歯科矯正ブラケット10にとって審美上魅力的な外観を提供する。ブラケット本体インサートは上側接合面304と下側接合面305をさらに有する。ここでも、本体303はアーチワイヤスロット260の後壁を形成する前側接合面306を有する。また、前側接合面306と反対側の後側接合面307との間で測定される本体303の厚さ寸法により、ブラケット本体インサート300がいったんアーチワイヤスロット260に収容されると、アーチワイヤスロットの断面寸法を簡便に調節可能に変更できる簡易な手段が提供される。これにより、臨床医がアーチワイヤに選択的トルクカップルを供給する簡便な手段が提供され、本願で上述したような患者にとって多くの臨床上の利点をもたらす。上述した本発明の他の形態と同様、ブラケット本体インサート300は、第1の端部301近傍の位置から垂直下方に延在する第1のより長い寸法の嵌合部材311を含む。第1のより長い寸法の嵌合部材311は、本体241の支持壁265に形成される通路266のうちの1つに収容される寸法に設定される。ブラケット本体インサート300は第2のより短い寸法の嵌合部材312をさらに有する。ここでも、この第2のより短い寸法の部材は第2の端部302近傍の位置に配されて、そこから垂直下方に延在する。第2のより短い寸法の嵌合部材は、上述したように通路266のうちの1つに収容される寸法に設定される。本発明のこの形態230では、ブラケット本体インサート300は、対向する第1の端部301と第2の端部302とから垂直下方に延在する個別の移動抑制部材313をさらに含む。個々の移動抑制部材は、ブラケット本体240の本体241に形成され、アーチワイヤスロット260の端部に位置する凹領域267に噛合して収容される寸法に設定される。図面から分かるように、個々の移動抑制部材313は内部に形成された空隙を有する。この空隙は、臨床医がピンセットなどのツールを使用してブラケット本体インサート300をブラケット本体240に強制的に嵌合させ、ブラケット本体240から取り外すことができる簡便な手段を提供する。認識されるように、本体303の厚さ寸法は、適切な歯科矯正治療に必要な様々なトルクカップルを提供するように変更することができる。さらに、ブラケット本体インサート300はブラケット本体から取り外して、方向を逆転させてアーチワイヤスロット260に再挿入することができるため、臨床医がブラケット本体インサートに患者の有効な歯科矯正治療にとって適したトルクカップルを達成させることができる簡便な手段を提供する。この特徴は、本特許出願に記載のすべてのブラケット本体インサートに共通する。
【0032】
本発明の第4の形態
本発明の第4の形態は概して参照符号400で示され、
図14〜19に最も詳しく示される。本発明の第4の形態では、歯科矯正ブラケット10は後述するように、本発明の他の形態20、120、230で上述したものと類似のブラケットベース401を含む。ブラケットベース401は前側接合面402と反対側の後側接合面403とを有し、患者の歯11の前側接合面12に適切に接着され、本願に記載する歯科矯正上の利点を達成する。ブラケットベースは周縁404によってさらに画定される。
図14等に示すように、本発明の第4の形態400は、ブラケットベース401に装着される、あるいは他の方法で一体化される固定ブラケット本体400を含む。ブラケット本体400はブラケットベース401と一体化される前側接合面411と反対側の後側接合面412とを有する。さらに、固定ブラケット本体は第1の側面すなわち近心側面413と反対側の遠心側面414とを有する。ここでも、ブラケット本体410は上側接合面415と反対側の下側接合面416とを含む。上側接合面と下側接合面は図面の1つに示すように適切なリガチャー(ligature)418が嵌合するように動作可能なタイウィング417を画定する。図示するリガチャーは、本発明を例示するために等縮尺で描かれていない。
【0033】
本発明の第4の形態400、より具体的には固定ブラケット本体410は、第1の近心側面413と第2の遠心側面414との間を延在する横断配置の略円筒状空隙420を含む、あるいは他の方法で画定する。横断空隙420は対向する第1の端部421と第2の端部422とを有する。さらに、
図17に最も詳しく示されるように、概して参照符号423で示される湾曲細長雄ピン部材が、第1の端部421と第2の端部422との間に配置され、横断空隙420に対して略放射方向内方にさらに延在する。湾曲細長雄ピン部材は本発明の第1の形態20に記載した雄ピン部材81と全体の構造および機能が類似する。これに関し、湾曲細長雄ピン部材423はブラケット本体410と一体化される本体424によって画定される。本体424は略中央に配置される支持部または支持部材425をさらに含み、拡張フランジ部材426が支持部材425に搭載され、あるいは一体化され、そこから垂直外方に延在して略T状構造を成す。拡張フランジ部材426は湾曲上側接合面427を有する。湾曲細長雄ピン部材423は、アーチワイヤインサートと一体化される蟻継ぎスロットと嵌合し、摺動可能に協働するように動作可能である。この構造は以下の段落でより詳細に説明する。
図17に示すように、多数の嵌合領域430が固定ブラケット本体410に形成され、横断配置略円筒状空隙420に連通する。ここでも、多数の嵌合領域430は、本発明の先の形態に関して説明したように働く。図示するように、固定ブラケット本体410は、固定ブラケット本体410の前側接合面411に形成される開口428を画定する。開口は横断空隙420と連通し、所定の断面寸法を有する。この特徴は以下でもより詳細に説明する。
【0034】
本発明の第4の形態400は概して参照符号440で示され、
図18によって最もよく理解されるアーチワイヤインサートを含む。アーチワイヤインサート440は対向端441、442を有する。対向する第1の端部441と第2の端部441間の距離は、固定ブラケット本体410の第1の近心側面413と第2の遠心側面414との間で測定される距離以下である。さらに、アーチワイヤインサート440は縦軸444によって画定される本体443を有する。本体は開口428を通過できないような寸法に設定される。しかしながら、本体443の一部は開口428に対して前方および外方に延在する。アーチワイヤインサート440が後述するように横断空隙420内で伸縮可能かつ回転自在に収容されるとき、本体443は縦軸444を中心に選択的に回転自在である。本体443は前側接合面445と反対側の後側接合面446をさらに有する。本体は略円筒状の外側接合面447も有し、横断配置される略円筒状空隙420内に回転自在かつ伸縮可能に収容される寸法に設定される。
【0035】
図18に示すように、湾曲蟻継ぎスロット450が外側接合面447に形成され、本発明の第1の形態20で上述した湾曲蟻継ぎスロット31と同じように動作する。湾曲蟻継ぎスロット450は、上述した細長雄ピン部材423の湾曲上側接合面427と摺動可能に噛合し協働する補完的な湾曲下面451を有する。湾曲蟻継ぎスロット450は、相互に向かって延在することで湾曲蟻継ぎスロット450にT状構造をとらせる個々のフランジ部材452を有する。しかしながら、その他の形状も同等にうまく機能すると理解される。さらに、湾曲細長雄ピン部材423と湾曲蟻継ぎスロット450である本明細書で開示する構造は他の構造と交換またはその他の方法で代用することができ、本発明は同程度にうまく機能すると理解すべきである。アーチワイヤインサート440の本体443はアーチワイヤスロット460をさらに画定する。アーチワイヤスロットは対向する第1の端部461と第2の端部462を有する。アーチワイヤスロット460は上面463と下面464によって画定される。上述したように、アーチワイヤスロット460は、相互に略平行に間隔をおいて所定位置に配される上面463と下面464を有する。アーチワイヤインサートの本体443は、上面と下面とを接続する後面465を画定する。
図18に示すように、一対の通路466が後面465に形成され、それによりアーチワイヤスロット460は固定ブラケット本体410に形成される多数の嵌合領域430と連通する。この特徴を以下より詳細に説明する。
図18から分かるように、後面465は上面463と下面464と組み合わされて、アーチワイヤインサート440の第1の端部441と第2の端部442の近傍に位置する個々の凹領域467を画定する。これらの凹領域は、組み込まれる構造を収容しやすくする所定の断面寸法を有し、アーチワイヤスロット460内に収容され、以下の段落でより詳細に説明するブラケット本体インサートを特徴付ける。
【0036】
本発明の第4の形態400は、参照符号480で概して示され、
図19A、19B、19Cによって最もよく理解されるブラケット本体インサートをさらに含む。これに関し、ブラケット本体インサート480は対向する第1の端部481と第2の端部482を有する。対向する第1の端部481と第2の端部482との距離は、アーチワイヤインサート440の対向端部441、442間で測定される距離以下である。認識されるように、図示するブラケット本体インサート480は通常、固定ブラケット本体410の第1の側面413と第2の側面414を超えて延在しない。しかしながら、ブラケット本体インサート480がアーチワイヤスロット460に挿入される、あるいはアーチワイヤスロット460から引き出される際、ブラケット本体を臨床医によってより見易く、あるいは把持し易くすることによって使用を簡易化するために、ブラケット本体インサート480は固定ブラケット本体410の対向側面から外方に延在するように拡張することもできると理解される。ブラケット本体インサート480は、アーチワイヤスロット460を部分的に画定する後壁を成す前側接合面484を有する本体483を含む。さらに、本体483は、アーチワイヤインサート440によって画定される後面465に接して併置される反対側の後側接合面485も有する。ブラケット本体インサートは上面486と下面487をさらに画定する。上面と下面は相互に略平行に間隔をおいて配置される。上面486と下面487間の距離は、アーチワイヤスロット460を部分的に画定する上面463と下面464間のおよその距離未満である。したがって、ブラケット本体インサート480はアーチワイヤスロット460内に収容され、アーチワイヤスロット460と協働することができると理解される。本発明の他の形態と同様、ブラケット本体インサート480は、第1の端部481近傍の位置から垂直下方に延在する第1の細長でより長い寸法の嵌合部材491を含む。さらに、ブラケット本体インサート480は、第2の端部482近傍の位置から延在する第2のより小さい嵌合部材492を含む。第1の嵌合部材491と第2の嵌合部材492は、上述したようにアーチワイヤインサート440の後面465に形成される各通路466に噛合して収容され、そこを通過することができるような所定の形状を有する。第1のより長い寸法の嵌合部材491は、固定ブラケット本体410に形成される多数の嵌合領域430のうちの1つに収容されるように動作可能である遠心端493を有する。本発明の他の形態で説明したのと同様に、多数の嵌合領域430のうちの1つへの遠心端493の収容は、固定ブラケット本体410に対して所与の所定の回転配向にアーチワイヤインサート440を確実に調節可能に位置決めする際に有効であり、本発明の利点をもたらす。
図19A、19B、19Cの比較から分かるように、本体483は前側接合面484と後側接合面485の間で測定される可変厚さを有することができる。上述したように、前側接合面484はアーチワイヤスロット460の一部を成す。アーチワイヤインサート440によって与えられるその可変厚さ寸法のため、アーチワイヤインサート440は面463、464とアーチワイヤスロット460の後壁を成すブラケット本体インサート440の前側接合面484との間に画定されるアーチワイヤスロット460の断面寸法を可変に調節することができる。
図19A、19B、19Cに示すように、ブラケット本体インサート480は、対向する第1の端部481と第2の端部482から垂直下方に延在する移動抑制部材494をさらに含む。これらの移動抑制部材は、上に開示したようにアーチワイヤスロット460の端部に位置する凹領域467内に適切に噛合して収容される寸法に設定される。さらに、
図19A、19B、19Cに示すように、ブラケット本体インサート480をアーチワイヤスロット460内の適切な配向で取り外す、あるいは配置するため、臨床医または臨床医が使用するツールがブラケット本体インサート480を把持しやすいように、空隙495が移動抑制部材494に形成される。
【0037】
本発明の第5の形態
本発明の第5の形態は、
図20A、20B、20C、20Dによって最もよく理解される。本発明の第5の形態では、本発明は本願に記載する本発明の様々な形態において採用および利用することのできるブラケット本体インサート500の変形に関すると理解すべきである。なお、
図20A、20B、20C、20Dに示すブラケット本体インサート500は、上述した本発明のいくつかの形態の上述したアーチワイヤスロットに収容することができる。ここでも、ブラケット本体インサート500を利用して、本発明の第1の形態20に示すよう可動ブラケット本体を選択的に回転自在に固定することができる、あるいは本発明の第4の形態400に示すようにアーチワイヤインサートを選択的に回転自在に固定することができる。また、ブラケット本体インサート500は、歯科矯正ブラケット10で採用されるブラケット本体によって画定されるアーチワイヤスロット内に収容される。ブラケット本体インサート500はまた第1の端部501と第2の端部502を有し、本体503の高さのおかげでアーチワイヤスロット内に容易に収容することができる。ここでも、第1の端部と第2の端部間で測定されるブラケット本体インサートの長はアーチワイヤスロットと同じとすることができる、あるいは、臨床医がブラケット本体インサートをアーチワイヤスロットに配置する、またはアーチワイヤスロットから取外す際にブラケット本体インサート500を把持するための簡便な手段を提供するように外方に延在させることができる。ブラケット本体インサートは、対応するアーチワイヤスロットの一部を成す前側接合面504を有する。ここでも、本体503の厚さ寸法は、患者の歯11について対処する臨床状況に応じて均一または非均一のいずれかにすることができる。また、本体503は、採用される本発明の形態に応じて可動または固定ブラケット本体内に位置する後側接合面505を有する。本体は上面506と下面507も有する。ここでも、上面と下面間で測定される距離は、ブラケット本体インサート480を配置するアーチワイヤスロットを部分的に画定する上面と下面間で測定されるおよその距離未満である。本発明の第5の形態500では、一対の剛体平面510が、前側接合面504に対して略垂直外方に、および本体503の上面506と下面507に対して略同一平面配向で延在する。一対の平面510は第1の平面511と第2の平面512とを含む。第1および第2の平面は相互に略平行であり、概して参照符号を付けた点線513で示す弱い接合部において本体503に装着される。第1および第2の平面は小寸法の所定の断面領域514を画定する。当然ながら、この領域514は、図示する本発明の形態に応じてブラケット本体またはアーチワイヤインサートのいずれかによって画定される既存のアーチワイヤスロット内で配向される。しかしながら、この小断面領域514は、患者の歯11の位置を精密に調節して患者のすべての歯を適切に配向する完全な歯科矯正治療を提供するために、より小さい寸法のアーチワイヤを使用するさらに別の方法を臨床医に提供する。
【0038】
図20Bおよび20Cに示す第1および第2の平面は、個々の平面511、512に力を印加することで個別に取り外すことができる。これは、第1の平面または第2の平面を弱い接合部513で切り離すことによって達成される。このようにして、臨床医はアーチワイヤを収容するアーチワイヤスロットにおいて所定の断面領域514の相対的配向を調節することができる。この特徴は多数の治療オプションを提供し、それにより臨床医は様々な寸法のアーチワイヤを使用して、これまで不可能だった形で個々の患者の歯11の最終位置を精密に調節することができる。本体503は、第1の端部501またはその近傍の位置から延在する第1のより長い寸法の嵌合部材521をさらに含む。また、上述したように、本体503は第2の端部502の近傍位置から延在する第2のより短い寸法の嵌合部材522を有する。ここでも、第1のより長い寸法の嵌合部材は遠心端523を有し、該遠心端は、ブラケット本体インサート500が採用される本発明の形態に応じて、ブラケットベースまたはブラケット本体に形成される上述の嵌合領域のうちの1つに収容される。ここでも、同じブラケット本体インサート500が、対向する第1の端部501と第2の端部502とに搭載される、対向する移動抑制部材524を有する。移動抑制部材524はそれぞれ内部に形成される空隙525を有し、臨床医はその空隙を通じてブラケット本体インサート500を容易に把持する、あるいはその他の方法で引き寄せて、ブラケット本体のアーチワイヤスロットに配置する、あるいはアーチワイヤスロットから取り出すことができる。
【0039】
したがって、本発明の最も広い側面は、患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されるブラケットベース401を含む歯科矯正ブラケット400を含み、ブラケット本体410はブラケットベース401に搭載され、横断配置略円筒状空隙420を画定する前側接合面411を有する。開示する本発明では、本体443を有するアーチワイヤインサート440は縦軸444によって部分的に画定され、横断配置される略円筒状空隙420に収容される。アーチワイヤインサート440の本体443は、選択的に調節可能な断面寸法を有する横断アーチワイヤスロット460を少なくとも部分的に画定する。アーチワイヤインサート460は縦軸444を中心に回転自在である。開示するような本発明の1形態では、ブラケット本体インサート480が設けられて横断アーチワイヤスロット460内に取外し可能に収容され、アーチワイヤスロット460を少なくとも部分的に形成する本体483をさらに有する。ブラケット本体インサート480は、ブラケット本体410に対するアーチワイヤスロット480の回転自在な配向を解除可能に略固定し、ブラケットベース401が患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されている間、横断アーチワイヤスロット460の断面寸法を選択的に調節する。開示する本発明の1形態では、アーチワイヤ435は横断アーチワイヤスロット460に収容され、アーチワイヤインサート440との組み合わせで機能して、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数の選択的トルクエクスプレッションを提供する。これらの個々のトルクエクスプレッションが患者の歯11の所定の1次移動13、2次移動14、3次移動15を達成する。
【0040】
本発明の第6の形態
本発明の第6の形態を概して
図21〜24に示す。本発明の第6の形態600は、概して参照符号601で示すブラケットベースを含む。ブラケットベースは本発明の他の形態に関して上で開示したのと極めて類似しており、周縁603によって画定されるパッド602を含む。パッド602は前側接合面604と反対側の後側接合面605とを有する。連結部610は前側接合面604と一体化される。連結部610は、参照符号611で示される湾曲蟻継ぎスロットを画定する。連結部610は本発明の第1の形態20に関して上述した連結部に類似する。湾曲蟻継ぎスロット611は、図面に示すように、一対の間隔をおいて配置される斜めの側壁612によってさらに画定され、後述するようにブラケット本体と一体化される本発明の特徴を収容するように動作可能な切頭状の通路また溝を形成する。側壁612は連結部610の隆起した中央領域613を部分的に画定する。隆起中央領域613は、下記段落で後述するようにブラケット本体の後側接合面と同様の曲率を有する湾曲上側接合面614を有する。また、図示するように、一対の湾曲ガイド路615が湾曲蟻継ぎスロット611の対向側面に形成され、以下の段落で後述するブラケット本体の後側接合面に形成される個々の湾曲リブ構造と噛合し連結するように動作可能である。本発明の他の形態で説明したように、多数の嵌合領域616は連結部610に形成され、後述するようにブラケット本体インサートの遠心端と嵌合するように動作可能である。
【0041】
本発明の第6の形態600は、
図21等に示すようなブラケット本体620を含む。より具体的には、ブラケット本体620は図示するように、前側接合面622と反対側の後側接合面623とを有する本体621を含む。これに関し、ブラケット本体は上側接合面624と反対側の下側接合面625とを有する。上側接合面624と下側接合面625は、リガチャーによって嵌合され、
図23に示すブラケット本体620を採用する際に利用可能な個々のタイウィングを画定する。
図21に示すようなブラケット本体に関して、図示するブラケット本体620は可動ゲート627と協働するように動作可能であり、その動作は当該技術において十分に既知であると理解される。
図23に示すように、ブラケット本体620は、アーチワイヤ628を固定するため、従来設計のリガチャー627Aが上記タイウィングと嵌合することができるブラケット本体を表す。これに関し、ブラケット本体620は、概して参照符号640で示すアーチワイヤスロットを画定する。アーチワイヤスロット640は上述したものと同様に上面641と反対側の下面642とを含む。さらに
図24に示すように、一対の通路643(1つのみ図示する)がブラケット本体620の本体621に形成され、それぞれがアーチワイヤスロット640の端部に位置する。それぞれの通路643は、後述するようにブラケット本体インサートと一体化される個々の嵌合部材と噛合し協働するように動作可能である。
図23にさらに示すように、ブラケット本体620は、ブラケット本体インサートが併置し嵌合する支持壁644を画定する。支持壁644は上面641と下面642の間を延在する。
【0042】
本発明の第6の形態600は
図21等に示すように、後側接合面623と一体化される補完的な均一湾曲面650を含む。この補完的な均一湾曲面は、連結部610と噛合し移動可能に連結し、ブラケットベース601と一体化される雄ピン部材651を表す。雄ピン部材651は、湾曲蟻継ぎスロット611の一部を成す側壁612と同様に傾斜する側壁652によって部分的に画定される。
図22に示すように、雄ピン部材651は断面を見るとやや切頭状であり、連結部610の一部を成す湾曲蟻継ぎスロット611内に噛合して収容される寸法に設定されると理解すべきである。ここでも、雄ピン部材651は、湾曲蟻継ぎスロット611と同様の曲率を有する補完的湾曲面653(
図24)を含む。さらに、
図22に示すように、一対の湾曲ガイド路615内に収容されるような寸法に設定された一対の細長湾曲ガイド部材654が、雄ピン部材651の対向側面に隣接する。それぞれの細長ガイド部材654は、連結部610内で回転する間、湾曲移動経路に沿ってブラケット本体620を誘導する、あるいはその他の方法で方向付けるように個別に動作可能である。認識されるように、湾曲蟻継ぎスロット611は凹状に図示され、雄ピン部材651、より具体的には補完的湾曲面653は凸状に図示されているが、これらの形状は逆転させて、反対の構造に配置されても、本発明において提供される同じ利点を達成することができると理解される。
【0043】
図21および23に示すように、本発明の第6の形態600はブラケット本体インサートとの組み合わせで機能し、概して参照符号660で示される。ブラケット本体インサートは
図6に示すものと類似する。ブラケット本体インサートは、アーチワイヤスロット640内に収容される寸法の本体661を有する。ここでも、本体は上側接合面662と反対側の下側接合面663とを有する。本体661はアーチワイヤスロット640の上面641と下面642との間に収容され配置される。ブラケット本体インサート660は、アーチワイヤスロット640の後壁を成し、上面641と下面642間を延在する前側接合面664を含む。さらに、ブラケット本体インサートは、支持壁644に接して併置する後側接合面(図示せず)を有する。ここでも、前側接合面664と後側接合面との間で測定される厚さ寸法は可変であるため、ブラケット本体インサート660は可変の所定の断面寸法を有する調節可能なアーチワイヤスロット640を画定し、それによって臨床医はアーチワイヤスロット640内に配置されるアーチワイヤ628に可変量のトルクを印加することができる。ここでも、ブラケット本体インサート660は一対の細長嵌合部材670を含むが、一方のみを図示する(
図21)。細長嵌合部材670の1つは、多数の嵌合領域616のうちの1つに収容されるように動作可能な遠心端671を含む。ここでも、遠心端671は、ブラケットベース601に対してブラケット本体620の配向を所与の配向に解除可能かつ回転可能に固定するように動作可能である。本発明の第6の形態を調節するため、ブラケット本体インサート660を、本体661に形成される凹領域672において把持し、アーチワイヤスロット640に対して前方および外方に移動させることができる。その後、ブラケット本体620を適切に調節した後、ブラケット本体インサート660、より具体的には細長嵌合部材670を多数の嵌合領域616のうちの1つに収容することができる。その後、アーチワイヤ628をアーチワイヤスロット640内に戻し、ゲート627を閉鎖することができる、もしくは
図23に示すように、適切なリガチャー627Aによってアーチワイヤ628をアーチワイヤスロット640内に固定することができる。図示するリガチャーは、発明の概念を例示するため正確な寸法で描いていない。
【0044】
本発明の第6の形態の利点は当業者にとって容易に自明となるであろう。
図21等に示す本発明の形態に関しては、連結部610を含む同一のブラケットベース601は
図21に示すようなセルフライゲーションブラケット構成、または
図23に示すようなアクティブセルフライゲーションブラケット構成のいずれでも利用することができると理解される。また、本発明の第6の形態600により、同じブラケット本体インサート660を採用して、パッシブセルフライゲーション構成(
図21)、アクティブセルフライゲーション構成(
図23)、または従来の連結ブラケットのいずれのブラケット本体も利用することができる。この本発明の特定の形態は、製造コストが大幅に低減されるために製造面で極めて望ましく、また、一定範囲のパッシブおよびアクティブセルフライゲーションブラケットを提供することで、これまで対処不能であった幅広い臨床環境において有効となり得る。
【0045】
動作
最も広い側面によると、本発明は、概して参照符号10で示され、患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されるブラケットベース21を含む歯科矯正ブラケットに関する。歯科矯正ブラケット10は、ブラケットベース21に担持され、前側接合面42を有し、横断アーチワイヤスロット60を画定するブラケット本体40をさらに含む。アーチワイヤスロット60は対向する第1の端部61と第2の端部62とを有する。アーチワイヤスロット60は選択的に調節可能な断面寸法を有し、参照符号66で概して示される中央領域または中央部をさらに含む。図示するように、アーチワイヤスロット60は垂直面と水平面の両方において可動であり、上述したように中央領域を有する。さらに、アーチワイヤスロット60は上述したとおり、選択的に調節可能な断面寸法を有する。さらに、歯科矯正ブラケット10は、横断アーチワイヤスロット60に収容されるアーチワイヤ90を含む。ブラケット本体40はアーチワイヤ90との組み合わせで機能し、患者の歯11に個別に強制的に作用する多数の選択的トルクエクスプレッション13、14、15を提供するように選択的に調節可能である。これらの患者の歯の1次、2次、3次移動は、横断アーチワイヤスロット60に収容されるアーチワイヤ90の臨床上所定の操作を行わずに実行される。さらに、垂直面と水平面のいずれかにおけるアーチワイヤスロット60の回転は、アーチワイヤスロット60の中央領域66を中心に維持される。これにより、患者の歯11に過度に印加される不都合な縦方向の移動成分や力ベクトルを実質的に防ぎつつ歯位置の精密な調節が実行できるため、臨床医による歯科矯正の欠陥への対処が大幅に向上する。
【0046】
より具体的には、本発明は、参照符号600で概して示され、
図21等に示される歯科矯正ブラケットに関する。歯科矯正ブラケット600は、患者の歯11の前側接合面12に取外し可能に装着されるパッド602を有するブラケットベース601を含む。図示されるように、ブラケットベース601は連結部610を画定する前側接合面604を有する。連結部は湾曲前側または上側接合面614をさらに有する。図示するように、多数の嵌合領域616は連結部610の湾曲前側接合面614に所定の空間パターンで形成される。さらに図示するように、ブラケットベース601と噛合し移動可能に協働するブラケット本体620が設けられ、ブラケット本体はアーチワイヤスロット640と連通する開口を画定する前側接合面622を有する。アーチワイヤスロット640は、互いに間隔をおいて配置された上面641と下面642と、所与の断面寸法とを有する。横断アーチワイヤスロット640は、ブラケット本体620の前側接合面622によって画定される開口629と連通する。さらに、横断アーチワイヤスロット640はブラケット本体620の前側接合面622からアクセス可能である。ブラケット本体620は、ブラケットベース601の連結部610の湾曲前側接合面614と噛合し移動可能に嵌合する補完的な湾曲後側接合面650を有する。本発明は、横断アーチワイヤスロット640に取外し可能に収容されるブラケット本体インサート660も含み、横断アーチワイヤスロット640の後壁664を成す本体661をさらに有する。後壁664はアーチワイヤスロット640の上面641と下面642の間を延在する。ブラケット本体インサート660は、所定の長、高さ、厚さ寸法を有する本体661をさらに有する。ブラケット本体インサート660は横断アーチワイヤスロット640の断面寸法を選択的に調節する。ブラケット本体インサート660は細長嵌合部材670をさらに含み、該嵌合部材は本体661に対して略垂直に配向され、ブラケットベース601に形成される嵌合領域616のうちの1つに収容されるように動作可能な遠心端671を有する。ブラケット本体インサート660の嵌合部材670は、ブラケットベース601に対して可動ブラケット本体620の回転自在な配向を選択的に固定する際に有効である。歯科矯正ブラケット600は、横断アーチワイヤスロット640内に収容されるアーチワイヤ628をさらに含む。可動ブラケット本体640はブラケット本体インサート660との組み合わせで機能し、所定の臨床治療計画中に歯科矯正ブラケットベースおよび/またはアーチワイヤ628を交換することなく、患者の歯11に1次、2次、3次トルクカップル13、14、15を選択的に提供して患者の歯11の臨床上所望の位置補正を達成する。さらに、
図21に示す1形態の歯科矯正ブラケット600は、ブラケット本体620の前側接合面622に、ブラケット本体620の前側接合面622によって画定される開口629を選択的に閉鎖する可動ゲートをさらに含む。
図23に示すように、本発明の他の可能な変形または形態では、このようなゲートアセンブリを含まないアクティブセルフライゲーションブラケットを例示する。図面から分かるように、横断アーチワイヤスロット640は垂直面と水平面の両方において可動であり、中央領域645を有する。認識されるように、また上述したように、アーチワイヤスロット640の回転中、アーチワイヤスロットは垂直面または水平面のいずれにおいても、アーチワイヤスロット645の中央領域を中心に略縦方向に維持されることによって、他のこれまで利用されてきた従来の歯科矯正アセンブリでは得られなかった多数の利点を臨床医に提供する。図示する歯科矯正ブラケット600は、横断アーチワイヤスロットに収容されるアーチワイヤの臨床上所定の操作を行わずに患者の歯11の1次、2次、3次移動を達成することができる。これらの特徴は組み合わせて新規であり、本特許出願の発明者の知るどの単独の従来技術にも見つからない。
【0047】
したがって、本願の歯科矯正ブラケットは図示するようなその様々な形態において、これまで対処が不可能であった様々な歯科矯正の欠陥を容易に扱う多数の手段を提供すると考えられる。本装置は採用が簡単であり、この装置により、臨床医は大半の臨床用途で単独のアーチワイヤを使用し、患者にとってより快適な、かかる力の弱いアーチワイヤを使用し、より短い治療期間で優れた結果を残し、臨床成果を大きく向上させる方法で患者の歯を回転および移動させることができる。