特許第6046923号(P6046923)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6046923画像符号化装置、画像符号化方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046923
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】画像符号化装置、画像符号化方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/00 20060101AFI20161212BHJP
   H04N 13/02 20060101ALI20161212BHJP
   H04N 19/105 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/134 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/137 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/139 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/176 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/196 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/503 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/51 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/593 20140101ALI20161212BHJP
   H04N 19/597 20140101ALI20161212BHJP
【FI】
   H04N13/00 480
   H04N13/02 420
   H04N19/105
   H04N19/134
   H04N19/137
   H04N19/139
   H04N19/176
   H04N19/196
   H04N19/503
   H04N19/51
   H04N19/593
   H04N19/597
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-130190(P2012-130190)
(22)【出願日】2012年6月7日
(65)【公開番号】特開2013-255129(P2013-255129A)
(43)【公開日】2013年12月19日
【審査請求日】2015年5月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】中山 忠義
【審査官】 鈴木 隆夫
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−180981(JP,A)
【文献】 特開2009−004940(JP,A)
【文献】 特開2003−037816(JP,A)
【文献】 特開平06−098312(JP,A)
【文献】 特開平02−050689(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/00−15/00
H04N 19/00−19/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像手段で撮像された画像データを符号化する画像符号化装置であって、
前記画像データを一時的に格納するバッファ手段と、
前記バッファ手段によって格納された画像データのフレームに含まれるブロックを所定の方向に順に符号化する符号化手段と、
を備え、
前記符号化手段は、
前記複数の撮像手段の内の所定の撮像手段で撮像された所定のブロックを符号化する場合において、前記複数の撮像手段側から被写体側を見たときに記所定の方向において前記所定の撮像手段に隣接する第1の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第1の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第1の撮像手段で撮像されたブロックを参照して符号化し、
前記第1の撮像手段で撮像されたフレームに基づく予測誤差が前記第1の値以上の場合において、記所定の方向において前記第1の撮像手段に隣接する第2の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第2の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第2の撮像手段で撮像されたフレームを参照して符号化する
ことを特徴とする画像符号化装置。
【請求項2】
前記符号化手段は、前記第2の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が前記第2の値以上の場合、前記所定のブロックを、前記所定の撮像手段で撮像された前フレームのブロックを参照して、符号化する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像符号化装置。
【請求項3】
複数の撮像手段で撮像された画像データを符号化する画像符号化方法であって、
符号化手段が、前記画像データを一時的に格納するバッファ手段によって格納された画像データのフレームに含まれるブロックを所定の方向に順に符号化する符号化工程を有し、
前記符号化工程では、
前記複数の撮像手段の内の所定の撮像手段で撮像された所定のブロックを符号化する場合において、前記複数の撮像手段側から被写体側を見たときに記所定の方向において前記所定の撮像手段に隣接する第1の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第1の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第1の撮像手段で撮像されたブロックを参照して符号化し、
前記第1の撮像手段で撮像されたフレームに基づく予測誤差が前記第1の値以上の場合において、記所定の方向において前記第1の撮像手段に隣接する第2の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第2の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第2の撮像手段で撮像されたフレームを参照して符号化する
ことを特徴とする画像符号化方法。
【請求項4】
前記符号化工程は、前記第2の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が前記第2の値以上の場合、前記所定のブロックを、前記所定の撮像手段で撮像された前フレームのブロックを参照して、符号化する
ことを特徴とする請求項3に記載の画像符号化方法。
【請求項5】
コンピュータに、請求項3又は4に記載された画像符号化方法の工程を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の視点での画像の符号化技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、2眼カメラで撮影した立体映像コンテンツが普及し始めている。多視点で撮影した映像を圧縮符号化するための技術として、H.264 Multi View Coding(以下、H.264 MVCとする)が知られている。H.264 MVCはH.264を拡張した符号化方式であり、Blu−ray Discの3D規格として使用されている。H.264 MVCでは、同じ視点の異なる時間で撮影された画面間の予測を用いた「画面間予測符号化」の他に、同じ時間で異なる視点間の予測を用いた「視点間予測符号化」が可能である。視点間予測符号化を行うには、参照元の視点の参照画像の局所復号が完了している必要がある。しかし、局所復号の処理には一定の時間を要するため、視点間予測符号化を行う場合に遅延が発生してしまう。
【0003】
特許文献1では、各視点のカメラから得られる画像に対して、様々な単位でインターリーブを行い1つの画像ストリームとして符号化を行うための方法が開示されている。
【0004】
特許文献2では、隣接フレームと補償されたフレームとの相関関係に基づいて、符号量が最小となるピクチャとカメラ間の予測構造を採択し、それによって多視点映像符号化時の情報量を最小化する技術が開示されている。
【0005】
また、特許文献3では、各視点の画像を並列復号する際に、参照領域を破綻なく参照できるようにするため、視点間で必要となる復号開始の時間差を、遅延時間として計算しておき、復号側に知らせる方式が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−34892号公報
【特許文献2】特表2009−505607号公報
【特許文献3】特開2008−182669号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
視点間予測を用いて、多視点の画像をリアルタイムで符号化する際に、視点間予測参照元の画像から参照位置ベクトルを精度よく探索しようとすると、参照領域を十分広くとる必要がある。そのためには、符号化する画像データを1フレームないし数十ライン遅延させなければならず、符号化遅延の増大とコストアップの要因となっていた。
【0008】
視点間予測の参照領域の画像を一時保存するバッファや該処理による遅延時間を減らそうとすると、前記参照領域が制限され、圧縮符号化する際の効率が著しく低下してしまうという課題があった。
【0009】
この課題に対して、特許文献2は、符号量を減らすことを第1優先にしているため、符号化遅延を小さくするという課題は無い。また、特許文献3は、破綻を起こさせない最小限の遅延を復号側に知らせるという点で、余分な遅延を発生させないという工夫が見られるが、視点間の映像の相関を利用して遅延量を減らすところまで構成には至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題を解決するため、例えば本発明の画像符号化装置は以下の構成を備える。すなわち、
複数の撮像手段で撮像された画像データを符号化する画像符号化装置であって、
前記画像データを一時的に格納するバッファ手段と、
前記バッファ手段によって格納された画像データのフレームに含まれるブロックを所定の方向に順に符号化する符号化手段と、
を備え、
前記符号化手段は、
前記複数の撮像手段の内の所定の撮像手段で撮像された所定のブロックを符号化する場合において、前記複数の撮像手段側から被写体側を見たときに記所定の方向において前記所定の撮像手段に隣接する第1の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第1の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第1の撮像手段で撮像されたブロックを参照して符号化し、
前記第1の撮像手段で撮像されたフレームに基づく予測誤差が前記第1の値以上の場合において、記所定の方向において前記第1の撮像手段に隣接する第2の撮像手段で撮像されたブロックに基づく予測誤差が第2の値より小さい場合、前記バッファ手段によって格納された前記所定のブロックを、前記第2の撮像手段で撮像されたフレームを参照して符号化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、予測符号化における予測性能を低下させること無く、符号化遅延およびデータ遅延用のバッファを大幅に減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】無限遠距離の被写体に対し2視点のカメラの画像が同一になることを示す図。
図2】無限遠距離の仮想的なある領域を、符号化単位であるブロックに区切った図。
図3】同一位置のブロックの符号化タイミングの関係を示す図。
図4】被写体のカメラ方向への移動と画像上の移動方向の関係を示す図。
図5】本発明の多視点画像符号化装置の第1の実施形態の構成図。
図6】近接物が妨害となり、遠方でカメラの死角が生じることを示す図
図7】本発明の多視点画像符号化装置の第2の実施形態の構成図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、添付図面に従って本発明に係る実施形態を詳細に説明する。
【0014】
視点が1つの通常の動画像符号化では、いわゆるI、P、Bという3種類の予測モードがあり、これらの中でBモード予測は時間的に未来のフレームを参照するため、数フレーム単位の大きな符号化遅延が発生する。
【0015】
本発明では、低遅延で多視点画像を符号化することを目的としているため、Bモード予測は一切使わず、基準視点となる画像をIモードとPモード予測だけを用いて符号化するものとする。この通常のPモード予測を、視点内Pモード予測と呼ぶことにし、視点間の同一時刻のフレームを一方向に参照する予測モードを視点間Pモード予測と呼ぶことにする。本発明の多視点画像符号化装置における基準視点以外の視点画像は、符号化遅延を小さく抑えるため、この視点間Pモード予測と、視点内Pモード予測、Iモード予測の3つを用いて予測符号化を行う。
【0016】
多視点の画像を撮影し符号化する場合、単一視点撮影には無い2つの問題がある。1つは、複数視点のどこに基準視点を定めるかという点、もう1つは、参照元となる視点と参照先となる視点の関係である。この2点に着目して、以下、2つの実施形態を説明する。
【0017】
[第1の実施形態]
本発明の目的は符号化遅延の低減であり、被写体に対して最も右側に配置したカメラを基準視点での撮像手段とし、隣接する2台のカメラの右側カメラの符号化画像を、左側カメラの画像の符号化で参照する関係とする。なお、以下の説明では、通常の単一視点と同様、画像の符号化では、複数の画素で構成されるブロックを単位とするラスタースキャン順に行うものとする。
【0018】
図1を用いて、隣接する2台のカメラの右側の画像を参照することが合理的である理由を以下に説明する。該2台のカメラは無限遠距離の被写体に対して同一の構図・画角となるように設置されているものとする。別の言い方をすると、カメラの中心軸が並行で同一被写体を同じ画角で撮影するように設置すると言うことである。
【0019】
右側のカメラをカメラ1、左側のカメラをカメラ2、各々に画像を符号化する符号化部を符号化部1、符号化部2とし、上記設置状態で、無限遠距離にある仮想的な被写体を同一の画角で撮影し(図2)、その中のある領域21をブロック単位で符号化する状況を想定してみる。
【0020】
無限遠距離にある撮影対象をカメラ1とカメラ2が撮影した場合、その画像はまったく同じになるため、符号化部1と2が同時に符号化を開始すると、図3(A)に示すように前記領域21の中のブロック(n+1)をほぼ同じタイミングで符号化することになる。これでは符号化部2で符号化するブロックの予測処理に有効なブロック(領域)を参照することができない。
【0021】
そこで、前記着目する画素ブロックを符号化部1で局部復号し符号化部2への転送が完了し、符号化部2で参照可能となるタイミングまで、符号化部2の符号化タイミングを遅らせる。このタイミングチャートを図3(B)に示す。この図に示すタイミングどおりに局部復号を行い、復元データを転送できれば、2ブロック分の符号化時間だけ遅らせれば十分である。
【0022】
この間、符号化部2はデータを余分に保持する必要があるため、その分のバッファ容量が余分に必要となるが、その容量は2ブロック分にすぎない。これにより符号化部2は、符号化するブロックと同一位置の符号化部1の局部復号ブロックデータを参照することができ、画像の全領域において、効果的な視点間予測を行うことが可能になる。
【0023】
以上は、無限遠距離における仮想的な被写体について説明である。
【0024】
被写体までの実際の距離は、当然無限遠距離よりも近いところにある。被写体がカメラへ近づいてくると、各視点画像における共通の被写体の位置が逆方向に移動する。
【0025】
具体的には、図4(A)に示すように、カメラ1の撮影画像上では左方向、カメラ2の撮影画像上では右方向へ被写体が移動する。一方、図4(B)に示すように、被写体が近づいてもカメラ1の撮影画像上で移動せず固定している場合、カメラ2の撮影画像上でより大きく右方向へ移動することになる。
【0026】
この関係は、画素ブロックの予測にとって都合がよい。何故なら、視点間予測のために参照したい領域は、被写体までの距離が近ければ近いほど、右隣接カメラ側でより先行して符号化されることになるからである。これは、符号化対象のブロックがラスタースキャン順に移動していくからである。
【0027】
よって条件的に最も厳しいのは、上で詳述した無限遠距離における被写体を視点間予測・参照する場合であり、この場合にきちんと参照できるよう、符号化部2の符号化開始タイミングの遅延時間を設定しておけば、その他の場合は何ら問題がないと言える。
【0028】
ここまで、隣接カメラ間の参照関係と符号化部の動作タイミングに関して述べてきた。この参照関係を3台以上のカメラを横一列に並べた多視点画像撮影システムへ適用すると、基準視点となるカメラの位置は必然的に、被写体に対して最も右側(被写体側から見て最も左側)に配置したカメラということになる。
【0029】
以上の説明を踏まえ、3台のカメラを横一列に配置した多視点画像符号化装置の構成を図5に示し、構成要素とその動作について以下に説明する。
【0030】
同図において、501、502、503は符号化する多視点の画像を撮影する第1乃至第3のカメラであり、501は基準視点となる第1のカメラである。図示されているように、第2のカメラ502は第1のカメラ501の左に隣接し、第3のカメラ503は第2のカメラ502の左に隣接している。
【0031】
511、512、513はラスター走査順序でカメラから送られてくる画像データを符号化に適したブロックデータを形成するために、画像データを一時的に保持するための入力バッファである。521、522,523は各々対応するカメラからの画像を符号化するための第1乃至第3の符号化部である。531、532は視点間予測の参照領域の画像データを一時的に格納する、参照バッファであり、541、542、543は前記3つの符号化部が出力する符号を各々で格納する出力バッファである。
【0032】
550は前記3つの符号化部の動作タイミングの制御ならびに符号化装置全体を制御する制御部である。
【0033】
第1〜第3のカメラは同期して撮影を行い、同一時刻に撮影した3枚のフレームだけを見ると、視点が少しずつ違うが、静止した3枚の画像になっている。各カメラで撮影した画像のデータは、入力バッファ511〜513に送られる。
【0034】
入力バッファ511は、8×8或いは16×16画素のブロックを形成できるだけのデータを蓄積したら、ブロックデータを切り出して第1の符号器521へ送る。第1の符号化部521は前記ブロックデータを受け取り、Iモードもしくは視点内Pモード予測を行って前記ブロックデータを符号化し、生成された符号データは、出力バッファ541へ送られ一時的に格納される。
【0035】
一方、符号化部521で符号化済みのブロックは、同じ符号化部におけるI・Pモード予測で参照されるため、局部復号した画像を1フレームの期間保持する。それと共に、第2の符号化部522が視点間Pモード予測で参照できるよう、該局部復号画像を参照バッファ531にも転送し格納する。
【0036】
図3(B)のタイミングチャートで示したように、画像内の同一位置のブロックデータを、視点間予測で参照する場合、参照する側は約2ブロック符号化時間だけ待つ必要がある。
【0037】
よって、第2の符号化部522は第1の符号化部より2ブロック符号化時間の後に符号化を開始する。また、入力バッファ512から第2の符号化部へのブロックデータの転送もその時間だけ遅らせて開始する。
【0038】
第3の符号化部523はさらに、第2の符号化部より2ブロック符号化時間の後に符号化を開始する。同様に、入力バッファ513から第3の符号化部へのブロックデータの転送もその時間だけ遅らせて開始する。
【0039】
また、第2の符号化部で局部復号した画像データは、第3の符号化部が視点間Pモード予測で参照できるよう、参照バッファ532へ転送し格納する。第
2、第3の符号化部で生成した符号データは、前記第1の符号化部で生成した符号データと同様、出力バッファ542、543へ送られ一時的に格納される。
【0040】
出力バッファ541乃至543に格納された符号データは、他の場所へ転送されて復号される、あるいは蓄積メディアに記録され長期間保存されることもある。
【0041】
制御部550は、上記のような第1〜第3の符号化部の符号化タイミングの制御を行うと共に、各バッファの入出力タイミングを制御する。
【0042】
以上に説明したように、本第1の実施形態によれば、各視点毎に、画素ブロックを単位とするラスタースキャン順に符号化を行う場合、被写体に対して右隣接カメラの撮影画像を符号化・復号した画像を、視点間予測で参照することにより、予測符号化における予測性能を低下させることなく、且つ、低遅延な多視点画像符号化装置を実現することができる。
【0043】
[第2の実施形態]
本第2の実施形態は、視点間Pモード予測の参照元を複数に拡張したものである。
【0044】
具体的には、上記第1の実施形態における視点間Pモード予測の参照元である右隣接カメラの撮影画像を、第1の視点間Pモード予測の参照元とし、第2の視点間Pモード予測の参照元を、右側に2台離れたカメラによる撮影画像とする。
【0045】
そして、第1の実施形態では有効な視点間予測が困難な図6に示すような状況においても、視点間Pモード予測の参照元を2つに増やすことにより、有効な視点間予測ができるようにするものである。以下では図6について説明を行う。
【0046】
図6において、近接物61により、距離Mの被写体上に、カメラ2から死角となる領域62が生じるが、この領域62はカメラ1とカメラ3では撮影可能である。
【0047】
この領域62をカメラ3の符号化部3で符号化する場合、右隣接カメラ2の撮影画像を参照しても意味が無いが、2台離れたカメラ1で撮影し符号化部1で符号化した画像を参照すれば、該符号化ブロックの予測残差を減らし、効率よく符号化することができる。
【0048】
同様に、同じ近接物61により、カメラ3から死角となる領域63が生じるが、この領域63はカメラ2とカメラ4では撮影可能である。
【0049】
この領域63を符号化部4で符号化する場合、2台離れたカメラ2で撮影し符号化部2で符号化した画像を参照すれば、効率よく予測・符号化することができる。これらが本第2の実施形態による改善効果である。
【0050】
なお図6において、前記近接物61、領域62、領域63は水平方向のみを図示しているが、実際はある高さを有し2次元的な広がりを持つ。
【0051】
図7に本第2の実施形態の一例である多視点画像符号化装置を示す。カメラが3台から4台に増えた点、左側2台のカメラの符号化部の視点間予測の参照元が2つに増えた点を除けば、第1の実施形態と同様の構成、動作タイミングであるため、該変更になった部分を中心に説明を行う。
【0052】
まず、図5に示した第1の実施形態の多視点画像符号化装置の構成要素と、まったく同じ機能で動作する構成要素には同一の部番を付して継承した。具体的には500番台の番号を付した構成要素が継承したものである。そして、図7において新たに追加した構成要素や図5の構成要素とは機能が若干異なる構成要素を以下に挙げる。
【0053】
704は第4のカメラであり、714は該カメラの画像データを一時的に保持するための入力バッファである。723は第3の符号化部であるが、視点間予測の参照元が2つに増えている。724は第4のカメラで撮影した画像を符号化する第4の符号化部である。731、732、733は視点間予測の参照領域の画像データを一時的に格納する、参照バッファである。744は第4の符号化部が出力する符号を各々で格納する出力バッファである。750は4つの符号部と該符号化装置を制御する制御部である。
【0054】
図7の構成で最大の特徴は、右側2台目のカメラの画像を視点間予測で利用するための参照バッファ731、732が存在することである。もし図7から該2つの参照バッファを取り除くと、カメラ3台の第1の実施形態をカメラ4台へ単純に増やしただけのものとなる。
【0055】
この特徴説明は、図7図5の違いを極めて簡潔に表現しており、図7の構成に関してはこれ以上の説明は不要であろう。従って必要なのは、第3と第4の符号化部において、選択可能な視点間予測をどのように切り替えるのかであろう。
【0056】
本第2の実施形態における視点間予測の基本は、右隣接カメラの同一時刻のフレームの画像を符号化・局部復号した画像を参照することであり、本第2の実施形態においても当然それは同じである。
【0057】
動きベクトル探索で一般的に行なわれている予測誤差評価と同様の評価手法により、1つ目の参照画像中(参照フレーム内)に、予測誤差が設定値より小さくなる領域が発見できれば、その領域を予測に用いる。もし発見できなければ(予測誤差が設定値以上の場合には)、2番目の優先順である2つ目の参照画像、すなわち、右側2台目のカメラの画像へ切り替えて領域探索を行う。そして、2つ目の参照画像内にも、予測誤差が設定値より小さくなる領域が見つからない時は、同じ視点における前フレームを参照する視点内Pモード予測へと移行する。このように、視点間予測から視点内予測へ切り替えていく。
【0058】
あるいは、隣接ブロックの画像相関は比較的強いため、符号化対象ブロックの真上のブロックと左のブロックの参照元が共に2つ目の参照画像になっている場合、該2つ目の参照画像から予測を開始するのが効率的である。該2つ目の参照画像中に予測誤差が設定値より小さな領域が見つからない時は上記1つ目の参照画像に戻って予測を行えばよい。
【0059】
最後に、第2の視点間Pモード予測の参照元は、右側に2台離れたカメラに限定されるものでは無く、当業者であれば容易に2台以上離れたカメラへと拡張できる。また、視点間予測の参照元の数を3つ以上に増やすことも可能である。
【0060】
以上に説明したように、第1,第2の実施形態の多視点画像符号化装置は、視点間予測の参照元を右隣接カメラの撮影画像を符号化した画像に設定することにより、予測符号化における予測性能を低下させること無く、低遅延な符号化を実現するができる。
【0061】
なお、第1の実施形態では撮像手段としてのカメラが3台、第2の実施形態では4台の例を示したが、この数は一例である点に注意されたい。すなわち、N個の撮像手段に一般化して示すのであれば、以下の構成を有するようにすれば良い。すなわち、
多視点の画像の符号化する符号化装置であって、
複数画素で構成されるブロックを単位に、撮像フレームの左上から右下方向に向かう順にラスター走査し、ブロック毎の符号化データを生成するN個の符号化手段と、
それぞれが前記N個の符号化手段の1つに対応し、一次元に配列されたN個の撮像手段であって、前記一次元における配列方向を前記ラスター走査におけ1つのラインに対応させるように配置されたN個の撮像手段とを有し、
前記N個の撮像手段における各々を、前記一次元における配列方向における右端から左端に向かう順番に第1、第2、…、第Nの撮像手段と定義し、
前記N個の符号化手段における各々を、該第1,第2、…、第Nの撮像手段それぞれに対応させて第1、第2、…、第Nの符号化手段と定義したとき、
第iの符号化手段(i>1)は、
第iの撮像手段よりも右側に位置する1つ以上の撮像手段で得られた同一時刻のフレームを視点間予測として参照する手段と、
前記第iの撮像手段からのフレームを、視点間予測するための時間だけ遅延させる遅延手段とを有する。
図1
図2
図3
図4
図5
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図7