(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記荷電装置と、該荷電装置により帯電された粒子を捕集するための集塵装置と、含塵空気を吸引するためのファンと、が含塵空気の流通方向上流側から順に直列に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1の請求項に記載の電気集塵機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記した特許文献1又は2に開示された電気集塵機では、含塵空気中の微粉塵やミストを吸引するに従って次第に接地極板に微粉塵やミストが付着堆積し、それらの堆積量が一定量に達して接地電極と放電用針電極との間の距離が狭まると、異常放電が発生して運転停止に至ったり、或いは、温度が上昇して最悪火災に発生する危険性が生じたり、或いは、接地極板の堆積物が再飛散したりする問題がある。
【0006】
また、接地極板が複数枚設けられているため、接地極板に付着堆積した微粉塵やミストを清掃除去するのに手間が掛かり、使い勝手の向上を図り難いといった問題もある。
【0007】
さらに、接地極板は含塵空気の流通方向に沿うように平行に設けられているため、荷電装置の長手方向(含塵空気の流通方向)の長さを短縮することが難しい。加えて、集塵装置は、荷電装置で帯電された微粉塵やミストを吸着(捕集)する仕組みであるため、長手方向において所定の長さが必要となり、集塵装置の長手方向の長さを短縮することが難しい。したがって、上記した特許文献1又は2の電気集塵機では、製品の小型化を図り難いといった問題がある。なお、これは、回転電極板を使用したタイプの集塵装置であっても同様のことが言える。
【0008】
さらに、上記した特許文献1の電気集塵機では、帯電領域を広げるため、含塵空気の流通方向に対して放電用針電極を斜めに傾斜させて配列する構成も提案されているが、このような構成を採用した場合でも、含塵空気に対して放電用針電極と接地極板とを平行に配置する構造上、どうしても放電が弱いエリアが存在してしまい、含塵空気中のすべての微粉塵やミストを帯電することができないため、荷電効率の上昇を図ることが難しく、結果的に捕集効率の低下に繋がるという問題がある。
【0009】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、接地極板に付着堆積する微粉塵やミストの量をできる限り減少させて汚れ難くすることで異常放電の発生を抑制することができ、接地極板の枚数を減らすことでコストの低減化、メンテナンス性の向上、及び製品の小型化を図ることができ、含塵空気中の微粉塵やミストを確実に荷電することのできる荷電効率に優れた電気集塵機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した課題を解決するため、本発明の第1の電気集塵機は、高電圧の印加によって発生するコロナ放電により含塵空気中の微粉塵やミスト等の粒子を帯電させる荷電装置を備えた電気集塵機において、含塵空気の流通を遮る向き配置され、含塵空気を通過させる開口部が多数形成された接地電極板と、該接地電極板の各開口部に対応して配置される放電極を支持する支持基板と、前記開口部は、前記放電極の先端部と同数設けられ、前記支持基板は、前記放電極の先端部と前記開口部の周縁部とが所定間隔を維持するように前記放電極の基端部を支持することを特徴とする。
【0011】
本発明の第1の電気集塵機によれば、前記放電極の先端部と前記開口部の周縁部とが所定距離を維持するように前記放電極が接地電極板の各開口部に対応して配置されているため、前記開口部を通過する含塵空気は必ず帯電エリアを通過し、前記放電極が異常放電することなく、含塵空気中の微粉塵やミスト等の粒子を荷電することができ、荷電効率を高めることができる。また、前記接地電極板は、荷電装置のアース板の機能を果たすと共に、前記開口部により含塵空気の風量(風速)を均一且つ安定的に流通させる整流機能を果たすため、別途整流板を設ける必要がなく、コストの低減化を図ることができる。さらに、前記接地電極板が含塵空気の流通を遮る向きに配置されているため、荷電装置の長手方向(含塵空気の流通方向)の長さを短縮することができる。
【0012】
本発明の第2の電気集塵機では、前記接地電極板が、前記放電極より含塵空気の流通方向上流側に配置されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第2の電気集塵機によれば、含塵空気中の微粉塵やミストは、前記接地電極板の開口部を通過した後、前記放電極からのコロナ放電によって帯電されるため、微粉塵やミストが前記接地電極板に付着し難く、該接地電極板が汚れ難くなる。したがって、接地電極板のメンテナンスサイクルを延ばすことができ、使い勝手を向上させることができる。また、前記接地電極板に付着堆積した微粉塵やミストによる火災リスクを低減することができると共に、前記接地電極板で整流された後に微粉塵やミストを荷電することで、微粉塵やミストの荷電のバラツキを抑制し、均一に荷電することができる。
【0014】
本発明の第3の電気集塵機では、前記開口部が、一定間隔で配列されていることを特徴とする。
【0015】
本発明の第3の電気集塵機によれば、含塵空気が一定間隔に配列されている開口部を通過することで、含塵空気の風量(風速)の均一化及び安定化を図ることができ、前記接地電極板の整流機能をより高めることができる。
【0016】
本発明の第4の電気集塵機では、前記接地電極板は、平板状に形成されていると共に、含塵空気の流通方向に対して直交する向きに配置されていることを特徴とする。
【0017】
本発明の第4の電気集塵機によれば、荷電装置の長手方向(含塵空気の流通方向)の寸法を短縮化することができて、荷電装置の小型化を図ることができる。
【0018】
本発明の第5の電気集塵機では、前記放電極の先端部が、含塵空気の流通方向から見て、前記開口部の中心線上に位置していることを特徴とする。
【0019】
本発明の第5の電気集塵機によれば、前記開口部を通過する含塵空気に対して、均一に荷電することができ、さらに荷電効率を高めることができる。また、各開口部においてコロナ放電による帯電エリアのバランスも均一にすることができ、異常放電の発生を防止することができる。
【0020】
本発明の第6の電気集塵機では、前記支持基板が、含塵空気の流通方向から見て、前記開口部に干渉しないように、隣接する前記開口部の間に配置されていることを特徴とする。
【0021】
本発明の第6の電気集塵機によれば、前記開口部により整流された含塵空気が支持基板によって遮られることがないため、流通性を損なうことがなく、前記接地電極板を通過する際の抵抗を抑制することができる。また、前記支持基板に、帯電した微粉塵やミストが付着し難いため、清掃等のメンテナンスサイクルを延ばすことができ、使い勝手の向上を図ることができる。
【0022】
本発明の第7の電気集塵機では、前記放電極が、該放電極の先端部が前記支持基板の両側に隣接する前記開口部に対応して互い違いに屈曲形成されていることを特徴とする。
【0023】
本発明の第7の電気集塵機によれば、1つの支持基板で、該支持基板の両側に隣接する開口部に対して、前記放電極によりコロナ放電を発生させることができるため、支持基板の設置数を削減することができ、コストの低減化を図ることができる。
【0024】
本発明の第8の電気集塵機では、前記開口部が丸孔形状を成していることを特徴とする。
【0025】
本発明の第8の電気集塵機によれば、前記放電極と前記開口部との間で、円錐状の安定的で均一な帯電エリアを形成することができ、帯電効率のさらなる向上を図ることができる。
【0026】
本発明の第9の電気集塵機では、前記開口部が千鳥状に一定間隔で配置されていることを特徴とする。
【0027】
本発明の第9の電気集塵機によれば、前記開口部を千鳥状に一定間隔で配置することにより、前記接地電極板の強度を保ちつつ、該接地電極板に必要な開口面積を確保することができると共に、近接する放電極間を所定の距離、離間させることができ、放電極同士が干渉することによる悪影響を防止することができる。
【0028】
本発明の第10の電気集塵機では、前記放電極が、64チタン製の細線状又は針状の部材により形成されていることを特徴とする。
【0029】
本発明の第10の電気集塵機によれば、オゾン発生量を減少させ、放電を安定化させることができると共に、前記放電極の磨耗量が少なくなり、加工性の向上を図ることができる。また、64チタンは、靭性に優れているため、前記放電極が破断し難くなり、耐久性を高めることができる。
【0030】
本発明の第11の電気集塵機では、前記荷電装置と、該荷電装置により帯電された粒子を捕集するための集塵装置と、含塵空気を吸引するためのファンと、が含塵空気の流通方向上流側から順に直列に配置されていることを特徴とする。
【0031】
本発明の第11の電気集塵機によれば、荷電装置と集塵装置とファンとを直列に配置することで、装置の高さ寸法を低く抑えることができる。また、長手方向の寸法を短縮化した荷電装置を搭載することで、電気集塵機自体の長手方向の寸法も小さくすることができ、製品の小型化を図ることができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、含塵空気中の微粉塵やミストを確実に荷電することができ、荷電効率を高めることができる。また、接地電極板に付着堆積する微粉塵やミストの量をできる限り減少させて汚れ難くすることで異常放電の発生を抑制することができると共に、接地電極板の枚数を減らすことでコストの低減化及びメンテナンス性の向上を図ることができる等、種々の優れた効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置を示す正面図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置を示す平面図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置を示す側面図である。
【
図6】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置を部分的に拡大して示す斜視図である。
【
図7】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置の作用を示す平面図である。
【
図8】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置の作用を示す正面図である。
【
図9】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置の作用を示す斜視図である。
【
図10】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置の変形例を示す平面図である。
【
図11】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置の変形例を示す正面図である。
【
図12】本発明の実施の形態に係る電気集塵機の変形例を示す側面図である。
【
図13】従来の電気集塵機の荷電装置の作用を示す平面図である。
【
図14】従来の電気集塵機の荷電装置の作用を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電気集塵機について説明する。
【0035】
先ず、
図1を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電気集塵機の全体構成及びその作用について概略説明する。ここで、
図1は本発明の実施の形態に係る電気集塵機の全体構成を示す斜視図である。
【0036】
本発明の実施の形態に係る電気集塵機は、直方体形状の本体ケース1を備えており、本体ケース1の正面側には吸込口2が開口され、この吸込口2に吸気ダクト3が接続されている。また、本体ケース1の上面の背面側には排気口4が開口されており、本体ケース1の右側面には開閉扉5が開閉可能に取り付けられている。なお、
図1では、電気集塵機の内部の状態が視認できるように、便宜上、吸気ダクト3及び開閉扉5を二点鎖線で示している。
【0037】
本体ケース1の内部には、プレフィルター(図示省略)と、荷電装置6と、集塵装置7と、ファン(図示省略)と、が含塵空気(図ではAirと記す)の流通方向に沿って順に直列に配置されており、本体ケース1の背面側には前記ファンを回転させるための駆動源としてモータ8が取り付けられている。
【0038】
なお、荷電装置6の詳細については後述する。
【0039】
集塵装置7としては、外枠10内に等間隔で並設されて中心軸11を介して回転可能な複数枚の回転電極板(図示省略)と、該各回転電極板の間にそれぞれ介装される複数枚の固定電極板(図示省略)と、を備える回転電極式のものが使用される。なお、集塵装置7は、この回転電極式に限定されるものではなく、例えば、特開2007−222717号公報に開示されている回転電極板を使用しないタイプの集塵装置等、他のタイプのものであっても構わない。
【0040】
上記した構成を備えた電気集塵機において、マシニングセンタなどの加工機から発生する含塵空気は、モータ8の駆動により回転する前記ファンの吸引により吸気ダクト3を通って吸込口2から本体ケース1内に吸引される。そして、本体ケース1内に流入した含塵空気は、前記プレフィルターで濾過された後、荷電装置6においてコロナ放電を受け、含塵空気中の微粉塵又はミスト等の粒子が帯電される。その後、帯電された微粉塵又はミスト等の粒子が集塵装置7において捕集されることにより、含塵空気は濾過されて清浄空気となり、排気口4から電気集塵機外へ排出される。
【0041】
次に、
図2〜
図6を参照しつつ、本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置6について詳細に説明する。ここで、
図2は荷電装置6を示す斜視図、
図3は荷電装置6を示す正面図、
図4は荷電装置6を示す平面図、
図5は荷電装置6を示す側面図、
図6は荷電装置6を部分的に拡大して示す斜視図である。
【0042】
荷電装置6は、荷電装置本体12と、この荷電装置本体12に対して高電圧を印加する高電圧電源部13と、を備えている。高電圧電源部13は、交流の元電源14を高圧トランス15で昇圧した後、倍圧部16で交流電流を直流に変換すると共にさらに昇圧して約10KVの高電圧を生成するように構成されており、荷電装置本体12に印加する高電圧の出力を制御するための出力制御部としても機能する。
【0043】
荷電装置本体12は、含塵空気の流通方向から見て略四角形状の枠体20と、枠体20の内部に取り付けられてアース接続される接地電極板40と、接地電極板40より含塵空気の流通方向下流側に配置される支持基板60と、支持基板60に片持ち支持される放電極としての放電用針電極80と、を備えている。
【0044】
枠体20は、互いに対向するように立設される左右の支柱21,22と、各支柱21,22の上端部間に渡設される上連結部材23と、各支柱21,22の下端部にそれぞれ互いに近接する方向に取り付けられる脚部材24,25と、を備えて構成されており、上連結部材23には左右方向に細長い矩形孔26が形成されている。
【0045】
左右の支柱21,22の各上端部には、上連結部材23の下方に上取付部材27が絶縁碍子28を介して横架され、左右の支柱21,22の各下端部には、脚部材24,25の上方に下取付部材29が絶縁碍子28を介して横架されている。これにより、上取付部材27及び下取付部材29は枠体20に絶縁された状態で支持される。
【0046】
下取付部材29には、所定間隔で複数の切欠部30が上下スリット状に形成されている(
図6参照)。また、下取付部材29の左端部には給電部材31が取り付けられており、給電部材31に高電圧電源部13が接続されている。高電圧電源部13より供給される約10KVの高電圧は、給電部材31、下取付部材29、支持基板60、放電用針電極80に印加されて、放電針電極80の先端部と開口部41とで形成されるコロナ放電による円錐形状の帯電エリアEAを形成する。
【0047】
接地電極板40は、丸孔形状の開口部41が多数形成された1枚の四角形状の導電性を有する金属(実施例では鉄)により平板状に形成されており、着脱可能なリベットなどの着脱手段により含塵空気の流通を遮る向き(含塵空気の流通方向に対して直交する向き)で枠体20に着脱自在に取付けられている。
図3に良く示されているように、開口部41は、上下に複数個連設されると共に複数列に亘って形成されており、左右に隣接する列間で開口部41の半個分上下に互い違いにずれるように千鳥状に一定間隔で配列されている。
【0048】
本実施例において、開口部41は、上下に14個連設されると共に28列に亘って形成され、合計で392個設けられており、開口部41の直径は15mmに設定されている。このように開口部41の個数及び開口面積(直径)を設定した理由は、電気集塵機で処理すべき含塵空気の風量が決まっており、放電用針電極80と開口部41の周縁部との間隔を一定にする条件の基で、開口部41の開口面積を小さくし過ぎると、含塵空気の通過風速が速くなり、放電用針電極80から放出されるイオンシャワー(空気イオン)による帯電エリアEAと含塵空気中の粒子との帯電接触時間が短くなる一方、開口部41の開口面積を大きくし過ぎると、含塵空気の通過速度が遅くなるが、放電用針電極80からの帯電エリアEAが狭くなってしまい、十分に帯電することができない。更に、接地電極板40に設ける開口部41の数も少なくなってしまい、スペース効率も悪くなってしまう。
【0049】
なお、開口部41の形状は、上記したように完全な丸孔形状であるのが最も好ましいが、例えば正多角形の略円形状であってもよい。また、接地電極板40は、市販のパンチングメタル板を使用してもよく、この場合にはコストの低減化をさらに図ることができる。
【0050】
再び、
図2を参照すると、支持基板60は、縦長短冊状の板材により構成され、左右に隣接する開口部41の列間の1つ置きに、本実施例では14個設けられており、接地電極板40に対して直交する向きで配置されている。これにより、支持基板60は、含塵空気の流通方向から見て、開口部41に干渉しないように配置されると共に、支持基板60同士の間隔は、異常放電が発生しない程度に維持される。なお、本実施例での支持基板60は、含塵空気の流通方向と平行であり、且つ接地電極板40に対して直交する向きで配置されているが、例えば開口部41に干渉しないように配置されていれば、接地電極板40に対して直交しない向きで配置されても良い。
【0051】
支持基板60の上端部は、該上端部に形成されたフック穴62と上取付部材27との間に介装されたスプリング(図示省略)によって上取付部材27に支持される。また、支持基板60の下端部は、フック状に形成され、切欠部30に掛止されることにより下取付部材29に支持される。
【0052】
図6に良く示されているように、1つの支持基板60には、カシメ部61が支持基板60の左右に隣接する2列分の開口部41の数(本実施例では、14個×2列=28個)に対応する段数分形成されており、該各段にはそれぞれカシメ部61が2箇所ずつ形成されている。
【0053】
放電用針電極80は、64チタンと称されるチタン合金製、具体的には、JIS60種合金(6%Al+4%V+90%Ti)製であり、例えば直径がφ0.5mm〜0.6mmの細線状又は針状に形成され、先端は研磨加工されている。放電用針電極80は、その基端部を各段のカシメ部61に片持ち支持され、本実施例では、1つの支持基板60に対して28個ずつ取り付けられており、開口部41と同数設けられている。
【0054】
放電用針電極80は、カシメ部61から接地電極板40の方向(すなわち、支持基板60より含塵空気の流通方向上流側)に突出し、放電用針電極80の先端部が接地電極板40の支持基板60の左右両側に隣接する開口部41の中心線CL上に位置するように互い違いに屈曲形成されている。これにより、放電用針電極の先端部と開口部41の周縁部とが一定間隔を維持するようになっている。
【0055】
このように放電用針電極80を構成することにより、オゾン発生量を著しく低下することができると共に、加工性に優れ、安定した放電を可能とし、放電用針電極80の磨耗量を抑制し、長寿命化を図ることができる。また、64チタン製の放電用針電極80は、靭性に優れているため、カシメ接合や屈曲可能する場合に破断し難く、耐久性を高めることができる。
【0056】
このような構成を備えた電気集塵機によれば、含塵空気の流通方向に対して直交する向きに接地電極板40が配置され、接地電極板40に多数の開口部41が形成されることにより、接地電極板40は、荷電装置6のアース板の機能を有すると共に、含塵空気を整流する機能を有するため、別途整流板を設ける必要がなく、その分コストの低減化を図ることができる。
【0057】
また、接地電極板40は枠体20に対して着脱自在に設けられ、1枚の板金のみにより構成されているため、接地電極板40が微粉塵やミストの付着堆積によって汚染された場合に、特に接地電極板40の裏面側(含塵空気の流通方向の下流側)に堆積した汚れを簡単に清掃することができ、メンテナンス性を高めることができると共に、部品点数の削減が可能となり、コストの低減化を図ることができる。さらに、含塵空気の流通を遮る直交の向きに配置された1枚の板金により接地電極板40を構成することにより、荷電装置6の長手方向(含塵空気の流通方向)の寸法を短縮することができ、電気集塵機自体の長手方向の寸法も小さくすることができると共に、荷電装置6、集塵装置7、ファン8を直列に配置することにより、電気集塵機全体の高さを低くすることができるため、製品の小型化が可能となる。
【0058】
また、接地電極板40を放電用針電極80の含塵空気の流通方向上流側に配置し、接地電極板40を通過してから含塵空気中の微粉塵やミストを帯電するように構成したため、接地電極板40に微粉塵やミストが付着し難く、汚れ難い荷電装置6を提供することができる。
【0059】
また、接地電極板40のすべての開口部41に対応するように、放電用針電極80の先端が所定間隔で配置されているため、開口部41を通過するすべての含塵空気に対して荷電することができ、荷電効率の向上を図ることができる。
【0060】
また、放電用針電極80の先端部は、含塵空気の流通方向から見て、接地電極板40の開口部41の周縁部内のエリアに位置するように配列されている。さらに、接地電極板40の開口部41を丸孔形状とし、放電用針電極80の先端部が開口部41の中心線上に位置するように配列されているため、
図7乃至
図9に示すように、放電用針電極80の先端部からの開口部41の周縁部までの距離が均一となり、放電針電極80と開口部41とで形成されるコロナ放電による帯電エリアEAが円錐形状を成し、均一で安定的な放電状態を形成することができ、微粉塵やミストを均一に帯電することができる。
【0061】
また、放電用針電極80の配置間隔を狭めると、放電箇所の近傍では反発力が働き、接地電極板40に対する放電が減少する欠点があるが、上記したように丸孔形状の開口部41を千鳥状に一定間隔で配列することより、接地電極板40の強度を保ちつつ、必要な接地電極板40の開口面積を確保することができ、適正な濾過風量を確保することができると共に、近傍の放電用針電極80との間に所定の距離を維持することができるため、近傍の放電用針電極80と干渉することによる悪影響を防止することができる。
【0062】
次に、
図7〜
図9、
図13及び
図14を参照しつつ、荷電装置の帯電エリアEAについて従来の荷電装置と本発明の荷電装置6とを比較して説明する。
【0063】
図13は、並設された接地電極板101の間に支持基板102を配設し、接地電極板101に平行を成すように含塵空気の流通方向に沿って放電用針電極103を支持基板102に支持させた従来の電気集塵機の荷電装置100を示す平面図であり、
図14はその正面図であり、それぞれ、帯電エリアEAを一点鎖線で示している。この場合、
図14に破線の楕円で示すように、放電用針電極103の間に帯電の弱いエリアWAが存在する。この帯電の弱いエリアWAを少なくするため、上下方向に放電用針電極103を傾斜させて取り付けることも提案されているが(上記特許文献1の
図4乃至
図6等参照)、これだけで帯電の弱いエリアWAをすべてカバーすることは難しい。そのため、従来の荷電装置100では、帯電効率の向上を図ることが難しいという問題がある。
【0064】
これに対して、上記した本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置6では、
図7乃至
図9に示すように、接地電極板40の開口部41の全周端部との間に、帯電エリアEAを形成することができ、特に開口部41を丸孔形状とした場合には、開口部41に綺麗な放物線を描いた円錐形状の帯電エリアEAを形成することができる。したがって、含塵空気は必ず開口部41を通過し、含塵空気中の微粉塵及びミスト等の粒子を確実且つ均一に帯電することができると共に、高電圧コロナ放電で発生する空気イオンと微粉塵及びミストとの衝突(接触)の効率を高めることができるため、効率の良い帯電を行うことが可能となる。
【0065】
なお、実験の結果、上記した本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置6を使用した場合には、従来の荷電装置100を使用した場合と比較して、放電用針電極80の放電電流を約1/2に削減することができ、消費電力を約1/2に抑制することが可能であることが判明した。
【0066】
次に、
図10〜
図13を参照しつつ、上記した本発明の実施の形態に係る荷電装置6の変形例について説明する。ここで、
図10は本発明の実施の形態に係る電気集塵機の荷電装置6の変形例を示す平面図、
図11は該変形例を示す正面図、
図12は該変形例を示す側面図である。
【0067】
この変形例の場合、接地電極板90の開口部91は、
図11に示されているように、略正方形状に形成されており、開口部91の四隅は湾曲して形成されている。また、支持基板93は、細長い板金製の支持部94と、支持部94から屈曲された先細り三角形状の突起部95と、が一体に形成されて構成されている。そして、突起部95は、その先端部が支持基板63の左右両側に隣接する開口部91の中心線CL上に位置するように互い違いに屈曲されて形成されている。
【0068】
このように接地電極板90の開口部91を略四角形状とした場合には、丸孔形状とした場合と比較して、開口面積を多く確保することができ、含塵空気量が多い場合には、特に有効である。さらに、開口部91の四隅をR形状とすることで、四隅の帯電エリアEA(
図10及び
図11において一点鎖線で示す。)における放電量の減少を抑制することができ、四隅への微粉塵やミストの堆積も抑制することができる。また、支持部94と突起部95とを板金で一体に形成することにより、部品点数を削減し、コストの低減化を図ることもできる。
【0069】
このように上記した本発明の実施の形態に係る電気集塵機によれば、接地電極板40,90の開口部41,91により整流された含塵空気を支持基板60,93で阻害することがなく、また、接地電極板40,90には、帯電した微粉塵及びミスト等の粒子の付着堆積が少ないため、メンテナンスサイクルを延ばすことができ、使い勝手を高めることができると共に、含塵空気の流通方向下流側の集塵装置7を有効に活用することができる。
【0070】
なお、上記した本発明の実施の形態の説明は、本発明に係る電気集塵機における好適な実施の形態を説明しているため、技術的に好ましい種々の限定を付している場合もあるが、本発明の技術範囲は、特に本発明を限定する記載がない限り、これらの態様に限定されるものではない。すなわち、上記した本発明の実施の形態における構成要素は適宜、既存の構成要素等との置き換えが可能であり、かつ、他の既存の構成要素との組合せを含む様々なバリエーションが可能であり、上記した本発明の実施の形態の記載をもって、特許請求の範囲に記載された発明の内容を限定するものではない。