(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載されたような従来の技術では、上流側の生産工程で生産された被検査物が物品検査装置に搬入されて検査が行われるものであるから、常に一定間隔で連続的に被検査物が物品検査装置に搬入されるとは限らず、上流側の生産工程がバッチ処理等を採用しているときは断続的に物品検査装置に被検査物が搬送されてきたり、生産工程でトラブルが発生したときは長時間に渡って物品検査装置に被検査物が搬入されない場合もある。すなわち、被検査物が搬入されていないときに物品検査装置を運転することにより、不要な電力を消費してしまっていた。
【0007】
ところが、従来の技術においては、物品検査装置への被検査物の搬入状況の推移等を客観的に把握する手段がないため、上流側の生産工程における被検査物の生産状況に応じて、物品検査装置の運転と停止のタイミングをユーザーが判断することが容易ではなかった。
【0008】
このため、被検査物が搬入されていないときに物品検査装置が不要な電力をどの程度消費しているか把握することができないという問題があった。また、不要な電力の消費状況が把握できないため、被検査物の搬入状況に応じた物品検査装置の小まめな運転の停止、再開がユーザーにより行われていないという問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、前述のような従来の問題を解決するためになされたもので、装置の想定される消費電力量に対する装置が消費した電力量の推移を表示することにより、不要な電力消費の低減をユーザーに促しエコ活動を支援することができる物品検査装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る物品検査装置は、前段の生産工程から搬入される被検査物(W)を所定の搬送条件で搬送する搬送手段(2)と、前記搬送手段が搬送する前記被検査物の品質を検査する検査手段(3)と、前記検査手段による前記被検査物の検査結果を含む情報を表示する表示手段(4)と、を備えた物品検査装置(1)において、前記被検査物の品種に応じた検査条件で装置を運転したときの基準消費電力を設定する基準消費電力処理を行う基準消費電力設定手段(4、8)と、検査開始から時間経過したときまでに消費した電力を積算して実消費電力量を算出する実消費電力量算出手段(8)と、前記基準消費電力で検査開始から時間経過したときの基準消費電力量に対する、前記実消費電力量算出手段で算出した実消費電力量の比率である実消費電力量比率を算出する実消費電力量比率算出手段(8)と、前記実消費電力量比率の時間的な推移を前記表示手段に表示させる表示制御手段(8)と、を備えたことを特徴とする。
【0011】
この構成により、設定された基準消費電力で検査開始から時間経過したときの基準消費電力量に対する実消費電力量の比率である実消費電力量比率を算出し、実消費電力量比率の時間的な推移を表示手段に表示させることにより、ユーザーは、表示手段に表示される実消費電力量比率の時間的な推移を参照することにより、搬送手段を停止すること等による消費電力の低減を行うことができる。
【0012】
したがって、装置の想定される消費電力量に対する装置が消費した電力量の推移を表示することにより、不要な電力消費の低減をユーザーに促しエコ活動を支援することができる。
【0013】
また、本発明に係る物品検査装置は、前記実消費電力量比率の上限を設定する上限設定手段(4)を備え、前記表示制御手段は、前記実消費電力量比率が前記上限設定手段により設定された上限を超えたときに前記表示手段に警告を表示させることを特徴とする。
【0014】
この構成により、ユーザーは、表示手段に表示される警告を機会として、搬送手段を停止すること等による消費電力の低減を行うことができる。
【0015】
また、本発明に係る物品検査装置は、前記搬送手段における前記被検査物の搬送間隔を検出する被検査物検知手段(52)と、前記被検査物検知手段が検知した前記被検査物の搬送間隔に基づいて、前記搬送手段の搬送速度の余裕度を算出する搬送余裕度算出手段(8)と、を備え、前記表示制御手段は、前記搬送余裕度算出手段により算出された搬送速度の余裕度に応じて前記搬送手段の搬送速度の減速を促すメッセージを前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0016】
この構成により、搬送手段の消費電力は搬送速度の減速とともに減少するものであるため、搬送余裕度算出手段で算出された余裕度に応じて表示手段に表示されるメッセージに従って、ユーザーが搬送手段の減速を行う等により、消費電力の低減を行うことができる。
【0017】
また、本発明に係る物品検査装置は、前記表示制御手段は、前記被検査物の品種に関わらず、検査開始から時間経過したときの、前記実消費電力量比率の時間的な推移を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0018】
この構成により、被検査物の品種に関わらず、検査開始から時間経過したときの、実消費電力量比率の時間的な推移が表示手段に表示されるため、検査開始から時間経過したときの全期間の実消費電力量比率の時間的な推移に基づいて、消費電力の低減を行うことができる。
【0019】
また、本発明に係る物品検査装置は、前記表示制御手段は、検査開始から時間経過したときの、前記実消費電力量比率に応じて変化する図柄を前記表示手段に表示させることを特徴とする。
【0020】
この構成により、利用者は、実消費電力量比率に応じて変化する図柄に注目するだけで、実消費電力量比率を容易に把握することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、装置の想定される消費電力量に対する装置が消費した電力量の推移を表示することにより、不要な電力消費の低減をユーザーに促しエコ活動を支援することができる物品検査装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
図1に示すように、物品検査装置1は、搬送部2と、検査部3と、表示操作部4と、判定部5と、制御回路6と、を備えている。
【0026】
この物品検査装置1は、例えば生肉、魚、加工食品、医薬などの被検査物Wが搬送される図示しない製造ラインに組み込まれ、被検査物W中に混入した異物を検出、または、被検査物Wが所定の重量範囲内であるか否かを検査するものである。
【0027】
搬送部2は、前段の生産工程から搬入される被検査物Wを所定の搬送条件(搬送速度等)で搬送するものであり、例えば、生肉、魚、加工食品、医薬などの様々な品種の中から予め表示操作部4で設定される品種の被検査物Wを順次搬送するようになっている。搬送部2は、例えば装置本体に対して水平に配置されたベルトコンベアにより構成される。
【0028】
また、搬送部2は、図示しない駆動モータにより駆動され、予め設定された所定の搬送速度で、搬入された被検査物Wを
図1の矢印方向(右方向)に搬送するようになっている。
【0029】
検査部3は、被検査物Wに含まれる異物の種類やサイズに応じた検出信号、または被検査物Wの重量に応じた検出信号を出力するようになっている。物品検査装置1が金属検出装置として構成される場合、検査部3は、
図2に示す金属検出部3Bから構成される。物品検査装置1がX線異物検出装置として構成される場合、検査部3は、
図3に示すX線検出部3Aから構成される。物品検査装置1が計量装置として構成される場合、検査部3は、
図4に示す重量検出部3Cから構成される。
【0030】
図2に示す金属検出部3Bは、信号発生器31、送信コイル32、2つの受信コイル33a、33bを有する磁界変化検出部33、検波部34を備えている。
【0031】
信号発生器31は、所定周波数の信号を出力する。送信コイル32は、信号発生器31からの信号を受けて被検査物Wに所定周波数の交番磁界を発生するようになっている。
【0032】
2つの受信コイル33a、33bは、送信コイル32が発生する交番磁界を等量ずつ受ける位置で被検査物Wの搬送方向に沿って配置され、互いに差動接続される。磁界変化検出部33は、交番磁界中を通過する物体による磁界の変化に対応した信号を発生するようになっている。
【0033】
検波部34は、磁界変化検出部33の出力信号を信号発生器31が発生する信号と同一周波数の信号によって同期検波するようになっている。
【0034】
このような構成による金属検出部3Bでは、被検査物Wが交番磁界中に存在していないときには、2つの受信コイル33a、33bに生起される信号の振幅が等しく位相が反転している平衡状態となるため、信号の振幅はゼロとなり、検波部34の出力もゼロになる(検波出力)。
【0035】
これに対し、被検査物Wが交番磁界中に存在している場合には、被検査物W自身およびその被検査物Wに混入している金属の影響により、2つの受信コイル33a、33bに生起される両信号の平衡状態がくずれ、被検査物Wの移動に伴い、振幅および位相が変化する信号が検波部34から出力される(検波出力)。
【0036】
なお、
図2に示した金属検出部3Bは、搬送部2を挟んで一方側に送信コイル32を配置し、他方側に2つの受信コイル33a、33bを送信コイル32に対向させるように配置したいわゆる対向型配置の構成を有しているが、送信コイル32と受信コイル33a、33bとが同軸上に配置された同軸型配置の構成を有していてもよい。
【0037】
また、金属検出部3Bは、被検査物Wに含まれる金属を磁石等の磁化器で着磁し、磁化された金属の残留磁気を磁気センサで検出するような構成としてもよい。
【0038】
また、
図3に示すX線検出部3Aは、X線発生器21とX線検出器22とを備えている。
【0039】
X線発生器21は、金属性の箱体内部に設けられる円筒形のX線管を絶縁油に浸漬したものから構成されており、X線管の陰極からの電子ビームを陽極ターゲットに照射してX線を生成している。
【0040】
X線管は、その長手方向が被検査物Wの搬送方向となるように配置されている。X線管により生成されたX線は、下方のX線検出器22に向けて、不図示のスリットにより略三角形状のスクリーン状となって搬送方向を横切るように照射されるようになっている。
【0041】
X線検出器22は、被検査物Wに対してX線が照射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線を検出し、この検出したX線の透過量に応じた電気信号を出力している。X線検出器22には、例えば搬送部2を構成するベルトコンベア上を搬送される被検査物Wの搬送方向と直交する方向にライン状に配列された複数のフォトダイオードと、フォトダイオード上に設けられたシンチレータとを備えたアレイ状のラインセンサが用いられている。
【0042】
このような構成によるX線検出部3Aでは、被検査物Wに対してX線発生器21からX線が照射されたときに、被検査物Wを透過してくるX線をX線検出器22のシンチレータで受けて光に変換する。
【0043】
さらにシンチレータで変換された光は、その下部に配置されるX線検出器22のフォトダイオードによって受光される。そして、各フォトダイオードは、受光した光を電気信号に変換して出力する(検出出力)ようになっている。
【0044】
また、
図4に示す重量検出部3Cは、秤量コンベア42と、この秤量コンベア42の下方に配置された荷重センサ41とを備え、秤量コンベア42に乗った被検査物Wの荷重を計量するようになっている。
【0045】
荷重センサ41は、電磁平衡機構などのはかり機構で構成されており、被検査物Wが秤量コンベア42で搬送されている間に、荷重センサ41に加わる荷重、すなわち被検査物Wと秤量コンベア42との合計重量を測定するようになっている。荷重センサ41は、重量を測定できるはかり機構であればよく、例えば、差動トランス機構や歪ゲージ機構などのはかり機構で構成してもよい。
【0046】
荷重センサ41は、後述する搬入センサ52によって被検査物Wが秤量コンベア42に搬入されたことが検知されてから予め設定された基準時間Tkが経過したときに計量を行うようになっている。
【0047】
ここで、基準時間Tkは、搬入センサで被検査物Wが秤量コンベア42に搬入を開始したことを検出してから、被検査物Wが秤量コンベア42に完全に乗り移り、さらに荷重センサ41から出力された信号が安定するまでに必要な時間を意味し、秤量コンベア42のサイズ、速度、および所定の被検査物Wの大きさに対応して予め設定されている。
【0048】
具体的には、基準時間Tkは、秤量コンベア42の速度(m/min)、秤量コンベア42の矢印B方向の長さ(mm)および被検査物Wの搬送方向の長さ(mm)、被検査物Wのサイズやラインの処理能力、その他の条件などに基づいて設定される。また、基準時間Tkが経過すると、被検査物Wは、搬入開始検出位置P
OからL
1だけ移動して質量測定位置P
Sに到達し、計量が行われる。
【0049】
検査部3の上流側には、搬送部2により搬送される被検査物Wの通過の有無や、通過の有無に基づく搬送間隔を検知する搬入センサ52が設けられている。搬入センサ52は、搬送部2を幅方向(
図1の手前および奥方向)に跨ぐように対向して配置された図示しない一対の投光部および受光部からなる透過形光電センサでそれぞれ構成されている。
【0050】
そして、搬入センサ52は、被検査物Wが各々の投光部と受光部の間を通過すると、被検査物Wにより受光部が遮光されるので、被検査物Wが通過して検査部3に搬入が開始されたことを検出するようになっている。搬入センサ52からの検出信号は、制御部8に出力されるようになっている。
【0051】
表示操作部4は、入力操作機能および表示機能を兼用するタッチパネルから構成されており、入力操作としては、搬送部2によって搬送させる被検査物Wの品種の設定操作や、被検査物Wの異物検出、計量の動作確認に関する各種設定操作や指示操作を行うようになっている。
【0052】
また、表示操作部4は、表示動作としては、被検査物Wの品種の設定操作が行われるときの設定値、指示操作が行われるときの指示値、各種判定結果等、種々の表示を行うようになっている。
【0053】
なお、表示操作部4は、入力操作機能と表示機能とが独立した構成としてもよく、この場合、入力操作機能のために、設定や指示のために入力操作する複数のキーやスイッチ等を設けるとともに、表示機能のために、液晶表示器等を設けた構成とすることができる。
【0054】
判定部5は、検査部3からの検出信号に基づいて、被検査物Wの中に異物が含まれているか否か、または被検査物Wの重量が所定範囲内であるか否か等の良否判定を行うとともに、判定結果を表示操作部4に表示させるようになっている。
【0055】
制御回路6は、物品検査装置1の全体の制御を行うものであり、記憶部7および制御部8を備えている。
【0056】
記憶部7は、制御部8が物品検査装置1を制御するための各種プログラム、判定部5が被検査物Wについて良否判定を行うための各種パラメータ等を記憶するようになっている。
【0057】
制御部8は、記憶部7に記憶されたプログラムを実行して、搬送部2の搬送速度の制御、判定部5のパラメータの変更、動作モードの切替等、物品検査装置1の各種制御を行うようになっている。
【0058】
ここで、制御部8が実行する動作モードとしては、検査部3により被検査物Wを検査して判定部5により良否判定を行う通常の動作モードである通常検査モードの他に、設定モードがある。
【0059】
通常検査モードとは、被検査物Wとしての製品に対して異物の有無の検査、計量等を行う動作モードである。設定モードとは、通常検査モードの前、または通常検査モード中に、良否判定を行うための各種パラメータ等を設定するモードである。
【0060】
ここで、
図5を参照して、物品検査装置1における一般的な被検査物Wの搬送状況の一例、および異なる運転状態における電力使用量の差異を説明する。
【0061】
物品検査装置1においては、一般的に、前段の製造ライン等から搬送部2に搬入される被検査物Wは、検査開始から検査終了まで常に等間隔で連続的であるとは限らず、
図5に示すように、一定数の被検査物Wが搬送部2に搬入された後、被検査物Wが搬入されない時間が暫く有り、その後、再び被検査物Wが搬送部2に搬入されるという状態を繰り返すことも多い。
【0062】
これは、前段の製造ライン等で被検査物Wをバッチ処理等により断続的に製造していたり、または、休憩等により作業が断続的に行われている等の理由によるものである。
【0063】
図5は、搬送部2の前段で製造された12000個の被検査物Wを、物品検査装置1を毎分50個の速度で検査し、基準稼働時間が5時間である場合を示している。
【0064】
図5に示す例では、時刻t0で物品検査装置1が通常検査モードで検査を開始すると同時に被検査物Wの搬入が開始されてから、時刻t1まで被検査物Wの搬入が行われ、時刻t1から時刻t2までは、被検査物Wの搬入が行われていない。
【0065】
同様に、時刻t2から時刻t3まで被検査物Wの搬入が行われ、時刻t3から時刻t4までは、被検査物Wの搬入が行われていない。その後も、時刻t4から時刻t5まで、時刻t6から時刻t7まで、時刻t8から時刻t9まで、時刻t10から検査を終了する時刻t11まで、は被検査物Wの搬入が行われ、これらの時間帯の間である、時刻t5から時刻t6まで、時刻t7から時刻t8まで、時刻t9から時刻t10まで、は被検査物Wの搬入が行われていない。
【0066】
また、
図5の例では、通常検査モードにおいて時刻t0で被検査物Wの検査を開始してから時刻t11で検査を終了するまで、5時間を要しており、このうち、被検査物Wの搬入が行われる時間の合計は4時間であり、被検査物Wの搬入が行われていない時間の合計は1時間となっている。
【0067】
ここで、例えば、物品検査装置1の搬送部2の駆動部(例えば、モータ)が消費する電力が40Wであり、搬送部2以外の被駆動部(例えば、検査部3、表示操作部4、判定部5、制御回路6)が消費する電力が30Wであるとすると、被検査物Wの搬入の有無に関わらず搬送部2を連続的に駆動した場合に、検査開始から検査終了までの5時間の間に物品検査装置1が消費する電力量は、
図5に示すように、(40W+30W)×5h=350Whとなる。
【0068】
仮に、被検査物Wの搬入が行われない合計1時間に対して搬送部2を停止するとともに、被検査物Wの搬入が行われる合計4時間に対してのみ搬送部2を駆動するように、搬送部2を断続的に駆動した場合は、検査開始から検査終了までの5時間の間に物品検査装置1が消費する電力量は、
図5に示すように、{(40W+30W)×5h}−(40W×1h)=310Whとなり、搬送部2を停止しなかった場合と比べて、40Whの電力量を削減することができる。
【0069】
また、仮に、被検査物Wの搬入間隔等に対して搬送部2の搬送速度や検査部3の検査速度に余裕があるときに、被検査物Wの搬入が行われない合計1時間に対して搬送部2を停止することに加えて、被検査物Wの搬入が行われる合計4時間に対して搬送部2を搬送速度を4/5に減速して駆動するようにした場合は、搬送部2の消費電力が4/5に減少するものとして計算すると、被検査物Wの搬入が行われる合計4時間の間に物品検査装置1が消費する電力量は、(4/5*40W+30W)×4h=248Whとなり、搬送部2を減速駆動しなかった場合と比べて、さらに62Whの電力量を削減することができる。
【0070】
このように、被検査物Wが搬送部2に搬入される状態が途切れたときに搬送部2を停止したり、被検査物Wが搬送部2に搬入される速度に応じて搬送部2を減速駆動することによって、物品検査装置1が消費する電力量の削減が可能となる。
【0071】
また、X線検査部3Aのような消費電力が高い検出部から構成される検査部3の場合には、搬送部2と同様に検査部3への電源供給を停止したり、待機状態にすることにより、更に物品検査装置1が消費する電力量の削減が可能となる。
【0072】
そこで、本実施の形態では、制御部8は、以下に説明するように、通常検査モード時の基準消費電力量に対する実消費電力量の推移や、被検査物Wの搬入状況を表示操作部4に表示させることにより、搬送部2の停止や減速等による消費電力量の削減をユーザーに促すようになっている。
【0073】
ここで、本明細書では、説明に用いる用語を次のように定義する。
【0074】
基準消費電力とは、検査対象とする被検査物Wの品種に応じた標準的な検査条件で物品検査装置1を通常検査モードで運転したときの、物品検査装置1の全体の見込みの消費電力のことであり、被検査物Wのある品種に対する搬送部2の標準的な搬送速度での消費電力、および、搬送部2以外の検査部3等の標準的な検査条件での消費電力の和のことである。
【0075】
基準消費電力量とは、基準消費電力を消費して検査開始から現在まで通常検査モードで運転を行ったときの見込みの電力量のことである。
【0076】
この基準消費電力は、基準消費電力設定処理によって定められ、品種ごとに記憶部7に記憶されるようになっている。基準消費電力設定処理は、制御部8が被検査物Wの品種等に応じて基準消費電力を自動的に定めるような処理であってもよく、また、ユーザーが被検査物Wの品種等に応じて基準消費電力を表示操作部4から入力して設定するような処理であってもよい。
【0077】
また、実消費電力とは、実際に物品検査装置1が通常検査モードで運転または停止をしたときの時間毎の装置全体の消費電力のことであり、本実施の形態では、検査開始からの現在までの装置の運転または停止状況に応じて算出される。
【0078】
具体的には、実消費電力は、装置が運転状態のときにその品種の検査条件によって定まる消費電力と、装置が停止状態のときの待機電力とから、装置の運転または停止状況に応じて算出される。
【0079】
また、実消費電力量とは、検査開始から現在までに装置が消費した電力量のことである。実消費電力量比率とは、基準消費電力量に対する実消費電力量の比率のことである。
【0080】
本実施の形態では、基準消費電力を自動的に行う処理として、ある個数の被検査物Wを通常検査モードで搬送および検査するのに要する標準的な物品検査装置1の運転時間である基準稼働時間を加味して基準消費電力を算出するようになっている。
【0081】
具体的には、制御部8は、基準可動時間に対して検査が行われる時間の比である標準稼働率K(運転動作の割合)を設定し、品種の検査条件によって定まる消費電力に標準稼働率Kを乗算した値と装置が停止状態の待機電力に停止動作の割合である標準非稼働率(1−K)を乗算した値の和を基準消費電力として算出する基準消費電力設定処理を行うことで、被検査物Wの品種に応じた標準的な検査条件における装置全体の標準的な消費電力を設定する。
【0082】
また、ユーザーが設定を行う場合は、制御部8が表示操作部4に入力を促すメッセージを表示して入力待機状態となる。
【0083】
制御部8は、通常検査モードで被検査物Wの検査を開始してから終了するまで、基準消費電力で検査開始から時間経過したときの基準消費電力量を算出するとともに、実消費電力で検査開始から時間経過したときの実消費電力量を算出するようになっている。
【0084】
また、制御部8は、基準消費電力量に対する実消費電力量の比率である実消費電力量比率を算出するようになっている。
【0085】
また、制御部8は、検査を開始してから終了するまでに被検査物Wの品種が切り替わる場合は、品種ごとに時間経過時点での基準消費電力量、実消費電力量およびそれに基づく実消費電力量比率を算出するようになっている。
【0086】
なお、実消費電力は、装置への電源供給用のケーブルにクランプメータを取り付けて、品種の検査条件に関わらず直接的に取得し、それを積算して実消費電力量を算出するようにしてもよい。
【0087】
また、制御部8は、算出した実消費電力量比率の時間的な推移を表示操作部4に表示させるようになっている。
【0088】
表示操作部4における実消費電力量比率の時間的な推移の表示態様としては、
図6の表示画面4aの例に示すように、通常検査モードで被検査物Wの検査を開始してから現在まで、実消費電力量比率の推移を、基準消費電力量に対して実消費電力量が何パーセント大きいかまたは少ないかを表示するようになっている。
【0089】
また、複数品種について検査が行われた場合の実消費電力量比率の表示態様としては、
図7の表示画面4aの例に示すように、被検査物Wの品種に関わらず、通常検査モードで被検査物Wの検査を開始してから現在まで、実消費電力量比率の推移を、基準消費電力量に対して実消費電力量が何パーセント大きいかまたは少ないかを表示し、品種の切り替えタイミングが分かるように品種の区切りが表示されるようになっている。
【0090】
表示操作部4における実消費電力量比率の表示は、通常検査モードで被検査物Wの検査を終了するまで、すなわち、全ての被検査物Wの検査を終了するまで継続して行われる。
【0091】
図6、
図7において、表示操作部4には、実消費電力量比率以外の情報として、検査の開始時刻、終了時刻、生産予定数(生産および検査を行う予定の検査物Wの数)、生産数(現在まで実際に生産および検査を行った被検査物Wの数)、設定能力(毎分検査可能な被検査物Wの数の設定値)、稼働率が表示されている。
【0092】
本実施の形態では、表示操作部4からは、実消費電力量比率の上限が予め設定されるようになっている。そして、制御部8は、実消費電力量比率が予め設定された上限を超えたときに表示操作部4に警告を表示させるようになっている。例えば、表示操作部4から実消費電力量比率の上限を30パーセントと予め設定したとき、制御部8は、実消費電力量比率が30パーセントを超えたときに表示操作部4に「設定上限超過警告。30パーセント超過」等の警告を表示させる。
【0093】
また、制御部8は、搬入センサ52が検知した被検査物Wの搬送間隔に基づいて、搬送部2の搬送速度の余裕度を算出し、算出された搬送速度の余裕度に応じて搬送部2の搬送速度の減速を促すメッセージを表示操作部4に表示させるようになっている。
【0094】
減速を促すメッセージとしては、算出された搬送部2の搬送速度の余裕度が20パーセントであった場合は、「搬送部2の搬送速度を20パーセント減速しても正常に検査を行うことができます」、または、「搬送部2の搬送速度を4/5に減速しても正常に検査を行うことができます」というように表示が行われる。
【0095】
なお、制御部8は、実消費電力量比率の時間的な推移を表示するようにしたが、さらに、通常検査モードでの被検査物Wの検査開始から検査終了まで、品種に合わせて時間的に変化させた基準消費電力と、その変化させた時間に対応する実消費電力との比率である実消費電力比率の時間的な推移を表示操作部4に表示させるようにしてもよい。
【0096】
また、制御部8は、通常検査モードでの被検査物Wの検査開始から検査終了まで、実消費電力量比率に応じて変化するエコレベルの図柄4b(
図6参照)を表示操作部4に表示させるようになっている。
【0097】
エコレベルの図柄4bとは、実消費電力量比率の増減に応じて変化するものであり、例えば、
図8(a)〜
図8(c)に示すように、実消費電力量比率が増加したときに減少し、実消費電力量比率が減少したときに増加するような簡易レベルゲージの態様で植物の葉を表したものである。
【0098】
図8(a)は、基準消費電力量に対して実消費電力量が25パーセント少なかった場合のエコレベルの図柄4bの例であり、簡易レベルゲージの態様の植物の葉が全て描かれた態様となっており、実消費電力量の25パーセント削減が達成された良好な状態であることを表している。
【0099】
図8(b)は、基準消費電力量に対して実消費電力量が等しかった場合のエコレベルの図柄4bの例であり、簡易レベルゲージの態様の植物の葉が下側の2/3だけ描かれ上側の1/3が欠けた態様となっており、実消費電力量が基準消費電力量と等しく、電力削減の観点で標準的な状態であることを表している。
【0100】
図8(c)は、基準消費電力量に対して実消費電力量が25パーセント多かった場合のエコレベルの図柄4bの例であり、簡易レベルゲージの態様の植物の葉が下側の1/3だけ描かれ上側の2/3が欠けた態様となっており、電力削減の観点で劣った状態であることを表している。
【0101】
このように、実消費電力量比率が増加したときは、エコロジー的にはマイナスであるため、エコレベルが減少し、実消費電力量比率が減少したときは、エコロジー的にはプラスであるため、エコレベルが増加するように簡易レベルゲージの図柄4bを表示している。なお、エコレベルの表示態様としては、エコレベルを示す図柄4bの形状を変化させたり、図柄4bの色を変化させるようにしてもよい。
【0102】
以上のように、本実施の形態に係る物品検査装置1は、制御部8が、被検査物Wの品種に応じた検査条件で装置を運転したときの基準消費電力を設定する基準消費電力設定処理を行い、更に、検査開始から時間経過したときまでに消費した電力を積算して実消費電力量を算出し、基準消費電力で検査開始から時間経過したときの基準消費電力量に対する実消費電力量の比率である実消費電力量比率を算出し、実消費電力量比率の時間的な推移を表示操作部4に表示させることを特徴とする。
【0103】
この構成により、設定された基準消費電力で検査開始から時間経過したときの基準消費電力量に対する実消費電力量の比率である実消費電力量比率を算出し、実消費電力量比率の時間的な推移を表示操作部4に表示させることにより、ユーザーは、表示操作部4に表示される実消費電力量比率の時間的な推移を参照することにより、搬送部2を停止すること等による消費電力の低減を行うことができる。
【0104】
したがって、装置の想定される消費電力量に対する装置が消費した電力量の推移を表示することにより、不要な電力消費の低減をユーザーに促しエコ活動を支援することができる。
【0105】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1は、表示操作部4において、実消費電力量比率の上限が予め設定され、制御部8は、実消費電力量比率が予め設定された上限を超えたときに表示操作部4に警告を表示させることを特徴とする。
【0106】
この構成により、ユーザーは、表示操作部4に表示される警告を機会として、搬送部2を停止すること等による消費電力の低減を行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1は、搬送部2における被検査物Wの搬送間隔を検出する搬入センサ52を備え、制御部8は、搬入センサ52が検知した被検査物Wの搬送間隔に基づいて、搬送部2の搬送速度の余裕度を算出し、算出された搬送速度の余裕度に応じて搬送部2の搬送速度の減速を促すメッセージを表示操作部4に表示させることを特徴とする。
【0108】
この構成により、搬送部2の消費電力は搬送速度の減速とともに減少するものであるため、制御部8で算出された余裕度に応じて表示操作部4に表示されるメッセージに従って、ユーザーが搬送部2の減速を行う等により、消費電力の低減を行うことができる。
【0109】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1は、制御部8は、被検査物Wの品種に関わらず、検査開始から時間経過したときの、実消費電力量比率の時間的な推移を表示操作部4に表示させることを特徴とする。
【0110】
この構成により、被検査物Wの品種に関わらず、検査開始から時間経過したときの、実消費電力量比率の時間的な推移が表示操作部4に表示されるため、検査開始から時間経過したときの全期間の実消費電力量比率の時間的な推移に基づいて、消費電力の低減を行うことができる。
【0111】
また、本実施の形態に係る物品検査装置1は、制御部8は、検査開始から時間経過したときの、実消費電力量比率に応じて変化するエコレベルの図柄4bを表示操作部4に表示させることを特徴とする。
【0112】
この構成により、利用者は、実消費電力量比率に応じて変化するエコレベルの図柄4bに注目するだけで、実消費電力量比率を容易に把握することができる。