(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記腐食抑制粒子は、Ca、Si、Al、Mg及びFeのうち少なくとも1つの元素を主成分とする化合物であることを特徴とする請求項1に記載の腐食抑制装置付きボイラ。
前記腐食抑制粒子の単位時間当たりの吹込み重量は、粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、前記過熱器管が設けられている前記排ガス通路を通る単位時間当たりの重量と略等しい重量、又はそれよりも大きい重量であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の腐食抑制装置付きボイラ。
前記排ガス通路に設けられた一対の電極を有し、この一対の電極間の電気抵抗の変化に基づいて前記過熱器管の腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成する腐食検出手段と、
前記腐食検出手段が生成する前記腐食検出信号に基づいて前記腐食抑制装置を制御して、前記腐食抑制粒子の吹込み重量を制御する制御部とを備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の腐食抑制装置付きボイラ。
【背景技術】
【0002】
従来のボイラとして、燃料を燃焼炉で燃焼させ、その燃焼により発生する燃焼排ガスが有する熱によって過熱器で蒸気を過熱して、高温・高圧の過熱蒸気を発生するものがある。この過熱蒸気は、発電に利用することができる。
【0003】
ここで、近年にあっては、CO
2削減や廃棄物の熱利用の観点から、例えば建設廃材系木質等のバイオマスや、廃タイヤ及び廃プラスチック等の廃棄物をボイラの燃料として活用することが進められている。
【0004】
このようなバイオマス燃料や廃棄物燃料にあっては、燃料中に、例えばNaCl、KCl等の塩類や、鉛及び亜鉛等の重金属を含んでいる。従って、燃焼炉での燃焼により、例えば、KCl、NaCl、ZnCl
2、K
2SO
4、Na
2SO
4等から成る低融点(300°C程度)の溶融塩が生成され、このような溶融塩は、燃焼灰と共に後流側の過熱器に流れていく。この過熱器は、上記発電に利用される高温・高圧の蒸気を生成するものであるから、そのガス温度は、蒸気温度より高い温度に設定されており、流れて来たKCl、NaCl、ZnCl
2、K
2SO
4、Na
2SO
4等から成る溶融塩が、300°C以上の高温の過熱器を構成する過熱器管の表面に付着することによって、過熱器管が腐食するという問題を生じている。
【0005】
次に、このように過熱器管が腐食するという問題を解決するための従来のボイラの腐食防止方法の一例について説明する(例えば、特許文献1参照。)。
【0006】
このボイラの腐食防止方法は、所定量の所定の粒子(腐食防止粒子)を燃焼炉内に供給して、当該腐食防止粒子を、この燃焼炉内で生成される溶融塩の粒子(溶融塩粒子)に混合させるものである。この混合によって、溶融塩粒子は、良好に分散されて、この溶融塩粒子の表面が腐食防止粒子によって取り囲まれた状態となり、溶融塩粒子を腐食防止粒子によって希釈することができる。そして、この希釈された溶融塩粒子が、下流側の過熱器管の表面に付着することになるので、過熱器管の表面に付着する溶融塩粒子の濃度及び接触面積を、腐食防止粒子によって低減することができる。これによって、過熱器管の腐食を抑制しようとするものである。
【0007】
なお、腐食防止粒子は、その融点が燃焼炉の燃焼温度より高く、燃焼炉及び過熱器付近では溶融しないものであり、かつ、塩素分濃度、Na濃度、K濃度、重金属濃度が各々1000ppm以下であって、溶融塩成分を殆ど含まないものである。
【0008】
そして、腐食防止粒子の平均粒子径は、10〜20μmに規定されている。このように平均粒子径を規定したのは、平均粒子径が20μmを越えると、腐食防止粒子が大き過ぎて溶融塩粒子が腐食防止粒子に取り囲まれ難くなると共に、腐食防止粒子が過熱器管に付着し難くなる。また、腐食防止粒子の平均粒子径が10μmより小さいと、腐食防止粒子が小さ過ぎて燃焼排ガス流に乗って過熱器管を回り込み、腐食防止粒子が過熱器管に付着し難くなるためと考えられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記従来のボイラの腐食防止方法では、燃焼炉で生成される溶融塩粒子の表面に腐食防止粒子を付着させて、溶融塩粒子が直接に過熱器管に接触して付着しないようにして、過熱器管の腐食を防止するものであるので、当該ボイラで生成される溶融塩粒子の量に応じて多量の腐食防止粒子を燃焼炉内に供給する必要があり、腐食防止粒子のコストが嵩むと共に、この腐食防止粒子を含む燃焼灰の処理のためのコストも嵩む。
【0011】
ところで、本願の発明者は、過熱器管に付着する焼却灰のうち、過熱器管を腐食させる主要因となる物質は、粒子径が0.1〜10μmの極めて細かな粒子であることを解明している。
【0012】
このように、粒子径が0.1〜10μmの極めて細かな粒子が、過熱器管を腐食させる主要因となっている理由は、腐食の原因となるNaやKの塩化物は、粒子径が0.1〜10μmの粒子として多く存在しており、粒子径が10μmを超える粒子には、極端に少なくなるからであり、このことを本願の発明者は解明した。
【0013】
そうすると、上記従来のボイラの腐食防止方法によると、平均粒子径が10〜20μmの上記従来の腐食防止粒子が、過熱器管の表面に付着することができたとしても、その腐食防止粒子の外側表面にそれよりも粒子径が小さい0.1〜10μmの溶融塩粒子が付着すると、この粒子径の小さい溶融塩粒子が拡散して、粒子径が大きい腐食防止粒子どうしの隙間を通り抜けて、過熱器管の表面に付着することになる。
【0014】
よって、上記従来のボイラの腐食防止方法では、過熱器管の腐食を効果的に抑制することはできない。
【0015】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、過熱器管の腐食を効果的に抑制することができる腐食抑制装置付きボイラ及びボイラの腐食抑制方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る腐食抑制装置付きボイラは、燃焼排ガスが通る排ガス通路と、前記排ガス通路内に設けられている過熱器管と、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、前記排ガス通路内に吹き込んで前記過熱器管の表面に付着させることで、前記過熱器管の腐食を抑制するための腐食抑制装置とを備えることを特徴とするものである。
【0017】
本発明の作用を説明する前に、まず、この発明に係る腐食抑制装置付きボイラの基本原理について説明する。本願の発明者は、排ガス通路内に飛散する粒子径が0.1〜10μmであり、かつ、NaやKの塩化物を含む腐食性粒子が、過熱器管の金属界面やその外表面に形成される腐食層の表面(以下、単に「過熱器管の金属界面等」と言うこともある。)に付着することによって、過熱器管の腐食が進行することを究明した。そこで、当該腐食性粒子と同程度の粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、排ガス通路内に吹き込んで前記過熱器管の金属界面等に付着させることによって、0.1〜10μmの腐食性粒子が前記過熱器管の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、過熱器管の腐食の進行を抑制するようにした。
【0018】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラによると、腐食抑制装置を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、排ガス通路内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を過熱器管の金属界面等に対して熱泳動や慣性衝突によって付着させることができる。これによって、排ガス通路内で飛散する粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、過熱器管の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を減少させることができ、過熱器管の腐食の進行を抑制することができる。
【0019】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、上記腐食抑制粒子は、Ca、Si、Al、Mg及びFeのうち少なくとも1つの元素を主成分とする化合物であるものとするとよい。
【0020】
このように、比較的入手し易い元素を主成分とする化合物を使用して、過熱器管の腐食の進行を抑制することができる。
【0021】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、液体に前記腐食抑制粒子を混合して得られたスラリー状の混合物質、又は前記腐食抑制粒子よりも粒子径が大きい粉体に前記腐食抑制粒子を混合して得られた粉状の混合物質を、前記腐食抑制装置を使用して前記排ガス通路に吹き込むものとするとよい。
【0022】
このようにすると、排ガス通路に吹き込もうとする腐食抑制粒子の重量が小さい場合でも、腐食抑制装置を使用して、所望の重量の腐食抑制粒子を精度よく排ガス通路に吹き込むことが可能である。そして、腐食抑制粒子が混合される液体は、入手が容易であり安価であるものを使用することによって、そのコストの低減を図ることができる。また、腐食抑制粒子が混合される粉体として、腐食抑制粒子よりも粒子径の大きくて安価なもの、例えば焼却灰を使用することによって、当該粉体のコストの低減を図ることができる。
【0023】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラ
において、前記腐食抑制装置が前記腐食抑制粒子を吹き込む領域は、前記排ガス通路内のガス温度が
前記腐食抑制粒子の融点よりも低い領域であるものとするとよい。
そして、前記腐食抑制粒子の融点が800℃以上であって、前記腐食抑制装置が前記腐食抑制粒子を吹き込む領域は、前記排ガス通路内のガス温度が800℃よりも低い領域であるものとするとよい。
また、前記腐食抑制粒子の単位時間当たりの吹込み重量は、粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、前記過熱器管が設けられている前記排ガス通路を通る単位時間当たりの重量と略等しい重量、又はそれよりも大きい重量であるものとするとよい。
【0024】
このように、
腐食抑制粒子を、排ガス通路内のガス温度がその腐食抑制粒子の融点よりも低い領域に吹き込むことによって、更に詳しくは、融点が800℃以上の腐食抑制粒子を、排ガス通路内のガス温度が800℃よりも低い領域に吹き込むことによって、腐食抑制粒子が溶融して互いに結合することや、ガス中の成分の一部が腐食抑制粒子を核にして凝縮することで粒子径が大きくならないようにすることができ、腐食抑制粒子を、その粒子径が元の小さい状態で、過熱器管の金属界面やその外表面に形成される腐食層の表面全体に付着させることができる。これによって、過熱器管の表面全体の腐食の進行を効果的に抑制することができる。
【0025】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記排ガス通路に設けられた一対の電極を有し、この一対の電極間の電気抵抗の変化に基づいて前記過熱器管の腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成する腐食検出手段と、前記腐食検出手段が生成する前記腐食検出信号に基づいて前記腐食抑制装置を制御して、前記腐食抑制粒子の吹込み重量を制御する制御部とを備えるものとするとよい。
【0026】
このようにすると、腐食検出手段は、電極に燃焼灰が付着する状況において、一対の電極間の電気抵抗を検出して、その電気抵抗の変化に基づいて電極の腐食の程度を検出することができ、その電極の腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成することができる。従って、電極が過熱器管と同程度に腐食する状況に置くことによって、この腐食検出信号が、過熱器管の腐食の程度を表す信号として使用することができる。そして、制御部は、腐食検出手段が生成する腐食検出信号に基づいて、腐食抑制装置を制御して腐食抑制粒子の吹込み重量を制御することができる。これによって、制御部は、例えば過熱器管の腐食の進行が速いときは、腐食抑制粒子の吹込み重量を多くすることができ、そして、過熱器管の腐食の進行が遅いときは、腐食抑制粒子の吹込み重量を少なくすることができる。このようにして、過熱器管の腐食の程度に応じて適切な重量の腐食抑制粒子を排ガス通路内に吹き込むことができ、過熱器管の腐食を確実に抑制することができる。
【0027】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラにおいて、前記腐食抑制粒子は、ボイラで生成された燃焼灰であり、その粒子径が2μmを超えて10μm未満であるものとするとよい。
【0028】
このように、粒子径が2μmを超えて10μm未満の燃焼灰を、排ガス通路内に吹き込むことによって、過熱器管の腐食の進行を抑制することができるのは、粒子径が0.1μm以上であり2μm以下の燃焼灰は、腐食力が強いが、粒子径が2μmを超えて10μm未満の燃焼灰は、腐食力が弱いからである。従って、この腐食力が弱い粒子径が2μmを超えて10μm未満の燃焼灰を、排ガス通路内に吹き込むことによって、当該ボイラで生成される燃焼灰の腐食力を低減することができる。
【0029】
本発明に係るボイラの腐食抑制方法は、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を排ガス通路に吹き込んで、この排ガス通路内に設けられている過熱器管の表面に付着させることで、前記過熱器管の腐食を抑制することを特徴とするものである。
【0030】
本発明に係るボイラの腐食抑制方法によると、本発明に係る腐食抑制装置付きボイラと同様に作用する。
【発明の効果】
【0031】
この発明に係る腐食抑制装置付きボイラは、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、過熱器管の表面に付着させることによって、0.1〜10μmの腐食性粒子が過熱器管の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、これによって、過熱器管の腐食を抑制する構成である。従って、従来よりも効果的に過熱器管の腐食の進行を抑制することができる。よって、過熱器管の保守、点検費用の低減を図ることができ、ボイラを安定して長期間継続して使用できるようにすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
まず、本願発明に係る腐食抑制装置付きボイラの基本原理について説明する。本願の発明者は、
図1に示すボイラ19の第3煙道22内に飛散する粒子径が0.1〜10μmであり、かつ、NaやKの塩化物(例えばNaCl、KCl)を含む腐食性粒子(酸化剤としての粒子)が、第3煙道22内に設けられている過熱器管27の表面に付着することによって、過熱器管27の腐食が進行することを究明した。
【0034】
そこで、当該腐食性粒子と同程度の粒子径(0.1μm以上10μm未満)の腐食抑制粒子を、例えば第2煙道21内に吹き込んで過熱器管27の表面に付着させることによって、燃焼灰に含まれている粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が過熱器管27の表面に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、過熱器管27の腐食の進行を抑制するようにした。
【0035】
更に、この腐食抑制粒子による腐食抑制メカニズムについて詳しく説明する。
(1)粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子について
粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子は、主として熱泳動によって前記過熱器管27の金属界面等に付着する。そして、第3煙道22内を飛散する粒子のうち、粒子径が0.1〜2μmの粒子には、NaやKの塩化物を含む当該腐食性粒子が中心となって多く存在しており、当該腐食性粒子は、高い腐食力を有している。
【0036】
従って、これらの腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面等に付着することによって腐食が生じる。
【0037】
そこで、この発明に係る腐食抑制装置付きボイラ19によると、腐食抑制装置59(
図1には、腐食抑制装置59の吹込み口59aが表れている。)を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を、第3煙道22内に設けられている過熱器管27の金属界面等に対して熱泳動によって付着させることができる。これによって、第3煙道22内の粒子径が0.1〜2μmの腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を減少させることができ、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
(2)粒子径が2〜10μmの腐食性粒子について
粒子径が2〜10μmの腐食性粒子には、過熱器管27の金属界面等に対して熱泳動によって付着するものもあるが、慣性衝突によって過熱器管27の金属界面等に付着するものも多く存在している。
【0038】
そして、第3煙道22内に飛散する粒子(燃焼灰)のうち、粒子径が2〜10μmの粒子には、粒子径が0.1〜2μmの粒子と比較して、NaやKの塩化物を含む当該腐食性粒子よりも腐食性の弱い粒子が多く含まれているために、過熱器管27に対する腐食力は、前記(1)の場合よりも小さいと言える。
【0039】
また、腐食が進行するには、腐食性粒子が過熱器管27の金属界面等に連続的に付着することが必要であるが、腐食抑制装置59を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込んで、この吹き込んだ腐食抑制粒子が過熱器管27の金属界面等に対して慣性衝突や熱泳動によって付着すると、この過熱器管27の金属界面等に慣性衝突等によって付着する腐食性粒子が、過熱器管27の金属界面にまで拡散して付着することを抑制することができる。これによって、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
(3)粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子について(本願発明から除外される腐食抑制粒子)
腐食抑制装置59を使用して、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を過熱器管27の金属界面等に付着させた場合は、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子どうしの隙間から粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が入り込んで、過熱器管27の金属界面等に付着してしまう可能性が大きい。よって、粒子径が10μm以上の腐食抑制粒子を使用すると、過熱器管27の腐食を殆ど抑制することはできない。
【0040】
従って、本発明は、粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子と同程度の粒子径(0.1μm以上10μm未満)の腐食抑制粒子を、第2煙道21内に吹き込んで過熱器管27の表面に付着させることによって、0.1〜10μmの腐食性粒子が過熱器管27の表面に付着する付着重量及び付着面積を小さくして、過熱器管27の腐食の進行を抑制するようにした。
【0041】
次に、本発明に係る腐食抑制装置付きボイラ19及びボイラの腐食抑制方法の一実施形態を、
図1〜
図3を参照して説明する。
図1に示す腐食抑制装置付きボイラ(以下、単に「ボイラ」と言うこともある。)19は、燃料を燃焼炉10で燃焼させて、その燃焼により発生する燃焼排ガスが有する熱によって過熱器管27を過熱して、高温・高圧の過熱蒸気を発生することができるものである。
【0042】
そして、このボイラ19には、腐食抑制装置59が設けられており、この腐食抑制装置59が、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むことによって、この後流側に設けられている過熱器管27の腐食を抑制することができるようになっている。また、このボイラ19は、燃焼炉10としての例えばごみ焼却炉を適用している排熱ボイラであり、更に、過熱器管27を通して得られる高温・高圧の過熱蒸気を利用して発電を行う発電機11を備えている。
【0043】
ごみ焼却炉(燃焼炉)10は、
図1に示すように、ごみを供給するホッパ12を備えている。ホッパ12は、シュート13を介して主燃焼室14に繋がっており、ホッパ12から供給されたごみは、シュート13を通って主燃焼室14に送られる。主燃焼室14には、乾燥ストーカ15、燃焼ストーカ16及び後燃焼ストーカ17が設けられている。各ストーカ15,16,17の下方から一次空気が送られており、また主燃焼室14の天井14aから二次空気が送られている。
【0044】
図1に示す主燃焼室14のごみは、まず乾燥ストーカ15に送られ、一次空気及び主燃焼室14の輻射熱により乾燥され着火される。着火したごみは、燃焼ストーカ16に送られる。また着火したごみからは、熱分解により可燃性ガスが発生する。この可燃性のガスは、一次空気により主燃焼室14の上部のガス層に送られ、このガス層にて二次空気と共に炎燃焼する。この炎燃焼に伴う熱輻射によりごみは、更に昇温される。着火したごみの一部は、燃焼ストーカ16にて燃焼し、残りの未燃焼分は、後燃焼ストーカ17へと送られる。未燃焼分のごみは、後燃焼ストーカ17で燃焼させられ、燃焼後に残った焼却灰は、シュート18から外部へと排出される。
【0045】
また、主燃焼室14は、
図1に示すように、このボイラ19が備えている放射室20に接続されており、ごみの燃焼により生じた燃焼排ガスが、主燃焼室14から放射室20に送られてくる。この燃焼排ガスは、放射室20で再度燃焼した後に、ボイラ19の第2煙道21を通って第3煙道22へと導かれ、その後、図示しない排ガス処理設備で無害化の処理が成されてから大気に放出される。
【0046】
この
図1に示すボイラ19には、放射室20及び第2煙道21を規定する壁の各々に、ボイラドラム24に接続された複数の水管23が設けられている。水管23は、例えば炭素鋼(例えば、STB340)で形成され、その中にボイラドラム24から送られてくる水が流れている。水管23内の水は、放射室又は第2煙道20,21の廃熱を回収して、その一部が蒸発して汽水となりボイラドラム24へと戻される。ボイラドラム24に戻った汽水は、一部が気化して蒸気となっている。蒸気は、ボイラドラム24から第3煙道22に設けられた過熱器25へと送られて、過熱される。このように過熱されて高温高圧となった過熱蒸気は、タービン26へと送られ、発電機11を駆動する。
【0047】
上記のように構成されたボイラ19によると、燃焼時に揮発した物質、並びに、焼却灰の一部(総称して「焼却灰等」と言う。)が燃焼排ガスにより放射室及び第2煙道20,21、並びに第3煙道22へと運ばれ、そして水管23及び過熱器25の過熱器管27に付着して堆積する。このような焼却灰等は、高い腐食性を有しており、高温の過熱器25の過熱器管27を腐食させる要因となっている。
【0048】
次に、腐食抑制装置59について説明する。この腐食抑制装置59は、
図1に示す過熱器管27の腐食を抑制するための装置であり、ボイラ19の第2煙道21を形成する側壁部に対して設けられている。そして、この腐食抑制装置59は、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むことができる粒子供給装置であり、
図1には、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むための吹込み口59aが表れている。
【0049】
この腐食抑制粒子は、粒子径が0.1μm以上10μm未満の粒子であって、Ca、Si、Al、Mg及びFeのうち少なくとも1つの元素を主成分とする化合物であり、例えばCaO、SiO
2である。
【0050】
そして、この腐食抑制粒子は、融点が800℃以上である。腐食抑制装置59がこの腐食抑制粒子を吹き込む領域は、その吹き込まれた領域の燃焼排ガスによって、腐食抑制粒子が溶融して互いに結合しないように、又は(及び)、ガス中の成分の一部が腐食抑制粒子を核にして凝縮して粒子径が大きくならないようなガス温度の領域である。つまり、この実施形態では、腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むようにしてあり、この第2煙道21は、その内側を流れる燃焼排ガスのガス温度が800℃よりも低い領域である。
【0051】
更に、この実施形態では、水等の液体に腐食抑制粒子を混合して得られたスラリー状の混合物質、又は腐食抑制粒子よりも粒子径が大きい粉体(例えば焼却灰)に腐食抑制粒子を混合して得られた粉状の混合物質を、腐食抑制装置59を使用して第2煙道21内に吹き込むようにしている。
【0052】
次に、
図1及び
図2に示す腐食検出装置30、制御部100及び腐食抑制装置59について説明する。
【0053】
腐食検出装置30は、
図1に示すように、ボイラ19の第3煙道22の側壁部であって、過熱器25よりも燃焼排ガスの流れ方向の上流側に設けられ、先端の検出部が第3煙道22内に位置している。この腐食検出装置30は、第3煙道22内に設けられた一対の電極45、47(検出部であり後述する
図3参照)を有し、この一対の電極45、47間の電気抵抗の変化に基づいて過熱器管27の腐食の程度を検出して、その腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成するようになっている。
【0054】
制御部100は、腐食検出装置30が生成する腐食検出信号に基づいて腐食抑制装置59を制御して、腐食抑制粒子の吹込み重量を制御するものである。
【0055】
次に、上記のように構成された腐食抑制装置付きボイラ19の作用について説明する。この実施形態に係る腐食抑制装置付きボイラ19によると、
図1に示す腐食抑制装置59を使用して、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子(例えばCaO、SiO
2)を、第2煙道21内に吹き込むことによって、この吹き込んだ腐食抑制粒子を過熱器管27の金属界面やその外表面に形成される腐食層の表面(過熱器管27の金属界面等)に対して熱泳動や慣性衝突によって付着させることができる。これによって、第3煙道22内で飛散する粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子(例えばKCl、NaCl)が、過熱器管27の金属界面等に付着する付着重量及び付着面積を減少させることができ、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
【0056】
従って、従来よりも効果的に過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。よって、過熱器管27の保守、点検費用の低減を図ることができ、ボイラ19を安定して長期間継続して使用できるようにすることができる。
【0057】
そして、腐食抑制粒子は、Ca、Si、Al、Mg及びFeのうち少なくとも1つの元素を主成分とする化合物であるので、比較的入手し易い元素を主成分とする化合物を使用して、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができる。
【0058】
また、水等の液体に腐食抑制粒子を混合して得られたスラリー状の混合物質、又は腐食抑制粒子よりも粒子径が大きい粉体(例えば焼却灰)に腐食抑制粒子を混合して得られた粉状の混合物質を、腐食抑制装置59を使用して第2煙道21内に吹き込むようにしているので、第2煙道21内に吹き込もうとする腐食抑制粒子の重量が小さい場合でも、腐食抑制装置59を使用して、所望の重量の腐食抑制粒子を精度よく第2煙道21内に吹き込むことができる。そして、腐食抑制粒子が混合される液体として水を採用すると、水は、入手が容易であり安価であるので経済的である。また、腐食抑制粒子が混合される粉体として、腐食抑制粒子よりも粒子径の大きい安価なもの、例えば焼却灰を使用することによって、当該粉体のコストの低減を図ることができる。
【0059】
更に、融点が800℃以上の腐食抑制粒子を採用しており、このような腐食抑制粒子を、ガス温度が800℃よりも低い第2煙道21内に吹き込むことによって、腐食抑制粒子の粒子径が大きくならないようにすることができ、腐食抑制粒子を、その粒子径が元の小さい状態で、過熱器管27の金属界面やその外表面に形成される腐食層の表面全体に付着させることができる。これによって、過熱器管27の表面全体の腐食の進行を効果的に抑制することができる。
【0060】
そして、
図2に示す腐食検出装置30によると、この腐食検出装置30が備えている電極45、47に燃焼灰が付着する状況において、一対の電極45、47間の電気抵抗を検出して、その電気抵抗の変化に基づいて当該電極45、47の腐食の程度を検出することができ、その電極45、47の腐食の程度と対応する腐食検出信号を生成することができる。従って、当該電極45、47が過熱器管27と同程度に腐食する状況に置かれていることによって、この腐食検出信号を、過熱器管27の腐食の程度を表す信号として使用することができる。
【0061】
そして、制御部100は、腐食検出装置30が生成する腐食検出信号に基づいて、腐食抑制装置59を制御して腐食抑制粒子の吹込み重量を制御することができる。これによって、制御部100は、例えば過熱器管27の腐食の進行が速いときは、腐食抑制粒子の吹込み重量を多くすることができ、そして、過熱器管27の腐食の進行が遅いときは、腐食抑制粒子の吹込み重量を少なくすることができる。このようにして、過熱器管27の腐食の程度(例えば腐食量、腐食速度)に応じて、腐食を抑制でき、しかも経済的な重量の腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込むことができ、過熱器管27の腐食を確実に抑制することができる。
【0062】
次に、
図3を参照して、この実施形態で使用されている腐食検出装置30について更に詳しく説明する。腐食検出装置30は、腐食センサ31と、電気化学測定器32と、端末機33と、送風機34と、流量調整器35と、バルブ36を備えている。送風機34と流量調整器35は電極を冷却する冷却機構37を構成している。
【0063】
腐食センサ31は、ステンレス鋼から成る長尺円筒の保護管40を備えている。保護管40は、その内壁により冷却空気を流すための冷却通路40aが形作られている。保護管40の先端側の周面には、検出部である試料電極45、参照電極46および対極47の一端がボイラ19内に露出している。腐食センサ31は、ボイラ19の第3煙道22の側壁部であって、過熱器25よりも燃焼排ガスの流れ方向の上流側に設けられ、先端の検出部が第3煙道22内に位置している。
【0064】
上記各電極45,46,47に接続されたリード線51,54,55は、保護管40内を通じてボイラ19の外部に位置する当該保護管40の基端部の外まで引き出され、電気化学測定器32と電気的に接続されている。同様に、試料電極用熱電対53、保護管用熱電対56およびガス温度用熱電対57は、保護管40内を通じて当該保護管40の基端部の外まで引き出され、流量調整器35と電気的に接続されている。また、保護管40の基端部には、保護管40内の冷却通路40aに冷却空気を送るための送風機34が接続されている。
【0065】
送風機34には、送風機34からの流量を制御するための流量調整器35が設けられている。また送風機34と冷却通路40aとの間には、空気量を調整するためのバルブ36が設けられている。流量調整器35は、前述の通り、熱電対53に接続されており、熱電対53からの出力に応じて、試料電極45の温度が予め定められた温度と等しくなるように、バルブ36の開度と送風機34からの冷却空気の流量を制御する。本実施形態では、試料電極45の温度が過熱器管27の温度と等しくなるように制御される。これにより、試料電極45が置かれた環境と過熱器管27が置かれた環境とを同じ状態とすることができるので、より正確に過熱器管27の腐食状態を推定することができる。
【0066】
電気化学測定器32は、公知の電気化学インピーダンス法により、試料電極45の腐食速度を計測する装置である。
【0067】
上記のように腐食センサ31を用いて推定された過熱器管27の腐食速度、及びこの腐食速度を演算して得られた腐食量(腐食検出信号)は、腐食検出装置30の端末機33から制御部100へ送信される。
【0068】
次に、
図4〜
図7の説明をする。
図4は、粒子径が異なる燃焼灰中における各成分割合を示している。
図4では、Ca(カルシウム)、Cl(塩素)、Na+K(ナトリウム、カリウム)の合計が1となるように表してある。そして、粒子径が小の粒子とは、粒子径Dp≦2μmの粒子である。粒子径が中の粒子とは、2μm<粒子径Dp<10μmの粒子である。粒子径が大の粒子とは、粒子径Dp>10μmの粒子である。
【0069】
この
図4から分かるように、粒子径が小の燃焼灰(粒子)は、約98%が腐食力の強いCl及びNa+Kで構成され、腐食力を有しない不活性なCaが僅かに含まれている。よって、粒子径が小の燃焼灰は、腐食力が極めて強いと言える。
【0070】
粒子径が中の燃焼灰は、約62%が腐食力の強いCl及びNa+Kで構成されているが、残りの約38%は、腐食力を有しないCaで構成されている。よって、粒子径が中の燃焼灰は、粒子径が小の燃焼灰よりも腐食力が弱いと言える。
【0071】
粒子径が大の燃焼灰は、約38%が腐食力の強いCl及びNa+Kで構成されているが、残りの約62%は、腐食力を有しないCaで構成されている。よって、粒子径が大の燃焼灰は、粒子径が小、中の燃焼灰よりも腐食力が弱いと言える。
【0072】
図5は、粒子径の異なる燃焼灰による過熱器管27を模擬した条件での金属片(以下、「模擬過熱器管」と言う。)の腐食量を示している。この
図5から分かるように、粒子径が小の燃焼灰は、粒子径が中の燃焼灰と比較して、腐食力が極めて強いと言える。そして、粒子径が中の燃焼灰は、腐食力が弱いと言える。図には示さないが、粒子径が大の燃焼灰は、腐食力が極めて弱いものである。
【0073】
図6は、腐食抑制粒子の添加割合と模擬過熱器管の腐食量との関係を示す図である。つまり、腐食性の強い粒子径が小の燃焼灰に対して、粒子径が小の腐食抑制粒子を添加する場合において、この腐食抑制粒子の添加割合を増加させていくと、模擬過熱器管の腐食量が低減していくことが分かる。この図から分かるように、腐食抑制粒子の添加割合を約50%程度にすると、腐食抑制粒子を添加しない場合と比較して、腐食量を約2/5に低減することができ、大きな腐食抑制効果を得ることができる。
【0074】
図7は、燃焼灰の添加割合と模擬過熱器管の腐食量との関係を示す図である。
図6では、粒子径が小の腐食抑制粒子を、腐食性の強い粒子径が小の燃焼灰に添加したが、
図7では、粒子径が中の燃焼灰を、腐食性の強い粒子径が小の燃焼灰に添加した例を示している。この粒子径が中の燃焼灰は、
図5から分かるように、腐食性が極めて弱いので、添加割合を約50%程度にすると、大きな腐食抑制効果を得ることができることが分かる。
【0075】
ただし、上記実施形態では、
図1に示すように、ボイラ19の燃焼炉10として、例えばごみ焼却炉10を例として挙げたが、これ以外の燃焼炉を適用することができ、例えば重油を燃料とする燃焼炉を適用することができる。
【0076】
そして、上記実施形態では、
図1に示すように、ボイラ19の燃焼炉10として、例えばストーカ式の燃焼炉を例に挙げたが、これ以外の形式の燃焼炉を適用することができ、例えば燃料を流動層で流動させながら燃焼させる流動層炉を適用することができる。
【0077】
また、上記実施形態では、
図3に示す腐食検出装置30を使用して、過熱器管27の腐食の程度を検出したが、これ以外の腐食検出装置を使用してもよい。
【0078】
更に、上記実施形態では、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、過熱器管27よりも上流側の第2煙道21内に吹き込んだが、これに代えて、過熱器管27が設けられている第3煙道22内に吹き込むようにしてもよい。
【0079】
そして、上記実施形態では、粒子径が0.1μm以上10μm未満の腐食抑制粒子を、過熱器管27よりも上流側の第2煙道21内に吹き込んだが、これに代えて、ボイラ19で生成された燃焼灰であり、その粒子径が2μmを超えて10μm未満の燃焼灰(粒子径が中の燃焼灰)を、過熱器管27よりも上流側の第2煙道21内に吹き込むようにしてもよい。
【0080】
このようにしても、過熱器管27の腐食の進行を抑制することができるのは、
図5に示すように、粒子径が0.1μm以上であり2μm以下の燃焼灰(粒子径が小の燃焼灰)は、腐食力が強いが、粒子径が2μmを超えて10μm未満の燃焼灰(粒子径が中の燃焼灰)は、腐食力が弱いからである。従って、この腐食力が弱い粒子径が中の燃焼灰を、第2煙道21内に吹き込むことによって、当該ボイラで生成される燃焼灰の腐食力を低減することができる(
図7参照)。
【0081】
また、上記実施形態では、制御部100が、腐食検出装置30が生成する腐食検出信号に基づいて腐食抑制装置59を制御して、腐食抑制粒子の吹込み重量を制御するようにしたが、これに代えて、下記のようにして腐食抑制粒子の吹込み重量を制御してもよい。
【0082】
例えば腐食抑制装置59が腐食抑制粒子を第2煙道21内に吹き込む単位時間当たりの吹込み重量を、燃焼灰に含まれている粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、過熱器管27が設けられている第3煙道22を通る単位時間当たりの重量と略等しい重量、又はそれよりも大きい重量とすることができる。
【0083】
この燃焼灰に含まれている粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、過熱器管27が設けられている第3煙道22を通る単位時間当たりの重量を求める方法として、例えば、まず、実際に第3煙道22を通る単位時間当たりの燃焼灰を採取して、この燃焼灰に含まれている粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子の重量を計測することによって得ることができる。また、この粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子の重量データに基づいて、ボイラに供給される燃料の質、供給量及び燃焼条件や環境等に応じて、粒子径が0.1〜10μmの腐食性粒子が、過熱器管27が設けられている第3煙道22を通る単位時間当たりの重量を推定することができる。