(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
長尺状の剥離基材上に接着剤層が設けられた接着フィルムが、巻芯及び上記巻芯の両側に設けられたフランジを備えるリールの上記巻芯に巻回されたフィルム巻装体において、
上記接着剤層は、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤を含み、
巻装体側面の上記接着剤層が硬化しているフィルム巻装体。
長尺状の剥離基材上に接着剤層が設けられた接着フィルムを、巻芯及び上記巻芯の両側に設けられたフランジを備えるリールの上記巻芯に巻回することにより巻装体を形成し、
上記接着剤層は、熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤を含み、
上記巻装体側面に上記接着剤層を硬化させるエネルギー線を照射するフィルム巻装体の製造方法。
【背景技術】
【0002】
従来より、電子部品と回路基板等とを接続する手段として、異方性導電フィルム(ACF:Anisortropic Conductive Film)が用いられている。この異方性導電フィルムは、例えば、フレキシブルプリント基板(FPC)やICチップの端子と、LCDパネルのガラス基板上に形成されたITO(Indium Tin Oxide)電極とを接続する場合をはじめとして、種々の端子同士を接着すると共に電気的に接続する場合に用いられている。
【0003】
この異方性導電フィルムとしては、一般にエポキシ樹脂系の絶縁性接着剤の中に導電性粒子を分散させたものが使用されており、例えば、ICチップの端子とガラス基板におけるITO電極との間に、導電性粒子が挟まれて潰されることにより、前記ICチップとITO電極との電気的接続が実現され、また、この状態で接着剤が硬化されることにより、ICチップとITO電極との機械的接続が実現されている。
【0004】
異方性導電フィルム50は、幅数mmの長尺のフィルムであり、
図4に示すように、製造時にはバインダー樹脂層51がPET(Poly Ethylene Terephthalate)等の剥離フィルム52上に積層され、この剥離フィルム52に支持された状態で、
図5に示すように、リール53の巻芯53aに巻回されている。異方性導電フィルム50は、リール53に巻回されたフィルム巻装体54の状態で保管され、使用時にはこのリール53より引き出され、必要な長さにカットされた後、電子部品の接続に供される。
【0005】
ここで、異方性導電フィルム50の巻装体54はリール53から引き出す際にテンションによる巻締まりが生じ、この巻締まりによる応力は巻芯部になるほど大きくなる。また、この応力はリール53に巻回される異方性導電フィルム50が長尺であるほど増大する。巻装体54に掛かる応力が大きくなると、接着剤成分が巻装体54からはみ出し、リール53のフランジ55に付着する。これにより、巻装体54は、異方性導電フィルム50をリール53から正常に引き出せなくなる、いわゆるブロッキングが発生してしまう。この現象は、特に粘性が低い異方性導電フィルムにおいて顕著に発生する傾向がある。
【0006】
また、巻装体54の巻締まりによる応力を低減させるべく、異方性導電フィルム50を短尺化すると、リール53の交換頻度が増し、その都度ラインを停止する必要があるなど、生産効率が低下してしまう。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用されたフィルム巻装体、及びフィルム巻装体の製造方法について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更が可能であることは勿論である。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることがある。具体的な寸法等は以下の説明を参酌して判断すべきものである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
【0014】
本発明が適用されたフィルム巻装体1は、
図1に示すように、接着フィルム2がリール3に巻回されることにより形成される。
【0015】
[リール]
リール3は、接着フィルム2を巻き取る筒状の巻芯10と、巻芯10の両端にそれぞれ設けられた板状のフランジ11とを備える。巻芯10は、リール3を回転させるための回転軸が挿入される軸穴10aを有する。巻芯10には、接着フィルム2の長手方向の一方の端部が接続され、接着フィルム2が巻回されている。
【0016】
巻芯10及びフランジ11は、例えば、種々のプラスチック材料を用いて形成することができる。フランジ11は、接着フィルム2と接する面に、静電処理を施すようにしてもよい。静電処理を施す方法としては、例えば、ポリチオフェン等の化合物をフランジ11に塗布する方法が挙げられる。
【0017】
また、フランジ11は、後述するフィルム巻装体1の側面への光照射工程において、照射光線を透過可能な材料で形成されていることが好ましい。あるいは、フランジ11は、巻芯10と着脱可能とし、フィルム巻装体1の側面への光照射工程において、巻芯10から取り外され、フィルム巻装体1の側面を露出させるようにしてもよい。
【0018】
[接着フィルム]
リール3に巻回されフィルム巻装体1を構成する接着フィルム2としては、電子部品を回路基板等に実装するCOG実装や、基板同士を接続するFOG実装などに用いられる異方性導電フィルム(ACF:Anisortropic Conductive Film)、あるいは太陽電池の電極とタブ線とを接続する導電性接着フィルム等が例示される。
【0019】
以下では、接着フィルム2として異方性導電フィルム20を例に説明する。
図2は、異方性導電フィルム20の構成例を示す断面図である。異方性導電フィルム20は、剥離フィルム21と、剥離フィルム21上に形成されたバインダー樹脂層22とを備える。異方性導電フィルム20は、テープ状に成型されており、フランジ11に挟持された巻芯10に、剥離フィルム21が外周側となるように巻回されることにより、巻芯10とフランジ11とで形成された領域に、フィルム巻装体1を構成する。
【0020】
[剥離フィルム]
剥離フィルム21は、例えば、基材にシリコーン等の剥離剤が塗布されており、テープ状に成型されている。剥離フィルム21は、異方性導電フィルム20の乾燥を防ぐとともに、異方性導電フィルム20の形状を維持する。剥離フィルム21に用いられる基材としては、例えば、PET(Poly Ethylene Terephthalate)、OPP(Oriented Polypropylene)、PMP(Poly-4-methlpentene−1)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)等が挙げられる。
【0021】
[バインダー樹脂層]
異方性導電フィルム20のバインダー樹脂層22は、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合反応を開始するラジカル重合開始剤と、導電性粒子23とを含有する。
【0022】
バインダー樹脂層22は、ラジカル重合開始剤として、光ラジカル重合開始剤及び熱ラジカル重合開始剤を含有する。フィルム巻装体1は、光ラジカル重合開始剤を含有することにより、後述するように、製造後、巻装体側面に光照射されることで、接着フィルムの側面のみ重合させておくことができる。また、フィルム巻装体1は、熱ラジカル重合開始剤を含有することにより、後述するように、実使用時に、熱加圧されることにより、電子部品等を回路基板に接続することができる。
【0023】
膜形成樹脂は、平均分子量が10000以上の高分子量樹脂に相当し、フィルム形成性の観点から、10000〜80000程度の平均分子量であることが好ましい。膜形成樹脂としては、フェノキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステルウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリイミド樹脂、ブチラール樹脂等の種々の樹脂が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、膜形成状態、接続信頼性等の観点からフェノキシ樹脂を好適に用いる。膜形成樹脂の含有量は、バインダー樹脂組成物100質量部に対し、通常、30〜80質量部、好ましくは40〜70質量部である。
【0024】
<ラジカル重合性化合物>
ラジカル重合性化合物は、ラジカル重合する官能基を有する物質である。ラジカル重合性化合物としては、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、リン酸エステル型アクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソオクチルアクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジアクリレート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、イソボルニルアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、o−フタル酸ジグリシジルエーテルアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ビスフェノールA型エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等、及びこれらに相当する(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは、単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
本実施の形態では、高い接着強度と導通信頼性とを得る点から、2官能アクリレート5〜40質量部と、ウレタンアクリレート10〜40質量部と、リン酸エステル型アクリレート0.5〜5質量部とを併用することが好ましい。ここで、2官能アクリレートは硬化物の凝集力を向上させ、導通信頼性を向上させるために配合され、ウレタンアクリレートはポリイミドに対する接着性向上のために配合され、そしてリン酸エステル型アクリレートは金属に対する接着性向上のために配合される。
【0026】
ラジカル重合性化合物の使用量は、少なすぎると導通信頼性が低くなり、多すぎると接着強度が低くなる傾向があるので、好ましくはバインダー樹脂組成物100質量部に対し、20〜70質量部、より好ましくは30〜60質量部である。
【0027】
<ラジカル重合開始剤>
熱ラジカル重合開始剤は、公知のものを使用することができ、中でも有機過酸化物を用いることが好ましい。有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジブチルパーオキサイド、ベンジルパーオキサイド、パーオキシジカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
光ラジカル重合開始剤は、アルキルフェノン系、アシルフォスフィンオキサイド系、チタノセン系等の公知のものを使用することができ、中でもα-アミノアルキルフェノンを用いることが好ましい。α-アミノアルキルフェノンとしては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン等が挙げられ、これらは単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
これら熱ラジカル重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤の含有量は、少なすぎると反応性が無くなり、多すぎると接着剤の製品ライフが低下する傾向があるため、バインダー樹脂組成物100重量部に対し、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは0.5〜20重量部である。
【0030】
バインダー樹脂層22には、無機材料との界面における接着性を向上させるために、シランカップリング剤をさらに含有させることが好ましい。シランカップリング剤としては、メタクリロキシ系、エポキシ系、アミノ系、ビニル系、メルカプト・スルフィド系、ウレイド系等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を込み合わせて用いてもよい。これらの中でも、本実施の形態では、メタクリロキシ系シランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0031】
[導電性粒子]
導電性粒子23としては、異方性導電フィルム20において使用されている公知の導電性粒子を用いることができる。例えば、ニッケル、鉄、銅、アルミニウム、錫、鉛、クロム、コバルト、銀、金等の各種金属や金属合金の粒子、金属酸化物、カーボン、グラファイト、ガラス、セラミック、プラスチック等の粒子の表面に金属をコートしたもの、これらの粒子の表面に更に絶縁薄膜をコートしたもの等が挙げられる。樹脂粒子の表面に金属をコートしたものである場合、樹脂粒子としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル・スチレン(AS)樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ジビニルベンゼン系樹脂、スチレン系樹脂等の粒子を用いることが好ましい。
【0032】
[無機フィラー]
また、バインダー樹脂層22の流動性を制御し、粒子捕捉率を向上させるために、バインダー樹脂組成物には、無機フィラーを含有させるようにしてもよい。無機フィラーとしては、特に限定されないが、シリカ、タルク、酸化チタン、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム等を用いることができる。このような無機フィラーは、異方性導電フィルム20によって接続される接続構造体の応力を緩和させる目的によっても適宜用いることができる。
【0033】
[UV照射]
このような異方性導電フィルム20は、一端をリール3の巻芯10に接続され、巻芯10に巻回されることによりフィルム巻装体1を構成する。フィルム巻装体1は、フランジ11の外側から、あるいはフランジ11を巻芯10から取り外して、巻装体側面に向かって、バインダー樹脂層22のラジカル重合性化合物を硬化させる紫外線等の光線が照射されている。これにより、フィルム巻装体1は、バインダー樹脂層22の側面側のみが硬化される。フランジ11を取り外した場合、巻装体側面に光線を照射した後、再度巻芯10に取り付けられる。
【0034】
ここで、異方性導電フィルム20は、光重合物質として、エポキシ樹脂と光カチオン硬化剤との組合せも考えられるが、カチオン重合は暗反応を伴うため、光照射の終了後も反応が徐々に進み、接着フィルムとしての機能を阻害してしまう。そのため、異方性導電フィルム20は、ラジカル重合性化合物と、熱及び光ラジカル重合開始剤を好適に用いることができる。
【0035】
光照射による重合反応は、巻装体側面に臨むラジカル重合性化合物の一部を硬化させるのみであり、残った大部分のラジカル重合性化合物は、異方性導電フィルム20の実使用時における熱圧着工程おいて重合し、接着機能を発現する。
【0036】
[作用・効果]
フィルム巻装体1は、バインダー樹脂層22の側面側のみが硬化されているため、異方性導電フィルム20をリール3から引き出す際にテンションによる巻締まりが生じた場合にも、巻締まりによる応力によってバインダー樹脂層22の成分が巻装体側面からはみ出し、ブロッキングが発生することを防止することができる。
【0037】
[接着フィルムの製造方法]
フィルム巻装体1は、以下のようにして製造することができる。先ず、バインダー樹脂組成物となる、膜形成樹脂と、ラジカル重合性化合物と、ラジカル重合反応を開始するラジカル重合開始剤と、導電性粒子23と、適宜、シランカップリング剤及び向きフィラーとを溶剤に溶解させる。溶剤としては、トルエン、酢酸エチルなど、又はこれらの混合溶剤を用いることができる。溶解させて得られた樹脂生成用溶液を剥離フィルム21に塗布し、溶剤を揮発させることにより、長尺の異方性導電フィルム20を得る。その後、異方性導電フィルム20は、適宜、剥離フィルム21を所定の幅に裁断した後、リール3に巻回され、これにより、フィルム巻装体1を得る。
【0038】
次いで、リール3に巻回されたフィルム巻装体1は、フランジ11を介して、側面にUV光等の光が照射される。照射光は、フランジ11を透過してフィルム巻装体1の側面にあたる。これにより、フィルム巻装体1は、バインダー樹脂層22に含有された光ラジカル重合開始剤が活性化し、異方性導電フィルム20の側面のみ重合反応を開始する。
【0039】
UV照射は、所定の照度で所定時間だけ行われる。例えば、UV照射は、一定の照度で照射してもよく、また、段階的に照度を強めていってもよい。
【0040】
光の積算光量は、光ラジカル重合開始剤の種類や配合量、ラジカル重合性化合物の種類や配合量、バインダー樹脂層22の常温時の粘度、リールからのフィルム引き出し時の力、及び照射するエネルギー線の波長等により左右されるが、一般的には10〜3000mJ/cm
2程度が好ましく、より好ましくは200〜2000mJ/cm
2である。
【0041】
また、フィルム巻装体1の側面に対する光照射工程では、異方性導電フィルム20の側面におけるラジカル重合反応の阻害を抑制するために、酸素を遮断した状態、例えば窒素雰囲気下で行うことが好ましい。なお、光ラジカル重合開始剤の配合量を増加し、照射光の強度を高強度にするなどの手法により、酸素下であってもラジカル重合反応を進行させることができる。
【0042】
また、フランジ11を巻芯10から着脱自在に形成し、フィルム巻装体1の側面に対する光照射工程では、巻芯10からフランジ11を外して行ってもよい。これにより、フィルム巻装体1の側面に直接照射光をあてることができ、効率よく異方性導電フィルム20の側面側を硬化させることができる。
【0043】
なお、フランジ11が透明材質である場合には、光ラジカル重合開始剤として、当該フランジ11によって吸収されない波長の光でラジカル重合反応を開始する種類のものを選択し、及び/又は光ラジカル重合開始剤の配合量を増加し、照射光の強度を高強度にするなどの手法により、フランジ11を取り付けた状態であってもラジカル重合反応を進行させることができる。
【0044】
さらに、異方性導電フィルム20は、バインダー樹脂層22に、カーボンブラック等の光を遮蔽するフィラーを配合してもよい。これにより、フィルム巻装体1の側面に照射された光が、バインダー樹脂層22の深部まで到達することが抑制され、容易に異方性導電フィルム20の側面側だけを適度に硬化させることができる。したがって、異方性導電フィルム20は、側面側以外の領域では、重合反応が抑制され、実使用時に重合されるため、電子部品等と回路基板とを確実に接続することができ、接続抵抗値の上昇も抑制することができる。
【0045】
以上のようにして、バインダー樹脂層22の側面側のみが硬化され、バインダー樹脂層22の粘度が低い場合であっても、バインダー樹脂層22の成分が巻装体側面からはみ出すことを防止することができるフィルム巻装体1を得ることができる。
【0046】
[接続工程]
フィルム巻装体1は、電子部品の接続時には、リール3より引き出され、必要な長さにカットされた後、電子部品の接続に供される。このとき、フィルム巻装体1は、異方性導電フィルム20を引き出す際に、テンションによる巻締まりが起きた場合にも、異方性導電フィルム20の側面が予め硬化されているため、巻締まりの応力によってもバインダー樹脂層22の成分がはみ出すことがない。したがって、フィルム巻装体1は、バインダー樹脂層22の成分がフランジ11に付着し、異方性導電フィルム20が正常に引き出せなくなるブロッキングを防止することができる。
【0047】
所定の長さにカットされた異方性導電フィルム20は、回路基板の電極上に仮貼りされ、その上から電子部品やフレキシブル基板等が載置され、加熱押圧ヘッドによって、所定の圧力で所定時間、熱加圧される。これにより、バインダー樹脂層22が流動性を呈し、電子部品等及び回路基板の両電極間から流出すると共に、両電極間に導電性粒子23が挟持され、この状態でバインダー樹脂層22が硬化する。以上により、電子部品等及び回路基板の両電極が電気的に接続されるとともに、電子部品等が機械的にも回路基板上に接続される。
【0048】
[その他]
なお、
図3に示すように、異方性導電フィルム20は、導電性粒子が含まれない絶縁性の接着剤組成物からなる絶縁性接着剤層30と、上述したバインダー樹脂層22とを積層させた積層構造を備えてもよい。絶縁性接着剤層30は、導電性粒子23を除いて上記バインダー樹脂層22と同様の構成を有し、剥離フィルム21上に支持される。それぞれ剥離フィルム21に支持されたバインダー樹脂層22と絶縁性接着剤層30とは、重ね合わされた状態でラミネータによってラミネートされる。これにより、導電性接着剤層と絶縁性接着剤層とが積層された積層フィルムを製造することができる。この積層フィルムも、上記異方性導電フィルム20と同様に、リール3に巻回されることによりフィルム巻装体を構成し、側面にUV等の光が照射されて、側面側のみが硬化される。
【0049】
また、フィルム巻装体1の側面への光照射量は、中心側を多く、外側を少なく又は照射しないようにしてもよい。上述したように、異方性導電フィルム20の引き出し時にフィルム巻装体1に掛かる応力は、巻芯10に近くなるほど大きくなる。そこで、フィルム巻装体1は、巻芯10に近い中心側への光照射量を多くして、よりラジカル重合反応を促進させることで、大きな応力が掛かった場合にもバインダー樹脂層22のはみ出しを効果的に防止することができる。一方、フィルム巻装体1は、外側に掛かる応力は比較的小さいことから、光照射量を多くしなくとも、バインダー樹脂層22のはみ出しを防止することができる。
【0050】
このような光照射量の制御は、フィルム巻装体1の外側と内側で照度や照射時間を異ならせることにより、あるいは、中心部に円形の穴を空けたSUS等の金属板をマスクとしてフランジにあててUV光の照射範囲を狭める、又は、フランジ11の外側と内側で光の透過量が異なるように着色するなどにより行うことができる。UV光の照射範囲を狭めることにより、作業者のUV被爆を抑えることもできる。
【0051】
なお、上記では、接着フィルム2として異方性導電フィルム20を例に説明したが、本発明は、導電性粒子23を含有しない接着フィルム、例えば絶縁性接着フィルム(NCF:Non Conductive Film)を用いてもよい。また、接着フィルム2として、例えば、太陽電池セルの電極とタブ線とを接続する導電性接着フィルムや導電性絶縁フィルムを用いてもよい。
【0052】
また、上述した説明では、剥離フィルム21上にバインダー樹脂層22が支持された異方性導電フィルム20について説明したが、異方性導電フィルム20の両面が剥離フィルム21に挟まれた構造であってもよい。
【実施例】
【0053】
次いで、本発明の実施例について説明する。本実施例では、実施例及び比較例に係るフィルム巻装体から異方性導電フィルムを引き出し、評価用のPWB(Printed Wiring Board)とFPC(flexible Printed circuit)との各電極を当該異方性導電フィルムを用いて接続させ、その接続抵抗値とフィルムの引き出し時におけるブロッキングの有無について測定、評価した。
【0054】
実施例及び比較例に係る異方性導電フィルムは、いずれも幅1.2mm、長さ300M又は400Mで、バインダー樹脂層の厚さは25μmである。各異方性導電フィルムは、以下の表1に記載のバインダー樹脂組成物及び導電性粒子をトルエンにて溶解後、剥離フィルム(PET、50μm厚)上に塗布し、60℃30分の条件で溶剤を乾燥した後、幅1.2mmにスリットすることにより得た。この異方性導電フィルムを、巻芯の直径が100mmのリールに巻き付けることによりフィルム巻装体を形成し、実施例1〜10及び比較例3、4においては、フランジを外し、窒素雰囲気下にて、巻装体側面にUV光(強度:13mW/cm
2)を所定時間照射した。
【0055】
【表1】
【0056】
実施例1では、表1中、配合No.1の組成物を用いて長さ300Mの異方性導電フィルムを得た。フィルム巻装体のUV照射時間は15秒、積算光量を195mJ/cm
2とし、巻装体側面の全面(側面の面積の100%)にUV光を照射した。
【0057】
実施例2では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0058】
実施例3では、フィルム巻装体のUV照射時間を60秒、積算光量を780mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の条件とした。
【0059】
実施例4では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例3と同様の条件とした。
【0060】
実施例5では、表1中、配合No.2の組成物を用いて長さ300Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例1と同様の条件とした。
【0061】
実施例6では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例5と同様の条件とした。
【0062】
実施例7では、フィルム巻装体のUV照射時間を60秒、積算光量を780mJ/cm
2とした以外は実施例5と同様の条件とした。
【0063】
実施例8では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例7と同様の条件とした。
【0064】
実施例9では、巻装体側面の中心部(側面の面積の50%)にUV光を照射した。これは、中心部に円形の穴を空けた金属板(SUS製)をマスクとしてフランジにあてて、UV光の照射範囲を狭めることにより行った。その他の条件は実施例3と同様である。
【0065】
実施例10では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、実施例9と同様の条件とした。
【0066】
比較例1では、表1中、配合No.1の組成物を用いて長さ300Mの異方性導電フィルムを得た。フィルム巻装体には、UV照射を行わなかった。
【0067】
比較例2では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、比較例1と同様の条件とした。
【0068】
比較例3では、フィルム巻装体のUV照射時間を120秒、積算光量を1560mJ/cm
2とした以外は実施例1と同様の条件とした。
【0069】
比較例4では、長さ400Mの異方性導電フィルムを用いた以外は、比較例3と同様の条件とした。
【0070】
これら実施例及び比較例に係るフィルム巻装体から引き出された異方性導電フィルムが接続されるPWBは、200μmピッチ(ライン幅100μm、スペース100μm)で、厚さ35μmの電極(Cu、Ni−Auめっき)が設けられた、FR−4基材を用いた。また、フレキシブル基板は、厚さ25μmのポリイミド基板上に、200μmピッチ(ライン幅100μm、スペース100μm)で、厚さ12μmの電極(Cu、Ni−Auめっき)が形成されたものを用いた。
【0071】
接続方法は、先ず、PWB上に実施例及び比較例に係るフィルム巻装体から引き出した異方性導電フィルムを配置し、80℃、1MPa、2秒で加熱押圧して、剥離フィルム(PET)を剥離することによりバインダー樹脂層のみを仮接続した。次いで、FPCをPWBに設けられたバインダー樹脂層上に、配線を合わせて配置し、160℃、3MPa、6秒で加熱押圧した。これにより、長さ4cmに亘りFPCが接続された評価用接続構造体を得た。
【0072】
指触タックは、実施例及び比較例に係るフィルム巻装体の側面を指で触り、タックの有無を官能評価によって判定した。
【0073】
接続抵抗値は、デジタルマルチメーターを用いて、4端子法にて電流1mAを流したときの導通抵抗値を測定した。抵抗値が1Ω未満の場合は抵抗値は低い(◎)とし、1Ω以上2Ω未満の場合はやや高い(○)ものとし、2Ω以上は高抵抗(×)と評価した。
【0074】
はみ出しは、フィルム巻装体の側面に接着剤がはみ出すことで、フランジを目視で観察することで「はみ出し」の有無が分かる。はみ出しがおきても、少量であればブロッキングまでには至らない。
【0075】
ブロッキングは、接着剤がフランジに付着することでフィルム引き出し時に剥離フィルムのみが引き出されるなど、正常な引き出しが行えない状態をいう。異方性導電フィルムを巻回したリールの巻芯両面に、直径220mmのポリスチレン製フランジを溶着した後、引出張力50g、引張り速度500mm/秒で、1秒間のインターバルをおいて1秒間の引き出しを、最後まで繰り返し行い、ブロッキングの有無を確認した。結果を表2に示す。
【0076】
【表2】
【0077】
表2に示すように、フィルム巻装体の側面にUV照射を行った実施例1〜10では、異方性導電フィルムの引き出し時にブロッキングは発生せず、また、評価用接続構造体における接続抵抗値も2Ω未満であって、いずれも問題なく使用可能であった。
【0078】
一方、フィルム巻装体の側面にUV照射を行っていない比較例1及び比較例2では、巻装体側面を指で触ったところ、タックがあった。また、バインダー樹脂層22のはみ出しが観察され、かつ、異方性導電フィルムの引き出し時にブロッキングが発生し、異方性導電フィルムは使用不可能であった。
【0079】
また、UV照射時間が120秒と長く、積算光量が1560mJ/cm
2と多い比較例3及び比較例4では、UV光が深部まで到達し、ラジカル重合が進行したために、接続抵抗が高く、異方性導電フィルムは使用不可能であった。
【0080】
また、UV照射時間を15秒とした実施例1、2と、60秒とした実施例3、4とを対比すると、実施例1、2では接続抵抗値が1Ω未満となった。これは、実施例3、4では、UV照射時間が比較的長く、積算光量が増えたため、ラジカル重合がやや進行したために、実使用上問題はないが、接続抵抗がやや高くなったものと考えられる。
【0081】
また、実施例3、4とUV照射時間及び積算光量が同じ実施例7、8では、接続抵抗値が1Ω未満となった。これは、実施例7、8では、カーボンブラックを配合しているため、フィルム巻装体の側面に照射されたUV光が深部まで進行することなく、ラジカル重合がフィルム側面側のみに留まったためと考えられる。一方、実施例3、4では、カーボンブラックによるUV光の遮蔽効果がないため、UV光が深部まで到達し、ラジカル重合がやや進行したために、接続抵抗がやや高くなったものと考えられる。これより、カーボンブラックを配合することが好ましいことが分かる。
【0082】
なお、長さ400Mと長尺の実施例2、4では、実使用上問題はないが、はみ出しが観察された。
【0083】
また、実施例9、10より、UV光の照射は、巻装体側面の全面でなくとも、中心部に行うことでも有効であることが分かる。