特許第6046868号(P6046868)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046868液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6046868
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】液晶滴下工法用シール剤、上下導通材料、及び、液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1339 20060101AFI20161212BHJP
   C08G 59/50 20060101ALI20161212BHJP
   C09K 3/10 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   G02F1/1339 505
   C08G59/50
   C09K3/10 Z
   C09K3/10 B
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-535076(P2016-535076)
(86)(22)【出願日】2016年5月18日
(86)【国際出願番号】JP2016064719
【審査請求日】2016年8月19日
(31)【優先権主張番号】特願2015-102904(P2015-102904)
(32)【優先日】2015年5月20日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 洋
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−003084(JP,A)
【文献】 国際公開第2006/016507(WO,A1)
【文献】 国際公開第2014/199853(WO,A1)
【文献】 国際公開第2008/102550(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/1339
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極を有する2枚の透明基板の一方に液晶滴下工法用シール剤を用いて枠状のシールパターンを形成する工程と、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の基板を重ね合わせる工程と、加熱してシール剤を硬化させる工程を有する液晶滴下工法により液晶表示素子を製造するのに用いられる液晶滴下工法用シール剤であって、
硬化性樹脂と、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤とを含有し、
前記熱硬化剤は、25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤を含有することを特徴とする液晶滴下工法用シール剤
【請求項2】
アミンアダクト系硬化剤は、平均粒子径が3μm以下であることを特徴とする請求項1記載の液晶滴下工法用シール剤
【請求項3】
アミンアダクト系硬化剤は、融点が70℃〜140℃であることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶滴下工法用シール剤
【請求項4】
熱硬化剤として、更に、ヒドラジド系硬化剤を含有することを特徴とする請求項1、2又は3記載の液晶滴下工法用シール剤
【請求項5】
熱ラジカル重合開始剤は、アゾ開始剤であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の液晶滴下工法用シール剤
【請求項6】
ITO付きガラス基板に0.1gのシール剤を点状に塗布し、該ガラス基板を水平面に対して45度傾けた状態で120℃で5分間加熱した後の塗布位置からのシール剤の移動距離の最大値が20mm以下であることを特徴とする液晶滴下工法用シール剤
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の液晶滴下工法用シール剤と、導電性微粒子とを含有することを特徴とする上下導通材料。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5若しくは6記載の液晶滴下工法用シール剤又は請求項7記載の上下導通材料を有することを特徴とする液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤に関する。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示セル等の液晶表示素子の製造方法としては、タクトタイム短縮、使用液晶量の最適化といった観点から、特許文献1、特許文献2に開示されているような、硬化性樹脂と光重合開始剤と熱硬化剤とを含有する光熱併用硬化型のシール剤を用いた滴下工法と呼ばれる液晶滴下方式が用いられている。
滴下工法では、まず、2枚の電極付き基板の一方に、ディスペンスにより長方形状のシールパターンを形成する。次いで、シール剤が未硬化の状態で液晶の微小滴を基板のシール枠内に滴下し、真空下で他方の基板を重ね合わせ、シール部に紫外線等の光を照射して仮硬化を行う。その後、加熱して本硬化を行い、液晶表示素子を作製する。現在この滴下工法が液晶表示素子の製造方法の主流となっている。
【0003】
ところで、携帯電話、携帯ゲーム機等、各種液晶パネル付きモバイル機器が普及している現代において、機器の小型化は最も求められている課題である。機器の小型化の手法としては、液晶表示部の狭額縁化が挙げられ、例えば、シール部の位置をブラックマトリックス下に配置することが行われている(以下、狭額縁設計ともいう)。
【0004】
しかしながら、狭額縁設計ではシール剤がブラックマトリックスの直下に配置されるため、滴下工法を行うと、シール剤を光硬化させる際に照射した光が遮られ、シール剤の内部に光が到達し難く、従来のシール剤では硬化が不充分となる。このようにシール剤の硬化が不充分となると、未硬化のシール剤成分が液晶中に溶出して液晶汚染を発生させやすくなるという問題があった。
【0005】
そこで、シール剤を熱のみによって硬化させることが検討されてきたが、光重合による仮硬化なしでは、加熱した際に液晶が流動し、硬化途中のシール剤部に差し込んでシールパターンの破れ等が発生したり、加熱により粘度が低下したシール剤により液晶が汚染されたりするという問題があった。
特に近年、パネルの狭額縁化につれ、ディスペンスするシール剤の幅も細くなり、貼り合わせた後のシール剤部の断面積が小さくなっている。そのため、シールパターンの破れ等が発生しやすくなっている。
【0006】
また、近年では、省エネルギー化や液晶の安定性の観点から、シール剤を低温かつ短時間の加熱で熱硬化させることが望まれている。シール剤を低温かつ短時間の加熱で硬化させるための方法としては、融点の低い熱硬化剤や硬化促進剤を用いることが考えられるが、融点の低い熱硬化剤や硬化促進剤を用いると、シール剤が保存安定性に劣るものとなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−133794号公報
【特許文献2】国際公開第02/092718号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、硬化性樹脂と、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤とを含有し、前記熱硬化剤は、25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤を含有する液晶表示素子用シール剤である。
以下に本発明を詳述する。
【0010】
本発明者は、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤として25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤とを組み合わせて用いることにより、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明の液晶表示素子用シール剤における、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果は、シール剤を熱のみによって硬化させる場合に特に顕著となる。
また、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤として25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤とを組み合わせて用いる本発明の液晶表示素子用シール剤は、低温かつ短時間で加熱しても充分に硬化させることができる。
【0011】
本発明の液晶表示素子用シール剤は硬化性樹脂を含有する。
上記硬化性樹脂は、(メタ)アクリル化合物とエポキシ化合物とを含有することが好ましい。
【0012】
上記(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させることにより得られる(メタ)アクリル酸エステル化合物、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させることにより得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させることにより得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。なかでも、エポキシ(メタ)アクリレートが好ましい。また、上記(メタ)アクリル化合物は、反応性の高さから分子中に(メタ)アクリロイル基を2個以上有するものが好ましい。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリル」とは、アクリル又はメタクリルを意味し、上記「(メタ)アクリル化合物」とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基(以下、「(メタ)アクリロイル基」ともいう)を有する化合物を意味する。また、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味し、上記「エポキシ(メタ)アクリレート」とは、エポキシ化合物中の全てのエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させた化合物のことを表す。
【0013】
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2−フェノキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチル2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0014】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0015】
また、上記(メタ)アクリル酸エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0016】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応することにより得られるもの等が挙げられる。
【0017】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物等が挙げられる。
【0018】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’−ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE−810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX−201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER YX−4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV−80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP−4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA−4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN−670−EXP−S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC−3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN−165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD−X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX−1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX−611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR−450、YR−207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX−147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記エポキシ化合物のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC−1312、YSLV−80XY、YSLV−90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA−7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0019】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製)、EA−1010、EA−1020、EA−5323、EA−5520、EA−CHD、EMA−1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM−600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA−141、デナコールアクリレートDA−314、デナコールアクリレートDA−911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0020】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、2つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物1当量に対して水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体2当量を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0021】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,6,11−ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0022】
また、上記イソシアネート化合物としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等のポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。
【0023】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキルモノ(メタ)アクリレートや、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシアクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M−1100、M−1200、M−1210、M−1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL210、EBECRYL220、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL1290、EBECRYL2220、EBECRYL4827、EBECRYL4842、EBECRYL4858、EBECRYL5129、EBECRYL6700、EBECRYL8402、EBECRYL8803、EBECRYL8804、EBECRYL8807、EBECRYL9260(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN−330、アートレジンSH−500B、アートレジンUN−1200TPK、アートレジンUN−1255、アートレジンUN−3320HB、アートレジンUN−7100、アートレジンUN−9000A、アートレジンUN−9000H(いずれも根上工業社製)、U−2HA、U−2PHA、U−3HA、U−4HA、U−6H、U−6HA、U−6LPA、U−10H、U−15HA、U−108、U−108A、U−122A、U−122P、U−324A、U−340A、U−340P、U−1084A、U−2061BA、UA−340P、UA−4000、UA−4100、UA−4200、UA−4400、UA−5201P、UA−7100、UA−7200、UA−W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AH−600、AI−600、AT−600、UA−101I、UA−101T、UA−306H、UA−306I、UA−306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0025】
上記エポキシ化合物としては、例えば、上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物や、部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂等が挙げられる。
なお、本明細書において上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂とは、1分子中にエポキシ基と(メタ)アクリロイル基とをそれぞれ1つ以上有する化合物を意味し、例えば、1分子中に2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物の一部分のエポキシ基を(メタ)アクリル酸と反応させることによって得ることができる。
【0026】
上記部分(メタ)アクリル変性エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、UVACURE1561(ダイセル・オルネクス社製)等が挙げられる。
【0027】
本発明の液晶表示素子用シール剤が上記(メタ)アクリル化合物と上記エポキシ化合物とを含有する場合、(メタ)アクリロイル基とエポキシ基との比が30:70〜95:5になるように上記(メタ)アクリル化合物と上記エポキシ化合物とを配合することが好ましい。(メタ)アクリロイル基の比率が30%以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性により優れるものとなる。(メタ)アクリロイル基の比率が95%以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が接着性により優れるものとなる。
【0028】
上記硬化性樹脂は、液晶汚染を抑える点で、−OH基、−NH−基、−NH基等の水素結合性のユニットを有するものが好ましい。
【0029】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱ラジカル重合開始剤を含有する。
上記熱ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物や有機過酸化物等からなるものが挙げられる。なかでも、液晶汚染を抑制する観点から、アゾ化合物からなる開始剤(以下、「アゾ開始剤」ともいう)が好ましく、高分子アゾ化合物からなる開始剤(以下、「高分子アゾ開始剤」ともいう)がより好ましい。
なお、本明細書において上記「高分子アゾ化合物」とは、アゾ基を有し、熱によって(メタ)アクリロイル基を硬化させることができるラジカルを生成する、数平均分子量が300以上の化合物を意味する。
【0030】
上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量の好ましい下限は1000、好ましい上限は30万である。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量がこの範囲であることにより、液晶への悪影響を防止しつつ、硬化性樹脂へより容易に混合することができる。上記高分子アゾ開始剤の数平均分子量のより好ましい下限は5000、より好ましい上限は10万であり、更に好ましい下限は1万、更に好ましい上限は9万である。
なお、本明細書において、上記数平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による数平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF−804(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0031】
上記高分子アゾ開始剤としては、例えば、アゾ基を介してポリアルキレンオキサイドやポリジメチルシロキサン等のユニットが複数結合した構造を有するものが挙げられる。
上記アゾ基を介してポリアルキレンオキサイド等のユニットが複数結合した構造を有する高分子アゾ開始剤としては、ポリエチレンオキサイド構造を有するものが好ましい。このような高分子アゾ開始剤としては、例えば、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)とポリアルキレングリコールの重縮合物や、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)と末端アミノ基を有するポリジメチルシロキサンの重縮合物等が挙げられ、具体的には例えば、VPE−0201、VPE−0401、VPE−0601、VPS−0501、VPS−1001(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
また、高分子アゾ開始剤以外のアゾ開始剤の例としては、例えば、V−65、V−501(いずれも和光純薬工業社製)等が挙げられる。
【0032】
上記有機過酸化物としては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアシルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0033】
上記熱ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が10重量部である。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量がこの範囲であることにより、未反応の熱ラジカル重合開始剤による液晶汚染を抑制しつつ、得られる液晶表示素子用シール剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は5重量部である。
【0034】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、上記熱ラジカル重合開始剤に加えて、光ラジカル重合開始剤を含有してもよいが、上述したように、本発明の液晶表示素子用シール剤における、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果は、シール剤を熱のみによって硬化させる場合に特に顕著となる。
【0035】
上記光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン系化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、ベンジル、チオキサントン等が挙げられる。
【0036】
上記光ラジカル重合開始剤のうち市販されているものとしては、例えば、IRGACURE184、IRGACURE369、IRGACURE379、IRGACURE651、IRGACURE819、IRGACURE907、IRGACURE2959、IRGACURE OXE01、ルシリンTPO(いずれもBASF社製)、ベンソインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル(いずれも東京化成工業社製)等が挙げられる。
【0037】
上記光ラジカル重合開始剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.1重量部、好ましい上限が10重量部である。上記光ラジカル重合開始剤の含有量が0.1重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が光硬化性により優れるものとなる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量が10重量部以下であることにより、未反応の光ラジカル重合開始剤が多く残ることなく、得られる液晶表示素子用シール剤が耐候性により優れるものとなる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0038】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、熱硬化剤を含有する。
上記熱硬化剤は、25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤を含有する。上記アミンアダクト系硬化剤を含有することにより、シール剤を加熱する際に、上記熱ラジカル重合開始剤が反応を開始するまでの温度においてもシール剤の硬化を進行させることができ、加熱によるシール剤の粘度の低下を抑制することができる。
【0039】
上記アミンアダクト系硬化剤としては、例えば、イミダゾールや1〜3級アミン等のアミン系化合物と、アクリロニトリル等の不飽和二重結合を有する化合物やエポキシ化合物等との反応により得られるアダクト体等が挙げられる。
【0040】
上記アミンアダクト系硬化剤の融点の好ましい下限は70℃、好ましい上限は140℃である。上記アミンアダクト系硬化剤の融点がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が優れた保存安定性を維持しつつ、低温硬化性により優れるものとなる。上記アミンアダクト系硬化剤の融点のより好ましい下限は80℃、より好ましい上限は130℃である。
【0041】
上記アミンアダクト系硬化剤のうち市販されているものとしては、例えば、アミキュアPN−23、アミキュアPN−23J、アミキュアPN−H、アミキュアPN−31、アミキュアPN−31J、アミキュアPN−40、アミキュアPN−40J、アミキュアPN−50、アミキュアPN−F、アミキュアMY−24、アミキュアMY−H(いずれも味の素ファインテクノ社製)、P−0505(四国化成社製)、P−200(三菱化学社製)等が挙げられる。
【0042】
上記アミンアダクト系硬化剤の平均粒子径の好ましい上限は3μmである。上記アミンアダクト系硬化剤の平均粒子径が3μm以下であることにより、得られる液晶表示素子のギャップ不良の発生を防止する効果により優れるものとなる。上記アミンアダクト系硬化剤の平均粒子径の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は0.1μmである。
なお、市販の平均粒子径が3μmを超えるアミンアダクト系硬化剤を用いる場合、粉砕や分級等の処理を行うことにより、平均粒子径を3μm以下とすることができる。
なお、本明細書において、上記アミンアダクト系硬化剤の平均粒子径及び後述する最大粒子径は、シール剤に配合する前のアミンアダクト系硬化剤について、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定することにより得られる値を意味する。上記レーザー回折式分布測定装置としては、マスターサイザー2000(マルバーン社製)等を用いることができる。
【0043】
上記アミンアダクト系硬化剤の最大粒子径の好ましい上限は5.0μmである。上記アミンアダクト系硬化剤の最大粒子径が5.0μm以下であることにより、得られる液晶表示素子のギャップ不良の発生を防止する効果により優れるものとなる。上記アミンアダクト系硬化剤の最大粒子径のより好ましい上限は4.5μmである。上記アミンアダクト系硬化剤の最大粒子径の好ましい下限は特にないが、実質的な下限は0.1μmである。
【0044】
上記アミンアダクト系硬化剤は、上記レーザー回折式分布測定装置により測定されたアミンアダクト系硬化剤の粒度分布のうち、3.0μm以下の粒子径の粒子の含有割合が、体積頻度で99%以上であることが好ましい。上記3.0μm以下の粒子径の粒子の含有割合が、体積頻度で99%以上であることにより、得られる液晶表示素子のギャップ不良の発生を防止する効果により優れるものとなる。上記3.0μm以下の粒子径の粒子の含有割合は、100%であることが最も好ましい。
【0045】
上記アミンアダクト系硬化剤の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が0.05重量部、好ましい上限が40重量部である。上記アミンアダクト系硬化剤の含有量が0.05重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の低温硬化性が向上し、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制する効果により優れるものとなる。上記アミンアダクト系硬化剤の含有量が40重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が低液晶汚染性により優れるものとなる。上記アミンアダクト系硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量部、より好ましい上限は30重量部である。
【0046】
上記熱硬化剤は、上記アミンアダクト系硬化剤に加えて、その他の熱硬化剤を含有してもよい。
上記その他の熱硬化剤としては、例えば、ヒドラジド系硬化剤、イミダゾール系硬化剤、多価フェノール系硬化剤、酸無水物系硬化剤等が挙げられる。なかでも、ヒドラジド系硬化剤が好適に用いられる。
【0047】
上記ヒドラジド系硬化剤としては、例えば、1,3−ビス(ヒドラジノカルボエチル−5−イソプロピルヒダントイン)、セバシン酸ジヒドラジド、イソフタル酸ジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、マロン酸ジヒドラジド等が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、アミキュアVDH、アミキュアUDH(いずれも味の素ファインテクノ社製)、SDH、IDH、ADH(いずれも大塚化学社製)、MDH(日本ファインケム社製)等が挙げられる。
【0048】
上記その他の熱硬化剤の融点の好ましい下限は140℃、好ましい上限は200℃である。上記その他の熱硬化剤の融点がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が熱硬化性及び低液晶汚染性により優れるものとなる。上記その他の熱硬化剤の融点のより好ましい下限は150℃、より好ましい上限は190℃である。
【0049】
上記その他の熱硬化剤を含有する場合、上記その他の熱硬化剤100重量部に対する上記アミンアダクト系硬化剤の含有量の好ましい下限は0.3重量部、好ましい上限は200重量部である。上記その他の熱硬化剤100重量部に対する上記アミンアダクト系硬化剤の含有量がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が優れた保存安定性及び低液晶汚染性を維持しつつ、低温硬化性により優れるものとなる。上記その他の熱硬化剤100重量部に対する上記アミンアダクト系硬化剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は150重量部である。
【0050】
上記その他の熱硬化剤を含有する場合、上記熱硬化剤全体の含有量は、上記硬化性樹脂100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が50重量部である。上記熱硬化剤全体の含有量が1重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が熱硬化性により優れるものとなる。上記熱硬化剤全体の含有量が50重量部以下であることにより、得られるシール剤の粘度が高くなりすぎず、塗布性により優れるものとなる。上記熱硬化剤全体の含有量のより好ましい上限は30重量部である。
【0051】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、粘度の向上、応力分散効果による接着性の改善、線膨張率の改善、硬化物の耐湿性の更なる向上等を目的として充填剤を含有してもよい。
【0052】
上記充填剤としては、例えば、タルク、石綿、シリカ、珪藻土、スメクタイト、ベントナイト、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、アルミナ、モンモリロナイト、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化錫、酸化チタン、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ガラスビーズ、窒化珪素、硫酸バリウム、石膏、珪酸カルシウム、セリサイト、活性白土、窒化アルミニウム等の無機充填剤や、ポリエステル微粒子、ポリウレタン微粒子、ビニル重合体微粒子、アクリル重合体微粒子、コアシェルアクリレート共重合体微粒子等の有機充填剤等が挙げられる。これらの充填剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0053】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記充填剤の含有量の好ましい下限は10重量部、好ましい上限は70重量部である。上記充填剤の含有量がこの範囲であることにより、塗布性等の悪化を抑制しつつ、接着性の向上等の効果により優れるものとなる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は20重量部、より好ましい上限は60重量部である。
【0054】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、シランカップリング剤を含有してもよい。上記シランカップリング剤は、主にシール剤と基板等とを良好に接着するための接着助剤としての役割を有する。
上記シランカップリング剤としては、基板等との接着性を向上させる効果に優れ、硬化性樹脂と化学結合することにより液晶中への硬化性樹脂の流出を抑制することができることから、例えば、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリメトキシシラン等が好適に用いられる。これらのシランカップリング剤は単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記シランカップリング剤の含有量の好ましい下限は0.1重量部、好ましい上限は20重量部である。上記シランカップリング剤の含有量がこの範囲であることにより、液晶汚染の発生を抑制しつつ、接着性を向上させる効果により優れるものとなる。上記シランカップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5重量部、より好ましい上限は10重量部である。
【0056】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の液晶表示素子用シール剤は、遮光シール剤として好適に用いることができる。
【0057】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0058】
上記チタンブラックは、波長300〜800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370〜450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の液晶表示素子用シール剤に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、上記光ラジカル重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370〜450nm)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の液晶表示素子用シール剤の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の液晶表示素子用シール剤に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、1μmあたりの光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほどよく、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特にないが、通常は5以下となる。
【0059】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、遮光剤として上記チタンブラックを配合した本発明の液晶表示素子用シール剤を用いて製造した液晶表示素子は、充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有する液晶表示素子を実現することができる。
【0060】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M−C、13R−N(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0061】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は13m/g、好ましい上限は30m/gであり、より好ましい下限は15m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックの体積抵抗の好ましい下限は0.5Ω・cm、好ましい上限は3Ω・cmであり、より好ましい下限は1Ω・cm、より好ましい上限は2.5Ω・cmである。
【0062】
上記遮光剤の一次粒子径は、液晶表示素子の基板間の距離以下であれば特に限定されないが、好ましい下限は1nm、好ましい上限は5μmである。上記遮光剤の一次粒子径がこの範囲であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤の塗布性等を悪化させることなく遮光性により優れるものとすることができる。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は200nm、更に好ましい下限は10nm、更に好ましい上限は100nmである。
なお、上記遮光剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
【0063】
本発明の液晶表示素子用シール剤100重量部中における上記遮光剤の含有量の好ましい下限は5重量部、好ましい上限は80重量部である。上記遮光剤の含有量が5重量部以上であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が遮光性により優れるものとなる。上記遮光剤の含有量が80重量部以下であることにより、得られる液晶表示素子用シール剤が、基板に対する密着性、硬化後の強度、及び、描画性により優れるものとなる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は10重量部、より好ましい上限は70重量部であり、更に好ましい下限は30重量部、更に好ましい上限は60重量部である。
【0064】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、更に、必要に応じて、粘度調整の為の反応性希釈剤、パネルギャップ調整の為のポリマービーズ等のスペーサー、3−P−クロロフェニル−1,1−ジメチル尿素、イソシアヌルカルボン酸等の硬化促進剤、消泡剤、レベリング剤、重合禁止剤、その他のカップリング剤等の添加剤を含有してもよい。
【0065】
本発明の液晶表示素子用シール剤を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、硬化性樹脂と、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤と、必要に応じて添加する充填剤やシランカップリング剤等の添加剤とを混合する方法等が挙げられる。
【0066】
本発明の液晶表示素子用シール剤は、ITO付きガラス基板に0.1gのシール剤を点状に塗布し、該ガラス基板を水平面に対して45度傾けた状態で120℃で5分間加熱した後の塗布位置からのシール剤の移動距離の最大値が20mm以下であることが好ましい。上記移動距離が20mm以下であることにより、加熱時の形状保持性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を充分に抑制できるものとなる。
ITO付きガラス基板に0.1gのシール剤を点状に塗布し、該ガラス基板を水平面に対して45度傾けた状態で120℃で5分間加熱した後の塗布位置からのシール剤の移動距離の最大値が20mm以下である液晶表示素子用シール剤もまた、本発明の1つである。
【0067】
本発明の液晶表示素子用シール剤に導電性微粒子を配合することにより、上下導通材料を製造することができる。このような本発明の液晶表示素子用シール剤と導電性微粒子とを含有する上下導通材料もまた、本発明の1つである。
【0068】
上記導電性微粒子としては、例えば、金属ボール、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したもの等を用いることができる。なかでも、樹脂微粒子の表面に導電金属層を形成したものは、樹脂微粒子の優れた弾性により、透明基板等を損傷することなく導電接続が可能であることから好適である。
【0069】
本発明の液晶表示素子用シール剤又は本発明の上下導通材料を有する液晶表示素子もまた、本発明の1つである。
本発明の液晶表示素子を製造する方法としては、液晶滴下工法が好適に用いられ、具体的には例えば、ITO薄膜等の電極を有する2枚の透明基板の一方に、本発明の液晶表示素子用シール剤をスクリーン印刷、ディスペンサー塗布等により枠状のシールパターンを形成する工程、液晶の微小滴をシールパターンの枠内全面に滴下塗布し、真空下で他方の基板を重ね合わせる工程、及び、加熱してシール剤を硬化させる工程を有する方法等が挙げられる。また、加熱してシール剤を硬化させる工程の前に、光照射によりシール剤を仮硬化させる工程を行ってもよい。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0071】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0072】
(実施例1〜14、比較例1〜6)
表1、2に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌機(シンキー社製、「あわとり練太郎」)を用いて混合した後、更に3本ロールを用いて混合することにより実施例1〜14、比較例1〜6の各液晶表示素子用シール剤を調製した。
なお、アミンアダクト系硬化剤として用いた表中の「PN−23J」及び「PN−40J」は、25℃で粒子状であり、粉砕及び分級処理を行うことにより、平均粒子径を、「PN−23J」は1.2μm、「PN−40J」は1.1μmとしたものを用いた。
【0073】
<評価>
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について以下の評価を行った。結果を表1、2に示した。
【0074】
(保存安定性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤について、製造直後の初期粘度と、25℃で3日間保管したときの粘度とを測定し、(25℃、3日間保管後の粘度)/(初期粘度)を粘度変化率とし、粘度変化率が1.5未満であったものを「○」、1.5以上であったものを「×」として保存安定性を評価した。
なお、シール剤の粘度は、E型粘度計(BROOK FIELD社製、「DV−III」)を用い、25℃において回転速度1.0rpmの条件で測定した。
【0075】
(形状保持性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤0.1gをITO付きガラス基板に点状に塗布し、該ガラス基板を水平面に対して45度傾けた状態で120℃のオーブンに投入し、5分間加熱した後のガラス基板を観察し、塗布位置からのシール剤の移動距離を測定した。塗布位置からのシール剤の移動距離の最大値が20mm以下であった場合を「○」、20mmを超えた場合を「×」として形状保持性を評価した。
【0076】
(硬化特性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をITO付きガラス基板に塗布して貼り合わせてからシール剤を充分に押し潰し、120℃又は110℃のオーブンに投入した。
その後、カッターを用いて基板を剥がし、顕微IR法によってシール剤のスペクトルを測定し、それぞれのスペクトルからシール剤中のアクリロイル基の転化率とエポキシ基の転化率とを以下の方法により求めた。即ち、815〜800cm−1のピーク面積をアクリロイル基のピーク面積、920〜910cm−1のピーク面積をエポキシ基のピーク面積とし、845〜820cm−1のピーク面積をリファレンスピーク面積として、下記式によりアクリロイル基の転化率とエポキシ基の転化率を算出し、その平均値が80%以上であったものを「○」、80%未満であったものを「×」として遮光部硬化性を評価した。
アクリロイル基の転化率={1−(紫外線照射後のアクリロイル基のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線照射前のアクリロイル基のピーク面積/紫外線照射前のリファレンスピーク面積)}×100
エポキシ基の転化率={1−(紫外線照射後のエポキシ基のピーク面積/紫外線照射後のリファレンスピーク面積)/(紫外線照射前のエポキシ基のピーク面積/紫外線照射前のリファレンスピーク面積)}×100
【0077】
(差し込み防止性)
実施例及び比較例で得られた各液晶表示素子用シール剤100重量部に対して平均粒子径5μmのスペーサー粒子(積水化学工業社製、「ミクロパールSP−2050」)1重量部を遊星式撹拌装置によって均一に分散させ、得られたシール剤をディスペンス用のシリンジ(武蔵エンジニアリング社製、「PSY−10E」)に充填し、脱泡処理を行ってから、ディスペンサー(武蔵エンジニアリング社製、「SHOTMASTER300」)にて、2枚のラビング済み配向膜及びITO付きガラス基板の一方に、線幅が1mmの枠状になるようにしてシール剤を塗布した。続いて、液晶滴下装置にてTN液晶(チッソ社製、「JC−5001LA」)の微小滴をシール剤の枠内全面に滴下塗布し、すぐにもう一方のガラス基板を貼り合わせ、セルを得た。得られたセルを120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させ、液晶表示素子(セルギャップ5μm)を得た。実施例8〜14及び比較例4〜6で得られた各液晶表示素子用シール剤を用いたものについては、120℃で1時間加熱してシール剤を熱硬化させる前に、メタルハライドランプを用いて100mW/cmの紫外線を30秒照射してシール剤を仮硬化させた。
得られた各液晶表示素子について、シール部の形状観察を行った。その結果、内部の液晶によりシール部の形状が乱されていなかったものを「○」、シールパターンの形状が僅かに乱されていたものを「△」、シール部の形状がかなり乱されていたものを「×」として差し込み防止性を評価した。
【0078】
(液晶表示素子の表示性能)
上記「(差し込み防止性)」にて得られた液晶表示素子を、AC3.5Vの電圧駆動をさせ、表示むら(色むら)の有無を目視で観察した。液晶表示素子の周辺部に表示むらが全く見られなかった場合を「◎」、少し薄い表示むらが見えた場合を「○」、はっきりとした濃い表示むらがあった場合を「△」、はっきりとした濃い表示むらが周辺部のみではなく、中央部まで広がっていた場合を「×」として液晶表示素子の表示性能を評価した。
なお、評価が「◎」、「○」の液晶表示素子は実用に全く問題のないレベルである。
【0079】
【表1】
【0080】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明によれば、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することができる。また、本発明によれば、該液晶表示素子用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することができる。
【要約】
本発明は、保存安定性に優れ、液晶によるシール剤への差し込みやシール剤による液晶汚染を抑制できる液晶表示素子用シール剤を提供することを目的とする。また、本発明は、該液晶表示素子用シール剤を用いて製造される上下導通材料及び液晶表示素子を提供することを目的とする。
本発明は、硬化性樹脂と、熱ラジカル重合開始剤と、熱硬化剤とを含有し、前記熱硬化剤は、25℃で粒子状のアミンアダクト系硬化剤を含有する液晶表示素子用シール剤である。