(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6046986
(24)【登録日】2016年11月25日
(45)【発行日】2016年12月21日
(54)【発明の名称】構造物用制振ダンパー
(51)【国際特許分類】
F16F 15/04 20060101AFI20161212BHJP
E01D 19/04 20060101ALI20161212BHJP
E04H 9/02 20060101ALI20161212BHJP
F16F 9/32 20060101ALI20161212BHJP
F16F 9/36 20060101ALI20161212BHJP
F16F 15/023 20060101ALI20161212BHJP
F16F 15/08 20060101ALI20161212BHJP
【FI】
F16F15/04 Z
E01D19/04 101
E04H9/02 301
F16F9/32 K
F16F9/36
F16F15/023 A
F16F15/08 B
F16F15/08 E
【請求項の数】7
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-247154(P2012-247154)
(22)【出願日】2012年11月9日
(65)【公開番号】特開2014-95422(P2014-95422A)
(43)【公開日】2014年5月22日
【審査請求日】2014年10月28日
【審判番号】不服2016-1238(P2016-1238/J1)
【審判請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】501267357
【氏名又は名称】国立研究開発法人建築研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】503121088
【氏名又は名称】株式会社ビービーエム
(74)【代理人】
【識別番号】100119220
【弁理士】
【氏名又は名称】片寄 武彦
(74)【代理人】
【識別番号】100139103
【弁理士】
【氏名又は名称】小山 卓志
(74)【代理人】
【識別番号】100139114
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 貞嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100094787
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 健二
(72)【発明者】
【氏名】山口 修由
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕一
(72)【発明者】
【氏名】田中 健司
(72)【発明者】
【氏名】小泉 貴宏
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
中川 隆司
【審判官】
内田 博之
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭50−56892(JP,U)
【文献】
米国特許第4032126(US,A)
【文献】
特開平11−210815(JP,A)
【文献】
特開2002−115738(JP,A)
【文献】
特開平8−261265(JP,A)
【文献】
特開平8−61312(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F15/04,E01D19/04,E04H9/02,F16F9/32,F16F9/36,F16F15/023,F16F15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地震時に相対変位する一方の構造体に固定される一端が閉じ、他端が開口したシリンダー部材と、
他方の構造体に固定され、前記シリンダー部材の開口から内部に伸び、前記シリンダー部材との間で相対変位可能に配置され、先端に前記シリンダー部材の内径とほぼ同じ外径を有し、流通路を形成した弁体を備えたピストンロッドと、
前記弁体から所定間隔をおいたピストンロッドの外周面にその内周面が固定され前記シリンダー部材内周面にその外周面が固定される弾性ゴム体と、
前記弾性ゴム体と前記弁体との間に、外周部が前記シリンダー部材内周面に固定され内周部が前記ピストンロッド外周部と摺動可能に配置したリング状隔壁部材と、
を備え、
前記リング状隔壁部材と前記シリンダー部材の閉じられた一端間を密封空間とし、前記シリンダー部材と前記ピストンロッドの相対変位に対して、シリンダー部材の密封空間内流体の前記弁体に形成された流通路を通しての流体移動抵抗及び前記弾性ゴム体の弾性変形により地震エネルギーを吸収することを特徴とする構造物用制振ダンパー。
【請求項2】
前記弾性ゴム体を高減衰性ゴムとすることを特徴とする請求項1に記載の構造物用制振ダンパー。
【請求項3】
前記シリンダー部材の前記弾性ゴム体を固定する部分の内径を他の部分の内径より大きくすることを特徴とする請求項1または2に記載の構造物用制振ダンパー。
【請求項4】
前記シリンダー部材の密封空間に封入される流体を気体とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造物用制振ダンパー。
【請求項5】
前記シリンダー部材の密封空間に封入される流体を液体とすることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の構造物用制振ダンパー。
【請求項6】
前記流通路が前記弁体を貫通する小孔であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の構造物用制振ダンパー。
【請求項7】
前記流通路が前記弁体の外周に形成した切欠きであることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の構造物用制振ダンパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物や橋梁等の構造物の地震時の振動を抑制する構造物用制振ダンパーに関し、特に地震の際の構造物の大きな変位に対して効率良く地震エネルギーを吸収することが可能な流体圧及び弾性ゴムの変形を利用した構造物用制振ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
構造物用制振ダンパーとしてオイルダンパー、エアーダンパーや粘弾性ダンパー等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第2541073号公報
【特許文献2】特許第2566833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のオイルダンパーやエアーダンパーは、構造が複雑であり、コストも高く、点検、補修、部品取り換え等のメンテナンスの回数が多いという問題を有する。粘弾性ダンパー等の弾性体の変形による振動吸収機能を有する制振ダンパーは、構造が簡単でメンテナンスも容易であるという利点を有する。しかし、地震時に構造物には方向の異なる大きな変位が作用し、構造物の相対変位する2つの構造にそれぞれ一端を固定したシリンダー部材とピストン部材の軸方向の変位にぶれが生じ、その結果、装置の一部に荷重が集中して装置自体を破壊する恐れがある。また、従来のオイルダンパーやエアーダンパーは,シリンダー内部を密閉するために,シリンダー先端の蓋に設けた穴の内周部とロッド外周部の間で,シール材等を用いて密閉しまた滑動可能としている。ダンパーの外部に露出したピストンロッドの外周部には,外気によって錆びが生じやすい。ロッドの外周部表面に錆びによって凸凹が生じた場合には,密閉および滑動の役割を担うシール材が,ロッド外周部の凸凹によって容易に削られて破損する。その結果,ダンパーの密閉性が失われる。この障害を取り除くために,従来のダンパーではロッド外周部の錆を,定期的に除去するメンテナンスが必要となるという問題を有する。
【0005】
本発明は、従来技術の持つ問題を解決する、構造が簡単で、製造が容易で複雑な弁構造を用いること無く、ピストンロッド外周部の錆によってシリンダーの密閉性が失われることが無く、流体圧による地震エネルギー吸収と弾性ゴムの弾性変形による地震エネルギー吸収を可能とする構造物用制振ダンパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の構造物用制振ダンパーは、前記課題を解決するために、地震時に相対変位する一方の構造体に固定される一端が閉じ、他端が開口したシリンダー部材と、他方の構造体に固定され、前記シリンダー部材の開口から内部に伸び、前記シリンダー部材との間で相対変位可能に配置され、先端に前記シリンダー部材の内径とほぼ同じ外径を有し、流通路を形成した弁体を備えたピストンロッドと、前記弁体
から所定間隔をおいたピストンロッドの外周面に
その内周面が固定され前記シリンダー部材内周面に
その外周面が固定される弾性ゴム体と、
前記弾性ゴム体と前記弁体との間に、外周部が前記シリンダー部材内周面に固定され内周部が前記ピストンロッド外周部と摺動可能に配置したリング状隔壁部材と、を備え、前記リング状隔壁部材と前記シリンダー部材の閉じられた一端間を密封空間とし、前記シリンダー部材と前記ピストンロッドの相対変位に対して、シリンダー部材の密封空間内流体の前記弁体に形成された流通路を通しての流体移動抵抗及び前記弾性ゴム体の弾性変形により地震エネルギーを吸収することを特徴とする。
【0007】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記弾性ゴム体を高減衰性ゴムとすることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記シリンダー部材の前記弾性ゴム体を固定する部分の内径を他の部分の内径より大きくすることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記シリンダー部材と前記ピストンロッド間の密封空間に封入される流体を気体とすることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記シリンダー部材と前記ピストンロッド間の密封空間に封入される流体を液体とすることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記流通路が前記弁体を貫通する小孔であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の構造物用制振ダンパーは、前記流通路が前記弁体の外周に形成した切欠であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
地震時に相対変位する一方の構造体に固定される一端が閉じ、他端が開口したシリンダー部材と、他方の構造体に固定され、前記シリンダー部材の開口から内部に伸び、前記シリンダー部材との間で相対変位可能に配置され、先端に前記シリンダー部材の内径とほぼ同じ外径を有し、流通路を形成した弁体を備えたピストンロッドと、前記弁体
から所定間隔をおいたピストンロッドの外周面に
その内周面が固定され前記シリンダー部材内周面に
その外周面が固定される弾性ゴム体と、
前記弾性ゴム体と前記弁体との間に、外周部が前記シリンダー部材内周面に固定され内周部が前記ピストンロッド外周部と摺動可能に配置したリング状隔壁部材と、を備え、前記リング状隔壁部材と前記シリンダー部材の閉じられた一端間を密封空間とし、前記シリンダー部材と前記ピストンロッドの相対変位に対して、シリンダー部材の密封空間内流体の前記弁体に形成された流通路を通しての流体移動抵抗及び前記弾性ゴム体の弾性変形により地震エネルギーを吸収することで、複雑な弁制御機構を設けること無く構造が簡単で部品点数が少なく、弾性ゴム体がシール材として機能するのでシール材を用いなくても済み、効率良く地震エネルギーを減衰することが可能な流体圧を利用したダンパー構造を提供することが可能となり、シリンダー部材内密封空間の体積を弾性ゴム体の変形に拘わらず一定とし地震エネルギーの減衰性を向上することが可能となる。
弾性ゴム体を高減衰性ゴムとすることで、地震エネルギーの減衰性能を向上することが可能となる。
シリンダー部材の弾性ゴム体を固定する部分の内径を他の部分の内径より大きくすることで、弾性ゴム体の体積を大きくすることで弾性ゴムの変形による地震エネルギーの減衰性を向上することが可能となる。
シリンダー部材の密封空間に封入される流体を気体とすることで、気体は圧縮性流体であるので流通路を通しての流体移動抵抗に加え、気体の圧縮、膨張によるクッション効果により地震エネルギーの吸収に利用することが可能となる。
シリンダー部材の密封空間に封入される流体を液体とすることで、複雑な弁制御をすることなく、流通路の液体移動抵抗を考慮するだけで構造が簡単な液体ダンパーとすることが可能となる。
流通路が弁体を貫通する小孔であることで、構造が簡単な流体移動抵抗手段とすることが可能となる。
流通路が弁体の外周に形成した切欠であることで、構造が簡単な流体移動抵抗手段とすることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の構造物用制振ダンパーの実施の形態を図により説明する。
図1、
図2は、構造物用制振ダンパーの一実施形態を示す図である。
【0019】
構造物用制振ダンパー1は、建築物や橋梁等の構造物の一方の構造体に連結される一端が閉じ他端が開口したシリンダー部材2と、他方の構造体に連結するピストンロッド3を備えている。ピストンロッド3は、シリンダー部材1の開口からその内部に伸び、シリンダー部材2に対して相対変位可能に配置される。
【0020】
シリンダー部材2は、断面円形の部材で、閉じた側の端部には一方の構造体に連結するためのシリンダー側取付部材4が固定される。
【0021】
ピストンロッド3の一端部には、他方の構造体に連結するためのピストンロッド側取付部材5が固定される。ピストンロッド3の他端部には、シリンダー部材2の内径とほぼ同じ外径の弁体6が形成される。
【0022】
ピストンロッド3の弁体6の後部外周部とシリンダー部材2の内壁間に弾性ゴム体7が固定される。一端が閉じられたシリンダー部材2とピストンロッド3の弁体6の後部外周部とシリンダー部材2の内壁間に固定される弾性ゴム体7により、シリンダー部材2の閉じた側と弁体6間の空間Aと、弁体6と弾性ゴム体7間の空間Bは、外部から密封状態にする。弾性ゴム体7がシール材として機能するのでシール材が必要でなくなる。
【0023】
ピストンロッド3外周部とシリンダー部材2内壁部への弾性ゴム体7の固定は、加硫一体成形により実施する。加硫一体成形による固定は、鋼材とゴムとの接着部の劣化が防止され、密封状態を長期間維持することが可能となる。また,弾性ゴム体7はシリンダー部材2とピストンロッド3が相対変位した場合に弾性変形するために,従来のダンパーにおけるシール材が必要でないために,ピストンロッド3外周部の錆びによってシリンダー部材2の密閉性が失われることがない。
【0024】
図3、
図4に示すように、弁体6には、空間A,Bと連通する流通路が形成される。
図3に示される実施形態では、流通路は弁体6を貫通する小孔8として形成される。
図4に示される実施形態では、流通路は弁体6の外周に切欠9として形成される。
【0025】
シリンダー部材2内に封入される流体として空気等の気体を選択した場合の本発明の作用を説明する。地震時、構造物に作用する変位により、一方の構造部に連結されたシリンダー部材2と他方の構造部に連結されたピストンロッド3は互いに相対変位する。
【0026】
シリンダー部材2とピストンロッド3が
図1に示す状態から
図2に示す矢印方向に相対変位した場合について説明する。ピストンロッド2の矢印方向への相対変位により弁体6も矢印方向に移動する。その結果、空間B内の気体は圧縮されその体積が減少し圧力が増加する。一方、空間A内の気体は膨張しその体積が増加し圧力が減少する。その結果、圧力の高い空間B内の気体は、弁体6に形成した流通路8から圧力の低い空間Aに流れる。流通路8の形状は、
図3、
図4に示す小孔8aでも切欠き8bでも良いが、流通路8から気体が流れる際の流体移動抵抗による地震エネルギーの減衰性を考慮し、流通路8の口径、形状、数等を設定する。
【0027】
シリンダー部材2とピストンロッド3の相対変位に伴い、弾性ゴム体7が図のように弾性変形する。このように、シリンダー部材2とピストンロッド3の相対変位に伴い空間A、空間B内の気体の圧縮、膨張によるクッション効果、流通路8を通しての気体の移動の際の流体移動抵抗により地震エネルギーが減衰され、さらに、シリンダー部材2内を密封する弾性ゴム体7の弾性変形により地震エネルギーを減衰する。弾性ゴム体7を高減衰性ゴムとすることにより、地震エネルギーの減衰性能を向上することが可能となる。
【0028】
シリンダー部材2内に封入される流体としてオイル等の液体を選択した場合の本発明の作用を説明する。地震時、構造物に作用する変位により、一方の構造部に連結されたシリンダー部材2と他方の構造部に連結されたピストンロッド3は互いに相対変位する。
【0029】
シリンダー部材2とピストンロッド3が
図1に示す状態から
図2に示す矢印方向に相対変位した場合について説明する。ピストンロッド2の矢印方向への相対変位により弁体6も矢印方向に移動する。その結果、空間B内の液体は、弁体6に形成した流通路8から空間Aに流れる。流通路8の形状は、
図3、
図4に示す小孔8aでも切欠き8bでも良いが、流通路8から液体が流れる際の流体移動抵抗による地震エネルギーの減衰性を考慮し、流通路8の口径、形状、数等を設定する。液体は気体と相違し非圧縮性流体であるため、液体の流通路8を通しての流体移動抵抗は、気体の場合に比較し精密な設定が必要である。
【0030】
シリンダー部材2とピストンロッド3の相対変位に伴い、弾性ゴム体7が図のように弾性変形する。このように、シリンダー部材2とピストンロッド3の相対変位に伴い流通路8を通しての液体の移動の際の流体移動抵抗により地震エネルギーが減衰され、さらに、シリンダー部材2内を密封する弾性ゴム体7の弾性変形により地震エネルギーを減衰する。弾性ゴム体7を高減衰性ゴムとすることにより、地震エネルギーの吸収性能を向上することが可能となる。
【0031】
図5に示される構造物用制振ダンパーの実施形態では、シリンダー部材2内の弾性ゴム体7と弁体6との間に、外周部がシリンダー部材2内周面に固定されたリング状隔壁部材9をその内周部がピストンロッド3外周部に対して摺動可能に配置する。
図1、
図2に示される実施形態では、弾性ゴム体7の変形によりシリンダー部材内の密封空間A+Bの体積が若干変化する。シリンダー部材2内の密封空間の体積の変化は、流体ダンパーの地震エネルギーの減衰性に少し影響する。
図5に示される実施形態では、リング状隔壁部材9を配置することで、シリンダー部材2内の密封空間の体積を一定として流体ダンパーの地震エネルギー減衰性を保持する。リング状隔壁部材9の材質としては硬質ゴム等とする。
【0032】
図6(a)(b)に示される実施形態は、シリンダー部材2の弾性ゴム体7の配置部分の内径Kを他のシリンダー部材2の部分の内径kより大きくする。
図6(a)に示される実施形態では、弾性ゴム体7の配置するシリンダー部材2の内壁部を削り薄肉部2aとしその内径Kを、シリンダー部材2の他の部分の内径kより大きくしている。また、
図6(b)に示される実施形態は、弾性ゴム体7を配置するシリンダー部材2bの内径Kとし、シリンダー部材2bの先端に連結されるシリンダー部材2cの外径をKとし、内径kをシリンダー部材2bの内径Kより小さくしている。シリンダー部材2の弾性ゴム体7の配置部分の内径Kを他の部分の内径kより大きくすることにより、配置する弾性ゴム体7の体積を増加させ、弾性ゴム体7の変形による地震エネルギーの減衰性能を向上することが可能となる。
【0033】
図7(a)(b)に示される実施形態は、構造物の設置個所の相違により制振ダンパーの長さが異なるケースに対応するものである。
図7(a)に示すように、弾性ゴム体7を配置するシリンダー部材2dに対して、長さの異なるシリンダー部材2e,2fを複数用意する。構造物の設置個所の制振ダンパーの長さに応じて複数の長さの異なるシリンダー部材2e,2fから所望の長さのシリンダー部材を選択し、弾性ゴム体7を配置したシリンダー部材2dと連結固定する。
【0034】
以上のように本発明の構造物用制振ダンパーによれば、弾性ゴム体により密封された空間内流体の前記弁体に形成された流通路を通しての流体移動抵抗及び前記弾性ゴム体性変形により地震エネルギーを減衰することで、複雑な弁制御機構を設けること無く構造が簡単で部品点数が少なく効率良く地震エネルギーを減衰することが可能な流体圧を利用したダンパー構造を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0035】
1:構造物用制振ダンパー、2:シリンダー部材、3:ピストンロッド、4:シリンダー側取付部材、5:ピストンロッド側取付部材、6:弁体、7:弾性ゴム体、8:流通路、8a:小孔、8b:切欠き、9:リング状隔壁部材