(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046892
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】インフュージョンカテーテル
(51)【国際特許分類】
A61M 25/10 20130101AFI20161212BHJP
【FI】
A61M25/10 510
A61M25/10 520
【請求項の数】6
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-279011(P2011-279011)
(22)【出願日】2011年12月20日
(65)【公開番号】特開2013-128602(P2013-128602A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年10月16日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】100075409
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久一
(74)【代理人】
【識別番号】100129757
【弁理士】
【氏名又は名称】植木 久彦
(74)【代理人】
【識別番号】100115082
【弁理士】
【氏名又は名称】菅河 忠志
(74)【代理人】
【識別番号】100125243
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 浩彰
(72)【発明者】
【氏名】金藤 健
【審査官】
金丸 治之
(56)【参考文献】
【文献】
特表平08−511965(JP,A)
【文献】
特表2010−540185(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外側バルーンと内側バルーンとが二重構造となっており、
内側バルーンと、
微小ホールを有する外側バルーンと、
前記内側バルーンと前記外側バルーンの間に密着を阻害する構造を有し、
該内側バルーンと該外側バルーンの間に周方向全体に延びている微小空間を有することを特徴とするインフュージョンカテーテル。
【請求項2】
前記内側バルーンと前記外側バルーンの間に微小繊維が存在することで、密着が阻害されることを特徴とする請求項1に記載のインフュージョンカテーテル。
【請求項3】
前記微小繊維は、前記内側バルーンと外側バルーンの間の空間の全長に渡り、前記内側バルーンの形状に沿って配置されている請求項2に記載のインフュージョンカテーテル。
【請求項4】
前記微小空間がインフュージョン流路であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載のインフュージョンカテーテル。
【請求項5】
前記内側バルーンを拡張することで狭窄部を拡張可能であることを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載のインフュージョンカテーテル。
【請求項6】
前記内側バルーンは前記外側バルーンの内側に全体が位置することを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載のインフュージョンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状器官を通して生体内の所要の箇所に所要の物質を注入させるためのインフュージョンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、外科的手術を伴う生体の治療には種々の問題がある。例えば、施術される患者においては長時間の手術に耐えなければならず、また術者においては、長時間にわたって神経を集中させることを強いられ、感染などの危険性も比較的高い。このような種々の負担を軽減し、必要な手術をより安全に、かつ簡便に実行するために、最近においては、カテーテルやガイドワイヤー、ステント、その他各種の医療機器が開発され、実用に供されている。
【0003】
例えば、バルーンカテーテルなどの医療機器における最近の進歩により、血管内から所要の患部にアプローチする血管内治療が実行されるようになってきており、特に狭心症、心筋梗塞などの虚血性心疾患の治療に多く適用されるようになってきた。
【0004】
しかし、一度治療しても、一度詰まった血管は再び詰まる「再狭窄」が起こり易い傾向があり、バルーンカテーテルを用いた血管内治療を繰り返さなければならなかった。
【0005】
そこで、ステント及び平滑筋細胞の増殖を抑える薬をステントに塗ったDES(Drug Eluting Stent)と呼ばれるデバイスが登場し、バルーンカテーテルのみでの治療での再狭窄率は30%〜40%であったが、ステントの登場で20%〜30%となり、DESによって10%にまで低減した。但し、血栓が発生し、血管が詰まる「ステント血栓症」の発生が問題となっている。
【0006】
このような事情から、再狭窄率が低く、ステント血栓症が起こらないことが求められる。そのためにはステントを用いず、再狭窄率を低減することが必要となる。求められる機能を有するデバイスとして、体内に異物を置かず、薬剤を患部に局所投与できるインフュージョンカテーテルが知られている。
【0007】
例えば、特許文献1では、バルーンの外表面に薬物が通る導管が配置され、該導管の外壁に穴があるため、該穴から薬物を放出できるバルーンカテーテルが開示されている。構成とされる。しかしながら、特許文献1のバルーンカテーテルは、例えば、目的箇所が局所的に硬く、病変部の一部の血管内径が小さい場合には、それより先の微小ホールから薬剤を放出することが難しく、すべての微小ホールから均等に薬剤を放出することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表平11−503039号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来技術が有する課題に鑑みてなされたものであり、病変部に均等に薬剤を塗布することができるインフュージョンカテーテルを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、前記課題に基づき鋭意検討を行なった結果、内側バルーンと、微小ホールを有する外側バルーンを有するバルーンカテーテルにおいて、該内側バルーンと該外側バルーンの間に密着を阻害する構造が存在することにより、すべての微小ホールから均等に薬剤を放出することができることを見出し、本発明を完成させるに至った。すなわち本発明は、内側バルーンと、微小ホールを有する外側バルーンと、該内側バルーンと該外側バルーンの間に密着を阻害する構造を有し、該内側バルーンと該外側バルーンの間に微小空間を有することを特徴とするインフュージョンカテーテルに関するものである。
【0011】
また本発明は、前記内側バルーンと前記外側バルーンの間に微小繊維が存在することで、密着が阻害されることを特徴とするインフュージョンカテーテルに関する。
【0012】
また本発明は、前記微小空間がインフュージョン流路であることを特徴とするインフュージョンカテーテルに関する。
【0013】
また本発明は、前記内側バルーンを拡張することで狭窄部を拡張可能であることを特徴とするインフュージョンカテーテルに関する。
【0014】
また本発明は、前記内側バルーンは前記外側バルーンの内側に全体が位置することを特徴とするインフュージョンカテーテルに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明品のインフュージョンカテーテルによれば、如何なるときも内側バルーンと外側バルーンの間に微小空間を有するため、全ての微小ホールから均等に薬剤を放出できることから、目的箇所が局所的に硬く、病変部の一部の血管内径が小さい場合にも、病変部に均等に薬剤を塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のインフュージョンカテーテル全体図である。
【
図2】本発明のインフュージョンカテーテルの全体図(一部断面図)である。
【
図3】本発明のインフュージョンカテーテルバルーン部詳細図である。
【
図5】内側バルーンにバルーン間ファイバー(微小繊維)を配置した状態を示す図である。
【
図7】ガイドワイヤー開口部と基端部の詳細図である。
【
図8a】
図2の(A)における軸方向の断面図である。
【
図8b】
図2の(B)における軸方向の断面図である。
【
図8c】
図2の(C)における軸方向の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、内側バルーンと、微小ホールを有する外側バルーンを有し、該内側バルーンと該外側バルーンの間に微小空間を有することを特徴とするインフュージョンカテーテルに関するものである。
【0018】
本発明のインフュージョンカテーテルは、
図1、2のようにインフュージョンカテーテルの遠位側のみにガイドワイヤー通過用チューブ16が配設される高速交換型(RX型)カテーテルまたは、オーバーザワイヤー型に関するものである。
図1および
図2は、本発明のインフュージョンカテーテルの全体を示しているが、近位側から順にハブ40、手元部チューブ30、先端部チューブ20、バルーン10が存在する。
【0019】
バルーン10は、微小ホールを有する外側バルーン12と内側バルーン14の二重構造となっており、
図6に示すように、遠位側は外側バルーン12、内側バルーン14ともにガイドワイヤー通過用チューブ16に熱融着あるいは接着剤によって接着されている。近位側は、外側バルーン12は、内側バルーン14それぞれ先端部チューブ20の外管25と内管26に熱融着あるいは接着剤によって接着されている。
【0020】
このようにして先端部チューブ20には三つのルーメンが形成される。
図7の実施態様は、コアキシャル構造の例を示しているが、これらルーメンをパラレル構造に配置することも可能である。一つのルーメンは遠位側がガイドワイヤー通過用チューブ16近位側と接合され、近位側にガイドワイヤーポートが形成されたガイドワイヤールーメンであり、一つのルーメンは遠位側が内側バルーン14近位側と接合され、近位側が手元部チューブ30遠位側と接合されることで形成されたインフレーションルーメンであり、もう一つのルーメンは遠位側が外側バルーン12近位側と接合され、近位側が手元部チューブ30遠位側と接合されることで形成されたインフュージョンルーメンである。ガイドワイヤールーメンはバルーンカテーテルを誘導するガイドワイヤーと呼ばれる金属製ワイヤーを通すための通路、インフレーションルーメンはバルーンを膨らませるための液体が通るための通路、インフュージョンルーメンは薬剤が通るための通路である。
【0021】
手元部チューブ30は二つのルーメンを有する二孔チューブである。
図7の実施態様ではコアキシャル構造の例を示しているが、パラレル構造に配置することも可能である。手元部チューブは先端部チューブ20の二つのルーメン、インフレーションルーメンとインフュージョンルーメンを延長するように形成されている。手元部チューブの第1ルーメンは遠位側が先端部チューブ20近位側のインフレーションルーメンと接合され、第1ルーメンの近位側がハブ40遠位側と接合されることで形成され、インフレーションルーメンをハブ40まで延長している。手元部チューブの第2ルーメンは遠位側が先端部チューブ20近位側のインフュージョンルーメンと接合され、第2ルーメンの近位側がハブ40遠位側と接合されることで形成され、インフュージョンルーメンをハブ40まで延長している。ハブ40と手元部チューブの接続に際し、図に示すようにストレインレリーフ39を設けても良い。
【0022】
ハブ40は遠位側に開口を一つ形成され、近位側に2つの開口(7Cと7D)が形成されている。
【0023】
図2および
図7に示すように、先端部チューブ20と手元部チューブ30内には、インフュージョンカテーテルの遠位側の剛性を高めることを目的にコアワイヤー32が配置されている。また、
図6に示すとおり、内側バルーン14内のガイドワイヤー通過用チューブ16には位置マーカー18が存在する。
【0024】
先端部チューブ20、手元部チューブ30、ガイドワイヤー通過用チューブ16の材質は特に限定はされない。つまり、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン、ポリウレタンエラストマーなどが使用可能である。
【0025】
コアワイヤー32の材質としてはステンレス、C−Mn−Si−P−S−Cr−Mo−Ni−Fe−X(X=Au,Os,Pd,Re,Ta,Ir,Ru)合金、C−Mn−Si−P−S−Cr−Mo−Ni−X(X=Au,Os,Pd,Re,Ta,Ir,Ru)合金、銅、ニッケル、チタン、ピアノ線、Co−Cr合金、Ni−Ti合金、Ni−Ti−Co合金、Ni−Al合金、Cu−Zn合金、Cu−Zn−X合金(例えば、X=Be、Si、Sn、Al、Ga)のような合金、アモルファス合金等の各種金属素線が用いられ、これらの材料のうち、適度な剛性を有し、加工性、経済性、毒性がないこと等の理由から、ステンレスの使用が好ましい。コアワイヤー32の形状としては手元部チューブ30の領域で徐々に細くなるようにテーパーがかかり、先端部チューブ20の領域で一定の直径を有することが好ましい。
【0026】
位置マーカー18の材質としては白金、金など、X線不透過性の高い金属を使用することが好ましい。
【0027】
本発明の内側バルーン14としては、先端部チューブ20の遠位端とガイドワイヤー通過用チューブ16の遠位端に固定される。該ガイドワイヤー通過用チューブ16の先端には、先端開口部が設けられている。内側バルーン14は、内圧調節により膨張・収縮可能である。内側バルーン14の製造方法としては、ディッピング成形、ブロー成形等があり、前記医療用バルーンカテーテルの使用用途に応じて適当な方法を選択することができる。中でも、血管或いは体腔の狭窄部を拡張治療する目的の医療用バルーンカテーテルの場合は、十分な耐圧強度を得るためブロー成形が好ましい。例を挙げると、まず、押出成形等により任意寸法のチューブ状パリソンを成形する。このチューブ状パリソンを当該バルーン形状に一致する型を有する金型内に配置し、二軸延伸工程により軸方向と径方向とに延伸することにより、前記金型と同一形状のバルーンを成形する。尚、前記二軸延伸工程は加熱条件下で行われても良いし、複数回行われてもよい。また、軸方向の延伸については径方向の延伸と同時にもしくはその前後に行われても良い。さらに、バルーンの形状や寸法を安定化させるため、バルーンにアニーリング処理を施しても良い。内側バルーン14は
図4ないし
図6に示すように直管部14aとその遠位側及び近位側に液密に接合を行うためのスリーブ部14bを有し、直管部と接合部の間にテーパー部14cを有している。前記内側バルーン14の寸法は、前記医療用バルーンカテーテルの使用用途により決定されるが、内圧調節により拡張されたときの直管部14aの外径が1.50〜35.00mm、好ましくは1.50〜30.00mmであり、直管部14aの長さが10.00〜80.00mm、好ましくは10.00〜60.00mmである。前記チューブ状パリソンの樹脂材料は特に限定されるものではなく、例えば、ポリオレフィン、ポリオレフィンエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリウレタン及びポリウレタンエラストマーなどが使用可能であり、これら樹脂材料の2種以上を混合したブレンド材料や2種以上の積層による多層構造を有していても構わない。血管内の狭窄部を拡張可能であることが好ましい。
【0028】
本発明の微小ホール13としては、
図1〜3に示すように外側バルーンの直管部に配置され、直径1〜50μmであることが好ましい。また、微小ホール13を外側バルーン12に作製する方法としては、外側バルーン12の内側に内側バルーン14を配置させる以前に、微細加工が可能なレーザーによる加工が好ましい。
【0029】
本発明の外側バルーン12としては、先端部チューブ20の遠位端とガイドワイヤー通過用チューブ16の遠位端に固定される。外側バルーン12の性能、材質及び製造方法は前記内側バルーン14と同様でよいが、内側バルーン14拡張時に、内側バルーン14の拡張を大きく妨げないことが好ましい。
図2のように直管部に複数の微小ホール13を有することが好ましい。
【0030】
本発明の微小空間15としては、内側バルーン14外表面と外側バルーン12内表面との距離が半径方向に2〜100μmであることが好ましい。特に外側バルーン12と内側バルーン14の間に、繊維であるバルーン間ファイバー(微小繊維)を配置することで、微小空間15を作り出すことが好ましいが、それに限定されるものではなく、例えば、外側バルーンの内表面または内側バルーンの外表面またはその両方に微小な突起または微小な溝が配置されてもよい。
【0031】
例えば、本発明のインフュージョンカテーテルは、バルーン部を目的箇所例えば狭窄した血管病変部内に配置した上で内側バルーン14を拡張することにより、病変部を拡張し、外側バルーン12を血管壁に押し当てた状態とし、次に外側バルーン12と内側バルーン14の間に薬剤を用いて加圧することで微小ホール13より薬剤が染み出し、血管壁に薬剤を塗布することができる。
【0032】
本発明のインフュージョンカテーテルは、公知のインフュージョンカテーテルと同様の使用方法であるが、例えば目的箇所が局所的に硬く、病変部の一部の血管内径が小さい場合には、それより先の微小ホールから薬剤を放出することが難しく、全ての微小ホールから均等に薬剤を放出することができないが、本発明のインフュージョンカテーテルは、如何なるときも内側バルーン14と外側バルーン12の間に微小空間15を有するため、全ての微小ホール13から均等に薬剤を放出することができる。
【実施例】
【0033】
以下、本発明の1実施形態を表す図を用いて説明する(但し、本発明は、この1実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨が損なわれない範囲で各種変更を行うことが可能である。)。
【0034】
図1ないし
図2は、本発明の1実施形態であるインフュージョンカテーテルの全体図を表す図である。インフュージョンカテーテルのバルーン部は、
図6に示すように内側バルーン14、外側バルーン12、バルーン間ファイバー23、から構成され、インナーチューブ(ガイドワイヤー通過用チューブ)16、更には先端チューブ20、手元部チューブ30が各々接続されて形成されている。これらの接続は、溶着によって接合される構造とした。接続箇所は、バルーン先端側、バルーン手元側、先端シャフト手元側の3点であり、バルーン先端側では、内側バルーンのスリーブ部14b、外側バルーンのスリーブ部12b、バルーン間ファイバー23、インナーチューブ16が接続され、バルーン手元側では、内側バルーンのスリーブ部14b、は手元部チューブの内管23に接続され、バルーン間ファイバー230と外側バルーンのスリーブ部12bは、手元部チューブの外管23に接続されている。先端部チューブ20の基端部は、手元部チューブの先端部30は接続されており、接続部付近にガイドワイヤールーメンの近位側開口部7Bが形成されている。
【0035】
図8aにバルーン部分の断面図を示す。
図8aに示される内側バルーン14、外側バルーン12、バルーン間ファイバー23、インナーチューブ16は、内側からインナーチューブ16、内側バルーン14、バルーン間ファイバー23、外側バルーン12の順のコアキシャル構造である。内側バルーン14、外側バルーン12の作製方法は既存のバルーンカテーテルのバルーンと同様の以下の方法で作製した。押出成形によりポリアミドエラストマーのチューブ状パリソンを成形し、このチューブ状パリソンを当該バルーン形状に一致する型を有する金型内に配置し、二軸延伸工程により軸方向と径方向とに延伸することにより、前記金型と同一形状のバルーンを成形する。前記金型は、内側バルーン14用の径はφ2.5mm、長さは15mmであり、外側バルーン12用の径はφ3.0mm、長さは20mmである。さらに、外側バルーン12には、直径φ10μmの微小ホール222を周方向に4個×軸方向に5個、計20個レーザー加工によって作製した。バルーン間ファイバー23は、
図5に示す通り、バルーン先端側で連結することで、内側バルーン14の外側に被せるように配置し、さらにその上から外側バルーン12を被せることで、内側バルーン14と外側バルーン12の間に配置した。
【0036】
図8bに先端チューブ20の断面図を示す。
図8bに示される先端シャフトチューブ内には、インナーチューブ(ガイドワイヤーチューブ)16が配置され、ガイドワイヤールーメン70、インフレーションルーメン50、インフュージョンルーメン60が形成されている。構造はコアキシャル構造であり、内側からガイドワイヤールーメン70、インフレーションルーメン50、インフュージョンルーメン60の順である。
【0037】
図8cに手元部チューブ30の断面図を示す。
図8cに示される手元部チューブ30は、インフレーションルーメン50、インフュージョンルーメン60が形成されている。構造はコアキシャル構造であり、内側からインフレーションルーメン50、インフュージョンルーメン60の順である。近位端には、ハブが接合されており、インフレーションルーメン50、インフュージョンルーメン60に連通している。
【0038】
また、内側バルーン14、外側バルーン12、バルーン間ファイバー23、インナーチューブ16、先端チューブ20は任意の材料で作製すればよいが、熱溶着可能な樹脂材料を用いて作製した。手元部チューブ30は任意の材料で作製すればよいが、熱溶着可能な樹脂材料及び金属材料を用いて作製した。
【0039】
比較例として、上記実施例の構造から、バルーン間ファイバー23を除いた構造のものを作製した。
【0040】
作製した実施例と比較例を評価するために、一部が小径のくびれた狭窄モデルを作製し、その狭窄モデル内で実施例及び比較例を拡張し、小径部で遮断されることなく、薬剤が均等に塗布できるか否かを検証した。薬剤の出方を確認するため薬剤の代わりに観察しやすい赤インクを使用した。
【0041】
比較例をくびれ狭窄モデル内に留置し、内側バルーンに8atm(推奨圧力)をかけた状態で、外側バルーンを除々に加圧し、2atm時にインフュージョンが開始され、くびれ狭窄モデルの近位側と遠位側のみにインフュージョンされた。小径部で外側バルーンにシワが寄り、そのシワ部分伝いに近位側と遠位側に流れる様子であった。そのため、バルーン間全体に赤インクが行きわたらないことが確認された。
【0042】
実施例をくびれ狭窄モデル内に留置し、内側バルーンに8atm(推奨圧力)をかけた状態で、外側バルーンを除々に加圧し、1atm に到達する以前にバルーン間全体に赤インクが行きわたり、1atm時にはインフュージョンが開始され、バルーン全体からインフュージョンされ、くびれ狭窄モデル全体に塗布される様子であることが確認された。
【0043】
以上より、比較例より実施例は全ての微小ホールから均等に薬剤を放出することができる。
【符号の説明】
【0044】
7A. 先端側ガイドワイヤールーメン開口部
7B. 基端側ガイドワイヤールーメン開口部
10.バルーン
12.外側バルーン
12a.外側バルーン直管部
12b.外側バルーンスリーブ部
12c.外側バルーンテーパー部
13.微小ホール
14.内側バルーン
14a.内側バルーン直管部
14b.内側バルーンスリーブ部
14c.内側バルーンテーパー部
15.微小空間
16.ガイドワイヤー通過用チューブ
18.位置マーカー
20.先端部チューブ
23.バルーン間ファイバー
25.先端部チューブの外管
26.先端部チューブの内管
30.手元部チューブ
32.コアワイヤー
39.ストレインレリーフ
40.ハブ
50.インフレーションルーメン
60.インフュージョンルーメン
70.ガイドワイヤールーメン