【実施例】
【0042】
以下、本発明を実施例によりさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に限定されるものではない。
【0043】
図2、3は、サンプルS01〜S09、およびS11〜S19という18種類の酸素透過膜を作製し、安定性および耐還元性を調べた結果を表にして示す説明図である。以下に、各サンプルの構成および製造方法と、性能を評価した結果について説明する。
【0044】
A.各サンプルの作製:
[サンプルS01、S11]
サンプルS01、S11は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS01、S11は、電子伝導体として、Sr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zを含有する。サンプルS01とサンプルS11とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0045】
YSZは、東ソー株式会社製のTZ−8Y粉末を用いた。Sr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zは、以下のように作製した。原料粉末としては、炭酸ストロンチウム(SrCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)、酸化ランタン(La
2O
3、和光純薬工業製、純度99.9%)、酸化チタン(TiO
2、昭和電工製、純度99.9%)、および酸化ニオブ(Nb2O5、和光純薬工業製、純度99.9%)の粉末を用いた。これら原料粉末を、金属元素の割合が、既述した組成式の組成比になるように秤量した。そして、ZrO
2ボールと樹脂ポットを用いて、エタノールと共に、これらの原料粉末について湿式混合粉砕を15時間行なった。その後、湯煎乾燥してエタノールを除去し、得られた混合粉末を15℃/minの昇温速度で1500℃まで昇温させ、1500℃にて24時間仮焼成して、仮焼粉末であるSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zの粉末を得た。
【0046】
さらに、この仮焼粉末に分散剤とバインダを加え、エタノールを用いて既述した条件と同様の条件で湿式混合粉砕を行ない、乾燥させて、仮焼粉末を含む粉末を得た。その後、YSZとSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zとの混合物におけるSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zの混合割合が50mol%となるように、上記仮焼粉末を含む粉末をYSZに混合し、YSZとSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zの混合粉末を得た。この混合粉末に対して、油圧プレスにて15kNの力を加えて成形し、1500℃(サンプルS01)あるいは1300℃(サンプルS11)にて24時間焼成し、サンプルS01あるいはS11として、YSZとSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zの混合体のペレットを得た。なお、上記した混合粉末を得る際には、仮焼粉末において100%の効率でSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zが形成されているものとして、仮焼粉末を含む粉末の混合量を設定した。
【0047】
[サンプルS02、S12]
サンプルS02、S12は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS02、S12は、電子伝導体として、Sr
0.8La
0.2Ti
0.8Nb
0.2O
3-zを含有する。サンプルS02とサンプルS12とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0048】
サンプルS02、S12の製造は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるSr
0.8La
0.2Ti
0.8Nb
0.2O
3-zを作製するために原料粉末を秤量する際には、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS02は1500℃であり、サンプルS12は1300℃とした。
【0049】
[サンプルS03、S13]
サンプルS03、S13は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS03、S13は、電子伝導体として、Sr
0.7La
0.3Ti
0.9Nb
0.1O
3-zを含有する。サンプルS03とサンプルS13とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0050】
サンプルS03、S13の製造は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるSr
0.7La
0.3Ti
0.9Nb
0.1O
3-zを作製するために原料粉末を秤量する際には、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS03は1500℃であり、サンプルS13は1300℃とした。
【0051】
[サンプルS04、S14]
サンプルS04、S14は、酸素イオン伝導体として、スカンジア安定化ジルコニア(ScSZ)を含有する。また、サンプルS04、S14は、電子伝導体としてSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zを含有する。サンプルS04とサンプルS14とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0052】
サンプルS04、S14の製造は、酸素イオン伝導体としてScSZを用いたこと以外は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。サンプルS04、S14では、ScSZとして、スカンジウム(Sc)およびセリウム(Ce)を含有するスカンジア安定化ジルコニア(第一希元素化学工業製、10Sc1CeSZ)を用いた。なお、焼成温度は、サンプルS04は1500℃であり、サンプルS14は1300℃とした。
【0053】
[サンプルS05、S15]
サンプルS05、S15は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS05、S15は、電子伝導体として、Sr
0.6La
0.4Ti
0.6Nb
0.4O
3-zを含有する。サンプルS05とサンプルS15とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0054】
サンプルS05、S15の製造は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるSr
0.6La
0.4Ti
0.6Nb
0.4O
3-zを作製するために原料粉末を秤量する際には、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS05は1500℃であり、サンプルS15は1300℃とした。
【0055】
[サンプルS06、S16]
サンプルS06、S16は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS06、S16は、電子伝導体としてLa
0.6Sr
0.4CoO
3-zを含有する。サンプルS06とサンプルS16とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0056】
サンプルS06、S16の製造は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるLa
0.6Sr
0.4CoO
3-zを作製するための原料粉末としては、酸化ランタン(La
2O
3、和光純薬工業製、純度99.9%)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)、および酸化コバルト(Co
3O
4、高純度化学研究所製、純度99.9%)の粉末を用いた。これらの原料粉末を、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS06は1500℃であり、サンプルS16は1300℃とした。
【0057】
[サンプルS07、S17]
サンプルS07、S17は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS07、S17は、電子伝導体としてLa
0.6Sr
0.4MnO
3-zを含有する。サンプルS07とサンプルS17とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0058】
サンプルS07、S17の製造は、サンプルS01、S11と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるLa
0.6Sr
0.4MnO
3-zを作製するための原料粉末としては、酸化ランタン(La
2O
3、和光純薬工業製、純度99.9%)、炭酸ストロンチウム(SrCO
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)、および酸化マンガン(Mn
2O
3、高純度化学研究所製、純度99.9%)の粉末を用いた。これらの原料粉末を、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS07は1500℃であり、サンプルS17は1300℃とした。
【0059】
[サンプルS08、S18]
サンプルS08、S18は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS08、S18は、電子伝導体としてLa
0.8Sr
0.2CoO
3-zを含有する。サンプルS08とサンプルS18とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0060】
サンプルS08、S18の製造は、サンプルS06、S16と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるLa
0.8Sr
0.2CoO
3-zを作製するために原料粉末を秤量する際には、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS08は1500℃であり、サンプルS18は1300℃とした。
【0061】
[サンプルS09、S19]
サンプルS09、S19は、酸素イオン伝導体として、イットリア安定化ジルコニア(YSZ)を含有する。また、サンプルS09、S19は、電子伝導体としてLa
0.8Sr
0.2MnO
3-zを含有する。サンプルS09とサンプルS19とは、後述する焼成温度のみが異なっている。
【0062】
サンプルS09、S19の製造は、サンプルS07、S17と同様にして行なった。ただし、電子伝導体であるLa
0.8Sr
0.2MnO
3-zを作製するための原料粉末を秤量する際には、金属元素の割合が、目的の電子伝導体の組成式の組成比になるように秤量した。なお、焼成温度は、サンプルS09は1500℃であり、サンプルS19は1300℃とした。
【0063】
B.酸素イオン伝導体と電子伝導体の反応性について:
各サンプルを用いて、酸素透過膜を構成する酸素イオン伝導体と電子伝導体の反応性を評価した。すなわち、酸素イオン伝導体と電子伝導体とが反応することに起因する、酸素イオン伝導体および電子伝導体とは異なる異種相の生成の有無を評価した。反応性の評価は、粉末X線回折法(CuKα)により行なった。
【0064】
図4は、サンプルS01のX線回折パターンである。各サンプルにおいて、酸素イオン伝導体と電子伝導体とが反応すると、X線回折パターンにおいて、酸素イオン伝導体と電子伝導体に対応するピークに加えて、反応により生じた物質に対応するピークが生じる。そこで、X線回折パターンに基づいて、酸素イオン伝導体と電子伝導体との反応により生じた物質のX線回折ピークの積分強度比を求めた。上記反応により生じた物質のX線回折ピークの積分強度比(以下、単に積分強度比とも呼ぶ)は、以下の(3)式で与えられる。
【0065】
積分強度比=c1/(a1+b1+c1) …(3)
【0066】
ここで、a1は、酸素イオン伝導体に由来するX線回折ピークの積分強度であり、b1は、電子伝導体に由来するX線回折ピークの積分強度であり、c1は、上記反応により生じた物質に由来するX線回折ピークの積分強度である。このような積分強度比が2%以下であるときに、酸素透過膜の製造のための焼成工程において、酸素イオン伝導体と電子伝導体とは異なる異種相が、実質的に生成していないと評価した。なお、各々の化合物に由来するX線回折ピークは、各化合物の結晶面毎に現われるが、各化合物のX線回折ピークの積分強度は、各々の化合物に由来のピークの内の最も強いピーク(ただし、最も強いピークが他のピークと重なる場合には2番目に強いピーク)について求めた。
【0067】
具体的には、サンプルS01のように、酸素イオン伝導体としてYSZを用い、電子伝導体としてSr
1-xLa
xTi
1-yNb
yO
3-Zを用いる場合には、異種相としてSrZrO
3が生じ得る。そこで、上記(3)式のa1は、YSZ相の(101)面のピークの積分強度であり、b1は、La
0.8Sr
0.2CrO
3-z相の(110)面のピークの積分強度であり、c1は、SrZrO
3相の(110)面のピークの積分強度である。
【0068】
サンプルS01について導出された積分強度比は2%以下であり、サンプルS01の製造のための焼成を行なっても、実質的に異種相が生成しないことが確認された(
図4参照)。
【0069】
図5は、サンプルS16のX線回折パターンである。
図5に示すように、酸素イオン伝導体としてYSZを用い、電子伝導体としてLa
1-xSr
xCoO
3-zを用いる場合には、異種相として、SrZrO
3、La
2Zr
2O
7、あるいはCo
3O
4等が生じ得る。そこで、上記(3)式の積分強度比を導出すると、積分強度比は2%を超えており、異種相が形成していることが確認された(
図5参照)。より具体的には、サンプルS16のX線回折パターンでは、電子伝導体であるLa
0.6Sr
0.4CoO
3-zのピークはほとんど観察されなかった。すなわち、作製のための焼成工程において、電子伝導体のほとんどが酸素イオン伝導性と反応して異種相を形成していた。なお、サンプルS16と同じ組成であって、サンプルS16の製造時の焼成温度よりも低い1100℃にて焼成したサンプルを作製したところ、酸素イオン伝導体と電子伝導体とLa
2Zr
2O
7等の異種相が共存する状態であることが確認された(データ示さず)。
【0070】
図6は、サンプルS17のX線回折パターンである。
図6に示すように、酸素イオン伝導体としてYSZを用い、電子伝導体としてLa
1-xSr
xMnO
3-zを用いる場合には、異種相としてSrZrO
3が生じ得る。そこで、YSZ相の(101)面のピークの積分強度をa1、La
0.6Sr
0.4MnO
3-z相の(104)面のピークの積分強度をb1、SrZrO
3相の(110)面のピークの積分強度をc1として、サンプルS17の積分強度比を既述した(3)式により求めた。その結果、サンプルS17の積分強度比は2%を超えており、異種相が生成していることが確認された(
図6参照)。
【0071】
他のサンプルについても同様に、X線回折パターンに基づいて積分強度比を求め、積分強度比が2%以下であれば、製造工程における焼成時に異種相が生成していないと判断した。各サンプルについての異種相生成に係る評価結果を、
図2および
図3に示している。
【0072】
異種相は、一般的に、製造時の焼成温度が高いほど生成し易いが、電子伝導体としてSr
1-xLa
xTi
1-yNb
yO
3-Z(ただしx、yは、それぞれ、0.1〜0.3)を用いる場合には、製造時の焼成温度が比較的高温の1500℃であっても、異種相は生成しなかった(
図2のサンプルS01〜S04および
図3のサンプルS11〜S14を参照)。これに対して、電子伝導体としてSr
1-xLa
xTi
1-yNb
yO
3-Z(ただしx、yは、それぞれ0.4)を用いる場合、La
1-xSr
xCoO
3-zを用いる場合、あるいはLa
1-xSr
xMnO
3-zを用いる場合には、製造時の焼成温度が比較的低温の1300℃であっても、異種相が生成した(
図2のサンプルS05〜S09および
図3のサンプルS15〜S19を参照)。
【0073】
図7は、サンプルS01等と同様に、酸素イオン伝導体としてYSZを用い、電子伝導体としてSr
1-xLa
xTi
1-yNb
yO
3-Zを用いたサンプルであって、xおよびyの値(LaおよびNbの置換量)を変更した複数のサンプルを作製し、積分強度比を求めた結果を示す説明図である。ここでは、xおよびyの値を、0.10〜0.40の範囲で変更したサンプルを用いた。
図7では、横軸がLa置換量xを表わすと共に縦軸がNb置換量yを表わしており、各サンプルのxおよびyの値の交点に、各サンプルの積分強度比の結果を示している。各サンプルの積分強度比の結果は、積分強度比が2%以下である場合には「○」を付し、積分強度比が2%を超える場合には「×」を付すことにより示している。
図7におけるxおよびyが0.10のサンプルは、
図2のサンプルS01に相当し、xおよびyが0.20のサンプルは、
図2のサンプルS02に相当し、xが0.30かつyが0.10のサンプルは
図2のサンプルS03に相当し、xおよびyが0.40のサンプルは、
図2のサンプルS05に相当する。
図7に示すように、電子伝導体としてSr
1-xLa
xTi
1-yNb
yO
3-Zを用いる場合には、xおよびyの値を0.30以下にすることで、異種相が実質的に生成していない酸素透過膜が得られることが確認できた。
【0074】
C.酸素透過膜の耐還元性について:
サンプルS01〜S09、S11〜S19について、耐還元性の評価を行なった。耐還元性の評価は、各サンプルを還元雰囲気下で熱処理することによって行なった。具体的には、各サンプルとして作製したペレットを、水素濃度10%、窒素濃度90%の雰囲気下において、5℃/minの速度で1000℃まで昇温させ、1000℃にて24時間加熱処理して、その後、既述したX線回折法による測定を行ない、異種相のピークの積分強度比を求めた。還元雰囲気下での加熱処理では、金属用雰囲気制御焼成炉(ネムス株式会社製、FD−20×20×30−1Z2−20)を用いた。異種相に由来するX線回折ピークの積分強度の割合が2%以下であり、実質的に異種相が生成していない場合には、酸素イオン伝導体と電子伝導体とが反応しておらず、耐還元性に優れていると判断した。
【0075】
各サンプルについて耐還元性を評価した結果を、
図2および3にまとめて示す。サンプルS01〜S04およびS11〜S14では、酸素イオン伝導体と電子伝導体とが反応せず、耐還元性に優れると判断された。これに対して、サンプルS05〜S09およびS15〜S19では、還元雰囲気下での加熱処理によって異種相が生成され、分解が進行した。なお、
図2および
図3では、焼成によって異種相が生成せず、かつ、耐還元性の試験で酸素イオン伝導体と電子伝導体とが反応しない場合には、「○」と判定し、それ以外の場合には「×」と判定している。
【0076】
図8および
図9は、還元雰囲気下で熱処理した前後のX線回折パターンの例を示す説明図である。
図8は、サンプルS01についてのX線回折パターンを示し、
図9は、サンプルS16についてのX線回折パターンを示す。
図8に示すように、サンプルS01は、還元雰囲気下での熱処理の前と後とでX線回折パターンはほとんど変化しなかった。これに対してサンプルS16は、還元雰囲気下での熱処理の前と後とでX線回折パターンは大きく変化した。既述したように、サンプルS16では、製造時における1300℃の焼成工程によって電子伝導体のほとんどが酸素イオン伝導体と反応して異種相を形成するが、このようなサンプルS16を還元雰囲気下で1000℃で熱処理すると、Co等の異種相が生じ、さらに分解が進むことが確認された。なお、サンプルS17を還元雰囲気下で加熱処理したところ、ペレットが割れてしまった。これは、還元雰囲気下での加熱処理により異種相が生成して、サンプルが還元膨張することにより割れたものと考えられる。
【0077】
D.相対密度と酸素透過流速密度について:
酸素透過膜において、相対密度と酸素透過特性との関係、具体的には、相対密度と酸素透過流速密度(酸素透過速度)との関係を調べるために
、サンプルを作製した
。ここでは、サンプルS04およびS14と同様に、酸素イオン伝導体としてのScSZと、電子伝導体としてのSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zとを混合して成る酸素透過膜であって、互いに相対密度が異なる酸素透過膜であるサンプ
ルを用いた。これらのサンプ
ルの酸素透過膜は、サンプルS04およびS14と同様にして製造した。ただし、ScSZとSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zとの混合物中におけるSr
0.9La
0.1Ti
0.9Nb
0.1O
3-zの混合割合は、20mol%とした。そして、酸素透過膜の製造時の焼成温度を1100℃〜1500℃の間で異ならせることによって、得られる酸素透過膜の相対密度を異ならせた。焼成により得られた各酸素透過膜をさらに湿式研磨して、各サンプルの厚みを0.6mmに調整した。
【0078】
図
10は、各酸素透過膜の酸素透過特性を測定するために用いた測定装置30の概略構成を表わす説明図である。測定装置30は、2本の透明石英管31,32と、アルミナチューブ33,34と、電気炉35と、熱電対36と、を備える。2本の透明石英管31,32は、上下に配置され、その間に各サンプルを挟んで測定を行なう。透明石英管31とサンプルとを接合する際には、サンプル上に内径10mmの金の薄膜リングを載置し、その上に透明石英管31を押し付けて、1050℃に昇温して金を軟化させ、ガスシール性を確保した。透明石英管31,32の内側には、アルミナチューブ33,34を配置した。酸素透過特性の測定の際には、アルミナチューブ33には5%水素含有ガス(バランスガスはアルゴン)を流し、アルミナチューブ34には空気を流した。透明石英管31,32は、電気炉35内に配置されており、透明石英管31,32に挟まれたサンプルは、電気炉35内の均熱部分に配置した。また、アルミナチューブ34内には、サンプル温度を測定するために、サンプルの近傍に達するように熱電対36を配置した。酸素透過特性の測定の際には、サンプル温度が1000℃に維持されるように電気炉35による加熱を行なった。
【0079】
上記した測定装置30において、空気側(透明石英管32側)から5%水素含有ガス側(透明石英管31側)へと、サンプル内を酸素が透過すると、酸素含有ガス側では水(水蒸気)が生じる。測定装置30から排出される水素含有ガス中の水蒸気は、全て、透過した酸素由来であると考えられるため、排出された水素含有ガス中の水蒸気濃度を鏡面露点計(東洋テクニカ製)または質量分析計(日本ベル製)を用いて測定し、透過した酸素量を算出した。このようにして算出した透過酸素量と、サンプルの透過面積とに基づいて、酸素透過流速密度j(0
2)を算出した。このとき、アルミナチューブ33を介して供給する5%水素含有ガス量と、アルミナチューブ34を介して供給する空気量は、マスフロコントローラを用いて、300mL/minとした。
【0080】
図
11は、
上記した相対密度が異なる各サンプルについて、酸素透過流速密度を測定した結果を示す説明図である。図
11に示すように、相対密度が80%以上である酸素透過膜は、相対密度が80%よりも小さい酸素透過膜に比べて、酸素透過特性が大きく向上することが確認された。
【0081】
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。