特許第6046942号(P6046942)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046942
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】配膳車
(51)【国際特許分類】
   A47B 31/00 20060101AFI20161212BHJP
   A47B 31/02 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
   A47B31/00 H
   A47B31/02 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-168782(P2012-168782)
(22)【出願日】2012年7月30日
(65)【公開番号】特開2014-23858(P2014-23858A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年5月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】314005768
【氏名又は名称】パナソニックヘルスケアホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】近藤 敦司
(72)【発明者】
【氏名】八木 一栄
【審査官】 蔵野 いづみ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−339453(JP,A)
【文献】 特開2009−160119(JP,A)
【文献】 特開2001−112549(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47B 31/00−31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平な第1の方向に配列された第1保温庫と第2保温庫を、部分的に鉛直方向に可動な間仕切壁で仕切り、食品載置面が平板状のトレイを、前記間仕切壁の可動部分に前記第1の方向と垂直方向である水平な第2の方向に差し込むことによって、前記トレイの食品載置面を第1の温度で提供される食品が載せられる第1スペースと第2の温度で提供される食品が載せられる第2スペースとに仕切る配膳車であって、
前記第1の方向における前記第1保温庫と前記第2保温庫を合わせた内側の寸法は、前記第1の方向における前記トレイの寸法よりも大きく、前記トレイを前記間仕切壁の可動部分に差し込む位置を前記第1の方向に変えることによって前記第1スペースと前記第2スペースの割合が変更可能であり、
前記第1保温庫及び前記第2保温庫の側壁との間に温風又は冷風が鉛直方向に流れうる空間を形成し、前記第1の方向における前記トレイの両端面のいずれかと接触可能なガイド部材を前記間仕切壁の可動部分に対向する部分に設け
前記ガイド部材は、水平方向における断面視において、前記側壁に平行な部分である中央部と、前記側壁に対して傾斜した部分である両端部と、から形成される三面構造を有する、
配膳車。
【請求項2】
前記ガイド部材の中央部は、前記側壁から5〜10mm離れていることを特徴とする請求項1に記載の配膳車。
【請求項3】
1組の前記第1保温庫及び前記第2保温庫は、鉛直方向における同一レベルにおいて、前記配膳車の両側面から前記第2の方向に2つの前記トレイを収納可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の配膳車。
【請求項4】
前記トレイの底面には、前記間仕切壁と係合し、前記第1スペースと前記第2スペースの割合が変更可能にする溝が形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の配膳車。
【請求項5】
前記ガイド部材は、板状体を折り曲げて加工して形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の配膳車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再加熱され又は温蔵される食品と冷蔵される食品を載せるためのスペースが仕切られていない平板状トレイを用いた配膳車に関する。
【背景技術】
【0002】
病院などで給食を実施する際、あらかじめ配膳車の各トレイに低温保存された食品を載置しておき、配膳前に、加熱して提供される食品のみを再加熱することが行われている。そのため、一般的な配膳車は、部分的に垂直方向に可動な間仕切壁によって仕切られた2つの保温庫を有し、一方の保温庫(第1保温庫とする)は冷蔵庫兼再加熱庫として使用され、他方の保温庫(第2保温庫)は冷蔵庫として使用される。また、従来の配膳車用のトレイは、これら2つの保温庫に対応して、例えばトレイの縁と同じ高さに形成された仕切壁によって、第1保温庫に対応する第1スペースと第2保温庫に対応する第2スペースに仕切られている。そして、第1スペースには再加熱され高温のまま提供される食品が載置され、第2スペースには低温のまま提供される食品が載置される。
【0003】
ところが、このようにあらかじめ第1スペースと第2スペースに仕切られたトレイは、その上に載置できる食器の大きさ、形状及び食器の組み合わせなどが限られており、献立に応じて柔軟に対応することができない。また、実際の使用に際して、トレイの仕切壁が邪魔になり、箸などをトレイ上に好適に載置することができない。また、仕切壁が障害物となり、トレイ上で食器をスムーズに移動させることができない。そこで、特許文献1は、食品の載置スペースが仕切られていない平板状トレイに対応した配膳車を提案している
。この配膳車では、第1保温庫と第2保温庫の間の間仕切壁は水平方向に移動できないように固定されており、平板状トレイを間仕切壁に差し込む位置を変えることによって、再加熱食品が載置される第1スペースと低温食品が載置される第2スペースの割合を変更している。
【0004】
一方、特許文献2に示す配膳車においては、第1保温庫と第2保温庫の配列方向の両側に垂直ダクトを設けると共に、第1保温庫及び第2保温庫の側壁に開口を形成し、垂直ダクト及び開口を介して第1保温庫及び第2保温庫内に温風又は冷風を供給している。このような構成によれば、垂直方向に積み重ねられた各トレイ上に載置された食品に対して、均一に温風又は冷風を供給することができ、垂直方向におけるトレイの位置に拘わらず、同じ種類の食品を同じ温度に管理することができる。
【0005】
それに対して、特許文献1に示す配膳車では、第1保温庫と第2保温庫の配列方向(配膳車の前後方向)の寸法は、同方向におけるトレイの寸法よりも大きくならざるをえない。そのため、第1保温庫と第2保温庫の両側に垂直ダクトを設けることは、省スペース化の要請に反することとなり、困難である。そのため、温風又は冷風は、第1保温庫及び第2保温庫の天井部から供給され、垂直方向に積み重ねられたトレイの隙間を通って上方から下方に供給されることになる。ところが、再加熱食品が載置される第1スペースと低温食品が載置される第2スペースのいずれかを最大限に使用する場合、トレイの端を第1保温庫又は第2保温庫の側壁に接触させることになる。そのため、第1保温庫又は第2保温庫のいずれかにおいては、トレイの隅に形成された面取り部にしか隙間が形成されず、温風又は冷風の通り道が狭くなり、下方に位置するトレイには温風又は冷風が均一に供給されなくなる可能性がある。そして、垂直方向におけるトレイの位置によっては、同じ種類の食品であっても、加熱温度や保温温度が異なっていたりする可能性がある。引用文献1の図5においては、トレイの両端を楕円弧状に形成することも提案されているが、トレイの面積を有効利用できないという問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−160119号公報
【特許文献2】特開2011−043310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来例の問題を解決するためになされたものであり、食品載置面が平板状で、且つ、矩形状のトレイの使用が可能であり、第1スペースと第2スペースの割合を変更可能であり、垂直方向におけるトレイの位置に関わりなく、同じ種類の食品を同じ温度に維持しうる配膳車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る配膳車は、水平な第1の方向に配列された第1保温庫と第2保温庫を部分的に鉛直方向に可動な間仕切壁で仕切り、食品載置面が平板状のトレイを前記間仕切壁の可動部分に前記第1の方向と垂直方向である水平な第2の方向に差し込むことによって、前記トレイの食品載置面を第1の温度で提供される食品が載せられる第1スペースと第2の温度で提供される食品が載せられる第2スペースに仕切る配膳車であって、
前記第1の方向における前記第1保温庫と前記第2保温庫を合わせた内側の寸法は、前記第1の方向における前記トレイの寸法よりも大きく、前記トレイを前記間仕切壁の可動部分に差し込む位置を前記第1の方向に変えることによって前記第1スペースと前記第2スペースの割合が変更可能であり、
前記第1保温庫及び前記第2保温庫の側壁との間に温風又は冷風が鉛直方向に流れうる空間を形成し、前記第1の方向における前記トレイの両端面のいずれかと接触可能なガイド部材を前記間仕切壁の可動部分に対向する部分に設けたことを特徴とする。
【0009】
上記構成において、前記ガイド部材は、上面視で、前記側壁と平行な部分を有する三面構造を有していることが好ましい。
【0010】
また、1組の前記第1保温庫及び前記第2保温庫は、鉛直方向における同一レベルにおいて、前記配膳車の両側面から前記第2の方向に2つの前記トレイを収納可能であることが好ましい。
前記トレイの底面には、前記間仕切壁と係合し、前記第1スペースと前記第2スペースの割合が変更可能にする溝が形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、第1の温度(例えば、75℃)で提供される食品が載置される第1スペースと第2の温度(例えば、4℃)で提供される食品が載置される第2スペースのいずれかを最大限に使用する場合であっても、トレイの端は第1保温庫又は第2保温庫の側壁に直接接触することなく、ガイド部材と接触する。そのため、第1保温庫又は第2保温庫の天井部から供給される温風又は冷風は、トレイの端面と側壁との間に形成される空間を通って上方から下方に流れる。その結果、垂直方向におけるトレイの位置に関わりなく、同じ種類の食品を同じ温度に加熱又は維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一実施形態に係る配膳車の扉を閉じた状態を示す正面図。
図2】上記配膳車の扉を開いた状態を示す正面図。
図3】(a)は上記配膳車において使用されるトレイの構造を示す平面図、(b)は正面断面図、(c)は底面図。
図4】保温庫の側壁に設けられたガイド部材と、そのガイド部材に接触しているトレイの状態を示す図。
図5】(a)〜(d)はそれぞれトレイを可動間仕切壁に差し込む際の可動間仕切壁の可動片の動きを示す側部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の一実施形態に係る平板状トレイを用いた配膳車について、図面を参照しつつ説明する。なお、この配膳車は、調理された食品(食材も含む)を一旦3℃程度に冷蔵保存しておき、冷蔵保存された食品を安全温度である75℃以上に加熱して配膳する、いわゆるクックチル方式のものを前提として説明する。しかしながら、本発明に係る配膳車は必ずしもクックチル方式のものには限定されない。また、各図面は、理解を容易にするため、特徴的部分を誇張して描いており、各構成要素の形状、大きさ、位置及び数などは、実際に本発明を実施する場合には、適宜変更されうる。
【0014】
図1は、本実施形態に係る配膳車1の保温庫の扉6を閉じた状態を示し、図2は配膳車1の保温庫の扉6を開いた状態を示す。配膳車1は、基本的に、移動装置(台車)2と、移動装置2の上に搭載された保温・再加熱装置3で構成されている。移動装置2は、自走式のものであってもよく、あるいは手押し式のものであってもよい。また、自走式移動装置の場合、地図上における自己位置を認識しながらあらかじめ設定されたルートに沿って自律移動するタイプのもの、床に埋設された誘導装置に誘導されながら移動するタイプのもの、ガイドレールに沿って移動するタイプのものであってもよい。さらに、配膳担当者によって操作されるタイプのものなどであってもよい。
【0015】
本実施形態に係る配膳車1では、図1及び図2に示すように、保温・再加熱装置3の本体30の内部は、見かけ上、2つの扉6に対応して、水平な第1の方向(配膳車1の前後方向)に2つの空間30a,30bに区分されている。各空間30a,30bは、さらに可動間仕切壁10によって、さらに2つの第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42に仕切られている。本実施形態の場合、第1保温庫31,32は、再加熱・温蔵庫及び冷蔵庫のいずれかに切り替えて使用可能であり、第2保温庫41,42は、専ら冷蔵庫として使用される。なお、必要に応じて、第2保温庫41,42も再加熱・温蔵庫及び冷蔵庫のいずれかに切り替えられるように構成されていてもよい。
【0016】
可動間仕切壁10は、トレイ4を水平な第2の方向(配膳車1の幅方向)に差し込むことができるように、部分的に垂直方向に可動であるが、第1の方向には移動できないように固定されている。さらに、1組の第1保温庫及び第2保温庫31と41又は32と42は、垂直方向における同一レベルにおいて、配膳車1の両側面から第2の方向に2つのトレイ4を収納可能である。
【0017】
ここで、「保温庫」とは、庫内温度を一定の範囲に維持しうる機能を有する食品保存庫をいい、「温蔵庫」とは、庫内温度を室温(例えば20℃)よりも高い温度(例えば75℃:第1の温度)に維持するものをいい、「冷蔵庫」とは、庫内温度を室温よりも低い温度(例えば4℃:第2の温度)に維持するものをいう。また、「再加熱庫」とは、庫内温度を120〜130℃の高温に加熱しうるものをいう。
【0018】
保温・再加熱装置3の本体30には、第1保温庫31,32に向けて温風を供給するためのヒータ、ファン、温風ダクトや、第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42に冷風を供給するための冷凍機エバポレータ、ファン、冷風ダクトなどが設けられている。なお、これらは、従来のものと同様であり、本発明の要旨とは直接関係がないので、図示を省略する。
【0019】
さらに、保温・再加熱装置3の本体30には、第1保温庫31,32を温蔵庫、再加熱庫及び冷蔵庫のいずれに切り替えるかを設定したり、第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の温度を設定したりするための、操作パネル7が設けられている。また、保温・再加熱装置3の本体30の内部には、上記ヒータ、冷凍機エバポレータ、及びファンなどを制御するための制御部8が設けられている。
【0020】
本実施形態に係る配膳車1は、再加熱され又は温蔵される食品を載せるためのスペースと冷蔵される食品を載せるためのスペースが仕切られていない平板状トレイに適するように構成されている。すなわち、図3(a)に示すように、トレイ4は、平面視で四隅が面取りされた長方形であり、食器などが載置される食品載置面4aは仕切壁で仕切られていない。食品載置面4aの周囲には、内側に傾斜した高さが一定の縁4bが形成されている。また、一例として、図3(b)及び(c)に示すように、トレイ4の底面4cには、上記長方形の短辺に平行に複数(図では3本)の溝4d,4e,4fが形成されている。なお、溝4d,4e,4fの詳細については後述する。
【0021】
保温・再加熱装置3の本体30の空間30aに対応する第1保温庫31及び第2保温庫41と、空間30bに対応する第1保温庫32と第2保温庫42が、それぞれ1組となって、再加熱・温蔵庫及び冷蔵庫として機能する。図2に示すように、第1保温庫31の左側の壁と第2保温庫41の右側の壁の間には、それぞれトレイ4を垂直方向に保持するための複数段の水平な桟(ガイドレール)11が、上記第1の方向と平行に設けられている。また、第1の方向における第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の側壁であって、可動間仕切壁10の可動部分に対向する部分には、第1の方向におけるトレイ4の両端面のいずれかと接触可能なガイド部材12がそれぞれ設けられている。
【0022】
図4は、第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の側壁45に設けられたガイド部材12と、そのガイド部材12に接触しているトレイ4の状態を示す。ガイド部材12は、例えばアルミニウム板やステンレス鋼板などの板状体を折り曲げ加工することによって形成され、配膳車1の上面視において、第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の側壁と平行な部分を有する三面構造を有している。具体的には、ガイド部材12の両端部12aは、水平方向の断面において、一端が第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の側壁45と接触し、他端が側壁45から所定距離Lだけ離れ、側壁45に対して所定の角度をなすように傾斜している。また、ガイド部材12の中央部12bは、側壁45に対して所定距離Lだけ離れ、側壁45と平行に形成されている。ガイド部材12の両端部12aは、トレイ4を第1保温庫31と第2保温庫41又は第1保温庫32と第2保温庫42に挿入する際のガイドとして機能しうる。また、ガイド部材12の内周面又はトレイ4の両端面のいずれかと第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の側壁45との間に、温風又は冷風が垂直方向に流れうるための空間Sが形成される。その結果、トレイ4の食品載置面の内、第1の温度(例えば、75℃)で提供される食品が載置される第1スペースと第2の温度(例えば、4℃)で提供される食品が載置される第2スペースのいずれかを最大限に使用する場合であっても、トレイ4の端は第1保温庫31,32又は第2保温庫41,42の側壁45に直接接触することなく、ガイド部材12と接触する。そのため、第1保温庫31,32又は第2保温庫41,42の天井部から供給される温風又は冷風は、トレイ4の端面と側壁45との間に形成される空間Sを通って上方から下方に流れ、垂直方向におけるトレイ4の位置に関わりなく、同じ種類の食品を同じ温度に加熱又は維持することができる。上記所定の距離Lとしては、例えば5〜10mm程度とする。距離Lを5mm未満とすると、ガイド部材12と側壁45の間に形成される空間Sの断面積が狭すぎて、温風又は冷風がうまく流れない可能性がある。また、距離Lを10mm超とすると、水平な第1の方向における第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の寸法が大きくなりすぎ、デッドスペースが増える。
【0023】
図5は、可動間仕切壁10の構造を示す。図5に示すように、可動間仕切壁10は、トレイ4を桟11及びガイド部材12に対して水平に載置する際に、トレイ4の縁4bが当接することによって可動片13,14が変位する。図5において、(a)はトレイ4を載置していない状態、(b)及び(c)はトレイ4を可動間仕切壁10に差し込んでいる途中の状態、(d)はトレイ4を可動間仕切壁10に完全に差し込んだ状態を示す。可動間仕切壁10の内部には、その内部に、第1可動片13が垂直方向に変位するための空間10aが形成されている。第1可動片13の下端は、トレイ4の短辺方向の断面における食品載置面4aと縁4bの内側の形状とほぼ同じ形状に形成されている。そのため、図5(d)に示すようにトレイ4が可動間仕切壁10に完全に差し込まれた状態で、トレイ4の食品載置面4aと縁4bの内側に密着する。また、第1可動片13の上部には、例えば樹脂や金属片によって形成された板ばね又は線ばねなどの弾性体13aが設けられており、弾性体13aによって、常時下向きに付勢されている。図5(c)に示すように、トレイ4を可動間仕切壁10に差し込む際には、弾性体13aが変形することによって、第1可動片13が上方に変異する。
【0024】
可動間仕切壁10にトレイ4を差し込むための開口側、すなわち、図2における正面側の桟11の前端には、軸10bの周りに回転する第2可動片14が設けられている。第2可動片14は、常時開口を塞ぐ方向に回転するように付勢されている。また、第2可動片14の前端側には、図5(b)に示すように、トレイ4の縁4bが当接されることによって開口を開く方向に回転されるように、カム面が形成されている。さらに、第2可動片14の後端側は、トレイ4の縁4bの外側の形状とほぼ同じ形状に形成されており、図5(d)に示すようにトレイ4が可動間仕切壁10に完全に差し込まれた状態で、トレイ4の縁4bの外側に密着する。すなわち、図5(d)に示すようにトレイ4が可動間仕切壁10に完全に差し込まれた状態では、第1保温庫31,32と第2保温庫41,42は、トレイ4と可動間仕切壁10によってほぼ完全に仕切られる。その結果、第1保温庫31,32の庫内温度を120〜130℃に加熱したとしても、そのときの熱は可動間仕切壁10によって遮断され、第2保温庫41,42にはほとんど伝わらない。なお、図5(a)に示すように、トレイ4を可動間仕切壁10に差し込んでいない状態では、トレイ4の厚さに起因して若干の隙間が生じるが、この段階では第1保温庫31,32の庫内温度を加熱することはなく、特に問題は生じない。
【0025】
ところで、図3(b)及び(c)に示すように、本実施形態では、トレイ4の底面4cに3本の溝4d,4e,4fを設けている。溝4eは、トレイ4の長辺の中央に形成されている。図6(a)は、この溝4eを上記桟11の突起に係合させた場合を示しており、トレイ4の食品載置面4aは、可動間仕切壁10によって5:5に仕切られる。一方、図6(b)は左側の溝4dを上記桟11の突起に係合させた場合を示している。トレイ4の長辺の左から45%の位置に形成されており、この溝4dを上記桟11の突起に係合させると、トレイ4の食品載置面4aは、可動間仕切壁10によって45:55に仕切られる。さらに、図8(c)は左側の溝4fを上記桟11の突起に係合させた場合を示している。トレイ4の長辺の左から60%の位置に形成されており、この溝4fを上記桟11の突起に係合させると、トレイ4の食品載置面4aは、可動間仕切壁10によって60:40に仕切られる。
【0026】
図2に示すように、上記台の方向における第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の寸法は、同方向におけるトレイ4の長さの1/2よりも長く、且つ、それぞれが同じ長さを有している。そのため、トレイ4の差込方向を逆にすれば、トレイ4の食品載置面4aを40:60、45:55、50:50、55:45及び60:40の5通りに仕切ることができる。この場合、第1保温庫31,32及び第2保温庫41,42の幅は、トレイ4の長辺方向の寸法の60%以上あればよい。
【0027】
また、トレイ4の溝の数及びその位置は、これらの場合に限定されず、様々な組み合わせが可能である。例えば、トレイ4の長辺方向の中央からずれた位置に、溝が1箇所だけしか形成されていない場合であっても、トレイ4の差込方向を逆にすれば、トレイ4の食品載置面4aを2通りに仕切ることができる。あるいは、トレイ4の長辺方向の中央から異なる距離だけずれた位置に、溝が2箇所形成されている場合、トレイ4の食品載置面4aを4通りに仕切ることができる。さらに、トレイ4の長辺方向の中央から異なる距離だけずれた位置に、溝を3箇所以上形成してもよい。なお、トレイ4の底面4cに溝を形成せず、食品載置面4aを任意の割合に仕切られるようにしてもよい。
【0028】
このように、本実施形態に係る配膳車1によれば、トレイ4の食品載置面4aは平坦であり、トレイ4を可動間仕切壁10に差し込むことによって、再加熱され又は温蔵される食品を載せるための第1スペースと冷蔵される食品を載せる第2スペースが仕切られる。トレイ4の底面4cには複数の溝4d〜4fが形成されており、溝4d〜4fのいずれかと可動間仕切壁10の桟11に設けられた突起の組み合わせを選択することによって、可動間仕切壁10に対するトレイ4の相対的な位置を変化させることができる。その結果、従来例のように可動間仕切壁又は平板状トレイの縁を支えるフレームの水平方向の位置を調節することなく、再加熱され又は温蔵される食品を載せるための第1スペースと冷蔵される食品を載せる第2スペースの割合を容易に変更することができる。また、トレイ4の端面を第1保温庫31,32又は第2保温庫41,42の側壁45に可能な限り寄せて、第1の温度で提供される食品が載置される第1スペースと第2の温度で提供される食品が載置される第2スペースのいずれかを最大限に使用する場合であっても、第1保温庫31,32又は第2保温庫41,42の天井部から供給される温風又は冷風は、ガイド部材12によって形成された空間Sを通って、垂直方向に上方から下方に流れる。そのため、垂直方向におけるトレイ4の位置に関わりなく、同じ種類の食品を同じ温度に加熱又は維持することができる。
【0029】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。上記ガイド部材12は、上記のような側壁45に対して傾斜した部分である両端部12aと平行な部分である中央部12bを有する三面構造である必要はなく、トレイ4の端面が第1保温庫31,32又は第2保温庫41,42の側壁45に直接接触しないようにするものであればよい。また、水平な第2の方向に挿入される2つのトレイ4に対してそれぞれ個別に当接するようなものであってもよい。さらに、アルミニウム板やステンレス鋼板などの板状体である必要はなく、耐熱性樹脂による成型品であってもよい。さらに、第1保温庫31,32は、必ずしも再加熱する必要はなく、調理された食品をそのまま温蔵するだけでもよい。
【符号の説明】
【0030】
1 配膳車
3 保温・再加熱装置
4 トレイ
10 可動間仕切壁
11 桟
12 ガイド部材
12a 側壁に対して傾斜している部分(両端部)
12b 側壁に平行な部分(中央部)
31,32 第1保温庫
41,42 第2保温庫
図1
図2
図3
図4
図5