(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
水素は、抗酸化能を有することが知られている。そのため水素は、皮膚老化防止、酸化ストレスの減少、成人病予防およびアンチエイジングによる健康維持などの幅広い分野での応用が期待されている。水素を利用するための製品は、種々の形態で提供されており、たとえば、水素が溶解した水素水のように飲用として提供されたり、浴用剤などのように水に溶解することにより水素を発生する製品として提供されたりしている。
【0003】
その他、上記のような水素の機能性を利用するために、水素水をスキンケア用品として利用する技術が特許文献1および2に記載されている。
【0004】
特許文献1には、肌に直接接触するスキンケア用品あるいは生活用水に、酸化還元電位(ORP)がORP=0.80-0.047pH以下で、皮膚のORPと同等、またはそれ以下の還元性を付与することにより、スキンケア用品あるいは生活用水に皮膚のエイジング(老化)抑制または予防効果を付与する方法が開示されている。
【0005】
特許文献2には、水素化アルカリ金属、水素化アルカリ土類金属および水素化ホウ素金属塩からなる群から選択される少なくとも1種の水素化合物が固体状の水溶性化合物またはそれらの混合物中に包埋されてなる水素発生剤が開示されており、これを化粧水および入浴剤に用いることが記載されている。
【0006】
また、特許文献3には、足先部及び踵部近辺の足裏つぼの集中筒所に一個の球面大突起を、土踏まず位置に傾斜した曲面突起を夫々設けると供に、その他の部分に多数且つ異形の球面小突起を設けた多孔質の素材より成る健康中敷きが記載されている。そして、この健康中敷きは、足先部の球面大突起の裏面に、相当する面積の金属板又は箔を接着されると供に、更にその爪先部に少なくとも一枚の小径の異種金属板又は箔を貼着された上で、素材裏全面を両面テープで被覆されている。特許文献3には、この構成により、イオン化傾向の異なる異種金属の発汗時の電気化学的作用で、汗成分を無臭化し、発生する活性水素又は酸素で殺菌するという作用があることが記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記のように、水素を摂取することにより、多くの効果を有することが知られているが、日常生活において水素を摂取する機会は少ない。容易に水素を発生させ、水素を摂取することができれば、手軽に水素を利用することができ、水素の効果を得ることができる。
また、長期間にわたって容易に水素を発生させることができれば、機能性を有する水素による効果をより長期間にわたって持続させることができる。
【0009】
本発明者らは、日々の生活の中で使用する機会が多い材料から水素を発生させることができれば、容易に水素を発生させ、水素を摂取することができることに着目し、新たな水素発生物質の開発を行った。特に、人の肌に直接接触する機会が多い材料が水素供給作用を持っていれば、これらの材料を普段使用することによって、皮膚老化防止およびアンチエイジングなどの効果を自然に受け取ることができる。
【0010】
一方、水素は、気体であるため、発生後に容易に拡散してしまう。したがって、長期間にわたって水素を発生させる製品が望まれる。
【0011】
しかし、特許文献1および2には、石けん、シャンプー、化粧品、入浴剤などの化粧料にこれらの効果を付与する方法が記載されているものの、布や紙に水素供給作用を付与する方法は記載されていない。
【0012】
また、特許文献3にも、布や紙に水素供給作用を付与する方法は記載されていない。さらに、特許文献3に記載の技術では、複数の金属板を使用するなど構造が複雑であるため、布や紙への適用は適さない。
【0013】
本発明の目的は、水素を供給することができる水素発生用布および水素発生用紙ならびにそれらの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、水素を発生する製品として、布および紙から水素を発生させることができれば、日々の生活の中で容易に水素を摂取することができることに想到した。したがって、本発明は、水と反応して水素を発生する物質を含有する水素発生用布および水素発生用紙を提供する。
【0015】
また、本発明は、上記水素発生用布および水素発生用紙において、上記水と反応して水素を発生する物質が水素化金属粒子またはシリカ吸蔵水素である、水素発生用布および水素発生用紙を提供する。
【0016】
また本発明は、上記水素発生用布および水素発生用紙において、水と反応して水素を発生する物質が非水系基剤と共に提供される、水素発生用布および水素発生用紙を提供する。
【0017】
また本発明は、上記水素発生用布または水素発生用紙の製造方法であって、上記水と反応して水素を発生する物質を布または紙に付着させる付着工程を含む製造方法を提供する。
【0018】
また本発明は、上記付着工程が、上記水と反応して水素を発生する物質を含有する液体を上記布または紙に塗布する工程ある製造方法を提供する。
【0019】
また本発明は、上記付着工程が、上記水と反応して水素を発生する物質を含有する粉体を上記布または紙に付着させる工程である製造方法を提供する。
【0020】
また本発明は、上記付着工程が、上記水と反応して水素を発生する物質を含有するスプレー剤を上記布または紙に噴射する工程である製造方法を提供する。
【0021】
また本発明は、上記水と反応して水素を発生する物質を含有する、上記水素発生用布または水素発生用紙を製造するための液体、粉体およびスプレー剤を提供する。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、湿気などにより、対象物に対し水素を供給することができる水素発生用布および水素発生用紙を提供することができる。特に、皮膚などの対象物に直接接触することで、汗などの水分により水素を発生、供給することができる水素発生用布および水素発生用紙を提供することができる。したがって、皮膚に適用すれば、皮膚老化防止、酸化ストレスの減少、成人病予防、アンチエイジングなどの効果を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る水素発生用布は、水と反応して水素を発生する物質(以下、「水素発生物質」ともいう。)を含有する布である。また、本発明に係る水素発生用紙は、水素発生物質を含有する紙である。
【0024】
「水素発生用」とは、水分を含有する対象物に接触したときに水素を発生する機能(水素発生能)を有することを意味する。水分を含有する対象物は、気体、液体および固体のいずれであってもよく、固体であれば人の皮膚などが挙げられる。
【0025】
布は、織物、編み物、レース、フェルトおよび不織布などを含み、紙は、和紙および洋紙などを含む。また、紙には、板紙、新聞紙、印刷用紙、情報用紙、包装用紙および衛生用紙などの各種の紙が含まれる。
【0026】
水素発生用布および水素発生用紙は、水と接触した場合に、水素発生用布および水素発生用紙に含まれる水素発生物質と水とが反応し、水素を発生する。たとえば水素発生用布および水素発生用紙が皮膚に接触した場合には、皮膚中の水分と水素発生物質とが反応して、皮膚に対して水素を供給することができる。そのため、皮膚に対し、水素による皮膚老化防止およびアンチエイジングなどの効果を与えることができる。
【0027】
水素発生用布および水素発生用紙は、薬効成分およびその他の成分をさらに含んでもよい。これらの詳細については後述する。
【0028】
水素発生用布および水素発生用紙は、使用時以外、たとえば使用者の手に渡るまでの間は、水素発生物質が水分と全く反応しない状態またはその反応性が非常に低い状態を維持する形態であることが望ましい。これにより、水素発生物質の劣化を防ぎ、水素発生能を維持することができる。この目的を達成するために、水素発生用布および水素発生用紙は全く水分を含まない形態であってもよい。また、水素発生用布および水素発生用紙は水分を含んでいてもよいが、この水分と水素発生物質との反応性が非常に低い状態であってもよい。
【0029】
水素発生用布および水素発生用紙は、使用時の水素発生能を確保するため、使用時以外は外気中の水分との接触が妨げられた状態であってもよい。たとえば水素発生用布および水素発生用紙は、不活性ガス封入等によって湿気を遮断するように包装された状態で使用者に提供されるように調製されることが好ましい。包装は、たとえばアルミ包装、ビニル包装および紙包装などであってもよい。たとえば、水素発生用布および水素発生用紙は、水分を透過しない密封容器内に密封されていてもよく、さらに密封容器内が真空状態になっていてもよい。
【0030】
(水素発生物質)
水素発生物質は、水と化学反応することにより分解して水素を放出する物質であってもよい。このような物質は、たとえば水素化金属粒子、水素発生性のセラミック(陶器)、ガラス、マグネシウム、アルミニウム、カーボンなどの単体およびその誘導体、シリカ誘導体、シリコーン誘導体、ゲルマニウム、ケイ酸・ケイ酸アルミニウム等、また焼成カルシウム、ゼオライト、無水ケイ酸、カーボンチューブなどに圧力などをかけて水素を埋蔵させたものなどが挙げられる。これらのなかでも、安価で製造が容易であり、効率よく本発明を完成させることができるという点から、水素化金属粒子または酸化ケイ素に水素を埋蔵させたシリカ吸蔵水素を使用することが好ましい。
【0031】
水素化金属粒子としては特に限定されず、水素化マグネシウム、水素化カルシウム、水素化バリウム、水素化ベリリウム、水素化ストロンチウム、水素化リチウム、水素化ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウム、水素化リチウムナトリウム、水素化ケイ素等の公知のものを使用することができる。上記水素化金属粒子は、その粒子径および凝集状態を調整することによって、水との反応性を制御することができる。よって、目的に応じて粒子径等を調整して使用することもできる。また、反応性を抑制する目的で顆粒化してもよい。
【0032】
シリカ吸蔵水素は、任意の酸化ケイ素に水素を埋蔵させたシリカ吸蔵水素を使用することができる。たとえば、市販のシリカ吸蔵水素を使用してもよい。また、公知の製造方法にしたがってシリカ吸蔵水素を製造してもよい。
【0033】
水素発生用布および水素発生用紙は、水素発生物質を1種類のみ含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0034】
水素発生物質が水素化マグネシウムである場合には、水素化マグネシウムは、マグネシウムの金属原子間の隙間に水素を保持している化合物であり、下記式(1)の反応式にしたがって水と反応して水素を放出する。
MgH
2+2H
2O→Mg(OH)
2+2H
2・・・(1)
【0035】
水素化マグネシウムを水と反応させると、その水には気体水素が溶存し、酸化還元電位(ORP)が還元側にシフトして、抗酸化能が付与された機能水(水素水)となる。
【0036】
水素化マグネシウムは無害であり、また水素生成後のMg(OH)
2は医薬品にも利用されているように安全である。これらの点から、水素発生物質が水素化マグネシウムであれば、より安全に水素発生材の製造、輸送、使用等を行うことができる。
【0037】
水素発生物質は、どのような方法で入手してもよく、たとえば公知の方法によって製造してもよい。たとえば水素化マグネシウムは、特許第4083786号公報または特許第4425990号公報に開示されている方法によって製造することが可能である。
【0038】
特許第4083786号公報に開示されている方法によって水素化マグネシウムを製造する場合には、具体的には、まず、マグネシウムを主成分とする原料粉体を、封入容器内に封入した水素ガス雰囲気中に保持しておく。次いで、その封入容器内の水素ガス雰囲気の圧力を所定圧力に維持しつつ、その封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、単体のマグネシウムおよび水素分子が化合して水素化マグネシウムが生成する反応と逆反応との平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも高温で、かつその温度からの温度差が所定値(たとえば100℃)以内である温度に、所定の第1期間維持する。これによって、原料粉体表面の被膜を除去する。次に、封入容器内の水素ガス雰囲気の温度を、室温へ戻さずに、平衡曲線上の前記所定圧力に対応する温度よりも低温で、かつその温度からの温度差が所定値(たとえば100℃)以内である温度に、所定の第2期間維持する。これによって、原料粉体から水素化マグネシウムを製造する。この方法によれば、水素化率の高い水素化マグネシウムを効率的に製造することができる。
【0039】
また、特許第4425990号公報に開示されている方法で水素化マグネシウムを製造する場合には、具体的には、マグネシウムを主成分とする薄片を複数集積して圧縮した圧縮物を作成し、これを水素ガス雰囲気中で水素ガスと反応させることにより、水素化マグネシウムを製造する。この方法によれば、マグネシウムを主成分とする薄片から製造するので、粉塵爆発を起こす可能性が低く、より安全に、水素化率の高い水素化マグネシウムを効率的に製造することができる。
【0040】
なお、水素化率とは、MgH
2分子量26とMgの分子量24にしたがって理想的に吸蔵され得る水素量に対する百分率であり、水素化マグネシウムの製造時に水素吸蔵前後の質量を測定して、下記式(2)のようにして求められる。
【0042】
上記の方法などにより得られる水素化マグネシウムは、通常その水素化率は70〜100%程度、より好ましくは90〜100%程度である。また、他の水素吸蔵合金と比べても高く、化学的劣化に対しても安定である。したがって、輸送、供給、貯蔵等の作業性の面において扱いやすく、非常に優れた水素吸蔵体である。
【0043】
水素発生用布および水素発生用紙における水素発生物質の含有量は、特に限定されない。たとえば、0.001〜10重量%とすることができ、好ましくは、0.5〜5重量%とすることができる。0.001重量%以上であれば、水と反応して発生する水素の量が十分となり、高い効果が期待できる。また、経済的な観点からは10重量%以下であることが好ましい。
【0044】
水素発生物質は、水素発生用布および水素発生用紙の表面および内部に全体的に含まれていてもよい。布および紙の表面とは、外側の外気と接触する面をさし、表と裏との両面を含む。水素発生物質は、布および紙の表面および内部に均一な濃度で分散していてもよいし、ランダムな濃度で分散していてもよい。
【0045】
また、水素発生物質は、水素発生用布および水素発生用紙の表面のみに付着していてもよい。水素発生物質は、表面全体に付着してもよいし、対象物(たとえば皮膚)に接触する面にのみ付着していてもよい。また、水素発生物質は、水素発生用布および水素発生用紙の表面の一部のみに部分的に付着していてもよい。
【0046】
また、水素発生物質は、非水系基剤と共に提供されてもよい。たとえば、水素発生物質は、非水系基剤と共にシート状または粒状に形成し、水素発生用布および水素発生用紙の表面に付着させてもよい。
【0047】
非水系基剤しては、たとえば、非水系の樹脂または樹脂組成物であることができる。非水系の樹脂としては、たとえばポリスチレン系樹脂などが挙げられる。
【0048】
水素発生物質は、たとえば特開2006-333890号公報および特開2010-207406号公報に開示されている方法によって製造されるゲル状のシート(ゲルシート)として提供されてもよい。具体的には、非水系基剤として付加重合系熱可塑性ブロック弾性体を使用する。これらの材料とパラフィン系オイルとを主成分としたものに水素発生化合物およびその他の成分を混ぜ合わせる。次いで、押出成形、コンプレーション成形、インジェクション成形、カレンダー成形、真空注型成形またはトランスファ成形等の成形方法を用いて板状に成形することによって製造することができる。これを粉砕等して、粒状にしてもよい。
【0049】
上記方法によって製造されるゲルシートは、粘着性を有する。したがって、布および紙に良好に貼り付けることができる。また、この方法で製造した水素発生材は、布および紙の湾曲部の形状の変化が大きい場合であっても、湾曲部の形状に沿って変形し、湾曲部の表面に密着可能である。また、布および紙の凹凸部の形状の変化が大きい場合でも、厚さ方向に圧縮変形することにより凹凸部の表面に密着することが可能である。
【0050】
上記の付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、ポリスチレンブロックと水添もしくは非水添のポリイソプレンブロックとからなるブロック共重合体、ポリスチレンブロックと水添もしくは非水添のポリブタジエンブロックとからなるブロック共重合体の何れかを用いることが可能である。また、付加重合系熱可塑性ブロック弾性体は、たとえば全体の数平均分子量が5,000〜500,000の範囲にあり、ポリスチレンブロック単位の含有量が10〜50重量%であり、かつポリイソプレンブロック単位またはポリブタジエンブロック単位の二重結合の70%以上が水添されたものがより好ましく用いられる。また、ポリスチレンブロック単位の重量平均分子量としては5,000〜130,000、ポリイソプレンブロック単位またはポリブタジエンブロック単位の重量平均分子量としては10,000〜300,000のものを例示することができる。
【0051】
さらに具体的には、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリイソプレンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体として、飽和型のジブロックおよびトリブロックタイプのスチレンエチレンプロピレン(SEP)またはスチレンエチレンプロピレンスチレン(SEPS)を用いることが好ましい。また、ポリスチレンブロックと水添または非水添のポリブタジエンブロックとからなる付加重合系熱可塑性ブロック弾性体としては、スチレンエチレンブタジエン(SEB)またはスチレンエチレンブタジエンスチレン(SEBS)を用いることが好ましい。
【0052】
たとえば、非水系基剤として、コスモスーパーゲルを使用してもよく、可塑剤としてPHAZOL 35(ホワイト・ミネラル・オイル)を使用してもよい。なお、コスモスーパーゲルは、流動パラフィン、炭化水素樹脂およびスチレン系ポリマーを含有するオレフィン系熱可塑性樹脂である。PHAZOL 35は、潤滑油留分に属する高度精製液状飽和炭化水素からなる石油系炭化水素である。
【0053】
上記のような水素発生
剤を、ポリスチレン系樹脂
などの非水系基剤と共に含むゲルシートは、水と反応して長期間にわたって水素を発生し続ける。したがって、これらを付着させた布および紙は、水分が提供されることにより、長期間にわたって水素を発生させることができる。
【0054】
(薬効成分)
水素発生用布および水素発生用紙は、薬効成分をさらに含んでもよい。薬効成分とは、人体に適用されることが効果的な成分をいう。また、薬効成分は、水素発生用布および水素発生用紙が使用される部位に対して効果を有する成分であることが好ましい。水素は、その分子量が小さいことなどにより、人体への吸収が優れている。したがって、水素発生用布および水素発生用紙に薬効成分を含めることにより、発生する水素とともに薬効成分をも効率よく人体に吸収させることができる。
【0055】
薬効成分としては、たとえば医薬品、医薬部外品、ビタミン類、アミノ酸および生薬類などが挙げられる。ビタミン類としては、アスコルビン酸やその誘導体であるアスコルビン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸カリウム塩、アスコルビン酸マグネシウム塩、デヒドロアスコルビン酸、アスコルビン酸グルコシド、酢酸エステル体、安息香酸エステル体、高級脂肪酸エステル体、リン酸エステル体及びその塩、硫酸エステル体及びその塩、レシチン誘導体、レチノイン誘導体、トコフェロールリン酸ジエステルなどが挙げられる。また、生薬類には、種々の植物エキスまたは粉末等も含まれる。たとえばチンピ(ミカンの皮)、トウガラシ、高麗ニンジン、生姜、当帰、ヨモギ、レモンの皮、海藻、スピルリナ、クロロフィル、ドナリエラ、ヒノキ、ヒバ、米ヌカ、ショウブ、ショウキョウ、カンゾウ、トウヒ、ハッカ、ケイヒ、ウバイ、ドクダミ、モモノハ、カミツレ、アロエ、ジャスミン、ローズヒップ、ラベンダー、グァバ、オウゴン、クコ、レイシ、ニワトコ、アシタバ、ウコギ、ゴボウ、カンゾウ、コウカ、ゲンノショウコ、トウガラシ等の粉砕物およびこれらの油溶性または水溶性抽出物であってもよい。
【0056】
(その他の成分)
さらに、水素発生用布および水素発生用紙は、たとえば、油剤、フッ素化合物、溶剤、樹脂、増粘剤、保湿剤、紫外線吸収剤、塩類、薬用成分、酸化防止剤、抗酸化剤、抗菌剤、キレート剤、中和剤、pH調整剤、防腐剤、昆虫忌避剤、生理活性成分、育毛剤、色素、香料および清涼剤などを含んでいてもよく、上述したものを含め、化粧品、医療品、被服、寝具、建材、家具、文具および生活雑貨などに使用できる成分であればどのようなものでも含むことができる。水素を効率よく発生させる観点および安定性の観点から、これらの成分は、非水系の成分であることが好ましい。また、水素発生物質以外の固体粒子が水分を吸収するのを妨げないことが好ましい。
【0057】
本発明の水素発生用布および水素発生用紙に使用される香料の例としては、たとえば、ラベンダー油、ジャスミン油、ローズ油、レモン油、オレンジ油、ハッカ油、タイム油、ショウブ油、ウイキョウ油、スギ油、ヒバ油、ヒノキ油、バラ油、ユーカリ油、カンファー、ペパーミント油、スペアミント油、ゲラニオール、ミカン油、トウヒ、シトロネロール等の天然および合成香料が挙げられる。
【0058】
水素発生用布および水素発生用紙が水系の成分を含む場合には、水素発生用布および水素発生用紙における水系の成分の配合量は、水素発生効率を低下させないよう、適切に設定されることが好ましい。また、水素発生用布および水素発生用紙は、非水系の成分のみを含むこと、すなわち水分を全く含まないことがより好ましい。これにより、水素発生用布および水素発生用紙内での水素発生物質の分解を防ぐことができるため、水素を効率よく発生させることができる。
【0059】
(本発明の用途)
水素発生用布および水素発生用紙は、特に限定されず、化粧品、医療品、被服、寝具、建材、家具、文具、生活雑貨、その他一般的に布または紙が用いられる分野に好適に利用することができる。特に、水素の供給が必要とされる分野に好適に利用することができる。本発明は、皮膚老化防止、酸化ストレスの減少、成人病予防およびアンチエイジングによる健康維持などの効果を有する水素を提供することができるため、このような効果が必要とされる分野において好適に利用することができる。
【0060】
たとえば水素発生用布は、マスク、フェイスマスク、ハンドケア用布、生理用品等の化粧品、包帯、ガーゼ、ギブス、湿布、絆創膏、マスクおよびアイマスク等の医療品、衣服、ストッキング、バッグ、シューズおよびシューズの中敷き等の被服、マットおよびシーツ等の寝具、カーペットおよびカーテン等の家具、布テープ等の文具、空気清浄機フィルター、防塵フィルター、ろ過フィルター等の各種フィルター、並びに包装資材および雑貨などの広範な製品に用いることができる。
【0061】
また、たとえば水素発生用紙は、紙おむつおよび紙おしろい等の化粧品、壁紙等の建材、各種用紙、ノート、紙テープ等の文具、キッチンペーパー、トイレットペーパー等の生活雑貨、空気清浄機フィルター、防塵フィルター、ろ過フィルター等の各種フィルター、包装資材、並びに雑貨などの広範な製品に用いることができる。たとえば、水素発生用布および水素発生用紙を浴室などの湿気の多い空間に貼ることにより、空気中の水分と接触して水素を発生することができる。
【0062】
また、水素発生用布および水素発生用紙は、皮膚に直接接触して使用されるものであることができる。これにより、皮膚中に含まれる水と水素発生物質とが反応して、皮膚に対し水素を提供するので、皮膚老化防止、アンチエイジング等の効果をもたらすことができる。特に、水素発生用布および水素発生用紙を皮膚に直接適用すると、皮膚からの水分を利用できると共に、発生した水素も皮膚に吸収されやすい。また、水素発生用布および水素発生用紙をマスクなどに利用すると、呼気中の水分を利用できると共に、発生した水素も口および鼻から吸収されやすい。
【0063】
(水素発生用布および水素発生用紙の製造方法)
水素発生用布および水素発生用紙は、特に限定されないが、たとえば水素発生物質を布または紙に付着させることによって製造してもよい。すなわち、本発明の水素発生用布または水素発生用紙の製造方法は、水と反応して水素を発生する物質を布または紙に付着させる付着工程を含んでもよい。
【0064】
また、水素発生用布および水素発生用紙は、布および紙の製造に用いる材料、たとえば糸、繊維などに水素発生物質を含有させ、この材料を用いて、公知の方法により布または紙を製造することにより製造してもよい。
【0065】
水素発生物質を布または紙に付着させて製造する場合、用いる布および紙は、公知の方法を用いて作製されてもよく、既製品であってもよい。布および紙は、たとえば水素発生用布および水素発生用紙として上で例示した既成の製品であってもよい。
【0066】
付着工程としては、特に限定されないが、たとえば、水素発生物質を含有する液体を、原料となる布または紙に塗布する工程であってもよい。たとえば、水素発生物質を含有する液体中に布または紙を浸漬してもよいし、該液体を布または紙に塗布してもよい。塗布する方法としては、たとえばインクジェットプリンタと同様の方式を用いてもよい。
【0067】
水素発生物質を含有する液体は、水素発生物質および1つまたは複数の非水系溶媒を含有することが好ましい。該液体は、顔料、染料、色素、パールおよびラメなどをさらに含有してもよい。液体は、たとえば塗料、インクなどの形態であってもよい。非水系溶媒は、揮発性であっても不揮発性であってもよく、インク等に通常用いる溶媒を用いてもよい。
【0068】
また、水素発生物質を含有する粉体を、原料となる布または紙に付着させてもよい。たとえば、水素発生物質を含有する粉体を布または紙の繊維の隙間に入り込ませることによって保持させてもよいし、布または紙の表面に静電気等の力で付着させてもよい。たとえばレーザープリンタと同様の方式で粉体を布または紙に付着させてもよい。
【0069】
水素発生物質を含有する粉体は、少なくとも水素発生物質を含有すればよく、顔料、分散剤およびプラスチック粒子等をさらに含有してもよい。粉体は、たとえばトナーの形態であってもよく、トナーに通常用いる成分を含有してもよい。粉体の平均粒径は、布または紙に良好に付着させることができる大きさであればよく、特に限定されないが、たとえば粉体X線回折装置を用いた解析に基づき、1〜100μmであることができる。
【0070】
また、水素発生物質を含有するスプレー剤を、原料となる布または紙に噴射してもよい。スプレー剤を布または紙に噴射することにより、水素発生物質を布または紙に吹き付けて付着させることができる。
【0071】
水素発生物質を含有するスプレー剤は、少なくとも水素発生物質を含有すればよく、非水系溶媒および噴射剤などをさらに含有してもよい。非水系溶媒は揮発性であっても不揮発性であってもよいが、揮発性であれば、布または紙に噴射した後に水素発生物質を残して溶媒のみを揮発させて除去することができる。
【0072】
また、本発明は、上述した水素発生物質を含有する液体、粉体およびスプレー剤をも包含する。これらの液体、粉体およびスプレー剤は、本発明の水素発生用布または水素発生用紙を製造するためのものであり、これらの構成は上述したとおりである。これらを用いることにより、使用者は、自身が所有する布や紙に容易に水素発生能を付与することができる。
【0073】
したがって、使用者は、上記液体、粉体またはスプレー剤を用いることにより、自身が使用する衣服や既成品のマスク等に毎日水素発生能を付与することができ、継続して水素による皮膚老化防止、アンチエイジングなどの効果を得ることができる。
【0074】
上記液体、粉体およびスプレー剤は、上述した薬効成分およびその他の成分をさらに含んでもよい。また、上記液体、粉体およびスプレー剤は、使用時以外、たとえば使用者の手に渡るまでの間は、水素発生物質が水分と全く反応しない状態またはその反応性が非常に低い状態を維持する形態であることが望ましい。これにより、水素発生物質の劣化を防ぎ、使用時に布および紙に良好に水素発生能を付与することができる。
【0075】
具体的には、上記液体、粉体およびスプレー剤は、全く水分を含まない形態であってもよい。また、上記液体、粉体およびスプレー剤は、不活性ガス封入等によって湿気を遮断するように包装された状態で使用者に提供されるように調製されることが好ましい。
【実施例】
【0076】
以下に実施例を示し、本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0077】
〔実施例1〕水素発生用紙
二水素化マグネシウム5質量%、ポリ酢酸ビニル系バインダ40%質量(固形分50%:日本合成製)、微粒子酸化亜鉛(MZ-300:テイカ社製)15%およびメタノール40%質量を混合した。この混合を、グラビアコーターを用いて、坪量50g/m
2の和紙に塗布することにより、上記組成物が塗布された坪量70.0g/m
2の和紙を製作した。これを10cm平方で切り取った。次いで、組成物が塗布された和紙を密封した容器内にて200mlの精製水の中に3時間つけた。水素濃度測定器にて濃度を測定したところ、103ppbの濃度であった。
【0078】
〔実施例2〕水素発生用布
ポリエステル基布に、二水素化マグネシウム20質量%、バインダとして酢酸ビニル樹脂40質量%および溶剤としてメタノール40部質量%を混合した。この混合物を撹拌して、塗液を作成した。この塗液を使用して、基布の裏面に製版深度250μのグラビア印刷により、塗布量60g/m
2の塗布地を作成した。この布地を10cm平方で切り取った。次いで、密封した容器にて200mlの精製水の中に3時間つけた。水素濃度測定器にて濃度を測定したところ、156ppbの濃度であった。